(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】フロントフォーク
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20230823BHJP
F16F 9/46 20060101ALI20230823BHJP
B62K 25/08 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
F16F9/32 C
F16F9/46
B62K25/08 Z
(21)【出願番号】P 2019143774
(22)【出願日】2019-08-05
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】KYBモーターサイクルサスペンション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】島内 壮大
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/019764(WO,A1)
【文献】特開昭60-029380(JP,A)
【文献】特開2017-122465(JP,A)
【文献】実開平02-090439(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00-9/58
B62K 25/00-27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側チューブと車軸側チューブとを有して伸縮可能なテレスコピック型のフォーク本体と、
前記車体側チューブの車体側端に装着される環状のキャップと、
前記車軸側チューブ内に設けられるシリンダと、
前記シリンダ内に軸方向移動自在に挿入されるとともに、一端が前記キャップに連結される筒状のロッドと、
前記シリンダ内に収容される電気機器と、
前記キャップの内周
であって前記ロッドより軸方向で車体側の位置にロッド側へ引き抜き可能に装着されて前記電気機器に電気的に接続されるコネクタとを備えた
ことを特徴とするフロントフォーク。
【請求項2】
前記ロッドのキャップ側端の内径は、前記コネクタの最大幅よりも大径である
ことを特徴とする請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項3】
前記キャップに着脱可能に装着されるばね受けと、
一端が前記ばね受けに支持されて前記コネクタを前記ロッドから離間する方向へ付勢するばねと、
前記キャップに着脱可能に装着されて前記コネクタの前記ロッドから離間する方向への移動を規制するストッパとを備えた
ことを特徴とする請求項1または2に記載のフロントフォーク。
【請求項4】
前記コネクタは、前記電気機器に電気的に接続される端子を収容するコネクタ本体と、前記コネクタ本体を保持する保持部材とを有する
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のフロントフォーク。
【請求項5】
前記保持部材は、前記コネクタ本体がインサートされて成形されるモールド樹脂で形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載のフロントフォーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントフォークに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗車両の前側の操向輪を支持するフロントフォークとしては、たとえば、車体側チューブと車体側チューブ内に移動自在に挿入される車軸側チューブとを備えたフォーク本体と、フォーク本体内に収容されてフォーク本体の伸縮に伴って伸縮するダンパとを備えたテレスコピック型のフロントフォークが知られている。
【0003】
ダンパは、シリンダと、シリンダ内を作動液体が充填される伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に軸方向移動自在に挿入されるとともにピストンに連結されるピストンロッドとを備えている。そして、ダンパは、たとえば、ピストンロッドが車体側チューブの上端を閉塞するキャップに連結され、シリンダが車軸側チューブの下端に固定されてフォーク本体内に収容される。
【0004】
このようなフロントフォークでは、鞍乗車両の乗心地向上のためにダンパが発生する減衰力をフロントフォーク外に設置されるコントローラによって調節できるものがある。減衰力の自動調節が可能なフロントフォークは、たとえば、電気粘性流体或いは電磁粘性流体をダンパの作動液体としてピストン内に収容されるコイルへ供給する電流量の調節によって作動液体の粘度を変化させて減衰力を変化させる(たとえば、特許文献1参照)。また、減衰力の自動調節が可能な他のフロントフォークとしては、ピストン内にソレノイドバルブを収容していてソレノイドバルブへの通電量を調節してダンパの減衰力を調節するものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように減衰力の自動調節が可能なフロントフォークでは、ダンパ内に減衰力を調節するためのコイルやソレノイドバルブといった電気機器を備えており、外部電源やコントローラから電気機器へ電力供給する必要がある。そこで、従来のフロントフォークでは、ピストンロッドを筒状とするとともにキャップに配線を通す通し孔を設け、電気機器に接続された配線をシールしつつピストンロッド内とキャップの通し孔を通して外部電源等に接続している。
