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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】工事用締付具
(51)【国際特許分類】
   E04G 17/02 20060101AFI20230823BHJP
   E04G 17/075 20060101ALI20230823BHJP
   F16B 37/04 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
E04G17/02 C
E04G17/075 A
F16B37/04 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019195397
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021067138
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591123034
【氏名又は名称】タイガー産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】島袋 盛義
(72)【発明者】
【氏名】新垣 安彦
(72)【発明者】
【氏名】北岡 茂樹
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-003168(JP,A)
【文献】特開平06-033929(JP,A)
【文献】特開2019-173972(JP,A)
【文献】実開平04-134349(JP,U)
【文献】特開2014-092224(JP,A)
【文献】実開昭61-055508(JP,U)
【文献】実開平04-048354(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 17/02
E04G 17/075
F16B 37/04
E04G 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持部材とナットとを備えた工事用締付具であって、
上記保持部材に対して、上記ナットが自由回転可能に連結されている工事用締付具であって、
前記ナットは、ナット本体部と、該ナット本体部の底面に延設された連結部とを備え、
前記保持部材には、通し穴が設けられ、
前記ナットの連結部は、前記通し穴に挿入される筒状の挿入片と、前記保持部材の内壁面に隣接するアンカー片とを有し、
前記ナットの雌ネジ孔は前記挿入片の内径より小径である、
工事用締付具。
【請求項2】
前記保持部材において、前記通し穴の前記内壁面の周縁はテーパー面である、
請求項1に記載の工事用締付具。
【請求項3】
前記保持部材の重心は、前記通し穴の中心とは該保持部材の長辺方向において一致していない、
請求項1又は2に記載の工事用締付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート壁を構築するための工事に用いる締付具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、丸形または角形の単管パイプ(バタ材)に当接し該単管パイプをコンクリート型枠に保持する保持部材と、該保持部材を保持するボルト軸と、該ボルト軸を被挿する弾性部材および管とを有し、保持部材は、ボルト軸を挿通させる貫通孔と、該貫通孔の両側または片側に単管パイプと当接する当接部を有し、該当接部は、直線部を備え、両側または片側の端部が単管パイプ側に折り曲げられて突出し、直線部の長手方向の長さが、保持される単管パイプが当接部に当接した時の当接長さよりも長い、単管パイプの取付方法に用いる締付具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
締付具によれば、ボルト軸を被挿する弾性部材および管を備えていることによって、型枠に単管パイプを取り付ける際に、該締付具を締め過ぎる虞がなく、取り付ける単管パイプが1本であっても、型枠に安定に取り付けでき、単管パイプを長さ方向一直線状に型枠に容易に取り付けられる。
【0004】
