(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】炭を使用した水性分散体、それを含有する化粧料、及びその水性分散体の製造方法。
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20230823BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20230823BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230823BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/04
A61K8/34
A61Q1/10
(21)【出願番号】P 2021117450
(22)【出願日】2021-07-15
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】592059035
【氏名又は名称】日弘ビックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180367
【氏名又は名称】寺尾 康典
(74)【代理人】
【識別番号】100138597
【氏名又は名称】金尾 良子
(72)【発明者】
【氏名】西 竜也
(72)【発明者】
【氏名】安藤 加那子
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-008577(JP,A)
【文献】特開2006-022008(JP,A)
【文献】特開2010-053158(JP,A)
【文献】特開2014-101298(JP,A)
【文献】特開2007-217320(JP,A)
【文献】特開2014-214103(JP,A)
【文献】国際公開第2020/166576(WO,A1)
【文献】特開2017-210460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C09D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、少なくとも、25~35質量%の黒色顔料と、前記黒色顔料との質量%比で6.
67:1~7.12:1の高分子又はHLBが10以上の界面活性剤である分散剤と、前記黒色顔料との質量%比で2.14:1~2.0:1の多価アルコールと、を含有し、
前記黒色顔料は、備長炭、竹炭、梅炭、又は活性炭から選ばれる少なくとも1種以上の炭パウダー、又は、1~10質量%の黒色酸化鉄を更に含有する前記炭パウダーであり、
平均粒子径が340~392nmであり、明度L値が24未満であることを特徴とする水性分散体。
【請求項2】
前記水性分散体の80%以上の粒子は、粒子径が180~1200nmに分布することを特徴とする請求項1に記載の水性分散体。
【請求項3】
前記水性分散体の最大粒子径が3500nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性分散体。
【請求項4】
前記水性分散体の粘度は、15~300mPa・sであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の水性分散体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の水性分散体を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項6】
前記化粧料の明度L値が25以下であることを特徴とする請求項5に記載の化粧料 。
【請求項7】
前記化粧料の筆記試験による液吐出量が20mg以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載の化粧料。
【請求項8】
ペン型若しくは壺型アイライナー又はアイブローであることを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項9】
水と、少なくとも、備長炭、竹炭、梅炭、又は活性炭から選ばれる少なくとも1つ以上の炭パウダー、又は、1~10質量%の黒色酸化鉄を更に含有する前記炭パウダーである22~40質量%の黒色顔料と、前記黒色顔料との質量%比で6.
67:1~7.12:1の高分子又はHLBが10以上の界面活性剤である分散剤と、前記黒色顔料との質量%比で2.14:1~2.0:1の多価アルコールと、を含有する原料混合物とする原料混合工程と、
前記原料混合物を分散機で均一に分散混合粉砕し、水性分散中間体とする分散工程と、
前記水性分散中間体の粒度分布を測定し、平均粒子径が340~392nmであり、且つ、水性分散体の80%以上の粒子の粒子径が180~1200nmに分布する場合には、分散処理を終了し、水性分散体とする検査工程と、
水性分散中間体の最大粒子径が3500nmを超えている場合や、平均粒子径が340~392nmに達していない場合には、前記水性分散中間体を分散工程に戻し、更に、分散処理を行う工程と、を有する、
平均粒子径が340~392nmであり、80%以上の粒子の粒子径が180~1200nmに分布することを特徴とする水性分散体の製造方法。
【請求項10】
前記水性分散体の最大粒子径が3500nm以下であることを特徴とする請求項9に記載の水性分散体の製造方法。
【請求項11】
前記分散機は、ビーズミルであることを特徴とする請求項9
