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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】ワーク搬送装置及び樹脂モールド装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20230823BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20230823BHJP
   B29C 45/38 20060101ALI20230823BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20230823BHJP
   B29C 33/30 20060101ALI20230823BHJP
   B29C 43/50 20060101ALI20230823BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20230823BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20230823BHJP
   H01L 21/50 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B29C45/14
B29C45/38
B29C33/12
B29C33/30
B29C43/50
B29C45/17
H01L21/56 T
H01L21/50 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022064052
(22)【出願日】2022-04-07
(62)【分割の表示】P 2018151906の分割
【原出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2022100341
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 一雄
(72)【発明者】
【氏名】西澤 義晃
(72)【発明者】
【氏名】北島 徳幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸雄
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-168115(JP,A)
【文献】特開平06-000830(JP,A)
【文献】特開2015-051557(JP,A)
【文献】特表2003-526894(JP,A)
【文献】特開平10-058457(JP,A)
【文献】特開2000-311908(JP,A)
【文献】特開2005-136193(JP,A)
【文献】特開2018-024140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B29C 45/14
B29C 45/38
B29C 33/12
B29C 33/30
B29C 43/50
B29C 45/17
H01L 21/56
H01L 21/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク及びモールド樹脂をモールド金型へ搬入し、成形後のワーク及び不要樹脂を前記モールド金型から搬出するワーク搬送装置であって、
前記モールド金型の金型クランプ面に設けられた位置決め部で前記モールド金型に対する位置決めがなされる搬送装置本体と、
前記搬送装置本体に設けられ、前記ワークを保持するワーク保持部と、
前記搬送装置本体に設けられ、前記モールド金型へ供給される前記モールド樹脂及び成形後の不要樹脂を各々保持可能な樹脂保持部と、を備え、
前記樹脂保持部は、前記モールド金型へ供給される前記モールド樹脂を保持する第一樹脂保持部と、成形後の不要樹脂を保持する第二樹脂保持部とを備え、前記第一樹脂保持部と第二樹脂保持部は、前記搬送装置本体の前記モールド金型に対する進入方向に対して直交する水平方向に前記搬送装置本体の搬入搬出位置へ交互に移動可能に設けられていることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
前記第一樹脂保持部は、固形樹脂、粉体状樹脂、顆粒状樹脂、液状樹脂のうちいずれか一の形態のモールド樹脂を保持し、前記第二樹脂保持部は成形品カルを吸着保持する請求項1記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のワーク搬送装置より搬入されたワーク及びモールド樹脂を前記モールド金型の第一の金型と第二の金型とでクランプして樹脂モールドし、成形後のワーク及び不要樹脂を前記ワーク搬送装置により搬出する樹脂モールド装置であって、
前記第一の金型及び第二の金型のいずれかに形成されたキャビティ凹部に連なるエア若しくはモールド樹脂の移動通路となるようにワーク外周側上端部に重なり配置される架橋部を備えかつ金型クランプ面に対して金型開時は離間するように上動支持された可動駒を具備し、
前記可動駒は、型開放状態で金型クランプ面より離間しており、前記ワーク搬送装置により保持された前記ワーク外周側上端部が前記架橋部と重なるセット位置へワーク保持部を移動させて前記ワークが受け渡され、型閉じ動作により前記可動駒が押し下げられて前記架橋部により前記ワーク外周側上端部が挟み込まれてクランプされることを特徴とする樹脂モールド装置。
【請求項4】
前記可動駒は、前記キャビティ凹部に前記架橋部が接続するように形成されたポット駒、ランナゲート駒、エアベント駒のいずれかである請求項記載の樹脂モールド装置。
【請求項5】
