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特許7335643メタン酸化活性を有する新規な酵素ナノ粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】メタン酸化活性を有する新規な酵素ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/96 20060101AFI20230823BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230823BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230823BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230823BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230823BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230823BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230823BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230823BHJP
   C12P 7/04 20060101ALI20230823BHJP
   C12N 9/04 20060101ALN20230823BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230823BHJP
【FI】
C12N9/96 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/113 130Z
C12P21/02 C
C12P7/04
C12N9/04 Z
C12N15/62 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021558597
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 KR2020003841
(87)【国際公開番号】W WO2020204425
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2019-0036923
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510273880
【氏名又は名称】コリア ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】リ, ジェウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヒュン ジン
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-095002(JP,A)
【文献】Appl Microbiol Biotechnol, 2007 Feb 14, vol. 75, no. 2, pp. 347-355
【文献】Korean J Chem Eng, 2013, vol. 30, no. 5, pp. 977-987
【文献】J Mater Chem, 2011 Oct 3, vol. 21, pp. 17468-17475
【文献】Angew Chem Int Ed, 2017 SEP 13, vol. 56, no. 47, pp. 14933-14936
【文献】ACS Nano, 2015 Oct 2, vol. 9, no. 11, pp. 10852-10860
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/000- 9/99
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質の表面にメタン酸化酵素の第1活性部位と第2活性部位が融合・発現されたものであり、
前記メタン酸化酵素は、pMMOであり、
前記第1活性部位はpmoB1又はその変異体であり、前記第2活性部位はpmoB2であり、
前記第1活性部位は、配列番号2の配列を含み、前記第2活性部位は、配列番号3の配列を含み、
前記変異体は、H48N及びH72Nからなる群より選択される一つ以上を含むことを特徴とする、メタン酸化酵素(MMO)活性を有する酵素ナノ粒子。
【請求項2】
前記タンパク質は、フェリチン(ferritin)、フェリチン様タンパク質(ferritin-like protein)、マグネトソーム(magnetosome)構成タンパク質、大腸菌DNA結合タンパク質(Escherichia coli DNA binding protein)、ヒトα-トコフェロール伝達タンパク質(Human α-Tocopherol transfer protein)、ヒトPERKシャペロン(Human PERK chaperone)またはB型肝炎ウイルスカプシドタンパク質(Hepatitis B virus capsid)、プロテアソーム(proteasome)、タバコモザイクウイルスコートタンパク質(Tobacco mosaic virus coat protein)であることを特徴とする、請求項1に記載の酵素ナノ粒子。
【請求項3】
前記タンパク質は、フェリチン重鎖タンパク質であることを特徴とする、請求項1に記載の酵素ナノ粒子。
【請求項4】
細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質の表面にメタン酸化酵素の第1活性部位と第2活性部位が融合・発現された、MMO活性を有するナノ粒子を生成するステップと、前記生成されたナノ粒子を回収するステップとを含み、
前記メタン酸化酵素は、pMMOであり、
前記第1活性部位はpmoB1又はその変異体であり、前記第2活性部位はpmoB2であり、
前記第1活性部位は、配列番号2の配列を含み、前記第2活性部位は、配列番号3の配列を含み、
前記変異体は、H48N及びH72Nからなる群より選択される一つ以上を含むことを特徴とする酵素ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
i)細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質をコードする核酸と、
ii)メタン酸化酵素の第1活性部位をコードする核酸と、
iii)メタン酸化酵素の第2活性部位をコードする核酸とが導入されており、
ナノ粒子タンパク質の表面に前記第1活性部位と前記第2活性部位を融合・発現させたものであり、
前記メタン酸化酵素は、pMMOであり、
前記第1活性部位はpmoB1又はその変異体であり、前記第2活性部位はpmoB2であり、
前記第1活性部位は、配列番号2の配列を含み、前記第2活性部位は、配列番号3の配列を含み、
前記変異体は、H48N及びH72Nからなる群より選択される一つ以上を含むことを特徴とする、メタン酸化酵素(MMO)活性を示す酵素ナノ粒子生成能を有する組換え微生物。
【請求項6】
前記タンパク質は、フェリチン(ferritin)、フェリチン様タンパク質(ferritin-like protein)、マグネトソーム(magnetosome)構成タンパク質、大腸菌DNA結合タンパク質(Escherichia coli DNA binding protein)、ヒトα-トコフェロール伝達タンパク質(Human α-Tocopherol transfer protein)、ヒトPERKシャペロン(Human PERK chaperone)またはB型肝炎ウイルスカプシドタンパク質(Hepatitis B virus capsid)、プロテアソーム(proteasome)、タバコモザイクウイルスコートタンパク質(Tobacco mosaic virus coat protein)であることを特徴とする、請求項に記載の組換え微生物。
【請求項7】
前記タンパク質は、フェリチン重鎖タンパク質であることを特徴とする、請求項に記載の組換え微生物。
【請求項8】
i)細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質をコードする核酸と、
ii)メタン酸化酵素の第1活性部位をコードする核酸と、
