(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】字消しケースおよび字消し具
(51)【国際特許分類】
B43L 19/00 20060101AFI20230823BHJP
B08B 7/02 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B43L19/00 E
B08B7/02
(21)【出願番号】P 2019171094
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000106782
【氏名又は名称】株式会社シード
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099977
【氏名又は名称】佐野 章吾
(74)【代理人】
【識別番号】100104259
【氏名又は名称】寒川 潔
(72)【発明者】
【氏名】西畑 一裕
(72)【発明者】
【氏名】藤井 愼也
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-057494(JP,U)
【文献】実開昭60-191495(JP,U)
【文献】実開昭59-192393(JP,U)
【文献】実開昭53-158344(JP,U)
【文献】実開平05-070459(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 19/00
B08B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉入り字消しを前後方向へ移動可能に収納保持するものであって、
前記字消しの外周面を囲繞保持するケース本体と、このケース本体の外周部に設けられ、前記字消しの消し屑を磁気吸着する消し屑収集部とを備え、
前記消し屑収集部は、前記ケース本体に対して弾性変形可能な板状体と、この板状体の片側表面に装着された永久磁石とからなり、
前記永久磁石に磁気吸着された消し屑が、前記板状体の弾性変形による弾性復帰力により、前記永久磁石から離脱除去される構成とされている
ことを特徴とする字消しケース。
【請求項2】
前記字消しが直方体形状とされるとともに、前記消し屑収集部の板状体が前記字消しの4つの外周側面の一つに対応して設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の字消しケース。
【請求項3】
前記板状体は、前記ケース本体の外周面に対して所定の傾斜角度をもって直線状に延びて形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の字消しケース。
【請求項4】
前記板状体は、その基端部が前記ケース本体の外周面の前後方向一端部に一体接続されるとともに、その先端部が前記外周面に対して所定の間隔をもって離隔位置する解放端部とされ、
この解放端部の前記ケース本体の外周面方向への近接動作による前記板状体の弾性変形状態において、この弾性変形状態を解除することによる前記板状体の弾性復帰力により、前記永久磁石上に磁気吸着された消し屑が離脱除去される構成とされている
ことを特徴とする請求項3に記載の字消しケース。
【請求項5】
前記永久磁石は、前記板状体の解放端部の外側表面に装着されている
ことを特徴とする請求項4に記載の字消しケース。
【請求項6】
前記永久磁石は、前記板状体の解放端部の裏側表面に装着されている
ことを特徴とする請求項4に記載の字消しケース。
【請求項7】
前記永久磁石は、前記板状体の外側表面に貼着された薄板状のマグネットシートの形態とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の字消しケース。
【請求項8】
前記ケース本体と前記消し屑収集部の板状体は、一体成形されたプラスチック製の射出成形品である
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の字消しケース。
【請求項9】
前記消し屑収集部の両側部において、前記ケース本体から一対のガイド部が立ち上げ形成されて、手指による前記消し屑収集部の板状体の弾性変形操作を案内する構成とされている
ことを特徴とする請求項8に記載の字消しケース。
【請求項10】
