(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】スクリーンマスク、スクリーンマスクの製造方法及び印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41N 1/24 20060101AFI20230823BHJP
B41C 1/14 20060101ALI20230823BHJP
B41M 1/12 20060101ALI20230823BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B41N1/24
B41C1/14
B41M1/12
H05K3/12 610P
(21)【出願番号】P 2020079334
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000176534
【氏名又は名称】ミタニマイクロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】坪井 恵
(72)【発明者】
【氏名】松本 華奈
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 好信
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-128856(JP,U)
【文献】特開2009-166391(JP,A)
【文献】特開2017-100367(JP,A)
【文献】特開2019-003140(JP,A)
【文献】特開2005-297222(JP,A)
【文献】特開昭51-074707(JP,A)
【文献】特開平03-166792(JP,A)
【文献】特開2001-199177(JP,A)
【文献】実開昭63-106664(JP,U)
【文献】米国特許第04678531(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/24
B41C 1/14
B41M 1/12
H05K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、前記サポート材に形成され、厚さ方向に貫通するとともに前記塗布材が通過する開口部と、前記開口部と少なくとも一部が連通するとともに前記塗布材の
吐出側である印刷面側の表面が他方側に退避する凹部と、を有する、マスク膜と、を備えるスクリーンマスクを、対向面に部品を有する印刷対象物に、前記凹部に前記部品が配されるように、対向配置させ、前記塗布材を前記開口部から供給することにより、前記開口部の形状に対応するパターンで塗布材を形成するとともに、前記開口部を通じて塗布材を前記凹部
内に周りこませて塗布材を前記凹部にある前記部品の周りに形成し、前記部品に接続させる、印刷物の製造方法。
【請求項2】
前記塗布材は導電性であ
り、前記印刷対象物は基板であり、前記塗布材により前記部品に接続される配線パターンを形成する、請求項1に記載の印刷物の製造方法。
【請求項3】
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、
前記サポート材に形成され、厚さ方向に貫通するとともに前記塗布材が通過する開口部と、前記開口部と少なくとも一部が異なる位置に形成され前記塗布材の
吐出側である印刷面側の表面が他方側に退避する凹部と、を有する、マスク膜と、
を備え、
前記凹部は、印刷対象物に配される
部品に対向する位置に形成され、少なくとも一部が前記開口部と連続し、
前記部品との干渉を回避するとともに前記塗布材が前記開口部を通じ
て前記凹部に周り込
み、前記部品に接続するように構成される、スクリーンマスク。
【請求項4】
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、
前記サポート材に形成され、厚さ方向に貫通するとともに前記塗布材が通過する開口部と、前記開口部と少なくとも一部が異なる位置に形成され前記塗布材の
吐出側である印刷面側の表面が他方側に退避する凹部と、を有する、マスク膜と、
を備え、
前記凹部は、印刷対象物に配される
部品に対向する位置に形成され、両側に配される前記開口部と連続
し、前記部品との干渉を回避するとともに前記塗布材が前記開口部を通じて前記凹部に周りこみ、前記部品に接続するように構成される、スクリーンマスク。
【請求項5】
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、
前記サポート材に形成され、厚さ方向に貫通するとともに前記塗布材が通過する開口部と、前記開口部と少なくとも一部が異なる位置に形成され前記塗布材の