iii)メタン酸化酵素の第2活性部位をコードする核酸とが作動可能に連結されたベクターが導入されたことを特徴とする、請求項に記載の組換え微生物。
【請求項9】
(a)i)細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質をコードする核酸、および、ii)メタン酸化酵素の第1活性部位をコードする核酸が作動可能に連結された第1ベクターと、
(b)i)細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質をコードする核酸、および、iii)メタン酸化酵素の第2活性部位をコードする核酸が作動可能に連結された第2ベクターとが導入されていることを特徴とする、請求項に記載の組換え微生物。
【請求項10】
i)細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質をコードする核酸と、ii)メタン酸化酵素の第1活性部位をコードする核酸との間;または
ii)メタン酸化酵素の第1活性部位をコードする核酸と、iii)メタン酸化酵素の第2活性部位をコードする核酸との間に、ペプチドリンカーをコードする核酸をさらに含むことを特徴とする、請求項8または9に記載の組換え微生物。
【請求項11】
前記細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質をコードする前記核酸の上流にタグを含むことを特徴とする、請求項に記載の組換え微生物。
【請求項12】
前記第1ベクターまたは前記第2ベクター中の前記細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質をコードする前記核酸の上流にタグを含むことを特徴とする、請求項に記載の組換え微生物。
【請求項13】
請求項1に記載の酵素ナノ粒子が担体に担持された固定化酵素ナノ粒子。
【請求項14】
前記担体は、キトサン、ゼラチン、コラーゲン、ポリ-L-リシン、ポリ-L-ヒスチジン、ポリ-L-アルギニン、ヒアルロン酸、ポリガンマグルタミン酸、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、グリコーゲン、アミロース、デキストラン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタクリレートフルラン、ベータグルカン、スターチ、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロンドン共重合体、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリジメチルアミノエチルメタアクリレート、ポリN,N-エチルアミノエチルメタクリレート、ポリ乳酸、グリグリコール酸、ポリラクチクグリコール酸、またはポリカプロラクトンであることを特徴とする、請求項13に記載の酵素ナノ粒子。
【請求項15】
請求項1に記載の酵素ナノ粒子、請求項に記載の組換え微生物、又は請求項13に記載の固定化酵素ナノ粒子を用いて、メタンをメタノールに変換する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質にメタン酸化細菌の重要な活性部位が融合・発現された、メタンをメタノールに変換できる新しい酵素ナノ粒子に関する。具体的には、メタン酸化酵素(MMO)活性を有するタンパク質およびメタン酸化酵素の活性部位を含む酵素ナノ粒子、その製造方法、前記タンパク質およびメタン酸化酵素の活性部位をコードする核酸が導入された組換え微生物、前記酵素ナノ粒子が担体に担持された固定化酵素ナノ粒子及びそれを用いてメタンをメタノールに変換する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタンガスは、シェールガス(shale gas)、埋立ガス(landfill gas)、バイオガス(biogas)などの主成分であって、地球上で最も豊富なガス資源であり、メタノールの生産原料である。現在、様々な生活用品や主要産業用素材として活用されている炭化水素物は、原油を原料として生産されているが、これらのほとんどは、メタノールからも生産可能であり、メタノールは、原油を代替できる炭化水素の製造原料として注目を集めてきた。
【0003】
現在までに、メタノールの産業生産はメタンガスの化学的な酸化工程によって製造されている。しかし、このメタン酸化工程は、高温、高圧の反応条件に起因する高エネルギー消費、反応副産物の生成による環境汚染の誘発、低い反応選択性による低反応転化率など、技術面、経済面、環境面で多くの問題を抱えている。
【0004】
これらの問題を解決するための代替手段として、メタン酸化細菌(Methanotrophs)由来のメタン酸化酵素(methane monooxygenase、MMO)を活用するバイオプロセスに世界的な関心が集中されてきた。特に、膜タンパク質の形で存在するメタン酸化酵素は、化学的酸化工程に比べて非常に穏やかな条件(45℃、常圧)でもメタンガスの大部分を副産物の発生なしに選択的にメタノールに変換させる酵素であり、産業的な活用価値が非常に高い酵素である。メタン資化性細菌(Methanotrophic bacteria)の中で、粒子状の形態(particulate:pMMO)または可溶性の形態(soluble:sMMO)で存在するMMO(methane monooxygenase)は、低反応性のメタンおよび他の炭素材料の、メタノールおよびそれに対応する酸化生成物への酸化を触媒する、産業的に有望な酵素である。しかし、天然メタノトロフの培養または組換え発現系のいずれかに基づく様々なアプローチにもかかわらず、活性MMOを簡単、迅速、高収率に生産することは、依然としてその工業的応用において大きな課題である。
【0005】
いくつかのメタノトロフ(methanotroph)で発現される水溶性の形態であるsMMOおよびより普遍的な膜結合粒子の形態であるpMMOは、いずれもバイオ産業的に生産するための可能性を実現するために広く研究されてきたが、機能的に活性なMMOを簡単、迅速、高収率に生産できることを示した結果はまだ報告されていない。
【0006】
また、膜タンパク質の一種である微粒子メタン酸化酵素(particulate methane monooxygenase、pMMO)の大量生産もその技術的な難易度が非常に高いため、世界の集中的な研究にもかかわらず、開発に成功した事例が報告されていない。
【0007】
これは、主に天然メタノトロフ(methanotroph)の増殖が非常に遅く、また細胞密度も非常に低いからである。このような制約のため、産業的規模で組換えタンパク質の優れた生産を可能にするE. coli(大腸菌)のように、急速に成長する菌株を用いて生産を試みたことがある(Islam, R.S., Tisi, D., Levy, M.S. & Lye, G.J. Biotechnol. Bioeng. 99, 1128-1139 (2008))。
【0008】
しかし、このE. coliでの組換えsMMOまたはpMMOの生産は、実際の活性を有する形態のMMOではないため、触媒作用を示す構造的形態を製造するために追加の面倒な工程が必要となる。
【0009】
そこで、E. coliで異種酵素を発現するための最適化された遺伝子発現によって触媒機能を有する構造を維持しながらも、酵素ナノ粒子を高収率で合成できる組換えシステムが求められる。
【0010】
このような技術的な背景下で、本出願の発明者らはフェリチンタンパク質ナノ粒子をスキャフォールドとして用いて、構造的及び機能的に活性を有するpMMOを設計するために鋭意努力した結果、メタン酸化細菌の主要な活性部位をタンパク質ナノ粒子に融合・発現させてメタンをメタノールに変換可能な新しい酵素ナノ粒子を製造できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、メタン酸化酵素(MMO)活性を有する酵素ナノ粒子を提供することにある。
【0012】
本発明の目的は、タンパク質ナノ粒子の表面にメタン酸化酵素の第1活性部位および第2活性部位を融合・発現し、MMO活性を示す酵素ナノ粒子生成能を有する組換え微生物を提供することにある。
【0013】
本発明の目的は、前記組換え微生物を用いた酵素ナノ粒子の製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明の目的は、酵素ナノ粒子が担体に担持された固定化酵素ナノ粒子及びその製造方法を提供することにある。
【0015】