前記ワークが受け渡されるセット位置には複数の支持ピンが金型面より進退可能に設けられており、前記ワーク搬送装置は、ワーク外周側上端面が前記可動駒と重なる位置へ移動させて突出位置にある前記支持ピンに受け渡される請求項又は請求項記載の樹脂モールド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形前後のワークをモールド金型に対して搬入搬出するワーク搬送装置及びこれを備えた樹脂モールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ワークの薄型化が進行し、モールド樹脂が充填されるキャビティが薄くなる一方樹脂モールドエリア(ワークサイズ)が拡大する傾向にある。また、半導体装置の高速化を図る観点から半導体チップ(以下チップと略す。)を基板にワイヤを介さずにバンプにより端子接続するフリップチップ接続をする製品が多くなってきている。このため、チップと基板間の狭い隙間にアンダーフィルモールドする必要性がある。また、チップの発熱を放熱する必要性から、チップ表面を露出させて樹脂モールドするニーズもある。一例として露出させた面に放熱板を接着することで放熱効果が得られる。更には製造コストを下げる狙いから、ワークサイズが例えば100×300mm以下のストリップ基板タイプであったものから、より大型な半導体ウエハ状のワーク上に配線パターンが形成された基板にチップを接続した例等がある。なお、数々の半導体製造方法があるため、一例を挙げると熱可塑性のテープを半導体ウエハ状の円形キャリアに貼り付けて、更にテープの上にチップを貼り付け、モールド成形後にキャリアとテープを剥がした後に、チップの端子側に再配線層を接続する、所謂eWLB (embedded Wafer Level Ball Grid Array)等もある。この場合、放熱効果を高めるためにチップ背面側を露出させてモールドしたいという要求がある。即ち、ワークが半導体ウエハと同じ円形状のキャリアでチップ露出を実現した樹脂モールドを行うことが要求されている。なお、今後は更なるコストダウン要求から円形状のワークよりさらに大きな四角形大判ワークでチップ露出成形する要求も出てくると思われる。
【0003】
上述した円形状のワークをモールド金型に搬入して外周縁部をクランプしトランスファ成形する場合、樹脂路(ランナゲート、オーバーフローゲート、エアベント等を含む)がワーク端部と交差するため、モールド樹脂が端面より漏れ易く、モールド樹脂のワーク端面への回り込みを防ぐためには、ワーク端面を対向する金型端面と位置合わせして可及的に隙間の発生を解消しておく必要がある。
しかしながら、ワークが円形状のため、ワークを金型端面に幅寄せして位置決めすることが難しい。矩形状のストリップ基板の一端面を金型側の構成で押動して反対側端面をポットインサートの端面に突き当てて整列させる技術が提案されている(特許文献1;特開2015-51557号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-51557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フリップチップ型チップ接続のチップ露出ウエハタイプの成形の場合、厚さが薄く面積が大きなキャビティエリアを樹脂モールドする必要があり、圧縮成形では樹脂圧を高くすることができないことから、トランスファ成形の方が狭小エリアまで樹脂圧を高めてモールドするには好適である。
【0006】
しかし、所謂eWLBタイプのワークをトランスファ成形で樹脂モールドする場合、円形のキャビティの端面近くまでチップがワーク上に多数搭載されているため、ワーク外周のチップ間やチップ下にボイドや未充填エリアを残さないことが必要である。また、樹脂注入バランスを良好に維持するためゲートの幅を可及的に広くしたい。しかしながら、ワークは円形状をしているため、端面が平坦面となる矩形基板と異なり、特許文献1で開示されているポット駒による樹脂路を形成するオーバーハング量(ポット駒によるワーク端よりキャビティ端までの重なりの長さ)が大きくなりすぎる。また、ワークが円形状のため、特許文献1に示すような金型側に幅寄せ機構を設けて複数の移動駒でワーク端面を押動する場合でも、端面が曲面であるが故に押動しても位置ずれが発生し易い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に述べるいくつかの実施形態に適用される開示は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、簡略化した装置構成でワークをモールド金型へ位置決めして受け渡すことができるワーク搬送装置を提供し、ワーク形状にかかわらずモールド樹脂のワーク端面への回り込みを回避できしかもフリップチップ接続されたチップ露出型半導体製品を高品質で成形することができる樹脂モールド装置を提供することにある。
【0008】
以下に述べるいくつかの実施形態に関する開示は、少なくとも次の構成を備える。即ち、ワーク及びモールド樹脂をモールド金型へ搬入し、成形後のワーク及び不要樹脂を前記モールド金型から搬出するワーク搬送装置であって、前記モールド金型の金型クランプ面に設けられた位置決め部で前記モールド金型に対する位置決めがなされる搬送装置本体と、前記搬送装置本体に設けられ、前記ワークを保持するワーク保持部と、前記搬送装置本体に設けられ、前記モールド金型へ供給される前記モールド樹脂及び成形後の不要樹脂を各々保持可能な樹脂保持部と、を備え、前記樹脂保持部は、前記モールド金型へ供給される前記モールド樹脂を保持する第一樹脂保持部と、成形後の不要樹脂を保持する第二樹脂保持部とを備え、前記第一樹脂保持部と第二樹脂保持部は、前記搬送装置本体の前記モールド金型に対する進入方向に対して直交する水平方向に前記搬送装置本体の搬入搬出位置へ交互に移動可能に設けられていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、ワーク保持部は金型面に設けられたセット位置にワークを位置決めして搬入し、セット位置から成形後のワークをワーク保持部で受け取ってモールド金型から搬出するこができるうえに、樹脂保持部は、第一樹脂保持部と第二樹脂保持部が搬送装置本体の搬入搬出位置へ交互に移動することで、第一樹脂保持部でモールド樹脂を保持してモールド金型へ供給し、第二樹脂保持部で成形後の不要樹脂を保持してモールド金型より搬出することができる。よって、ワーク及び樹脂の金型搬入動作及び搬出動作を兼用することで装置構成を簡略化することができる。
特にワーク搬入動作時に第一樹脂保持部によるモールド樹脂の搬入動作を行い、ワーク搬出動作時に第二樹脂保持部による不要樹脂の搬出動作を行うことで、同一のワーク搬送装置で切り替えて行うことができるので、搬送装置本体が金型進入方向に大型化せずコンパクトに配置することができる。
【0011】
前記第一樹脂保持部は、固形樹脂、粉体状樹脂、顆粒状樹脂、液状樹脂のうちいずれか一の形態のモールド樹脂を保持し、前記第二樹脂保持部は成形品カルを吸着保持することが好ましい。