吐出側である印刷面側の表面が他方側に退避する凹部と、を有する、マスク膜と、
を備え、
前記凹部は、印刷対象物に配される
部品に対向する位置に形成され、片側の側部が前記開口部に連続し、
前記部品との干渉を回避するとともに前記塗布材が前記開口部を通じて前記凹部に周りこみ、前記部品に接続するように構成される、スクリーンマスク。
【請求項6】
複数の異なる高さの
前記凹部を有する、
請求項3乃至5のいずれかに記載のスクリーンマスク。
【請求項7】
前記凹部は、印刷面からの深さΔDが、3μm以上、乳厚T
E以下であり、
前記乳厚T
Eは、スクリーンマスクの総厚Tの80%未満である、請求項3乃至6のいずれかに記載のスクリーンマスク。
【請求項8】
前記塗布材は導電性であり、前記印刷対象物は基板であり、前記塗布材により前記部品に接続される配線パターンを形成する請求項3乃至7のいずれかに記載のスクリーンマスク。
【請求項9】
請求項3乃至8のいずれかに記載のスクリーンマスクを、対向面に部品を有する印刷対象物に、前記凹部に前記部品が配されるように、対向配置させ、前記塗布材を前記開口部から供給することにより、前記開口部の形状に対応するパターンで塗布材を形成するとともに、前記開口部を通じて塗布材を前記凹部の前記部品に接続させる、印刷物の製造方法。
【請求項10】
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材に第1の乳剤を塗布して第1の乳剤層を形成する第1層形成工程と、
第1の乳剤層に所定の第1露光パターンでマスクレス露光する第1パターニング工程と、
前記第1の乳剤層に第2の乳剤を重ねて塗布して第2の乳剤層を形成する第2層形成工程と、
シーズニング工程と、
前記第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにてマスクレス露光する第2パターニング工程と、
エッチング処理により前記第1の乳剤層及び前記第2の乳剤層に開口部を形成するとともに、片側または両側が、前記開口部と連続し、一方側の表面が他方側に退避し、
印刷対象物に配される部品に対向する位置に形成され前記部品との干渉を回避するとともに前記塗布材が前記開口部を通じて周りこむことで前記部品に接続するように構成される凹部を形成する、エッチング処理と、を備え、
請求項3乃至8のいずれかに記載のスクリーンマスクを形成する、スクリーンマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンマスク、スクリーンマスクの製造方法及び印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷手法の一つであるスクリーン印刷はサポート材であるメッシュ上に樹脂組成物で形成された所定のパターン開口が形成されたスクリーンマスクを用い、被印刷物に任意の印刷体を形成する方法である。このスクリーン印刷法は、例えば配線、電極、蛍光材料の印刷等、種々の印刷に用いられ、電子部品等を含む様々な分野で利用されている。
【0003】
近年、電子部品の小型化、高品質化により、スクリーンマスクの高精度化が求められている。
【0004】
例えば、スクリーンマスクは、塗布材を透過可能な孔を有するメッシュと、メッシュに設けられパターン開口を有するマスク膜と、を備える。マスク膜に形成されるパターン開口は、例えば印刷パターンに対応した形状であり、所定の幅を有している。例えばマスク膜を形成する乳剤をメッシュに塗布した後に、フォトマスク重ねた露光処理によってパターン開口を形成している。
【0005】
このようなスクリーンマスクを用いて印刷物を製造する場合、たとえば基板などの印刷の対象物に部品などの突起物があると、マスクに負荷がかかり損傷する原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなスクリーンマスクにおいて、印刷時の負荷を低減できるスクリーンマスク、スクリーンマスクの製造方法及び印刷物の製造方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一形態にかかる印刷物の製造方法は、 塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、前記サポート材に形成され、厚さ方向に貫通するとともに前記塗布材が通過する開口部と、前記開口部と少なくとも一部が連通するとともに前記塗布材の吐出側である印刷面側の表面が他方側に退避する凹部と、を有する、マスク膜と、を備えるスクリーンマスクを、対向面に部品を有する印刷対象物に、前記凹部に前記部品が配されるように、対向配置させ、前記塗布材を前記開口部から供給することにより、前記開口部の形状に対応するパターンで塗布材を形成するとともに、前記開口部を通じて塗布材を前記凹部内に周りこませて塗布材を前記凹部にある前記部品の周りに塗布材を形成し、前記部品に接続させる。