前記消し屑収集部の板状体は、前記基端部が前記一対のガイド部に一体結合されるとともに、前記解放端部が前記一対のガイド部の上端縁に対応した高さ位置なるように設定されている
ことを特徴とする請求項9に記載の字消しケース。
【請求項11】
前記ケース本体は、前記字消しの外周面を摺動可能に囲繞保持する前後開放型の筒体形状とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の字消しケース。
【請求項12】
字消し材料に磁性粉が混錬含有されてなる
字消しと、
前記字消しを収納する請求項1から11のいずれか一つに記載の字消しケース
とからなる
ことを特徴とする字消し
具。
【請求項13】
前記磁性粉は、鉄、コバルト、ニッケル単体もしくはそれらの合金、
またはフェライトの粉体である
ことを特徴とする請求項12に記載の字消し
具。
【請求項14】
前記磁性粉の字消し構成材料に対する配合量は、1~50重量%に設定される
ことを特徴とする請求項12に記載の字消し
具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は字消しケースおよび字消し具に関し、さらに詳細には、磁性粉入り字消しにおいて、字消しを収納保持するとともに、字消しの使用により生じた消し屑を磁気吸着により簡易に収集除去する機能を備えた字消しケースの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉛筆等の筆記具による誤字や誤記などを消去する字消しは、ゴム製、プラスチック製または熱可塑性エラストマー製の字消し本体が、紙製またはプラスチック製のカバー部材ないしは収納ケース(以下、収納ケースと称する。)により被覆される基本構造を備えてなる。
【0003】
ところで、字消しを使用することによって生じる屑いわゆる消し屑の処理は、手指により払い落したり、雑巾等により拭き取ったり、あるいは専用の清掃具で収集して廃棄処理するのが一般的であった。
【0004】
このような処理方法では、手指が汚れたり、あるいは字消しと別に雑巾等や清掃具を用意する必要があって、清掃作業が面倒で迅速制に欠けるという問題があった。
【0005】
この点に関して、字消し自体に磁性粉を混錬含有させることにより、字消し作業により生じる消し屑を磁性体化させて、これを磁石で磁気吸着して収集するという考え方があり、この考え方を利用した消し屑収集具も提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1に記載の消し屑収集具は、
図6に示すように、磁性粉入りの字消しaと永久磁石bとからなる組み合せ体cと、字消しaの消し屑d、d、…が永久磁石bに直接吸着することを阻止するための分離部eを有して、上記組み合せ体cを収容する清掃用ケースfと、組み合せ体cと清掃用ケースfとを上記永久磁石bの作用で着脱自在に一体化するように上記ケースfに固着された磁性体片gとからなる。
【0007】
そして、消し屑収集具付きの字消しaで誤字や誤記などを消去する場合は、組み合せ体cとケースfとを一体化した状態で使用する。この字消しaの使用により生じ消し屑d、d、…を清掃する時には、
図7(a)に示すように、組み合せ体cと清掃用ケースfとを一体化した状態で、清掃用ケースfの凹部iを用紙h上の消し屑d、d、…に近づけて、磁石bの磁気作用で消し屑d、d、…を分離部eに磁気吸着させる。この分離部eに磁気吸着して集めた消し屑d、d、…を捨てる時には、
図7(b)に示すように、ゴミ箱等の捨て場所で組み合せ体cを清掃用ケースfから離脱させて、磁石bを清掃用ケースfから分離させる。この結果、磁石bの磁気作用が消し屑d、d、…に及ばなくなり、消し屑d、d、…は清掃用ケースfの分離部eから落下する。消し屑d、d、…を捨てたら、再び組み合せ体cと清掃用ケースfとを嵌合して一体化する。
【0008】
また、特許文献2に記載の消し屑収集具は、
図8に示すように、底面内側に磁石jを固定した筒状体kの底面外側に、カバーlを揺動開閉するごとく枢着し、このカバーlの上記筒状体kの底面外側と当接する側面に強磁性体mを取り付けるとともに、カバーl外周に突出部nを設けた構造とされている。
【0009】
そして、
図9(a)に示すように、字消しoによる字消し操作により発生した消し屑p、p、…を吸着する際は、カバーlは強磁性体mと磁石jの磁気吸着力により、筒状体kの底面に密着しており、カバーl外側には磁石jの磁力によって消し屑p、p、…が吸着される。次に
