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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】プラスチック容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/26 20060101AFI20230823BHJP
   B65D 25/34 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B65D1/26 110
B65D25/34 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021082294
(22)【出願日】2021-05-14
(65)【公開番号】P2022175675
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2021-06-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [公開の事実1] 販売場所: セブンイレブン千葉駅北口店を含むJR千葉駅周辺のセブンイレブン10店舗、および全国のセブンイレブン店舗 販売日: 2020年5月18日 販売した物の内容: 本発明に係るプラスチック容器を用いた商品
(73)【特許権者】
【識別番号】502038989
【氏名又は名称】ベスパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】原 信治
(72)【発明者】
【氏名】高茂 功
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-287544(JP,A)
【文献】特開2001-287728(JP,A)
【文献】特開2013-079100(JP,A)
【文献】特開2016-190683(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0435942(KR,Y1)
【文献】特開2000-007058(JP,A)
【文献】実開平03-043410(JP,U)
【文献】特開2010-202285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/26
B65D 25/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が開口している胴体部と、前記胴体部の下端を閉塞している底面部と、を有する樹脂製の容器本体を備えるプラスチック容器であって、
前記底面部の周縁部には、当該底面部の最外周から内周側に向けて段階的に下方への突出量が増大しており互いに同心に配置されている複数段の環状の段差部が形成されており、
前記複数段の段差部は、前記容器本体の内部が減圧することによって上方に向けて凹んだ形状に変形可能な易変形部を構成しており、
前記複数段の段差部の各々は、
環状に形成されているとともに水平に配置されているか又は上方に向けて拡径する向きに傾斜している第1環状面と、
前記第1環状面の外周囲に配置されているとともに環状に形成され、前記第1環状面よりも傾斜角度が大きく且つ上方に向けて拡径する向きに傾斜している第2環状面と、を有し、
各段差部の前記第2環状面は、環状に形成されている1つ又は複数の傾斜部を有し、
前記段差部が複数の前記傾斜部を有する場合、これら複数の傾斜部のうち、より外周側に位置する傾斜部の方が、傾斜角度が大きく、
前記複数段の段差部は、第1段差部と、前記第1段差部よりも内周側に配置されている第2段差部と、を含み、
前記第2段差部の前記第2環状面は、前記第1段差部の前記第2環状面と比べて同数又はそれよりも多数の前記傾斜部を有し、
前記易変形部が変形する前において、
前記底面部の中央部は、上方に向けて凸に湾曲しており、
前記複数段の段差部の各々の高さが、前記中央部の高さよりも小さく、
前記底面部の内面において、前記第1環状面と前記第2環状面とは鈍角を為しており、
前記易変形部が変形した後において、
前記底面部の前記内面において、前記第1環状面と前記第2環状面とが鈍角を為している状態が維持されるプラスチック容器。
【請求項2】
前記第1環状面は水平に配置されている請求項1に記載のプラスチック容器。
【請求項3】
