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特許7335738モータ制御装置および、それを備えたモータ制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】モータ制御装置および、それを備えたモータ制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20230823BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
H02P29/00
H02P27/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019129151
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021016236
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青嶋 一浩
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-183632(JP,A)
【文献】特開2008-237189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
H02P 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位コントローラからのPWM信号を受ける通信インターフェイス回路と、
前記PWM信号のデューティで表される指令値に応じた駆動信号を出力する制御回路と、
前記駆動信号に従ってモータを駆動する駆動回路とを備え、
前記制御回路は、前記デューティと前記指令値との間に予め定められた対応関係に基づいて、前記デューティから前記指令値を算出し、
前記デューティの制御範囲は、
前記上位コントローラからの前記PWM信号による前記モータの駆動に使用される使用デューティ範囲と、
前記上位コントローラからの前記PWM信号による前記モータの駆動に使用されない不使用デューティ範囲とを含み、
前記対応関係は、前記使用デューティ範囲および前記不使用デューティ範囲の各々について、前記デューティの増加量に対する前記指令値の増加量である変化の割合を定めるものであり、
前記使用デューティ範囲における前記変化の割合は、前記不使用デューティ範囲における前記変化の割合よりも小さい、モータ制御装置。
【請求項2】
前記使用デューティ範囲は、第1および第2のデューティ範囲を含み、
前記第1のデューティ範囲では、前記第2のデューティ範囲と比べて、前記モータが低速駆動され、
前記第1のデューティ範囲における前記変化の割合は、前記第2のデューティ範囲における前記変化の割合よりも小さい、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記対応関係を示すテーブル、マップおよび関係式のうちの少なくと
も1つが格納されたメモリを含む、請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
上位コントローラと、
前記上位コントローラからの指令に従ってモータを制御するモータ制御装置とを備え、
前記モータ制御装置は、
前記上位コントローラからのPWM信号を受ける通信インターフェイス回路と、
前記PWM信号のデューティで表される指令値に応じた駆動信号を出力する制御回路と、
前記駆動信号に従って前記モータを駆動する駆動回路とを含み、
前記制御回路は、前記デューティと前記指令値との間に予め定められた対応関係に基づいて、前記デューティから前記指令値を算出し、
前記デューティの制御範囲は、
前記上位コントローラからの前記PWM信号による前記モータの駆動に使用される使用デューティ範囲と、
前記上位コントローラからの前記PWM信号による前記モータの駆動に使用されない不使用デューティ範囲とを含み、
前記対応関係は、前記使用デューティ範囲および前記不使用デューティ範囲の各々について、前記デューティの増加量に対する前記指令値の増加量である変化の割合を定めるものであり、
前記使用デューティ範囲における前記変化の割合は、前記不使用デューティ範囲における前記変化の割合よりも小さい、モータ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータを制御するモータ制御装置および、それを備えたモータ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