図9(b)に示すように、突出部nを筒状体kの底面から離れる方向へ上記強磁性体mと磁石jの磁気吸着力に勝る力で押圧することにより、かバーlは筒状体kの底面との密着を解かれ、磁石jの磁力がカバーl外側に及ばなくなり、消し屑p、p、…はカバーl外側より離脱する。この後、カバーl外側または突出部nを筒状体kの底面に近づく方向に軽く押圧することで磁石jと強磁性体mの吸着力によりカバーlは容易に筒状体kの底面との密着状態に復帰する(
図8(a))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実開昭59-192392号公報
【文献】実開昭60-191495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これら従来の消し屑収集具においては、以下に述べるような問題点があった。
【0012】
これらの消し屑取集具はいずれも、消し屑dまたはpが永久磁石bまたはjに直接吸着することを阻止する構造とされているため、比較的大きな永久磁石bまたはJを備えて、大型で重量の大きな構造を有するとともに、部品点数が比較的多くて、構造も複雑であり、これがため、製造コストが高くついて、字消しのような安価な商品に装備される消し屑収集具としては採用が困難な構造であった。
【0013】
また、特許文献1に記載の消し屑収集具は、消し屑d、d、…の収集除去に際して、組み合せ体cに対して清掃用ケースfを着脱させる必要があり、一方、特許文献2の消し屑収集具にあっては、消し屑p、p、…の収集除去に際して、カバーlを筒状体kの底面に対して着脱させる必要があり、いずれの消し屑収集具にあっても、消し屑dまたはpの収集除去に少なくとも2動作を要し、取扱いが面倒であった。
【0014】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、磁性粉入りの字消しによる消し屑の収集除去をワンタッチ操作で行うことができ、取扱い容易で、しかも構造簡素で安価な字消しケースを提供することにある。
【0015】
また、本発明の他の目的とするところは、上記字消しケースを収納ケースとして備えた、磁性粉入りの字消しを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するため、本発明の字消しケースは、磁性粉入り字消しを前後方向へ移動可能に収納保持するものであって、上記字消しの外周面を囲繞保持するケース本体と、このケース本体の外周部に設けられ、上記字消しの消し屑を磁気吸着する消し屑収集部とを備え、上記消し屑収集部は、上記ケース本体に対して弾性変形可能な板状体と、この板状体の片側表面に装着された永久磁石とからなり、上記永久磁石に磁気吸着された消し屑が、上記板状体の弾性変形による弾性復帰力により、上記永久磁石から離脱除去される構成とされている
ことを特徴とする。
【0017】
好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
(1)上記字消しが直方体形状とされるとともに、上記消し屑収集部の板状体が上記字消しの4つの外周側面の一つに対応して設けられている。
【0018】
(2)上記板状体は、上記ケース本体の外周面に対して所定の傾斜角度をもって直線状に延びて形成されている。
【0019】
(3)上記板状体は、その基端部が上記ケース本体の外周面の前後方向一端部に一体接続されるとともに、その先端部が上記外周面に対して所定の間隔をもって離隔位置する解放端部とされ、この解放端部の上記ケース本体の外周面方向への近接動作による上記板状体の弾性変形状態において、この弾性変形状態を解除することによる上記板状体の弾性復帰力により、上記永久磁石上に磁気吸着された消し屑が離脱除去される構成とされている。
【0020】
(4)上記永久磁石は、上記板状体の解放端部の外側表面に装着されている。
【0021】
(5)上記永久磁石は、上記板状体の解放端部の裏側表面に装着されている。
【0022】
(6)上記永久磁石は、上記板状体の外側表面に貼着された薄板状のマグネットシートの形態とされている。
【0023】
(7)上記ケース本体と上記消し屑収集部の板状体は、一体成形されたプラスチック製の射出成形品である。
【0024】
(8)上記消し屑収集部の両側部において、上記ケース本体から一対のガイド部が立ち上げ形成されて、手指による上記消し屑収集部の板状体の弾性変形操作を案内する構成とされている。