本発明の目的は、酵素ナノ粒子を用いて、メタンをメタノールに変換する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述の目的を達成するために、本発明は、細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質の表面にメタン酸化酵素の第1活性部位と第2活性部位が融合・発現された、メタン酸化酵素活性を有する酵素ナノ粒子を提供する。
【0017】
また、本発明は、i)細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質をコードする核酸と、ii)メタン酸化酵素の第1活性部位をコードする核酸と、iii)メタン酸化酵素の第2活性部位をコードする核酸とが導入されており、タンパク質ナノ粒子の表面に前記第1活性部位と前記第2活性部位を融合・発現させ、MMO活性を示す酵素ナノ粒子生成能を有する組換え微生物を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記組換え微生物を培養し、細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質の表面にメタン酸化酵素の第1活性部位と第2活性部位が融合・発現された、MMO活性を有するナノ粒子を生成するステップと、前記生成されたナノ粒子を回収するステップとを含む酵素ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記酵素ナノ粒子が担体に担持された固定化酵素ナノ粒子を提供する。
【0020】
また、本発明は、前記酵素ナノ粒子、組換え微生物、または固定化酵素ナノ粒子を用いてメタンをメタノールに変換する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、タンパク質ナノ粒子の発現用ベクターの具体例を示すものである。
図2図2は、組換えタンパク質の発現時に銅塩が及ぼす影響を示すものである。
図3図3は、組換えタンパク質の発現率および細胞質溶解度を分析した結果を示すものである。
図4図4は、タンパク質ナノ粒子の画像を電子顕微鏡を用いて観察した結果を示すものである。
図5図5は、酵素反応によって生成された酸化生成物であるメタノールの量を測定した結果を示すものである。
図6図6は、タンパク質ナノ粒子における金属の含有量および触媒活性への影響を確認した結果を示すものである。
図7図7は、pMMO-m3が固定化されたハイドロゲルを適用して反復的なメタン酸化活性を示すことができることを証明する結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
他の方式で定義されない限り、本明細書で使用されたすべての技術的および科学的用語は、本発明の属する技術分野における熟練した専門家により通常的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に、本明細書で使用される命名法は、本技術分野においてよく知られており、通常的に使用されるものである。
【0023】
本出願の発明者らは、細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質、例えばフェリチン重鎖タンパク質(huHF)を用いて、E. coliで触媒機能を有する構造を維持しながらも、異種酵素であるメタン酸化酵素の第1活性部位pmoB1又はその変異体及びメタン酸化酵素の第2活性部位pmoB2を含む酵素ナノ粒子を高収率で合成できる組換えシステムを確認した。
【0024】
具体的には、一つのプロモーターの制御下でhuHFをコードする核酸およびpMMOの活性部位であるpmoB1とpmoB2をコードする核酸を作動可能に連結するか、またはhuHFをコードする核酸およびpmoB1又はその変異体をコードする核酸を作動可能に連結した第1ベクターと、huHFをコードする核酸およびpmoB2をコードする核酸を作動可能に連結した第2ベクターとを含むシステムを構築した。例えば図1によると、a~iに示すように、pT7-pmoB12、pT7-huHF-pmoB1、pT7-pMMO-m1、pET28a-pMMO-m2-B1、pT7-pMMO-m2-B2、pET28a-pMMO-m3-B1、pT7-pMMO-m3-B2、pET28a-Mut-A-m3-B1、pT7-Mut-A-m3-B2、pET28a-Mut-B-m3-B1、pT7-Mut-B-m3-B2、pET28apMMO-m4-B1(R)、pT7-pMMO-m4-B2、pT7-pMMO-m4-B2、pT7-huFHおよびpT7-D4K-huHFに進行した(図1)。
【0025】
これらのベクターを宿主細胞に導入して培養した結果、酵素ナノ粒子が正常に発現されることを確認した。前記酵素ナノ粒子は、細胞内での自己組織化によって異種二量体のナノ粒子を形成したフェリチン・スキャフォールド中でpmoB1とpmoB2が融合・発現されたものであり、酵素ナノ粒子が高効率で発現され、MMO活性を示すことから、酵素反応によってメタンを酸化させてメタノールを生産できることを確認した。
【0026】
このことから、本発明は、一局面では、細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質の表面にメタン酸化酵素の第1活性部位と第2活性部位が融合・発現された、メタン酸化酵素(MMO)活性を有する酵素ナノ粒子に関するものである。
【0027】
他の局面では、本発明は、i)細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質をコードする核酸と、ii)メタン酸化酵素の第1活性部位をコードする核酸と、iii)メタン酸化酵素の第2活性部位をコードする核酸とが導入されており、前記タンパク質ナノ粒子の表面に前記第1活性部位と前記第2活性部位を融合・発現させ、MMO活性を示す酵素ナノ粒子生成能を有する組換え微生物に関するものである。
【0028】
また他の局面では、本発明は、前記組換え微生物を培養して、細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質の表面にメタン酸化酵素の第1活性部位と第2活性部位が融合・発現された、メタン酸化酵素活性を有するナノ粒子を生成するステップと、前記生成されたナノ粒子を回収するステップとを含む酵素ナノ粒子の製造方法に関するものである。
【0029】
本発明のメタン酸化酵素は、トランスメンブレンαヘリックス(α-helices)を介してメンブレン二重層に存在する周辺細胞質触媒ドメイン(periplasmic catalytic domain)を含む活性メンブレン酵素(active membrane enzyme)であり、天然のメンブレン内に存在するトランスメンブレンαヘリックスと同様の分子環境を構築した場合、メタン酸化酵素の触媒活性を維持しながらも、目的とする構造に再配列できることを確認した。
【0030】
このような側面で、前記タンパク質としては、トランスメンブレンと同様の分子環境を提供できる支持体の機能をすることができるとともに、細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるものであれば制限なく用いることができる。例えば、フェリチン(ferritin)、フェリチン様タンパク質(ferritin-like protein)、マグネトソーム(magnetosome)構成タンパク質、大腸菌DNA結合タンパク質(Escherichia coli DNA binding protein)、ヒトα-トコフェロール伝達タンパク質(Human α-Tocopherol transfer protein)、ヒトPERKシャペロン(Human PERK chaperone)またはB型肝炎ウイルスカプシドタンパク質(Hepatitis B virus capsid)、プロテアソーム(proteasome)、又はタバコモザイクウイルスコートタンパク質(Tobacco mosaic virus coat protein)であってもよい。
【0031】
特に、前記タンパク質としてはフェリチンを用いることができる。本発明による具体的な実施形態では、フェリチンは21kDaのタンパク質単量体の24個が細胞内で自己組織化(self-assembly)して直径約12nmの球状ナノ粒子を形成することができる。フェリチンは、分子量が約500,000Daであり、重鎖と軽鎖で構成された24個の同じタンパク質サブユニット(subunit)で構成され、生体内で中空の外皮(hollow shell)を形成する。鉄と結合する前記タンパク質は、鉄貯蔵機能を有し、鉄解毒(iron detoxification)機能をする。タンパク質は、ほとんどの組織の成長と生存のために細胞内の鉄のバランスを維持し、細胞内の鉄の結合による酸素-フリーラジカルの形成を最小限に抑える細胞保護タンパク質として機能する。
