(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】着色フラットケーブル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 7/08 20060101AFI20230823BHJP
G01B 11/03 20060101ALI20230823BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
H01B7/08
G01B11/03 H
H01B13/00 525G
(21)【出願番号】P 2018098253
(22)【出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-04-23
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】323004813
【氏名又は名称】株式会社TOTOKU
(74)【代理人】
【識別番号】110003904
【氏名又は名称】弁理士法人MTI特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】高木 俊英
(72)【発明者】
【氏名】輿水 幸比古
(72)【発明者】
【氏名】中山 順盟
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】柴垣 俊男
【審判官】松永 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-153204(JP,A)
【文献】特開2003-229026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に間隔を空けて並列に配された複数の導体がフィルム状着色絶縁体間に挟まれ、長手方向の両端部で前記フィルム状着色絶縁体の片面側が非設置状態となって前記導体が露出した接続部を有し、前記導体間ピッチ及び前記幅方向の端部エッジから導体までの長さ等の構造寸法を正確に測定するための着色フラットケーブルであって、
前記導体は、平滑面を有して光の散乱率が0~10%の反射体である平角線であり、
前記フィルム状着色絶縁体は、光を透過しない又は透過しにくい着色絶縁フィルムと、該着色絶縁フィルム上に設けられ且つ前記導体側に配置された、白色又は略白色を呈する光の反射率が70~80%で散乱率が90~100%の反射拡散層である接着層とを有し、
前記接続部に対して法線と30°の角度で光を照射した場合に、法線方向に反射した前記導体の反射光の強度と、法線方向に反射した前記接着層の反射光の強度との強度比(接着層反射光強度/導体反射光強度)が1.3以上となる前記導体と前記接着層とで構成されている、ことを特徴とする着色フラットケーブル。
【請求項2】
前記着色絶縁フィルムが、透明絶縁フィルムと該透明絶縁フィルム上に設けられた着色層とで少なくとも構成されている、又は、光不透過性材料を含有する絶縁フィルムで少なくとも構成されている、請求項1に記載の着色フラットケーブル。
【請求項3】
前記接着層の厚さが、20~50μmの範囲内である、請求項1又は2に記載の着色フラットケーブル。
【請求項4】
幅方向に間隔を空けて並列に配された、平滑面を有して光の散乱率が0~10%の反射体である平角線である複数の導体がフィルム状着色絶縁体間に挟まれ、長手方向の両端部で前記フィルム状着色絶縁体の片面側が非設置状態となって前記導体が露出した接続部を有し、さらに前記フィルム状着色絶縁体は、光を透過しない又は透過しにくい着色絶縁フィルムと、該着色絶縁フィルム上に設けられ且つ前記導体側に配置された、白色又は略白色を呈する光の反射率が70~80%で散乱率が90~100%の反射拡散層である接着層とを有し、前記導体間ピッチ及び前記幅方向の端部エッジから導体までの長さ等の構造寸法を正確に測定できる着色フラットケーブルの製造方法であって、
前記着色フラットケーブルの長尺物を連続的又は断続的にライン走行させて前記着色フラットケーブルを製造する途中で、前記導体間ピッチ及び前記幅方向の端部エッジから導体までの長さ等の構造寸法を測定する検査工程を有し、
前記検査工程に供される前記着色フラットケーブルの長尺物は、前記接続部に対して法線と30°の角度で光を照射した場合に、法線方向に反射した前記導体の反射光の強度と、法線方向に反射した前記接着層の反射光の強度との強度比(接着層反射光強度/導体反射光強度)が1.3以上となる前記導体と前記接着層とで構成されたものであり、
前記検査工程には、前記接続部が通過する際に、該接続部に対して法線と20~40°の角度で光を照射する発光装置と、前記接続部から
