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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】電界発光素子及びこれを含む表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/115 20230101AFI20230823BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20230823BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20230823BHJP
   H10K 71/15 20230101ALI20230823BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20230823BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20230823BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20230823BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
H10K50/115
H10K50/15
H10K50/16
H10K71/15
H05B33/12 C
H05B33/14 Z
H05B33/22 A
H05B33/22 C
G09F9/30 365
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019050712
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2019165006
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0031566
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0030273
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丁 大 榮
(72)【発明者】
【氏名】韓 文 奎
(72)【発明者】
【氏名】チョ, オル
(72)【発明者】
【氏名】金 泰 亨
(72)【発明者】
【氏名】朴 秀 珍
(72)【発明者】
【氏名】徐 弘 圭
(72)【発明者】
【氏名】張 銀 珠
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/056750(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0047943(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0001538(US,A1)
【文献】特開2014-225710(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056749(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/209154(WO,A1)
【文献】特開2016-051845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/115
H10K 50/15
H10K 50/16
H10K 71/15
H05B 33/12
H05B 33/14
H05B 33/22
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極上に位置する正孔輸送層と、
前記正孔輸送層上に位置し、正孔輸送性を有する第1リガンドが付着された第1発光体粒子を含む第1発光層と、
前記第1発光層上に位置し、電子輸送性を有する第2リガンドが付着された第2発光体粒子を含む第2発光層と、
前記第2発光層上に位置する電子輸送層と、
前記電子輸送層上に位置する第2電極と、を有し、
前記第1リガンドの溶媒に対する溶解性と前記第2リガンドの溶媒に対する溶解性とは、互いに異なり、
前記第1リガンドは、アルキル系化合物を含み、
前記第2リガンドは、アルキル系化合物を含み、
前記第1リガンドは、オレイン酸(Oleic Acid)を含むことを特徴とする電界発光素子。
【請求項2】
前記第1発光層の正孔移動度は、前記第2発光層の正孔移動度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項3】
前記第2発光層の電子移動度は、前記第1発光層の電子移動度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項4】
前記第1リガンドが親水性溶媒に対する溶解性を有する場合、前記第2リガンドは疎水性溶媒に対する溶解性を有し、
前記第1リガンドが疎水性溶媒に対する溶解性を有する場合、前記第2リガンドは親水性溶媒に対する溶解性を有することを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項5】
前記親水性溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ブタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水、アセトニトリル、又はこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項4に記載の電界発光素子。
【請求項6】
前記疎水性溶媒は、オクタン、ヘプタン、ノナン、ヘキサン、キシレン、トルエン、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、又はこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項4に記載の電界発光素子。
【請求項7】
前記第1発光体粒子及び前記第2発光体粒子のうちの少なくとも一つは、コア-シェル構造を有することを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項8】
前記第1発光体粒子及び前記第2発光体粒子のそれぞれは、Cdを含まないII族-VI族化合物、III族-V族化合物、IV族-VI族化合物、IV族元素又は化合物、I族-III族-VI族化合物、Cdを含まないI族-II族-IV族-VI族化合物、又はこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項9】
前記第1発光層及び前記第2発光層は、両方共に所定の波長領域に属する第1光を発光することを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項10】
前記第1光は、380nm~488nmの第1波長領域、490nm~510nmの第2波長領域、510nm~580nmの第3波長領域、582nm~600nmの第4波長領域、620nm~680nmの第5波長領域のうちのいずれか一つに属することを特徴とする請求項に記載の電界発光素子。
【請求項11】
前記第1発光層及び前記第2発光層は、それぞれ10nm~100nmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項12】
前記第2発光層は、前記第1発光層の直上に位置することを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の電界発光素子を含むことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界発光素子及びこれを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドットは、略数十~数百ナノメートルの直径を有する半導体物質のナノ結晶として、量子拘束(quantum confinement)効果を示す物質である。量子ドットは、通常の蛍光体よりも強い光を狭い波長帯幅で発生させる。量子ドットの発光は、伝導帯から価電子帯に浮き立った状態の電子が転移しながら発生し、同じ物質の場合でも、粒子の大きさにより波長が変わる特性を示す。量子ドットの大きさが小さくなるほど短い波長の光を発光するため、大きさを調節して所望する波長領域の光を得ることができる。
【0003】
即ち、量子ドットを含む発光層及びこれを適用した各種電子素子は、一般に燐光及び/又は蛍光物質を含む発光層を使用する有機発光素子と対比して製造費用が低く、異なる色の光を放出させるために発光層に異なる有機物質を使用する必要なしに量子ドットの大きさを異にすることによって所望する色を放出させることができる。