前記第2環状面は、それぞれ環状に形成されているとともに互いに同心に配置されており且つ互いに傾斜角度が異なる複数の傾斜部を有し、
前記複数の傾斜部のうち、より外周側に位置する傾斜部の方が、傾斜角度が大きい請求項1又は2に記載のプラスチック容器。
【請求項4】
前記複数段の段差部の各々は、前記第1環状面と前記第2環状面とを有し、
各段差部の前記第2環状面は、環状に形成されている1つ又は複数の傾斜部を有し、
前記段差部が複数の前記傾斜部を有する場合、これら複数の傾斜部のうち、より外周側に位置する傾斜部の方が、傾斜角度が大きく、
前記複数段の段差部のうち、より内周側に配置されている前記段差部の前記第2環状面は、より外周側に配置されている前記段差部の前記第2環状面と比べて同数又はそれよりも多数の前記傾斜部を有する請求項1又は2に記載のプラスチック容器。
【請求項5】
前記底面部の中央部よりも、前記底面部の周縁部の方が、厚み寸法が小さい請求項1から4のいずれか一項に記載のプラスチック容器。
【請求項6】
前記胴体部の周囲に嵌着されている筒状の紙スリーブを更に備え、
前記紙スリーブの下端は、前記底面部の近傍に達している請求項1から5のいずれか一項に記載のプラスチック容器。
【請求項7】
前記紙スリーブの下端は、前記胴体部と前記底面部との境界位置よりも下方に配置されている請求項6に記載のプラスチック容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品などの内容物を収容するプラスチック容器としては、特許文献1に記載のように、内容物の冷却に伴って底面部が上に凸に変形するように構成されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭57-17730号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、特許文献1の技術では、内部が陰圧となった際の胴体部の変形をより確実に抑制する観点で、なお改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、内部が陰圧となった際の胴体部の変形をより確実に抑制することが可能な構造のプラスチック容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上端が開口している胴体部と、前記胴体部の下端を閉塞している底面部と、を有する樹脂製の容器本体を備えるプラスチック容器であって、
前記底面部は、当該底面部の最外周から内周側に向けて段階的に下方への突出量が増大しており互いに同心に配置されている複数段の環状の段差部を有し、
前記複数段の段差部は、上方に向けて凹んだ形状に変形可能な易変形部を構成しているプラスチック容器が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内部が陰圧となった際の胴体部の変形をより確実に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るプラスチック容器の容器本体の斜視図である。
図2】実施形態に係るプラスチック容器の容器本体の平面図である。
図3】実施形態に係るプラスチック容器の容器本体の正面断面図(図2のA-A線に沿った断面図)である。
図4図3の部分拡大図である。
図5】容器本体の正面図であり、図4と対応する部位を示す。
図6】部分拡大の容器本体の底面図である。
図7】実施形態に係るプラスチック容器の容器本体に紙スリーブを装着した状態を示す正面断面図である。
図8】実施形態に係るプラスチック容器の正面断面図であり、内部の陰圧により底面部が上方に向けて凹んだ状態を示す。
図9図8の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図1から図9を用いて説明する。
なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0010】
図7から図9に示すように、本実施形態に係るプラスチック容器100は、上端が開口している胴体部11と、胴体部11の下端を閉塞している底面部14と、を有する樹脂製の容器本体10を備えるプラスチック容器である。