又は請求項10に記載の水性分散体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭を使用した化粧料用水性分散体、それを含有するメイクアップ化粧用化粧料、特にアイライナー及びアイブロー、及び炭を使用した化粧料用水性分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料、取り分け、メイクアップ化粧用化粧料においては、化粧料の持つ色に重要な意味があり、種々の色材が用いられている。このような色材としては、赤、青、黄、緑といった有彩色色材に留まらず、白色或いは黒色色材も用いられている。これは、色の表現座標が、三次元であり、色相のみならず、彩度、明度の2軸の調整も行わないと、色出しが不可能であるためである。この中で、黒色の色材としては、これまでは天然ガスや石油を不完全燃焼させて得られるカーボンブラックが主として使用されてきた。これは、カーボンブラックの粒子が非常に細かく、且つ、金属酸化物顔料に比して、比重が極めて小さく、分散の均一性と安定性に優れているためである(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0003】
しかしながら、カーボンブラックは、発がん性物質であるベンゾ[a]ピレンを含むことがあり、また、一次粒子径として100nm以下の粒子を含有することが多く、人への健康被害が懸念されることから、化粧料としては好ましくない色材と考えられ、その代替が望まれていた。
【0004】
その代替としては、例えば、特許文献3及び特許文献4には、ナノマテリアルに該当しない黒色酸化鉄を主成分とするフェライトの微細粒子を利用する方法が開示されているが、凝集力が強く、微粒子化すると凝集する傾向があり、単独で使用することは難しい。
【0005】
また、例えば、特許文献5には、平均粒径0.1~100μmの木炭紛が開示されているが、これらは非常に硬く、通常知られている粉砕、分散方法では、平均粒径1μm以下に微細に分散することが困難であり、発色と安定性に関して満足できるものはなかった。また、ペン型アイライナー用化粧料とすると、粗粒による目詰まりを起こす問題があった。これに対し、特許文献6には、炭を0.05~1μm(50~1000nm)に粉砕、分散する方法が開示されているが、100nm以下の粒子を含有し、人への健康被害が懸念され、化粧料としては好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-97259号公報
【文献】特開2013-121949号公報
【文献】特開2005―330222号公報
【文献】特開2014-101298号公報
【文献】特開2001-48747号公報
【文献】特開2006-22008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ペン型アイライナーにおいても目詰まりがなく、分散安定性に優れ、100nm以下のナノマテリアルを含有するおそれがなく人への健康被害の心配がない、着色力の高い黒色を発現可能な水性分散体とその製造方法を提供し、併せてその水性分散体を含有する化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る水性分散体は、
水と、少なくとも、22~40質量%の黒色顔料と、黒色顔料との質量%比で6.4:1~7.12:1の高分子又はHLBが10以上の界面活性剤である分散剤と、黒色顔料との質量%比で2.14:1~2.0:1の多価アルコールと、を含有し、
黒色顔料は、備長炭、竹炭、梅炭、又は活性炭から選ばれる少なくとも1種以上の炭パウダー又は前記炭パウダー及び黒色酸化鉄であり、
平均粒子径が340~392nm、明度L値が24未満であることを特徴とする水性分散体である。
【0009】
本発明に係る水性分散体であれば、ペン型アイライナーにおいても目詰まりがなく、分散安定性に優れ、100nm以下のナノマテリアルが検出される恐れがなく人への健康被害の心配がない、着色力の高い黒色を発現可能な水性分散体を提供することができる。
【0010】
本発明に係る水性分散体中に含有する前記黒色顔料の含有量は、25~35質量%であることを特徴とする、水性分散体である。
【0011】
水性分散体の黒色顔料の含有量は、25~35質量%であると、適切な流動性と分散状態を維持することが可能で、経時安定性が良好であり、また、化粧料として求める着色力に適した水性分散体の処方を行うことができる。
【0012】
本発明に係る水性分散体の80%以上の粒子は、粒子径が180~1200nmに分布することを特徴とする水性分散体である。
【0013】
本発明に係る水性分散体であれば、100nm以下のナノマテリアルが検出されるおそれがなく、人への健康被害の心配がない、
【0014】
本発明に係る水性分散体の最大粒子径が3500nm以下であることを特徴とする水性分散体である。
【0015】
本発明に係る水性分散体を用いた化粧料に係るペン型アイライナーにおいても目詰まりが生じる恐れがない。
【0016】
本発明に係る水性分散体の粘度は、15~300mPa・sであることを特徴とする水性分散体である。
【0017】
本発明に係る水性分散体であれば、経時安定性に優れ、長期間保存しても水性分散体中の粒子が沈降する恐れがない。
【0018】
本発明に係る水性分散体の黒色顔料が、備長炭、竹炭、梅炭、又は活性炭から選ばれる少なくとも1種以上の炭パウダーであることを特徴とする水性分散体である。