これにより、第一樹脂保持部により様々な形態のモールド樹脂を搬入し、第二樹脂保持部により成形後の成形品カルを搬出することができる。
【0012】
上述したいずれかのワーク搬送装置より搬入されたワーク及びモールド樹脂を前記モールド金型の第一の金型と第二の金型とでクランプして樹脂モールドし、成形後のワーク及び不要樹脂を前記ワーク搬送装置により搬出する樹脂モールド装置であって、前記第一の金型及び第二の金型のいずれかに形成されたキャビティ凹部に連なるエア若しくはモールド樹脂の移動通路となるように前記ワーク外周側上端部に重なり配置される架橋部を備えかつ金型クランプ面に対して金型開時は離間するように上動支持された可動駒を具備し、
前記可動駒は、型開放状態で金型クランプ面より離間しており、前記ワーク搬送装置により保持された前記ワーク外周側上端部が前記架橋部と重なるセット位置へワーク保持部を移動させて前記ワークが受け渡され、型閉じ動作により前記可動駒が押し下げられて前記架橋部により前記ワーク外周側上端部が挟み込まれてクランプされることを特徴とする。
【0013】
これにより、ワーク搬送装置により保持されたワークが金型クランプ面より離間し可動駒の架橋部と重なるセット位置へワーク保持部を水平移動させてワークが受け渡されるので、矩形状ワークのみならず円形状ワークであっても、ワーク保持部により位置決めしてモールド金型に受け渡すことができる。
また、型閉じ動作により可動駒が押し下げられて架橋部によりワーク端部が挟み込まれてクランプされるのでモールド樹脂のワーク端面への回り込みを回避することができる。
【0014】
前記可動駒は、前記キャビティ凹部に前記架橋部が接続するように形成されたポット駒、ランナゲート駒、エアベント駒のいずれかであってもよい。
これにより、モールド金型がトランスファモールドであっても圧縮成形であっても、ワーク形状にとらわれずモールド金型に対する正確な位置決めが行われ、ワーク端部に樹脂漏れが発生することはない。
【0015】
前記ワークが受け渡されるセット位置には複数の支持ピンが金型面より進退可能に設けられており、前記ワーク搬送装置は、ワーク外周側上端面が前記可動駒と重なる位置へ移動させて突出位置にある前記支持ピンに受け渡される。
これにより、ワークをモールド金型に受け渡す際にワークが金型面と摺動することにより傷つくことがない。
【発明の効果】
【0016】
簡略化した装置構成でワーク及び又は樹脂をモールド金型へ位置決めして受け渡すことができるワーク搬送装置を提供することができる。
ワーク形状にかかわらずモールド樹脂のワーク端面への回り込みを回避できしかもフリップチップ接続されたチップ露出型半導体製品を高品質で成形することができる樹脂モールド装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】トランスファ成形による樹脂モールド装置のモールド金型を中心としたワーク及び樹脂タブレット供給断面説明図である。
図2図1に続くワーク及びモールド樹脂の搬入動作を示す樹脂モールド工程の説明図である。
図3図2に続くワーク及びモールド樹脂の搬入動作を示す樹脂モールド工程の説明図である。
図4図3に続く型閉じ動作及び型開き動作を示す樹脂モールド工程の説明図である。
図5図4に続く成形品及び不要樹脂の搬出動作を示す樹脂モールド工程の説明図である。
図6図5に続く成形品及び不要樹脂の搬出動作を示す樹脂モールド工程の説明図である。
図7図7(a)(b)はワーク幅寄せをワーク搬送装置で行う理由を説明する平面図及び断面図である。
図8図8(a)は上型平面図、図8(b)は下型平面図である。
図9】ポット位置に対するワークの位置決め動作を示す説明図である。
図10図10(a)は搬入動作時のワーク搬送装置の平面図、図10(b)は搬出動作時のワーク搬送装置の平面図である。
図11図11(a)はランナゲートを可動駒とした樹脂モールド装置の断面説明図、図11(b)はエアベントとランナゲートを可動駒とした樹脂モールド装置の断面説明図である。
図12】エアベントを可動駒とした圧縮成形用の樹脂モールド装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るワーク搬送装置及びそれを備えた樹脂モールド装置及び方法の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。尚、モールド金型というときは、モールドベースに各々支持された上型及び下型を指し示すものとし、型開閉機構(プレス装置)を除いたものを指し示すものとする。また、樹脂モールド装置をいうときは、モールド金型とこれを開閉する型開閉機構(一例として電動モータ及びねじ軸又はトグルリンク機構等のプレス装置;図示せず)を少なくとも備えた装置で、さらに自動化のためには樹脂搬送装置またはワーク搬送装置、成形後のワーク搬出装置を備える装置である。トランスファ成形の場合ポットに挿入されたプランジャを作動させるトランスファ機構、更には型閉じした際に金型内に減圧空間を形成する減圧機構等を備えているものとする。以下、モールド金型の構成を中心に説明するものとする。また、ワークWは、チップが搭載された半導体ウエハ状の円形形状を樹脂モールドする場合を想定しているが、円形には特に限定されず、四角形や長方形であっても良い。モールド金型は、一例として下型が可動型で上型が固定型として説明するが、上型が可動型で下型が固定型であっても良く、双方が可動型であってもよい。
【0019】
先ず、樹脂モールド装置に用いられ、ワーク及びモールド樹脂をモールド金型へ搬送し、成形後のワーク及び不要樹脂を前記モールド金型から搬出するワーク搬送装置1の一例について図1(b)及び図10(a)(b)を参照して説明する。
【0020】
搬送装置本体2には、ワーク外周端部を複数箇所で挟み込んで保持するワーク保持部3とモールド樹脂R1及び成形後の不要樹脂R2を各々保持可能な樹脂保持部4が設けられている。搬送装置本体2には位置決めブロック2aが複数箇所に設けられており、後述するように、モールド金型の金型クランプ面に設けられた位置決め部(ロックブロック)で金型クランプ面に対する位置決めがなされる。
【0021】
