(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】表示体取付構造
(51)【国際特許分類】
G09F 7/06 20060101AFI20230823BHJP
G09F 7/14 20060101ALI20230823BHJP
G09F 19/22 20060101ALI20230823BHJP
E04F 13/24 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
G09F7/06 Z
G09F7/14
G09F19/22 D
E04F13/24
(21)【出願番号】P 2021183529
(22)【出願日】2021-11-10
【審査請求日】2023-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521494278
【氏名又は名称】山崎金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 隼人
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-107495(JP,A)
【文献】特開平11-152830(JP,A)
【文献】登録実用新案第3127738(JP,U)
【文献】登録実用新案第3100001(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0063183(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 7/00 - 7/22
13/00 - 15/02
19/22 - 21/04
E04F 10/00 - 21/32
B44C 1/00 - 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の外壁面のガラス板に表示体を取り付けるための表示体取付構造であって、
前記表示体に開設された複数の止着孔と当該各止着孔に位置合わせして前記ガラス板に開設された複数の貫通孔とに挿通されたスリーブと、
前記スリーブの通孔に挿通され、頭部が前記スリーブの一の端部に当接したボルトと、
前記ボルトの軸部に螺合され、前記スリーブの他の端部に座金を介して当接したナットと、を備え、
前記表示体と前記ガラス板の外側面との間、前記スリーブの外周面と前記ガラス板の前記貫通孔の内周面との間、及び前記座金と前記ガラス板の内側面との間に緩衝部材が設けられていることを特徴とした表示体取付構造。
【請求項2】
前記座金と前記ナットとの間に、
前記表示体の前記各止着孔に位置合わせして複数の貫通孔が開設され、当該各貫通孔に前記ボルトの軸部が挿通された裏板が介在していることを特徴とした請求項1に記載の表示体取付構造。
【請求項3】
前記裏板が、半透明の合成樹脂材から成り、当該裏板の裏側に照明が設けられていることを特徴とした請求項2に記載の表示体取付構造。
【請求項4】
前記ボルトの軸部に、基端が前記建築物の躯体に固定されたワイヤーの先端が連結されていることを特徴とした請求項1~請求項3の何れかに記載の表示体取付構造。
【請求項5】
前記表示体が、底板部を備えた箱文字から成り、当該底板部に前記止着孔が開設されていることを特徴とした請求項1~請求項4の何れかに記載の表示体取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体取付構造、より詳しくは、建築物の外壁面に設けられたガラス板に箱文字等の表示体を取り付けるための表示体の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高層ビル等の建築物において、ガラス板を嵌めた窓部は、その大きさ、縦横比率、配列等が建築物のファサード等の外壁面デザインに大きな影響を与える重要なデザイン要素の一つである。また、近年、建築物のデザイン性を高めるために、建築物の外壁面のほぼ全面をガラス板で構成する所謂ガラスカーテンウォール構造が多く採用されている。
【0003】
また、周知のとおり、建築物の外壁面には、例えば会社の名称やロゴマーク等を表示した箱文字や切り文字等の表示体を取り付けることが一般的に行われており、これら表示体の大きさや取付位置等もまた、建築物の外壁面のデザイン性を大きく左右する。
【0004】
ところが、従来、これらの表示体は、建築物の窓部以外の外壁面に直接取り付けるか、或いは、窓部以外の外壁面に固定した支持アームを介して取り付けるより仕方がなく、これら表示体を、壁面デザイン上、最適な位置に取り付けることが制約される難点があり、また、支持アームが目に付いて壁面デザインを損なう難点があった。
【0005】
なお、下記特許文献1には、ガラスカーテンウォール構造の建築物の外壁面に、飾り物や足場等を取り付けるための取付構造が開示されている。しかしながら、これは、建築構造物に複数のガラス板を連結固定するために設けられた取付装置を介して、飾り物等を取り付ける取付構造であり、飾り物等をガラス板に直接、取り付けるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-152830号公報(
図12、