法線方向に反射した反射光の強度を検知する受光装置とが配置されている、ことを特徴とする着色フラットケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色フラットケーブル及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、コピーやスキャナの映り込みを軽減したり筐体の色にデザインを合わせたりするため等の着色フラットケーブルにおいて、その構造寸法を正確に測定できるように構成された着色フラットケーブル、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
OA機器やゲーム機等の電子機器内には、コンピューターと電子部品等の電気的な接続や種々の配線のために、フラットケーブルが使用されている。フラットケーブルは、その仕様により種々の構成が提案されている。一般的なフラットケーブルは白い外観をしているが、黒い外観のフラットケーブル等も提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、絶縁性があって、かつ、黒色の意匠性の高い黒色フラットケーブル被覆材、及びそれを用いた黒色フラットケーブルが提案されている。この技術は、基材フィルムの一方の面に、非導電性カーボンを含み、かつ、前記黒色印刷層面の表面抵抗値が108~1013Ωである黒色印刷層、必要に応じてプライマー層、熱接着層を順次積層し、また、黒色印刷層が非導電性カーボンの含有量が5~20質量%、バインダ前駆体の含有量が73~92.5質量%、硬化剤の含有量が1.5~7質量%からなり、さらに、該フラットケーブル被覆材にて少なくとも片面を被覆してなるものが提案されている。
【0004】
種々のフラットケーブルは、その長手方向の端部を接続コネクタに接続して使用される場合が多い。接続コネクタに正確に接続するためには、フラットケーブルを構成する平角導体間のピッチや、幅方向両端の平角導体からフラットケーブル端部(エッジ)までの長さ等の構造寸法を正確に検査した上で製造しなければならない。そうした検査方法として、特許文献2,3には、カメラでフラットケーブルの絶縁体である基材に例えば導体が被覆されず露出している部分である窓部を撮影し、得られた画像を解析してマージンを検査するテープ電線の整形装置が提案されている。また、特許文献4には、補強板付きフラットケーブルでは、マージンだけでなく窓部に対する補強板の貼付位置の適否を検査したいという要求を解決した技術も提案されている。この技術は、バックライト照明を用いてフラットケーブルの一部で光を透過させ、導体部を暗とし、ラミネートテープ部を明(グレー)とし、空隙部を明としてそれぞれ区別できるコントラスト画像を得て、画像処理により各構造寸法を検査するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-229026号公報
【文献】特開2000-348552号公報
【文献】特開2005-135923号公報
【文献】WO2013/146023A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的なフラットケーブルは白色テープで覆われた白い外観をしているため、上記特許文献4のように、バックライト照明を用い、フラットケーブルを透過する光のコントラスト画像を得て画像処理することは可能である。しかし、特許文献1のような黒色フラットケーブルでは、黒色のラミネートテープが光を透過しないので、バックライト照明を用いて画像を処理する方法では、連続的にライン走行させて製造する途中で、導体間ピッチの検査やエッジから導体までの長さ測定等が難しい。
【0007】
また、コピー機等の内部配線には白色のフラットケーブルが主に用いられているが、コピー機等で印刷したコピー紙やスキャナした画像に白色のフラットケーブルの反射光が写り込んでしまうことがあった。この問題に対しては、白色のフラットケーブルに代えて、黒色のフラットケーブルの採用が要求されている。
【0008】
さらに、フラットケーブルの構造寸法の検査工程において、導体間ピッチやエッジから導体までの長さ等の寸法は、ラミネート時の熱や圧力等の影響で変動し易く、特に他の部品との接続を行う接続部(「窓部」ともいう。)では、ピッチ間隔の正確な管理が製造上重要である。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、コピーやスキャナの映り込みを軽減したり筐体の色にデザインを合わせたりするため等の着色フラットケーブルにおいて、導体間ピッチやエッジから導体までの長さ等の構造寸法を正確に測定できるように構成された着色フラットケーブル、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る着色フラットケーブルは、幅方向に間隔を空けて並列に配された複数の導体がフィルム状着色絶縁体間に挟まれ、長手方向の両端部で前記フィルム状着色絶縁体の片面側が非設置状態となって前記導体が露出した接続部を有する着色フラットケーブルであって、