【0004】
量子ドットを含む発光層の発光効率は、量子ドットの量子効率、電荷キャリアのバランス、光抽出効率などにより決定される。特に量子効率向上のためには励起子(exciton)を発光層に拘束(confinement)させなければならず、多様な要因により発光層内部に励起子が拘束されない場合、励起子消光(exciton quenching)等の問題が発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-083837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、励起子消光を最小化させた電界発光素子及びこれを含む表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による電界発光素子は、第1電極と、前記第1電極上に位置する正孔輸送層と、前記正孔輸送層上に位置し、正孔輸送性を有する第1リガンドが付着された第1発光体粒子を含む第1発光層と、前記第1発光層上に位置し、電子輸送性を有する第2リガンドが付着された第2発光体粒子を含む第2発光層と、前記第2発光層上に位置する電子輸送層と、前記電子輸送層上に位置する第2電極と、を有し、前記第1リガンドの溶媒に対する溶解性と前記第2リガンドの溶媒に対する溶解性とは、互いに異なる。
【0008】
前記第1発光層の正孔移動度は、前記第2発光層の正孔移動度よりも大きく形成され得る。
前記第2発光層の電子移動度は、前記第1発光層の電子移動度よりも大きく形成され得る。
前記第1リガンドが親水性溶媒に対する溶解性を有する場合、前記第2リガンドは疎水性溶媒に対する溶解性を有し、前記第1リガンドが疎水性溶媒に対する溶解性を有する場合、前記第2リガンドは親水性溶媒に対する溶解性を有し得る。
前記親水性溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ブタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水、アセトニトリル、又はこれらの組み合わせを含み得る。
前記疎水性溶媒は、オクタン、ヘプタン、ノナン、ヘキサン、キシレン、トルエン、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、又はこれらの組み合わせを含み得る。
前記第1リガンド及び前記第2リガンドは、それぞれ独立に、チオール系化合物、ハライド系化合物、アルキル系化合物、アミン系化合物、カルバゾール系化合物、又はこれらの組み合わせから由来するリガンド化合物を含み得る。
前記第1発光体粒子及び前記第2発光体粒子のうちの少なくとも一つは、コア-シェル構造を有し得る。
前記第1発光体粒子及び前記第2発光体粒子のそれぞれは、Cdを含まないII族-VI族化合物、III族-V族化合物、IV族-VI族化合物、IV族元素又は化合物、I族-III族-VI族化合物、Cdを含まないI族-II族-IV族-VI族化合物、又はこれらの組み合わせを含み得る。
前記第1発光層及び前記第2発光層は、両方共に所定の波長領域に属する第1光を発光し得る。
前記第1光は、380nm~488nmの第1波長領域、490nm~510nmの第2波長領域、510nm~580nmの第3波長領域、582nm~600nmの第4波長領域、620nm~680nmの第5波長領域のうちのいずれか一つに属し得る。
前記第1発光層及び前記第2発光層は、それぞれ10nm~100nmの厚さを有し得る。
前記第2発光層は、前記第1発光層の直上に位置し得る。
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明の他の態様による電界発光素子は、第1電極と、前記第1電極上に位置する正孔輸送層と、前記正孔輸送層上に位置し、正孔輸送性を有する第1リガンドが付着された第1発光体粒子を含む第1発光層と、前記第1発光層上に位置し、電子輸送性を有する第2リガンドが付着された第2発光体粒子を含む第2発光層と、前記第1発光層と前記第2発光層との間に位置し、前記第1リガンド及び前記第2リガンドに比べて低い電子輸送性を有する第3リガンドが付着された第3発光体粒子を含む第3発光層と、前記第2発光層上に位置する電子輸送層と、前記電子輸送層上に位置する第2電極と、を有し、前記第3リガンドの溶媒に対する溶解性は、前記第1リガンド及び前記第2リガンドのそれぞれの前記溶媒に対する溶解性と異なる。
【0010】
前記第3発光層は、前記第1発光層の直上に位置し、前記第2発光層は、前記第3発光層の直上に位置し得る。
前記第3発光層の正孔移動度は、前記第1発光層の正孔移動度よりも小さく形成され得る。
前記第3発光層の電子移動度は、前記第2発光層の電子移動度よりも小さく形成され得る。
前記第3リガンドの電荷移動度は、10-10cm/Vs~10-4cm/Vsであり得る。
前記第3リガンドが親水性溶媒に対する溶解性を有する場合、前記第1リガンド及び前記第2リガンドのそれぞれは疎水性溶媒に対する溶解性を有し、前記第3リガンドが疎水性溶媒に対する溶解性を有する場合、前記第1リガンド及び前記第2リガンドのそれぞれは親水性溶媒に対する溶解性を有し得る。
前記第3リガンドは、チオール系化合物、ハライド系化合物、アルキル系化合物、アミン系化合物、カルバゾール系化合物、又はこれらの組み合わせから由来するリガンド化合物を含み得る。
前記第1発光層、前記第2発光層、及び前記第3発光層は、全て所定の波長領域に属する第1光を発光し得る。
前記第3発光層は、0.1nm~100nmの厚さを有し得る。
【0011】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態による表示装置は、上述の電界発光素子を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、励起子を発光層に効果的に拘束させることによって、励起子消光を最小化させることができ、寿命特性及び色純度が改善された電界発光素子及びこれを含む表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態による電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図2図1による電界発光素子のエネルギーバンドダイヤグラムである。
図3】他の実施形態による電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図4図3による電界発光素子のエネルギーバンドダイヤグラムである。
図5】実施例1、比較例1、及び比較例2による電界発光素子の電圧対輝度の関係を示すグラフである。
図6】実施例1、比較例1、及び比較例2による電界発光素子の輝度対外部量子効率(External Quantum Efficiency:EQE)の関係を示すグラフである。
図7】実施例1及び比較例2による電界発光素子の波長対正規化された強度の関係を示すグラフである。
図8】実施例1、2及び比較例1~3による電界発光素子の駆動時間対輝度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。しかし、多様な異なる形態に具現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0015】
図面において、複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。明細書全体に亘って類似する部分については同一の図面符号を付した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるという場合、これは他の部分の「直上」にある場合のみならず、その中間にまた他の部分がある場合も含む。反対に、ある部分が他の部分の「直上」にあるという場合には、中間にまた他の部分がないことを意味する。
【0016】
本明細書で、「族(Group)」は、元素周期律表の族をいう。
【0017】
ここで、「II族」はIIA族及びIIB族を含み、II族金属の例はCd、Zn、Hg、及びMgを含むが、これらに制限されない。
【0018】
一方、本明細書で「Cdを含まないII族金属」の例は、Cdを除いた残りのII族金属、例えばZn、Hg、Mgなどが挙げられる。
【0019】
「III族」はIIIA族及びIIIB族を含み、III族金属の例はAl、In、Ga、及びTlを含むが、これらに制限されない。
【0020】