【0019】
本発明に係る水性分散体の黒色顔料が、備長炭、竹炭、梅炭、又は活性炭から選ばれる少なくとも1種以上の炭パウダーであれば、着色力の高い黒色を発現可能な水性分散体を得ることができる。
【0020】
本発明に係る水性分散体の黒色顔料は、更に0.1~10質量%の黒色酸化鉄を含有することを特徴とする水性分散体である。
【0021】
本発明に係る水性分散体であれば、0.1~10質量%の黒色酸化鉄を含有しても適切な流動性と分散状態を維持することが可能であり、着色力の高い黒色を発現可能な水性分散体を得ることができる。
【0022】
本発明の化粧料は、本発明に係る水性分散体を含有することを特徴とする化粧料である。
【0023】
本発明の化粧料であれば、ペン型アイライナーにおいても目詰まりがなく、分散安定性に優れ、100nm以下のナノマテリアルが検出されるおそれがなく人への健康被害の心配がない、着色力の高い黒色を発現可能である。
【0024】
本発明に係る化粧料の明度L値が25以下であることを特徴とする化粧料である。
【0025】
本発明の化粧料であれば、着色力の高い黒色を発現可能である。
【0026】
本発明に係る化粧料の筆記試験による液吐出量が20mg以上であることを特徴とする化粧料である。
【0027】
本発明に係る化粧料であれば、筆記してもカスレルことがない。
【0028】
本発明に係る化粧料は、ペン型若しくは壺型アイライナー又はアイブローであることを特徴とする化粧料である。
【0029】
本発明に係る化粧料がペン型若しくは壺型アイライナー又はアイブローであれば、容易に化粧を行うことができる。
【0030】
本発明に係る水性分散体の製造方法は、
水と、少なくとも、備長炭、竹炭、梅炭、又は活性炭から選ばれる少なくとも1つ以上の炭パウダー又は前記炭パウダー及び黒色酸化鉄である22~40質量%の黒色顔料と、高分子又はHLBが10以上の前記黒色顔料との質量%比で6.4:1~7.12:1の高分子又はHLBが10以上の界面活性剤である分散剤と、黒色顔料との質量%比で2.14:1~2.0:1の多価アルコールと、を含有する原料混合物とする原料混合工程と、
原料混合物を分散機で均一に分散混合粉砕し、水性分散中間体とする分散工程と、
水性分散中間体が所定の粒度分布範囲であることを確認し、所定の粒度分布範囲にある場合には水性分散体とする検査工程と、
水性分散中間体が所定の粒度分布範囲にない場合には、分散工程において所定の粒度分布範囲となるまで水性分散中間体を分散機で更に均一に分散混合粉砕する、
平均粒子径が340~392nmであり、80%以上の粒子の粒子径が180~1200nmに分布することを特徴とする水性分散体の製造方法。
【0031】
本発明に係る水性分散体の製造方法であれば、ペン型アイライナーにおいても目詰まりがなく、分散安定性に優れ、100nm以下のナノマテリアルが検出される恐れがなく人への健康被害の心配がない、着色力の高い黒色を発現可能な水性分散体を製造することができる。
【0032】
本発明に係る水性分散体の製造方法の水性分散体の80%以上の粒子は、180~1200nmに分布することを特徴とする水性分散体の製造方法である。
【0033】
本発明に係る水性分散体の製造方法であれば、確実に100nm以下のナノマテリアルが検出される恐れがなく、人への健康被害の心配がない、
【0034】
本発明に係る水性分散体の製造方法は、水性分散体の最大粒子径が3500nm以下であることを特徴とする水性分散体の製造方法である。
【0035】
本発明に係る水性分散体の製造方法であれば、本発明に係る水性分散体を用いた化粧料に係るペン型アイライナーにおいても目詰まりが生じる恐れがない。
【0036】
本発明に係る水性分散体の製造方法に係る黒色顔料が、備長炭、竹炭、梅炭、又は活性炭から選ばれる少なくとも1種以上の炭パウダーであることを特徴とする水性分散体の製造方法である。
【0037】
本発明に係る水性分散体の製造方法であれば、着色力の高い黒色を発現可能な水性分散体を得ることができる。
【0038】
本発明に係る水性分散体の製造方法の黒色顔料は、更に0.1~10質量%の黒色酸化鉄を含有することを特徴とする水性分散体の製造方法である。
【0039】
本発明に係る水性分散体の製造方法であれば、0.1~10質量%の黒色酸化鉄を含有しても適切な流動性と分散状態を維持することが可能であり、着色力の高い黒色を発現可能な水性分散体を得ることができる。
【0040】
本発明に係る水性分散体の製造方法の分散機は、ビーズミルであることを特徴とする水性分散体の製造方法である。
【0041】
本発明に係る水性分散体の製造方法であれば、確実に所定の粒度分布を有する水性分散体を得ることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の水性分散体とその製造方法及びその水性分散体を含有する化粧料であれば、ペン型アイライナーにおいても目詰まりがなく、分散安定性に優れ、100nm以下のナノマテリアルを含有せず人への健康被害の心配がない、着色力の高い黒色を現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、本発明に係る水性分散体の実施例1の粒子径の頻度分布を示す頻度分布図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る水性分散体の実施例2の粒子径の頻度分布を示す頻度分布図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る水性分散体の実施例3の粒子径の頻度分布を示す頻度分布図である。