【0025】
(9)上記消し屑収集部の板状体は、上記基端部が上記一対のガイド部に一体結合されるとともに、上記解放端部が上記一対のガイド部の上端縁に対応した高さ位置なるように設定されている。
【0026】
(10)上記ケース本体は、上記字消しの外周面を摺動可能に囲繞保持する前後開放型の筒体形状とされている。
【0027】
また、本発明の字消し具は、字消し材料に磁性粉が混錬含有されてなる字消しと、上記字消しを収納する上記字消しケースとからなり、好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
【0028】
(1)上記磁性粉は、鉄、コバルト、ニッケル単体もしくはそれらの合金、またはフェライトの粉体である。
【0029】
(2)上記磁性粉の字消し構成材料に対する配合量は、1~50重量%に設定される。
【発明の効果】
【0030】
本発明の字消しケースによれば、磁性粉入り字消しを前後方向へ移動可能に収納保持するものであって、上記字消しの外周面を囲繞保持するケース本体と、このケース本体の外周部に設けられ、上記字消しの消し屑を磁気吸着する消し屑収集部とを備え、上記消し屑収集部は、上記ケース本体に対して弾性変形可能な板状体と、この板状体の片側表面に装着された永久磁石とからなり、上記永久磁石に磁気吸着された消し屑が、上記板状体の弾性変形による弾性復帰力により、上記永久磁石から離脱除去される構成とされているから、以下に列挙するような特有の効果が発揮されて、磁性粉入りの字消しによる消し屑の収集除去をワンタッチ操作の1動作で行うことができ、取扱い容易で、しかも構造簡素で安価な字消しケースを提供することができる。
【0031】
(1)磁性粉入りの字消しの外周面を囲繞保持するケース本体の外周部に設けられた消し屑収集部は、上記ケース本体に対して弾性変形可能な板状体と、この板状体の片側表面に装着された永久磁石とからなるから、部品点数が少なくて、構造も小型かつ簡素であり、製造コストを低く抑えることができ、字消しの消し屑収集具として最適な構造である。
【0032】
(2)消し屑収集部の永久磁石に磁気吸着された消し屑が、上記板状体の弾性変形による弾性復帰力により、上記永久磁石から離脱除去される構成とされているため、永久磁石の磁力は比較的弱くて良く、永久磁石の小型軽量化が可能で、上記(1)との相乗効果により、より安価な構造を実現することができる。
【0033】
特に、永久磁石が板状体の外側表面に装着されて、消し屑が上記永久磁石に直接磁気吸着する構造とされていることにより、永久磁石の磁力はさらに弱く設定することができて、永久磁石のさらなる小型軽量化が実現し、より軽量で安価な構造実現に顕著な効果を発揮する。
【0034】
(3)消し屑収集部の永久磁石に磁気吸着された消し屑が、上記板状体の弾性変形による弾性復帰力により、上記永久磁石から離脱除去される構成とされているから、消し屑の収集除去に際して、手指等により板状体を一定の範囲で弾性変形させて、その変形力を解除するだけで、消し屑の離脱除去と同時に消し屑収集部が元の状態に自動復帰するため、ワンタッチの1動作で消し屑の収集除去が行え、取扱いが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施形態1である字消しを示す斜視図である。
【
図2】同字消しの収納ケースを示し、
図2(a)は平面図、
図2(b)は
図2(a)のB-B線に沿った側面図、
図2(c)は背面図である。
【
図3】同字消しにおける消し屑収集部の消し屑除去操作時の動作メカニズムを説明するための一部断面側面図である。
【
図4】本発明の実施形態2である字消しを示す斜視図である。
【
図5】同字消しの収納ケースを示し、
図5(a)は平面図、
図5(b)は
図5(a)のB-B線に沿った側面図、
図5(c)は背面図である。
【
図6】従来の消し屑収集具を備えた字消しの一例を示す断面図である。
【
図7】同消し屑収集具により字消しの消し屑の収集除去方法を説明するための断面図で、
図7(a)は消し屑取集状態を示し、
図7(b)は消し屑除去状態を示す。
【
図8】従来の消し屑収集具を備えた字消しの他の例を示す断面図である。
【
図9】同消し屑収集具により字消しの消し屑の収集除去方法を説明するための図で、
図9(a)は消し屑収集態を示し、
図9(b)は消し屑除去状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