他の一形態にかかるスクリーンマスクは、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、前記サポート材に形成され、厚さ方向に貫通するとともに前記塗布材が通過する開口部と、前記開口部と少なくとも一部が異なる位置に形成され前記塗布材の吐出側である印刷面側の表面が他方側に退避する凹部と、を有する、マスク膜と、を備え、前記凹部は、印刷対象物に配される部品に対向する位置に形成され、少なくとも一部が前記開口部と連続し、前記部品との干渉を回避するとともに前記塗布材が前記開口部を通じて前記凹部に周り込み、前記部品に接続するように構成される。
他の一形態にかかるスクリーンマスクは、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、前記サポート材に形成され、厚さ方向に貫通するとともに前記塗布材が通過する開口部と、前記開口部と少なくとも一部が異なる位置に形成され前記塗布材の吐出側である印刷面側の表面が他方側に退避する凹部と、を有する、マスク膜と、を備え、前記凹部は、印刷対象物に配される部品に対向する位置に形成され、両側に配される前記開口部と連続し、前記部品との干渉を回避するとともに前記塗布材が前記開口部を通じて前記凹部に周りこみ、前記部品に接続するように構成される。
他の一形態にかかるスクリーンマスクは、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、前記サポート材に形成され、厚さ方向に貫通するとともに前記塗布材が通過する開口部と、前記開口部と少なくとも一部が異なる位置に形成され前記塗布材の吐出側である印刷面側の表面が他方側に退避する凹部と、を有する、マスク膜と、を備え、前記凹部は、印刷対象物に配される部品に対向する位置に形成され、片側の側部が前記開口部に連続し、前記部品との干渉を回避するとともに前記塗布材が前記開口部を通じて前記凹部に周りこみ、前記部品に接続するように構成される。
【0009】
他の一形態に係るスクリーンマスクの製造方法は、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材に第1の乳剤を塗布して第1の乳剤層を形成する第1層形成工程と、第1の乳剤層に所定の第1露光パターンでマスクレス露光する第1パターニング工程と、前記第1の乳剤層に第2の乳剤を重ねて塗布して第2の乳剤層を形成する第2層形成工程と、シーズニング工程と、前記第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにてマスクレス露光する第2パターニング工程と、エッチング処理により前記第1の乳剤層及び前記第2の乳剤層に開口部を形成するとともに、片側または両側が、前記開口部と連続し、一方側の表面が他方側に退避し、印刷対象物に配される部品に対向する位置に形成され前記部品との干渉を回避するとともに前記塗布材が前記開口部を通じて周りこむことで前記部品に接続するように構成される凹部を形成する、エッチング処理と、を備え、上記スクリーンマスクを形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、印刷時の負荷を低減できるスクリーンマスク、スクリーンマスクの製造方法及び印刷物の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態にかかるスクリーンマスクの説明図。
【
図2】第1実施形態にかかるスクリーン印刷装置の説明図。
【
図3】同実施形態にかかるスクリーンマスクの斜視図。
【
図4】同実施形態にかかるスクリーンマスクの一部を示す断面図。
【
図5】同スクリーンマスクの一部の構成を示す斜視図。
【
図6】同スクリーンマスクの一部の構成を示す平面図。
【
図7】同実施形態にかかるスクリーンマスクの一部を示す断面図。
【
図8】同スクリーンマスクの一部の構成を示す平面図。
【
図9】同スクリーンマスクの一部の構成を示す斜視図。
【
図10】同スクリーンマスクと比較例に係るマスク膜及び印刷形状の説明図。
【
図11】同スクリーンマスクの製造方法を示す説明図。
【
図12】他の実施形態にかかるスクリーンマスクの凹部の構成を示す断面図。
【
図13】同スクリーンマスクの凹部の構成を示す斜視図。
【
図14】他の実施形態にかかるスクリーンマスクの製造方法を示す説明図。
【
図15】他の実施形態にかかるスクリーンマスクの一部の構成を示す平面図。
【
図16】同スクリーンマスクの一部の構成を示す断面図。
【
図17】他の実施形態にかかるスクリーンマスクの製造方法を示す説明図。