【
図4】
図4は、比較例1に係る水性分散体の粒子径の頻度分布を示す頻度分布図である。
【
図5】
図5は、比較例3に係る水性分散体の粒子径の頻度分布を示す頻度分布図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る水性分散体の製造工程を示す製造工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
先ず、本発明に係る化粧料用の水性分散体の実施例について、説明する。
【0047】
本発明に係る化粧料用の水性分散体(以下、単に「水性分散体」ともいう。)、水と、少なくとも、黒色の顔料として10~45質量%の黒色顔料と、黒色顔料との質量%比で30:1~3:1の高分子又はHLBが10以上の界面活性剤である分散剤と、黒色顔料との質量%比で3:1~5:3の多価アルコールと、を含有する。
【0048】
水性分散体は、その平均粒子径が340~392nmであり、水性分散体の80%以上の粒子は、粒子径が180~1200nmに分布する(
図1~3を参照)。平均粒子径が340nmよりも小さいと、100nm以下の粒子(ナノマテリアル)が検出される恐れがあり、好ましくない(
図5を参照)。一方、平均粒子径が392nmよりも大きいと、水性分散体中に粗粒が残り、時間経過とともに粗粒が沈降し、経時安定性が損なわれる恐れや、水性分散体をアイライナーなど用の化粧料とし、アイライナーを使用した際に、目詰まりによりカスレを生じる恐れがあり、好ましくない。
【0049】
また、水性分散体の最大粒子径が3500nmを超えると、時間経過とともに粗粒が沈降し、経時安定性が損なわれる恐れや、水性分散体をアイライナーなど用の化粧料とし、アイライナーを使用した際に、目詰まりによりカスレを生じる恐れが生じ、更に好ましくない。したがって、水性分散体の最大粒子径は、3500nm以下であることが好ましい。
【0050】
水性分散体の粘度は、15~300mPa・sであると好ましい。水性分散体の粘度が15mPa・s未満であると、1カ月50℃で放置すると水性分散体中の粒子が沈降してハードケーキ化し、経時安定性が劣る。水性分散体がハードケーキ化すると、化粧料として使用する際に再度分散させることは容易ではなく、好ましくない。一方、水性分散体の粘度が300mPa・sを超えると、1カ月50℃で放置すると、沈降は生じないものの流動性を失い、経時安定性が劣り、好ましくない。
【0051】
一方、水性分散体の明度L値は、24未満である。水性分散体は、明度が24未満であれば、水性分散体を化粧料とした際に、高い黒色を発現し高い黒色を発現する黒色顔料として適切であるが、明度が24以上であると、十分な黒さを得られず、高い黒色を発現する黒色顔料として不適切である。
【0052】
水性分散体は、黒色の顔料として10~45質量%、好ましくは22~40質量%、より好ましくは25~35質量%の黒色顔料を含有する。黒色顔料の含有量が、10質量%未満であると、アイライナー用の化粧料に処方した際に、求める着色力とするためには、多量の水性分散体の含有する必要があり、化粧料の処方の自由度が低下し好ましくない。また、黒色顔料の含有量が、20質量%以下であると、水性分散体の粒度分布が所定の範囲内であったとしても、1カ月50℃放置すると沈降してハードケーキを生じることから、水性分散体を化粧料として処方する際に再度分散処理を行えば処方可能ではあるものの、ハンドリング性は劣る(
図4を参照)。
【0053】
黒色顔料の含有量が40質量%を超えると、着色力は良好ではあるが、水性分散体の粘度が高くなり、ハンドリング性が悪く、好ましくない。また、黒色顔料の含有量が40質量%であっても、1カ月50℃放置すると流動性を失い、水性分散体を化粧料として処方する際に再度分散処理を行えば処方可能ではあるものの、ハンドリング性は劣る。
【0054】
一方、黒色顔料の含有量が25~35質量%であれば、適切な流動性と分散状態を維持することが可能で、経時安定性が良好であり、また、化粧料として求める着色力に適した水性分散体の処方を行うことができる。
【0055】
黒色顔料は、備長炭、竹炭、梅炭、又は活性炭から選ばれる少なくとも1種以上の炭の微粒紛(炭パウダー)であり、炭パウダー中の不純物は、ヒ素2ppm以下、鉛10ppm以下、水銀0.01ppb未満、ベンゾ[a]ピレン2ppb以下、硫黄0.06%以下である。
【0056】
分散処理に供される炭パウダーの原料としての原料炭パウダーは、炭の粉粒体であり、例えば、竹炭パウダーであれば、所定の粒度分布に粉砕・混合・分散処理を容易に行うことができることから、平均粒子径50μm以下、好ましくは平均粒子径10μm以下、より好ましくは平均粒子径6.5μm以下であれば良い。また、このような原料炭パウダーの市販品としては、竹炭パウダー5P(グリコ栄養食品株式会社製)、CHARCOPOWDER(大東化成工業株式会社製)、MA印活性炭(太平化学産業株式会社製)等が挙げられるが、本発明においては、竹炭パウダー5P(グリコ栄養食品株式会社製)を用いた。
【0057】