【0032】
全長フェリチン、フェリチン重鎖またはフェリチン軽鎖を用いてナノ粒子を作製することができるが、好ましくは、フェリチン重鎖タンパク質を用いることができる。具体的には、フェリチンの重鎖タンパク質を使用する場合には、トランスメンブレンと同様の分子環境を提供できる支持体の機能をすることができ、自己組織化の能力があって球状粒子を形成することを確認した。位置特異的な表出によって異種材料の融合時に最適の効能を期待できるフェリチン重鎖タンパク質(huHF)をメタン酸化酵素の活性部位導入体として活用して、酵素ナノ粒子(pMMO-mimics)を作製した。
【0033】
本発明に係るメタン酸化活性を有する酵素ナノ粒子は、フェリチンタンパク質ナノ粒子の表面の特定の位置(C-terminal末端)にメタン酸化酵素の活性部位を導入して作製した。フェリチンのC末端(C-terminal)部位は4-フォールドアクシス(fold axis(4個が集まっている構造))をなし、その部位にpmoB1またはpmoB2のような外来タンパク質を導入すれば、導入体の表面表出が可能な利点がある。
【0034】
本発明のナノ粒子(pMMO-mimics)は、自己組織化によって行われた組換えタンパク質ナノ粒子であり、均一なメタン酸化酵素の活性部位分布を示す。本発明に係るナノ粒子(pMMO-mimics)は20~26nm程度の直径を持つことができる。
【0035】
本発明に係る組換え微生物によってメタン酸化細菌の細胞膜に存在する微粒子メタン酸化酵素の重要な活性部位が、タンパク質で構成されたナノ粒子であるヒトフェリチン重鎖の表面に遺伝工学的に表出された、メタン酸化活性を有する新しいタイプの酵素ナノ粒子を作製することができる。本発明に係るナノ粒子は、メタンガスの注入によって、実際にメタンガスをメタノールに変換する活性を示した。
【0036】
前記メタン酸化酵素は、活性化のために最小の構造単位を識別する必要がある。このときは、触媒的に不活性で且つ構造的に安定したスキャフォールドを用いて、適切な結合部位を提供しながら、最小のメタン酸化酵素単位を含むべきであり、活性メタン酸化酵素単位は、触媒活性を維持するために再構成された形で構造的に維持される必要がある。
【0037】
メタン酸化酵素(MMO)は、α3β3γ3の4次構造を有する。ここで、αβγの3つのサブユニットは、それぞれpmoB、pmoA及びpmoCと命名される。pmoBの中の2つの水溶性の周辺細胞質ドメイン(pmoB1及びpmoB2)は、2つの膜貫通αらせん(THα1及びTHα2)によって連結される。pMMOの活性部位については議論があるが、現在はpmoBの周辺細胞質ドメインが活性部位として一般的に知られている。
【0038】
この側面では、前記メタン酸化酵素の第1活性部位および第2活性部位は、pmoB1又はその変異体及びpmoB2又はその変異体からなる群より選択され、第1活性部位と第2活性部位は互いに異なっていてもよい。
【0039】
具体的には、メタン酸化酵素の第1活性部位はpmoB1又はその変異体であり、第2活性部位は、pmoB2又はその変異体であってもよい。本発明では、酵素ナノ粒子の作製のためにpmoB1及びpmoB2を活性部位として用いた。前記メタン酸化酵素の第1活性部位は、配列番号2の配列を含むことができ、前記メタン酸化酵素の第2活性部位は、配列番号3の配列を含むことができる。pmoBの膜貫通THα1及びTHα2を代替するスキャフォールドにpmoB1及びpmoB2を組換えした。
【0040】
ただし、メタン酸化酵素のpmoB以外の他のサブユニットであるpmoA及び/又はpmoCを活性部位として含むことができ、場合によってはpmoB1又はその変異体であり、第2活性部位は、pmoB2又はその変異体を代替してpmoA及び/又はpmoCを用いることができる。
【0041】
前記変異体は、H33N、E135Q、H137A、H139A、H48N、H72Nからなる群より選択される一つ以上を含むことができる。本発明の具体的な実施形態によると、pmoB1の変異体として、サイト(site)-A ミュータント(mutant) m3 pmoB1(H33N、H137A、H139A)またはsite-B mutant m3 pmoB1(H48N、H72N)の変異体を含むことができる。前記pmoB1の変異体は、配列番号4または配列番号5の配列を含むことができる。
【0042】
スキャフォールドとして24個の同じ単位で構成された球状ケージ型のナノスケールを有し、且つ鉄が存在しないapo型のフェリチンタンパク質を用いることができる。それぞれのフェリチン・サブユニットは、4つの逆平行αヘリックスであるhuHFA~huHFDとC-末端αヘリックスであるhuHFEを含み、huHFEはpmoB1及びpmoB2に対する接合部位として用いることができる。
【0043】
前記ナノ粒子タンパク質の表面に前記第1活性部位と前記第2活性部位を融合・発現させるためには、i)細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質をコードする核酸と、ii)メタン酸化酵素の第1活性部位をコードする核酸と、iii)メタン酸化酵素の第2活性部位をコードする核酸とが作動可能に連結されたベクターを導入することができる。
【0044】
具体的には、フェリチン重鎖タンパク質をコードする核酸、pmoB1又はその変異体をコードする核酸及びpmoB2又はその変異体をコードする核酸が一つのベクターに作動可能に連結され、pmoB1及びpmoB2が表面に遺伝工学的に表出されたフェリチンナノ粒子を作製することができる。
【0045】
また、(a)i)細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質をコードする核酸、及び、ii)メタン酸化酵素の第1活性部位をコードする核酸が作動可能に連結された第1ベクターと、(b)細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質をコードする核酸、及び、iii)メタン酸化酵素の第2活性部位をコードする核酸が作動可能に連結された第2ベクターとを導入することができる。
【0046】
具体的には、フェリチン重鎖タンパク質をコードする核酸、pmoB1又はその変異体をコードする核酸及びpmoB2又はその変異体をコードする核酸が作動可能に連結されるか、またはフェリチン重鎖タンパク質をコードする核酸及びpmoB1又はその変異体をコードする核酸が作動可能に連結された第1ベクターと、フェリチン重鎖タンパク質をコードする核酸及びpmoB2又はその変異体をコードする核酸が作動可能に連結された第2ベクターとが導入され、pmoB1及びpmoB2が表面に遺伝工学的に表出されたフェリチンナノ粒子を作製することができる。
【0047】
一つの実施形態では、i)細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質をコードする核酸と、ii)メタン酸化酵素の第1活性部位をコードする核酸との間、又は、ii)メタン酸化酵素の第1活性部位をコードする核酸と、iii)メタン酸化酵素の第2活性部位をコードする核酸との間に、ペプチドリンカーをコードする核酸をさらに含むことができる。
【0048】
本発明の具体的な実施形態によると、GSGTGSGまたはGKLGGGをリンカーとして含むことができる。一つのプロモーターの存在下で発現する場合には、フェリチン重鎖タンパク質をコードする核酸とpmoB1又はその変異体をコードする核酸との間にGKLGGGをリンカーとして含み、pmoB1をコードする核酸とpmoB2をコードする核酸との間にGSGTGSGをリンカーとして含むことができる。また、2つのベクターを使用する場合には、フェリチン重鎖タンパク質をコードする核酸とpmoB1又はその変異体をコードする核酸との間にGSGTGSGリンカーを含むことができる。
【0049】
「作動可能に連結された」というのは、核酸発現に関連する調節配列(例えば、プロモーター、シグナル配列、または転写調節因子など)と他の核酸との機能的な結合を意味する。これにより、前記調節配列は、前記他の核酸の転写及び/又は解毒を調節することになる。
【0050】