しかし、締付具を用いて型枠の内側面に配置されたピーコン(コーン)とネジ結合したボルト軸に対し、1本または上下2本の単管パイプ(バタ材)を挟んで、保持部材をその外側面からナットにより取り付ける際に、該保持部材が単管パイプの直前付近に到達する迄の間、作業者は、片手で前記保持部材を垂直姿勢に掴み、且つもう一方の片手で前記ナットを工具により回転して締め付ける、という煩雑で多大な労力を強いられる。引いては、疲労による安全性の低下を招いたり、型枠工事の能率を損ねたりとう問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-206936号公報(第1~15頁、図3~11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、背景技術で説明した問題点を解決し、型枠の内側面に配置されたコーンとネジ結合したボルトに対し、バタ材を挟んで、保持部材をその外側面からナットにより取り付ける際に、作業者の片手によるナットを回す作業のみで型枠を締め付けできる工事用締付具を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、保持部材に対して、ナットを自由回転可能に連結する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明の工事用締付具は、保持部材とナットとを備えた工事用締付具であって、前記保持部材に対して、前記ナットが自由回転可能に連結されている、ことを特徴とする。
【0008】
このように規定さえる締付具によれば、以下の効果(1)、(2)が得られる。
(1)保持部材に対して、ナットが自由回転可能に連結されているので、作業者は、片手でナットをスパナなどの工具で回転させる簡単な操作によって、保持部材を型枠の外側面に沿って水平姿勢で配置したバタ材に容易且つ迅速に当接させて締め付けることが可能となる。
(2)上記効果(1)に起因して、型枠による工事を安全に且つ短期間で能率良く行うことが可能となる。
【0009】
尚、工事は、コンクリート製の壁や柱を構築する際に、互いに平行に垂設された一対の型枠の外側において、各型枠の外側面に沿って水平姿勢で配置された上下一対の角形または丸形のバタ材同士の間を貫通するボルトにネジ結合して該バタ材を保持する保持部材を含む締付金具と、一対の型枠間で各型枠の内側面に配置されたコーン同士間をネジ結合するセパレータ(タイボルト)とによって、上記一対の型枠同士間の間隔を一定に維持した状態で、これらの間に生コンクリートを充填し、且つ養生させるコンクリート打設工事である。
また、保持部材は、例えば、金属板を曲げ加工して、全体がほぼ直方体形状、あるいは、正面視および背面視が長方形状で且つ側面視が円弧形状または扁平な山形形状を呈する箱状体であり、後述するように、その外側面と内側面との間を貫通する通し穴を有している。
【0010】
更に、ナットは、例えば、六角ナットまたは角形ナットであるナット本体と、該ナット本体の底面から当該ナット本体を貫通する雌ネジ穴と同軸心で延びた後述する連結部とを備えている。
また、工事に用いる型枠は、例えば、厚手の合板と、その外側面に垂直方向に沿ってほぼ等間隔状に固定した複数の木製角材とからなるものである。
加えて、工事に用いるバタ材は、角形または丸形鋼管、あるいは、これらと同様な断面形状を有するアルミニウム合金の押出形材などである。
【0011】
また、本発明の第2の局面による工事用締付具は、前記ナットは、ナット本体部と、該ナット本体部の底面に延設された連結部とを備え、前記保持部材には、通し穴が設けられ、上記ナットの連結部は、上記通し穴に挿入される挿入片と、上記保持部材の内壁面に隣接するアンカー片とを有する。
これによれば、ナットは、そのナット本体の底面から雌ネジ穴の開口部を囲み且つ軸方向に沿って延びた挿入片が、保持部材に設けられた通し穴に挿入れると共に、挿入片の先端側からほぼ径方向に沿って張り出したアンカー片が、保持部材の内壁面に隣接している。そのため、ナットは、保持部材に対し、自由な回転が可能にして連結されている。従って、既述の効果(1)が確実に得られ、引いては、既述の効果(2)を奏することも可能となる。
【0012】
尚、ナット本体部の内周面には雌ネジ穴が螺設されている。連結部はナット本体部の雌ネジ穴に連通し、ナット本体部の底面において雌ネジ穴の周縁から延設される。ナットにはボルトが螺合されるので、連結部は雌ネジ穴と同軸であり、かつその内周径は雌ネジ穴の谷部の径と同一かそれ以上とする。連結部はナット本体と一体成形されたものでも別体のものでもよい。