前記フィルム状着色絶縁体は、光を透過しない又は透過しにくい着色絶縁フィルムと、該着色絶縁フィルム上に設けられ且つ前記導体側に配置された接着層とを有し、
前記接続部に対して法線と30°の角度で光を照射した場合に、法線方向に反射した前記導体反射光の強度と、法線方向に反射した前記接着層反射光の強度との強度比(接着層反射光強度/導体反射光強度)が1.3以上である、ことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、接続部には導体と接着層とが露出しており、その接続部に法線と30°の角度で光を照射した場合に、法線方向に反射したそれぞれの反射光の強度比(接着層反射光強度/導体反射光強度)が1.3以上であるので、その差を演算処理することによって、導体間ピッチや、幅方向端部(エッジ)から導体までの長さ等の構造寸法を正確に測定できる。なお、フィルム状着色絶縁体は、光を透過しない又は透過しにくい着色絶縁フィルムを有するので、導体が露出した接続部の裏面からの光の透過を遮断でき、前記強度比の差に基づいた演算処理に影響を与えないようにすることができる。
【0012】
本発明に係る着色フラットケーブルにおいて、前記着色絶縁フィルムが、透明絶縁フィルムと該透明絶縁フィルム上に設けられた着色層とで少なくとも構成されている、又は、光不透過性材料を含有する絶縁フィルムで少なくとも構成されている。
【0013】
本発明に係る着色フラットケーブルにおいて、前記接着層の厚さが、20~50μmの範囲内であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る着色フラットケーブルにおいて、前記接着層が、白色又は略白色を呈する反射拡散層であることが好ましい。
【0015】
(2)本発明に係る着色フラットケーブルの製造方法は、幅方向に間隔を空けて並列に配された複数の導体がフィルム状着色絶縁体間に挟まれ、長手方向の両端部で前記フィルム状着色絶縁体の片面側が非設置状態となって前記導体が露出した接続部を有し、さらに前記フィルム状着色絶縁体は、光を透過しない又は透過しにくい着色絶縁フィルムと、該着色絶縁フィルム上に設けられ且つ前記導体側に配置された接着層とを有する着色フラットケーブルの製造方法であって、
前記着色フラットケーブルの長尺物を連続的又は断続的にライン走行させて前記着色フラットケーブルを製造する途中で、前記導体間ピッチ及び前記幅方向の端部エッジから導体までの長さ等の構造寸法を測定する検査工程を有し、
前記検査工程に供される前記着色フラットケーブル長尺物は、前記接続部に対して法線と30°の角度で光を照射した場合に、法線方向に反射した前記導体反射光の強度と、法線方向に反射した前記接着層反射光の強度との強度比(接着層反射光強度/導体反射光強度)が1.3以上であるよう構成されたものであり、
前記検査工程には、前記接続部が通過する際に、該接続部に対して法線と20~40°の角度で光を照射する発光装置と、前記接続部から反射した反射光の強度を検知する受光装置とが配置されている、ことを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、着色フラットケーブル長尺物を連続的又は断続的にライン走行させて製造する途中で、導体間ピッチ及び幅方向の端部エッジから導体までの長さ等の構造寸法を測定する検査工程を有し、さらにその検査工程には、接続部が通過する際にその接続部に法線と上記範囲内の角度で光を照射する発光装置と、接続部から反射した反射光の強度を検知する受光装置とが配置されている。こうした検査工程に、接続部に法線と上記範囲内の角度で光を照射した場合にその法線方向に反射した導体反射光の強度と接着層反射光の強度との強度比(接着層反射光強度/導体反射光強度)が1.3以上となる着色フラットケーブル長尺物が供されることにより、導体間ピッチや幅方向端部(エッジ)から導体までの長さ等の構造寸法を正確に測定できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コピーやスキャナの映り込みを軽減したり筐体の色にデザインを合わせたりするため等の着色フラットケーブルにおいて、導体間ピッチやエッジから導体までの長さ等の構造寸法を正確に測定できるように構成された着色フラットケーブル、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る着色フラットケーブルの一例を示す模式的な縦断面である。
【
