(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】染着除去剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/36 20060101AFI20230823BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20230823BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230823BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230823BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/41
A61K8/73
A61Q5/00
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2019194466
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】横山 亮太
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-226358(JP,A)
【文献】特開2012-126667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
ラウリン酸カリウム
(B)モノエタノールアミン
(C)
カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる1種以上
を含有し、前記(A)成分の含有量が0.2~0.3質量%であり、前記(B)成分の含有量が0.4~0.6質量%であり、前記(C)成分の含有量が3~4質量%である染着除去剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染着除去剤に関し、特に酸性染料を含有した染毛料を使用する際に、頭皮、手、肌などに付着した染料の汚れを除去するための染着除去剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を染毛する手段として、酸性染料を含有したヘアマニキュアや塩基性染料を含有したカラートリートメントなどの使用があるが、中でもヘアマニキュアに含有されている酸性染料は皮膚に染着しやすい。
【0003】
従来、皮膚に染着した染毛料の汚れを落とすためには、有機溶剤を含む染着除去剤、あるいは石鹸液やシャンプーなどが使用されてきたが、それらの多くは液状であり、使用する際にはティッシュやコットンなどに含浸させて染着部分を何度もこすり取るという方法が一般的である。しかし、皮膚に染着した染毛料の汚れをこすり取る方法は、皮膚へ摩擦による刺激を与えるという欠点がある。
【0004】
特許文献1の染着除去剤は液状であるため、使用する際にはティッシュやコットンなどに含浸させ、染着部分に当てて、しばらく放置する必要があり、コットンからの液垂れが懸念され含浸量は少なくなり、染着除去は弱くなってしまう。そこで、製剤の粘度を高め、染着部に十分な量を塗布し、たれ落ちを防ぐことができる染着除去剤の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、酸性染料の染着除去、経時安定性、刺激性およびたれ落ちのなさ(以下、使用性とする)に優れる染着除去剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、脂肪酸石鹸、水溶性セルロース誘導体およびモノエタノールアミンを含有する染着除去剤が、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、酸性染料の染着除去、経時安定性、刺激性および使用性に優れる染着除去剤を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、酸性染料の染着除去の観点から、(A)脂肪酸石鹸を含有する。
【0010】
本発明で用いられる前記(A)成分としては、特に限定されないが、炭素数12以上の脂肪酸塩が好ましい。
【0011】
本発明で用いられる炭素数12以上の脂肪酸としては、特に限定されないが、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸およびヤシ油脂肪酸等が挙げられる。脂肪酸の対イオンとしては、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属やトリエタノールアミン等の有機アミン等が挙げられる。
【0012】
本発明で用いられる前記(A)成分のうち、酸性染料の染着除去の観点から、好ましくはラウリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウムおよびミリスチン酸カリウムであり、より好ましくはラウリン酸カリウムである。
【0013】
本発明で用いられる前記(A)成分の含有量は、好ましくは0.1~0.4質量%、より好ましくは0.2~0.3質量%がよい。前記(A)成分の含有量が0.1質量%未満の場合、酸性染料の染着除去効果が得られない恐れがある。前記(A)成分の含有量が0.4質量%を超える場合、経時安定性が悪くなる恐れがある。
【0014】
本発明は、酸性染料の染着除去および刺激性の観点から、(B)モノエタノールアミンを含有する。
【0015】
本発明で用いられる前記(B)成分の含有量は、好ましくは0.1~1.2質量%、より好ましくは0.2~0.8質量%、さらに好ましくは0.4~0.6質量%がよい。前記(B)成分の含有量が0.1質量%未満の場合、酸性染料の染着除去効果が得られない恐れがある。前記(B)成分の含有量が1.2質量%を超える場合、刺激が出る恐れがある。
【0016】
本発明は、使用性の観点から、(C)水溶性セルロース誘導体を含有する。
【0017】
本発明で用いられる前記(C)成分としては、特に限定されないが、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。
【0018】
本発明で用いられる前記(C)成分のうち、使用性の観点から、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウムおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、より好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0019】