「IV族」はIVA族及びIVB族を含み、IV族金属の例はSi、Ge、及びSnを含むが、これらに制限されない。本明細書で、「金属」という用語は、Siのような半金属も含む。
【0021】
「I族」は、IA族及びIB族を含み、Li、Na、K、Rb、及びCsを含むが、これらに制限されない。
【0022】
「V族」は、VA族を含み、窒素、リン、砒素、アンチモン、及びビスマスを含むが、これらに制限されない。
【0023】
「VI族」は、VIA族を含み、硫黄、セレニウム、及びテルリウムを含むが、これらに制限されない。
【0024】
図1は、一実施形態による電界発光素子を概略的に示す断面図である。
【0025】
本実施形態による電界発光素子10は、第1電極110、第1電極110上に位置する正孔輸送層130、第1電極110と正孔輸送層130との間に位置する正孔注入層120、正孔輸送層130上に位置して第1発光体粒子141を含む第1発光層140、第1発光層140上に位置して第2発光体粒子151を含む第2発光層150、第2発光層150上に位置する電子輸送層160、及び電子輸送層160上に位置する第2電極170を含む。
【0026】
即ち、電界発光素子10は、互いに対向する第1電極110と第2電極170との間に正孔注入層120、正孔輸送層130、第1発光層140、第2発光層150、及び電子輸送層160が配置された積層型構造を有する。
【0027】
電界発光素子10は、第1電極110と第2電極170とを通じて第1発光層140及び第2発光層150に電流を供給して、第1発光体粒子141及び第2発光体粒子151をそれぞれ電界発光させることによって光を発生させる。電界発光素子10は、第1、第2発光層(140、150)にそれぞれ含まれる第1、第2発光体粒子(141、151)の材料、大きさ、細部構造などにより多様な波長領域を有する光を発生させることができる。
【0028】
第1電極110は、駆動電源に直接連結されて第1、第2発光層(140、150)に電流を流す役割を果たす。第1電極110は、少なくとも可視光波長領域帯に対して光透過性を有する物質であるが、必ずしもこれに制限されるものではなく、赤外線又は紫外線波長領域に対する光透過性を更に有する物質であってもよい。例えば、第1電極110は光学的に透明な物質である。
【0029】
一実施形態において、第1電極110は、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ニオビウム酸化物、タンタル酸化物、チタニウム酸化物、亜鉛酸化物、ニッケル酸化物、銅酸化物、コバルト酸化物、マンガン酸化物、クロム酸化物、インジウム酸化物、又はこれらの組み合わせを含む。
【0030】
一方、第1電極110は、図1に示すように基板100上に配置される。基板100は、透明な絶縁基材であり、軟性物質からなる。基板100は、ガラス、又はガラス転移点(Tg)が150℃よりも高いフィルム形態の高分子物質からなり、例えばCOC(Cyclo Olefin Copolymer)又はCOP(Cyclo Olefin Polymer)系の素材からなる。
【0031】
基板100は、第1電極110と第2電極170との間に配置された正孔注入層120、正孔輸送層130、第1発光層140、第2発光層150、及び電子輸送層160を支持する役割を果たす。但し、電界発光素子10の第1電極110は、必ずしも基板100上に配置されるものではなく、第2電極170上に配置されるか、又は場合によっては省略される。
【0032】
第2電極170は、光学的に透明な物質であり、後述する第1、第2発光層(140、150)から発生した光が透過する透光電極の役割を果たす。一実施形態において、第2電極170は、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、及びこれらの合金から選択される少なくとも一つを含むか、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ニオビウム酸化物、タンタル酸化物、チタニウム酸化物、亜鉛酸化物、ニッケル酸化物、銅酸化物、コバルト酸化物、マンガン酸化物、クロム酸化物、インジウム酸化物、又はこれらの組み合わせを含む。
【0033】
一方、第1電極110及び第2電極170のそれぞれは、基板100又は有機層上にスパッタリングなどの方法を使用して電極形成用物質を蒸着することによって形成される。
【0034】
正孔輸送層130は、第1電極110と第1発光層140との間に位置する。正孔輸送層130は、第1、第2発光層(140、150)に正孔を供給、輸送する役割を果たす。正孔輸送層130は、第1発光層140の直下に形成されて第1発光層140に直接接触する。
【0035】
正孔輸送層130は、p-タイプ半導体(p-type semiconductor)物質、又はp-タイプドーパントでドーピングされた物質からなる。例えば、正孔輸送層130は、PEDOT[Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)]誘導体、PSS[poly(styrene sulfonate)]誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾール(poly-N-vinylcarbazole:PVK)誘導体、ポリフェニレンビニレン(polyphenylenevinylene)誘導体、ポリパラフェニレンビニレン(poly p-phenylene vinylene:PPV)誘導体、ポリメタクリレート(polymethacrylate)誘導体、ポリ(9,9-オクチルフルオレン)[poly(9,9-octylfluorene)]誘導体、ポリ(スピロ-フルオレン)[poly(spiro-fluorene)]誘導体、TPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン)、NPB(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N-N’-ジフェニル-ベンジジン)、m-MTDATA(トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)-トリフェニルアミン)、TFB(ポリ(9,9’-ジオクチルフルオレン-co-N-(4-ブチルフェニル)ジフェニルアミン))、PFB(ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン)-co-N,N-ジフェニル-N,N-di-(p-ブチルフェニル)-1,4-ジアミノベンゼン)、poly-TPD、NiO、MoO等のような金属酸化物、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0036】
このような正孔輸送層130は、発光素子の寿命を増加させ、電界発光素子10の作動開始電圧であるターン-オン電圧(turn-on voltage)を低くする機能を果たす。
【0037】
正孔輸送層130は、スピンコーティングなどの湿式コーティング法により形成される。例えば、第1電極110上にPEDOT:PSS又はTFBなどの有機薄膜を成膜する場合、前駆体ポリマー及び水若しくは有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、クロロホルム、クロロベンゼン、アルコール、又はこれらの組み合わせ)が含まれる前駆体溶液を第1電極110上にスピンコーティング(spin-coating)し、例えばNの不活性ガス雰囲気又は真空中で100℃~300℃の硬化(curing)温度で3時間熱処理(thermal treatment)することによって有機薄膜からなる正孔輸送層130が得られる。
【0038】
一方、正孔注入層120は、第1電極110と正孔輸送層130との間に位置する。正孔注入層120は、正孔輸送層130と共に第1、第2発光層(140、150)に正孔を供給する役割を果たし、正孔輸送層130の形成厚さ、材料などを考慮して省略されることもある。
【0039】