図3】着色絶縁フィルムの例を示す模式的な断面図であり、(A)は透明絶縁フィルム上に着色層を有する例であり、(B)は着色した絶縁フィルムの例である。
【
図4】着色絶縁フィルムを連続的又は断続的にライン走行させて製造する過程の説明図であり、(A)は導体が露出した接続部の側を示しており、(B)はその反対側を示している。
【
図5】着色フラットケーブルの反射光強度を測定する原理図であり、(A)は導体の反射光態様の説明図であり、(B)は接着層の反射光態様の説明図である。
【
図6】着色フラットケーブル長尺物の走行方向と直交する方向から見た構成図である。
【
図7】着色フラットケーブル長尺物の走行方向から見た構成図である。
【
図10】発光装置と受光装置との角度と、導体反射光強度及び接着層反射光強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の記載や図面のみに限定されるものではない。
【0020】
[着色フラットケーブル]
本発明に係る着色フラットケーブル10は、
図1~
図3に示すように、幅方向Xに間隔を空けて並列に配された複数の導体1がフィルム状着色絶縁体2,2間に挟まれ、長手方向Yの両端部で前記フィルム状着色絶縁体2の片面側が非設置状態となって前記導体1が露出した接続部11を有している。この着色フラットケーブル10において、フィルム状着色絶縁体2は、光を透過しない又は透過しにくい着色絶縁フィルム4と、着色絶縁フィルム4上に設けられ且つ導体1側に配置された接着層3とを有している。そして、接続部11に法線Qと30°の角度θで光λを照射した場合に、法線Qの方向に反射した導体反射光R1の強度と接着層反射光R2の強度との強度比(接着層反射光強度/導体反射光強度)が1.3以上である、ことに特徴がある。
【0021】
この着色フラットケーブル10は、接続部11には導体1と接着層3とが露出しており、その接続部11に法線Qと30°の角度θで光λを照射した場合に、法線Qの方向に反射した反射光(R1,R2)の強度比(接着層反射光強度/導体反射光強度)が1.3以上であるので、その差を演算処理することによって、導体間ピッチPや、幅方向端部(エッジ)から導体までの長さM2等の構造寸法を正確に測定できる。なお、フィルム状着色絶縁体2は、光λを透過しない又は透過しにくい着色絶縁フィルム4を有するので、導体1が露出した接続部11の裏面からの光の透過を遮断でき、前記強度比の差に基づいた演算処理に影響を与えない。
【0022】
こうした着色フラットケーブル10は、導体間ピッチPやエッジ6から導体1までの長さ等の構造寸法を正確に測定できるので、コピーやスキャナの映り込みを軽減したり筐体の色にデザインを合わせたりするため等に好ましく使用される。
【0023】
以下、各構成要素を説明する。
【0024】
<導体>
導体1は、
図1及び
図2に示すように、着色フラットケーブル10の長手方向Yに延びる複数の導体であって、後述するフィルム状着色絶縁体2で両側から挟まれて並列(「横並び」ともいう。以下同じ。)に配された複数の良導電性金属導体である。導体1の種類は特に限定されないが、銅線(タフピッチ銅線、無酸素銅線等)、銅合金線(銅-錫合金線、銅-銀合金線、銅-ニッケル合金線等)、アルミニウム線、アルミニウム合金線、銅複合線(銅クラッドアルミニウム線、銅クラッドマグネシウム線等)等の良導電性の金属導体、又はそれらの表面の全体、若しくは一部にめっきが施されたものを好ましく挙げることができる。なかでも、銅線、銅合金線が特に好ましい。めっきとしては、はんだめっき、錫めっき、金めっき、銀めっき、ニッケルめっき等を挙げることができる。
【0025】
これらの導体1は、後述するように、法線Qの方向に反射した反射光(R1,R2)の強度比(接着層反射光強度/導体反射光強度)が1.3以上になるものであれば特に限定されないが、圧延された圧延導体(平角線ともいう。)であることが好ましい。特に、表面がマット処理されていない平滑な鏡面を有する矩形状の平角線(圧延線、スリッター線ともいう。)を挙げることができる。平角線は、丸線を圧延したものであってもよいし、圧延シートを所定幅にスリットしたものであってもよく、これらは強度比を容易に1.3以上にすることができる。なお、その強度比が1.3以上になる範囲であれば、やや曲線状の圧延面を有する圧延導体であってもよい。
【0026】
導体1の断面寸法としては、直径0.1mm以上、0.32mm以下の丸線を圧延等して厚さ0.03mm以上、0.1mm以下で幅0.2mm以上、0.8mm以下とした平角線を好ましく挙げることができる。並列に配された場合の導体1の間隔も特に限定されないが、例えば約0.5mm程度とすることができる。着色フラットケーブル10には、