【
図18】他の実施形態にかかるスクリーンマスクの構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態にかかるスクリーン印刷装置10及びスクリーンマスク20について
図1乃至
図12を参照して説明する。
図1は本実施形態に係るスクリーンマスク20の説明図であり、
図2はスクリーン印刷装置10を示す説明図である。
図3はスクリーンマスク20の斜視図である。
図4はスクリーンマスク20の一部の構成を模式的に示す断面図、
図5は斜視図、
図6は平面図である。
図7はスクリーンマスク20の一部の構成を模式的に示す断面図、
図8は平面図、
図9は斜視図である。なお、各図では説明のため、適宜構成を拡大、縮小、省略して示している。図中矢印X,Y,Zは互いに直交する3方向をそれぞれ示している。
【0013】
図2に示すように、スクリーン印刷装置10は、スクリーンマスク20と、スクリーンマスク20の印刷面側である表面(一方の面)20aに対向して印刷媒体Baを保持する保持部材12と、スクリーンマスク20の印刷面側とは反対の裏面(他方の面)20bに当接した状態で移動可能に構成されたスキージ13と、スキージ13を移動させる移動部と、スクリーンマスク20を印刷媒体Baに対向して支持する支持部と、を備える。
【0014】
スクリーン印刷装置10は、印刷媒体Baの表面に、各種印刷材料を所定のパターンで形成する。例えば、チップ部品(コンデンサー、チップ抵抗、インダクター、サーミスター等)、タッチパネル、液晶基板(Liquid crystal display, LCD)シール、LTCC(Low Temperature Co-fired ceramics)基板、太陽電池用電極、その他の電子部品等の製造に用いられる。
【0015】
図1乃至
図3に示すように、スクリーンマスク20は、フレーム21と、フレーム21に張設されたサポート材であるメッシュ22と、メッシュ22に形成されたマスク膜23と、を備える。スクリーンマスク20において、印刷を行う際に印刷媒体Baの表面に対向する側を表面20aとし、その反対側であって塗布材Peが供給される側を裏面20bとする。
【0016】
フレーム21は、互いに平行な2対の辺を有し、例えば所望のサイズの方形の開口を備える枠状に構成される。フレーム21はメッシュ22の外周縁を支持し、開口にメッシュ22を張設する。本実施形態では一例として、フレーム21の開口部のY方向の寸法は275mm、X方向の寸法は275mm、とした。
【0017】
またフレーム21は、所定量の塗布材Peをマスク膜23の裏面側に保持する枠としても機能する。フレーム21とメッシュ22は、例えば合成ゴム系やシアノアクリレート系の接着剤により接合部で接合されている。
【0018】
メッシュ22は、経糸22aと緯糸22bとが編まれて形成された織物であり、塗布材Peを透過可能に開口した孔部22cを多数有している。経糸22aと緯糸22bは、例えばステンレス等の金属のワイヤ、あるいはポリエステル等の樹脂で構成された繊維である。経糸22aと緯糸22bは、それぞれ例えばスキージ13の移動方向(第1方向)に対して、斜めに延びている。
【0019】
このメッシュ22に、所定のパターン開口24を有するマスク膜23が形成される。すなわち、メッシュ22によって、フレーム21の開口部分にマスク膜23が保持される。
【0020】
マスク膜23は、光硬化性の樹脂組成物、例えばPVA、PVAc、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等からなる層である。例えばマスク膜23はベース層23bとカバー層23cが積層されて構成される2層構造である。一例として、カバー層23cはベース層23bよりも柔軟な材料で構成されている。
【0021】
マスク膜23の厚みは例えば10μm~200μmに構成されている。
【0022】
マスク膜23は、メッシュ22に形成され、フレーム21の開口部分に配されている。マスク膜23には、露光によって、印刷用の所定のパターン開口24、および凹部25が形成されている。
【0023】
パターン開口24は、例えばライン状のパターン孔である。パターン開口24は、印刷パターンに対応するパターン状であってマスク膜23を厚さ方向(深さ方向)に貫通するスリットを構成する。パターン開口24の最小開口幅、すなわち、パターン開口24の最も狭い部分における開口の幅寸法は、20μm以下である。ここでは、一例として、マスク膜23の表面、すなわち印刷媒体Baに対向する表面20aにおける寸法を基準とした。
【0024】
