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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】弾薬用容器
(51)【国際特許分類】
   F42B 39/20 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
F42B39/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018214172
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020085249
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勇
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 恒佑
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-227764(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0111219(US,A1)
【文献】特開2013-044454(JP,A)
【文献】特開2011-252645(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0180687(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0056363(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0023329(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0244257(US,A1)
【文献】特開2018-144273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部及び当該筒部の両端のうち一方を塞ぐ底部を有する容器本体と、前記筒部の両端のうち他方の開口部を塞ぐ蓋体と、を有する弾薬用容器であって、
前記筒部が、繊維強化プラスチックを含み、かつ当該筒部の限界静的内圧が、0.2MPa~2.0MPaであり、
前記筒部の軸方向に対する周方向の引張強度の比が3%100%であり、
前記筒部に、少なくとも1つの脆弱部を備え
前記繊維強化プラスチックの繊維方向がランダムであり、前記繊維強化プラスチックの繊維として繊維長24mm以上のガラス繊維が用いられることを特徴とする、弾薬用容器。
【請求項2】
前記脆弱部が、封止材によって封止されている、請求項1に記載の弾薬用容器。
【請求項3】
前記脆弱部が、線状構造、溝状構造、薄肉状構造、繊維を含有しない部分又はこれらの組み合わせの構造を有する、請求項1又は2に記載の弾薬用容器。
【請求項4】
前記繊維強化プラスチックのプラスチックが、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、塩化ビニル、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びフェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の弾薬用容器。
【請求項5】
少なくとも一つの前記脆弱部が、前記筒部の軸方向、又はらせん方向に設けられている、請求項1~のいずれか一項に記載の弾薬用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、りゅう弾砲用発射装薬や火砲用弾薬の梱包容器として使用する筒状の弾薬用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1に記載されるように、りゅう弾砲用発射装薬等に使用される弾薬用容器とは、細かい粒状の発射薬を装填した複数個の発射装薬を梱包し、運搬し、弾薬庫に保管したりする際に一時的に使用する金属容器のことである。発射装薬をりゅう弾砲等の薬室に挿入する際には、弾薬用容器は発射装薬から取り除かれる。一般に、りゅう弾砲用発射装薬や火砲用弾薬等に使用される梱包容器としての弾薬用容器は、運用面を配慮して一定以上の落下強度と気密性を有する構造となっている。
【0003】
近年、りゅう弾砲用発射装薬やその他火砲用の弾薬は、その貯蔵、運搬及び使用中における火災、被弾等を受けた際に、我の被害を最小限にする目的で、弾薬の不感化・低感度化(以下、IM(Insensitive Munition)化という)の開発、装備化が進められている。また、これらの弾薬のIM性や取り扱い評価方法として、米国のITOP(International Test Operations Procedure)やSTANAG(Standardization Agreement、NATO規格)などで試験方法が規格化されている。これらの規格の中で運用面での取り扱い性を評価する試験項目としては、落下試験、クックオフ試験、殉爆試験及び銃撃感度試験、フラグメントインパクト試験などが規定されている。このような規定は、弾薬単体だけではなく弾薬用容器を含めた状態でも満足する必要があるため、りゅう弾砲用発射装薬や火砲用弾薬用の弾薬用容器にも高いIM性や強固な落下強度や高い気密性が要求されている。
【0004】
以下の特許文献2には、強度を保持しつつ、弾薬の燃焼反応を緩和することができる円筒状の弾薬用容器を提供することを目的に、螺旋状の接合部を有する金属製の円筒状弾薬用容器において、円筒体の外周面と内周面の少なくとも一方の面に接合部と干渉しない位置に切り込み部が設けられ、円筒体の肉厚に対する切り込み部の深さの比率が0.10~0.95であることを特徴とする円筒状弾薬用容器が開示されている。
【0005】
また、以下の特許文献3には、弾薬が燃焼する不所望の刺激を受けたときに、開放する弾薬収納容器であって、頂部、底部、及びその間の少なくとも1の側面を有する容器、ここで、該容器は、その内に爆薬を収納し、該爆薬はエネルギー材料を含み、その側面に接合部分と非接合部分を有する少なくとも1つの繋ぎ目を有し;並びに該繋ぎ目の非接合部分をシールするための接着剤等からなるシール、ここで該シールは、該容器の残部が破壊される前に、内圧が外圧よりも少なくとも3psi高いとき、破壊されるよう作用する;を含み、それにより該容器を開放し、収納されたエネルギー材料の燃焼速度を制御して、激しい反応を回避する上記弾薬収納容器が開示されている。
【0006】
以下の特許文献4には、通常時における落下強度及び気密性を保持しながらも、容器内部において火薬類が発火した非常時には容器の爆発を避けられ、周囲の被害を抑制できる弾薬用容器を提供することを目的として、有底円筒状の容器本体と、該容器本体の開口を塞ぐ蓋体とを有する弾薬用容器であって、上記容器本体の筒部は、金属長板が螺旋状に巻回されてその両側縁同士を接合することで、螺旋状に延在する接合部を有する円筒状に形成されており、上記筒部には、軸方向に延びる貫通孔が内外貫通状に穿設されており、上記貫通孔は、封止材によって封止され、該貫通孔及び該封止材の外面は金属製のカバー部材によって覆われていることを特徴とする弾薬用容器が開示されている。
【0007】
以下の特許文献5には、通常時における落下強度及び気密性を保持しながらも、容器内部において火薬類が発火した非常時には容器の爆発を避けられ、周囲の被害を抑制できる弾薬用容器を提供することを目的として、有底円筒状の容器本体と、該容器本体の開口を塞ぐ蓋体とを有する弾薬用容器であって、該容器本体の筒部に、所定形状及び所定長さの貫通孔が所定隙間をもって内外貫通状に穿設され、該貫通孔は所定長さの接合部と交互に並び少なくとも1つのスティッチ状脆弱部として軸方向に延びており、そして該軸方向に延びるスティッチ状脆弱部内の全貫通孔の隙間に、封止手段を設けることで、該容器が封止されている、ことを特徴とする上記弾薬用容器が開示されている。
