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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】パイプ取り付け用クランプ
(51)【国際特許分類】
   F16B 7/04 20060101AFI20230823BHJP
   E04G 7/14 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
F16B7/04 301M
E04G7/14 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019225264
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021095920
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】397019139
【氏名又は名称】上田技研産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 全宏
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】実公昭11-006050(JP,Y1)
【文献】特開平03-257256(JP,A)
【文献】実公昭45-025747(JP,Y1)
【文献】実開昭49-031116(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 7/04
E04G 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のパイプを直交状態で接続固定するクランプであって、
離隔対向して配置された一対の挟持板と、
前記一対の挟持板の対向する一方側部を互いに近づく方向に締め付けるネジ式締結部材とを備え、
前記一対の挟持板の前記一方側部と反対側の他方側部の各々に、一方のパイプが挿通可能で、周縁開口部が前記一方のパイプの外径よりも短く、前記一方のパイプが挿通されると前記一方のパイプの一部が外方に突出する切欠き部が形成され、
前記切欠き部と前記ネジ式締結部材との間の距離が、前記一対の挟持板の間で且つ前記切欠き部と前記ネジ式締結部材との間に他方のパイプが挿通可能な距離とされ、
前記切欠き部に前記一方のパイプを挿通し、前記一対の挟持板の間で且つ前記切欠き部と前記ネジ式締結部材との間に他方のパイプを挿通し、前記ネジ式締結部材を締め付けることによって前記一方のパイプと前記他方のパイプとを直交状態に接続固定することを特徴とするパイプ用クランプ
【請求項2】
前記切欠き部と前記ネジ式締結部材との間の距離が、前記他方のパイプの外径と略同一である請求項1記載のパイプ用クランプ。
【請求項3】
前記ネジ式締結部材が締結ボルトとナットとを有し、
前記一対の挟持板は一方側部の対向する位置に貫通孔を有し、
前記締結ボルトが前記貫通孔の各々を挿通し、前記締結ボルトの先端にナットが螺合されることによって前記一対の挟持板が互いに近づく方向に締め付けられる請求項1又は2に記載のパイプ用クランプ。
【請求項4】
前記一対の挟持板が長方形状で、
前記一対の挟持板の長手方向一方側にネジ式締結部材が設けられ長手方向他方側の側縁に前記切欠き部の周縁開口部が形成されている請求項1~3のいずれかに記載のパイプ用クランプ。
【請求項5】
前記一対の挟持板の各々が、長手方向一方側の側縁から前記切欠き部に至る部分において分割及び合体可能である請求項4に記載のパイプ用クランプ。
【請求項6】
二分割された挟持板の一方の分割片に形成された第1の凹凸部と、他方の分割片に形成された第2の凹凸部とが係合することによって2つの分離片が合体し、
第1の凹凸部と第2の凹凸部とは前記挟持板の厚み方向からのみ挿脱可能である請求項5に記載のパイプ用クランプ。
【請求項7】
前記一対の挟持板における所定方向一方側にネジ式締結部材が設けられ、所定方向他方側で所定方向に交差する方向一方側の側縁に前記切欠き部の周縁開口部が形成されている請求項1~3のいずれかに記載のパイプ用クランプ。
【請求項8】