また、黒色顔料は、黒色酸化鉄(マグネタイト)を0.1~10質量%、好ましくは0.5~8質量%、より好ましくは1~6質量%含んでも良い。なお、黒色酸化鉄は、フッ素化合物、シリコーン系油脂、金属せっけん、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素、又は酸化ケイ素等の無機物を用いて公知の方法により表面処理を施したものであっても良い。なお、このような黒色酸化鉄の市販品としては、TAROX(チタン工業株式会社製)、UNIPURE(Sensient Cosmetic Technologies製)、Concelight、Sympholight(以上、日揮触媒化成株式会社製)、SunCROMA、SunPURO(以上、Sun Chemical Corporation製)が挙げられるが、本発明ではConcelightを使用した。
【0058】
分散剤は、高分子又はHLBが10以上の界面活性剤であり、高分子分散剤としては、例えば、アクリレーツコポリマーアンモニウム、アクリレーツコポリマー、スチレンアクリレーツコポリマーアンモニウム、スチレンアクリレーツコポリマー、PVP、PVP/VAなどであっても良い。高分子分散剤の分子量は、10万~20万であると、好ましい。また、高分子分散剤の添加量は、黒色顔料との質量%比で300:1~3:2、好ましくは質量%比で60:1~2:1、より好ましくは質量%比30:1~3:1であれば良い。
【0059】
一方、分散剤として界面活性剤は、ノニオンの界面活性剤であってHLB10以上のものが好ましい。例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどであっても良い。界面活性剤の添加量は、黒色顔料との質量%比で10:1以下、好ましくは15:1以下、より好ましくは20:1以下であれば良い。
【0060】
多価アルコールは、例えば、1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,2-ヘキサンジオール、カプリリルグリコールなどが挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。また、多価アルコールの添加量は、黒色顔料との質量%比で10:1~6:5、好ましくは質量%比で6:1~3:2、より好ましくは質量%比で3:1~5:3であれば良い。
【0061】
水性分散体には、更に、添加剤として、中和剤、増粘剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、保湿剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐殺菌剤、金属イオン封鎖剤など水溶性の物質を、黒色顔料の分散安定性を妨げない範囲で適宜配合することができる。
【0062】
次に、本発明に係る化粧料の実施例について、説明する。
【0063】
本発明に係る化粧料は、本発明に係る化粧料用の水性分散体、皮膜剤、多価アルコール、及び添加剤と、水とを混合した組成物である。水性分散体は、所定の着色力を発現すべく、黒色顔料が化粧料中に5~15質量%含有するように、配合している。また、化粧料は、黒色の化粧料、具体的には、ペン型若しくは壺型アイライナー又はアイブローとして、使用される。
【0064】
化粧料の明度L値は、25以下であり、明度L値が25を超えると、化粧料をアイライナー等として塗布した際に、十分な黒さを得られず、高い黒色を発現する黒色化粧料として不適切である。一方、化粧料の明度L値が25以下であると、高い黒色を発現することができ、黒色化粧料として好ましい。
【0065】
また、化粧料の筆記試験による液吐出量は、20mg以上である。液吐出量が20mg未満であると、アイライナーとして化粧料を塗布すると、カスレを生じ、好ましくない。一方、液吐出量が20mg以上であると、カスレを生じる恐れがなく、好ましい。
【0066】
皮膜剤としては、例えば、アクリレーツコポリマー、アクリレーツコポリマーアンモニウム、(スチレン/アクリレーツ)コポリマー、(スチレン/アクリレーツ)コポリマーアンモニウム、(アクリレーツ/VA)コポリマー、(スチレン/アクリレーツ/メタクリル酸アンモニウム)コポリマー、ポリアクリレートー21、(アクリレーツ/メタクリル酸ジメチルアミノエチル)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、アクリレーツコポリマー/ポリウレタン-1、アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、(スチレン/アクリル酸アルキル)コポリマーアンモニウム等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。また、皮膜剤は、化粧料中に20~30質量%、好ましくは25~35質量%含有する。
【0067】
多価アルコールは、例えば、1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,2-ヘキサンジオール、カプリリルグリコールなどが挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。また、多価アルコールの添加量は、3~25質量%、好ましくは5~20質量%、より好ましくは7~17質量%であれば良い。
【0068】
添加剤は、中和剤、増粘剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、保湿剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐殺菌剤、金属イオン封鎖剤など水溶性の物質を、黒色顔料の分散安定性を妨げない範囲で適宜配合することができる。
【0069】