適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)は、調節配列(複数可)に結合されるとき、核酸の発現を可能にする方法で連結された核酸および調節配列(複数可)であってもよい。例えば、プレ配列(pre-sequence)または分泌リーダー(leader)に対する核酸は、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドに対する核酸に作動可能に連結され;プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響を与える場合、コード配列に作動可能に連結されるか;またはリボソーム結合部位は、配列の転写に影響を与える場合、コード配列に作動可能に連結されるか;またはリボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置される場合、コード配列に作動可能に連結される。
【0051】
一般的に、「作動可能に連結された」というのは、連結された核酸配列が接触し、また、分泌リーダーの場合には、接触し、リーディングフレーム内に存在することを意味する。しかし、エンハンサー(enhancer)は接触する必要がない。これらの配列の連結は、便利な制限酵素部位においてライゲーション(連結)によって行われる。そのような部位が存在しない場合には、通常の方法による合成オリゴヌクレオチドアダプター(oligonucleotide adaptor)またはリンカー(linker)を用いる。本発明では、核酸配列が作動可能に連結され、ナノ粒子タンパク質の表面にメタン酸化酵素の第1活性部位と第2活性部位が融合・発現できることを意味する。
【0052】
具体的には、本発明に係るメタン酸化酵素の活性部位(pmoB1、pmoB2)が融合されているフェリチンタンパク質ナノ粒子は、a)フェリチンタンパク質をコードする核酸に由来する遺伝子クローンを得るステップと、b)フェリチンタンパク質の表面に表出されるメタン酸化酵素の活性部位(pmoB1、pmoB2)をコードする核酸に由来する遺伝子クローンを得るステップと、c)前記製造された遺伝子クローンのライゲーションによって発現ベクターを製造するステップと、d)前記発現ベクターを宿主に形質転換して組換え酵素ナノ粒子(pMMO-mimics)を発現するステップとを含む製造方法により製造することができる。
【0053】
核酸の過剰発現のために使用されるベクターとしては、当業界で公知の発現ベクターを用いることができる。「ベクター」は、細胞内に伝達するDNA断片(複数可)、核酸分子を指すときに使用される。ベクターは、DNAを複製させ、宿主細胞で独立して再生産することができる。用語「伝達体」は、しばしば「ベクター」と互換して使用される。用語「発現ベクター」とは、目的のコード配列と、特定の宿主生物で作動可能に連結されたコード配列を発現するのに必須の適正核酸配列を含む組換えDNA分子を意味する。
【0054】
発現ベクターは、宿主細胞と両立できる形で用いることができ、例えば、BLUESCRIPTベクター(Stratagene)、T7発現ベクター(Invitrogen)、pETベクター(Novagen)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
発現ベクターは、好ましくは、1つ以上の選択性マーカーを含むことができる。前記マーカーは、一般的に化学的な方法で選択できる特性を有する核酸配列であり、形質転換された細胞を非形質転換の細胞から区別することができるすべての核酸が該当し得る。例えば、カナマイシン(Kanamycin)、G418、ブレオマイシン(Bleomycin)、ハイグロマイシン(hygromycin)、クロラムフェニコール(chloramphenicol)のような抗生剤耐性核酸があるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
前記ベクターは、プロモーターを含むことができる。「プロモーター」は、構造核酸からのDNA上流(upstream)の領域を意味し、転写を開始するためにRNAポリメラーゼが結合するDNA分子を指す。本発明に係るプロモーターは、宿主、例えばE.coliで転写を開始できるプロモーターであり、宿主内におけるタンパク質の発現のためにlac、trp、tac、λPL、T7などを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
前記核酸は、分離及び/又は精製のためのタグ、または前記タグを暗号化する核酸配列と連結することができる。一例として、前記タグは、Hisタグ、Flagタグ、Sタグなどの小さいペプチドタグ、GST(Glutathione S-transferase)タグ、MBP(Maltose binding protein)タグなどからなる群より適宜選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
前記組換え微生物の宿主細胞によってタンパク質の発現量と修飾などが異なるので、目的に最も適した宿主細胞を選択して用いることができる。宿主細胞としては、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、またはスタフィロコッカス(Staphylococcus)のような原核宿主細胞があるが、これらに限定されるものではない。また、真菌(例えば、アスペルギルス(Aspergillus))、酵母(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、スキゾサッカロミセス( Schizosaccharomyces)、ニューロスポラクラッサ(Neurospora crassa))などの下等真核細胞、昆虫細胞、植物細胞、哺乳動物などを含む高等真核生物由来の細胞を宿主細胞として用いることができる。
【0059】
本発明で宿主細胞内へ導入する方法としては、一般的に知られている遺伝子操作方法を用いることができ、非ウイルス伝達方法には、電気穿孔法、リポフェクション、微細注射、弾道法、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、多価陽イオンまたは脂質:核酸接合体、ネイキッドDNA、人工ビリオンおよび化学物質促進DNAの取り込みが含まれる。例えば、Sonitron 2000システム(Rich-Mar)を使用するソノポレーションもまた、核酸を伝達するために使用され得る。他の代表的な核酸伝達システムは、Amaxa Biosystems(Cologne、Germany)、Maxcyte,Inc.(Rockville、Maryland)及びBTX Molesular Syetem(Holliston、MA)の方法を含む。
【0060】
本発明によると、フェリチンC末端(C-terminal)にメタン酸化酵素の活性部位(pmoB1、pmoB2)を直列または並列に導入し、フェリチン粒子の表面で活性部位が遺伝工学的に再組織化(genetic reassembly)されるように設計し、大腸菌によって活性を有する酵素ナノ粒子の大量生産を可能にした。
【0061】
一方、本出願の発明者らは、前記酵素ナノ粒子を利用して、3次元多孔性のハイドロゲルに固定化して新しい反応システムを構築し、ハイドロゲル内の水分含有によって酵素ナノ粒子の活性が長期間維持され、それを繰り返し使用できることを証明した。本発明に係る具体的な実施形態では、多孔性ハイドロゲルの内部に酵素ナノ粒子が固定化されて均等に分布されている新しい酵素反応システムを開発した。ハイドロゲルに基づく反応システムは、一定の体積の空間に多量の酵素ナノ粒子を含むことができるだけでなく、ハイドロゲルの優れた水分保持能力によって、ナノ粒子の活性を長期間安定的に繰り返し再使用できることを示した。
【0062】
このことから、本発明は、他の局面では、酵素ナノ粒子が担体に担持された固定化酵素ナノ粒子、具体的には酵素ナノ粒子が高分子にカプセル化(encapsulated)され、その内部に均一に分布された固定化酵素ナノ粒子に関するものである。
【0063】
また、酵素ナノ粒子と高分子を反応させるステップを含む、酵素ナノ粒子が担体に担持、例えば高分子にカプセル化され、その内部に均一に分布される固定化酵素ナノ粒子の製造方法に関するものである。
【0064】