また、ワーク保持部3は、図10(a)に示すように、円形のワークWを保持できるように、ワーク外周に沿って90度配置で4か所にチャック爪3aが開閉可能に設けられている。なお、チャック爪は4か所に設けてあるが、安定的に挟んで搬送できれば、数に拘らない。円形のワークWの外周には、位置決め用の切欠き部W1が設けられている。ワーク保持部3には、この切欠き部W1に位置決めピン3bを係止させてワークWを回り止め及び位置決めして保持するようになっている。
【0022】
また、ワーク保持部3は搬送装置本体2に対して互いに直交するX方向若しくはY方向のうち少なくともいずれかに移動可能に設けられている。本実施例ではワーク保持部3は、エアシリンダ及び直動ガイド機構を内蔵した直動機構により搬送装置本体2の長手方向に沿って搬入搬出位置(図10(a)参照)と受け渡し位置(図10(b)参照)との間を往復動可能に設けられている。受渡し位置とは、搬送装置本体2のワークセンターと下型8のワークセンターが重なる位置である。搬入搬出位置とは、後述するようにワークWが上下動した場合に、ワーク端がポット駒8eの架橋部8e1に当たらない位置まで受渡し位置よりオフセットした位置である。
【0023】
更には、搬送装置本体2の金型進入方向先頭側には、クリーニングブラシ2bが設けられている。クリーニングブラシ2bを作動させるとワーク搬送装置1がモールド金型に進退する際に金型面をクリーニングできるようになっている。
【0024】
上記構成によれば、ワークW及びモールド樹脂R1を保持したワーク搬送装置1は、モールド金型の金型クランプ面に設けられた位置決め部で搬送装置本体2が位置決めされ、ワーク保持部3をX-Y方向の少なくともいずれか(水平方向)へ移動させることで、ワーク搬送装置1のワーク搬入動作でワークW及びモールド樹脂R1をモールド金型に位置合わせして供給することができる。
【0025】
図10(a)(b)において、搬送装置本体2には、ワーク保持部3と並んで樹脂保持部4が設けられている。樹脂保持部4は、モールド金型へ供給されるモールド樹脂R1を保持する第一樹脂保持部4aと、成形後の不要樹脂R2を保持する第二樹脂保持部4bとが搬送装置本体2の搬入搬出位置(ポット孔8e2)へ交互に移動可能に設けられている。本実施例では、第一樹脂保持部4aは、固形樹脂(タブレット状樹脂)を保持するための筒状収納部4a1とその底部を開閉するシャッター4a2が設けられている。また、第二樹脂保持部4bは、吸着パッド4b1が設けられている。吸着パッド4b1は図示しない吸引装置によりエア吸引され、樹脂モールド後の不要樹脂R2を吸着保持するようになっている。不要樹脂R2は吸着パッド4b1により吸着しても良いが、チャッキング爪機構により掴んでも良い。
【0026】
第一樹脂保持部4aと第二樹脂保持部4bは、搬送装置本体2の搬入搬出位置(ポット対応位置)へモールド金型に対する進入方向に対して直交する方向(搬送装置本体2の短手方向:Y方向)に移動可能に設けられている。尚、搬送装置本体2の長手方向(X方向)に移動可能に設けても良い。これにより、ワーク搬入動作時(図10(b)参照)には第一樹脂保持部4aによるモールド樹脂R1(タブレット樹脂)の金型への搬入動作を行い、ワーク搬出動作時(図10(a)参照)には第二樹脂保持部4bによる不要樹脂R1(成形品カル)の金型からの搬出動作を切り替えて行うことができる。
【0027】
上記構成によれば、ワーク保持部3は成形前後のワークWを保持することができ、樹脂保持部4は、モールド金型へ供給されるモールド樹脂R1を保持する第一樹脂保持部4aと、成形後の不要樹脂R2(成形品カル)を保持する第二樹脂保持部4bと搬送装置本体2の搬入搬出位置(ポット孔8e2:図1(a)参照)へ交互に移動可能に設けられているので、同一のワーク搬送装置で成形前後のワーク及び樹脂を搬入搬出することができる。
【0028】
第一樹脂保持部4aは、固形樹脂の他に、粉体状樹脂、顆粒状樹脂、液状樹脂のうちいずれかのモールド樹脂R1を保持するようになっていてもよい。これにより、いずれの形態の樹脂を用いても、共通のワーク搬送装置1でワークWと共に樹脂の搬入搬出動作を行うことができる。尚、液状樹脂の場合は、シリンジであっても良い。
【0029】
次に、樹脂モールド装置5の構成について図1(a)(b)を参照して説明する。
図1(a)(b)はトランスファ成形用の樹脂モールド装置5について説明する。尚、型開閉機構は省略し、モールド金型6の構成を中心に説明する。
モールド金型6は、上述したワーク搬送装置1より搬入されたワークW及びモールド樹脂R1を上型7(第一の金型)と下型8(第二の金型)とでクランプして樹脂モールドし、成形後の成形品W及び不要樹脂R2をワーク搬送装置1により搬出する。
【0030】
先ず上型7の構成について説明する。図1(a)において上型ベース7aには、その外周縁部に沿って上型ブロック7bが環状に吊り下げ支持されている。上型ブロック7bの下端面には、下型8との位置決め用の上型ロックブロック7cが突設されている。図8(a)に示すように、上型ブロック7bの2対の対向辺には、ワークWの中心を通過する中心線上に上型ロックブロック7c(凸型ブロック)が各々配置されている。なお、必ずしもワークWの中心を通過する中心線上にロックブロックを配置する必要は無く、少なくとも各辺に設ければ良い。
また上型ブロック7bに囲まれた上型空間には、矩形状の上型クランパ7d、円形状の上型キャビティ駒7eがコイルばね7fを介して上型ベース7aに各々吊り下げ支持されている(図1(a)、図8(a)参照)。上型キャビティ駒7e(キャビティ底部)及びこれを囲む上型クランパ7d(キャビティ側部)により上型キャビティ凹部7nが形成されている。
【0031】
上型クランパ7dのクランプ面(下端面)には上型カル7g及びこれに接続する上型ランナゲート7hが上型キャビティ凹部7nに接続するように彫り込まれている。また、上型クランパ7dの上型キャビティ凹部7nを介して上型ランナゲート7hとワークの反対側には上型キャビティ凹部7nに接続する複数の上型エアベント溝7iが彫り込まれている。各上型エアベント溝7iには、シャットオフピン7jが開閉可能に組み付けられている。シャットオフピン7jは、上型ベース7a内にコイルばね7kを介して下方に向かって付勢された状態で組み付けられている。これにより、シャットオフピン7jの先端(下端面)は、上型エアベント溝7iの溝底部と略面一となる位置で支持されている。
【0032】