【0007】
ところが、従来のフロントフォークにあっては、シールやスプリング等の交換を行うメンテナンスのためにフロントフォークを分解する場合、配線をキャップから取り外すことができず、メンテナンス作業が非常に面倒である。また、キャップに外部電源と電気機器との接続と切り離しを可能とするコネクタを設ける場合でも、キャップを取り外すためには電気機器から伸びる配線をコネクタ内の端子から取り外す必要があるので、単にコネクタをキャップに設けただけではメンテナンス作業が一向に容易とならない。また、同様の問題は、コイルやソレノイドバルブ以外にもフォーク本体内にストロークセンサ等の電気機器を収容するフロントフォークにも共通して生じる問題である。
【0008】
そこで、本発明は、内部に電気機器を備えていてもメンテナンス作業が容易となるフロントフォークの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段におけるフロントフォークは、車体側チューブと車軸側チューブとを有して伸縮可能なテレスコピック型のフォーク本体と、車体側チューブの車体側端に装着される環状のキャップと、車軸側チューブ内に設けられるシリンダと、シリンダ内に軸方向移動自在に挿入されるとともに一端がキャップに連結される筒状のロッドと、シリンダ内に収容される電気機器と、キャップの内周であって前記ロッドより軸方向で車体側の位置にロッド側へ引き抜き可能に装着されて電気機器に電気的に接続されるコネクタとを備えて構成されている。このように構成されたフロントフォークでは、コネクタがキャップからロッド側へ引き抜き可能であるから、コネクタをキャップから引き抜いて離脱させて配線に邪魔されずに簡単にキャップを車体側チューブから完全に取り外して車体側チューブの上端開口部を開放できる。
【0010】
また、ロッドのキャップ側端の内径をコネクタの最大幅よりも大径としてもよい。このように構成されたフロントフォークによれば、コネクタをロッド内に収容できるから、フロントフォークのメンテナンス時にコネクタが邪魔にならずメンテナンス作業を容易に行える。
【0011】
さらに、フロントフォークは、キャップに着脱可能に装着されるばね受けと、一端がばね受けに支持されてコネクタをロッドから離間する方向へ付勢するばねと、キャップに着脱可能に装着されてコネクタのロッドから離間する方向への移動を規制するストッパとを備えてもよい。このように構成されたフロントフォークによれば、キャップを車体側チューブへ取り付けた後にコネクタをキャップへ取り付ける作業がフォーク本体外から容易に行え、コネクタの外周形状の寸法が異なったり、コネクタの外周形状を設計変更したりしても、ばねによってコネクタを決められた位置に位置決めでき、コネクタをキャップ3に確実に固定できる。
【0012】
また、コネクタが電気機器に電気的に接続される端子を収容するコネクタ本体と、コネクタ本体を保持する保持部材とを備えて構成されてもよい。このように構成されたフロントフォークでは、端子を収容するコネクタ本体をキャップに直に固定される保持部材で保持するので、異なる形状のコネクタ本体にも対応してコネクタをキャップに固定できる。
【0013】
そして、保持部材は、コネクタ本体がインサートされて成形されるモールド樹脂で形成されてもよく、このように構成されたフロントフォークによれば、コネクタを容易に製造できる。
【発明の効果】
【0014】
よって、本発明のフロントフォークによれば、内部に電気機器を備えていてもメンテナンス作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態におけるフロントフォークの縦断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態におけるフロントフォークの上端部分の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1に示すように、一実施の形態におけるフロントフォークFFは、
図1および
図2に示すように、車体側チューブ1と車軸側チューブ2とを有して伸縮可能なテレスコピック型のフォーク本体Fと、車体側チューブ1の車体側端に装着される環状のキャップ3と、車軸側チューブ2内に設けられるシリンダ4と、シリンダ4内に軸方向移動自在に挿入されるとともに一端がキャップ3に連結される筒状のロッドとしてのピストンロッド5と、シリンダ4内に収容される電気機器としてのソレノイドSと、キャップ3の内周にピストンロッド5側へ引き抜き可能に装着されてソレノイドSに電気的に接続されるコネクタCとを備えて構成されている。
【0017】
以下、一実施の形態のフロントフォークFFの各部について詳細に説明する。
図1および