【0037】
実施形態1
本発明に係る字消しが
図1~
図3に示されている。この字消し1は、具体的には、鉛筆やシャープペンシル等の筆記具で書かれた文章の文字や図形の線などの誤字や誤記などを消去するためのものであり、収納ケースとしての字消しケース2に収納保持されてなるとともに、この字消しケース2が字消し1の消し屑d、d、…を収集除去するための消し屑収集部3を有する特徴構成を備えてなる。
【0038】
字消し1は、具体的には直方体形状に形成されてなり、以下に述べるような主要構成材料からなるとともに、特徴的な構成材料として微小な磁性粉が均一に混練含有されてなる。
【0039】
上記字消し1の主要構成材料としては、従来公知の字消し材料のいずれも適用可能であり、これら従来公知の字消し材料を選択使用することにより、一般的に使用される黒鉛除去用の字消し、インク除去用の砂入り字消し、黒鉛除去用字消しとインク除去用字消しが複合一体化されてなる両用字消し等、使用目的に応じた字消しを構成することができ、また消しゴム(ゴムを基材とするもの)、プラスチック字消し、油性字消し(石鹸字消し)等のあらゆる組成の字消しを構成することができる。
【0040】
例えば、プラスチック字消しに用いられる基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー樹脂、熱可塑性エラストマー(スチレン系、オレフィン系など)、あるいは生分解性樹脂などを用いることができ、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0041】
なお、本実施形態において用いる上記生分解性樹脂は、微生物の働きによって最終的に水と二酸化炭素にまで分解されものであれば、特に限定されるものでなく、例えば、微生物産系生分解性樹脂、天然物利用系生分解性樹脂、化学合成系生分解性樹脂などが挙げられる。具体的には、微生物産系生分解性樹脂としては、株式会社カネカ社製の「アオニレックス」(登録商標)(ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート))などが挙げられ、天然物利用系生分解性樹脂としては、日本コーンスターチ株式会社製の「コーンポール」(商標)(化工澱粉)などが挙げられ、化学合成系生分解性樹脂としては、三菱ケミカル株式会社の「BioPBS」(商標)(ポリブチレンサクシネート)などが挙げられる。これらの生分解性樹脂では、環境破壊を生ぜず環境負荷の少ない樹脂成形品が提供されることとなる。
【0042】
また、消しゴムに用いられる基材としては、例えば、天然ゴム、各種合成ゴムを用いることができ、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0043】
本実施形態の字消しには可塑剤、軟化剤を適宜用いる。
【0044】
可塑剤としては、プラスチック字消しの基材樹脂を可塑化する可塑剤であればフタル酸系、トリメリット酸系、ポリエステル系、エポキシ系、リン酸系、アジピン酸系、セバシン酸系、アセライン系、クエン酸系、スルホン酸系などの可塑剤であれば好適に用いることができ、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0045】
軟化剤としては鉱物油系、植物油系のいずれも使用できるが、特にプロセスオイルが好適である。
【0046】
さらに、必要に応じて、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、シリカ、珪藻土、酸化マグネシウム、タルク、セリサイト、石英粉末、モンモリロナイト、ホタテ、カキ、しじみなどの貝殻粉末などの充填剤、有機中空粒子、無機中空粒子及び有機・無機顔料、染料などの着色材、香料、安定剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防カビ剤などの他の添加物も適宜任意に使用することが可能である。
【0047】
さらに、インキ等を溶解する溶剤を内包したマイクロカプセルや、インキ筆跡などを摩消する研磨剤を添加することにより、鉛筆筆跡以外の消去も可能な字消しとすることができる。
【0048】
また、本実施形態の特徴的な構成材料である磁性粉としては、鉄、コバルト、ニッケル単体もしくはそれらの合金、フェライトなどの粉体が用いられる。
【0049】