また、上型キャビティ凹部7nやこれに接続する樹脂路を含む上型クランプ面には、リリースフィルムFが図示しない吸引孔に吸着保持されて覆われる。ワークWに搭載された半導体チップTの表面を露出成形するためには、上型キャビティ凹部7nに吸着保持されたリリースフィルムFにより覆う必要があるためである。リリースフィルムFは、リール間で長尺状に連続する長尺フィルムであっても、上型クランプ面のサイズに応じて切断された枚葉フィルムのいずれであってもよい。リリースフィルムFは、厚さ50μm程度で耐熱性を有するもので、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するもの、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEPフィルム、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリジン等を主成分とした単層又は複層膜が好適に用いられる。
【0033】
次に下型8の構成について説明する。
図1(a)において図示しない下型ベースには、その外周縁部に沿って下型ブロック8aが環状に支持されている。下型ブロック8aの上端面には、上型7との位置決め用の下型ロックブロック8b(2個一対の直方体ブロック又は1個の凹型ブロック)が設けられている。図8(b)に示すように下型ブロック8aの対向辺には、ワークWの中心を通過する中心線上に下型ロックブロック8bの凹部8cが各々配置されている。なお、必ずしもワークWの中心を通過する中心線上にロックブロックを配置する必要は無く、少なくとも各辺に設ければ良く、上型ロックブロック7cと下型ロックブロック8bが組みで噛み合えば、辺のどこに配置しても良い。
よって、上型ロックブロック7cが下型ロックブロック8bの凹部8cと噛み合うことで、上型7と下型8が位置合わせしてクランプされる。
【0034】
下型ブロック8aのクランプ面には、シール材8dが環状に嵌め込まれている。下型ブロック8aは、対向する上型ブロック7bのクランプ面と当接して金型内空間をシールする。下型ブロック8aには、ポット駒8e(可動駒)がコイルばね8sにより下型ベースに対して金型開時は上方に付勢されてフローティング支持されている。ポット駒8eの上端は平坦な金型パーティング面と架橋部8e1からなり略中央にポット孔8e2が形成されている。ポット孔8e2は、モールド樹脂R1が装填される筒状をしており、ポット孔8e2内にはプランジャ8fが昇降可能に挿入されている。
【0035】
また、下型ブロック8aに囲まれた金型空間には、円形状のワーク支持ブロック8gが下型ベースに支持固定されている。ワーク支持ブロック8gの上端面は、その周囲の下型ブロック8aの上端面より高さが、ワークWの板厚に相当する高さ分だけ低くなるように支持されている。これにより、ワークWは、ワーク支持ブロック8gとこれを囲む下型ブロック8aにより形成されたセット凹部8hに載置される。セット凹部8hはワークWを載置する位置決めも兼ねることができるが、ワークWに設けられた位置決めのVノッチに対応する位置決めピン8t(図8(b)参照)を下型8より立設させることにより、必ずしもセット部は凹部である必要は無い。
【0036】
また、ポット駒8eの上端部には、図7(a)(b)に示すようにセット凹部8hに載置されるワークWの上端部にオーバーハング状に重なり配置される架橋部8e1が形成されている。架橋部8e1は、上型ランナゲート7hに対向する位置に設けられており、ポット側より外周縁部ほど板厚が薄くなるようにくさび状に形成されている。これにより、モールド樹脂R1はポット駒8eの上端面である架橋部8e1と上型ランナゲート7hとの間を通過して上型キャビティ凹部7nに充填されるため、ワークWの端部を通過せず、跨ぐことにより樹脂漏れが発生することがない。なお、上型ランナゲート7hを形成するランナ及びゲート溝は本例では上型側に設けているが、架橋部8e1側に設けても良く、双方に設けても良い。上型ランナゲート7hとキャビティとの境はゲートになっているため、後述するゲートブレイクが容易にできる様、断面形状がテーパとなっている。
【0037】
また、図8(b)に示すように、ワークWは円形の端部近傍までチップTが多数配置されている。モールドエリアは薄く面積が広いため、チップT間の水平方向の隙間やチップT下の隙間にモールド樹脂R1の未充填エリアを生じないように樹脂の注入バランスを確保する必要がある。このため、モールド樹脂R1の充填性を考慮すると、できるだけキャビティに接続される先端側(キャビティとランナの接続側ゲート)のランナゲート幅G(図7(a)参照)を広く確保したいため、ポットよりキャビティに向かって幅Gが拡大したテーパ形状となっている。ポット駒8eを円形のワークWに平面視で重ね合わせると、架橋部8e1のオーバーハング量L(ポット駒8eのワーク重なり端部よりワーク外周端部までの重なりの長さ:図7(b)参照)が大きくなる。よって、上下型が型閉じされると、ポット駒8eの上端面と上型ランナゲート7hとの間に樹脂路が形成される。
【0038】
更には、ポット駒8eの架橋部8e1は、型開放状態で下型クランプ面より離間しており(図1(a)参照)、ワーク搬送装置1により保持されたワーク端面が架橋部8e1の下方でセット凹部8hの位置決めされた後(図3(b)参照)、架橋部8e1を当該ワーク外周端部にオーバーラップするように重ね合わせてワークWがモールド金型6にクランプされる。このように、ワークWを金型構成だけではなくワーク搬送装置Wにより位置決めする構成としたのは、ワークWが特に円形であるがゆえに、従来の矩形基板の幅寄せ機構のように移動駒等を用いてワーク端部をポット側に押動しようとしてもワークWが大型であるがゆえに移動量(架橋部8e1のオーバーハング量L)が多く、位置ずれやワークWの回転が生じやすいためである。なお、下型8には、ワークWに設けられた位置決め用のVノッチに対応する位置決めピン8tを設けることで回り止め兼位置決めを行っても良い(図8(b)参照)。
【0039】
図1(a)において、ワーク支持ブロック8gにはセット凹部8hに載置されるワークWを吸着保持する吸着孔8iが複数箇所に設けられている。吸着孔8iは図示しない吸引装置に接続されている。また、ワーク支持ブロック8gを貫通して移動可能な複数の支持ピン8jが設けられている。支持ピン8jはセット凹部8hの底部よりピン先端部が突設された位置と、ピン先端部がワーク支持ブロック8g内に退避する位置とで移動可能に設けられている。ワーク搬送装置1に保持されたワークWがセット凹部8hに受け渡される際に複数の支持ピン8jのピン先端部をセット凹部8hより突設させておくことで、ワークWは支持ピン8jに受け渡される。これにより、ワークWをモールド金型に位置決めする際に金型面と摺動することにより傷つくことがない。尚、支持ピン8jを省略してもよい。