マスク膜23は、パターン開口24において感光性樹脂が存在せず、メッシュ22の孔部を通過して塗布材Peが裏面から表面へと透過可能な印刷部を構成する。マスク膜23のパターン開口24以外であってメッシュ22の孔部が感光性樹脂で塞がれた部位は、塗布材Peとしてのインクを透過しない非印刷部を構成する。
【0025】
凹部25は、パターン開口24とは異なる所定のパターン形状に形成される。印刷対象物の突起部Pcに対向する位置に形成され、たとえば印刷対象物に配された部品Pc等の突起部Pcに対応する位置に配置される。
凹部25は、複数設けられていてもよい。たとえば本実施形態において、凹部25は、パターン開口と少なくとも一部が異なる位置に形成されている。凹部25は、塗布材の吐出方向の一方側である印刷面側の表面が他方側に退避する逃げ部であり、印刷時の負荷を回避できる。
【0026】
凹部25は、
図4乃至
図6に示すように、パターン開口とは離間した位置に配置されていてもよい。たとえば凹部25は周囲が囲まれた形状であれば、印刷時には凹部25内への塗布材の侵入を防止できる。
【0027】
凹部25は、
図7乃至
図9に示すように、少なくとも一部がパターン開口と連続していてもよい。例えば
図7乃至
図9に示す凹部25は、その両側に配されるパターン開口24に連通している。このように、パターン開口24と連通する凹部25には、印刷時にパターン開口24から塗布材が回りこみ、部品への塗布が同時に行われる。
【0028】
凹部25は、印刷面からの深さΔDが、3μm≦ΔD≦TEを満たす寸法設定とする。ここで、TEは乳厚であって、総厚Tからメッシュの厚さ方向の寸法を差し引いた厚さ寸法である。なお、マスク膜23がメッシュ22から剥離することを抑制するため、乳厚TEはスクリーンマスク20の総厚Tの80%未満とする。
【0029】
図10は、本実施形態にかかるスクリーンマスク20と、比較例としての凹部がないスクリーンマスクについて、印刷パターンと、印刷前、印刷中及び印刷後の状態を示す説明図である。
図10において、パターン開口24と離間して設けられた凹部25と、パターン開口24と連通する凹部25と、についてそれぞれ比較して説明する。
【0030】
マスク膜23が形成されたメッシュ22は、例えばスキージ13による押圧力によって撓み変形し、押圧力が解除されることで復元するように、弾性変形可能に構成されている。
図2及び
図10に示すように、マスク膜23のパターン開口24に塗布材Peが保持された状態で、メッシュ22の弾性変形によりマスク膜23が印刷媒体Baに接離することで、塗布材Peがパターン開口24から印刷媒体Baに転写される。
【0031】
スキージ13は例えばウレタンゴム・シリコンゴム・合成ゴム・金属・プラスチック等の材料から、例えば薄い板状に構成される。例えば、スキージ13は先端の厚みが低減するように面取りされている。スキージ13はフレーム21に対して移動可能に構成されている。例えばスキージ13は移動方向と直交する方向においてマスク膜23の領域の全長にわたる長さを有して構成される。スキージ13の先端部分13aがスクリーンマスク20の裏面20bに当接し、表側に押しつけられた状態で、
図1中矢印Aに沿う移動方向に移動することで、マスク膜23の全面を押圧し、塗布材Peが予め充填されたパターン開口24から塗布材Peを表側に押し出す。
【0032】
支持部は、印刷媒体Baに対して所定の間隔を開けて平行に、フレーム21を支持する。移動部は、スキージ13を所定の速度で所定方向に沿って移動させる。
【0033】
次に、本実施形態にかかるスクリーンマスク20の製造方法について
図11を参照して説明する。
図11はスクリーンマスク20の製造方法を示す説明図である。スクリーンマスク20の製造方法は、第1層形成工程ST1と、第1パターニング工程ST2と、第2層形成工程ST3と、シーズニング工程と、第2パターニング工程ST4と、エッチング工程ST5と、を備える。
【0034】
第1の乳剤は例えば、光硬化性の樹脂であり、たとえばポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を包含する液体である。
【0035】
第1層形成工程において、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材に第1の乳剤Pm1を塗布して第1の乳剤層を形成する。具体的には、まず、フレーム21の枠内にメッシュ22を略平面となるように取り付けた状態で、ST1に示すように、第1の乳剤Pm1をメッシュ22上に塗布する塗布処理を行うことで、メッシュ22上に、ベース層23bが平板状に形成される。このとき、塗布する回数に応じて厚さが変わるため、必要に応じて複数回塗布を繰り返す。また、乾燥後に膜厚を測定し場合によっては追加で塗布することもある。本実施形態では乾燥後に第1の乳剤層の乳厚5~20μm程度となるように乳剤Pm1の厚さを設定する。