正孔注入層120も、上述した正孔輸送層130と同様にp-タイプ半導体(p-type semiconductor)物質、又はp-タイプドーパントでドーピングされた物質からなる。例えば、正孔注入層120は、PEDOT[Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)]誘導体、PSS[poly(styrene sulfonate)]誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾール(poly-N-vinylcarbazole:PVK)誘導体、ポリフェニレンビニレン(polyphenylenevinylene)誘導体、ポリパラフェニレンビニレン(poly p-phenylene vinylene:PPV)誘導体、ポリメタクリレート(polymethacrylate)誘導体、ポリ(9,9-オクチルフルオレン)[poly(9,9-octylfluorene)]誘導体、ポリ(スピロ-フルオレン)[poly(spiro-fluorene)]誘導体、TPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン)、NPB(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N-N’-ジフェニル-ベンジジン)、m-MTDATA(トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)-トリフェニルアミン)、TFB(ポリ(9,9’-ジオクチルフルオレン-co-N-(4-ブチルフェニル)ジフェニルアミン))、PFB(ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン)-co-N,N-ジフェニル-N,N-di-(p-ブチルフェニル)-1,4-ジアミノベンゼン)、poly-TPD、NiO、MoO等のような金属酸化物、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0040】
第1、第2発光層(140、150)は、それぞれ多数の発光体粒子を含む。即ち、第1発光層140は多数の第1発光体粒子141を含み、第2発光層150は多数の第2発光体粒子151を含む。
【0041】
第1、第2発光層(140、150)は、第1電極110と第2電極170とから供給された電流により伝達された電子と正孔とが結合される場所であり、電子と正孔とは第1、第2発光層(140、150)で会って結合されて励起子(exciton)を生成し、生成された励起子が励起状態から基底状態に転移しながら第1、第2発光体粒子(141、151)の大きさに対応する波長の光を発生させる。
【0042】
第2発光層150は、第1発光層140の直上に位置する。即ち、第1発光層140の上部面と第2発光層150の下部面とは、互いに密着して接触する。また、第1発光層140と第2発光層150とは、互いに異なる電気的特性を有する。第1発光層140は正孔輸送速度が電子輸送速度よりも速いため電子輸送性が強く現れ、第2発光層150は電子輸送速度が正孔輸送速度よりも速いため正孔輸送性が強く現れる。
【0043】
例えば、第1発光層140の正孔移動度は、第2発光層150の正孔移動度よりも大きく形成される。
【0044】
例えば、第2発光層150の電子移動度は、第1発光層140の電子移動度よりも大きく形成される。
【0045】
例えば、第1発光層140と第2発光層150との間の電荷(正孔/電子)移動度関係は、上述した関係のうちの少なくとも一つを満たす。
【0046】
これによって、第1発光層140が第2発光層150側に正孔を輸送し、第2発光層150が第1発光層140側に電子を輸送して正孔と電子とが第1発光層140と第2発光層150との間の境界面及び/又は境界面近傍で互いに会って結合される。
【0047】
図2は、一実施形態による電界発光素子の駆動原理を概略的に示す図であり、図1による電界発光素子10内の各構成要素をエネルギーバンドダイヤグラムで示した図である。
【0048】
図2を参照すると、正孔は正孔注入層120から正孔輸送層130を経て第1発光層140に移動する。第1発光層140は正孔輸送性を有するため、第1発光層140内に到達した正孔は第2発光層150に向かって移動する。反面、電子は電子注入層から電子輸送層160に移動する。但し、第2発光層150は電子輸送性を有するため、電子は第2発光層150内でも第1発光層140側に向かって移動する。
【0049】
従って、第1、第2発光層(140、150内)の正孔と電子とは、図2に示すように第1発光層140と第2発光層150との間の境界面及び/又は境界面近傍で互いに会って結合をなす。
【0050】
即ち、第1発光層140及び第2発光層150は、異なる電気的特性に起因する電荷移動度の差を利用して第1発光層140と第2発光層150との間の境界面及び/又は境界面近傍で励起子(exciton)が生成されるように調節される。
【0051】
一方、第1、第2発光層(140、150)が過度に厚く形成された場合、電界発光素子10内部のキャリアバランスを合わせにくく、第1、第2発光層(140、150)が過度に薄く形成された場合、上述した電子/正孔輸送性が発現しにくい。
【0052】
従って、上述した電子/正孔輸送性及びキャリアバランスを考慮した第1、第2発光層(140、150)のそれぞれの厚さは、例えば5nm以上、例えば6nm以上、例えば7nm以上、例えば8nm以上、例えば9nm以上、例えば10nm以上であり、例えば100nm以下、例えば90nm以下、例えば80nm以下、例えば70nm以下、例えば60nm以下、例えば50nm以下、例えば45nm以下、例えば40nm以下、例えば35nm以下、例えば30nm以下、例えば28nm以下、例えば26nm以下、例えば24nm以下、例えば22nm以下、例えば20nm以下、例えば18nm以下、例えば16nm以下である。
【0053】
一方、一般的に発光体として量子ドットを利用する電界発光素子は、電子の移動速度と対比して正孔移動速度が円滑でない。従って、これを考慮して第1発光層140の厚さは、第2発光層150の厚さと同一であるか又は第2発光層150の厚さよりも厚く形成される。
【0054】
但し、実施形態はこれに制限されるものではなく、第1、第2発光層(140、150)のそれぞれの厚さは、それぞれの素材、正孔輸送層130及び/又は電子輸送層160の素材、厚さなどを考慮して選択される。
【0055】
一方、第1、第2発光層(140、150)は両方共に所定の波長領域に属する第1光を発光する。第1光は、可視光領域に属する波長領域であり、例えば380nm~488nmの第1波長領域、490nm~510nmの第2波長領域、510nm超580nm以下の第3波長領域、582nm~600nmの第4波長領域、620nm~680nmの第5波長領域のうちのいずれか一つに属する。
【0056】
但し、実施形態はこれに限定されるものではなく、第1発光層140と第2発光層150とが互いに異なる波長の光を発光するように設定することもできる。この場合、電界発光素子10は、第1発光層140から放出した光と第2発光層150から放出した光が混色された光を放出し、外部光源から供給される他の光と更に混色された光を放出することもできる。
【0057】
本実施形態において、第1、第2発光体粒子(141、151)のうちの少なくともいずれか一つは量子ドットを含む。即ち、第1、第2発光体粒子(141、151)が両方共に量子ドットからなるか、或いは第1、第2発光体粒子(141、151)のうちのいずれか一つが量子ドットからなり、他の一つが量子ドットと区別される他の種類の発光体、例えば商業的に入手可能な公知の蛍光体などからなることもできる。
【0058】
量子ドットは、量子拘束効果(quantum confinementeffect)により不連続的なエネルギーバンドギャップ(energy band gap)を有するため、入射した光を、特定波長を有する光に変換して放射する。即ち、第1、第2発光体粒子(141、151)が全て量子ドットからなる場合、第1、第2発光層(140、150)は両方共に優れた色再現率及び色純度を有する光を発生させることができる。
【0059】
量子ドットの素材は、特に制限されず、公知又は商業的に入手可能な量子ドットを使用することができる。例えば一実施形態による第1、第2発光体粒子(141、151)のそれぞれは、Cdを含まないII族-VI族化合物、III族-V族化合物、IV族-VI族化合物、IV族元素又は化合物、I族-III族-VI族化合物、Cdを含まないI族-II族-IV族-VI族化合物、又はこれらの組み合わせを含む量子ドットである。即ち、第1、第2発光体粒子(141、151)のそれぞれは、非カドミウム系量子ドットである。このように第1、第2発光体粒子(141、151)が両方共に非カドミウム系素材からなる量子ドットである場合、既存のカドミウム系量子ドットと対比して毒性がないため、人体に無害であり、環境に優しい。
【0060】