モータは、各種機器の駆動源として様々な分野で活用されている。代表的なモータ制御としてPWM(Pulse Width Modulation)制御が知られている。たとえば特開2018-183031号公報(特許文献1)に開示された直流モータの制御装置では、直流モータの制御ユニットからDCモータ駆動制御部へシリアル通信ラインを介してPWM信号が出力される(たとえば特許文献1の段落[0026]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-183031号公報
【文献】特開平10-339272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータのPWM制御において、モータ制御システムは、上位コントローラと、モータ制御装置と、モータとを備える。上位コントローラは、周波数を固定した上でデューティを周期的に変化させたPWM信号を出力する。詳細は後述するが、モータ制御装置は、上位コントローラからPWM信号を受けると、PWM信号のデューティからモータを駆動するための指令値(たとえばモータの指令回転数)を算出する。
【0005】
モータを高精度に制御することが好ましい場合がある。モータの制御精度を向上させるための手段として、PWM信号のデューティの検出精度を向上させることが考えられる。デューティの検出精度を向上させるためには、PWM信号の伝搬遅延を抑制したりPWM信号の波形なまりを低減したりするなどの対策が必要となる。そうすると、モータ制御装置のハードウェア構成に制約が生じたり、ハードウェアコストが増大したりする可能性がある。しかし、モータの種類および/または用途によっては、そのような対策が現実的には困難な場合がある。
【0006】
本開示は、かかる課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、PWM信号のデューティの検出精度を向上させなくてもモータを高精度に制御可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に従うモータ制御装置は、上位コントローラからのPWM信号を受ける通信インターフェイス回路と、PWM信号のデューティで表される指令値に応じた駆動信号を出力する制御回路と、駆動信号に従ってモータを駆動する駆動回路とを備える。制御回路は、デューティと指令値との間に予め定められた対応関係に基づいて、デューティから指令値を算出する。対応関係は、モータの駆動に使用されるデューティの制御範囲内において、第1のデューティ範囲におけるデューティの増加量に対する指令値の増加量である変化の割合が、第1のデューティ範囲とは重複しない第2のデューティ範囲における変化の割合とは異なるように定められている。
【0008】
本開示の他の局面に従うモータ制御システムは、上位コントローラと、上位コントローラからの指令に従ってモータを制御するモータ制御装置とを備える。モータ制御装置は、上位コントローラからのPWM信号を受ける通信インターフェイス回路と、PWM信号のデューティで表される指令値に応じた駆動信号を出力する制御回路と、駆動信号に従ってモータを駆動する駆動回路とを含む。制御回路は、デューティと指令値との間に予め定められた対応関係に基づいて、デューティから指令値を算出する。対応関係は、モータの駆動に使用されるデューティの制御範囲内において、第1のデューティ範囲におけるデューティの増加量に対する指令値の増加量である変化の割合が、第1のデューティ範囲とは重複しない第2のデューティ範囲における変化の割合とは異なるように定められている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、PWM信号のデューティの検出精度を向上させなくてもモータを高精度に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に係るモータ制御システムの全体構成を概略的に示す図である。
図2】比較例におけるPWM指令のデューティと指令回転数との間の対応関係を表すテーブルを示す概念図である。
図3】比較例において用いられるテーブルをより詳細に示す図である。
図4】本実施の形態におけるPWM指令のデューティと指令回転数との間の対応関係を表すテーブルを示す概念図である。
図5図4に示したテーブルの内容をより詳細に示す図である。
図6】本実施の形態に係るモータ制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
図7】本実施の形態の変形例におけるPWM指令のデューティと指令回転数との間の対応関係を表す関係式を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態]