水平方向一方側にネジ式締結部材が設けられ、水平方向他方側で鉛直方向上側の側縁に前記切欠き部の周縁開口部が形成され、
鉛直方向最も上側のネジ式締結部材の軸中心が、前記切欠き部の軸中心よりも鉛直方向上方に位置している請求項7記載のパイプ用クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパイプ取り付け用クランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築資材を予め保管しておくための資材テントや、野外イベントなどで設置される仮設ステージなど仮設建物の組立式枠体や建設工事現場における足場などに単管パイプ(以下、「パイプ」と記す。)が広く用いられている。そしてパイプ同士を接続固定する部材として種々のクランプが提案され市販もされている(例えば特許文献1~3など)。
【0003】
図11に、従来のクランプの一例を示す斜視図に示す。この図に示すクランプCLは、2本のパイプPa,Pbを直交状態に接続固定するものであって、2つのクランプ部Caとクランプ部Cbの本体の底部が直交方向に連結されている。2つのクランプ部Ca,Cbは同一の構造を有し、略L字形状で内周面が円弧状の凹部411とされたクランプ本体41と、クランプ本体41の一方端に回動自在に取り付けられ、内周面が円弧状の凹部421とされた蓋体42と、クランプ本体41の他方端に回動自在に取り付けられた締結ボルト43とを備え、蓋体42の他方端には締結ボルト43の先端部分を係合しナット44で締め付けるためのナット受け部422が形成されている。
【0004】
このような構成のクランプCLでは、クランプ本体41の凹部411と蓋体42の凹部421とでパイプPa,Pbを外周を囲み込み締結ボルトBとナットNとで締め付けることでパイプPa,Pbを直交状態に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平08-128194号公報
【文献】特開平10-102765号公報
【文献】特開2000-266014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような構成の従来のクランプCLによれば2本のパイプPa,Pbの接続固定は確実に行うことはできるが、クランプCLを用いてパイプPa,Pbを接続固定して組み立てられた組立体では、パイプPa,Pbの接続部分はクランプ部分41,42がパイプPa,Pbの外周面から外方に突出しているため、例えば、複数のパイプがその外周面が同一平面に接するように配置され、当該複数のパイプ上に平板が取り付けられるとき、平板の表面のクランプ部分に対応する位置に凸部が不可避的に生じる。これを避けるためにはクランプに当たる部分を切り欠いて平板がクランプに当接しないようにする必要がある。
【0007】
また、従来のクランプは部品点数が多くまた重いためパイプの接続組立作業には労力を要していた。
【0008】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、パイプの接続部分においてパイプの一部を覆うことなく2本のパイプを直交状態に接続固定できるクランプを提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的は、従来のクランプに比べて軽量化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成する本発明に係るパイプ用のクランプは、2本のパイプを直交状態で接続固定するクランプであって、離隔対向して配置された一対の挟持板と、前記一対の挟持板の対向する一方側部を互いに近づく方向に締め付けるネジ式締結部材とを備え、前記一対の挟持板の前記一方側部と反対側の他方側部の各々に、一方のパイプが挿通可能で、周縁開口部が前記一方のパイプの外径よりも短く、前記一方のパイプが挿通されると前記一方のパイプの一部が外方に突出する切欠き部が形成され、前記切欠き部と前記ネジ式締結部材との間の距離が、前記一対の挟持板の間で且つ前記切欠き部と前記ネジ式締結部材との間に他方のパイプが挿通可能な距離とされ、前記切欠き部に前記一方のパイプを挿通し、前記一対の挟持板の間で且つ前記切欠き部と前記ネジ式締結部材との間に他方のパイプを挿通し、前記ネジ式締結部材を締め付けることによって前記一方のパイプと前記他方のパイプとを直交状態に接続固定することを特徴とする。