II-VI族化合物は、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、MgSe、MgS、及びこれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物;ZnSeS、ZnTeSe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、MgZnSe、MgZnS、及びこれらの混合物からなる群より選択される三元素化合物;並びにZnTeSeS、HgZnTeS、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、及びこれらの混合物からなる群より選択される四元素化合物からなる群より選択される。II-VI族化合物は、III族金属を更に含むこともできる。
【0061】
III-V族化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、及びこれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、InZnP、及びこれらの混合物からなる群より選択される三元素化合物;並びにGaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、及びこれらの混合物からなる群より選択される四元素化合物からなる群より選択される。III-V族化合物は、II族金属を更に含むこともできる(InZnP)。
【0062】
IV-VI族化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、及びこれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、及びこれらの混合物からなる群より選択される三元素化合物;並びにSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、及びこれらの混合物からなる群より選択される四元素化合物からなる群より選択される。I族-III-VI族化合物の例は、CuInSe、CuInS、CuInGaSe、CuInGaSを含むが、これらに制限されない。I-II-IV-VI族化合物の例は、CuZnSnSe及びCuZnSnSを含むが、これらに制限されない。IV族化合物は、Si、Ge、及びこれらの混合物からなる群より選択される単元素;並びにSiC、SiGe、及びこれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物からなる群より選択される。
【0063】
二元素化合物、三元素化合物、又は四元素化合物は、均一な濃度で粒子内に存在するか、又は濃度分布が部分的に異なる状態に分かれて同一の粒子内に存在する。
【0064】
一実施形態によると、量子ドットは、一つの半導体ナノ結晶コアと、コアを囲む他の半導体ナノ結晶シェルからなるコア-シェル構造を有する。コアとシェルとの界面は、シェルに存在する元素の濃度が中心に行くほど低くなる濃度勾配(gradient)を有する。また、量子ドットは、一つの半導体ナノ結晶コアとこれを囲む多層のシェルとを含む構造を有する。この時、多層のシェル構造は2層以上のシェル構造を有し、それぞれの層は単一組成若しくは合金又は濃度勾配を有する。
【0065】
本実施形態において、第1発光体粒子及び第2発光体粒子のうちの少なくとも一つはコア-シェル構造を有する。第1、第2発光体粒子のうちの少なくとも一つがコア-シェル構造を有する場合、コアよりもシェルを構成する物質組成がより大きいエネルギーバンドギャップを有し、量子拘束効果が効果的に現れる構造を有する。但し、実施形態はこれに制限されるものではない。一方、多層のシェルを構成する場合も、コアに近いシェルよりもコアの外側にあるシェルがより大きいエネルギーバンドギャップを有する構造であってもよい。この時、量子ドットは紫外線~赤外線波長範囲を有する。
【0066】
量子ドットは、約10%以上、例えば約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約90%以上、又は100%の量子効率(quantum efficiency)を有する。
【0067】
また、ディスプレーで色純度や色再現性を向上させるために、量子ドットは狭いスペクトル幅を有する。量子ドットは、約45nm以下、例えば約40nm以下、又は約30nm以下の発光波長スペクトルの半値幅を有する。上記範囲で素子の色純度や色再現性を向上させることができる。
【0068】
量子ドットは、約1nm~約100nmの粒径(球形でない場合、最も長い部分の大きさ)を有する。例えば、量子ドットは、約1nm~約20nm、例えば2nm(又は3nm)~15nmの粒径(球形でない場合、最も長い部分の大きさ)を有する。
【0069】
また、量子ドットの形態は、当該技術分野における一般に使用される形態のものであり、特に限定されない。例えば、量子ドットは、球形、楕円形、正六面体形、四面体形、ピラミッド形、立方八面体形、シリンダー形、多面体形、又は多重枝形(multi-arm)のナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノシート、又はこれらの組み合わせを含む。量子ドットは任意の断面形状を有する。
【0070】
一方、量子ドットは、商業的に入手可能であるか、又は任意の方法で合成される。例えば、数ナノサイズの量子ドットは、化学的湿式方法(wet chemical process)を通じて合成される。化学的湿式方法では、有機溶媒中で前駆体物質を反応させて結晶粒子を成長させる。
【0071】
一方、第1発光体粒子141の表面には第1リガンドが、第2発光体粒子151の表面には第2リガンドがそれぞれ付着される。
【0072】
第1リガンドと第2リガンドとは、互いに異なる電気的特性を有する。第1リガンドは正孔輸送速度が電子輸送速度よりも速いため電子輸送性が強く現れ、第2リガンドは電子輸送速度が正孔輸送速度よりも速いため正孔輸送性が強く現れる。これによって、第1発光層140は第1リガンドの電気的特性に起因して第2リガンドよりも強い正孔輸送性を有し、第2発光層150は第2リガンドの電気的特性に起因して第1リガンドよりも強い電子輸送性を有する。
【0073】
一般的に、発光体として量子ドットを利用する電界発光素子は、上述のように電子の移動速度と対比して正孔移動速度が円滑でないため、電子と正孔とが会って結合する位置が発光層と電子輸送層との間の境界面側に偏る。
【0074】
このように、電子と正孔との結合位置が発光層と電子輸送層との間の境界面側に偏る場合、境界面で生成された励起子が発光層内部に拘束されずに共通層との界面で消光(quenching)されてしまう虞がある。また、このような境界面で正孔と結合をなすことができなかった余剰電子が正孔輸送層側に移動して正孔輸送層内で励起子を形成する虞がある。従って、このような励起子消光(exciton quenching)及び余剰電子の損失により素子効率が大きく低下することがある。
【0075】
反面、本実施形態による電界発光素子10の場合、第1発光層140と第2発光層150とが互いに密着して配置されるが、第1発光層140は第1リガンドにより正孔輸送性を有し、第2発光層150は第2リガンドにより電子輸送性を有する。
【0076】
従って、第1発光層140は、正孔輸送層130から第2発光層150側に正孔を輸送し、第2発光層150は電子輸送層160から第1発光層140側に電子を輸送することが容易になる。その結果、図2に示すように、第1、第2発光層(140、150)の内部で電子と正孔とが会って結合する位置を調節することが容易になる。
【0077】
第1、第2リガンドは、第1、第2リガンド付着用界面活性剤を使用してそれぞれ第1、第2発光体粒子(141、151)の表面に付着される。即ち、量子ドットを形成するための前駆体物質及び有機溶媒と共に第1、第2リガンド付着用界面活性剤を投入するか、又は形成完了された量子ドットと有機溶媒との混合液に第1、第2リガンド付着用界面活性剤を投入して反応させることによって第1、第2リガンドを第1、第2発光体粒子(141、151)の表面に付着させる。
【0078】
第1、第2リガンドは、それぞれ第1、第2発光体粒子(141、151)の表面に配位される。量子ドットがコア-シェル構造を有する場合、第1、第2リガンドはシェルの外部に露出した表面に配位される。
【0079】
一方、量子ドットの表面には第1、第2リガンド以外にも残余有機溶媒などが更に配位される。このように量子ドットの表面に配位された有機溶媒は、素子内で安定性に影響を与えるため、ナノ結晶の表面に配位されない余分の有機物は、過量の非溶媒(non-solvent)に注ぎ、得られた混合物を遠心分離する過程を経て除去する。非溶媒は、商業的に入手可能な多様な物質を使用することができる。余分の有機溶媒を除去した後、量子ドットの表面に配位された物質の量は、量子ドット重量の50重量%以下、例えば30重量%以下、20重量%以下、又は10重量%以下である。