連結部の挿入片の外周径は保持部材の通し穴の内周径より小さく、これにより前者は後者に対して自由嵌めの状態である。
アンカー片は挿入片の先端側を塑性変形したものが好ましい(第3の局面)。部品点数の増加を抑え、かつナットと保持部材との連結をカシメ等の方法で簡易に実行するためである。
【0013】
筒状の挿入片の先端側をそのまま保持部材の内壁面に沿うように塑性変形してなるリング状のアンカー片の他、筒状の挿入片の先端側に複数の切れ込みを入れて、保持部材の内壁面に沿うように塑性変形してなる放射状のアンカー片もある。
アンカー片を挿入片と別体としてもよい。
アンカー片とナット本体部の底面との距離は保持部材の厚さより、少し長くして、アンカー部及びナット本体部の裏面と保持部材との接触抵抗を小さくし、ナットと保持部材との自由回転を確保する。
【0014】
アンカー片を塑性変形する場合、保持部材の通し穴の内壁面側の周縁をテーパー面とすることが好ましい(第4の局面)。連結部の先端部を保持部材の内壁面に沿わせて塑性変形してアンカー部とするとき、このテーパー面により連結部と保持部材の通し穴との芯合わせがなされる。これにより、ナットと保持部材の連結構造が安定する。更には、テーパー面によりアンカー部と保持部材との接触面積が大きくなるので、当該接触部分の耐久性が向上し、ひいては繰り返し使用される工事用締付具として好適となる。
加えて、本発明の第5の局面による工事用締付具は、前記保持部材の重心は、前記通し穴の中心とは該保持部材の長辺方向において一致していない。
【0015】
これによれば、通し穴の中心よりも、保持部材の重心が下側に位置するような保持部材とすることにより、該保持部材を作業者が掴むことなく、垂直姿勢にして保ちつつ、バタ材側に接近ないし当接させることができる。
尚、保持部材の重心が、通し穴の中心とは該保持部材の長辺方向において一致しない形態には、通し穴の中心を保持部材の長辺方向における中央よりも何れか一端側に偏寄させた形態、あるいは、通し穴の中心を保持部材の長辺方向における中央部に設け、且つ何れか一端側の重量を他端側よりも大きくした形態が例示される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の工事用締付具の使用状態を示す部分垂直断面図である。
図2】(A)は、締付具の斜視図、(B)は、(A)中のB-B線に沿った断面図である。
図3】(A1)~(A3)は、締付具を構成するナットの相互に異なる視角からの斜視図または底面図、(B1),(B2)は、ナットの製造工程の概略図、(B3)は、(B2)中の部分拡大図である。
図4】(A)、(B)は、異なる形態の保持部材を含む工事用締付具を示す斜視図と側面図である。
図5】2形態の前記締付具におけるナット付近の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による工事用締付具(以下、単に締付具と称する)1の使用状態を示す部分垂直断面図である。
工事は、例えば、コンクリート壁を構築する場合、図1に示すように、所要の位置に平行に垂設された左右一対(右側は図示せず)の型枠15の外側において、各型枠15の外側面に垂直に固定された複数の角材14と直交し且つ水平姿勢で配置された上下一対の角形鋼管のバタ材13同士の間を貫通するボルト12にネジ結合して、バタ材13を保持する保持部材2を含む本発明の締付具1と、一対の型枠15間で各型枠15の内側面に配置されたコーン16同士間をネジ結合するセパレータ(タイボルト)18とにより、一対の型枠15同士間の間隔を維持した状態で、該間隔内に生コンクリート(図示せず)を充填した後、コンクリートになるように養生が行われる。
【0018】
型枠15の外側面には、木製の角材14が複数本垂直方向に沿ってほぼ等間隔に固定され、角材14同士間ごとにボルト12が配置されている。
尚、各コーン16は、隣接する型枠15を貫通する小径のボルト17によって、同じ側のボルト12と個別にネジ結合している。
また、ボルト12の外側端には、締付具1の脱落を防ぐため、大径の円盤12aが一体に設けられている。
【0019】