図13参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の建築物の外壁面への表示体の取付構造に上記のような難点があったことに鑑みて為されたもので、建築物の外壁面を構成する、例えば窓部等のガラス板やガラスカーテンウォール構造のガラス板に直接、各種の表示体を取り付けることができる表示体取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、建築物の外壁面のガラス板に表示体を取り付けるための表示体取付構造であって、前記表示体に開設された複数の止着孔と当該各止着孔に位置合わせして前記ガラス板に開設された複数の貫通孔とに挿通されたスリーブと、前記スリーブの通孔に挿通され、頭部が前記スリーブの一の端部に当接したボルトと、前記ボルトの軸部に螺合され、前記スリーブの他の端部に座金を介して当接したナットと、を備え、前記表示体と前記ガラス板の外側面との間、前記スリーブの外周面と前記ガラス板の前記貫通孔の内周面との間、及び前記座金と前記ガラス板の内側面との間に緩衝部材が設けられていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明は、前記座金と前記ナットとの間に、前記表示体の前記各止着孔に位置合わせして複数の貫通孔が開設され、当該各貫通孔に前記ボルトの軸部が挿通された裏板が介在していることを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、前記裏板が、半透明の合成樹脂材から成り、当該裏板の裏側に照明が設けられていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、前記ボルトの軸部に、基端が前記建築物の躯体に固定されたワイヤーの先端が連結されていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、前記表示体が底板部を備えた箱文字から成り、当該底板部に前記止着孔が開設されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る表示体取付構造によれば、表示体の各止着孔とガラス板の各貫通孔とに挿通されたスリーブの一の端部がボルトの頭部と当接し、スリーブの他の端部が座金を介してナットと当接しているので、ボルトに螺合したナットの締結力がガラス板の貫通孔の周辺部に過度に加わってガラス板を破損する惧れもなく、表示体をガラス板に安全かつ確実に取り付けることができる。
【0014】
しかも、表示体とガラス板の外側面との間、スリーブの外周面とガラス板の貫通孔の内周面との間、及び座金とガラス板の内側面との間に緩衝部材が設けられているので、例えば風圧等により表示体に外力が加わった場合でも、これらの緩衝部材によって、その外力を分散させることができ、表示体をガラス板に安全かつ確実に取り付けておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の表示体取付構造を適用して外壁面のガラス板に表示体を取り付けた状態を示す建築物の一部省略正面図である。
【
図2】本実施形態の表示体取付構造の表示体の斜視図である。
【
図3】本実施形態の表示体取付構造の表示体の背面図である。
【
図4】本実施形態の表示体取付構造を示す概略断面図である。
【
図5】本実施形態の表示体取付構造を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、本実施形態の表示体取付構造10は、建築物Bの外壁面に設けられたガラス板2のガラス面に直接、表示体1を取り付けるものである。本実施形態では、建築物Bの外壁面が、ガラスカーテンウォール構造により構成されており、建築物Bの外壁面のほぼ全面が多数枚のガラス板2・2…によって覆われている。この建築物Bの正面上部に設けられた計ニ枚のガラス板2のうち、左側のガラス板2には、例えば「〇」及び「△」をそれぞれ表示する二つの表示体1が取り付けられ、右側のガラス板2には、「金」及び「属」をそれぞれ表示する二つの表示体1が取り付けられている。
【0017】
これら表示体1は、
図2及び
図3に示すように、例えば「金」、「属」の文字や、その他の数字、図形、装飾等を表示するものであり、本実施形態の表示体1は、例えば「金」の文字等を模った表板部11と、この表板部11の外周端縁に溶接されて後方へ延びる側板部12と、この側壁部12の後端縁部に不図示のビス等によって着脱自在に固定された底板部13とを備えたステンレス鋼製の箱文字から構成されている。そして、表示体1の底板部13の所要位置には、複数の止着孔131・131…が開設されている。なお、例えば「属」の文字のように、表示する文字等が複数の構成部分(例えば部首と旁)から成る場合、これら複数の構成部分のそれぞれの底板部13に、複数の止着孔131を開設することが好ましい。
【0018】
この表示体1を取り付けるべきガラス板2は、
図4に示すように、建築物Bに設けられた従来公知のサッシ22によって予め固定されており、
図5に示すように、このガラス板2のガラス面の所要位置に複数の貫通孔21が開設されている。各貫通孔21の開設位置は、ガラス板2のガラス面上における表示体1の取付位置を決定した上で、表示体1の各止着孔131に位置合わせして決定される。なお、本実施形態では、ガラス板2が、外ガラス2aと内ガラス2bとを中間膜を介して貼り合わせて成る合わせガラスから構成されており、各貫通孔21は、これら外ガラス2a、中間膜、及び内ガラス2bを貫通している。
【0019】
また、本実施形態では、ガラス板2の内ガラス2bの内側面側に、半透明の合成樹脂材から成る裏板7が配設されており、この裏板7にも、表示体1の複数の止着孔131に位置合わせした複数の貫通孔71が開設されている。本実施形態の裏板7は、乳白色の半透明アクリル板材から形成されている。