【0080】
一方、第1リガンドと第2リガンドとは、溶媒に対する溶解性が互いに相違する。即ち、第1リガンドと第2リガンドとは、互いに異なる溶媒選択性を有する。互いに異なる溶媒選択性の例示として、第1リガンドが親水性溶媒に対する溶解性を有する場合、第2リガンドは疎水性溶媒に対する溶解性を有し、第1リガンドが疎水性溶媒に対する溶解性を有する場合、第2リガンドは親水性溶媒に対する溶解性を有する。
【0081】
親水性溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ブタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水、アセトニトリル、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0082】
疎水性溶媒の例としては、オクタン、ヘプタン、ノナン、ヘキサン、キシレン、トルエン、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0083】
第1リガンド及び第2リガンドは、それぞれ独立に、チオール系化合物、ハライド系化合物、アルキル系化合物、アミン系化合物、カルバゾール系化合物、又はこれらの組み合わせから由来するリガンド化合物を含むが、第1リガンドと第2リガンドとの溶媒選択性が異なっていなければならないことを考慮してそれぞれ選択される。
【0084】
このように第1リガンドと第2リガンドとの溶媒選択性が互いに異なるように構成される場合、第1発光体粒子を含む第1発光層形成用組成物と第2発光体粒子を含む第2発光層形成用組成物とが液状で互いに混合されずに互いに区分される層をなす。
【0085】
従って、第1、第2発光層をそれぞれ塗布後に硬化せずに、第1発光層形成用組成物を塗布した後、第1発光層形成用組成物の直上に第2発光層形成用組成物を塗布し、第1、第2発光層形成用組成物を一度に硬化する方式(いわゆる、溶液工程という)を利用して迅速に第1、第2発光層を形成する。
【0086】
また、第1、第2発光層形成用組成物が互いに異なる溶媒選択性を有するため、第1、第2発光層(140、150)の形成過程で第1発光層140と第2発光層150との間の境界面が溶媒により損傷されず、均一な表面モフォロジー(morphology)を有する。これによって、第1、第2発光層(140、150)の発光効率及び信頼性を向上させることができる。
【0087】
電子輸送層160は、第2発光層150と第2電極170との間に配置されて第1、第2発光層(140、150)に電子を輸送する役割を果たす。電子輸送層は、無機酸化物ナノ粒子を含むか、或いは蒸着により形成される有機層である。電子輸送層は、n-タイプ半導体(n-type semiconductor)物質、又はn-タイプドーパントでドーピングされた物質からなる。
【0088】
一方、電子輸送層160と第2電極170との間には、電子の注入を容易にする電子注入層、及び/又は正孔の移動を阻止する正孔遮断層が更に形成される。
【0089】
電子輸送層160、電子注入層、正孔遮断層のそれぞれの厚さは、適切に選択される。例えば、各層の厚さは1nm以上500nm以下であるが、これに制限されない。電子注入層は、蒸着により形成される有機層であり、電子輸送層160の形成厚さ、材料などを考慮して省略され得る。
【0090】
電子注入層及び/又は電子輸送層160は、例えば1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン二無水物(1,4,5,8-naphthalene-tetracarboxylic dianhydride:NTCDA)、バソクプロイン(bathocuproine:BCP)、トリス[3-(3-ピリジル)-メシチル]ボラン(3TPYMB)、LiF、Alq、Gaq、Inq、Znq、Zn(BTZ)、BeBq、(8-(4-(4,6-ジ(ナフタレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル)キノロン)[(8-(4-(4,6-di(naphthalen-2-yl)-1,3,5-triazin-2-yl)phenyl)quinolone)]、8-ヒドロキシキノリナトリチウム(8-hydroxyquinolinato lithium:Liq)、n型金属酸化物(例えば、ZnO、ZnMgO、HfO等)、バソフェナントロリン(Bathophenanthroline:Bphen)、ピラゾール(pyrazole)系化合物、ホスホニルフェノール(phosphonyl phenol)系化合物、下記の化学式1~化学式4で表される化合物、及びこれらの組み合わせから選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
【化1-4】
【0092】
正孔遮断層は、例えば1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン二無水物(1,4,5,8-naphthalene-tetracarboxylic dianhydride:NTCDA)、バソクプロイン(BCP)、トリス[3-(3-ピリジル)-メシチル]ボラン(3TPYMB)、LiF、Alq、Gaq、Inq、Znq、Zn(BTZ)、BeBq、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも一つを含むが、これらに限定されるものではなく、電界発光素子10内の他の構成要素の厚さ、材料などを考慮して省略され得る。
【0093】
このように電界発光素子10は、第1、第2発光層(140、150)を除いた残りの構成要素を蒸着などの方法により形成することができる。従って電界発光素子10を含む表示装置の形成時、第1、第2発光層(140、150)を除いた残りの構成要素を共通層として形成することが容易である。
【0094】
上述のように、電界発光素子10は、第1、第2リガンドにより第1、第2発光層(140、150)がそれぞれ正孔輸送性及び電子輸送性を有する。従って、正孔と電子とは第1、第2発光層(140、150)間の境界面及び/又は境界面で会って結合されることから、励起子を発光層内に拘束させることが容易になる。
【0095】
また、第1、第2リガンドが互いに異なる溶媒選択性を有することによって、電界発光素子10は、溶液工程を利用して第1、第2発光層(140、150)を容易に形成することができ、第1、第2発光層(140、150)間の境界面の表面モフォロジーも均一に形成される。
【0096】
従って、電界発光素子10は、励起子生成位置を第1発光層と第2発光層との境界面及び/又は境界面近傍に調節することによって励起子消光を最小化することができるため、色純度が高い光を発光させることができ、素子の寿命特性に優れる。
【0097】
以下、図3図4を参照して他の実施形態による電界発光素子の概略的な構成及び駆動原理を説明する。
【0098】
図3は、他の実施形態による電界発光素子を概略的に示す断面図であり、図4は、他の実施形態による電界発光素子の駆動原理を概略的に示す図であり、図3による電界発光素子10’の各構成要素をエネルギーバンドダイヤグラムで示した図である。本実施形態による電界発光素子10’において、上述した実施形態による電界発光素子10と同一の構成は詳細な説明を省略する。
【0099】
図3を参照すると、本実施形態による電界発光素子10’は、上述の実施形態による電界発光素子10とは異なり、第1発光層140と第2発光層150との間に第3発光層180が更に位置する。
【0100】
即ち、第3発光層180は第1発光層140の直上に位置し、第2発光層150は第3発光層180の直上に位置し、第1発光層140、第3発光層180、及び第2発光層150が順次に積層構造をなす。
【0101】
第1、第2、及び第3発光層(140、150、180)は全て所定の波長領域に属する第1光を発光するが、これに制限されるものではなく、第1発光層140、第2発光層150、及び第3発光層180のうちのいずれか一つ以上がそれぞれ異なる光を発光するように設定することもできる。この場合、電界発光素子10は、第1、第2、及び第3発光層(140、150、180)からそれぞれ放出された光が混色された光を放出し、外部光源から供給される他の光と更に混色された光を放出することもできる。
【0102】
一方、第3発光層180は、第1、第2発光層(140、150)と異なる電気的特性を有する。第3発光層180は、内部電子移動度と正孔移動度とが同一であるか、又は内部電子移動度と正孔移動度との差が相対的に第1、第2発光層(140、150)と対比して小さく現れる。
【0103】