図2に示すように、導体1が幅方向Xに複数(例えば、3~60本)配されている。各導体1のピッチPは、着色フラットケーブルに要求されるピッチであれば任意に設定でき、特に限定されない。
【0027】
<フィルム状着色絶縁体>
フィルム状着色絶縁体2は、
図1に示すように、着色フラットケーブル10の厚さ方向Zの上下に設けられ、幅方向Xに間隔を空けて並列に配された複数の導体1を挟んでいる。そして、長手方向Yの両端部では、フィルム状着色絶縁体2の片面側が非設置状態となって導体1が露出した接続部11となっている。本願で言う「非設置状態」とは、
図1に示すように、フィルム状着色絶縁体2が設けられていない状態をいい、その結果として、導体が露出している状態を示す意味である。フィルム状着色絶縁体2は、
図1及び
図3に示すように、光を透過しない又は透過しにくい着色絶縁フィルム4と、着色絶縁フィルム4上に設けられ且つ導体1側に配置された接着層3とを有している。
【0028】
(着色絶縁フィルム)
着色絶縁フィルム4は、
図3に示すように、着色した絶縁フィルムであり、接着層3とともにフィルム状着色絶縁体2を構成する。この着色絶縁フィルム4は、
図3(A)のような透明絶縁フィルム4a上に着色層4bを有する構成であってもよいし、
図3(B)のような着色した絶縁フィルム4cであってもよい。いずれにしても、この着色絶縁フィルム4は、着色によって光透過し難い光吸収性のものである。具体的には、例えば波長435~480nmの光(ブルーライト)の透過率は1%以下程度であり、反射率は5%以下程度であることが望ましい。
【0029】
絶縁フィルムの材質は特に限定されないが、一般的な絶縁電線に用いられている樹脂材料であればよい。例えば、汎用ポリウレタン、変性ポリウレタン、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル等の絶縁樹脂材料を挙げることができる。また、ポリフェニルサルファイド(PPS)、エチレン-四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、フッ素化樹脂共重合体(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂:PFA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリフェニルサルファイド(PPS)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂であってもよい。絶縁フィルムは、単層であってもよいし積層であってもよい。絶縁フィルムを積層形態とする場合、前記した同一又は異なる樹脂層を設けることができる。
【0030】
絶縁フィルムは、
図3(A)に示すような着色していない光透過性の絶縁フィルム4aであってもよいし、
図3(B)に示すような着色した光不透過性の絶縁フィルムであってもよい。着色していない光透過性の絶縁フィルム4aを適用する場合は、
図3(A)に示すように、着色層4bを光透過性の絶縁フィルム4aと接着層3との間に設ける。一方、着色した光不透過性の絶縁フィルム4cの場合は、
図3(B)に示すように、着色層は不要とすることができる。
【0031】
着色層4bとしては、光の透過を阻害する材料を含む絶縁層であることが好ましく、具体的には、黒色顔料等の光不透過性の材料を挙げることができる。例えば、黒色顔料としては、銅-クロム-マンガン複合酸化物等の酸化物系黒色顔料であることが好ましい。特に、銅-クロム-マンガン複合酸化物等の酸化物系黒色顔料は、カーボンブラック等の炭素系黒色顔料とは異なり、導電性を持たないので、絶縁性を阻害し難いという利点がある。本発明では、着色層4bに含有させる光不透過性の材料の含有量を適正に選択することで、光不透過性の着色絶縁フィルム4とすることができる。なお、光不透過性の材料の含有量は、光透過性を1%以下とする程度に含まれていればよい。着色層4bの厚さは特に限定されないが、例えば0.5~2μm程度の範囲内であればよい。こうした着色層4bは、エナメル塗料を塗布焼付けして形成できる。これらの被膜は、通常のエナメル線の製造装置を用いて製造できる。
【0032】
着色した光不透過性の絶縁フィルム4cは、
図3(B)に示すように、光の透過を阻害する材料が絶縁フィルムそのものに含まれている。含まれる材料は、上記した黒色顔料等の光不透過性の材料を挙げることができる。この場合においても、光不透過性の材料の含有量は、光透過性を1%以下とする程度に含まれていればよい。着色した光不透過性の絶縁フィルム4cの厚さも特に限定されないが、例えば10~100μm程度の範囲内であればよい。
【0033】
(接着層)
接着層3は、
図1~