締付具1は、図2(A),(B)に示すように、正面視がほぼ長方形状で且つ側面視が扁平な円弧形状を呈する保持部材2と、該保持部材2の頂部付近において自由回転可能に連結されたナット7とを備えている。
保持部材2は、例えば、厚みが約2mmの金属板をプレス(図示せず)により所定の形状に打ち抜き加工した後、折り曲げ加工したもので、上下一対の傾斜辺2a,2bと、これらの上端または下端から斜めに延びた上下一対のフランジ3と、これらに囲まれた前後一対の側壁4とを備えている。該側壁4ごとの内側縁5は、垂直な直線で構成され、該直線の長さは、図1で示したように、上下一対のバタ材12の縦寸法とボルト10の外径との総和よりも大とされている。
【0020】
また、上下一対のフランジ3は、本締付具1を締め付けた際に、図1で示したように、上下一対のバタ材12の上面あるいは下面に近接する。
更に、上下一対の傾斜辺2a,2b間の頂部には、水平方向に沿った通し穴6が穿設されている。該通し穴6を介して、これを有する保持部材2に対して、ナット7が自由回転可能に連結されている。通し穴6における保持部材2の内側面2c側の周縁には、円錐形状のテーパー面6aが位置している。
また、一対の側壁4の中央部ごとには、外側にカーブして張り出した膨出部4aが前後対称に位置している。
加えて、保持部材2の重心は、通し穴6の中心とは、一致していない。そのため、例えば、図2(B)に示すように、下方側となる傾斜辺2bの内側面2cに重しwを溶接付けしておくか、あるいは、後述すいるように、傾斜辺2bの長さを傾斜辺2aの長さよりも長くした形態としている。
【0021】
ナット7は、図3(A1),(A2)に示すように、通常の六角ナットと同様の雌ネジ穴nを有するナット本体8と、該ナット本体8の底面から雌ネジ穴nの軸方向に沿って延設された連結部9とを備えている。該連結部9は、後述するように、保持部材2の通し穴6に挿入される円筒形状の挿入片10と、該挿入片10の先端側からほぼ径方向で且つ若干斜め方向に延びた円環(リング)形状のアンカー片11とからなる。該アンカー片11は、保持部材2の貫通穴6のテーパー面6aに隣接している。
尚、ナット本体8の底面と保持部材2との間、通し穴6の内周面と挿入片10の外周面との間、および、アンカー片11と傾斜辺2a,2bの内側面2cとの間には、後述するように、それぞれ最小限の隙間(クリアランス)が設定されている。
【0022】
ナット7を含む締付具1は、例えば、以下のような方法にて製造される。
予め、図3(B1)に示すように、ステンレス鋼の棒素材を温間鍛造によって六角柱体のナット本体8と、該本体8の底面から円筒形に延びた薄肉の筒形部9aとを一体に有するナット中間素材7aを成形する。次いで、中間素材7aのナット本体8の中心軸に沿って、筒形部9aの内径よりも若干小径な貫通孔を穿孔した後、該貫通孔の内周面にタップ加工を施して雌ネジを刻設する。
更に、筒形部9aを保持部材2の通し穴6に挿入した状態で、中間素材7aの筒形部9aの先端側に対し、扁平な円錐形の押し型(図示せず)を該筒形部9aの軸方向に沿って押し付けて塑性加工を施す。
【0023】
その結果、図3(B2),(B3)に示すように、筒形部9aの先端側にほぼ径方向で且つ若干斜め方向に延びた円錐形状のアンカー片11が形成される。
その結果、図2(B)のように、該アンカー片11が保持部材2の貫通穴6のテーパー面6aに隣接すると共に、筒形部9aの基端側は、挿入片10となって図2(B)のように保持部材2の通し穴6内に挿入される。これによって、挿入片10とアンカー片11とからなる連結部9が形成されることで、ナット7が得られると共に、該ナット7が保持部材2に対して、自由回転可能に連結された締付具1が製作される。
【0024】
前記のような締付具1によれば、図1に示すように、予め、スペーサ18の両端とネジ結合したコーン16を内側面に有する左右一対の型枠15を垂設し、各コーン16と個別にネジ結合されたボルト12を、型枠15の外側面に固定された角材14同士間から水平に突出させ、複数のボルト12の上側および下側に沿って上下一対のバタ材13を水平に配置しておく。
かかる状態で、予め、ボルト12ごとの雄ネジに雌ネジnとネジ結合してある締付具1のナット7の本体8を片手で掴んだスパナなどで回転させる。
この間において、保持部材2は、重しwによって、ナット7の回転に同調することなく、傾斜辺2bを下側に位置した垂直姿勢を維持している。