これら磁性粉の上記主要構成材料に対する配合量は、構成材料全体の1~50重量%に設定され、より好ましくは、15~30重量%に設定される。磁性粉の配合量がこのような範囲に設定されるのは、磁性粉の配合量が構成材料全体の1重量%よりも少ないと、消し屑dが後述する消し屑収集部3の永久磁石100に有効に磁気吸着されず、逆に50重量%よりも多いと、字消し1本来の有効な消字性能が得られないからである。
【0050】
上記のような構成材料からなる字消し1は、従来の字消しの一般的な製造方法がそのまま実施可能で、構成材料が混練された後、押出成形、射出成形、注型成形、プレス成形等により成形され、上述した所定の形状寸法に裁断されて製品とされる。
【0051】
字消しケース2は、上記字消し1を前後方向へ移動可能に収納保持するものであって、具体的には、ケース本体4と上記消し屑収集部3(後述する永久磁石6を除く。)とが一体成形されてなるプラスチック製の射出成形品である。
【0052】
上記ケース本体4は、上記字消し1の外周面を摺動可能に保持するもので、具体的には、字消し1が直方体形状とされており、その外周面を摺動可能に囲繞保持する前後開放型の矩形筒体形状とされている。
【0053】
上記消し屑収集部3は、ケース本体4の外周部に設けられ、上記字消し1の消し屑d、d、…を磁気吸着により収集する構成とされている。
【0054】
上記消し屑収集部3は、具体的には、上記ケース本体4に対して上下方向へ弾性変形可能な板状体5と、この板状体5の片側表面(図示の場合は外側表面5c)に装着された永久磁石6とからなる。図示の実施形態においては、永久磁石6が上記板状体5の外側表面5cに装着されている。
【0055】
板状体5は、
図1に示すように、直方体形状の字消し1の4つの外周側面の一つ1a、換言すれば、字消し1の上記外周側面に対応する上記ケース本体4の外周面4aに設けられている。
【0056】
上記板状体5は、上記ケース本体4の外周面4aに対して所定の傾斜角度αをもって直線状に延びて形成されており(
図2(b))、具体的には、板状体5の基端部5aがケース本体4の外周面4aの前後方向一端部に一体接続されるとともに、その先端部5bが上記外周面に対して所定の間隔Hをもって離隔位置する解放端部とされている。
【0057】
図示の実施形態の板状体5は、その基端部5aがケース本体4の外周面4aの前端部に一体接続されて、ケース本体4に対して、その前側から後側に向けて斜め上方へ直線状に延びる形態とされている。
【0058】
上記板状体5の解放端部5bのケース本体4の外周面4aに対する間隔Hは、板状体5の弾性変形範囲を規定するもので、解放端部5bをこの範囲Hで押圧移動させることにより、板状体5の弾性変形による所定の弾性復帰力P(
図3(a))が得られる構成とされている。
【0059】
上記永久磁石6は、上記板状体5の外側表面5cに貼着された薄板状のマグネットシートの形態とされている。この種の永久磁石6は、その形状寸法から、ブロック状の形態の永久磁石に比較して磁力は大きくなく、本実施形態のように、磁性粉を含む字消し1の磁性化された消し屑d、d、…を直接的に磁気吸着する永久磁石として好適なものである。
【0060】
また、永久磁石6の吸着面6aに磁気吸着された消し屑d、d、…は、上記板状体5の弾性変形による弾性復帰力Pにより、永久磁石6の吸着面6aから離脱除去するという動作メカニズムを備えるので、板状体5上に装着される永久磁石6としては、小型軽量であることが望ましく、この点からも永久磁石6が薄板状のマグネットシートの形態であることが好適である。
【0061】
永久磁石6の吸着面6aの磁力は、上記板状体5の弾性復帰力Pとの関係で選択設定されるところ、この板状体5の弾性復帰力Pは、板状体5の設置構造、具体的には、板状体5の形状寸法、板状体5のケース本体4の外周面4aに対する傾斜角度αおよび板状体5の弾性変形範囲を規定する上記解放端部5bのケース本体4の外周面4aに対する間隔H等により設定される。
【0062】
実際には、上記永久磁石6の磁力と板状体5の設置構造は、後述する消し屑収集部3による消し屑d、d、…の収集除去動作(
図3参照)の繰り返し試験を通じて設定される。
【0063】
また、上記消し屑収集部3の動作構造(動作メカニズム)に関連して、上記消し屑収集部3の両側部に一対のガイド部7、7が立ち上げ形成されている。
【0064】