【0040】
また、下型ブロック8aのシール材8dより径方向内側であって、上型オーバーフローキャビティ7rに対向する位置に吸引孔8kが設けられている(図8(a)(b)参照)。吸引孔8kは図示しない吸引装置に接続されている。ワークWをモールド金型6にクランプした状態で、吸引孔8kよりエア吸引することで、上型キャビティ凹部7n内に残留するエアを上型エアベント溝7iを通じて排出しながら樹脂モールドすることで、ボイドの発生を防いでいる。
【0041】
上記構成によれば、ワーク搬送装置1により保持されたワークWをモールド金型6に搬入する際にワーク端面がポット駒8eの架橋部8e1と重なる位置へスライドさせた状態でワークWが位置決めされて下型8(セット凹部8h)に受け渡されるので、ワークWの形状にとらわれずモールド金型6に対する正確な位置決めが行われ、ワーク端部に樹脂漏れが発生することもなくなる。
【0042】
ここで、図1乃至図6を参照してワーク搬送装置1によるワーク搬入搬出動作例及び樹脂モールド装置5による樹脂モールド動作例について説明する。
図1(a)は、モールド金型6は型開きした状態を示す。上型7のクランプ面にはリリースフィルムF(長尺フィルム若しくは枚葉フィルム)が供給される。また下型8においては、下型ブロック8aより架橋部8e1が離間するようにポット駒8eが上方に付勢された状態にある。
【0043】
図1(b)は、型開きしたモールド金型6にワーク搬送装置1によりワークW及びタブレット樹脂R1が搬入される工程を示す。ワークWは、ワーク保持部3のチャック爪3aに外周端部を保持されており、タブレット樹脂R1は、樹脂保持部4(第一樹脂保持部4a)に保持されている。搬送装置本体2の位置決めブロック2aを下型ロックブロック8bの凹部8cと位置合わせする。尚、ワーク保持部3に保持されたワークWは、ワーク保持部3が搬入搬出位置にあるため、セット凹部8hとはオフセットした位置で保持されている。また、ワークWとタブレット樹脂R1は同一の搬送装置ではなく、別の搬送装置により搬入するようにしてもよい。
【0044】
次いで図2(a)に示すように、ワーク搬送装置1を下型8のクランプ面に向かって下降させて、搬送装置本体2の位置決めブロック2aを下型ロックブロック8bの凹部8cに凹凸篏合させて、搬送装置本体2を下型8に対して位置決めする。これにより、樹脂保持部4の筒状収納部4a1はポット孔8e2の直上に同心状に位置合わせされた状態にある。
【0045】
図2(b)に示すように、ワークWを保持したワーク保持部3が搬入搬出位置から受け渡し位置へ横に移動させる。このときワークWはポット駒8eの架橋部8e1の下方位置にオーバーラップした位置まで水平移動する。これによりワークWの外周端部とセット凹部8hとが位置合わせされる。
また、樹脂保持部4からポット駒8eのポット孔8e2にタブレット樹脂R1を装填する。具体的には、筒状収納部4a1の底部を閉止しているシャッター4a2を開放してタブレット樹脂R1をポット孔8e2に落下させる。
【0046】
図3(a)に示すように、ワーク支持ブロック8gに挿入された支持ピン8jの先端部をセット凹部8hの底部より突出させ、ワーク保持部3のチャック爪3aを開放することでワークWを支持ピン8jに受け渡す。
次いで図3(b)に示すように、ワーク搬送装置1が下型8より上昇した後、モールド金型6外へ退避する。また、支持ピン8jがワーク支持ブロック8g内に退避することで、ワークWは、セット凹部8h内に収納され、吸着孔8iに吸着保持される。また、上型7のクランプ面には、リリースフィルムFが吸着保持される。
【0047】
図4(a)に示すように例えば上型7に対し下型8が上昇してモールド金型6を型閉じする。吸引孔8kからエア吸引を開始し、上型ブロック7bと下型ブロック8aがシール材8dを挟み込むと、上型エアベント溝7iを通じて上型キャビティ凹部7n内に減圧空間が形成される。また、ワークWは、上型クランパ7dによりワークWがクランプされチップTの表面は、リリースフィルムFを介して上型キャビティ駒7eに押し当てられる。プランジャ8fを上昇させてポット孔8e2内に溶融したモールド樹脂R1を上型カル7g、上型ランナゲート7hを通じて上型キャビティ凹部7n内に充填する。樹脂がエアベント近くまで来たときに再度型閉じが行われると、シャットオフピン7jの先端が上型クランパ7dより相対的に突出して上型エアベント溝7iを遮断して樹脂及びエアの流れを止める。流れが止まったキャビティ凹部7n内のモールド樹脂R1が加熱加圧されたまま保圧され硬化する。
【0048】
モールド樹脂の硬化が完了すると、図4(b)に示すように、モールド金型6を型開きする。ポット駒8eがコイルばね8s(図8(b)参照)の付勢によって架橋部8e1が下型ブロック8aより離間するように移動する。なお、ポット駒8eはコイルばね8sに限らず、別駆動できるシリンダやモータ等によって上動するようにしても良い。ワークWはセット凹部8hに吸着保持されたままである。これにより、ポット駒8e上の不要樹脂R2(成形品カル)が成形品(パッケージ部)よりゲートブレイクされて分離されて上昇する。上型7のクランプ面にはリリースフィルムFが吸着保持されているため、樹脂とは容易に分離される。なお、プランジャ8fは高さ位置が変わっていないため、ポット駒8eの上動と共にプランジャ先端より不要樹脂R2が離型される。さらに、ポット駒8e上の不要樹脂R2は、プランジャ3gが不要樹脂R2を下より突上げるまで上動させて離型させても良い。このプランジャ上動動作は、ワーク搬送装置1の第二樹脂保持部4bが不要樹脂R2の上に配置したときに行うのが、不要樹脂R2飛び出し防止となって良い。
モールド金型6が型開きした後、ワーク搬送装置1が金型内に進入する。具体的には、搬送装置本体2が下型8と位置合わせ可能な位置まで進入する。ワーク保持部3はワーク受け渡し位置にありチャック爪3aが開いた状態にある。また、樹脂保持部4は、図10(a)に示すように第二樹脂保持部4bがポット孔8e2に対向する位置へ移動している。
【0049】
