(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】電車線路用架空地線の支持金具
(51)【国際特許分類】
B60M 1/22 20060101AFI20230823BHJP
H02G 7/02 20060101ALI20230823BHJP
H02G 7/05 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B60M1/22 S
H02G7/02
H02G7/05 030
(21)【出願番号】P 2019102937
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】桑野 聡
(72)【発明者】
【氏名】阿部 泰久
(72)【発明者】
【氏名】山田 賢司
(72)【発明者】
【氏名】王 祺
(72)【発明者】
【氏名】田中 光太郎
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-078137(JP,U)
【文献】実公昭49-044230(JP,Y1)
【文献】実公昭36-012149(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/22
H02G 7/02
H02G 7/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持物の下に吊支される電車線路の架空地線と、前記架空地線の吊支点の延線方向両側において両端が当該架空地線に接続され中間部において当該架空地線とは別に前記支持物の下に吊支される添え線とを具備する架線箇所において、前記架空地線と前記添え線とを支持するように前記支持物に支持される支持金具であって、
前記支持物の下に碍子を介して支持ボルトで接続される本体と、フック部とねじ棒部とを具備し前記本体を貫通して当該本体との間で前記架空地線を把持するフックボルトとを具備し、
前記本体は、前記支持ボルトを延線直交方向に貫通させるボルト孔を具備する上部の接続部と、当該接続部から下方に連続し前記フックボルトのねじ棒部を延線直交方向に貫通させるボルト孔を具備するフックボルト受け部と、当該
フックボルト受け部の下方に連続し前記架空地線を載せ受けるように延線直交方向側へ湾曲して延出する架空地線受け部と、当該架空地線受け部の下方に連続し前記添え線を貫通させる延線方向の添え線貫通孔を具備する添え線支持部とを具備し、
前記架空地線受け部は、前記フックボルトのフック部と対向して前記架空地線を把持するように湾曲し、上向きの先端部が延線方向に二股に分岐して形成された一対のフック爪を具備し、
前記フックボルト受け部のボルト孔は、前記フックボルトのねじ棒部を貫通させることにより、前記フックボルトのフック部が前記フック爪の湾曲に対向し、前記一対のフック爪の間に嵌るよう
に配置され、
前記添え線支持部の添え線貫通孔は、前記添え線を相対移動自由に貫通させる形状に設定されることを特徴とする電車線路用架空地線の支持金具。
【請求項2】
前記フックボルトのフック部と前記本体のフック爪に載せ受けられる前記架空地線との間に介設されるように当該架空地線の外周に沿う断面円弧板状で当該架空地線の外周との接触面に滑り防止加工が施された押さえ金具をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の電車線路用架空地線の支持金具。
【請求項3】
前記添え線支持部の添え線貫通孔に嵌合して当該添え線貫通孔の内周を被覆する弾性合成樹脂製の保護カバーをさらに具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の電車線路用架空地線の支持金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車線路において支持物の下に吊支される架空地線と、この架空地線の吊支点を跨いで両端が当該架空地線に接続され、中間部において当該架空地線とは別に支持物の下に吊支される添え線とを支持するための支持金具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、懸垂クランプに把持されて支持物の下に懸垂される電線が屈曲振動による疲労などで破断しても垂れ下がらないように、当該電線の把持箇所を跨いでアーマロッドの両端部を当該電線に接続して二重する架線構造と、この架線構造において電線とアーマロッドとを1本のボルトで同時に把持するダブルフック型の懸垂クランプが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の懸垂クランプは、電線とアーマロッドとを同時に把持するため、両線の最適な把持位置を同時に決定して施工しなければならず、施工に熟練を要する難点がある。また両線が共に同位置で把持、固定されるため、屈曲振動による疲労が両線に同時に生じやすい。特に鉄道の電車線の場合、電線の疲労破断が生じて電線が垂下した場合、列車の運行を長時間停止することになるという問題点がある。