【0011】
前記構成のパイプ用クランプにおいて、前記切欠き部と前記ネジ式締結部材との間の距離が、前記他方のパイプの外径と略同一である構成とするのが好ましい。
【0012】
前記構成のパイプ用クランプにおいて、前記ネジ式締結部材が締結ボルトとナットとを有し、前記一対の挟持板は一方側部の対向する位置に貫通孔を有し、前記締結ボルトが前記貫通孔の各々を挿通し、前記締結ボルトの先端にナットが螺合されることによって前記一対の挟持板が互いに近づく方向に締め付けられる構成としてもよい。
【0013】
前記構成のパイプ用クランプにおいて、前記一対の挟持板が長方形状で、前記一対の挟持板の長手方向一方側にネジ式締結部材が設けられ長手方向他方側の側縁に前記切欠き部の周縁開口部が形成されている構成としてもよい。
【0014】
ここで、前記一対の挟持板の各々が、長手方向一方側の側縁から前記切欠き部に至る部分において分割及び合体可能である構成としてもよい。
【0015】
そして、二分割された挟持板の一方の分割片に形成された第1の凹凸部と、他方の分割片に形成された第2の凹凸部とが係合することによって2つの分離片が合体し、第1の凹凸部と第2の凹凸部とは前記挟持板の厚み方向からのみ挿脱可能である構成としてもよい。
【0016】
また前記構成のパイプ用クランプにおいて、前記一対の挟持板における所定方向一方側にネジ式締結部材が設けられ、所定方向他方側で所定方向に交差する方向一方側の側縁に前記切欠き部の周縁開口部が形成されている構成としてもよい。
【0017】
ここで、水平方向一方側にネジ式締結部材が設けられ、水平方向他方側で鉛直方向上側の側縁に前記切欠き部の周縁開口部が形成され、鉛直方向最も上側のネジ式締結部材の軸中心が、前記切欠き部の軸中心よりも鉛直方向上方に位置している構成としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るパイプ用クランプでは、パイプの接続部分においてパイプの一部を覆うことなく2本のパイプを直交状態に接続固定できる。これにより、クランプで覆われていないパイプの部分に接触するように板状体を取り付けることで、クランプに起因する凸部が板状体に生じることがなく、また従来のようにクランプとの当接を避けるための切欠きを板状体に形成する必要もなくなる。
【0019】
また本発明に係るパイプ用クランプは、従来のクランプに比べて部品点数が少なく軽量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係るクランプC1の正面図及び右側面図
図2図1のクランプC1でパイプP1,P2を挟持した際の正面図及び右側面図
図3】共通のパイプP2上に前後方向に所定間隔でクランプC1で接続固定された複数本のパイプP1上に平板PLを設置した場合の状態図
図4】クランプC1の変形例を示す正面図
図5】第2実施形態に係るクランプC3の正面図及び右側面図
図6図4のクランプC3でパイプP1,P3を挟持した際の正面図及び右側面図
図7図4のクランプC3でパイプP1,P3を挟持した際の上面図
図8】左右方向に離隔して立設された2本のパイプP3の所定高さ位置にクランプC3で水平に接続固定された2本のパイプP1上に平板PLを設置した場合の状態図
図9】その他のクランプC4の形態を示す正面図
図10図9のクランプC4の上面図
図11】従来のクランプを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るパイプ用クランプ(以下「クランプ」と記すことがある。)について図に基づいて説明するが本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0022】
(第1実施形態)
図1に、第1実施形態に係るクランプC1の正面図及び右側面図を示す。図1のクランプC1は、一対の長方形状の挟持板1a,1bと、挟持板1a,1bを連結するボルトBと、ナットNとから構成される。本実施形態ではボルトBとナットNがネジ式締結部材を構成する。
【0023】