【0020】
本実施形態の表示体取付構造10は主として、
図4及び
図5に示すように、表示体1の底板部13に開設された複数の止着孔131及びガラス板2に開設された複数の貫通孔21に挿通されたスリーブ3と、このスリーブ3の通孔31及び裏板7に開設された複数の貫通孔71に挿通されたボルト4と、このボルト4の軸部42に螺合されたナット5とから構成されている。
【0021】
スリーブ3は、ステンレス鋼製の円筒体から成り、表示体1の各止着孔131及びガラス板2の各貫通孔21内に挿通された状態で、スリーブ3の一の端部32がボルト4の頭部41と当接し、スリーブ3の他の端部33が、座金51、裏板7、座金52及びばね座金53を介してナット5と当接している。そして、表示体1の底板部13とガラス板2の外側面との間に緩衝部材61が設けられ、スリーブ3の外周面とガラス板2の貫通孔21の内周面との間に緩衝部材62が設けられ、座金51とガラス板2の内側面との間に緩衝部材63が設けられている。本実施形態では、これら緩衝部材61・62・63が軟質塩化ビニル系樹脂材から形成されている。
【0022】
なお、
図5中、符号14で指示するものは、ガラス板2に取り付けた表示体1の底板部13に、表示体1の側壁部12を着脱自在に固定するためのビスである。また、符号64で指示するものは、表示体1の側壁部12とガラス板2との入隅部に設けられたコーキング材である。
【0023】
また、本実施形態の表示体取付構造10は、
図4に示すように、裏板7の裏側において、建築物Bのサッシ22に固定された照明室81が設けられており、この照明室81の後壁部82に複数のLED照明8・8…が設けられている。このことで、各LED照明8から照射された光を乳白色アクリル板材から成る裏板7により拡散し、表示体1の周辺部においてガラス板2の外側面を一様に発光させるようにしている。
【0024】
更にまた、本実施形態の表示体取付構造10は、
図4に示すように、ボルト4の軸部42に、基端が建築物Bの躯体に固定されたワイヤー9の先端が連結されている。本実施形態では、ワイヤー9の先端が、ボルト4の軸部42に螺合されたアイナット91に連結され、ワイヤー9の基端が建築物Bの躯体に固定されたフレームFに連結されている。このことで、例えば地震等により万が一、ガラス板2が破損した場合であっても、表示体1の落下を未然に防ぐことができる。
【0025】
このように本実施形態の表示体取付構造10によれば、表示体1の各止着孔131及びガラス板2の各貫通孔21内に挿通されたスリーブ3の一の端部32が、スリーブ3の通孔31内に挿通されたボルト4の頭部41と当接すると共に、スリーブ3の他の端部33が、座金51、裏板7、座金52、及びばね座金53を介してナット5と当接しているので、ボルト4に螺合したナット5を締め付けた際に、その締結力がガラス板2の貫通孔21の周辺部に過度に加わってガラス板2を破損する惧れもなく、表示体1をガラス板2に安全かつ確実に取り付けることができる。
【0026】
しかも、本実施形態の表示体取付構造10によれば、表示体1とガラス板2の外側面との間、スリーブ3の外周面とガラス板2の貫通孔21の内周面との間、及び座金51とガラス板2の内側面との間にそれぞれ、緩衝部材(61、62、63)が設けられているので、例えば風圧等により表示体1に外力が加わった場合でも、これらの緩衝部材(61、62、63)によって、その外力を分散させることができ、表示体1をガラス板2に安全かつ確実に取り付けておくことができる。
【0027】
さらに、本実施形態の表示体取付構造10によれば、一つの表示体1に複数の止着孔131が開設され、この表示体1とガラス板2とが複数箇所でボルト4及びナット5により接合されており、しかも、この表示体1の底板部13のほぼ全面が緩衝部材61を介してガラス板2に当接しているので、風力等による外力が、これら複数箇所のボルトナット接合部のうちの一か所に集中するようなこともなく、表示体1の取付安定性を大幅に向上させることができる。
【0028】
さらに、本実施形態の表示体取付構造10によれば、一枚の裏板7に複数の貫通孔71が開設され、この裏板7とガラス板2とが複数箇所でボルト4及びナット5により接合されているので、表示体1の取付安定性を更に向上させることができる。
【0029】
以上、本実施形態の表示体取付構造10について説明したが、本発明は他の実施形態でも実施することができる。例えば、上記実施形態では、表示体1を箱文字から構成しているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、表示体を例えば切り文字等から構成してもよく、表示体の構成については種々の設計変更が可能である。
【0030】
本発明は、その他、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよく、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施してもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 表示体取付構造
1 表示体
11 表板部
12 側壁部
13 底板部
131 止着孔
2 ガラス板
21 貫通孔
3 スリーブ
31 通孔
32 一の端部
33 他の端部
4 ボルト
41 頭部
42 軸部
5 ナット
51 座金
61、62、63 緩衝部材
7 裏板
71 貫通孔
8 照明
9 ワイヤー
B 建築物