【0008】
以上、従来技術として特許文献2、3、4、5には金属の円筒体に種々の形状の脆弱部や開口部に封止材を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-226031号公報
【文献】特開2011-145007号公報
【文献】米国特許第7624888号明細書
【文献】特開2013-44454号公報
【文献】特開2015-227764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記したように、従来技術の金属製の弾薬用容器では、容器内部に収容された弾薬や発射装薬を構成する火薬類が、被弾や弾丸破片等により、部分爆轟や爆轟した場合、衝撃波が生じて上記記載の脆弱部が開口し燃焼ガスを開放する前に、あるいは蓋部が開放し燃焼ガスを開放する前に、容器本体の円筒体が破片となり飛散するため、周囲の人員や機材に多大な影響や損失を与える事態が発生する。この問題を解決しようとした場合、蓋の構造に因らず、容器本体の円筒体の厚みを略3倍に増やす必要があるが、容器本体の重量が重くなり、人力での運搬が困難となり実用性がない。
【0011】
軽量化するため、繊維を含まない若しくは短繊維で繊維の方向がランダムな軽量な素材を選定すると、容器本体が不均一に破壊され、大小様々な破片が飛散し周囲に影響を及ぼす可能性がある。
また、容器本体の素材を円筒の周方向に強い繊維強化樹脂にした場合には、火薬類が部分爆轟や爆轟した際に、容器本体が2分されてロケット状に飛散し、若しくは、蓋体や底部が飛散し、同様に周囲に影響を及ぼす可能性がある。
【0012】
また、容器に内装する火薬類が高温環境に置かれ発火した場合には、火薬類の燃焼により発生した燃焼ガスにより容器内の圧力が急激に上昇し容器が爆発し、周囲に影響を及ぼす可能性がある。
さらに、上記の特許文献には、繊維強化複合材の繊維の方向と、強度の関係と、少なくとも1個の脆弱部の設置方法、及び、脆弱部を塞ぐ封止手段を設けることは、開示も教示もされていない。
【0013】
したがって、本発明の目的は、高い気密性及び運用性を有し、かつ火薬類が爆轟等したときの周囲に与える損壊を低減できる弾薬用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく各種金属や樹脂を用いて鋭意検討し実験を重ねた結果、容器本体の筒部を筒軸方向に強く、周方向に割れやすい繊維強化樹脂材(繊維強化プラスチック)とし、容器本体が所定の圧力で破壊を開始する様、最適な容器本体の構造若しくは容器本体に脆弱部を設け、任意選択的に脆弱部の隙間に封止材を設けることで、容器に内装する火薬類が被弾や被弾破片等により部分爆轟や爆轟した場合には、容器本体が周方向に割れやすく、軸方向に強いことで含まれる繊維が含浸している樹脂を粉砕しながら破断するため、飛散物が確実に軽量となることを確認した。
また、内装する火薬類が高温環境下に置かれ発火した場合には、脆弱部を素早く破断させることで、より確実に燃焼ガスを開放し、周囲の安全が確保できることを確認した。
容器の気密性を保つことで、内装する弾薬類を容器のまま長期保管できることを確認した。
更に、金属や樹脂単体よりも頑丈で軽量な素材を選定できることで運搬時の実運用性を高めることができることを該容器本体で確認し、本発明を完成するに至ったものである。
【0015】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]筒部及び当該筒部の両端のうち一方を塞ぐ底部を有する容器本体と、前記筒部の両端のうち他方の開口部を塞ぐ蓋体と、を有する弾薬用容器であって、
前記筒部が、繊維強化プラスチックを含み、かつ当該筒部の限界静的内圧が、0.2MPa~2.0MPaであり、
前記筒部の軸方向に対する周方向の引張強度の比が3%100%であり、
前記筒部に、少なくとも1つの脆弱部を備え
前記繊維強化プラスチックの繊維方向がランダムであり、前記繊維強化プラスチックの繊維として繊維長24mm以上のガラス繊維が用いられることを特徴とする、弾薬用容器。
[2]前記脆弱部が、封止材によって封止されている、前記[1]に記載の弾薬用容器。
[3]記脆弱部が、線状構造、溝状構造、薄肉状構造、繊維を含有しない部分又はこれらの組み合わせの構造を有する、前記[1]又は[2]に記載の弾薬用容器。
記繊維強化プラスチックのプラスチックが、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、塩化ビニル、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びフェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む、前記[1]~[]のいずれかに記載の弾薬用容器。
]少なくとも一つの上記脆弱部が、上記筒部の軸方向、又はらせん方向に設けられている、前記[1]~[]のいずれかに記載の弾薬用容器。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い気密性及び運用性を有し、かつ火薬類が爆轟等したときの周囲に与える損壊を低減できる弾薬用容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る線状の脆弱部を複数有した、弾薬用容器の斜視図である。
図2】本実施形態に係る弾薬用容器の斜視図である。
図3】脆弱部の各種構造を説明する図である。
図4】筒部の製管方法の一例を説明する図である。
図5】筒部の製管方法の一例を説明する図である。
図6】筒部の製管方法の一例を説明する図である。
図7】各種安全性評価とそれらを説明する概略図である。
図8】安全性試験1のセットアップ状態を説明する図である。
図9】筒部の製管方法の一例を説明する図である。
図10】各態様における安全性の試験結果の一例を説明する図である。
図11】従来技術の弾薬用容器の斜視図である。
図12】従来技術の弾薬用容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1及び図2は、本実施形態に係る弾薬用容器の一構成例を示す斜視図である。また後掲する図3は、本実施形態に係る弾薬用容器が有する脆弱部の各種構造を示す図である。
【0019】
本発明者は、容器に内装する火薬の反応形態に応じた、容器の破壊形態を解析し、剛性や物性の違う供試体を製作し、更に実検証した。その結果、従来技術の脆弱部と容器の厚みでは、火薬類が部分爆轟や爆轟反応した場合には、発生する衝撃波に耐えきれず、容器が破片化し安全性が確保できないか、衝撃波に耐える容器の剛性を追求すると容器が重く、例えば10kg以上重くなり、人力で運搬することが多い弾薬用容器の運用性は維持できないことが分かった。そこで、従来の容器構造に代えて、容器本体、例えば筒部の材質を繊維強化樹脂にし、繊維の方向性と線状の脆弱部の形状を検討したところ、周囲の安全性を確保しながらも、軽量な素材の組み合わせとすることにより、弾薬用容器全体の重さが従来よりも軽減になるため、運搬性を維持若しくは改善できることを確認した。
【0020】
すなわち、本発明の一実施形態を示す図1では、弾薬用容器1は、筒部2及び当該筒部の両端のうち一方を塞ぐ底部3を有する容器本体4と、上記筒部2の両端のうち他方の開口部を塞ぐ蓋体5と、を有する弾薬用容器であって、上記筒部2が、繊維強化プラスチックを含み、かつ当該筒部2の限界静的内圧が、0.2~2.0MPaであることを特徴とする。
本発明の弾薬用容器では、筒部が繊維強化プラスチックを含み、かつ筒部の限界静的内圧(破断し、開口を生じる静的内圧)が上記範囲であることで、従来の、脆弱部を有する金属製の弾薬用容器、及び繊維強化プラスチック単独の弾薬用容器に比較して、以下の点で優れている。
【0021】