挟持板1a,1bは同一形状であるので、代表して挟持板1aについて説明する。挟持板1aは長方形状の板部材であって四隅は丸み処理されている。挟持板1aの上下方向(長手方向)上側の側縁の前後方向(短手方向)中央部には円弧状の切欠き部13が形成され、また挟持板1aの下側の前後方向中央部にはボルトBの軸部が挿通可能な貫通孔14が形成されている。切欠き部13の半径はパイプP1(図2に図示)の半径と同一又は若干大きく、切欠き部13の周縁開口部11の幅DはパイプP1の直径よりも短く設定されている。また切欠き部13の下端から貫通孔14の上端すなわちボルトBの軸部の上端までの距離LはパイプP2(図2に図示)の直径と同一又は若干大きく設定されている。
【0024】
クランプC1は、離隔対向した挟持板1a,1bに形成された貫通孔14にボルトBの軸部が挿通され、ボルトBの軸部の先端にナットNが螺合されて組立られる。
【0025】
図2に示すように、このような構成のクランプC1によってパイプP1とパイプP2とを接続固定する場合、まず、離隔対向した挟持板1a,1bの切欠き部13にパイプP1が左右方向から挿通される。次いで、パイプP2が、パイプP1の下端とボルトBの軸部の上端との間に前後方向から挿通される。この状態ではクランプC1はパイプP1,P2に対して相対移動可能であり、パイプP1,P2の所定の固定位置に移動設置される。なお、パイプP1とパイプP2とのクランプC1への挿通順序は逆にしても勿論かまわない。
【0026】
次いで、クランプC1のボルトBに対してナットNが相対的に締め付けられる。これによって、ボルトBの頭部とナットNとの間隔が狭くなり、一対の挟持板1a,1bの下側部は接近する方向に移動し、一対の挟持板1a,1bは“てこの原理”によってパイプP1とパイプP2とを挟持し固定する。すなわち、一対の挟持板1a,1bとボルトB、ナットNとの接触部が力点、一対の挟持板1a,1bとパイプP2との接触部が支点、一対の挟持板1a,1bの切欠き部13とパイプP1との接触部が作用点となって、一対の挟持板1a,1bの下側部が接近する方向に移動することによって、一対の挟持板1a,1bの上側部が互いに離れる方向に移動して、切欠き部13の周縁開口部11の両端及び切欠き部13の内周面がパイプP1の表面を摺動してパイプP1の表面に圧接しパイプP1は一対の挟持板1a,1bによって固定される。また同時に、パイプP2は挟持板1a,1bによる圧接挟持によって固定される。加えて、挟持板1a,1bによってパイプP1に対して下方向に力が加わり、パイプP1とボルトBの軸部との間でパイプP2は挟持され固定され、その反作用としてパイプP2と一対の挟持板1a,1bの切欠き部13の内周面との間でパイプP1は挟持され固定される。
【0027】
このようなクランプC1によるパイプP1,P2の接続固定によれば、切欠き部13から上方にパイプP1の一部が突出した状態でパイプP1とパイプP2とが直交に接続固定されるので、例えば図3に示すように、複数本のパイプP1が共通のパイプP2上に前後方向に所定間隔でその上端が同一平面上に位置するようにクランプC1で接続固定されると、クランプC1に起因する凸部を生じさせることなく複数本のパイプP1上に平板PLを設置することが可能となる。
【0028】
(変形例)
図4にクランプC1の変形例を示す。この図に示すクランプC2は、図1に示したクランプC1と基本的な構成は同一であるが、クランプC2を構成する一対の挟持体1c,1dの各々が2つの分割片12a,12bに分離・合体可能である点が相違する。以下、挟持板1c,1dについて説明するが、挟持体1a,1bと同一の構成については説明を省略し挟持体1a,1bと異なる構成についてのみ説明する。
【0029】
クランプC2を構成する挟持体1c,1dは、下側縁の前後方向(短手方向)中央から円弧状の切欠き部13の下部に至る波形状の分割ラインLNで2つの分割片12a,12bに分割及び合体可能とされている。分割片12a及び分割片12bの分割ラインLNにはそれぞれ第1の凹凸部15及び第2の凹凸部16が形成されている。第1の凹凸部15及び第2の凹凸部16とは同一で円弧形状の凸部151と凹部161とが交互に連続して形成されてなる。図4の楕円で囲まれた拡大図に示すように、凸部151は円弧状の頭部151aと首部151bとを有し、頭部151aの直径D1は首部151bの最小幅D2よりも長く設定されている。また、凹部161は凸部151と同一形状を有している。