底面部14は、当該底面部14の最外周から内周側に向けて段階的に下方への突出量が増大しており互いに同心に配置されている複数段の環状の段差部(例えば、第1段差部71、第2段差部72及び第3段差部73の3段の段差部)を有し、複数段の段差部は、上方に向けて凹んだ形状に変形可能な易変形部70を構成している。換言すれば、底面部14の周縁部14bは、易変形部70を有する。
ここで、底面部14は、自然状態(プラスチック容器100の内部に内容物が充填されていない空の状態)で、外力を加えずに水平な載置面上にプラスチック容器100を載置して自立させた際に、載置面に対して接地する部分を含む。本発明において、後述する固定用リブ18は、底面部14に含まれず、底面部14の最外周は、固定用リブ18から下方に向けて突出が始まる部位(本実施形態の場合、後述する固定用リブ18と傾斜部51との境界部)である。
【0011】
本実施形態によれば、容器本体10に内容物61(図8)を充填した後で容器本体10を蓋フィルム60(図8参照)により密閉した状態で、内容物61が冷却されることなどにより容器本体10の内部が陰圧となった際に、底面部14の易変形部70が上方に向けて凹んだ形状に変形する。
これにより、内部の陰圧の程度が緩和されることにより、胴体部11の変形は抑制できるので、プラスチック容器100の外観は良好に維持することができる。
なお、容器本体10の内部が陰圧となる理由は、内容物61が冷却されること以外に、品質保持用に容器本体10の内部に充填されたガス(COガス等)が内容物61に溶け込むことなども考えられる。
【0012】
しかも、易変形部70は、底面部14の最外周から内周側に向けて段階的に下方への突出量が増大していて互いに同心に配置されている複数段の環状の段差部を有するので、易変形部70の変形によるプラスチック容器100の内部の容積の減少量を十分に確保できるため、内部の陰圧の程度をより十分に緩和することができる。
なお、底面部14の外周側に易変形部70が配置されているため、底面部14の一部分がいびつに変形することも抑制できる。
また、容器本体10の内部が陰圧となった際に、主として易変形部70が変形するので、蓋フィルム60が容器本体10の内部に引き込まれることに起因して、蓋フィルム60が熱シールされているフランジ部12の周縁部が反り上がってしまうことを抑制でき、フランジ部12を当初の形状(例えば水平な状態)に維持させることができる。
更に、例えば、プラスチック容器100の底部の周縁部(例えば、後述する紙スリーブ20の下端20a、又は、底面部14の最外周部)のみが接地するようにもでき、プラスチック容器100を商品として陳列する際などにおいて、安定的に自立させることができる。
加えて、容器本体10の内部が陰圧となった際に、底面部14が上方に凹むので、例えば、片手でプラスチック容器100の天面(蓋フィルム60)と底面部14とを把持してプラスチック容器100を保持する場合に、底面部14が下方に出っ張っている場合と比べて容易に保持することができる。
【0013】
以下、プラスチック容器100について、より詳細に説明する。
なお、以下では、易変形部70が変形する前の自然状態でのプラスチック容器100の構造について、図1図7を用いて説明し、易変形部70が変形した後の構造について、図8及び図9を用いて説明する。
【0014】
容器本体10は、例えば、真空成形により、その全体が一体成形されたものである。容器本体10の材料は、特に限定されないが、一例として、ポリプロピレンであることが挙げられる。
【0015】
本実施形態の場合、胴体部11は、上下反転した円錐台形状(逆円錐台形状)となっている。
より詳細には、胴体部11の上端には、径方向外方に向けてフランジ状に張り出しているフランジ部12が形成されている。フランジ部12の内周縁が、胴体部11の上端の開口13となっている。
胴体部11は、更に、フランジ部12の内周縁から下方に延出している円筒状の上端部16を有する。
胴体部11において、上端部16の下側の部分(以下、胴体本体部11a)が、逆円錐台形状に形成されている。胴体部11における胴体本体部11aの上縁と上端部16の下縁との間には段差部17が形成されている。段差部17は、胴体本体部11aの上縁から径方向外方に向けてフランジ状に張り出している円環状の部分であり、段差部17の外周縁は、上端部16の下縁に連接されている。換言すれば、段差部17は、上端部16の下縁から径方向内側に向けて内フランジ状に張り出している。