前記担体は、キトサン、ゼラチン、コラーゲン、ポリ-L-リシン、ポリ-L-ヒスチジン、ポリ-L-アルギニン、ヒアルロン酸、ポリガンマグルタミン酸、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、グリコーゲン、アミロース、デキストラン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタクリレートフルラン、ベータグルカン、スターチ、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロンドン共重合体、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリジメチルアミノエチルメタアクリレート、ポリN,N-エチルアミノエチルメタクリレート、ポリ乳酸、グリグリコール酸、ポリラクチクグリコール酸、またはポリカプロラクトンなどの高分子であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0065】
前記酵素ナノ粒子が担持された担体は、通常の方法によって酵素ナノ粒子と担体を反応させ、酵素ナノ粒子がカプセル化されて担持された担体を製造することができる。
【0066】
例えは、水分が除去された高分子に酵素ナノ粒子を含む溶液を追加して膨潤させることにより、高分子に酵素ナノ粒子を担持するか、または高分子溶液に酵素ナノ粒子を添加して混合し、さらに架橋剤などを反応させて高分子に酵素ナノ粒子を担持するか、または酵素ナノ粒子の末端に機能基を導入し、前記機能基が導入された酵素ナノ粒子と高分子単量体を重合することにより、高分子に酵素ナノ粒子を担持することができるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
前記架橋剤は、高分子の中で酵素ナノ粒子を結合できる物質であれば限定されないが、例えばナトリウム、クエン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、メチレン二リン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、シュウ酸カリウム、ピロリン酸カリウム、硫酸カリウム、酒石酸カリウム、リンゴ酸カリウム、マロン酸カリウム、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンまたはトリエチレンテトラアミンであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0068】
本発明に係る一実施形態では、その内部に前記酵素ナノ粒子が固定され、均一に分布された高分子ベースのハイドロゲルを作製した。具体的には、酵素ナノ粒子の末端に機能基を、例えばビニル基、アクリル基、または炭素数1~30、例えば炭素数1~6のアルキルで置換または非置換のアクリル基を導入して、酵素ナノ粒子の末端がこれらの機能基で置換されるようにした。
【0069】
このような機能基が結合された酵素ナノ粒子は、高分子単量体、例えば高分子単量体はアクリル酸、アクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコール、N,N-エチルアミノエチルメタクリレート、ヒアルロン酸またはキトサンと重合反応することができる。例えば、酵素ナノ粒子の表面に表出されたアミン基がN-スクシンイミジルアクリレート(Nsuccinimidylacrylate、NSA)と反応して、重合反応が可能なビニール基を有する酵素ナノ粒子を製造することができる。
【0070】
一方、本出願の発明者らは、酵素ナノ粒子をメタンガスと反応させた結果、酵素反応によってメタンの酸化生成物であるメタノールが生成されることを確認した。その生産量を測定し、累積生産量と転換数を図5に示すように確認した。
【0071】
このことから、本発明は、前記酵素ナノ粒子、前記組換え微生物、または前記固定化酵素ナノ粒子を用いてメタンをメタノールに変換する方法に関するものである。
【0072】
実施例
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されるものと解釈されないことは、当業界で通常の知識を有する者にとって自明なことである。
【0073】
[実施例1]pMMO-mimics酵素ナノ粒子の生合成のための発現ベクターの製造
下記表1に示すベクターの模式図に基づいて、PCRによってpmoB12、ferritin-pmoB1、pMMO-mimics(pMMO-m1~pMMO-m4)、site-A mutant of pMMO-m3(pMMO-m3のサイト-Aミュータント)、site-B mutant of pMMO-m3(pMMO-m3のサイト-Bミュータント)、pmoB-free huHF particles with His6(His6を有するpmoB-フリーhuHF粒子)、pmoB-free huHF particles without His6(His6を有さないpmoB-フリーhuHF粒子)を作製した。作製されたすべてのプラスミド発現ベクターは、アガロースゲルで精製した後、完全なDNAシークエンシングによって配列を確認した。
【0074】
このようにして作られたPCR産物を順次にpT7-7、pET28a(Novagen、U.S.A.)発現用ベクターに挿入し、それぞれのタンパク質ナノ粒子を発現できる発現ベクターを構成した。
【0075】
それぞれのタンパク質ナノ粒子の発現用ベクターは、pT7-pmoB12、pT7-huHF-pmoB1、pT7-pMMO-m1、pET28a-pMMO-m2-B1、pT7-pMMO-m2-B2、pET28a-pMMO-m3-B1、pT7-pMMO-m3-B2、pET28a-Mut-A-m3-B1、pT7-Mut-A-m3-B2、pET28a-Mut-B-m3-B1、pT7-Mut-B-m3-B2、pET28apMMO-m4-B1(R)、pT7-pMMO-m4-B2、pT7-huFHおよびpT7-D4K-huHFで進行した(図1)。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
[実施例2]pMMO-mimicsを含む組換えタンパク質の生合成(pmoB12を除く。)及び精製
大腸菌菌株BL21(DE3)[F-ompThsdS(rB-mB-)]を、前記作製された発現ベクターでそれぞれ形質転換した。特に、pMMO-m2、pMMO-m3、site-A mutant of pMMO-m3、site-B mutant of pMMO-m3、pMMO-m4は大腸菌菌株BL21に2つの発現ベクターを同時に形質転換し、アンピシリンとカナマイシンに抵抗性を有する形質転換体を選択した。形質転換された大腸菌を50mLのルリア-ベルターニ(Luria-Bertani(LB))培地(100mg L-1のアンピシリンと100mg L-1のカナマイシン、0.2mM CuSOを含有)を含有するフラスコ(250mL三角フラスコ(Erlenmeyer flasks)、37℃、150rpm)で培養した。それを除いた残りのタンパク質ナノ粒子(ferritin-pmoB1、pMMO-m1、pmoB-free huHF particles with His6、pmoB-free huHF particles without His6)は、アンピシリンに抵抗性を有する形質転換体を選択した。形質転換された大腸菌を50mLのLuria-Bertani(LB)培地(100mg L-1のアンピシリン、0.2mM CuSOを含有)を含有するフラスコ(250mL Erlenmeyer flasks、37℃、150rpm)で培養した(図2)。培地の濁度(O.D.600)が約0.6に達したとき、IPTG(Isopropyl-β-D-thiogalactopyranosid)(1mM)を添加して、遺伝子の発現を誘導した。20℃で14時間培養した後、培養した大腸菌を5,000rpmで5分間遠心分離して菌体沈殿物を回収した後、5mLの破砕溶液(50mM NaHPO、300mM NaCl、10mM イミダゾール(imidazole)、0.2mM CuSO、pH8.0)に懸濁し、超音波破砕機(Branson Ultrasonics Corp.,Danbury、CT、USA)を用いて破砕した。破砕した後、13,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液と不溶性凝集体を分離した。分離された上澄み液を先に組換えタンパク質に融合発現されたヒスチジンとニッケルの結合を用いたNi2+-NTAアフィニティー・クロマトグラフィーを行った後、組換えタンパク質を濃縮し、バッファー交換を行って、精製された組換えタンパク質を得ることができた。各ステップの詳細は以下の通りである。
【0079】
1)Ni2+-NTAアフィニティー・クロマトグラフィー