本発明で用いられる前記(C)成分の含有量は、好ましくは2.5~4質量%、より好ましくは3~4質量%がよい。前記(C)成分の含有量が2.5質量%未満の場合、組成物の粘度が足りず使用性が悪くなる恐れがある。前記(C)成分の含有量が4質量%を超える場合、組成物の粘度が大きくなり伸びが悪くなる恐れがある。
【0020】
本発明の染着除去剤は前記必須成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品および医薬品等に用いられる各種成分、例えば、紛体、ビタミン類、キレート剤、pH調整剤、増粘剤、油性成分、保湿剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、酸化防止剤、還元剤、植物性抽出液、生薬抽出物、香料、防腐剤、色素、顔料、紫外線吸収剤、界面活性剤等から選ばれる少なくとも1種以上を含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものではない。
【0021】
本発明で染着除去する酸性染料としては、特に限定されないが、例えば、黒色401号、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色 106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、赤色201号、赤色206号、赤色227号、赤色230号、赤色231号、赤色232号、橙色205号、橙色207号、黄色202号、黄色203号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、青色202号、青色203号、青色205号、褐色201号、褐色201号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、橙色403号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色406号、黄色407号、緑色401号、緑色402号、紫色401号等が挙げられる。
【0022】
本発明における染着除去剤の20℃条件下によるpHは、特に限定されないが好ましくはpH10~12であり、より好ましくはpH10.5~11.5である。
【0023】
本発明における染着除去剤の20℃条件下によるpHは、常法にて調製して得られた染着除去剤をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃条件下で24時間放置した後に、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(F-71、堀場製作所製)にて原液のpHを測定し得られるものである。
【0024】
本発明による染着除去剤の20℃条件下による粘度は、特に限定されないが、使用性の観点から、好ましくは5,000~200,000mPa・s、より好ましくは、100,000~200,000mPa・sがよい。粘度が5,000mPa・s未満の場合、手のひらからたれ落ちやすくなる恐れがある。粘度が200,000mPa・sを超える場合、伸びが悪くなる恐れがある。
【0025】
本発明における20℃条件下による粘度は、常法にて調製して得られた染着除去剤をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃条件下で24時間静置した後に、ヘリカルスタンド付B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、M4号ローターを用いて20℃条件下において3rpmで1分間、粘度が100,000以上200,000mPa・s未満の場合はM4号ローターを用いて20℃条件下において3rpmで2分間、回転させた後に測定したものである。
【0026】
本発明の染着除去剤は、液状、ジェル状、クリーム状等の形態で用いられ、チューブ容器等に充填され、使用時まで保存される。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0028】
本明細書に示す評価試験において、染着除去剤に含まれる成分、およびその含有量を種々に変更しながら実施した。各成分の含有量を示す単位はすべて質量%であり、これを常法にて調製した。
【0029】
「染着除去」
表1に記載の酸性染毛料0.2gをヒトの上腕部に1cm四方に塗り、5分間放置した後シャンプーで洗浄した。
【0030】
【0031】
実施例および比較例で得られた各染着除去剤については、染着部に0.2g塗布し5分間放置した後に塗布部を軽く指でなじませ、シャンプーで洗浄した。
【0032】
<評価基準>
○:ほぼ染着除去できた
△:やや染着除去できた
×:ほとんど染着除去できなかった
【0033】
「経時安定性」
実施例および比較例で得られた各染着除去剤を、50℃および5℃で1ヶ月間保存したものについて目視にて評価した。
【0034】
<評価基準>
○:全く問題なし
△:析出が見られるが、使用上問題なし
×:析出が多く、使用できない
【0035】
「刺激性」
実施例および比較例で得られた各染着除去剤を、上腕部に1cm四方に0.2g塗布し5分間放置後、肌に対する刺激を官能評価した。
【0036】
<評価基準>
○:刺激を感じない
△:やや刺激を感じる
×:刺激を感じ、使用上問題がある
【0037】
「使用性」
実施例および比較例で得られた各染着除去剤を、上腕部に1cm四方に0.2g塗布し、5分間静置しながらたれ落ちを目視にて観察した。
【0038】
<評価基準>
○:たれ落ちがない
△:ややたれ落ちがみられる
×:たれ落ちる
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
実施例18を使用して各試験を行っても、酸性染料の染着除去、経時安定性、刺激性および使用性のいずれの評価も良好であった。
【0043】
<実施例18>
成分 含有量(質量%)
(A)ラウリン酸カリウム 0.2
(B)モノエタノールアミン 0.5
(C)カルボキシメチルセルロースナトリウム 3.0
エデト酸四ナトリウム四水塩 0.2
1,3-ブチレングリコール 3.0
グリセリン 2.0
精製水 91.1
合計 100.0
【産業上の利用可能性】
【0044】
本願発明によれば、酸性染料を配合した染毛料を使用する際に、頭皮、手、肌などに付着した染着性の汚れを除去するための染着除去剤に関して、染着除去、経時安定性、刺激性および使用性に優れる染着除去剤を提供できる。