図5(a)に示すように、ワーク支持ブロック8gより支持ピン8jが上昇してセット凹部8hからワークWをピン先端に支持したまま押し上げる。この状態でワーク搬送装置1が下降して、ワーク保持部3のチャック爪3aでワークWの外周端部を保持すると共に、第二樹脂保持部4bの吸着パッド4b1で不要樹脂R2(成形品カル)を吸着保持する。なお、このときプランジャ8fを上昇させて不要樹脂R2のポット駒8e上面から押上げて離型を積極的に行っても良い。このまま、ワーク搬送装置1が上昇すると、ワークWの外周端部とポット駒8eの架橋部8e1が干渉する。そこで、支持ピン8jが下降し、ワークWを保持したワーク保持部3を図5(a)に示す受け渡し位置から図5(b)に示すポット駒8eから離間した搬入搬出位置へ横に移動させる。これにより、ワークWの外周端部とポット駒8eの架橋部8e1が高さ方向に重なり合うことが無くなる。
【0050】
図6に示すように、ワーク保持部3がワークWを保持し及び第二樹脂保持部4b(吸着パッド4b1)が不要樹脂R2(成形品カル)を保持したままワーク搬送装置1が上昇し、モールド金型6外へ退避する。このとき、搬送装置本体2に設けられたクリーニングブラシ2bが下型クランプ面に下降してブラシを回転させて下型面を擦りながらエア吸引することで樹脂カスを除去しながら退避する。上型7のクランプ面に吸着保持されていたリリースフィルムFは、吸着を解除され剥離されて新たなリリースフィルムFと交換される。なお、長尺リリースフィルムの場合は、横に送られ、新たな部分に交換される。
尚、ワーク搬送装置1によりモールド金型6から搬出されたワークWと不要樹脂R2は分別されて回収される。
【0051】
上記樹脂モールド方法によれば、ワーク搬送装置1により保持されたワークW及びモールド樹脂R1を保持してモールド金型6に搬入し、成形後のワークW及び不要樹脂R2を分離したままモールド金型6より搬出することができるので、搬送装置構成を簡略化することができる。
また、ワーク搬送装置1をモールド金型6に搬入する際にワークWを搬入搬出位置からセット凹部8hに対応する受け渡し位置へスライドさせてポット駒8eの架橋部8e1と高さ方向に重なる位置へスライドさせた状態でワークWが下型8(セット凹部8h)に受け渡されるので、矩形状ワークのみならず円形状ワークであってもワークWの形状にとらわれずモールド金型6に対する正確な位置決めが行われ、ワーク端部に樹脂もれが発生することはなくなる。
【0052】
上述した実施例では、ワークWは円形の半導体ウエハ状を想定していたが、必ずしも円形に限らず、短冊状の基板や大判サイズ(正方形又は長方形)の基板であってもよい。また、下型8に備えたポットはポット駒に対して1か所設けたが、1つのポット駒に複数のポットを配列しても良いし、複数行列で設けても良い。更にポット駒8eを1か所のみ図示したが、ポット駒8eはワークWに対して複数設けられていてもよい。
また、ワーク搬送装置1に備えたワーク保持部3は、搬送装置本体2の長手方向に搬入搬出位置と受け渡し位置とで移動可能になっていたが、ポット駒8eの配置によっては、図9に示すように、ポット孔8e2の配置に応じてX-Y方向に移動可能に設けられていてもよい。更にX-Y方向に限らず斜め移動であっても良く、ワーク保持部3が水平方向に移動できれば良く、いずれにしてもワークWが金型セット時に垂直移動するとポット駒8eと干渉してしまうことを回避できれば良い。
【0053】
図11(a)は、他の実施例で可動駒としてポット駒8eに替えて、ポットは固定とし、可動のランナゲート駒8n(可動駒)を備えた樹脂モールド装置の断面説明図である。上述した実施例と同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとする、ワーク搬送装置1や上型7の構成は同様であるので、下型8の構成を中心に説明する。
下型8の下型ブロック8aには、筒状の固定されたポット8mが組み付けられ、プランジャ8fが挿入されている。また、ポット8mとセット凹部8hとの間には、下型ランナゲート駒8nが昇降可能に設けられている。下型ランナゲート駒8nは下型ブロック8aを貫通する昇降ロッド8pの上端に連結支持されている。下型ランナゲート駒8nは図示しないコイルばね等により金型開時は上方に付勢されている。
下型ランナゲート駒8nの上面は対向する上型カル7gや上型ランナゲート7hとの間で樹脂路を形成する。特に、上型ランナゲート7hと対向面は、セット凹部8hに載置されるワークWの上端部にオーバーハング状に重なり配置される架橋部8n1が形成されている。架橋部8n1は、上型キャビティ凹部7nに接続する外周端部ほど、さらにポット8mに接続する外周端部ほど板厚が薄くなるように両端がくさび状に形成されている。
【0054】
図11(b)は、図11(a)にさらに可動駒として上型キャビティ凹部と上型エアベント溝とに接続する下型ブリッジエアベント駒8qを備えた樹脂モールド装置の断面説明図である。下型8の下型ブロック8aには、筒状の固定されたポット8mが組み付けられ、プランジャ8fが挿入されている。下型ブロック8aのポット8mとセット凹部8hとの間には、下型ランナゲート駒8nが昇降可能に設けられている。下型ランナゲート駒8nは下型ブロック8aを貫通する昇降ロッド8pの上端に連結支持されている。下型ランナゲート駒8nは図示しないコイルばね等により金型開時は上方に付勢されている。
【0055】
下型ランナゲート駒8nの上面は対向する上型カル7gや上型ランナゲート7hとの間で樹脂路を形成する。特に、上型ランナゲート7hとの対向面は、セット凹部8hに載置されるワークWの上端部にオーバーハング状に重なり配置される架橋部8n1が形成されている。架橋部8n1は、上型キャビティ凹部7nに接続する外周端部ほど、さらにポット8mに接続する外周端部ほど板厚が薄くなるように両端がくさび状に形成されている。
【0056】
さらに上型クランパ7dには、上型キャビティ凹部7nと上型エアベント溝7iに接続する上型ブリッジエアベント溝7mが彫り込まれている。下型ブロック8aの上型ブリッジエアベント溝7mに対向する位置には、下型ブリッジエアベント駒8q(可動駒)が昇降可能に設けられている。下型ブリッジエアベント駒8qは下型ブロック8aを貫通する昇降ロッド8pの上端に連結支持されている。下型ブリッジエアベント駒8qは図示しないコイルばね等により金型開時は上方に付勢されている。下型ブリッジエアベント駒8qの上面は対向する上型ブリッジエアベント溝7mとの間でエアベント路を形成する。特に、セット凹部8hに載置されるワークWの上端部にオーバーハング状に重なり配置される架橋部8q1が形成されている。架橋部8q1は、上型キャビティ凹部7nに接続する外周端部ほど、さらに上型オーバーフローキャビティ7r側端部ほど板厚が薄くなるように両端がくさび状に形成されている。