本実施形態による電界発光素子10’において、第3発光層180の正孔移動度は少なくとも第1発光層140の正孔移動度よりも小さい。
【0104】
また、第3発光層180の正孔移動度は第2発光層150の正孔移動度よりも小さく形成される。但し、第3発光層180と第2発光層150との間の正孔移動度関係は必ずしもこれに制限されず、第3発光層180と第2発光層150との正孔移動度が互いに同一であってもよく、第2発光層150の正孔移動度が第3発光層180の正孔移動度よりも小さく形成されてもよい。
【0105】
一方、本実施形態による電界発光素子10’において、第3発光層180の電子移動度は少なくとも第2発光層150の正孔移動度よりも小さい。
【0106】
また、第3発光層180の電子移動度は第1発光層140の電子移動度よりも小さく形成される。但し、第3発光層180と第1発光層140との間の電子移動度関係は必ずしもこれに制限されず、第3発光層180と第1発光層140との電子移動度が互いに同一であってもよく、第1発光層140の電子移動度が第3発光層180の電子移動度よりも小さく形成されてもよい。
【0107】
このように第1、第2、及び第3発光層(140、150、180)の電荷(正孔/電子)移動度を調節することによって、本実施形態による電界発光素子10’の電子と正孔とが会って結合する地点は、図4に示すように、第1発光層140と第3発光層180との間の境界面、第3発光層180と第2発光層150との間の境界面、及び/又は第3発光層180内部の境界面近傍になる。
【0108】
従って、本実施形態による電界発光素子10’は、キャリア及び励起子に対する光学的拘束が向上し、これによって、向上した発光特性を示す。
【0109】
上述した電子/正孔輸送性及びキャリアバランスを考慮した第3発光層180の厚さは、例えば5nm以上、例えば6nm以上、例えば7nm以上、例えば8nm以上、例えば9nm以上、例えば10nm以上であり、例えば100nm以下、例えば90nm以下、例えば80nm以下、例えば70nm以下、例えば60nm以下、例えば50nm以下、例えば45nm以下、例えば40nm以下、例えば35nm以下、例えば30nm以下、例えば28nm以下、例えば26nm以下、例えば24nm以下、例えば22nm以下、例えば20nm以下、例えば18nm以下、例えば16nm以下である。
【0110】
第3発光層180は第3発光体粒子181を含む。第3発光体粒子181は、上述した第1、第2発光体粒子(141、151)と同様に量子ドットからなり、コア-シェル構造を有する。
【0111】
一方、第3発光体粒子181の表面には、第1リガンド及び第2リガンドに比べて低い電荷(電子/正孔)輸送性を有する第3リガンドが付着される。第3発光層180は第3リガンドに起因して第1発光層140及び第2発光層150に比べて低い電荷(電子/正孔)輸送性を有する。
【0112】
第3リガンドは、例えば10-10cm/Vs以上、例えば10-9cm/Vs以上、例えば10-8cm/Vs以上の電荷(正孔/電子)移動度を有し、例えば10-4cm/Vs以下、例えば10-5cm/Vs以下、例えば10-6cm/Vs以下の電荷(正孔/電子)移動度を有する。
【0113】
本実施形態による電界発光素子10’において、第3リガンドの溶媒に対する溶解性は、第1リガンド及び第2リガンドのそれぞれの溶媒に対する溶解性と異なる。即ち、第3リガンドは、第1、第2リガンドのそれぞれと互いに異なる溶媒選択性を有する。異なる溶媒選択性の例示として、第3リガンドが親水性溶媒に対する溶解性を有する場合、第1、第2リガンドのそれぞれは疎水性溶媒に対する溶解性を有し、第3リガンドが疎水性溶媒に対する溶解性を有する場合、第1、第2リガンドのそれぞれは親水性溶媒に対する溶解性を有する。
【0114】
第3リガンドも、上述した第1、第2リガンドと同様に、チオール系化合物、ハライド系化合物、アルキル系化合物、アミン系化合物、カルバゾール系化合物、又はこれらの組み合わせから由来するリガンド化合物を含むが、第3リガンドの材料は、上述した第1、第2リガンドとの溶媒選択性が異なっていなければならないことを考慮して選択される。
【0115】
このように、第3リガンドが第1、第2リガンドのそれぞれとの溶媒選択性が互いに異なるように構成される場合、第1発光体粒子を含む第1発光層形成用組成物及び第2発光体粒子を含む第2発光層形成用組成物が、第3発光体粒子を含む第3発光層形成用組成物と液状で互いに混合されずに互いに区分される層をなす。
【0116】
従って、上述した実施形態による電界発光素子10の場合と同様に、第1、第2、及び第3発光層形成用組成物を順次塗布した後、一度に硬化する溶液工程を通じて多重発光層を簡単に形成することができる。
【0117】
また、第1、第2発光層形成用組成物のそれぞれが第3発光層形成用組成物と互いに異なる溶媒選択性を有するため、第3発光層180と第1発光層140との間の境界面及び第3発光層180と第2発光層150との間の境界面のそれぞれが溶媒により損傷されず、均一な表面モフォロジー(morphology)を有する。これによって、第1、第2、及び第3発光層(140、150、180)の発光効率及び信頼性を向上させることができる。
【0118】
上述のように、本実施形態による電界発光素子10’は、それぞれ異なる電気的特徴を有する第1、第2、及び第3リガンドにより、第1、第2、及び第3発光層(140、150、180)がそれぞれ異なる正孔/電子移動度を有する。従って、正孔と電子とは第1発光層140と第3発光層180との間の境界面、第3発光層180と第2発光層150との間の境界面、及び/又は第3発光層180内部の境界面近傍で会って結合されることから、励起子を発光層内に拘束させることが容易になる。
【0119】
また、第1、第2、及び第3リガンドがそれぞれ異なる溶媒選択性を有することによって、本実施形態による電界発光素子10’は、溶液工程を利用して第1、第2、及び第3発光層(140、150、180)を容易に形成することができ、第1、第2、及び第3発光層(140、150、180)がなす境界面の表面モフォロジーも均一に形成される。
【0120】
従って、本実施形態による電界発光素子10’も、上述した実施形態による電界発光素子10と同様に励起子消光を最小化することができるため、色純度が高い光を発光することができ、素子の寿命特性に優れる。
【0121】
以下、上述した電界発光素子10を含む表示装置について説明する。
【0122】
本実施形態による表示装置は、基板と、基板上に形成された駆動回路、駆動回路上に所定間隔でそれぞれ離隔して配置された第1電界発光素子、第2電界発光素子、及び第3電界発光素子を含む。
【0123】
第1~第3電界発光素子は、上述した電界発光素子10と同一の構造を有し、それぞれの量子ドットが発光する光の波長が異なる。
【0124】
本実施形態において、第1電界発光素子は赤色光を発光する赤色素子であり、第2電界発光素子は緑色光を発光する緑色素子であり、第3電界発光素子は青色光を発光する青色素子である。即ち、第1~第3電界発光素子は、表示装置内で、それぞれ赤色、緑色、青色を表示する画素(pixel)である。
【0125】
但し、実施形態は必ずしもこれに制限されるものではなく、第1~第3電界発光素子がそれぞれマゼンタ(magenta)、イエロー(yellow)、シアン(cyan)色を表示することもでき、それ以外の異なる色を表示することもできる。
【0126】
一方、第1~第3電界発光素子のうちのいずれか一つのみが上述した電界発光素子10であってもよい。この場合、少なくとも青色を表示する第3電界発光素子は上述した電界発光素子10であることがよい。
【0127】
一方、本実施形態による表示装置において、各画素の発光層を除いた正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、正孔遮断層などは一体として共通層をなす。但し、実施形態は必ずしもこれに制限されるものではなく、表示装置内の各画素別に独立した正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、正孔遮断層を備えることもでき、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、正孔遮断層のうちのいずれか一つ以上が共通層を、残りが別個の独立した層をなすこともできる。
【0128】
基板は、透明な絶縁基板であり、軟性物質からなる。基板は、ガラス、又はガラス転移点(Tg)が150℃より大きいフィルム形態の高分子物質からなり、例えばCOC(Cyclo Olefin Copolymer)又はCOP(Cyclo Olefin Polymer)系の素材からなる。基板上には上述した第1~第3電界発光素子が全て形成される。即ち、本実施形態による表示装置の基板は共通層をなす。