次に、水性分散体の製造方法について、
図1のフローチャートを用いて説明する。
【0070】
先ず、原料混合工程201では、22~40質量%の黒色顔料、黒色顔料との質量%比で30:1~3:1の高分子分散剤及び界面活性剤、黒色顔料との質量%比で3:1~5:3の多価アルコール、並びに添加剤からなる原料101を所定量秤量し、所定量の水とともに予備混合機に投入し、予備混合を行い、原料混合物102とする。
【0071】
次に、分散工程202において、原料混合物102を分散機に移し、粉砕・混合・分散処理を行う。なお、分散機としては、湿式ビーズミル、ホモミキサー、ディスパー、ロールミル等の各種分散機が使用できるが、分散レベルのコントロールが容易な湿式ビーズミルが好ましい。所定時間分散処理を行い、水性分散中間体103とし、検査工程203において、水性分散中間体103からサンプルを採取し粒度分布を測定する。水性分散中間体の粒度分布が、所定の粒度分布(平均粒径が340~392nm)に到達していない場合には、分散工程202において測定された粒度分布に応じて更に分散処理を行い、再度、検査工程203において、採取した水性分散中間体103の粒度分布を測定し、水性分散中間体103が所定の粒度分布に達するまで、繰り返し分散処理と粒度分布の測定を行う。
【0072】
検査工程203において、採取した水性分散中間体103の粒度分布を測定し、水性分散中間体103の平均粒子径が340~392nmであり、水性分散体の80%以上の粒子の粒子径が180~1200nmに分布する場合には、分散処理を終了し、水性分散体104とする。もし、水性分散中間体103の最大粒子径が3500nmを超えている場合や、平均粒子径が340~392nmに達していない場合には、更に、分散処理を行う。一方、水性分散中間体103を過粉砕して100nm以下の粒子(ナノマテリアル)が検出される場合には、その水性分散中間体103は、不合格となり廃棄する。即ち、分散処理を行う工程で、随時粒度分布を測定し、過粉砕して水性分散体104中に100nm以下の粒子(ナノマテリアル)が検出されることを防ぐとともに、粗粒が残ることを防いでいる。
【0073】
黒色顔料は、備長炭、竹炭、梅炭、又は活性炭から選ばれる少なくとも1種以上の炭の微粒紛(炭パウダー)であり、炭パウダー中の不純物は、ヒ素2ppm以下、鉛10ppm以下、水銀0.01ppb未満、ベンゾ[a]ピレン2ppb以下、硫黄0.06%以下である。また、黒色顔料用の原料として供される原料炭パウダーが竹炭微粒紛であれば、竹炭微粒紛の平均粒子径が50μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは6.5μm以下であれば、確実に所定の粒度分布の水性分散体を得ることができ好ましい。
【0074】
また、黒色顔料は、黒色酸化鉄(マグネタイト)を0.1~10質量%、好ましくは0.5~8質量%、より好ましくは1~6質量%含んでも良い。なお、黒色酸化鉄は、フッ素化合物、シリコーン系油脂、金属せっけん、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素、又は酸化ケイ素等の無機物を用いて公知の方法により正面処理を施したものであっても良い。なお、このような黒色酸化鉄の市販品としては、TAROX(チタン工業株式会社製)、UNIPURE(Sensient Cosmetic Technologies製)、Concelight、Sympholight(以上、日揮触媒化成株式会社製)、SunCROMA、SunPURO(以上、Sun Chemical Corporation製)が挙げられるが、本発明ではConcelightを使用した。
【実施例】
【0075】
以下、本発明に係る水性分散体の実施例について説明する。
【0076】
各水性分散体は、以下に示す成分を表1及び表2に示す割合で、室温(25℃)で混合・分散処理して調製した。なお、各表中に示す成分の割合は、別段の指定がない限り、原料の質量%に基づく。
【0077】
実施例1
30質量%の黒色顔料としての原料炭パウダー(グリコ栄養食品株式会社製竹炭パウダー5P)、炭パウダーとの質量%比で20:3の高分子分散剤としてのアクリル樹脂、炭パウダーとの質量%比で2:1のポリオール、及び水を予備混合する。予備混合後、湿式ビーズミルを用いて分散処理し、水性分散体を得た。
【0078】
実施例2
実施例1において用いた原料炭パウダーに加えて、黒色酸化鉄(日揮触媒化成株式会社製CONCELIGHT BP-10S)を加えた以外は全て同じ条件にて分散処理し、水性分散体を得た。
【0079】
実施例3
実施例2において用いた分散剤に加えて、界面活性剤(日光ケミカルズ株式会社製NIKKOL BB-30)を加えた以外は全て同じ条件にて分散処理し、水性分散体を得た。
【0080】
実施例4
原料炭パウダー(竹炭パウダー5P)を25質量%の黒色顔料とし、それ以外は実施例2と全て同じ条件で分散処理し、水性分散体を得た。
【0081】
実施例5
原料炭パウダー(竹炭パウダー5P)を35質量%の黒色顔料とし、それ以外は実施例2と全て同じ条件で分散処理し、水性分散体を得た。
【0082】
実施例6
原料炭パウダー(竹炭パウダー5P)を40質量%の黒色顔料とし、それ以外は実施例2と全て同じ条件で分散処理し、水性分散体を得た。
【0083】
次に、水性分散体の比較例について、説明する。
【0084】
比較例1
原料炭パウダー(竹炭パウダー5P)を20質量%の黒色顔料とし、それ以外は実施例2と全て同じ条件で分散処理し、水性分散体を得た。