【0036】
次に、第1の乳剤層に所定の第1露光パターンで露光する第1パターニング工程を行う。例えばST2に示すように、フォトマスクを用いないマスクレス露光機にて、第1のマスクレス露光処理を行う。具体的には、所定の露光パターン領域に、ベース層23bの表面側を紫外線ランプや紫外線LED等の照明に向けて配置し、照明により光を照射させ、乳剤の表面を照らす露光処理を行う。ベース層23bのうち第1の露光処理によって露光される部位である第1露光部位は紫外線によって硬化する第1乳剤硬化部(第1光架橋部)Pa1となる。一方、ベース層23bのうち第1露光部位を除く部位である第1非露光部位は、乳剤が硬化しない未硬化部Pb1となる。第1未硬化部Pb1(第1非露光部位)は、後の工程で除去されることでベース開口を形成する第1除去対象部を構成する。ここで、第1の露光パターンと第2の露光パターンとは異なる。
【0037】
以上によりベース層23bがパターニングされ、後のエッチング工程により除去されてベース開口を構成する第1除去対象部が形成される。
【0038】
次に、ST3に示すように、第2の乳剤Pm2をベース層23bに重ねて塗布する塗布処理を行うことで、ベース層23bの印刷面側に第2の乳剤Pm2により第2の乳剤層であるカバー層23cを形成する。このとき、塗布する回数に応じて厚さが変わるため、必要に応じて複数回塗布を繰り返す。また、乾燥後に膜厚を測定し場合によっては追加で塗布することもある。そして、マスクレス露光処理を行う条件下に3時間程度静置をすることにより、枠の温度を1回目のマスクレス露光処理時と同程度とするシーズニング工程を行う。
【0039】
次に、第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにて露光する第2パターニング工程を行う。すなわち、ST4に示すように、フォトマスクを用いないマスクレス露光機にて、第2のマスクレス露光処理を行う。具体的には、所定の第2の露光パターン領域に、乳剤Pm2の表面側を紫外線ランプや紫外線LED等の照明に向けて配置し、照明により光を照射させ、乳剤Pm2の表面を照らす露光処理を行う。第2の露光処理によって、露光パターン領域の部位に対応して、乳剤Pm2の紫外線が照射された部分が紫外線によって硬化する。すなわち、カバー層23cのうち第2の露光処理によって露光される部位である第2露光部位は紫外線によって硬化する第2乳剤硬化部(第2光架橋部)Pa2を形成する。カバー層23cのうち第2露光部位を除く部位である第2非露光部位は、乳剤が硬化しない第2未硬化部Pb2となる。第2未硬化部Pb2は、後の工程で除去されることで凹部25を形成する第2除去対象部を含む。
【0040】
第1の露光処理及び第2の露光処理は、いずれも印刷面側から光を照射する露光処理であり、第2の露光処理は、第1の露光処理と同方向から、第1の露光処理よりも、幅狭の領域を対象とするパターンで露光することにより、所定範囲を硬化させる。第2パターニング工程において、第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにて露光する。
【0041】
なお、例えば二層目のカバー層23cが厚い場合、開口パターン24を形成する部分についても、1層目のベース層23bと2層目のカバー層23cの密着強度を上げるために、1層目のベース層23bの第1露光パターンは、所望する開口パターンよりも広く露光し、2層目のカバー層23cの露光時に開口パターンを露光することとしてもよい。
また、二層目のエッジと一層目のエッジを揃えることも可能である。
【0042】
その後、エッチング処理ST5として、水や溶剤により、マスク膜の少なくとも片側を洗い流す。この処理によって、乳剤Pm1及びPm2の未硬化部が洗い流され、厚み方向において表面側から裏面側まで貫通するパターン開口24が形成されるとともに、凹部25が形成される。すなわち、一方側の表面において、第2の非露光部位に対応するカバー層が形成されない部位には凹部25が形成される。凹部25は、吐出方向と反対側に退避する逃げ部となり、例えば、印刷時に印刷媒体等のスクリーンマスク20と対向する部材側に部品、アライメントマークなどの突起、段差がある場合に、当該突起Pcとの干渉を回避することが可能となる。
【0043】
次に、本実施形態にかかるスクリーン印刷装置10を用いたスクリーン印刷方法により印刷物を製造する方法について、
図2及び
図10を参照して説明する。まず、スクリーンマスク20の表面側を保持部材12で保持された印刷媒体Baの表面に対向させて配置する。対向する印刷媒体Baに配される部品などの突起部Pcが凹部25に配されるように位置あわせを行う。
【0044】
そして、