図2に示すように、フロントフォークFFは、車体側チューブ1と、車体側チューブ1内に摺動自在に挿入される車軸側チューブ2とを有して構成されるテレスコピック型のフォーク本体Fを備えている。フォーク本体Fは、振動が作用すると、車軸側チューブ2が車体側チューブ1に出入りしてフォーク本体Fが伸縮する。なお、本実施の形態では、フォーク本体Fは、車体側チューブ1内に車軸側チューブ2が挿入される倒立型になっているが、車体側チューブ1が車軸側チューブ2内に挿入される正立型とされてもよい。
【0018】
つづいて、フォーク本体Fの車体側端となる車体側チューブ1の
図2中上端には、環状のキャップ3が装着されている。また、フォーク本体Fの下端となる車軸側チューブ2の
図1中下端は、車軸側のブラケットBで塞がれている。さらに、車体側チューブ1と車軸側チューブ2の重複部の間にできる筒状の隙間は、車体側チューブ1の下端に装着されて車軸側チューブ2の外周に摺接する環状のシール部材20で塞がれている。
【0019】
このようにしてフォーク本体F内は密閉空間とされており、そのフォーク本体F内にダンパDが収容されている。このダンパDは、車軸側チューブ2内に収容されるシリンダ4と、シリンダ4内に摺動自在に挿入されるピストン21と、下端がピストン21に連結されるとともに上端がシリンダ4外へと突出してキャップ3に連結されるピストンロッド5とを備えている。
【0020】
キャップ3は、車体側チューブ1に連結されているので、ピストンロッド5はキャップ3を介して車体側チューブ1に連結される。さらに、シリンダ4は、車軸側チューブ2に連結されている。このように、ダンパDは、車体側チューブ1と車軸側チューブ2との間に介装されており、フォーク本体Fの伸縮に伴ってシリンダ4に対してピストンロッド5が軸方向に相対移動して伸縮する。
【0021】
また、シリンダ4の上端には、環状のヘッド部材22が装着されており、このヘッド部材22の内側をピストンロッド5が軸方向へ移動自在に貫通する。ヘッド部材22は、ピストンロッド5を摺動自在に支えており、ヘッド部材22とキャップ3との間に、コイルばねからなる懸架ばね23が介装されている。懸架ばね23は、車体側チューブ1と車軸側チューブ2を離間させる弾発力を発揮してフォーク本体Fを伸長方向に付勢している。よって、フロントフォークFFは、鞍乗車両の前輪と車体との間に介装されると車体を弾性支持する。
【0022】
また、ピストンロッド5は、本実施の形態では、ピストン21に連結される筒状のピストン保持ロッド5aと、キャップ3の下端に連結される筒状のキャップ側筒5bと、ピストン保持ロッド5aとキャップ側筒5bとを連結する筒状の連結部材5cとを備えている。そして、キャップ側筒5bは、ピストン保持ロッド5aより大径であって、下端内周に肉厚筒状の連結部材5cが挿入されるともにねじ締結される。また、連結部材5cの下端内周にピストン保持ロッド5aが挿入されるとともにねじ締結される。よって、ピストンロッド5は、筒状であって
図1中で上端側となるキャップ側端が太くなる形状となっている。
【0023】
なお、本実施の形態のダンパDは片ロッド型で、ピストンロッド5がピストン21の片側からシリンダ4外へ延びている。しかし、ダンパDが両ロッド型になっていて、ピストンロッドがピストンの両側からシリンダ外へ延びていてもよい。また、懸架ばね23は、エアばね等のコイルばね以外のばねであってもよい。
【0024】
つづいて、シリンダ4内には、作動油等の液体が充填された液室Lが形成されており、この液室Lがピストン21で伸側室R1と圧側室R2とに区画されている。ここでいう伸側室とは、ピストンで区画された二室のうち、ダンパDの伸長時にピストン21で圧縮される方の部屋のことである。その一方、圧側室とは、ピストン21で区画された二室のうち、ダンパDの収縮時にピストン21で圧縮される方の部屋のことである。
【0025】
また、シリンダ4外、より詳しくは、ダンパDとフォーク本体Fとの間の空間は液溜室Rとされている。この液溜室Rには、シリンダ4内の液体と同じ液体が貯留されるとともに、その液面上側にエア等の気体の封入されたガス室Gが形成されている。このように、フォーク本体Fは、シリンダ4内の液体とは別に、液体を貯留するタンクの外殻として機能する。
【0026】
なお、図示はしないが、液溜室Rは圧側室R2と連通されており、圧側室R2から液溜室Rへ向かう液体の流れに抵抗を与える減衰バルブと、液溜室Rから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する逆止弁とが設けられている。
【0027】
また、ピストン21には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路21aと、減衰通路21aを通過する液体の流れに抵抗を与えるソレノイドバルブSVとが設けられている。ソレノイドバルブSVは、電気機器としてのソレノイドSと、ソレノイドSによって駆動される弁体Vとを備えており、減衰通路21aを通過する液体の流れに与える抵抗をソレノイドSへの通電量によって調整できるようになっている。ソレノイドバルブSVは、開弁圧の調節が可能な可変リリーフ弁であってもよいし、減衰通路21aの開度を調節可能なスプール弁とされてもよい。なお、減衰通路21aには、ソレノイドバルブSVに対して直列或いは並列にオリフィスや減衰バルブを設けてもよい。