なお、上端部16と段差部17とを含む部分は、複数のプラスチック容器100を積み重ねた(スタックした)際に、下側のプラスチック容器100における開口13よりも下方の部分には入り込まないようになっている。これにより、上側のプラスチック容器100のフランジ部12に指を掛けて、上側のプラスチック容器100を容易に上に抜き取るようにできるようになっている。本実施形態では、上端部16と段差部17とを含む部分が、プラスチック容器100の周囲360度に亘って連続的な周回状に形成されているが、本発明は、この例に限らず、上端部16と段差部17とを含む部分は、プラスチック容器100の周方向において間欠的に複数配置されていてもよい。
胴体部11の下端部(胴体本体部11aの下端部)には、紙スリーブ20(図7)の下端部に対して嵌入する固定用リブ18が周回状に形成されている。固定用リブ18は、例えば、胴体部11の径方向外方に向けて斜め下向きに凸の弧状の断面形状に形成されている。固定用リブ18の内周縁は、底面部14の外周縁(以下に説明する周縁部14bの外周縁)に連接されている。固定用リブ18の曲率半径は、後述するリブ15の曲率半径よりも十分に大きく、固定用リブ18の寸法も、リブ15の寸法よりも十分に大きい。
底面部14の形状は、特に限定されないが、本実施形態の場合、図3に示すように、底面部14の中央部14aは、その周縁部を除いて略平坦且つ水平に配置されている。底面部14の周縁部14bには、当該周縁部14bが径方向内側に向けて階段状に(段階的に)下方に変位するように、複数の段差部が形成されている。
例えば、中央部14aにおける周縁部を除く部分の高さ位置(上下方向における位置)は、固定用リブ18の下端の高さ位置と同等に設定されている。
中央部14aの周縁部は、径方向外側に向けてなだらかに(曲線状に)下り傾斜しており、中央部14aの外周縁は、周縁部14bの内周縁に連接されている。
一例として、プラスチック容器100の上下寸法は、プラスチック容器100の開口13における内径と略同等となっているが、開口13の内径とプラスチック容器100の上下寸法との関係は、この例に限らない。
本実施形態の場合、プラスチック容器100は、以上のような概略形状に形成されている。
ただし、本発明において、プラスチック容器100の概略形状は、上記の例に限らず、例えば、扁平な箱型形状などであってもよい。
【0016】
胴体部11には、複数のリブ15が形成されており、これらリブ15により胴体部11が補強されている。このため、胴体部11の保形性が良好であり、胴体部11の変形が抑制される。
図4に示すように、複数のリブ15が、当該胴体部11の外面側と内面側とにそれぞれ形成されている。
なお、図1図3図6図8では、図面が煩雑になることを避けるため、リブ15の数を減らして示している。
複数のリブ15は、互いに並列に延在していることが好ましい。
複数のリブ15が延在する方向は、特に限定されないが、本実施形態の場合、複数のリブ15は、それぞれ胴体部11の周方向に延在している。
より詳細には、複数のリブ15は、それぞれ胴体部11の周囲を360度周回している。これにより、胴体部11の周方向における全域が複数のリブ15により補強されている。ただし、リブ15は、必ずしも胴体部11の周囲を360度周回していなくてもよい。
より詳細には、複数のリブ15は上下方向において等間隔に配置されている。これにより、胴体部11の上下方向において複数のリブ15が配置されている領域の全域が、同程度に補強されている。本実施形態の場合、複数のリブ15は、胴体本体部11aにおける固定用リブ18よりも上側の部分の全域に、上下方向に等間隔に配置されている。
複数のリブ15の突出高さは(隣り合うリブ15どうしの谷部からリブ15の頂部までの突出高さ)は、胴体部11の厚み寸法よりも小さいことが好ましい。このようにすることにより、例えばスプーンや箸などでプラスチック容器100の内容物を取り出す際に、内容物が胴体部11の内面に残留してしまうことを抑制できる(残留量を低減することができる)。
複数のリブ15の突出高さは、例えば、0.1mm未満である。
【0017】
図4及び図5に示すように、複数のリブ15の並び方向に沿って切断した断面(本実施形態の場合、鉛直な切断面で切断した断面)において、複数のリブ15の集合体の形状は、例えば、波線状となっている。すなわち、この断面において、胴体部11の外面側の複数のリブ15の集合体の形状は波線状になっているとともに、胴体部11の内面側の複数のリブ15の集合体の形状も波線状になっている。換言すれば、複数のリブ15の集合体の形状は、略正弦波状となっている。