本開示においては、モータを駆動するための指令値(駆動目標値)を含むPWM信号(PWM方式の指令)が上位コントローラからモータ制御装置に与えられる。この指令を「PWM指令」と称する。以下に説明する実施の形態では、PWM指令に含まれる指令値がモータの回転数である例について説明する。しかし、指令値は、これに限定されず、モータ電流またはモータトルク等であってもよい。
【0013】
<システム構成>
図1は、本開示の実施の形態に係るモータ制御システムの全体構成を概略的に示す図である。図1を参照して、モータ制御システム100は、上位コントローラ1と、モータ制御装置2と、モータ3と、信号線4とを備える。
【0014】
上位コントローラ1は、たとえばECU(Electronic Control Unit)またはPLC(Programmable Logic Controller)である。上位コントローラ1とモータ制御装置2とは、シリアル伝送形式の信号線4により接続されている。図示しないが、上位コントローラ1にはモータ制御装置2以外の機器(たとえば他のモータ制御装置)が接続されていてもよい。
【0015】
上位コントローラ1は、通信インターフェイス回路11と、制御回路12とを含む。通信インターフェイス回路11は、信号線4を経由してモータ制御装置2と通信するように構成されている。制御回路12は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、入出力ポート(いずれも図示せず)とを含み、モータ制御装置2を含む様々な機器に対する各種指令を生成する。モータ制御装置2に対する指令にはPWM指令が含まれる。PWM指令は、通信インターフェイス回路11から出力され、信号線4を経由してモータ制御装置2へと伝送される。
【0016】
モータ制御装置2は、上位コントローラ1からのPWM指令に従ってモータ3を制御する。モータ制御装置2は、通信インターフェイス回路21と、制御回路22と、駆動回路23とを含む。
【0017】
通信インターフェイス回路21は、信号線4を介してモータ制御装置2の通信インターフェイス回路11と通信するように構成されている。
【0018】
制御回路22は、CPU221と、メモリ222と、入出力ポート223とを含み、駆動回路23を制御する。より詳細には、制御回路22は、通信インターフェイス回路21を介して、上位コントローラ1からのPWM指令を受信する。本実施の形態において、PWM指令は、モータ3の回転速度(モータ回転数)[単位:rpm]を指令値として伝えるための指令である。以下の説明では、PWM指令によって伝えられるモータ回転数を「指令回転数」とも称する。
【0019】
制御回路22は、PWM指令を解析することでPWM指令のデューティを検出し、その検出結果に基づいて指令回転数を算出する。この算出手法については後に詳細に説明する。制御回路22は、算出した指令回転数と、モータ3に設けられた回転数センサ(図示せず)により検出された実際のモータ回転数との偏差に応じて、モータ3を駆動するためのモータ駆動信号を生成する。制御回路22は、モータ駆動信号を駆動回路23に出力する。
【0020】
駆動回路23は、たとえば、複数のスイッチング素子を含むインバータ回路である。駆動回路23は、制御回路22からのモータ駆動信号に従って複数のスイッチング素子をスイッチング動作させることによってモータ3を回転駆動する。
【0021】
モータ3は、自動車、二輪車、船舶等に用いられる補機であり、たとえば電動オイルポンプである。ただし、これらは例示に過ぎず、モータ3の種類および用途は特に限定されるものではない。
【0022】
一般に、モータは、1または複数の特定の回転数(動作点)で駆動されることが多い。たとえば、あるモータ制御装置が複数の動作モードを有する場合、そのモータ制御装置により駆動されるモータは、各動作モードに対応する動作点を有する。本実施の形態では、モータ3が3つの動作点を有する例を説明する。具体的には、モータ3は、低速モードに対応する第1動作点=250rpmと、中速モードに対応する第2動作点=1500rpmと、高速モードに対応する第3動作点=2500rpmとのうちのいずれかの動作点で駆動される。
【0023】
<PWM指令のデューティと指令回転数との間の関係>
本実施の形態においては、PWM指令のデューティと指令回転数との間の対応関係が予め規定され、テーブル(マップであってもよい)として制御回路22のメモリ222内に格納されている。このテーブルの特徴の理解を容易にするため、まず、比較例について説明する。
【0024】
図2は、比較例におけるPWM指令のデューティと指令回転数との間の対応関係を表すテーブルを示す概念図である。図2ならびに後述する図4および図7では、横軸はPWM指令のデューティを表し、縦軸は指令回転数を表す。