図3に示すように、上記した着色絶縁フィルム4上に設けられ且つ導体1側に配置されている。この接着層3は、幅方向Xに間隔を空けて並列(横並び)に配した複数の導体1を挟んだ接着性を有する絶縁層である。そして、この接着層3は、上記した導体1との関係では、接続部11に対して法線Qと30°の角度θで光λを照射した場合に、法線Qの方向に反射した導体反射光R1の強度と、法線Qの方向に反射した接着層反射光R2の強度との強度比(接着層反射光強度/導体反射光強度)が1.3以上であるように構成されている。
【0034】
接着層3の構成樹脂としては、ポリオレフィン樹脂及びその共重合体、ポリスチレン樹脂及びその共重合体、ポリフェニレンエーテル樹脂及びその共重合体等から選ばれる樹脂が好ましく用いられる。これらの樹脂は、単独の場合も含まれるし、例えばポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン樹脂との共重合体のように2種を共重合させた場合も含まれる。なお、ポリオレフィン樹脂としては、高強度ポリプロピレンやポリプロピレン共重合体を好ましく用いることができる。ポリフェニレンエーテル樹脂については、変性でも無変性でもよいが、無変性のものが好ましい。接着層3は、未発泡でも発泡でもよく、特に限定されない。発泡した接着層3の場合には、加熱発泡する発泡剤が含まれている。構成樹脂には、本発明の構成及び効果を阻害しない範囲内で、発泡剤の他、難燃剤、ブロッキング剤、耐収縮防止剤、着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0035】
接着層3は、白色又は略白色を呈する反射拡散層であることが好ましい。接着層3がこうした白色又は略白色となることにより、
図5(B)に示すように、入射光を散乱光とする反射拡散層となる。接続部11では、接着層3と導体1とが露出しているので、その接続部11に法線Qと30°の角度θで光λを照射した場合には、接着層3では散乱光として反射し、法線Qの方向に反射した接着層反射光R2の強度と導体反射光R1の強度との強度比(接着層反射光強度/導体反射光強度)が1.3以上になる。接着層3を白色又は略白色にするには、接着層3中に白色顔料等を含有させて反射散乱層としたり、表面を粗して反射拡散層としたり、発泡状態にして反射拡散層としたりすることが好ましい。白色顔等としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛等を挙げることができる。表面を粗す場合は、接続部11をブラッシングすることが好ましく、発泡状態にする場合は、発泡剤を含有させて発泡させることが好ましい。
【0036】
<接続部>
接続部11は、
図1、
図2及び
図4に示すように、長手方向Yの両端部11aでフィルム状着色絶縁体2の片面側が非設置状態となって導体1が露出した部分である。この接続部11は、コネクタに接続する部位又は基板電極に接続する部位であり、接続部11で露出した導体1の幅方向XのピッチPは、コネクタ端子又は基板電極のピッチに一致するように配置されている。
【0037】
この接続部11では、
図5に示すように、接続部11に対して法線Qと30°の角度θで光λを照射した場合に、法線Qの方向に反射した導体反射光R1の強度と、法線Qの方向に反射した接着層反射光R2の強度との強度比(接着層反射光強度/導体反射光強度)が1.3以上であることが好ましい。この範囲内の強度になることにより、コントラスト差を明確に認識することができ、導体間ピッチPやエッジ6から導体1までの長さ等の構造寸法を正確に測定できる。そして、得られた測定結果が、閾値以内であれば良品と判別することができ、閾値を超えれば不良品と判別することができる。なお、ここで用いる光λは、その反射光を受光装置31で認識できる光であれば特に限定されず、受光装置31に応じて任意の波長又は波長域の光を適用できる。一例としては、ブルーライト(波長435~480nm程度)を用いることができるが、これに限定されない。
【0038】
強度比が1.3未満では、コントラスト差が明確に出ないことがあり、良品と不良品の区別がつかずにそれらが混ざってしまうことがある。好ましい強度比は、1.5以上である。なお、本発明に係る着色フラットケーブル10では、強度比の測定を、法線Qと30°の角度θで光λを照射した場合で行い、その値が1.3以上である場合に特定している。角度θは30°以外の例えば20°程度であっても強度比は1.3以上になることはあるが、導体1の表面状態により法線Qの方向に反射する割合が多くなることがあり、安定性の点では25°以上である場合が好ましい。一方、角度θが大きい場合、接着層反射光R2は散乱光となって法線Qの方向に反射するが、導体反射光R1は法線Qの方向に反射しないので、強度比は十分に1.3以上を実現でき、角度θの上限を特に限定されない。しかし、あまり角度θを大きくすると、