外面側の複数のリブ15の集合体の外形線である波線と、内面側の複数のリブ15の集合体の外形線である波線とは、互いに並列に延在しており、これら波線により囲まれている胴体部11の肉部の厚みは、略一定となっている。
複数のリブ15の並び方向に沿って切断した断面は、各リブ15の延在方向に対して直交する断面でもある。リブ15の延在方向に対して直交する断面において、各リブ15は、弧状に形成されており、隣り合うリブ15どうしの間の谷部も弧状に形成されている。
ただし、本発明において、複数のリブ15の並び方向に沿って切断した断面における複数のリブ15の集合体の形状は、この例に限らず、三角波状や略矩形波状などであってもよく、リブ15の延在方向に対して直交する断面におけるリブ15の形状は、略三角形や略矩形であってもよい。
【0018】
ここで、容器本体10の肉厚(厚み寸法)は、特に限定されないが、例えば、0.2mm以上1.0mm以下とすることができる。容器本体10の各部の肉厚は、略一定でもよいが、部位により相違していてもよい。例えば、フランジ部12の肉厚が最も大きく、次いで胴体部11の肉厚が大きく、底面部14の肉厚は胴体部11の肉厚より小さい。そして、周縁部14bの肉厚は中央部14aの肉厚よりも小さい。
胴体部11の肉厚は、例えば、0.2mm以上0.5mm以下であり、より詳細には、例えば、0.3mm以上0.4mm以下である。
中央部14aの肉厚は、例えば、0.2mm以上0.5mm以下であり、より詳細には、例えば、0.3mm以上0.4mm以下である。
周縁部14bの肉厚は、例えば、0.2mm以上0.5mm以下であり、より詳細には、例えば、0.3mm以上0.4mm以下である。ただし、中央部14aの肉厚は、周縁部14bの肉厚に対して、5%以上大きいことが好ましく、10%以上大きくてもよい。
【0019】
このように、底面部14の中央部14aよりも、底面部14の周縁部14bの方が、厚み寸法が小さい。これにより、周縁部14bの易変形部がより容易に変形できるようになっている。
【0020】
本実施形態の場合、プラスチック容器100は、胴体部11の周囲に嵌着されている筒状の紙スリーブ20を更に備えている。紙スリーブ20の下端20aは、底面部14の近傍に達している。
紙スリーブ20は、例えば、胴体部11の外周面に沿う逆円錐台形状に形成されており、例えば、フランジ部12を除く胴体部11の外周面の実質的に全域、又は、フランジ部12、上端部16及び段差部17を除く胴体部11の外周面の実質的に全域に対して密着するようになっている。
商品の説明などの表示を紙スリーブ20の外面に施された印刷により好適に行うことができる。
本実施形態によれば、易変形部70が上方に向けて凹んだ形状に変形することにより、胴体部11と底面部14との境界部の周長が大きくなる(この境界部が径方向に拡大する)ので、紙スリーブ20の下端部が胴体部11と底面部14との境界部により内側から押圧される圧力が増大し、胴体部11からの紙スリーブ20の脱落が好適に抑制される。よって、より簡易な構造の紙スリーブ20を、容易に樹脂製の容器本体10の外周に装着することが可能である。
容器本体の周囲に紙スリーブが嵌着されたタイプのプラスチック容器としては、例えば、特開2007-191180号公報に記載のものがある。特開2007-191180号公報に記載のものでは、容器本体(同文献のプラスチック容器)の外周面の下部に周回状に凹部が形成されており、紙スリーブの下端には内向きにカールしたカール部が形成されており、カール部が凹部に嵌合することによって、紙スリーブが容器本体に固定されるようになっている。この場合、紙スリーブの構造が複雑となるし、紙スリーブを容器本体に装着する際には、確実にカール部を凹部に嵌合させる必要がある。
これに対し、本実施形態では、例えば単純な逆円錐台状の紙スリーブ20を、容易に容器本体10の外周に装着することが可能である。
本実施形態の場合、下端20aは、固定用リブ18よりも下方で、且つ、底面部14の最下端部(水平部58)よりも上方に位置している。すなわち、紙スリーブ20の下端20aは、胴体部11と底面部14との境界位置よりも下方に配置されている。