【0025】
図2を参照して、比較例では、PWM指令のパルス周波数が固定されている一方で、PWM指令のデューティは10%~90%の範囲で制御されるとする。また、モータ3の最大回転数を4000rpmとする。比較例では図2に示すように、デューティが10%から90%に増加するに従って指令回転数が0から4000rpmへと線形に増加する。
【0026】
図3は、比較例において用いられるテーブルをより詳細に示す図である。図3を参照して、指令回転数の制御精度(いわば指令回転数の分解能)を、最大回転数(すなわち回転数の制御幅)の1%に相当する40rpmにすることが要求される状況を想定する。この要求を満たすためには、デューティの検出精度についても、デューティの全制御範囲(90%-10%=80%)の1%に相当する±0.8%とすることが求められる。
【0027】
しかしながら、上位コントローラ1とモータ制御装置2との間でのPWM指令の伝搬遅延および/または通信インターフェイス回路11,21を経由するPWM指令の波形なまり等の要因により、PWM指令のデューティの検出精度には限界がある。デューティの検出精度は、通常、±0.8%よりも低く、典型的には±2%程度である。そのため、±0.8%の検出精度を実現しようとすると、上位コントローラ1とモータ制御装置2とを接続する信号線4の長さ(ケーブル長)を制約したり、高速での信号伝送が可能な高額な部材を使用したりするなどの対策が要求され得る。しかし、モータ制御装置2の用途によっては、そのような対策が現実的には困難な場合がある。
【0028】
さらに、たとえ上記対策を施して±0.8%のデューティ検出精度を実現したとしても、指令回転数の制御においては40rpmの誤差が生じ得る。このことは、たとえば第1動作点(=250rpm)に関し、デューティが14.8%から15.6%までの範囲内に比較的高精度に検出されたとしても、指令回転数は、240rpmから280rpmまでの範囲で振れてしまう可能性があることを意味している。
【0029】
図4は、本実施の形態におけるPWM指令のデューティと指令回転数との間の対応関係を表すテーブルを示す概念図である。図5は、図4に示したテーブルの内容をより詳細に示す図である。
【0030】
図4および図5を参照して、比較例において生じ得る課題に鑑み、本実施の形態においては、PWM指令のデューティ範囲毎に、デューティ範囲に対応する指令回転数を可変に設定する。デューティと指令回転数との間の関係は、比較例とは異なり、非線形に設定される。より具体的には、高精度に指令回転数を制御したい特定のデューティ範囲ほど、その特定のデューティ範囲と、隣接するデューティ範囲との間での指令回転数の変化の割合R(=指令回転数の増加量/デューティの増加量)が小さく設定される。
【0031】
本実施の形態においては、PWM指令のデューティの検出精度が±2%であるとする。この例では、デューティの全制御範囲(=80%)を2%毎に40のデューティ範囲に分割する。前述した3つの動作点付近のデューティ範囲の各々では、いずれの動作点からも離れたデューティ範囲と比べて、隣接する2つのデューティ範囲間の回転数の差が小さい。つまり、指令回転数の変化の割合Rが小さい。
【0032】
第1動作点を例に説明する。22%のデューティ範囲(範囲番号6)と20%のデューティ範囲(範囲番号5)との間の回転数差ΔNは、ΔN=250rpm-245rpm=5rpmである。また、24%のデューティ範囲(範囲番号7)と22%のデューティ範囲(範囲番号6)との間の回転数差ΔNは、ΔN=255rpm-250rpm=5rpmである。こうすると、PWM指令のデューティに22%を中心に±2%の誤差が生じたとしても、指令回転数は、245rpmから255rpmまでの範囲内に収まる。この回転数の範囲(10rpm)は、比較例において指令回転数が振れる可能性がある範囲(280rpm-240rpm=40rpm)よりも小さい。
【0033】
ここでは第1動作点を例に説明したが、残りの第2動作点および第3動作点についても同様に各動作点付近における指令回転数の変化の割合Rを小さくすることで、指令回転数の振れ幅(誤差範囲)が小さくなる。このように、本実施の形態によれば、比較例と比べてPWM指令のデューティ検出精度が低いにも拘わらず、モータ3の駆動に使用される特定のデューティ範囲(第1動作点~第3動作点)においてモータ回転数の制御精度を高くすることが可能である。
【0034】