すなわち、本発明の弾薬用容器では、通常時における落下強度、気密性及び運用性を保持しながらも、容器内部において火薬類が部分爆轟した非常時には、筒部に含まれる繊維によって筒部の飛散破片が軽量化されることで、周囲への影響を抑制することができる。また、容器内部において火薬類が爆轟する場合は、筒部に含まれる繊維の方向を筒部の軸方向に近づけ配置することで、容器本体の筒部が先に周方向に割れ衝撃を緩和することで、蓋部、底部が2分されて飛散することが防止される。
【0022】
このため、より確実に周囲への影響を抑制することができ、容器内部において火薬類が発火した非常時には、筒部の軸方向、若しくは線状の脆弱部から素早く開口を確保することで爆発圧を低下させ、金属よりも軽量な素材を選定できることで実運用性を高めることができる。
なお、筒部の限界静的内圧が小さすぎると運用性、気密性等が低下する。一方、大きすぎると爆発時のエネルギーを溜め込んで衝撃波が発生し、破片飛散する。限界静的内圧が上記範囲であることで、運用性、気密性を維持しつつ、爆破した際の破片飛散を抑えて周囲に与える損壊を低減することができる。
【0023】
このように、本発明に係る弾薬用容器においては、内装する火薬類の組成と形状、反応形態、弾薬用容器の形状や質量、運用方法に応じて、容器本体部の繊維と樹脂の種類や繊維の方向(組角度)や繊維の量、線状の脆弱部の強度や形状を変更し、通常取扱い時の気密性や落下強度を保ち、異常時の飛散破片の質量を確実に軽量化することができる。
【0024】
本発明の弾薬用容器は、特に、(1)筒部が繊維強化プラスチックを含むこと、及び限界静的内圧の規定、(2)筒部が脆弱部を有する、さらに(3)筒部の軸方向と周方向との引張強度比の規定、を満たすことで、容器の分離、落下強度を調整しつつ、特に高い落下強度を達成することができる。この高い落下強度は、脆弱部単独、又は引張強度比単独の構成では達成できず、これら(1)~(3)を組み合わせることで、初めて達成できる。
【0025】
図11に、従来技術の弾薬用容器を示す。図中、容器本体の脆弱部の貫通孔の隙間を示す。図中、A:脆弱部の長さ、B:貫通孔の隙間、C:貫通孔1個当たりの長さ、D:貫通孔間の接合部長さ、E:容器本体、F:蓋体を示す。
蓋体はネジ式であり、直線状の貫通した貫通孔が容器本体のスリットを構成し、貫通孔は所定の隙間を有している。
【0026】
本発明における貫通孔の隙間も、図11に図示されるものと同様に規定されるが、図2にBとして規定する。弾薬用容器(単に容器ともいう。)は、筒部及び当該筒部の両端のうち一方を塞ぐ底部を有する容器本体と、筒部の両端のうち他方の開口部を塞ぐ蓋体とを有し、内部に複数個の弾薬(図示せず)が直列に並べて装填されるようになっている。弾薬としては、シングルベース発射薬、ダブルベース発射薬、トリプルベース発射薬、マルチベース発射薬、推進薬、爆薬、炸薬等の火薬類が用いられている。
【0027】
<容器本体>
本実施形態に係る容器本体4は、筒部2及び当該筒部2の両端のうち一方を塞ぐ底部3を有する。
容器本体の形状は多角形から円形、楕円形で任意であるが、機械的強度(断面2次モーメント)が高い円筒状であれば、厚みを薄くでき軽量となるため、尚よく使用できる。
【0028】
筒部の長さは、10mm以上、100mm以上、又は1000mm以上でよく、内装する火薬の量と保管スペース、形状の観点から、適宜設定することが望ましい。
筒部の厚みは、0.6mm以上、1.0mm以上、又は2mm以上でよく、取り扱い時に変形しない様、適宜設定することが望ましい。
筒部の内径は、4mm以上、10mm以上、又は160mm以上でよく、内容物のサイズや用途や使用環境によって、適宜設定できる。例えば、筒部の長さや直径が4~5mmと小さいものは、筒部の厚みを薄くしても容器本体が破壊する静的内圧(MPa)強度は確保できる。逆に筒部の長さが10mや幅(径等)が1mと大きい場合は、容器本体が破壊する静的内圧(MPa)強度を保つため筒部の厚みを厚くし、脆弱部の強度や容器本体の引張強度を上げる必要がある。
【0029】
例えば、円筒体が破壊する静的内圧(MPa)(限界静的内圧)の計算式は、「2×容器円筒体の厚み(mm)×円筒体の周方向引張強度(MPa)÷円筒の内直径(mm)」、若しくは、「2×容器円筒体の厚みmm×脆弱部を入れた円筒体の周方向引張強度(MPa)÷円筒の内直径(mm)」を適用している。上記計算式に用途に合わせた安全率や加工公差を追加し容器の厚みや構造を設計する。容器本体が円筒体以外の容器の形状を適用する場合も、同様に、容器本体が破壊する静的内圧を適宜計算し、容器の厚みや構造を設計する。総じて、容器本体の一部が破断する静的内圧(MPa)の計算を行うことで本実施形態に係る効果を予測することができる。
【0030】
本発明の弾薬用容器の筒部は、繊維強化プラスチックを含むことで、金属を用いる場合よりも軽量化でき、運用性を高めることができる。
また、本発明の弾薬用容器では、任意選択的に、底部及び/又は蓋部も、繊維強化プラスチックを含んでよい。
【0031】
繊維強化プラスチックの繊維としては、特に限定されるものではなく、火薬類が反応する異常時には樹脂を粉砕しながら破断させる引張強度と通常時は気密性を確保するため、繊維に含浸若しくは塗布する樹脂と接着するものであれば使用できる。
このような繊維としては、ガラス繊維、金属繊維、パルプ繊維、ケラミック繊維、樹脂繊維、炭素繊維、及び木質繊維からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0032】
繊維強化プラスチックのプラスチックとしては、特に限定されるものではなく、火薬類が反応する異常時には繊維により粉砕され、通常時は気密性を確保するため、繊維に含浸若しくは塗布し接着するものであれば使用できる。
このようなプラスチックとしては、エポキシ樹脂、POM(ポリアセタール)樹脂、塩化ビニル、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びフェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0033】
本発明の弾薬用容器は、筒部の軸方向に対して筒部の周方向の引張強度の比(周方向/軸方向)は、2%以上、3%以上、5%以上、8%以上、10%以上、15%以上、20%以上、又は27%以上でよく、250%以下、242%以下、240%以下、230%以下、200%以下、199%以下、150%以下、又は100%以下でよい。特に、この比は2~250%であることが好ましく、3~100%であることがより好ましい。なお、筒部についての引張強度の比は、脆弱部の無い筒体単独についての値である。
引張強度の比が小さすぎると容器が変形し易くなり、大きすぎると爆発時に分離してロケットのように飛散してしまう。引張強度の比を上記範囲とすることで、容器の分離を調整することができる。
【0034】
特に、引張強度の比を3~100%とすることにより、容器の分離をより調整し易くなる。すなわち、軸方向の強度を強化することにより、軸方向の接合部の割合を多く調整することが可能となり、気密性の確保と、火薬類が爆轟等したときの周囲に与える損壊の低減とが向上する。
【0035】
上記軸方向の引張強度は、JIS K 7033の(C法)に記載するサンプル(板状試験片)を筒部から切出し23℃±2℃、相対湿度50%の環境下で5±1mm/minの速度で引張試験することで求められる。上記円周方向の引張強度は、JIS K 7037の板状試験片(C法)に記載するサンプル(板状試験片)を円筒体から切出し上記同様に引張試験することで求められる。
【0036】
後述する脆弱部の引張強度は、脆弱部から破断する様にサンプルをセットし、その時の破断荷重Nを、脆弱部を設けていない部分の面積(mm)で割り、求めることができる。一般的にフィラメントワインディング製法で容器本体の円筒を製造し、組角度を25.8度にした場合の、円筒の軸方向に対して円筒の円周方向の引張強度の比[%]は、略9%(略30/340MPa)、組角度を54.7度にした場合は略370%(略185/50MPa)、プリプレグを用いた製法とし組角度を0度にした場合の軸方向と円周方向の引張強度の比は略2%(略30/1600MPa)となる。また、容器本体の円筒の組角度を巻層毎に変えた場合の円筒の周方向の引張強度は、各層毎の引張強度の合計に比例する。さらに、巻層毎に組角度を変え円筒に脆弱部を設けた場合は、接合している部分の層毎の破断荷重の合計が、その円筒の周方向の破断荷重と比例する。