【0129】
駆動回路は、基板上に位置し、第1~第3電界発光素子のそれぞれに独立に連結される。駆動回路は、一つ以上のスキャンライン、データライン、駆動電源ライン、共通電源ラインなどを含む配線、一つの有機発光素子に対応して配線に連結された二つ以上の薄膜トランジスター(thin film transistor:TFT)、一つ以上のキャパシタ(capacitor)等を含む。駆動回路は、公知の多様な構造を有する。
【0130】
以上で説明した通り、本実施形態による表示装置は、バックライトユニトなどの別途の光源を配置しなくても色純度及び色再現率に優れた画像を表示することができる。また、本実施形態による表示装置は、特に各素子の励起子消光現像を最小化することができることから、低電力でも優れた色純度及び寿命特性を示す。
【0131】
以下、本発明の具体的な実施例を示す。但し、下記に記載した実施例は、本発明を具体的に例示するか又は説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されてはならない。
【0132】
<実施例1>
【0133】
ガラス基板上にインジウム-錫酸化物(Indium-Tin-Oxide:ITO)層を蒸着し、その上にPEDOT:PSSを約30nmの厚さにスピンコーティングして正孔注入層を形成し、その上にTFBを約25nmの厚さにスピンコーティングして正孔輸送層を形成する。
【0134】
これとは別個に、第1、第2発光層形成用組成物を準備する。先ず、オクタン(Octane)、青色量子ドット(ZnTeSe)、及び第1リガンド形成用界面活性剤[亜鉛N,N-ジエチルジチオカルバメート(Zinc N,N-Diethyldithiocarbamate)]を混合し、青色量子ドット(ZnTeSe)表面に第1リガンドとしてN,N-ジエチルジチオカルバメート(チオール由来のリガンド化合物)が付着された第1発光層形成用組成物を準備する。
【0135】
一方、エタノール、青色量子ドット(ZnTeSe)、及び第2リガンド形成用界面活性剤[11-メルカプトウンデカノール(11-mercaptoundecanol)]を混合し、青色量子ドット表面に第2リガンドとして11-ヒドロキシルウンデカンチオールレート(11-hydroxy-1-undecanthiolate、チオール由来のリガンド化合物が付着された第2発光層形成用組成物を準備する。
【0136】
準備された第1発光層形成用組成物を先に正孔輸送層上に塗布した後、塗布された第1発光層形成用組成物の直上に第2発光層形成用組成物を塗布し、窒素雰囲気下の80℃で30分間乾燥して、正孔輸送層の直上に第1発光層及び第2発光層を同時に形成する。形成された第1発光層の厚さは約15nmであり、第2発光層の厚さは約10nmである。
【0137】
その後、発光層上に上述した化学式3で表される化合物とピラゾール系化合物(Novaled社、Novaled Dopant n-side material 77)とを3:1の重量比に真空条件で共蒸着して電子輸送層を形成する。形成された電子輸送層の厚さは約36nmである。
【0138】
その後、電子注入層上にアルミニウム(Al)層を約100nmの厚さに蒸着して、実施例1による二重発光層(第1、第2発光層)を含む電界発光素子を製造する。
【0139】
<実施例2>
【0140】
第1リガンド形成用界面活性剤として亜鉛N,N-ジエチルジチオカルバメートの代わりにオレイン酸(Oleic Acid)を用いることを除いては、実施例1と同一の過程を経て、実施例2による二重発光層(第1、第2発光層)を含む電界発光素子を製造する。
【0141】
<比較例1>
【0142】
第1、第2発光層の二重発光層を形成する代わりに、N,N-ジエチルジチオカルバメートが青色量子ドットに付着された第1発光層形成用組成物のみを使用して一つの発光層を形成することを除いては、上述した実施例1と同一の過程を経て、比較例1による単一発光層を含む電界発光素子を製造する。
【0143】
<比較例2>
【0144】
第1発光層形成用組成物の代わりに、リガンドとして11-ヒドロキシルウンデカンチオールレートが付着された第2発光層形成用組成物のみを利用して一つの発光層を形成することを除いては、上述した比較例1と同一の過程を経て、比較例2による単一発光層を含む電界発光素子を製造する。
【0145】
<比較例3>
【0146】
第1リガンド形成用界面活性剤として亜鉛N,N-ジエチルジチオカルバメートの代わりにオレイン酸を用いることを除いては、上述した比較例1と同一の過程を経て、比較例3による単一発光層を含む電界発光素子を製造する。
【0147】
<評価1:二重発光層と単一発光層との発光特性比較>
【0148】
実施例1、比較例1、及び比較例2による電界発光素子のそれぞれに対する発光特性を評価する。電圧変化による輝度変化を図5に示し、輝度変化による外部量子効率(External Quantum efficiency:EQE)変化を図6に示す。一方、実施例1及び比較例2による電界発光素子のそれぞれに対する波長による強度変化を図7にそれぞれ示す。
【0149】
図5を参照すると、実施例1による電界発光素子は、比較例による電界発光素子と対比して高い輝度を示すことが確認される。従って、実施例1のように二重発光層が適用される電界発光素子を用いた場合、実際に使用される電圧範囲で高輝度を有する表示装置を提供することができる。
【0150】
図6を参照すると、実施例1による電界発光素子は、約4000ニト(nit)以下、例えば3500ニト以下、例えば3000ニト以下、例えば2500ニト以下、例えば2000ニト以下、例えば1500ニト以下、例えば1000ニト以下、例えば500ニト以下の区間で比較例による電界発光素子と対比して優れた外部量子効率を示すことが確認される。従って、実施例1のように二重発光層が適用される電界発光素子を用いた場合、既存の単一層電界発光素子と対比して優れた発光効率を有し、特に1500ニト以下の領域で非常に優れた発光効率を有する表示装置を提供することができる。
【0151】
図7を参照すると、比較例2による電界発光素子は、約400nm~450nm波長領域で左側に多少膨らむように突出したグラフの概形を示す。これは比較例2による電界発光素子の正孔輸送層(TFB層)から単一発光層に正孔輸送が遅れて起こるためであると推測される。
【0152】
反面、実施例1による電界発光素子は、第2発光層を含んでいるにも拘らず、当該波長領域で突出せずに急激に増加するグラフの概形を示す。これは正孔輸送層(TFB層)に接触する第1発光層が第2発光層への正孔輸送を助けたためであると推測される。
【0153】
従って、実施例1のように二重発光層が適用される電界発光素子を用いた場合、既存の単一層電界発光素子と対比して優れた色純度を示す表示装置を提供することができる。
【0154】
<評価2:二重発光層と単一発光層との寿命特性比較>
【0155】
実施例及び比較例による電界発光素子のそれぞれに対する寿命特性を評価する。先ず、100ニト(nit)の輝度を有する380nm~488nm(青色波長領域)の光を照射し、駆動時間による輝度変化を測定して、これを図8に示す。
【0156】
一方、図8で最大輝度の95%になる時点をT95で表し、最大輝度の50%になる時点をT50で表して、これを表1に示す。
【0157】
【表1】
【0158】
図8及び表1を参照すると、実施例による電界発光素子は、比較例による電界発光素子と対比して優れた寿命特性を示すことが確認される。
【0159】
一方、実施例1及び比較例1~3による電界発光素子のそれぞれに対して、初期駆動電圧、T50時点での駆動電圧、及び初期駆動電圧とT50時点での駆動電圧との差を計算して、これを表2に示す。
【0160】
【表2】
【0161】
表2を参照すると、実施例による電界発光素子は、比較例による電界発光素子と対比してT50時点での駆動電圧低下の幅が非常に小さいことが確認される。従って、図8、表1、及び表2を参照すると、実施例による電界発光素子は、優れた寿命特性を有することが確認される。
【0162】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0163】
10、10’ 電界発光素子
100 基板
110 第1電極
120 正孔注入層
130 正孔輸送層
140 第1発光層
141 第1発光体粒子
150 第2発光層
151 第2発光体粒子
160 電子輸送層
170 第2電極
180 第3発光層
181 第3発光体粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8