【0030】
分割片12a,12bとは、第1の凹凸部15の凸部151及び凹部161が、第2の凹凸部16の凹部161及び凸部151にそれぞれ係入することによって合体する。なお、凸部151と凹部161との係入は挟持体1cの厚み方向(図4において紙面垂直方向)からのみ係入可能である。換言すると、合体した分割片12a,12bは図4において前後方向で互いに離れる方向に外力が加わっても分離することはない。
【0031】
このような分割合体可能な挟持板1c,1dからなるクランプC2によれば、予め切欠き部13にパイプを挿通させていない場合であっても、挟持板1c,1dを分割片12a,12bに分割して切欠き部13を構成する内周部でパイプを挟み込み、次いで分割片12a,12bを合体させることによりパイプの所望位置に挟持板1c,1dを後から取り付けることが可能となる。
【0032】
図4に示した実施形態例では凸部及び凹部はいずれも円弧形状であったが、これに限定されるものではなく、凸部と凹部とは同一形状であって挟持板の厚み方向からのみ挿脱可能な形状であればよい。
【0033】
(第2実施形態)
図5に、第2実施形態に係るクランプC3の正面図及び右側面図を示す。図5のクランプC3は、一対の長方形状の挟持板2a,2bと、挟持板2a,2bを連結する2本のボルトB1,B2と、2個のナットNとから構成される。この実施形態では、2本のボルトB1,B2と、2個のナットNとがネジ式締結部材を構成する。
【0034】
挟持板2a,2bは同一形状であるので、代表して挟持板2aについて説明する。図5(b)に示されるように、挟持板2aは、直線状で略平行な前側縁211と後側縁212と、前後方向途中部において前側が後側より下がる段差213aを有する上側縁213と、前後方向途中部において前側から後側に向かって上方に傾斜した傾斜部214aを有する下側縁214とを有する。挟持板2aの後側部には上下方向に所定間隔隔てて、ボルトB1,B2の軸部が挿通可能な大きさの2つの貫通孔24が形成されている。また、上側縁213の段差213aよりも前方には円弧状の切欠き部23が形成されている。切欠き部23の半径はパイプP1の半径と同一又は若干大きく、切欠き部23の周縁開口部21の幅DはパイプP1の直径よりも短く設定されている。また切欠き部23の後端から貫通孔24の前端すなわちボルトB1,B2の軸部の前端までの距離LはパイプP3の直径と同一又は若干大きく設定されている。
【0035】
なお、クランプC3を構成する挟持板2a,2bの上端縁213に段差213aが形成されているのは、ボルトB1の軸中心Oが切欠き部23の軸中心Oよりも鉛直方向上方に位置するようにするためである。図6に示すように、ボルトB1の軸中心Oが、切欠き部23の軸中心Oよりも鉛直方向上方に位置することによって、垂設されたパイプP3にクランプC3によってパイプP1を水平に取り付ける際に、パイプP1及びクランプC3の自重によってポルトB1とパイプP3との接触部を中心として図6(b)において反時計回りの回転モーメントがクランプC3に生じてパイプP1とパイプP3とが圧接するので、クランプC3がパイプP3に沿って下方にずり落ちることがパイプP1とパイプP3との摩擦抵抗によって抑制されクランプC3のパイプP3への接続固定作業が容易になる。もちろんこのような作用効果を必要としない場合には挟持板2a,2bの上端縁213は直線状としてもよい。
【0036】
また、挟持板2a,2bの下端縁214に傾斜部214aが形成されているのは、クランプC3の下側に別のクランプを取り付けて他のパイプを接続固定する際に、クランプC3と当該別のクランプとを近設可能とするためであり、下端縁214に傾斜部214aを設けることなく直線状としても構わない。
【0037】
クランプC3は、離隔対向した挟持板2a,2bに形成された貫通孔24の各々にボルトBの軸部が挿通され、ボルトBの軸部の先端にナットNが螺合されて組立られる。
【0038】