繊維の組角度や層毎の繊維の方向・繊維の量、繊維の種類や太さを代える等の手法で、円筒体の軸の方向の強度を高め、周方向の強度を弱める様に繊維又は脆弱部またはその両方を配置すれば、内部圧力の上昇により容器が2分されて飛散することをより確実に防止して、周囲に与える損壊を低減することができる。
【0037】
容器本体の筒部は、繊維長10mm以上、好ましくは24mm以上の繊維を用い、樹脂と混合した筒部(図4(1))、若しくは上記と同じ繊維を樹脂と混合しシート状にしたものから作られる筒部(図4(2))としてもよい。この場合、繊維の方向はランダムになり、筒部の軸方向に対して筒部の周方向の引張強度の比が略100%(略150/150MPa)になるが、容器内部において火薬類が部分爆轟した非常時には、筒部に含まれる繊維より筒体の破片が崩れて軽量化されるため、これを用いてもよい。
【0038】
たとえば、図5に示すようにフィラメントワインディング製法で容器本体の円筒体に含まれる繊維の方向を45度にすると、円筒の軸方向に対して円筒の円周方向の引張強度の比が略100%(略150/150MPa)になる。
【0039】
また、フィラメントワインディング製法により配置された繊維は、容器本体円筒の軸の方向に対し30度になる様に1層巻いた後、次の層では、上記容器本体円筒の上記と同じ軸の方向に対し150度で更巻かれるが、これは、繊維の方向としては、容器本体円筒の軸の方向に対し同じ30度とする。すなわち、フィラメントワインディング製法により配置される容器本体円筒の軸の方向に対し30度の繊維が100%になる。この時円筒の軸方向引張強度は略300MPaに対して円筒の円周方向の引張強度は略54MPaとなり、その比は略18%になる。若しくは巻層ごとに巻き角度(組角度)を変更するか、任意の方向に強化繊維を追加し円筒軸方向と円周方向の強度を変更してもよい。
【0040】
これに対し、図6に示すように、横糸・縦糸がある布や織物に樹脂を浸漬させた板(プリプレグ等)をロール状に巻いて製管した場合は、縦糸・横糸の強度や量を任意に変更したプリプレグや積層方法を変更することで、容器本体の円筒の軸方向に対して円筒の円周方向の引張強度の比を、任意に設定することができる。
【0041】
<蓋体>
蓋体5は、容器本体4において筒部2の他方の開口部を塞ぐ。
蓋体は、弾薬用容器内を密閉できるものであれば、その材料や形状は、特に制限されない。例えば、金属製とするほか、プラスチック製、繊維入りプラスチック製、紙製、樹脂含浸紙製、又はゴム製とすることも可能である。ただし、容器本体が破壊する前に蓋体が飛散することを防ぐため、蓋体と容器本体の接合強度は、蓋体に加わる内部から衝撃や圧力よりも高くすることが望ましい。蓋体の強度が確保できない場合は、飛散防止のため、蓋体に脆弱部等を設け圧力を開放し、蓋体の飛散を防止する機構を設けてもよい。鎖繊維より筒部の破片が崩れ軽量化されるため、これを用いてもよい。
【0042】
蓋体は本体の上記の筒部と十分な強度(ネジ構造等)で接合されていれば、金属、樹脂、複合材、蓋部への脆弱部の有無は問わず蓋部の飛散を防止できる。蓋体の接着強度は、通常の取り扱い強度や異常時の内部圧力に応じて、選定できる。
【0043】
<脆弱部>
本実施形態に係る弾薬用容器1は、筒部2に、少なくとも1つの脆弱部10を備えることが好ましい。弾薬用容器1が、筒部2に脆弱部10を有することで、燃焼ガスの圧力開放開始秒時を調整することができる。
【0044】
脆弱部は、線状構造、溝状構造、薄肉状構造、繊維を含有しない部分又はこれらの組み合わせの構造を有することが好ましい。
少なくとも一つの脆弱部が、筒部の軸方向、又はらせん方向に設けられていることが好ましい。
【0045】
脆弱部、例えば線状構造の脆弱部の長さは、筒部の長さの1割以上、5割以上、又は8割以上でよく、内装する火薬の燃焼性能、容器の形状維持に合わせ適宜設定することが望ましい。
脆弱部1個当りの長さは、1mm以下、90mm以下、又は800mm以下でよく、取り扱い時に形状維持できる様、素材に合わせ適宜設定することが望ましい。
脆弱部の幅は、0.1mm以上、2.0mm以上、又は5.0mm以上でよく、脆弱部が加工可能な幅で適宜設定することが望ましい。
【0046】
脆弱部は、容器本体筒部に対しての穿設本数は1本でもよいが、容器強度が維持される限り、図1に示すように複数本(例えば、2~15本程度)設けてもよい。脆弱部の長さも、穿設本数に応じて適宜設定すればよい。例えば、脆弱部の穿設本数が比較的少ない(例えば、1~3本程度)場合は長寸にし、脆弱部の穿設本数が比較的多い(例えば、4本以上)場合は短寸にすることもできる。また、脆弱部を複数本穿設する場合は、容器本体の軸方向に等間隔で設けることが好ましい。開口孔を形成しやすく燃焼ガスを効率良く外部へ放出できるからである。
【0047】
また、脆弱部は基本的に線状または破線状、好ましくは直線状であるが、容器の形状や内装する火薬類に応じて、湾曲状や螺旋状若しくは両端にYやH字状の切れ込みを形成し、圧力を逃がしやすくこともできる。また、脆弱部は容器本体の軸方向(中心軸)と平行に設けてもよいし、容器本体の軸方向(中心軸)に対し斜め(らせん状)に設けることもでき、容器本体の軸方向に対し、直交方向に脆弱部を設けることもできる。この中でも、脆弱部は、容器本体の軸方向(中心軸)と平行に設けるか、容器本体の軸方向(中心軸)に対し斜め(らせん状)に設けることが、容器本体が分断され、内部に残存した火薬類が燃焼することによって、ロケット状に飛散する可能性を低下させるので好ましい。
【0048】
本実施形態では、図1図2に示すように、脆弱部として、容器本体の軸方向両端部に亘る長寸な破線直線状の貫通孔を、容器本体の軸方向(中心軸)と平行に形成して、筒部へ1、2本設けている。少なくとも1本の、上記脆弱部の長さは、筒部の長さに対し、0.2以上、0.5以上でよく0.8以下、0.6以下であればよい、発火時の燃焼ガスを効率良く外部へ放出することができる。
【0049】
図12に示すように、従来技術の容器本体の筒部には、軸方向に延びる脆弱部は貫通孔と接合部が線状となる様に穿設されており、上記貫通孔は内外貫通状に穿設されている。当該脆弱部を有することにより、弾薬用容器内において弾薬が発火したときに脆弱部が開放され弾薬用容器の内部から燃焼ガスを放出することで内圧上昇を抑制でき、弾薬用容器の破裂を回避することができるとされてきた。
【0050】
しかしながら、上記したように、本発明者は、容器に内装する火薬の反応形態に応じた、容器の破壊形態を解析し、剛性や物性の違う供試体を製作し、更に実検証した結果、従来技術のスリット構造では、内装する火薬が爆轟反応を起し、衝撃波が発生した場合には、脆弱部が開放する前に容器が破片化し、周囲へ影響を及ぼすほか、衝撃波に耐えるために容器の剛性(厚み)を上げると、弾薬用容器全体の重量が重くなり運搬性が損なわれることを見出し、筒部の繊維強化樹脂材の構造に合わせた脆弱部設置に変更したものを新たに提供するものである。
【0051】
図3に、本実施形態に係る弾薬用容器が有する脆弱部の構造の例を示す。図3(1)に示すように脆弱部を貫通孔とする場合は、図2に示す貫通孔の長さと接合部の長さの比を、母材の引張強度に掛けたものと比例した脆弱部の強度が実現される。
【0052】
脆弱部を図3(2)に示すように溝状(薄肉状)、あるいは、図3(3)に示すように積層構造による薄肉構造とする場合は、加工前の引張強度と、溝加工後の非貫通部分の引張強度の比と比例した脆弱部の強度が実現される。また、図3(4)に示すように、脆弱部を非貫通孔として繊維が分断され引張強度が一部弱くなる構造とする場合は、脆弱部と非脆弱部の引張(接着)強度の比と比例した脆弱部の強度が実現される。また、図3(5)に示すように、筒体を角筒状(多角形)とした場合、容器本体の角部は、内部圧力が発生した場合に応力が集中した脆弱部の強度が実現される。