本発明は、電車線路用の架空地線と、それの支持箇所に沿うように両端部が接続される添え線とを支持物に懸垂するための金具であって、施工が比較的容易で、添え線に屈曲振動による疲労が生じにくいものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明の支持金具1は、支持物の下に碍子Iを介して支持ボルト4で接続される本体2と、この本体2との間で架空地線Eを把持するフックボルト3とを具備する。本体2は、碍子Iへの接続部21と、その下方で架空地線Eを把持するための架空地線受け部22及びフックボルト受け部23と、その下方で添え線Rを支持する添え線支持部24とを具備する。接続部21は、支持ボルト4を延線直交方向に貫通させるボルト孔21aを具備する。フックボルト受け部23は、接続部21の下方に連続し、フックボルト3のねじ棒部31を延線直交方向に貫通させるボルト孔23aを具備する。架空地線受け部22は、フックボルト受け部23の下方に連続し、架空地線Eを載せ受けるように延線直交方向側へ湾曲して延出する。添え線支持部24は、架空地線受け部22の下方に連続し、添え線Rを貫通させる延線方向の添え線貫通孔24aを具備する。架空地線受け部22は、フックボルト3のフック部32と対向して架空地線Eを把持するように湾曲し、先端部が延線方向に二股に分岐して形成される一対のフック爪22aを具備する。フックボルト受け部23のボルト孔23aは、フックボルト3のねじ棒部31を貫通させることにより、それのフック部32が架空地線受け部22の湾曲に対向し、一対のフック爪22aの間に嵌るようにように配置される。添え線支持部24の添え線貫通孔24aは、添え線Rを相対移動自由に貫通させる形状に設定される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の支持金具によれば、添え線Rに独立して自由に架空地線Eを把持することができるので、施工が比較的容易である。添え線Rが支持金具1を自由に貫通するので、架空地線Eの屈曲振動が添え線Rに伝わりにくく、このため添え線Rに疲労が生じにくい、また仮に架空地線Eの断線が生じた場合でも、架空地線Eの垂下を添え線Rにより防止することができ、列車運行を停止することがなく、運行を継続することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る支持金具の設置状態の説明図である。
【
図2】本発明に係る支持金具の設置状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1,2において、Aは図示しない支柱のような支持物の上端部に取り付けられる支持アーム、Iは支持アームAに吊り止められる碍子、Eは架空地線、Rは架空地線Eの吊り止め部を補強するための添え線である。添え線Rの両端部は、架空地線Eの吊り止め部を跨いでその延線方向両側において架空地線Eに接続される。
【0009】
支持金具1は、本体2とフックボルト3とを具備し、架空地線Eと添え線Rを碍子Iの下に支持する。本体2は、碍子IのクレビスCに支持ボルト4で接続される。
【0010】
図8によく示すように、フックボルト3は、ねじ棒部31と、それの一端側において概略円弧状に湾曲するフック部32とを具備し、本体2との間で押さえ金具5を介在させて架空地線Eを把持する。フックボルト3には、必要に応じ、ナットを抜け止めするための割ピンが装着される。
【0011】
支持金具本体2は、碍子IのクレビスCへの接続部21と、その下方で架空地線Eを把持するための架空地線受け部22と、フックボルト受け部23と、その下方で添え線Rを支持する添え線支持部24とを具備する。
【0012】
接続部21は、支持ボルト4(
図1)を延線直交方向に貫通させるボルト孔21aを具備する。
【0013】
フックボルト受け部23は、接続部21の下方に連続し、フックボルト3のねじ棒部31を延線直交方向に貫通させるボルト孔23aを具備する。
【0014】
架空地線受け部22は、フックボルト受け部23の下方に連続し、架空地線Eを載せ受けるように延線直交方向側へ湾曲して突出する。架空地線受け部22は、フックボルト3のフック部32と対向して架空地線Eを把持するように概略上開きに湾曲し、上向きの先端部が延線方向に二股に分岐して形成された一対のフック爪22aを具備する。
【0015】
フックボルト受け部23のボルト孔23aは、フックボルト3のねじ棒部31を貫通させることにより、それのフック部32がフック爪22aの湾曲に対向し、一対のフック爪22aの間に嵌るようにように配置される。
【0016】
添え線支持部24は、架空地線受け部22の下方に連続し、添え線Rを自由に貫通させる延線方向の添え線貫通孔24aを具備する。
【0017】
フック部32と架空地線Eとの間に介設される押さえ金具5は、架空地線Eの外周に沿う断面円弧板状に形成され、架空地線の外周との接触面に滑り防止加工が施される。これにより、フック部32による把持力がより効果的に架空地線Eに作用するし、架空地線Eの局部屈曲も回避される。
【0018】
添え線支持部24の添え線貫通孔24aは、添え線Rを相対移動自由に貫通させる形状に設定される。図示の実施形態において、添え線貫通孔24aは、短径が添え線Rの直径より大きい上下方向に長い長孔となっている。なお、添え線Rがアーマロッドで構成されることがあり、この場合も、アーマロッドが添え線貫通孔24a内で遊動できるようになっている。
【0019】
添え線貫通孔24aには、これに嵌合して内周を被覆する弾性合成樹脂製の保護カバー6が取り付けられる。この保護カバー6により、添え線Rと添え線貫通孔24aの内周との摩擦による添え線Rの損傷を防止する。保護カバー6は、必要に応じ、割ピンで抜け止めされる。
【符号の説明】
【0020】
1 支持金具
2 本体
21 接続部
21a ボルト孔
22 架空地線受け部
22a フック爪
23 フックボルト受け部
23a ボルト孔
24 添え線支持部
24a 添え線貫通孔
3 フックボルト
31 ねじ棒部
32 フック部
4 支持ボルト
5 押さえ金具
6 保護カバー
A 支持アーム
I 碍子
C クレビス
E 架空地線
R 添え線