図5に示すように、照明発光装置21の設置位置が受光装置31であるカメラの位置から遠ざかり、装置構造がコンパクトにならないというデメリットがあることから、その観点では角度θの上限は40°程度であることが好ましい。
【0039】
接着層3の厚さは特に限定されないが、20~50μmの範囲内であることが好ましい。こうした接着層3は、上記した接着層用樹脂組成物を着色絶縁フィルム4上に塗布形成して得ることができる。
【0040】
以上、コピーやスキャナの映り込みを軽減したり筐体の色にデザインを合わせたりするため等の着色フラットケーブルにおいて、導体間ピッチやエッジから導体までの長さ等の構造寸法を正確に測定できるように構成された着色フラットケーブル、及びその製造方法を提供することができる。
【0041】
[製造方法]
本発明に係る着色フラットケーブル10の製造方法は、幅方向Xに間隔を空けて並列に配された複数の導体1がフィルム状着色絶縁体2,2間に挟まれ、長手方向Yの両端部で前記フィルム状着色絶縁体2の片面側が非設置状態となって前記導体1が露出した接続部11を有し、さらに前記フィルム状着色絶縁体2は、光λを透過しない又は透過しにくい着色絶縁フィルム4と、その着色絶縁フィルム4上に設けられ且つ前記導体側に配置された接着層3とを有する着色フラットケーブル10の製造方法である。そして、着色フラットケーブル長尺物10’を連続的又は断続的にライン走行させて着色フラットケーブル10を製造する途中で、導体間ピッチP及び前記幅方向Xの端部エッジ11bから導体1までの長さ等の構造寸法を測定する検査工程を有している。なお、「断続的」とは、連続ではない場合を含むことを示す意味で用いている。
【0042】
検査工程に供される着色フラットケーブル長尺物10’は、上記した「着色フラットケーブル」の欄で説明したように、接続部11に法線Qと30°の角度θで光λを照射した場合に、法線方向に反射した導体反射光R1の強度と接着層反射光R2の強度との強度比(接着層反射光強度/導体反射光強度)が1.3以上であるよう構成されたものである。そして、検査工程には、接続部11が通過する際に、接続部11に法線Qと20~40°の角度θで光λを照射する発光装置21と、接続部11から反射した反射光(R1,R2)の強度を検知する受光装置31とが配置されている。この製造方法によれば、導体間ピッチや幅方向端部(エッジ)から導体までの長さ等の構造寸法を正確に測定できる。
【0043】
(着色フラットケーブル長尺物の準備工程)
着色フラットケーブル長尺物10’は、従来公知のように、
図4に示すように、長手方向Yに連続した長尺物として製造される。その積層構造は、
図1に示すとおりであり、幅方向Xに間隔(所定のピッチP)を空けて並列に配された複数の導体1がフィルム状着色絶縁体2,2間に挟まれた態様となっておいる。最終的に所定長さに切断して着色フラットケーブル10とした後に接続部11となる部分は、フィルム状着色絶縁体2の片面側が非設置状態となっている。
【0044】
(検査工程)
検査工程では、着色フラットケーブル長尺物10’を連続的又は断続的にライン走行させて着色フラットケーブル10を製造する途中で、導体間ピッチP及び幅方向Xの端部エッジ11bから導体1までの長さ等の構造寸法を測定する。この検査工程に供される着色フラットケーブル長尺物10’は、上記した「着色フラットケーブル」の説明欄で説明したように、接続部11に法線Qと30°の角度θで光λを照射した場合に、法線方向に反射した導体反射光R1の強度と接着層反射光R2の強度との強度比(接着層反射光強度/導体反射光強度)が1.3以上であるよう構成されたものであるが、一方、検査工程においては、接続部11が通過する際に、接続部11に法線Qと20~40°の角度θで光λを照射する発光装置21と、接続部11から反射した反射光(R1,R2)の強度を検知する受光装置31とが配置されていればよい。発光装置21からの光の入射角度を、法線Qと20~40°の角度θとしたのは、装置構造をコンパクトにするためであり、設置構造を工夫すれば特に上限はそれ以上であってもよい。
【0045】
こうした検査工程により、導体間ピッチPや幅方向端部(エッジ)6から導体1までの長さ等の構造寸法を正確に測定できる。
図6は、着色フラットケーブル長尺物10’の走行方向Tと直交する方向から見た構成図であり、
図7は、着色フラットケーブル長尺物10’の走行方向Tから見た構成図である。
【0046】
図8は、着色フラットケーブルの検査装置20の構成図である。検査装置20は、発光装置21、発光装置コントローラ22、受光装置31(レンズ31a、カメラ31b)、画像処理装置32、入力機器33、電源34、表示装置35等で少なくとも構成されている。この検査装置20では、着色フラットケーブル長尺物10’の測定面(測定位置)23に発光装置21から光λを入射光角度θで入射させ、法線Qの方向に反射した導体反射光R1の強度と接着層反射光R2の強度との強度比(接着層反射光強度/導体反射光強度)を測定する。