【0053】
<封止材>
弾薬用容器において、当該脆弱部が、封止材によって封止されていることが好ましい。
従来技術の弾薬用容器の筒部外周面には、貫通孔を外面から封止するように板状の封止材が接合される場合がある。封止材は、典型的には、貫通孔の開口面積より大寸であり、貫通孔の外周部において容器本体へ接着ないし溶接等によって接合されている。封止材は、典型的には、容器本体よりも引張強度が低い素材からなる。弾薬用容器内において弾薬が発火した際に、内圧上昇に伴って他の部位よりも優先的に破損されなければならないためである。すなわち、貫通孔及び封止材は、脆弱部に含まれる。
【0054】
これに対し、本実施形態に係る繊維強化樹脂製の弾薬用容器では、図3(6)に示すように、貫通孔の隙間に、封止材を充填することで、容器を封止してもよい。また、脆弱部を図3の様な溝状とし、接合された構造で容器を封止してもよい。更に、上記溝部に封止材を塗布し容器を封止してもよい。もしくは、繊維強化されない部分を設け、脆弱部とすることもできる。
【0055】
脆弱部からの気密を保つための封止材の材料は、アルミニウムや銅などの金属製、又は充填剤、塗装剤、接着剤、コーキング剤などの合成樹脂製又はFRPなどの複合材でよく、これを用いて容器を封止してもよい。また、図3(7)に示すように、上記封止材をテープ状や板状にしたもので貫通孔を覆い容器を封止してもよい。
【0056】
封止材として外部からの衝突等に弱いテープ等を用いる場合は、運用方法に応じて、封止部を保護する機構を設けるのが好ましい。例えば図3(8)に示すように、テープの上にさらに保護板が配されていてもよい。
また、繊維が分断され繊維で強化されていない接合部や溶接部等で容器を封止してもよい。
【0057】
封止材を設ける場合、その材料としては、好ましくは熱により分解燃焼する接着剤、充填剤であり、最も好ましくは塗装剤である。燃焼ガスで容器内の圧力上昇が発生すると、封止材が燃焼ガス(の熱)で破壊され、脆弱部が開口し、燃焼ガスが開放されやすくなる。
【0058】
以下、本実施形態に係る繊維強化樹脂製の弾薬用容器の作用について説明する。
図1に示す本発明の一実施形態である弾薬用容器1は、容器本体4若しくは容器本体4に設けた脆弱部10が0.2~2.0MPaの静的内圧で破断し、開口を生じることを特徴とする。
【0059】
弾薬用容器の運搬時や一時保管時等の取扱時において、衝撃や温度上昇等の原因により弾薬用容器内の弾薬が燃焼反応を引き起こした場合、発生する燃焼ガスによって弾薬用容器内の圧力が上昇する。次いで、燃焼ガスにより容器本体又は容器本体に設けられた脆弱部が、0.2MPa以上、好ましくは0.4MPa以上、より好ましくは0.6MPa以上、そして2.0MPa以下、好ましくは1.5MPa以下、より好ましくは1.0MPa以下で、破断を開始し、脆弱部を設けた場合には脆弱部の方向や強度が弱い方向に所定の大きさで開口を生じ、燃焼ガスが容器安全内圧以下で外部に放出される。
【0060】
破断する静的内圧が0.2MPa未満であると、落下強度が不十分となり、気密性が失われ、通常の取り扱いができない。これにより、弾薬用容器の内圧上昇が抑制されるので、弾薬用容器の爆発、すなわち、破片の飛散が抑制され、安全性が高まる。逆に2.0MPaを超えると、エネルギーを溜め込んで衝撃波が発生し、容器の耐圧を超え任意の場所から破壊され破片や爆風を生じ、破片飛散する。これにより周囲に影響を及ぼす可能性が高まる。破断し、開口を生じる静的内圧が上記範囲であることで、運用性、気密性を維持しつつ、爆破した際の破片飛散を抑えて周囲に与える損壊を低減することができる。
【0061】
上記に加え、所定の速度を超えた金属片が弾薬用容器に貫入した場合、弾薬用容器内の弾薬が部分爆轟し、発生する衝撃波によって圧力が急上昇し、該弾薬用容器は、容器や蓋に設けられた脆弱部の有無に因らず破片化する。
この時、筒部が繊維と樹脂の繊維強化樹脂製であれば、繊維が樹脂を粉砕し、飛散する破片が軽量化され、若しくは、破片が発生せず、周囲へ与える影響をより小さく抑えることができる。また、繊維の方向を筒部の軸に近い角度に配置していれば、更に大きな衝撃波が発生した場合でも容器本体が2分されロケット状に飛散することを防止するため、周囲への安全性が高まる。
【0062】
また、蓋体は本体の上記の筒部と十分な強度(ネジ構造等)で接合されていれば、金属、樹脂、複合材、蓋部への脆弱部の有無は問わず蓋部の飛散を防止できる。蓋体の接着強度は、通常の取り扱い強度や異常時の内部圧力に応じて、選定できる。
【0063】
さらに、従来の弾薬用容器では、内装する弾薬が爆轟反応した場合、金属容器の厚みを数倍、例えば、略3倍に増加させることで、飛散する破片を抑えることが出来るが、容器が重くなり運搬性が悪化してしまう。
これに対し、繊維と樹脂の軽量素材を選択した本実施形態に係る弾薬用容器であれば、容器が重くなることを防ぎ、運搬性を保つことができる。
【実施例
【0064】
以下の実施例等により本発明を具体的に説明する。
【0065】
実施例で使用した評価方法を以下に説明する。
【0066】
[運搬性の評価]
弾薬等の内容物が入った場合は、重量物となるため、有事の際、総重量が重要となる。
今回は、弾薬等の内容物がない全長1100mm弾薬用容器のみの重量を評価した。
筒部の材質を樹脂や複合材とし、蓋部と底部は金属製として評価した。
◎:既存模擬品(金属製)より軽い(10.9kg以下)
○:既存模擬品(金属製)と略同重量(略11.0kg)
×:既存模擬品(金属製)より重い(11.5kg以上)
【0067】
(安全性評価の試験手順)
安全性評価試験は、安全性1の評価(フラグメントインパクト試験)と安全性2の評価(スロークックオフ試験)の2つを実施した。ただし、評価を一部クリアしなかったものは、その他の評価を省略した。
【0068】
[安全性1の評価]
安全性1の評価では、図7に示すように、装薬に高温の金属片が当たったときの反応性評価であるフラグメントインパクト試験を使用した。
容器が外部から衝撃を受けて爆発する際の破片数を測定する。脆弱部からの破損(影響)は実質的に関係なく、容器全体の破片飛び散りを測定した。スリット以外の部分から破壊が生じる場合、繊維があるために、細かい破片になって安全である。繊維が小さいと、長い繊維が入っていないものと似てくる。
【0069】
図8に示すように、発射装薬入りの弾薬用容器に所定の金属片を1830m/秒の速度で衝突させ、そのときの反応を確認する試験を実施した。かかるフラグメントインパクト試験及び評価は、STANAGに準拠した条件で実施した。
【0070】
(安全性1の評価)
重量が150gを超える破片の内、15m以上飛散した破片の数と容器本体の分裂状態から、下記の評価基準で安全性を評価した。
○:15m以上飛散した150g以上の破片数が0個
×:15m以上飛散した150g以上の破片数が1個以上発生した。
フラグメントインパクト試験の結果の一例を図7に示す。
【0071】
[安全性2の評価]
安全性2の評価では、図7に示すように、装薬が高温状態で保持された場合の反応性評価であるスロークックオフ試験を使用した。
内部爆発による容器の破損の仕方を評価する。容器が内部から爆発する際の破片数を測定した。この試験は火災等を想定した試験であり、脆弱部等の特定部分から破損が発生し、脆弱部が無いと爆発してしまう。
【0072】
図7に示すように、発射装薬入りの弾薬用容器をリボンヒーターで巻き更に断熱材で包み、内装する火薬が発火するまで1時間毎に3.3度の速度で昇温させ、反応状態を確認する試験を実施した。かかるスロークックオフ試験及び評価は、STANAGに準拠した条件で実施した。
【0073】
(安全性2の評価)
重量が150gを超える破片の内、15m以上飛散した破片の数と容器本体の分裂状態から、下記の評価基準で安全性を評価した。
<全体>