ただし、下端20aの位置は、底面部14の近傍であれば、固定用リブ18の下端よりも上方(例えば、固定用リブ18の上側に隣接する位置)であってもよいし、底面部14の最下端部よりも下方であってもよい。
なお、本発明において、プラスチック容器100は、紙スリーブ20を有していなくてもよい。この場合、印刷等が施されたラベルが胴体部11に貼り付けられていたり、胴体部11に直に印刷が施されていたりしてもよい。
【0021】
以下、底面部14の易変形部70についてより詳細に説明する。
上述のように、易変形部70は、底面部14の最外周から内周側に向けて段階的に下方への突出量が増大しており互いに同心に配置されている複数段の環状の段差部(例えば、第1段差部71、第2段差部72及び第3段差部73の3段の段差部)を有する。すなわち、易変形部70は、蛇腹のような構造となっており、これにより、易変形部70は、上方に向けて凹んだ形状へと容易に変形可能となっているとともに、易変形部70の変形量も十分に確保することができる。
本実施形態の場合、図4から図6に示すように、易変形部70は、3段の段差部を有する。
すなわち、易変形部70は、外周側から順に、第1段差部71、第2段差部72及び第3段差部73を有する。
このうち第1段差部71は、外周側から順に、傾斜部51及び水平部52を有する。
第2段差部72は、外周側から順に、傾斜部53、傾斜部54及び水平部55を有する。
第3段差部73は、外周側から順に、傾斜部56、傾斜部57及び水平部58を有する。
【0022】
傾斜部51、水平部52、傾斜部53、傾斜部54、水平部55、傾斜部56、傾斜部57及び水平部58の各々は、平面視において円環状に形成されており、互いに同心に配置されている。平面視において、傾斜部51、水平部52、傾斜部53、傾斜部54、水平部55、傾斜部56、傾斜部57及び水平部58の中心は、容器本体10の中心と一致している。
【0023】
傾斜部51は、底面部14の最外周部を構成している。傾斜部51の外周縁は、固定用リブ18の内周縁に対して360度周回状に連接されている。
傾斜部51の内周縁に対して、水平部52の外周縁が360度周回状に連接されている。
水平部52の内周縁に対して、傾斜部53の外周縁が360度周回状に連接されている。
傾斜部53の内周縁に対して、傾斜部54の外周縁が360度周回状に連接されている。
傾斜部54の内周縁に対して、水平部55の外周縁が360度周回状に連接されている。
水平部55の内周縁に対して、傾斜部56の外周縁が360度周回状に連接されている。
傾斜部56の内周縁に対して、傾斜部57の外周縁が360度周回状に連接されている。
傾斜部57の内周縁に対して、水平部58の外周縁が360度周回状に連接されている。
水平部58の内周縁に対して、中央部14aの外周縁が360度周回状に連接されている。
各水平部52、55、58は、略水平に配置されている平坦面である。
水平部58は、底面部14の最下端部を構成している。
各傾斜部51、53、54、56、57は、上方に向けて拡径する向きに傾斜している。すなわち、各傾斜部51、53、54、56、57は、逆円錐台形状に形成されている。
傾斜部53の傾斜角度は、傾斜部54の傾斜角度よりも大きい。
傾斜部56の傾斜角度は、傾斜部57の傾斜角度よりも大きい。
例えば、傾斜部51、傾斜部53及び傾斜部56は、互いに同等の傾斜角度となっており、それらの傾斜角度は45度以上となっている。
例えば、傾斜部54及び傾斜部57は、互いに同等の傾斜角度となっており、それらの傾斜角度は45度未満となっている。
なお、本発明において、易変形部70は、上記した構造に限定されない。段差部の数は、複数であればよく、3つに限らない。例えば、段差部の数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、少なくとも1つの段差部の第2環状部が有する傾斜部の数が3つ以上であってもよい。
【0024】
このように、複数段の段差部のうち少なくとも1つの段差部は、環状に形成されているとともに水平に配置されている第1環状面と、第1環状面の周囲に配置されているとともに環状に形成され、第1環状面よりも傾斜角度が大きく且つ上方に向けて拡径する向きに傾斜している第2環状面と、を有する。
すなわち、第1段差部71の第1環状面は水平部52により構成されており、第1段差部71の第2環状面は傾斜部51により構成されている。