【0085】
比較例2
原料炭パウダー(竹炭パウダー5P)を50質量%の黒色顔料とし、それ以外は実施例2と全て同じ条件で分散処理し、水性分散体を得た。
【0086】
比較例3
実施例2と同一の成分とし、水性分散体の平均粒子径D50が340nmよりも小さくなる条件で分散処理し、水性分散体を得た。
【0087】
比較例4
実施例2と同一の成分とし、水性分散体の平均粒子径D50が392nmよりも大きくなる条件で分散処理し、水性分散体を得た。
【0088】
比較例5
実施例2において用いた原料炭パウダー(竹炭パウダー5P)に代えて、大東化成工業株式会社製炭パウダー(CHARCOPOWDER)を用いた以外は全て同じ条件にて分散処理し、化粧料用水性分散体を得た。
【0089】
比較例6
実施例2において用いた原料炭パウダー(竹炭パウダー5P)に代えて、太平化学産業株式会社製炭パウダー(MA印活性炭)を用いた以外は全て同じ条件にて分散処理し、化粧料用水性分散体を得た。
【0090】
比較例7
比較例1において用いた原料炭パウダー(竹炭パウダー5P)に代えて、太平化学産業株式会社製炭パウダー(MA印活性炭)太平化学産業株式会社製を用いた以外は全て同じ条件にて分散処理し、化粧料用水性分散体を得た。
【0091】
次に、水性分散体の評価方法について説明する。
【0092】
(黒さ)
上記のように作製した実施例1から実施例4まで、及び製造比較例1から比較例3までの水性分散体とアクリル酸アルキルコポリマーアンモニウムを使用した炭パウダー濃度が5%の評価インクを作製し、上質紙に展色した見本を分光光度計(エックスライト社製 X-Rite-Color i5)を用いて明度L値を測定した。測定波長域360~750nm(10nm間隔)、D65/10°、excludeの測定条件によって評価した。L値が低いほど、黒い判定となる。
【0093】
(粘度)
作製した水性分散体をB型粘度計(東機産業株式会社製 TVB-10M)にて25℃、1分、60rpmの条件で測定した。
【0094】
(経時変化)
作製した水性分散体を50℃の条件で1カ月までの経時変化(分離・沈降状態)を確認した。
【0095】
(ケーキング状態)
作製した水性分散体を50℃の条件で1カ月までのケーキング状態を確認した。
【0096】
(粒度)
作製した水性分散体を動的光散乱法(DSL)周波数解析(FFT-ヘテロダイン法)による粒度分布測定器(マイクロトラック・ベル株式会社製 Nanotrac Wave II)を用いて測定した。
図1~5のそれぞれに、実施例1、実施例2、実施例3、比較例1、及び比較例3の測定結果を示す。
【0097】
下記表1に本発明に係る水性分散体の実施例1~6、表2に水性分散体の比較例1~7の上記の評価方法により評価した結果を併せて示す。
【0098】
実施例1から実施例6の明度L値は24以下であり、黒い水性分散体を得ることができた。また、経時での顔料の沈降も見られず安定した水性分散体を得ることができた。但し、実施例6のように、炭パウダー濃度を40%まで高めると、1カ月50℃で放置すると、ケーキングはしないものの、流動性を失い、経時的にハンドリング性が劣る結果となった。
【0099】
比較例1のように炭パウダー濃度を20質量%に低減すると、1カ月50℃で放置すると、顔料の沈降が確認されハードケーキ化するため、経時安定性に劣る結果となった。一方、比較例2のように炭パウダー濃度を50質量%に高めると、水性分散体はペースト状となり、分散処理をすることができなかった。また、比較例3のように水性分散体の平均粒子径D50が340nmよりも小さくなると、100nm以下の粒子が発生し、比較例4のように水性分散体の平均粒子径D50が392nmよりも大きくなると、1カ月50℃で放置すると、顔料の沈降が確認されハードケーキ化するため、経時安定性に劣る結果となった。一方、比較例5のように大東化成工業株式会社製の炭パウダーを使用すると、L値が高く、黒さに劣る結果となった。太平化学産業株式会社製の炭パウダーを使用すると、比較例6のように炭パウダー濃度30%では粘度がペースト状になり分散処理ができず、比較例7のように炭パウダー濃度を20%に低減すると経時で顔料の沈降が確認されたため、経時安定性に劣る結果となった。
【0100】
【0101】
【0102】
以下、本発明に係る水性分散体を含有する化粧料の実施例について説明する。
【0103】
実施例で得られた水性分散体と皮膜剤を用いて、ペン型アイライナーを作製した。皮膜剤の市販品としては、大同化成工業株式会社製ビニゾール、大東化成工業株式会社製DAITOSOL、インターポリマー社製SYNTRAN、アクゾノーベル株式会社製ヨドゾールなどが挙げられるが、本発明では代表的にヨドゾールを使用した。表3に示す実施例101~103、及び比較例201~204による以下の組成物として、表3に示す成分を室温(25℃)で混合して調製した。表2に示す成分の量の数値は全て、別段の指定がない限り、原料の「質量%」に基づく。調製した組成物を用いて、顔料濃度を10質量%に統一したブラシタイプのペン型アイライナーを作製し、黒さ、筆記試験、経時安定性、耐水性を評価した。
【0104】
実施例101
実施例1で得られた水性分散体、アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム(アクゾノーベル株式会社製 ヨドゾール GH800F)1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、添加剤、水を混合した組成物を用いてペン型アイライナーを作製した。