○:15m以上飛散した150g以上の破片数が0個
×:15m以上飛散した150g以上の破片数が1個以上
<容器本体の分裂状態>
○:容器本体が脆弱部に沿って割れ、容器がその場に留まる。
×:容器本体が周方向に割れ、容器が2分され飛散する。
【0074】
[容器落下強度の評価]
(落下試験)
内容物の入った包装容器を規定の高さから自然落下させる試験を実施した。具体的には、包装容器の中に発射装薬を入れ、I-TOPによる既定の高さ(12m、2.1m、1.5m)と規定の角度(水平、垂直、斜め)になるように包装容器をセットし、落下する地面はコンクリートに厚さ20mmの鉄板を敷いて自然落下させ、落下後の状況を判断した。例えば、貫通孔が長い包装容器は、変形し装薬が破壊され変形した箇所から内容物(火薬)が放出されるため輸送上問題となる。弾薬用包装容器は、様々な条件下でも、安全に装薬を運搬でき、その後保管できる構造でなければならない。落下後の状況を下記の評価指標で判断した。
12m落下によって、包装容器から内容物が飛散しないこと
2.1m落下後も、発射装薬を取りだすことができ、かつ安全に射撃ができること
1.5m落下後も、包装容器に所定の気密性(0.02MPaで空気リークがないこと)を有すること
【0075】
(容器落下強度の評価)
以下の評価基準に従い、容器落下強度を評価した:
◎:上記3つ全ての基準を十分に満足する
○:上記3つの内2つの基準を十分に満足する
△:上記3つの内1つの基準を十分に満足する
×:上記3つの基準を全て満足しない。
【0076】
[気密性評価]
(気密性試験)
以下の各種封止材はガラスエポキシ製に脆弱部を設けた筒部を準備し、気密性能を事前検討した。上記気密性試験(0.02MPaで空気リークなし)を実施し、気密性を有することを確認した。 また、実運用時に弾薬用容器同士が衝突することを想定し、一方の弾薬用容器を50mmの高さから弾薬用容器の封止部に落下させ、上記同様の気密性試験を実施し、気密性が確保されているか確認する実運用気密試験も実施した。
【0077】
(気密性の評価)
○:気密性試験、実運用気密試験共に気密性がある。
△:気密性試験時のみに気密性がある。
×:気密性試験、実運用気密試験共に気密性がない。
【0078】
気密性試験の結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
[比較例1]
容器本体の材質1をSPCC鋼板とし、製管方法を図11に示すようならせん状とし、円筒の軸方向に対して円筒の円周方向の引張強度の比[%]100%にし、容器本体の筒部に、破線状の脆弱部(A:脆弱部の長さ900mm、B:貫通孔の隙間0.1mm、C:貫通孔1個当たりの長さ50mm、D:貫通孔間の接合部長さ3mmピッチ)を円筒の軸と同じ方向に1つ設け塗装剤で封止し、トリプルベースの発射装薬装填し、更に、両端を蓋で封止して弾薬用容器を作製した。
得られた容器の運搬性、安全性1、安全性2、落下強度を上記評価試験により評価した。容器質量が略11kgであるため運搬性は○、結果を以下の表2に示す。安全性1の評価では、15m以上飛散した150g以上の破片数が3個発生したため安全性は×であった。安全性2の評価は、○であった。落下強度は◎であった。
比較例1における安全性の試験結果を、図10(1)に模式的に示す。
【0081】
[比較例2]
比較例1の容器の脆弱部の方向をらせん状にしたことを除き、比較例1と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。
結果は比較例1同様、容器質量が略11kgであるため運搬性は○、安全性1の評価では、15m以上飛散した150g以上の破片数が3個発生したため安全性は×であった。安全性2の評価は、○であった。落下強度は◎であった。
【0082】
[比較例3]
比較例1の容器に破片の貫入速度の緩和を目的としてポリウレア樹脂を5mm塗布したことを除き、比較例1と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。
容器質量が略12kgであるため運搬性は×で、安全性1の評価では、15m以上飛散した150g以上の破片数が4個発生したため安全性は×であった。安全性1の評価が×であったため、安全性2の評価及び落下強度の評価は実施しなかった。
【0083】
[比較例4]
容器本体の材質1をSPHC鋼板(比較例1と同等)とし、厚み、製管方法を図6に示すような平板ロール状に代えたことを除き、比較例1と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。
容器質量が略12kgであるため運搬性は×で、安全性1の評価では、150g以上の金属破片が2個発生したため安全性は×であった。安全性1の評価が×であったため、安全性2の評価及び落下強度の評価は実施しなかった。
【0084】
[比較例5]
容器本体の材質1をSPHC鋼板(比較例1と同等)とし、厚み、製管方法を代えたことを除き、比較例1と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。
容器質量が略14kgであるため運搬性は×であった。安全性の評価1と2で容器は破片化せず安全性は共に○であった。また、落下強度も◎であった。
比較例5における安全性の試験結果を、図10(2)に模式的に示す。
【0085】
[比較例6]
容器本体の材質1をポリカーボネートにし、筒部厚みを5mmに代え、脆弱部の溝の幅を2mm、溝の深さを3.25mmに代え封止材を無くしたことを除き、比較例5と同様に評価した。結果を以下の表2に示す。
容器質量が略10.5kgであるため運搬性は◎であった。容器本体を樹脂とした場合、安全性1の評価で樹脂部はほぼ変形せずに割れ、鋭利な大小の破片を生じて飛散した。15m以上飛散した150g以上の破片数が5個発生しため安全性は×であった。安全性1の評価が×であったため、安全性2の評価及び落下強度の評価は実施しなかった。
【0086】
[比較例7]
容器本体の材質1をエポキシ樹脂に代えたことを除き、比較例6と同様に、評価した。結果を以下の表2に示す。
容器を全て樹脂とした場合、容器質量が略10.5kgであるため運搬性は◎であった。安全性1の評価で樹脂部はほぼ変形せずに破片化し、破片の形状及び大きさを制御できず、15m以上飛散した150g以上の破片数が10個発生したため安全性は×であった。安全性1の評価が×であったため、安全性2の評価及び落下強度の評価は実施しなかった。
【0087】
[比較例8]
容器本体の材質1を厚紙とし、厚みを10mmに代え、脆弱部の溝の幅を2mm、溝の深さを7.5mmに代え、製管方法を図9の様に代えたことを除き、比較例7と同様に評価した。結果を以下の表2に示す。
容器質量が略12kgであるため運搬性は×であった。安全性1、2の評価で5g~50gの軽量な破片が飛散したため安全性は共に○であった。しかし、繊維自体に空隙があり、気密が保てないため、落下強度の評価は△であった。
【0088】
[比較例9]
容器の材質をガラス繊維とエポキシ樹脂にし、製管方法を図5に示すようなワインディングにし、上記ワインディング時の繊維の方向を巻層毎に変え、内側0.5mmの巻角は75度、その外側1.5mmは35度とし、円筒の厚みを2mmにし、脆弱部の形状を溝状にし、円筒の外側から幅2mmの溝を深さ1.5mm長さ900mmに渡り1本穿設し、円筒の軸方向に対して円筒の円周方向の引張強度の比を89%にし、容器本体が破壊する静的内圧(限界静的内圧)を略6.5MPaに代え、封止材を用いなかったことを除き、比較例8と同様に評価した。結果を以下の表2に示す。
容器質量が略10.1kgであるため運搬性は◎であった。安全性1の評価は、○であったが、安全性2の評価では蓋部が飛散し、15m以上飛散した150g以上の破片数が2個発生したため×であった。安全性2の評価が×であったため、落下強度の評価は実施しなかった。
【0089】
[比較例10]