【0047】
この検査装置20では、受光装置31を構成するカメラとして、ラインセンサカメラやエリアセンサカメラ等を任意に選択することができる。また、受光装置31を構成するレンズとして、ノンテレセントリックレンズ(マクロレンズ)やテレセントリックレンズ等を任意に選択することができる。また、発光装置21としては、ライン照明やリング照明等を任意に選択することができる。一例としては、ラインセンサカメラ、ノンテレセントリックレンズ、ライン照明の組み合わせを挙げることができる。
【0048】
図9は、測定で得られた画像の一例である。光の散乱率が0~10%程度の反射体である導体1に当たった光はほとんど正反射するが、光の反射率が70~80%程度で散乱率が90~100%程度の接着層3に当たった光はほぼ全方位に反射する。散乱反射光を観測する発光装置21と受光装置31の構成で、導体1で反射する光はほとんど正反射し法線Qの方向に配置された受光装置31にはほとんど光が入射しないため、画像では導体部分は暗になる。一方、接着層3で反射する光はほぼ全方位に散乱反射し、法線Qの方向に配置された受光装置31にも光が入射するため、接着層部は明になる。本発明では、コントラストのよい画像を得ることができ、導体間ピッチやエッジから導体までの長さ等の構造寸法を画像処理によって正確に測定できる。そして、得られた結果が、閾値以内であれば良品と判別することができ、閾値を超えれば不良品と判別することができる。なお、暗部となる導体部分と明部となる接着層部分とのコントラストは、より区別できるコントラストになるように、発光装置21のパワーを受光装置31のダイナミックレンジ内で調整してもよい。
【0049】
図10は、発光装置21からの光λと受光装置31(法線方向)との角度θと、導体反射光強度及び接着層反射光強度との関係の一例を示すグラフである。符号aは、直径0.18mmの銅線を幅0.7mm厚さ0.035mmに圧延した導体1の結果であり、符号bは、色調が白色の接着層3(発光装置21からの光λと受光装置31との角度θが0°の時の導体反射光強度を1とした時、接着層反射光強度が0.23となった。)の結果であり、符号cは、色調がグレーの接着層3(発光装置21からの光λと受光装置31との角度θが0°の時の導体反射光強度を1とした時、接着層反射光強度が0.18となった。)の結果であり、符号dは、色調が黒の接着層3(発光装置21からの光λと受光装置31との角度θが0°の時の導体反射光強度を1とした時、接着層反射光強度が0.11となった。)の結果である。
【0050】
導体1は、正反射し易いので、角度θが大きくなると法線方向Qに配置した受光装置31で受光する反射光強度は急激に低下する。一方、白色の接着層3(符号b)では、全方位に散乱するので、角度が大きくなっても法線方向に配置した受光装置31で受光する反射光強度は低下しない。本発明では、こうした現象差を利用している。なお、グレーの接着層(符号c)と黒色の接着層(符号d)は、光が吸収されて反射率が低下してしまうので、導体の反射光強度との差がなくなってコントラスト差を明確に測定できない。
【符号の説明】
【0051】
1 導体(平角線)
1a 幅方向端部側の導体
2 フィルム状着色絶縁体
3 接着層
4 着色絶縁フィルム
4a 透明絶縁フィルム
4b 着色層
6 エッジ(幅方向端部)
7 長手方向端部
10 着色フラットケーブル
10’ 着色フラットケーブル長尺物
11 接続部
11a 接続部の長手方向端部
11b 接続部の幅方向端部
12 接着層露出部(露出した接着層)
13 着色絶縁フィルムの接続部側端部
20 着色フラットケーブルの検査装置
21 発光装置
22 発光装置コントローラ
23 測定面(測定位置)
31 受光装置
31a レンズ
31b カメラ
32 画像処理装置
33 入力機器
34 電源
35 表示装置
λ 入射光
θ 入射光角度
R1 導体反射光
R2 接着層反射光
X 着色フラットケーブルの幅方向
Y 着色フラットケーブルの長手方向
Z 着色フラットケーブルの厚さ方向
P 導体間ピッチ
Pa トータルピッチ(両端の導体間の距離)
Q 法線
W 着色フラットケーブルの全幅
L 着色フラットケーブルの全長さ
S 接続部の長手方向長さs
T 着色フラットケーブル長尺物の走行方向
M1 両端の導体の中心から幅方向端部までのマージン幅
M2 両端の導体の端部から幅方向端部までのマージン幅
a
図10における圧延した導体
b
図10における色調が白色の接着層
c
図10における色調がグレーの接着層
d
図10における色調が黒の接着層