【0105】
実施例102
実施例101において用いた分散体に代えて、実施例2分散体を用いた以外は全て同じ条件にてペン型アイライナーを作製した。
【0106】
実施例103
実施例102において用いた分散体に代えて、実施例3分散体を用いた以外は全て同じ条件にてペン型アイライナーを作製した。
【0107】
比較例201
実施例102において用いた分散体に代えて、大東化成工業株式会社製WD-VCB25(顔料純分25%)を用いた以外は全て同じ条件にてペン型アイライナーを作製した。
【0108】
比較例202
実施例102において用いた分散体に代えて、日弘ビックス株式会社製 COS―W 850A BLACK(顔料純分36%)を用いた以外は全て同じ条件にてペン型アイライナーを作製した。
【0109】
比較例203
実施例102において用いた分散体に代えて、大東化成工業株式会社製WD―VCB25、日弘ビックス株式会社製 COS―W850A BLACK用いた以外は全て同じ条件にてペン型アイライナーを作製した。
【0110】
比較例204
実施例102において用いた水性分散体に代えて、比較例5の水性分散体を用いた以外は全て同じ条件にてペン型アイライナーを作製した。
【0111】
次に、水性分散体を用いた化粧料の評価方法について説明する。
【0112】
(黒さ)
作製した実施例101~103、及び比較例201~204を用いたアイライナーを使用し、コピー用紙で一辺の長さ2cmの正方形を筆記線で埋めた。次に、分光光度計(エックスライト社製 X-Rite-Color i5)を用いて、この正方形の表面の明度L値を測定した。測定波長域360~750nm(10nm間隔)、D65/10°、excludeの測定条件によって評価した。L値が低いほど、黒い判定となる。
【0113】
(筆記試験)
作製した実施例101~103、及び比較例201~204を用いたアイライナーの重量を予め測定し、筆記前重量とした。そして、そのアイライナーを使用し、コピー用紙上に、長さ20cmの筆記線を10本に引いた。その後、再度アイライナーの重量を測定し、筆記後重量とした。筆記前重量と筆記後重量との差、即ち、コピー用紙上に線を引くために使用した化粧料の重量を算出し、液吐出量とした。液吐出量が20mg未満であると、筆記する際にカスレの要因となり、好ましくない。、
【0114】
(経時安定性)
作製した実施例101~103、及び比較例201~204のアイライナーを40℃の条件で1カ月までの目視による経時変化(コピー用紙に筆記した際のカスレ/濃度変化)を確認した。
良好:40℃1カ月で大きな筆記線のカスレ/濃度変化がない。
可:40℃1カ月で筆記線のカスレ/濃度変化があるが、コピー用紙に筆記できる。
不良:40℃1カ月でコピー用紙へ筆記できない。
【0115】
(耐水性)
作製した実施例101~103、及び比較例201~204のアイライナーを使用し、1本のラインを評価者の手の裏(甲)に描いた。10分間乾燥させた後、水を筆記線上に落とし、続いてその水の上を指で一定の力、且つスピードで30回往復した。筆記線の外観を目視観察によって評価した。
良好:筆記線の滲みや脱落はほとんど見られなかった
可:筆記線の滲みや脱落が少し見られた
不良:筆記線はほとんど維持されなかった
【0116】
下記表3に本発明に係る水性分散体を含む化粧料の実施例101~103及び比較例201~204の上記の評価方法により評価した結果を併せて示す。
【0117】
実施例101~103は明度L値が低く、黒い筆記線を得ることができた。また、経時で筆記線のカスレや濃度変化が少なく、安定したアイライナーを得ることができた。
【0118】
一方、比較例201のように大東化成工業株式会社製の分散体を使用すると、L値が高いため黒さがなく液吐出量が少ないため筆記線のカスレが起こりやすく、耐水性が劣る結果となった。比較例202のようにCOS―W850A BLACKを使用するとL値が極端に高く、黒さがない結果となった。比較例203のように大東化成工業株式会社製の分散体と日弘ビックス株式会社の黒色酸化鉄の分散体を併用すると、液吐出量が少ないため筆記線のカスレが起こりやすく、耐水性が劣る結果となった。また、比較例204のように、明度L値が高い比較例5の水性分散体を用いると、明度L値が高いため黒さがなく液吐出量が少ないため筆記線のカスレが起こり易い結果となった。
【0119】
【0120】
以上、本発明について実施例を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施例に記載の範囲には限定されない。上記実施例に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた例も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明に係る水性分散体であれば、100nm以下の粒子を含まない黒さと経時安定性に優れた化粧料用の水性分散体を得ることができる。また、この水性分散体をペン型アイライナーに適用した際、本発明に係る水性分散体は、黒さと高い経時安定性を示し、筆記線のカスレや濃度変化を起こさない耐水性に優れた良好なアイライナーを作製することができる。
【符号の説明】
【0122】
101 原料
102 原料混合物
103 水性分散中間体
104 水性分散体
201 原料混合工程
202 分散工程
203 検査工程