組換えタンパク質を精製するために、前述の方法と同様の方法で培養された大腸菌を回収し、その細胞ペレットを5mLの破砕溶液(50mM NaHPO、300mM NaCl、10mM イミダゾール、0.2mM CuSO、pH8.0)に再浮遊し、超音波破砕機を用いて細胞を破砕した。破砕された細胞液を13,000rpmで10分間遠心分離し、その上澄み液のみを分離した後、各組換えタンパク質をNi2+-NTAカラム(Quiagen、Hilden、Germany)を用いてそれぞれ分離した(洗浄バッファー:50mM NaHPO、300mM NaCl、10mM イミダゾール、pH8.0/溶出バッファー:50mM NaHPO、300mM NaCl、250mM イミダゾール、pH8.0)。
【0080】
2)濃縮とバッファー交換
Ni2+-NTAアフィニティー・クロマトグラフィーを経て溶出された2mLの組換えタンパク質を超遠心分離器のフィルター(ultracentrifugal filter(Amicon Ultra 100K、Millipore、Billerica、MA))に投入し、カラムの上に1mlの溶液が残るまで5,000rpmで遠心分離を行った。その後、トリス(Tris)バッファー(20mM Tris-HCl、250mM NaCl、pH8.0)でバッファー交換を行った。
【0081】
[実施例3]組換えタンパク質pmoB12の生合成、精製、およびリフォールディング
大腸菌菌株BL21(DE3)[F-ompThsdS(rB-mB-)]を前記作製された発現ベクターでそれぞれ形質転換し、アンピシリンに抵抗性を有する形質転換体を選択した。形質転換された大腸菌を50mLのLuria-Bertani(LB)培地(100mg L-1のアンピシリンを含有)を含有するフラスコ(250mL Erlenmeyer flasks、37℃、150rpm)で培養した。培地の濁度(O.D.600)が約0.6に達したとき、IPTG(Isopropyl-β-D-thiogalactopyranosid)(1mM)を添加して遺伝子の発現を誘導した。37℃で6時間培養した後、培養した大腸菌を5,000rpmで5分間遠心分離して菌体沈殿物を回収した後、5mLの破砕溶液(50mM NaHPO、300mM NaCl、10mM イミダゾール、0.2mM CuSO、pH8.0)に懸濁し、超音波破砕機(Branson Ultrasonics Corp.,Danbury、CT、USA)を用いて破砕した。破砕後、13,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液と不溶性凝集体を分離した。分離された不溶性凝集体を先に組換えタンパク質に融合発現されたヒスチジンとニッケルの結合を用いたNi2+-NTAアフィニティー・クロマトグラフィーを行った後、組換えタンパク質を透析によってリフォールディングした。リフォールディングされた組換えタンパク質を濃縮して、精製された組換えタンパク質を得ることができた。各ステップの詳細は、以下の通りである。
【0082】
1)Ni2+-NTAアフィニティー・クロマトグラフィー
組換えタンパク質pmoB12を精製するために、前述の方法と同様の方法で培養された大腸菌を回収し、その細胞ペレットを5mLの破砕溶液(50mM NaHPO、300mM NaCl、10mM イミダゾール、0.2mM CuSO、pH8.0)に再浮遊し、超音波破砕機を用いて細胞を破砕した。破砕された細胞液を13,000rpmで10分間遠心分離し、その不溶性凝集体のみを分離した後、5mLの変性溶液(50mM NaHPO、300mM NaCl、6M Gdn-HCl、pH8.0)に1時間再浮遊し、13,000rpmで20分間遠心分離してその上澄み液のみを分離した。その後、組換えタンパク質pmoB12をNi2+-NTAカラム(Quiagen、Hilden、Germany)を用いてそれぞれ分離した(洗浄バッファー:50mM NaHPO、300mM NaCl、6M Gdn-HCl、pH6.3/溶出バッファーA:50mM NaHPO、300mM NaCl、6M Gdn-HCl、pH5.9/溶出バッファーB:50mM NaHPO、300mM NaCl、6M Gdn-HCl、pH4.5)。
【0083】
2)透析プロセスによるpmoB12のリフォールディング
Ni2+-NTAアフィニティー・クロマトグラフィーを経て溶出された4mLの組換えタンパク質溶液からタンパク質の変性を誘導するGdn-HClを徐々に除去するために、段階的な透析プロセスを適用してpmoB12のリフォールディングを行った。つまり、緩衝溶液(20mM Tris-HCl、250mM NaCl、1mM CuSO、6M Gdn-HCl、pH8.0)に組換えタンパク質を4℃で3時間透析プロセスを行った。合計6回の間、段階ごとにGdn-HClの濃度を1Mずつ下げ、最後の段階では、Gdn-HClのない緩衝溶液(20mM Tris-HCl、250mM NaCl、1mM CuSO、pH8.0)を用いて3回の透析プロセスを繰り返して、Gdn-HClを完全に除去した。最後に、リフォールディングされたpmoB12は遠心分離(13,000rpm、20分、4℃)によってタンパク質凝集体を完全に除去した後に回収した。
【0084】
3)濃縮
透析プロセスによって得られたリフォールディングされたpmoB12をultracentrifugal filter(Amicon Ultra 100K、Millipore、Billerica、MA)に投入し、カラムの上に1mlの溶液が残るまで5,000rpmで遠心分離を行った。
【0085】
[実施例4]製造されたpMMO-mimicsを含む組換えタンパク質の発現率および細胞質溶解度の分析
前記プロセスを経た後、精製された組換えタンパク質ナノ粒子の発現率および細胞質溶解度をSDS-PAGEで分析した。pMMO-mimicsを含む組換えタンパク質の破砕された細胞ペレット溶液(lysate)、破砕された細胞液を遠心分離して得られた上澄み液(soluble fraction、sol)と不溶性凝集体(insoluble fraction、insol)、精製またはリフォールディングされた組換えタンパク質を12%Tris-グリシンプレキャストゲル(glycine precast gel)(Invitrogen、California、U.S.A.)を用いてSDS-PAGEを行った。そして、ゲルをクマシーブルー染色液で染色し、染色されたタンパク質バンドをデンシトメーター(densitometer)(GS-800 Calibrated Densitometer、Bio-Rad、California、U.S.A.)を用いて、各組換えタンパク質の発現率および細胞質溶解度を分析した(図3)。
【0086】
[実施例5]製造されたpMMO-mimicsを含む組換えタンパク質の構造の分析
前記プロセスを経た後、精製された組換えタンパク質ナノ粒子の構造を分析するために透過電子顕微鏡(TEM)で撮影を行った。タンパク質ナノ粒子の染色画像を得るために、自然乾燥されたサンプルを含む電子顕微鏡グリッドを2%(w/v)水性ウラニルアセテート溶液と共に室温で1時間インキュベートした。タンパク質ナノ粒子の画像を200kVで動作するTecnai20(FEI、Hillsboro、Oreon、U.S.A.)電子顕微鏡を用いて観察した結果、球状のナノ粒子が形成されたことを確認した。そして、DLS(dynamic light scattering)分析によって、pMMO-m1は26.3±3.1nm、pMMO-m2は20.8±3.3nm、pMMO-m3は23.9±3.3nm、pMMO-m4は21.9±3.3nm、pmoB-free huHF particle with His6は12.8±2.1nmのサイズを有する球状ナノ粒子を形成することを確認した。さらに、HiLoadTM 16/600 superdexTM 200pg column(GE Healthcare、Illinois、U.S.A.)が装着されているSEC(size-exclusion chromatography)分析によって、pMMO-m3が、直径約12nmのhuFH粒子よりは大きく、直径約32nmのHBVC粒子よりは小さいサイズを有することを確認した。pMMO-m3の2次構造と融点を分析するために、円偏光二色性分光計(Circular dichroism(CD)spectrometer(Jasco、Tokyo、Japan))を用いた。CDスペクトルは、200~250nm(1nm帯域幅、100nm/minスキャン速度)で測定し、20℃で測定されたCDスペクトルを基準にpMMO-m3の2次構造を分析した。pMMO-m3の融点(Tm)は、他の温度(30、40、50、60、70、80、90℃)で測定されたCDスペクトルを用いて算出した(図4)。