このように、セット凹部8hの両側に下型ランナゲート駒8n及び下型ブリッジエアベント駒8qが配置された構成においては、ワーク搬送装置1のワーク保持部3は、搬送装置本体2の短手方向(図11(b)紙面に垂直方向)にスライドしてワークWとセット凹部8hとの位置決め及びワークWの受け渡しが行われる。
【0057】
上述した樹脂モールド装置5はトランスファ成形用のモールド金型6を用いていたが、圧縮成形用のモールド金型6を備えた樹脂モールド装置5であってもよい。
図12に示す樹脂モールド装置5は、図11(b)のモールド金型6の構成のうち下型8の構成を上型7と入れ替え、ワーク搬送装置1を反転させた構成となっている。即ち、図12の上型7´の構成は、図11(b)の下型8の構成を反転させたもので、符号に´を付して示してある。下型8´の構成は、下型ベース8´と下型ブロック8b´囲まれた構成が異なっている。以下、異なる構成について説明する。
【0058】
下型8´は、下型ベース8a´には、その外周縁部に沿って下型ブロック8b´が環状に支持されている。下型ブロック8b´の上端面には、上型7´との位置決め用の下型ロックブロック(図示せず)が突設されている。
また下型ブロック8b´に囲まれた下型空間には、環状の下型クランパ8d´がコイルばね8f´を介して下型ベース8a´にフローティング支持されている。また、下型クランパ8d´に囲まれて下型キャビティ駒8e´が下型ベース8a´に支持固定されている。下型キャビティ駒8e´(キャビティ底部)及びこれを囲む下型クランパ8d´(キャビティ側部)により下型キャビティ凹部8rが形成されている。
【0059】
下型クランパ8d´のクランプ面(上端面)には下型キャビティ凹部8rに接続する下型ブリッジエアベント溝8m´が彫り込まれている。下型ブリッジエアベント溝8m´にはさらに複数の下型エアベント溝8i´が接続している。各下型エアベント溝8iには、シャットオフピン8j´が開閉可能に組み付けられている。シャットオフピン8j´は、下型ベース8a´内にコイルばね8k´を介して上方に向かって付勢された状態で組み付けられている。これにより、シャットオフピン8j´の先端(上端面)は、下型エアベント溝8i´の溝底部と略面一となる位置で支持されている。下型キャビティ凹部8rを含む下型クランプ面にはリリースフィルムFが吸着保持されていることが好ましい。
【0060】
ワーク搬送装置1は、ワーク保持部3にワークWを保持したまま、モールド金型6に進入(図12の紙面の左右方向)して上型7´のセット凹部7h´に吸着保持させる。ワーク保持部3は、搬送装置本体2の短手方向(図12の紙面に垂直方向)にスライドしてワークWの外周端部に上型ブリッジエアベント駒7q´が各々オーバーハングするように重ね合わせて図12の紙面に垂直方向に搬入される。ワーク保持部3はワークWをチャック爪3aにより保持するのみならず、ワークWを吸着したままセット凹部7h´に押し当てて吸着保持させるようにしてもよい。ワーク搬送装置1には上型ブリッジエアベント駒7q´表面に樹脂残りが付着する可能性があるため、クリーニング機構は無くとも良いが、あった方が良い。
【0061】
尚、下型キャビティ凹部8rには、ワーク搬送装置1によりモールド樹脂R1(例えば顆粒状樹脂、粉体状樹脂、液状樹脂等)を供給してもよく、別の樹脂搬送供給装置によりモールド樹脂R1のみを搬送してもよく、成形後の不要樹脂R2のみを別の樹脂搬送排出装置で取り出しても良い。なお、圧縮成形において、成形後の不要樹脂R2をオーバーフローキャビティに流出させない場合は、ワークWと樹脂は一体となって取り出すようになる。また、下キャビティ圧縮成形金型を一例にしたが、上キャビティ圧縮成形金型の場合は、ワークの上に樹脂R1を載せて金型にワーク搬送装置で同時に搬入しても良い。さらに上下キャビティ凹部が形成する金型であっても良い。
【0062】
さらに成形前後の双方の樹脂(R1、R2)を1つの樹脂搬送装置でワーク搬送装置1とは別に供給及び取り出ししても良い。更にワーク搬送装置1は供給及び取り出しを同一のワーク搬送装置で実施しているが、供給と取り出しをそれぞれ別のワーク搬送装置としても良い。いずれにしても、金型の可動駒が存在する側の金型面にワークを搬入及び取り出しする、金型の同一面ワーク供給であって同一面ワーク搬出の際に本発明に係るワーク搬送装置は有効であり、金型面の樹脂供給と搬出が同一金型面の場合に樹脂搬送装置は有効である。
【符号の説明】
【0063】
1 ワーク搬送装置 2 搬送装置本体 R1 モールド樹脂 R2 不要樹脂 2a 位置決めブロック 2b クリーニングブラシ W ワーク W1 切欠き部 3 ワーク保持部 3a チャック爪 3b 位置決めピン 4 樹脂保持部 4a 第一樹脂保持部 4a1 筒状収納部 4a2 シャッター 4b 第二樹脂保持部 4b1 吸着パッド 5 樹脂モールド装置 6 モールド金型 7、7´ 上型 7a 上型ベース 7b 上型ブロック 7c 上型ロックブロック 7d 上型クランパ 7e 上型キャビティ駒 7f コイルばね 7g 上型カル 7h 上型ランナゲート 7i 上型エアベント溝 7j,8j´シャットオフピン 7k,8f´,8k´,8s コイルばね 7m 上型ブリッジエアベント溝 7n 上型キャビティ凹部 7r 上型オーバーフローキャビティ F リリースフィルム 8,8´ 下型 8a´ 下型ベース 8a,8b´ 下型ブロック 8b 下型ロックブロック 8c 凹部 8d,7d´ シール材 8d´ 下型クランパ 8e ポット駒 8e´ 下型キャビティ駒 8e1,8n1,8q1 架橋部 8e2 ポット孔 8f,7j´ プランジャ 8g,7g´ ワーク支持ブロック 8h,7h´ セット凹部 8i,7i´ 吸着孔 8i´ 下型エアベント溝 8j,j´ 支持ピン 8k,7k´ 吸引孔 8m ポット 8m´ 下型ブリッジランナゲート溝 8n 下型ランナゲート駒 8p,7p´ 昇降ロッド 7q´上型ブリッジランナゲート駒 8q 下型ブリッジエアベント駒 8r 下型キャビティ凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12