なお、本実施の形態のようにすることでモータ回転数の制御精度を高くすることは、特に、モータ3を低速駆動する場合に効果が大きい。たとえば、たとえば40rpmの誤差は、第3動作点(=2500rpm)に対して1.6%であるのに対して、第1動作点(=250rpm)に対しては16%である。よって、モータ3を第1動作点で駆動する際の指令回転数の誤差を低減することで、モータ3の高精度制御の効果が顕著になる。
【0035】
<処理フロー>
図6は、本実施の形態に係るモータ制御装置2の処理手順を示すフローチャートである。図6に示す処理手順は、所定の条件が成立する度または所定の周期が経過する度にモータ制御装置2の制御回路22によってメインルーチンから呼び出されて繰り返し実行される。このフローチャートに含まれる各ステップ(以下、ステップを「S」とも略す)は、基本的には制御回路22によるソフトウェア処理によって実現されるが、制御回路22内に作製された専用のハードウェア(電気回路)によって実現されてもよい。
【0036】
図6を参照して、S1において、制御回路22は、上位コントローラ1から通信インターフェイス回路21を介してPWM指令を受信する。そして、制御回路22は、受信したPWM指令を解析してデューティを検出する(S2)。このデューティの検出には、PWM制御において公知の手法が用いられる。
【0037】
S3において、制御回路22は、図4および図5に示したテーブルを参照することによって、S2にて検出したデューティに対応する指令回転数を算出する。さらに、制御回路22は、検出された指令回転数と、回転数センサ(図示せず)により検出された実際のモータ回転数との偏差に応じて、モータ駆動信号を生成する(S4)。たとえば、制御回路22は、公知のフィードバック制御により実際のモータ回転数が指令回転数に近づくように、モータ駆動信号を生成する。そして、制御回路22は、生成したモータ駆動信号を駆動回路23へ出力する(S5)。
【0038】
以上のように、本実施の形態においては、デューティ範囲毎に、そのデューティ範囲に対応する指令回転数を柔軟に設定する。より具体的には、モータ3の駆動にあまり用いられないデューティ範囲では指令回転数の変化幅を粗くするのに対し、モータ3の駆動に高頻度に用いられるデューティ範囲では指令回転数の変化幅を細かくする。これにより、予め定められた3つの動作点でのモータ駆動に用いられるデューティ範囲においては、PWM指令からデューティを検出する際に多少の誤差が生じたとしても指令回転数に生じる誤差が低減される。したがって、本実施の形態によれば、PWM指令のデューティの検出精度を向上させなくてもモータ3を高精度に制御できる。
【0039】
[変形例]
実施の形態では、PWM指令のデューティと指令回転数との間の対応関係をテーブルまたはマップの形式で規定する例を説明した。しかし、上記対応関係は、関係式(関数)として規定してもよい。
【0040】
図7は、本実施の形態の変形例におけるPWM指令のデューティと指令回転数との間の対応関係を表す関係式を説明するための図である。図7には、変形例において関係式により表される対応関係が実線で示されている。また、参考として、実施の形態にて説明したのと同様にテーブルにより表される対応関係が1点鎖線で示されている。
【0041】
図7を参照して、PWM指令のデューティと指令回転数との間の対応関係を、たとえば2次関数を用いて規定してもよい。具体的には、下記式(1)に示すように、デューティdと指令回転数Nとの間の対応関係を係数α(この例ではα=0.8)と横軸方向の平行移動量β(β=10%)とを用いて規定できる。
N=α(d-β) ・・・(1)
【0042】
本変形例においても実施の形態と同様に、PWM信号のデューティの検出精度を向上させなくてもモータ3の回転速度を高精度に制御することが可能である。
【0043】
なお、式(1)ではPWM指令のデューティと指令回転数との間の対応関係を規定するのに2次関数を用いる例を説明したが、関係式の種類はこれに限定されるものはない。関係式は、たとえば、3次以上の多項式関数であってもよいし、指数関数、対数関数または三角関数等であってもよいし、これらの関数を適宜合成したものであってもよい。また、デューティ範囲毎に関係式が異なってもよい。ただし、前述のように、モータ3の高精度制御の効果はモータ3を低速駆動する際に特に顕著になる。よって、関係式は、図7に示す2次関数のように下に凸の形状を有することが好ましい。
【0044】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0045】
1 上位コントローラ、2 モータ制御装置、3 モータ、4 信号線、11,21 通信インターフェイス回路、12,22 制御回路、23 駆動回路、100 モータ制御システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7