【0087】
[実施例6]製造されたpMMO-mimicsを含む組換えタンパク質のメタンガス酸化活性の証明
精製された組換えタンパク質ナノ粒子のメタンガス酸化活性を検証するために、20mLのセプタムでシールされたバイアル(septa-sealed vial(catalogue no.5182-0837、Agilent))に還元剤であるデュロキノール(duroquinol)(0.35mM)を含む1mLの組換えタンパク質溶液を注入した。注入されたpmoB12(4.8μM)、フェリチン-pmoB1(0.2μM)、pMMO-m1(0.2μM)、pMMO-m2(0.4μM)、pMMO-m3(0.4μM)、site-A mutant of pMMO-m3(0.4μM)、site-B mutant of pMMO-m3(0.4μM)、pMMO-m4(0.4μM)は、すべて同じモル数の触媒活性部位(pmoB1、pmoB2)を含んでいる。組換えタンパク質によるメタン酸化反応のために、19mLのヘッドスペース(headspace)の空気を注射器を用いて除去し、15mLのメタンガスと4mLの空気を注入することによって開始された。その後、すぐにバイアル(vial)を45℃のインキュベーターで最大20時間まで酵素反応を行った。そして、酵素反応によって生成された酸化生成物であるメタノールの量をガスクロマトグラフィー(7890B GC、Agilent)を用いて測定し、累積生産量と転換数(turnover number)を計算した(図5)。
【0088】
[実施例7]触媒機能の確認
銅塩(CuSO、0.0~0.3mM)及び/又は鉄塩(FeSO、0.2mM)を補充した大腸菌培養物中で、実施例6から確認された最適のメタン酸化活性を示すpMMO-m3を合成した。各培養条件で合成されたpMMO-m3によるメタノール生産量、およびpMMO-m3中の銅及び鉄の含有量を測定した。銅及び鉄の含有量は、ICP-MSによって測定した(図6b~c)。
【0089】
その結果、pMMO-m3中の銅含有量およびpMMO-m3による累積メタノール生成量は0.2mM CuSOで最大に達し、pMMO-m3に対する銅の添加量は、pMMO-m3の(pmoB1及びpmoB2)触媒ドメインに影響を与えることができる(図6a)。また、銅部位以外の金属結合部位(例えば、huHFのdiiron部位)は、pMMO-m3の触媒機能に関与しないことを確認した。さらに、pMMO-m3と部位A-突然変異(H188N、H292A、H294A)および部位B-突然変異(H203N、H227N)(図6b)の銅含有量の分析は、pmoB1中の銅部位AとBのそれぞれにおいて二核(dinuclear)銅原子および単核(mononuclear)銅原子が検出されることを示す。
【0090】
[実施例8]製造されたpMMO-mimicsを含むポリアクリルアミド(polyacrylamide)ハイドロゲルに基づく反応システムによる反復的なメタンガス酸化活性の証明
前記実施例6から確認された最適のメタン酸化活性を示すpMMO-m3を利用して、3次元多孔性のハイドロゲルに固定化して新しい反応システムを構築し、ハイドロゲル内の水分含有によって酵素ナノ粒子の活性が長期間維持されて繰り返し使用できるかどうかを以下の実験により証明した。
【0091】
1)pMMO-m3が固定化されたハイドロゲルの合成
まず、10mgのpMMO-m3をトリス・バッファー(20mM Tris-HCl、250mM NaCl、pH8.0)に溶解されているN-スクシンイミジルアセテート(N-succinimidyl acrylate)(NSA、0.01mg)と37℃で1時間反応して、ビニル化(vinylated)pMMO-m3を得た。反応せずに残っているNSAは、ultracentrifilterationシステム(Amicon Ultra 100K、Millipore、Billerica、MA)を用いて除去した。次に、709μLのビニル化(vinylated)pMMO-m3(1.69μM)を150μLの30%アクリルアミド(acrylamide)(29:1 w/w acrylamde:bis-acrylamide、BioRad、U.S.A.)、130μlの1M Tris-HCl(pH6.5)、10μlの10%(w/v)過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate)(APS)、1μlの0.8Mテトラメチルエチレンジアミン(tetramethylethylenediamine)(TEMED)と混合した後、すぐにその混合物を透明な384ウェルプレートに25μLずつ分けて入れた。そして、それを25℃で16時間置いて混成重合(copolymerization)した。これにより、pMMO-m3が固定化されたアクリルアミドベースのハイドロゲルを作った。pMMO-m3が固定化されたハイドロゲルは、Ptコーティングを経た後、FE-SEM(Quanta 250 FEG、FEI、Oregon、U.S.A.)により、多孔性の構造及びハイドロゲル内におけるpMMO-m3の分布を確認した。ハイドロゲル内におけるpMMO-m3の分布は、金ナノ粒子がラベリングされたヒスチジン抗体(anti-H6 antibody、Santa Cruz、Texas、U.S.A.)を2時間処理し、銀増感キット(silver enhancement kit、Sigma Aldrich)を用いて、金ナノ粒子のサイズを増加させた後、PtコーティングしてFE-SEMで分析した。
【0092】
2)pMMO-m3が固定化されたハイドロゲルを適用した反復的なメタン酸化活性の証明
前記プロセスを経て作成されたpMMO-m3が固定化されたハイドロゲルのメタン酸化活性を検証するために、デュロキノール(duroquinol)を還元剤として使用した。20個のpMMO-m3が固定化されたハイドロゲル(pMMO-m3の6x10-4μmoles)を含む2mLのトリス・バッファー(20mM Tris-HCl、250mM NaCl、pH8.0)とデュロキノール(0.35mM)を20mLのsepta-sealed vial(catalogue no.5182-0837、Agilent)に注入した。メタン酸化反応のために、18mLの ヘッドスペース(headspace)の空気を注射器を用いて除去し、14.5mLのメタンガスと4.5mLの空気を注入することにより開始された。その後、すぐにバイアル(vial)を45℃のインキュベーターで20時間酵素反応を行った。酵素反応によって生成された酸化生成物であるメタノールの量をガスクロマトグラフィー(7890B GC、Agilent)を用いて測定し、累積生産量を確認した。反復的なメタン酸化反応を検証するために、20時間の反応後、バイアルの蓋を開けてガスを除去した後、20個のpMMO-m3が固定化されたハイドロゲルを回収し、トリス・バッファーに3回洗浄した。洗浄された20個のpMMO-m3が固定化されたハイドロゲルは、再び20mLのsepta-sealed vialに投入し、同様の方法でメタン酸化反応を行った。これにより、約120時間の間、約6回の反復的な使用が可能なことを確認した(図7)。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によると、メタン酸化細菌由来のメタン酸化酵素の活性部位(pmoB1、pmoB2)が細胞内で自己組織化してナノ粒子を形成できるタンパク質の表面に表出されるように融合・発現させ、メタン酸化酵素の活性部位がタンパク質ナノ粒子の表面でもその活性を維持し、メタンをメタノールに酸化させることができる。
【0094】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したが、当分野における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は好適な実施様態に過ぎず、本発明を限定するものではないことは明らかであろう。よって、本発明の実質的な範囲は、添付された請求の範囲とそれらの等価物によって定義されるというべきである。
【配列表フリーテキスト】
【0095】
電子ファイルを添付する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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