繊維の組角度を円筒の軸に対し35度にし、円筒の軸方向に対して円筒の円周方向の引張強度の比を27%にし、脆弱部の引張強度に対し、母材の周方向の引張強度を60%にし、容器本体が破壊する静的内圧を略2.2MPaに代えたことを除き、比較例9と同様に評価した。結果を以下の表2に示す。
容器質量が略10.1kgであるため運搬性は◎であった。安全性1の評価では、15m以上飛散した150g以上の破片数は発生しなかったため○であった。安全性2の評価では、破片が15m以上飛散したため全体としては×であった。容器本体の分裂状況は、容器本体が2分されなかったため○であった。容器の落下強度の評価は、◎であった。
【0090】
[比較例11]
脆弱部を設けず、容器本体が破壊する静的内圧を略3.7MPaに代えたことを除き、比較例10と同様に評価した。結果を以下の表2に示す。
容器質量が略10.1kgであるため運搬性は◎であった。安全性1の評価では、15m以上飛散した150g以上の破片数は発生しなかったため○であった。安全性2の評価では、破片が15m以上飛散したため全体としては×であった。容器本体の分裂状況は、容器本体が2分されなかったため○であった。容器の落下強度の評価は、◎であった。
【0091】
[実施例1]
円筒体の厚みを0.5mmにし、円筒の軸方向に対して円筒の円周方向の引張強度の比を2%になる様に繊維を配置したプリプレグ(繊維入り樹脂板)を用いて製管方法を図6の様に平板ロールに代え、脆弱部を設けず、容器本体が破壊する静的内圧を略0.2MPaに代えたことを除き、比較例11と同様に評価した。結果を以下の表3に示す。
容器質量が略9.6kgであるため運搬性は◎であった。安全性1、2の評価で15m以上飛散した150g以上の破片数は発生しなかったため、安全性は両方とも○であった。しかし、容器落下強度の評価の落下後に容器本体の一部から空気漏れが発生したため△であった。繊維強化樹脂は、繊維の方向と違う方向に対しては弱く、落下衝撃に耐えられなかった。
【0092】
[実施例2]
円筒体の厚みを2.0mmに代え、容器本体が破壊する静的内圧を略0.8MPaに代えたことを除き、実施例1と同様に評価した。結果を以下の表3に示す。
容器質量が略10.1kgであるため運搬性は◎であった。安全性1、2の評価で15m以上飛散した150g以上の破片数は発生しなかったため、安全性は両方とも○であった。しかし、容器落下強度の評価は、△であった。繊維強化樹脂は、繊維の方向と違う方向に対しては弱く、厚みを上げても、落下衝撃に耐えられなかった。
【0093】
[実施例3]
円筒の軸方向に対して円筒の円周方向の引張強度の比を1965%になる様に繊維を配置したプリプレグ(繊維入り樹脂板)を用いて製管方法を図6の様に平板ロールに代え、容器本体の円筒の軸方向に切断部97mm、接合部3mmの間隔で900mmに渡り破線スリットを1本穿設し、脆弱部の貫通孔の隙間に塗装剤を入れ封止し、容器本体が破壊する静的内圧を略1.2MPaに代えたことを除き、実施例2と同様に評価した。結果を以下の表3に示す。
安全性1の評価で15m以上飛散した150g以上の破片数は発生しなかったため、安全性は○であった。安全性2の評価は15m以上飛散した150g以上の破片数は発生しなかったが、容器本体が円周方向に割れ、容器が2分し飛散したため、全体評価は○で、容器本体の分裂状態は×であった。安全性2の評価が×であった。落下強度の評価は、高さ12mからの落下で容器が割れ、内装物が容器外に放出されたため、〇であった。繊維の方向を変え、周方向の強度を高め過ぎると、安全性や落下衝撃に対し、弱いことが分かった。
【0094】
[実施例4]
容器の材質をガラス繊維とエポキシ樹脂にし、製管方法をワインディングにし、上記ワインディング時の繊維の方向を巻層毎に変え、内側0.5mmの巻角は30度、その外側1.5mmは65度とし、円筒の厚みを2mmにし、脆弱部の形状を溝状にし、円筒の外側から幅2mmの溝を深さ1.7mm長さ900mmに渡り1本穿設し、円筒の軸方向に対して円筒の円周方向の引張強度の比を242%にし、容器本体が破壊する静的内圧を略0.7MPaに代え、封止材を用いなかったことを除き、比較例9と同様に評価した。結果を以下の表3に示す。
容器質量が略10.1kgであるため運搬性は◎であった。安全性1の評価は、○であったが、安全性2の評価では、15m以上飛散した150g以上の破片が発生しなかったため〇であった。落下強度の評価は、1.5m落下後に容器本体の一部から空気漏れが発生しため、〇であった。
繊維の方向を変え、周方向の強度を高め過ぎると、安全性や落下衝撃に対し、弱いことが分かった。
【0095】
[実施例5]
容器本体の円筒の軸方向に切断部90mm、接合部10mmの間隔で900mmに渡り破線スリットを1本穿設し、脆弱部の貫通孔の隙間に塗装剤を入れ封止し、容器本体が破壊する静的内圧を略0.4MPaに代えたことを除き、比較例10と同様に評価した。結果を以下の表3に示す。
容器質量が略10.1kgであるため運搬性は◎であった。安全性1の評価で15m以上飛散した150g以上の破片数は発生しせず、容器本体も2分されなかったため、安全性は○で、安全性2の評価で脆弱部から大きく開口し、蓋部が飛散せず、容器本体も2分されなかったため安全性は○であった。容器落下強度の評価は◎であった。
【0096】
[実施例6]
脆弱部の貫通孔の隙間に接着剤を入れ封止したことを除き、実施例5と同様に評価した。結果を以下の表3に示す。
実施例1同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、落下強度の評価は◎であった。
【0097】
[実施例7]
脆弱部の貫通孔の隙間をアルミテープで封止したことを除き、実施例5と同様に評価した。結果を以下の表3に示す。
実施例1同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、落下強度の評価は◎であった。
【0098】
[実施例8]
脆弱部の形状を溝状にし、円筒の外側から幅2mm深さ1.5mmの溝を設け、容器本体が破壊する静的内圧を略0.9MPaに代え、封止材を用いないことを除き、実施例5と同様に評価した。結果を以下の表3に示す。
実施例5同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、落下強度の評価は◎であった。
【0099】
[実施例9]
脆弱部の形状を破線にし、加工箇所を貫通孔とせず溝状にしたことを除き、実施例8と同様に評価した。結果を以下の表3に示す。
実施例8同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、落下強度の評価は◎であった。
【0100】
[実施例10]
製管方法を平板ロールにし、円筒の軸方向に対して円筒の円周方向の引張強度の比を27%にし、脆弱部は溶接に代え脆弱部の引張強度に対し母材の周方向の引張強度を12%にし、容器本体が破壊する静的内圧を略0.4MPaに代え、封止材を塗装剤に代えたことを除き、実施例9と同様に評価した。結果を以下の表3に示す。
実施例9同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、落下強度の評価は◎であった。
【0101】
[実施例11]
製管方法をスパイラルシーム溶接にし、円筒の軸方向に対して円筒の円周方向の引張強度の比を27%にし、脆弱部をらせん状の溶接に代えたことを除き、実施例9と同様に評価した。結果を以下の表3に示す。
実施例9同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、落下強度の評価は◎であった。
【0102】
[実施例12]
容器本体に含まれる繊維を24mmにし、脆弱部の引張強度に対し母材の周方向の引張強度を6%に代えたことを除き、実施例5と同様に評価した。結果を以下の表3に示す。
実施例5同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、落下強度の評価は◎であった。
【0103】
[実施例13]