第2段差部72の第1環状面は水平部55により構成されており、第2段差部72の第2環状面は傾斜部53及び傾斜部54により構成されている。
第3段差部73の第1環状面は水平部58により構成されており、第3段差部73の傾斜部は傾斜部56及び傾斜部57により構成されている。
図8及び図9に示すように、段差部が第1環状面と第2環状面とを有する構造であるため、段差部が上方に向けて凹んだ形状に変形することによるプラスチック容器100の内部の容積の減少量をより十分に確保することができる。
しかも、段差部が第1環状面と第2環状面とを有する構造であるため、段差部が上方に向けて凹んだ形状に変形することにより底面部14の径方向における段差部の寸法が拡大する構造を実現できる。これにより、容器本体10の内部が陰圧となった際に胴体部11と底面部14との境界部の周長が大きくなる作用をより確実に得ることができる。
加えて、段差部の第1環状面が水平に配置されていることにより、後述するように第1環状部が緩斜面である場合と比べて、プラスチック容器100を載置した際の自立安定性に優れるとともに、段差部が上方に向けて凹んだ形状に変形した後の易変形部70の形状を安定的に保つことができる。
【0025】
しかも、第2段差部72の第2環状面は、それぞれ環状に形成されているとともに互いに同心に配置されており且つ互いに傾斜角度が異なる複数(例えば2つ)の傾斜部53、54を有し、複数の傾斜部53、54のうち、より外周側に位置する傾斜部53の方が、傾斜角度が大きい。すなわち、傾斜部54の傾斜角度よりも傾斜部53の傾斜角度の方が大きい。
同様に、第3段差部73の第2環状面は、それぞれ環状に形成されているとともに互いに同心に配置されており且つ互いに傾斜角度が異なる複数(例えば2つ)の傾斜部56、57を有し、複数の傾斜部56、57のうち、より外周側に位置する傾斜部56の方が、傾斜角度が大きい。すなわち、傾斜部57の傾斜角度よりも傾斜部56の傾斜角度の方が大きい。
このような構造により、第2段差部72及び第3段差部73の第2環状面が、上方に向けて凹んだ形状へと、より小さい力で変形可能となっている。
【0026】
また、複数段の段差部の各々は、第1環状面と第2環状面とを有し、各段差部の第2環状面は、環状に形成されている1つ又は複数の傾斜部を有しており、段差部が複数の傾斜部を有する場合、これら複数の傾斜部のうち、より外周側に位置する傾斜部の方が、傾斜角度が大きい。つまり、第2段差部72及び第3段差部73については、より外周側に位置する傾斜部(傾斜部53、傾斜部56)の傾斜角度が、より内周側に位置する傾斜部(傾斜部54、傾斜部57)の傾斜角度よりも大きい。
そして、複数段の段差部のうち、より内周側に配置されている段差部の第2環状面は、より外周側に配置されている段差部の第2環状面と比べて同数又はそれよりも多数の傾斜部を有する。つまり、第1段差部71の第2環状面が有する傾斜部の数(1つ)よりも、第2段差部72及び第3段差部73の第2環状面が有する傾斜部の数(2つ)の方が多い。また、第2段差部72の第2環状面が有する傾斜部の数(2つ)と、第3段差部73の第2傾斜面が有する傾斜部の数(2つ)が互いに同数である。
このような構造により、より内周側に位置する段差部、すなわち、より外径が小さく本来は変形しづらい段差部も、上方に向けて凹んだ形状へと容易に変形できる構造を実現できる。
【0027】
プラスチック容器100は、容器本体10への内容物の充填後、蓋フィルム60が開口13を密閉状態で閉塞するようにフランジ部12の上面に熱シールされた状態で流通する。蓋フィルム60の一端部は、開封用のタブ60aとなっている。
プラスチック容器100の内容物は、特に限定されず、液体(流動体を含む)であってもよいし、固形物であってもよい。
プラスチック容器100ごと内容物61が冷却されると、容器本体10の内部が減圧することとなる。なお、上述のように、容器本体10に充填されたガスが内容物に溶け込むことによって容器本体10の内部が減圧する場合もある。
容器本体10の底面部14は、易変形部70を有するため、図8及び図9に示すように易変形部70が上方に向けて凹んだ形状に変形することにより、容器本体10内部の陰圧が緩和され、胴体部11の変形(凹み)は抑制される。
なお、上述のように胴体部11がリブ15により補強されていることによっても、胴体部11の変形は抑制され、胴体部11と底面部14とのうち底面部14が選択的に変形するようにできる。