【0025】
ナット7の回転操作によって、該ナット7がバタ材13側に移動するに連れて、該ナット7に押された保持部材2の両側壁4は、それらの内側縁5がバタ材12の外側面に直線状に当接する。
その結果、図1に示したように、ボルト12とネジ結合したナット7によって、保持部材2が上下一対のバタ材13を型枠15側に押すように締め付けることができる。これによって、左右一対の型枠15を、スペーサ18などによる一定の間隔を保ちつつ、互いに強固に連結することができる。
よって、締付具1によれば、効果(1)が得られ、且つ該効果(1)に起因して効果(2)を奏することも容易に理解される。また、効果(3)を併有していることも明らかである。
【0026】
図4(A)、(B)は、異なる形態の保持部材2xを含む締付具1xを示す斜視図と側面図である。
上記締付具1xは、図4(A)、(B)に示すように、ナット7を自由回転可能に連結する保持部材2xを備えている。該保持部材2xは、図示のように、上下一対の傾斜辺2a,2bと、同様の左右一対の側壁4と、を備え、該側壁4ごとの内側縁5には、上下一対の円弧形の凹部r1,r2が形成されている。該凹部r1,r2には、図示しない丸い鋼管のバタ材の外周面が挿入される。また、図示で上側の傾斜辺2aの長さ(丈寸法)L1は、下側の傾斜辺2bの長さL2よりも短い。即ち、ボルト7の連結部9における挿入片10が挿入される通し穴6の中心は、当該保持部材2xの重心(図示せず)よりも上側に位置している。
【0027】
図5は、締付具1、1xにおいて、ナット7と該ナット7に隣接する保持部材2の一部とを示す断面図である。図示のように、ナット7の連結部9のうち、貫通穴6内に挿入される挿入片10は、該貫通穴6の内壁面との間に隙間sを有している。また、連結部9のアンカー片11は、隣接するテーパー面6aとの間に同様の隙間sを有している。更に、ナット本体8の底面と保持部材2の傾斜辺2a,2bとの間に前記同様の隙間sが配置されている。これらの隙間sを配置することにより、保持部材2に対して、ナット7を自由回転可能に連結していることが保証されている。
尚、隙間sは、0.10~0.50mmの範囲内で適宜選定される。但し、ナット本体8の底面と保持部材2の傾斜辺2a,2bとの隙間sは、0.05~2.00mmの範囲としても良い。
締付具1xによれば、各型枠15の外側面に固定された複数の角材14に上下一対の丸形鋼管からなるバタ材が水平に配置された場合の型枠工事において、前記効果(1),(2)を得ることが可能となり、且つ前記効果(3)も有する。
尚、通し穴6の中心と保持部材2xの重心とが一致するように、傾斜辺2a,2bの長さL1,L2を同じとし、下側の傾斜辺2bの内側面2cに同様の重しwを固着した形態としても、前記効果(1),(2)を得ることが可能である。
【0028】
本発明は、以上において説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、保持部材2,2xの傾斜辺2a,2bは、側面視で外側に僅かに突出した扁平な三角形状を呈する形態としても良い。
また、保持部材2xにおいて、上下一対のフランジ3を付設した形態としても良い。
【0029】
更に、ナット7のナット本体8は、六角柱に限らず、全体が四角柱を呈する形態としても良い。また、これらのナット本体8の底面には、挿入片10の外側に沿って、保持部材2との接触面積を減らすためのリング状の座を突設した形態としても良い。
加えて、ナット7の連結部9は、挿入片10の軸方向とアンカー片11の径方向とに沿って、2つ以上のスリットが対称に形成された形態としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、型枠の内側面に配置されたコーンとネジ結合したボルトに対し、バタ材を挟んで、保持部材をその外側面からナットにより取り付ける際に、作業者の片手によるナットを回す作業のみで型枠を締め付けできる型枠工事用締付具を提供できる。
【符号の説明】
【0031】
1,1x………型枠工事用締付具
2,2x………保持部材
2c……………保持部材の内側面
6………………通し穴
6a……………テーパー面
7………………ナット
8………………ナット本体
9………………連結部
10……………挿入片
11……………アンカー片
図1
図2
図3
図4
図5