これら一対のガイド部7、7は、上記消し屑収集部3の両側部において、上記ケース本体4から垂直に立ち上げ形成されて、手指による上記消し屑収集部3の板状体5の弾性変形操作を案内する構成とされている。
【0065】
図示の実施形態の消し屑収集部3においては、上記ガイド部7、7は、上記ケース本体4から垂直に立ち上がる矩形状のガイド板の形態とされ、板状体5の基端部5aの両側端部8、8が上記一対のガイド部7、7の前端基部に一体結合されるとともに、上記解放端部5bが上記一対のガイド部7、7の後端部の上端縁7a、7aに対応した高さ位置なるように設定されている。
【0066】
しかして、以上のように構成された字消し1において、その使用に際して、使用者は、手指にて字消しケース2を保持して、鉛筆やシャープペンシル等の筆記具で書かれた紙面等の文章の文字や図形の線などの誤字や誤記などを消去する(消字使用)。
【0067】
この字消し1の使用により生じた消し屑d、d、…は、紙面等の上に散乱することになるが、これら消し屑d、d、…には磁性粉が含有されて磁性化されており、字消しケース2に装備された消し屑収集部3の磁気吸着作用により収集除去することができる。
【0068】
すなわち、字消し1の使用により生じた消し屑d、d、…を清掃する時には、字消しケース2の消し屑収集部3を紙面等に散乱する消し屑d、d、…に近づけることで、これら消し屑d、d、…は、収集部3の永久磁石6の磁気作用で、永久磁石6の吸着面6aに磁気吸着されて収集される。
【0069】
このようにして上記永久磁石6の吸着面6aに収集してまとめた消し屑d、d、…は、ゴミ箱等の捨て場所において上記永久磁石6から離脱させて、落下除去する。
【0070】
これら永久磁石6に磁気吸着された消し屑d、d、…の離脱除去は、上記板状体5の弾性変形による弾性復帰力Pにより行う。
【0071】
具体的には、
図3(a)に示すように、字消しケース2を保持する手指(図示例の場合は親指)にて、板状体5の解放端部5bをケース本体4の外周面4a方向へ押圧変形(近接動作)することで、板状体5は基端部5aを起点として円弧状に弾性変形する。
【0072】
この板状体5の弾性変形状態において、手指を上記解放端部5bから外すことにより、板状体5は、この円弧状の弾性変形状態が解除されて元の直線状態に戻ろうとし、このときの板状体5の弾性復帰力Pにより、永久磁石6の吸着面6a上に磁気吸着されていた消し屑d、d、…が磁気吸着力に抗して離脱し、落下除去される。
【0073】
以上詳述したように、本実施形態の字消しケース2によれば、磁性粉入り字消し1を前後方向へ移動可能に収納保持するものであって、上記字消し1の外周面を囲繞保持するケース本体4と、このケース本体4の外周部に設けられ、上記字消し1の消し屑d、d、…を磁気吸着する消し屑収集部3とを備え、この消し屑収集部3は、上記ケース本体4に対して弾性変形可能な板状体5と、この板状体5の片側表面である外側表面5cに装着された永久磁石6とからなり、この永久磁石6に磁気吸着された消し屑d、d、…が、上記板状体5の弾性変形による弾性復帰力Pにより、上記永久磁石6から離脱除去される構成とされているから、以下に列挙するような特有の効果が発揮される。
【0074】
(a)磁性粉入りの字消し1の外周面を囲繞保持するケース本体4の外周部に設けられた消し屑収集部3は、上記ケース本体4に対して弾性変形可能な板状体5と、この板状体5の外側表面5cに装着された永久磁石6とからなるから、部品点数が少なくて、構造も小型かつ簡素であり、製造コストを低く抑えることができ、字消しの消し屑収集具として最適な構造である。
【0075】
(b)消し屑収集部3の永久磁石6に磁気吸着された消し屑d、d、…が、上記板状体5の弾性変形による弾性復帰力Pにより、上記永久磁石6から離脱除去される構成とされているため、永久磁石6の磁力は比較的弱くて良く、永久磁石6の小型軽量化が可能で、上記(a)の効果との相乗効果により、より安価な構造を実現することができる。
【0076】
特に、永久磁石6が板状体5の外側表面5cに装着されて、消し屑d、d、…が上記永久磁石6に直接磁気吸着する構造とされていることにより、永久磁石6の磁力はさらに弱く設定することができて、永久磁石6のさらなる小型軽量化が実現し、より軽量で安価な構造実現に顕著な効果を発揮する。
【0077】