脆弱部をらせん状に設置したことを除き、実施例5と同様に評価した。結果を以下の表3に示す。
実施例5同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、容器落下強度の評価は◎であった。
【0104】
[実施例14]
繊維をパルプ繊維に代えたことを除き、実施例8と同様に評価した。結果を以下の表4に示す。
実施例8同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、落下強度の評価は◎であった。
【0105】
[実施例15]
容器本体筒部の形状を四角に代えたことを除き、実施例5と同様に評価した。結果を以下の表4に示す。容器質量が略10kgであるため運搬性は◎であった。安全性1の評価は○、安全性2の評価は容器本体の角部及び脆弱部が割れ開口を生じたため15m以上飛散した150g以上の破片数は発生しなかったため○であった。落下強度の評価は◎であった。
【0106】
[実施例16]
繊維をステンレス繊維に代えたことを除き、実施例5と同様に評価した。結果を以下の表4に示す。実施例5同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、落下強度の評価は◎であった。
【0107】
[実施例17]
繊維をセラミック繊維に代えたことを除き、実施例5と同様に評価した。結果を以下の表4に示す。
実施例5同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、容器落下強度の評価は◎であった。
【0108】
[実施例18]
繊維を樹脂(アラミド)繊維に代えたことを除き、実施例5と同様に評価した。結果を以下の表4に示す。
実施例5同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、容器落下強度の評価は◎であった。
【0109】
[実施例19]
繊維を炭素繊維に代えたことを除き、実施例5と同様に評価した。結果を以下の表4に示す。
実施例5同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、容器落下強度の評価は◎であった。
【0110】
[実施例20]
含浸する樹脂をPOM(ポリアセタール)樹脂に代えたことを除き、実施例5と同様に評価した。結果を以下の表4に示す。
実施例5同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、容器落下強度の評価は◎であった。
【0111】
[実施例21]
含浸する樹脂を不飽和ポリエステル樹脂に代えたことを除き、実施例5と同様に評価した。結果を以下の表4に示す。
実施例5同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、容器落下強度の評価は◎であった。
【0112】
[実施例22]
脆弱部の形状を破線状にし、脆弱部引張強度に対し母材の引張強度が6%になるように貫通孔を設け、貫通孔の隙間に塗装剤を入れ封止したことを除き、実施例5と同様に評価した。結果を以下の表4に示す。
実施例5同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、容器落下強度の評価は、塗装剤に歪が発生し変色したが空気漏れが発生しなかったため◎であった。
【0113】
[実施例23]
製管方法をワインディングにし、上記ワインディング時の繊維の方向を巻層毎に変え、内側1.0mmの巻角は35度、その外側1.0mmは75度とし、円筒の軸方向に対して円筒の円周方向の引張強度の比を200%にし、容器本体が破壊する静的内圧を略1.8MPaに代えたことを除き比較例9と同様に評価した。結果を以下の表4に示す。
運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、容器落下強度の評価は◎であった。
【0114】
[実施例24]
繊維の組角度を27度にし、円筒の軸方向に対して円筒の円周方向の引張強度の比を10%にし、脆弱部及び塗装剤を設けず、容器本体が破壊する静的内圧を略1.9MPaに代えたことを除き、実施例5と同様に評価した。結果を以下の表4に示す。
実施例5同様、運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、容器落下強度の評価は◎であった。
【0115】
[実施例25]
繊維の組角度を53度にし、円筒の軸方向に対して円筒の円周方向の引張強度の比を199%にし、容器本体が破壊する静的内圧を略1.1MPaに代えたことを除き、実施例8と同様に評価した。結果を以下の表4に示す。
運搬性は◎、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、容器落下強度の評価は◎であった。
【0116】
[実施例26]
筒部の厚みを3.0mmにしたことを除き、実施例5と同様に評価した。結果を以下の表4に示す。
容器質量が略11.4kgとなったため運搬性は○、安全性1の評価は○、安全性2の評価は○、容器落下強度の評価は◎であった。
実施例26における安全性の試験結果を、図10(3)に模式的に示す。
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
上記の結果から、容器本体が金属製でありさらに脆弱部を含む比較例、及び容器本体が繊維強化プラスチックを含むことを単独で規定した場合の比較例に比べて、容器本体が繊維強化プラスチックを含み、さらに限界静的内圧を規定した実施例では、高い気密性及び運用性を有し、かつ火薬類が爆轟等したときの周囲に与える損壊を低減できる点で優れていることがわかる。
さらに、容器本体が脆弱部を有するものとすることで、落下強度を調整できる。また筒部の軸方向と周方向との引張強度比を調整することで、容器の分離を調整できる。
このように、繊維強化プラスチック+限界静的内圧+脆弱部+引張強度比の条件をすべて満たすことで、容器の分離、落下強度を調整しつつ、特に高い落下強度を達成できる。特に、このような高い落下強度は、脆弱部又は引張強度比を単独で満たす構成のみでは達成できず、これらを組み合わせることで達成できる。
【0121】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明に係る容器本体の筒部を筒部の軸方向に強く、周方向に割れやすい繊維強化樹脂材とし、容器本体が所定の圧力で破壊を開始する様、最適な容器本体の構造若しくは容器本体に脆弱部を設け、脆弱部の隙間に封止材を設けた、繊維強化樹脂製の弾薬用容器を用いれば、通常時における落下強度、気密性を保持しながらも、容器内部において火薬類が発火した非常時には低い圧力で開口を生じ、容器内に発生する最大圧力低下させることができる。それによって、容器が爆発するリスクをより確実に低減でき、結果、周囲への影響をより低減することができる。また、容器外部からの被弾等で火薬類が爆轟した非常時には飛散する破片の形状を小さく、軽量にすることで、飛散する破片の殺傷エネルギーを低減でき、繊維を筒部の軸に近い方向とすることで容器本体の飛翔も防止することができる。結果、周囲への影響をより低減することができる。すなわち、本発明に係る弾薬用容器においては、内装する火薬類が発火した場合や爆轟した場合でも、周囲への影響をより確実に低減することができる。さらに、金属素材を選択するよりも軽量化できるため、運搬性を向上させることができる。よって、本発明は、弾薬用容器として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0123】
1 弾薬用容器
2 筒部
3 底部
4 容器本体
5 蓋体
10 脆弱部
A 脆弱部長さ
B 貫通孔の隙間
C 貫通孔1個当たりの長さ
D 貫通孔間の接合部長さ
E 繊維
F 樹脂
G 蓋
図1
図2
図3
図4
図5
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図11
図12