図6に示すように、このような構成のクランプC3によってパイプP1とパイプP3とを接続固定する場合、まず、離隔対向した挟持板2a,2bの切欠き部23にパイプP1が左右方向から挿通される。次いで、パイプP3が、パイプP1の後端とボルトBの軸部の前端との間に上下方向から挿通される。この状態ではクランプC3はパイプP1,P3に対して相対移動可能であり、パイプP1,P3の所定の固定位置に移動設置される。
【0039】
次いで、クランプC3のボルトBに対してナットNが相対的に締め付けられる。これによって、ボルトBの頭部とナットNとの間隔が狭くなり、一対の挟持板2a,2bの後側は接近する方向に移動し、一対の挟持板2a,2bは“てこの原理”によってパイプP1とパイプP3とを挟持し固定する。すなわち、図7に示すように、一対の挟持板2a,2bとボルトB、ナットNとの接触部が力点、一対の挟持板2a,2bとパイプP3との接触部が支点、一対の挟持板2a,2bの切欠き部23とパイプP1との接触部が作用点となって、一対の挟持板2a,2bの後側が接近する方向に移動することによって、一対の挟持板2a,2bの前側が互いに離れる方向に移動して、切欠き部23の周縁開口部21の両端及び切欠き部23の内周面がパイプP1の表面を摺動してパイプP1の表面に圧接しパイプP1は一対の挟持板2a,2bによって固定される。また同時に、パイプP3は挟持板2a,2bによる挟持によって固定される。加えて、挟持板2a,2bによってパイプP1に対して後方向に力が加わり、パイプP1とボルトBの軸部との間でパイプP3は挟持され固定されると共に、その反作用としてパイプP3と一対の挟持板2a,2bの切欠き部23の内周面との間でパイプP1は挟持され固定される。
【0040】
このようなクランプC3によるパイプP1,P3の接続固定によれば、切欠き部23から上方にパイプP1の一部が突出した状態でパイプP1とパイプP3とが直交に接続固定される。これにより、例えば図8に示すように、左右方向に所定距離隔てて立設された2本のパイプP3の各々の所定の高さ位置に、切欠き部23が互いに対向するように取り付けられたクランプC3によって、2本のパイプP1がパイプP3に直交して水平に接続固定されると、クランプC3に起因する凸部を生じさせることなく2本のパイプP1間に平板PLを設置することが可能となる。
【0041】
(その他のクランプ例)
図9及び図10に、その他のクランプ例を示す。これらの図に示すクランプC4は一対の長方形状の挟持板3a,3bと、挟持板3a,3bを連結する2本ボルトB1,B2と、2個のナットNとから構成される。
【0042】
挟持板3a,3bは同一形状であるので、代表して挟持板3aについて説明する。挟持板3aは長方形状の板部材であって四隅は丸み処理されている。挟持板3aの上下方向(長手方向)上側の側縁の前後方向(短手方向)中央部には円弧状の切欠き部33が形成され、また挟持板3aの下側の前後方向両端部にはボルトBの軸部が挿通可能な2つの貫通孔34,35が形成されている。また、前後方向中央部で切欠き部33の下方には上下方向に所定距離隔てて2つの貫通孔36,37が形成されている。切欠き部33の半径はパイプP1の半径と同一又は若干大きく、切欠き部33の周縁開口部31の幅DはパイプP1の直径よりも短く設定されている。また挟持板3aの下側の2つの貫通孔34,35の前後方向の間隔はパイプP4が挿通可能な長さに設定されている。なお、貫通孔37はクランプC4を第1実施形態のクランプC1と同じ使用形態で使用可能とするためのものであり、本実施形態においては無くても構わない。
【0043】
クランプC4は、離隔対向した挟持板3a,3bに形成された2つ貫通孔34にボルトB1,B2の軸部が挿通され、ボルトB1,B2の軸部の先端にナットNが螺合されて組立られる。
【0044】