(c)消し屑収集部3の永久磁石6に磁気吸着された消し屑d、d、…が、上記板状体5の弾性変形による弾性復帰力Pにより、上記永久磁石6から離脱除去される構成とされているから、消し屑d、d、…の収集除去に際して、手指等により板状体5を一定の範囲で弾性変形させて、その変形力を解除するだけで、消し屑d、d、…の離脱除去と同時に消し屑収集部3が元の状態に自動復帰するため、ワンタッチの1動作で消し屑d、d、…の収集除去が行え、取扱いが容易である。
【0078】
実施形態2
本実施形態は
図4および
図5に示されており、字消しケース2の消し屑収集部3の具体的構造が改変されたものである。
【0079】
本実施形態の消し屑収集部3において、その基本構成は実施形態1と同様である。
【0080】
すなわち、上記消し屑収集部3は、上記ケース本体4に対して上下方向へ弾性変形可能な板状体5と、この板状体5の外側表面5cに装着された永久磁石6とからなる。
【0081】
上記板状体5は、上記ケース本体4の外周面4aに対して所定の傾斜角度αをもって、その前側から後側に向けて斜め上方へ直線状に延びて形成されており、板状体5の基端部5aがケース本体4の外周面4aの前端部に一体接続されるとともに、解放端部5bが上記外周面に対して所定の間隔Hをもって離隔位置している。
【0082】
そして、この解放端部5bをこの範囲Hで押圧移動させることにより、板状体5の弾性変形による所定の弾性復帰力P(
図3(a))が得られ、この弾性復帰力Pにより、永久磁石6の吸着面6aに磁気吸着された消し屑d、d、…は、永久磁石6の吸着面6aから離脱除去される構成とされている。
【0083】
上記消し屑収集部3の両側部に立ち上げ形成される一対のガイド部7、7は、上記ケース本体4から垂直に立ち上がるガイド板の形態とされるとともに、その輪郭形状が、
図5(b)に示すごとく、上記板状体5の常態における傾斜構造に対応して形成されている。
【0084】
つまり、上記一対のガイド部7、7は、その上端縁7a、7aが上記板状体5の常態における傾斜角度αに対応して、その前側から後側に向けて斜め上方へ直線状に延びて形成されている。
【0085】
換言すれば、板状体5は、その基端部5aの両側端部8、8が上記一対のガイド部7、7の前端部に一体結合されるとともに、上記解放端部5bが上記一対のガイド部7、7の上端縁7a、7aの後端に対応した高さ位置なるように設定されている。これにより、一対のガイド部7、7が、手指による上記消し屑収集部3の板状体5の弾性変形操作を案内する。
その他の構成および作用は実施形態1と同様である。
【0086】
なお、上述した実施形態1および2はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく、その範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0087】
例えば、図示の実施形態1および2においては、板状体5が、その基端部5aがケース本体4の外周面4aの前端部に一体接続されて、ケース本体4に対して、その前側から後側に向けて斜め上方に直線状に延びる形態とされているが、これと逆の構成、つまり、具体的には図示しないが、板状体5の基端部5aがケース本体4の外周面4aの後端部に一体接続されて、ケース本体4に対して、その後側から前側に向けて斜め上方に直線状に延びる形態とされてもよい。
【0088】
この場合、図示の実施形態のケース本体4は、直方体形状の字消し1を前後方向に摺動可能に保持する前後開放型の矩形筒体形状とされているから、製造販売者側または購入使用者側のいずれにおいても、ケース本体4の前後方向を逆転して使用することで、図示例の場合と逆使用とすることが可能である。
【0089】
また、図示の実施形態1および2においては、永久磁石6が板状体5の解放端部5bの外側表面5cに装着されているが、目的に応じて、上記永久磁石6が上記板状体5の解放端部5bの裏側表面に装着されてもよい(図示省略)。
【0090】
この場合、板状体5の解放端部5bの裏側表面に装着された永久磁石6の磁力が、板状体5を介して、板状体5の外側表面5cに作用して、字消し1の消し屑d、d、…を間接的に磁気吸着する構成となる。
【符号の説明】
【0091】
1 字消し
2 字消しケース
3 消し屑収集部
4 ケース本体
5 板状体
5a 板状体の基端部
5b 板状体の先端部(解放端部)
5c 板状体の外側表面
6 永久磁石
6a 永久磁石の吸着面
7 ガイド部
7a ガイド部の上端縁
8 板状体の基端部の両側端部
d 消し屑
α 板状体の傾斜角度
P 板状体の弾性復帰力