図2に二点鎖線で示すように、高粘度のペースト状の塗布材Peをスクリーンマスク20の裏面側、すなわち、印刷媒体Baとは反対側の面から供給し、塗布材Peをパターン開口24内に充填させる。
【0045】
次に、スクリーンマスク20の裏面20b、すなわち印刷面側とは反対側の面に、スキージ13を配置する。このとき、例えばスキージ13を、印刷媒体Baの表側の面に対して所定の角度で配置する。そして、スキージ13をメッシュ22及びマスク膜23の裏面において、所定の印圧で印刷媒体Ba側に向けて押しつけながら、所定の速度で移動させる。マスク膜23の裏面全面にわたる領域で、スキージ13がマスク膜23を押圧する。スキージ13の押圧により、マスク膜23は押圧される部分が表側に変位するように変形し、印刷媒体Baに当接する。スキージ13が通過した塗布材Peがパターン開口24から印刷媒体Ba側に押し出される。
【0046】
このとき、パターン開口24に連通する位置に配された凹部25には、同時に塗布材Peが回りこむ。
【0047】
スキージ13が通過した後、マスク膜23及びメッシュ22が復元するように変形して印刷媒体Baから離れるとともに、一部の塗布材Peが印刷媒体Ba上に転写されて残ることで、印刷媒体Ba上にパターン印刷がなされ、印刷物が完成する。このとき、塗布材Peは裏側の一部がマスク膜23側に残る。なお塗布材Peは、例えば金属材や樹脂材などを含む各種材料であり、印刷対象の種類、例えば、電子部品、ディスプレイ、等によって、多様な材料が用いられる。そして、パターン開口24に連通する位置に配された凹部25に対向する位置に配された部品上にも塗布材Peが塗布される。一方で、パターン開口24とは独立して配された凹部25には塗布材Peは塗布されることがない。
【0048】
以上のように構成されたスクリーンマスク20、スクリーン印刷装置10、及びスクリーン印刷方法によれば、印刷時の負荷を低減することが可能となる。凹部25は、吐出方向と反対側に退避する逃げ部となり、例えば、印刷時に印刷媒体等のスクリーンマスク20と対向する部材側にアライメントマークなどの突起、段差がある場合に、当該突起との干渉を回避することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態によれば、第1の露光処理及び第2の露光処理は、いずれも印刷面側から光を照射する露光処理であり、露光量、露光時間などの条件を異ならせることで凹部25やパターン開口24を容易に形成することが可能である。
【0050】
また、マスクレス露光でパターニングすることで、パターン開口24とともに、凹部25の位置や深さを高精度に調整でき、たとえば20μm以下程度の、線幅や凹部の幅であっても、高精度に形成できる。
【0051】
例えば
図10の中央に示すように、パターン開口24によって形成されるパターンと、電子部品とを、接続させるような場合には、パターン開口24を通じて、凹部25へ、導電性の塗布材を周り込ませることにより、2段階の配線を同時に行うことができる。例えば予め基板に搭載された部品の周りに、所定のパターン配線を形成する際に、当該パターン配線から部品までの接続を同時に行い、かつ部品や基板への負荷を回避できる。すなわち、凹部25をパターン開口24とは異なるパターンとして、パターン開口24から続く別のパターンを形成でき、立体的かつ段階的な塗布を同時に行うことが可能となる。
【0052】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0053】
上記実施形態において凹部25の構成として、両側のパターン開口24に連通する形状を示したが、これに限られるものではなく、例えば他の実施形態として
図12,13に示すように、凹部25の片側のみがパターン開口24に連通する形状であってもよい。
図14に製造方法の一例を示す。例えば二層目のカバー層23cが厚い場合、開口パターン24を形成する部分についても、1層目のベース層23bと2層目のカバー層23cの密着強度を上げるために、1層目のベース層23bの第1露光パターンは、所望する開口パターンよりも広く露光し、2層目のカバー層23cの露光時に開口パターンを露光することとしてもよい。なお、カバー層23cのエッジとベース層23bのエッジを揃えることも可能である。
【0054】
また、上記実施形態においては例えば開口部がライン状のパターンである例を示したがこれに限られるものではない。例えば他の実施形態として
図15及び
図16に示すように、非塗布領域がライン状のパターン形状であってもよい。印刷形状としては、
図15に示すように、非塗布領域が例えば線幅20μmの微細なパターンであり、印刷媒体Ba上の非塗布領域の一部分に部品が配されている。