図9に示すように、このような構成のクランプC4によってパイプP1とパイプP4とを接続固定する場合、まず、離隔対向した挟持板3a,3bの切欠き部33にパイプP1が左右方向から挿通される。次いで、パイプP4の上端が、挟持板3a,3bの間で且つボルトB1,B2との間に下側から上方に向かって挿入される。パイプP4の上端部には貫通孔91が形成されている。挟持板3a,3bの間に挿入されたパイプP4は、貫通孔91と貫通孔36とが同軸上に位置するように調整され、不図示のボルトの軸部が貫通孔36及び貫通孔91に挿通され、不図示のボルトの先端からナットが螺合されることによって挟持板3a,3bの間に固定される。なお、貫通孔36及び貫通孔91の形成位置は、パイプP4の上端がパイプP1の下端に当接したときに貫通孔91と貫通孔36の中心軸が同軸上になるようにするのが好ましい。パイプP4が固定されたクランプC3はパイプP1に対して相対移動可能であり、パイプP1の所定の固定位置に移動設置される。なお、パイプP1とパイプP4とのクランプC1への挿通順序は逆にしても勿論かまわない。
【0045】
次いで、図10に示すように、クランプC4のボルトB1に対してナットNが相対的に締め付けられる。一方、ボルトB2とナットNとは挟持板3a,3bの離間する方向への移動を許容する位置に留まっている。ボルトB1の頭部とナットNとの間隔が狭くなると、一対の挟持板3a,3bの下側部の前側は接近する方向に移動し、一対の挟持板3a,3bは“てこの原理”によってパイプP1を挟持し固定する。すなわち、一対の挟持板3a,3bとボルトB1、ナットNとの接触部が力点、一対の挟持板3a,3bとパイプP4との接触部が支点、一対の挟持板3a,3bの切欠き部33とパイプP1との接触部が作用点となって、一対の挟持板3a,3bの下側部の前側が接近する方向に移動することによって、一対の挟持板3a,3bの上側部の後側が互いに離れる方向に移動して、切欠き部33の周縁開口部31の両端及び切欠き部33の内周面がパイプP1の表面を摺動してパイプP1の表面に圧接しパイプP1は一対の挟持板3a,3bによって固定される。
【0046】
一方、パイプP4については挟持板3a,3bに不図示のボルトで接続され、ボルトB1とナットNによる締め付けによって挟持板3a,3bの間である程度は挟持固定されているが、ボルトB2とナットNを締めることによって挟持板3a,3bの間での挟持固定がより強化される。
【0047】
なお、図9及び図10の実施形態ではボルトB1,B2と2つのナットNによって一対の挟持板3a,3bを締め付けていたが、1本のボルトとナットで挟持板3a,3bを締め付けるようにしても構わない。
【0048】
(その他)
本発明で使用する挟持板の材質としてはパイプを挟持固定可能である限りにおいて限定はないが、例えばステンレス鋼や鉄鋼など高い強度を有するものが望ましい。また挟持板の成形加工は従来公知の加工方法を用いることができ、例えばレーザ加工や打ち抜き加工、切削加工などを用いることができる。
【0049】
また本発明のクランプは、ステンレスパイプや鉄パイプ、樹脂パイプなど従来公知のパイプに適用することができる。また本発明のクランプは、挟持板に形成する切欠きの形状を調整することによって種々の外径のパイプの接続固定に対応できる。
【0050】
以上説明した実施形態ではパイプの断面形状は円形であったがこれに限定されるものではなく、楕円や多角形であっても構わない。ただし、挟持板に形成される切欠き部はパイプの断面形状に合わせた形状とするのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のクランプは、パイプの接続部分においてパイプの一部を覆うことなく2本のパイプを直交状態に接続固定でき、これにより、クランプで覆われていないパイプの部分に接触するように板状体を取り付けることで、クランプに起因する凸部が板状体に生じることがなく、また従来のようにクランプとの当接を避けるための切欠きを板状体に形成する必要がなくなる。しかも従来のクランプに比べて部品点数が少なく軽量にすることが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1a,1b 挟持板
1c,1d 挟持板
2a,2b 挟持板
3a,3b 挟持板
C1,C2,C3 クランプ
P1,P2,P3,P4 パイプ
B ボルト
N ナット
11 周縁開口部
12a,12b 分割片
13 切欠き部
14 貫通孔
15 第1の凹凸部
16 第2の凹凸部
21 周縁開口部
23 切欠き部
24 貫通孔
31 周縁開口部
33 切欠き部
151 凸部
161 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11