【0028】
以上、図面を参照して実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0029】
例えば、上記の実施形態では、各段差部の第1環状面が略水平に配置された水平部である例を説明したが、少なくとも1つの段差部は、水平部を有していなくてもよい。この場合、この段差部は、水平部の代わりに、第2環状面と比べて傾斜が緩やかな緩斜面を有している。
すなわち、複数段の段差部のうち少なくとも1つの段差部は、環状に形成されているとともに上方に向けて拡径する向きに傾斜している第1環状面と、第1環状面の周囲に配置されているとともに環状に形成され第1環状面よりも傾斜角度が大きく且つ上方に向けて拡径する向きに傾斜している第2環状面と、を有していてもよい。
【0030】
例えば、胴体部11には、リブ15の他に、突出高さが胴体部11の厚み寸法よりも大きい複数のリブ(第2リブ)が形成されていてもよい。この場合、複数の第2リブの配置領域において、胴体部11をより良好に補強することができる。複数の第2リブの延在方向は、複数のリブ15の延在方向に対して交差していることが挙げられる。
【0031】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)上端が開口している胴体部と、前記胴体部の下端を閉塞している底面部と、を有する樹脂製の容器本体を備えるプラスチック容器であって、
前記底面部は、当該底面部の最外周から内周側に向けて段階的に下方への突出量が増大しており互いに同心に配置されている複数段の環状の段差部を有し、
前記複数段の段差部は、上方に向けて凹んだ形状に変形可能な易変形部を構成しているプラスチック容器。
(2)前記複数段の段差部のうち少なくとも1つの段差部は、
環状に形成されているとともに水平に配置されているか又は上方に向けて拡径する向きに傾斜している第1環状面と、
前記第1環状面の周囲に配置されているとともに環状に形成され、前記第1環状面よりも傾斜角度が大きく且つ上方に向けて拡径する向きに傾斜している第2環状面と、
を有する(1)に記載のプラスチック容器。
(3)前記第1環状面は水平に配置されている(2)に記載のプラスチック容器。
(4)前記第2環状面は、それぞれ環状に形成されているとともに互いに同心に配置されており且つ互いに傾斜角度が異なる複数の傾斜部を有し、
前記複数の傾斜部のうち、より外周側に位置する傾斜部の方が、傾斜角度が大きい(2)又は(3)に記載のプラスチック容器。
(5)前記複数段の段差部の各々は、前記第1環状面と前記第2環状面とを有し、
各段差部の前記第2環状面は、環状に形成されている1つ又は複数の傾斜部を有し、
前記段差部が複数の前記傾斜部を有する場合、これら複数の傾斜部のうち、より外周側に位置する傾斜部の方が、傾斜角度が大きく、
前記複数段の段差部のうち、より内周側に配置されている前記段差部の前記第2環状面は、より外周側に配置されている前記段差部の前記第2環状面と比べて同数又はそれよりも多数の前記傾斜部を有する(2)又は(3)に記載のプラスチック容器。
(6)前記底面部の中央部よりも、前記底面部の周縁部の方が、厚み寸法が小さい(1)から(5)のいずれか一項に記載のプラスチック容器。
(7)前記胴体部の周囲に嵌着されている筒状の紙スリーブを更に備え、
前記紙スリーブの下端は、前記底面部の近傍に達している(1)から(6)のいずれか一項に記載のプラスチック容器。
(8)前記紙スリーブの下端は、前記胴体部と前記底面部との境界位置よりも下方に配置されている(7)に記載のプラスチック容器。
【符号の説明】
【0032】
10 容器本体
11 胴体部
11a 胴体本体部
12 フランジ部
13 開口
14 底面部
14a 中央部
14b 周縁部
15 リブ
16 上端部
17 段差部
18 固定用リブ
20 紙スリーブ
20a 下端
51、53、54、56、57 傾斜部(第2環状面を構成し、段差部を構成し、易変形部を構成する)
52、55、58 水平部(第1環状面であり、段差部を構成し、易変形部を構成する)
60 蓋フィルム
60a タブ
61 内容物
70 易変形部
71 第1段差部(段差部)
72 第2段差部(段差部)
73 第3段差部(段差部)
100 プラスチック容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9