図16に示すように、マスク膜23は、部品が配される非塗布領域の一部に凹部を備える。この場合にあっても、上記実施形態と同様に、突起物に対向する位置に凹部25を有することで、印刷時の負荷を低減でき、また、上記実施形態と同様にマスクレス露光により非塗布領域が20μm以下の微細なパターンに、凹部25を高精度に作りこむことができる。
【0055】
上記実施形態においては1段の凹部25有する構成を例示したが、段の数は1段に限られるものではない。異なる深さあるいは異なるパターンで複数種類の凹部を構成してもよく、例えば
図17に示すように乳剤形成段階および露光の工程を3段階とすることで、3段階で乳剤の形を規定することにより、
図18に示すように、高さの異なる複数種類の凹部25を形成し、立体的なパターンでマスク膜の形状を規定できる。例えば異なる高さの部品を有していてもそれぞれの部品の高さや位置にあわせて、凹部の深さ、位置および形状を規定でき、複数種類の異なる凹部を形成できる。
【0056】
このようなスクリーンマスク、スクリーンマスクの製造方法及び印刷物の製造方法によれば、任意の部位に凹部を有する段差を高精度に形成することができる。例えばスクリーンマスクの対向面にアライメントマークなどの突起、段差がある場合に、当該部分に、吐出方向と反対側に退避する逃げ部となる凹みを高精度に形成できる。したがって、印刷精度の高いスクリーンマスク20を提供できる。
【0057】
なお、上記各実施形態において、第1の乳剤と第2の乳剤を用いる場合において、第1の乳剤と第2の乳剤は異なる材料であってもよいし、同じ材料であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、フレーム21にメッシュ22を接着剤で貼り付け、フレーム21の開口部全域わたってマスク膜23を形成した例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、メッシュは、いわゆるコンビネーション型を用いてもよく、また、メッシュ22の中央部分の一部にのみマスク膜23が形成されていてもよい。
【0059】
この他、上記実施形態に例示された各構成要素を削除してもよく、各構成要素の形状、構造、材質等を変更してもよい。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1]
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、
前記サポート材に形成され、厚さ方向に貫通するとともに前記塗布材が通過する開口部と、前記開口部と少なくとも一部が異なる位置に形成され前記塗布材の吐出方向の一方側である印刷面側の表面が他方側に退避する凹部と、を有する、マスク膜と、
を備えるスクリーンマスク。
[2]
前記凹部は、印刷対象物に配される突起部に対向する位置に形成され、少なくとも一部が前記開口部と連続する、[1]に記載のスクリーンマスク。
[3]
前記凹部は、印刷対象物に配される突起部に対向する位置に形成され、前記開口部と離間した位置に配置される、[1]に記載のスクリーンマスク。
[4]
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材に第1の乳剤を塗布して第1の乳剤層を形成する第1層形成工程と、
第1の乳剤層に所定の第1露光パターンで露光する第1パターニング工程と、
前記第1の乳剤層に第2の乳剤を重ねて塗布して第2の乳剤層を形成する第2層形成工程と、
前記第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにて露光する第2パターニング工程と、
エッチング処理により前記第1の乳剤層及び前記第2の乳剤層に開口を形成するとともに、一方側の表面が他方側に退避する凹部を形成する、エッチング処理と、を備えるスクリーンマスクの製造方法。
[5]
前記露光はマスクレス露光である[4]に記載のスクリーンマスクの製造方法。
[6]
[1]乃至[3]のいずれかに記載のスクリーンマスクを、対向面に部品を有する印刷対象物に、前記凹部に前記部品が配されるように、対向配置させ、前記塗布材を前記開口部から供給することにより、前記開口部の形状に対応するパターンで塗布材を形成する、印刷物の製造方法。
【符号の説明】
【0060】
10…スクリーン印刷装置、12…保持部材、13…スキージ、20、…スクリーンマスク、20a…表面、20b…裏面、21…フレーム、22…メッシュ、22a…経糸、22b…緯糸、22c…孔部、23…マスク膜、24…パターン開口、23b…ベース層、23c…カバー層、25…凹部、Pa1…第1乳剤硬化部、Pa2…第2乳剤硬化部、Pb1…第1未硬化部、Pb2…第2未硬化部、Pm1…第1乳剤、Pm2…第2乳剤、Pc…突起。