【0028】
そして、ソレノイドバルブSVにおける電気機器としてのソレノイドSは、ピストンロッド5内に収容される配線7を通じて図外の外部電源から電力供給を受けるようになっている。配線7は、キャップ3に保持されるコネクタCに設けられた端子6と電気機器としてのソレノイドSとを接続している。
【0029】
戻って、フォーク本体Fが伸長してダンパDが伸長すると、シリンダ4に対してピストン21が
図1中上方へ移動して、伸側室R1が縮小されて圧側室R2が拡大され、圧縮される伸側室R1の液体は、ピストン21の減衰通路21aを通過して拡大される圧側室R2へ移動する。この液体の流れに対してソレノイドバルブSVが抵抗を与えるので伸側室R1内の圧力が上昇し、ダンパDは、フォーク本体Fの伸長を妨げる減衰力を発生する。なお、ダンパDの伸長時には、ピストンロッド5がシリンダ4内から退出し、ピストンロッド5の退出分の液体がシリンダ4内で不足するので、液溜室Rから前記逆止弁を通じて不足分の液体がシリンダ4内に供給される。
【0030】
逆に、フォーク本体Fが収縮してダンパDが収縮すると、シリンダ4に対してピストン21が
図1中下方へ移動して、圧側室R2が縮小されて伸側室R1が拡大され、圧縮される圧側室R2の液体は、ピストン21の減衰通路21aを通過して拡大される伸側室R1へ移動する。また、ダンパDの収縮時には、ピストンロッド5がシリンダ4内へ侵入し、ピストンロッド5の侵入分の液体がシリンダ4内で過剰となるので、圧側室R2から前記減衰バルブを通じて過剰分の液体が液溜室Rへ排出される。伸側室R1へ向かう液体の流れに対してソレノイドバルブSVが抵抗を与え、液溜室Rへ向かう液体の流れに対して減衰バルブが抵抗を与えるので圧側室R2内の圧力が上昇し、ダンパDは、フォーク本体Fの収縮を妨げる減衰力を発生する。
【0031】
ここで、ソレノイドバルブSVにおけるソレノイドSへ供給する電流を調節してソレノイドバルブSVが液体の流れに与える抵抗を調節できるので、本実施の形態のフロントフォークFFでは、伸長時と収縮時の両側でダンパDが発生する減衰力を調節できる。
【0032】
つづいて、キャップ3は、環状であって、車体側チューブ1の上端内周に挿入されるとともにねじ締結されている。詳しくは、キャップ3は、車体側チューブ1の上端内周に挿入されるとともにねじ締結される環状のコネクタ収容部31と、コネクタ収容部31の下端に連なりピストンロッド5のキャップ側筒5bの上端外周にねじ締結されるロッド連結部32とを備えている。
【0033】
コネクタ収容部31は、環状であって肉厚がロッド連結部32よりも厚くなっており、内周にばね受けとしてのスナップリング33とストッパとしてのスナップリング34とが装着されている。他方、ロッド連結部32は、コネクタ収容部31の内周から垂下されて下方に伸びて、内周にキャップ側筒5bの外周に設けたねじ部5dに螺合するねじ部32aを備えている。
【0034】
また、コネクタ収容部31内には、コネクタCが挿入されている。コネクタCは、配線7に接続される端子6を収容するコネクタ本体8と、コネクタ本体8を保持する保持部材9とを備えて構成されている。コネクタ本体8は、
図2に示すように、端子6を保持する端子保持部8aと、端子6を内方に収容するとともに外部電源に接続される図外のプラグの嵌合を許容する環状のソケット部8bとを備えている。保持部材9は、円筒状であって内部に収容されるコネクタ本体8を保持しており、下端外周側が小径となっていて、上方側の外径が大径な大径部9aと、下方側の外径が小径な小径部9bと、大径部9aと小径部9bとの境に形成される段部9cとを備えている。
【0035】
コネクタ本体8および保持部材9は、合成樹脂で形成されており、たとえば、以下のようにして製造される。コネクタ本体8を成型する型内に予め配線7に接続された端子6をインサートしておき、型内に合成樹脂でなるモールド樹脂を注入して端子6、配線7およびコネクタ本体8を一体化するインサート成型にてコネクタ本体8を得る。そして、端子6、配線7がアッセンブリ化されたコネクタ本体8を保持部材9を成型する型内にインサートしておき、型内に合成樹脂でなるモールド樹脂を注入してアッセンブリ化されたコネクタ本体8と保持部材9とを一体化するインサート成型にてコネクタCを得る。このようなインサート成型を2回行うようにしているので、プラグが嵌合する部分の形状が異なる形状のコネクタ本体8であっても一つの型を利用して保持部材9に一体化できる。よって、端子6を持つコネクタ本体8については外部から購入する場合でもコネクタ本体8と保持部材9とを一体化してコネクタCを得ることができる。なお、コネクタ本体8を得る際に端子6のみをインサートして端子6とコネクタ本体8を一体化してから、端子6に配線7を取り付けてもよい。
【0036】
このように構成されたコネクタCは、キャップ3のコネクタ収容部31内であって、コネクタ収容部31の内周に装着されるばね受けとしてのスナップリング33とストッパとしてのスナップリング34との間に収容される。そして、コネクタCの最大外径となる保持部材9の大径部9aには、シールリング9dが装着されており、シールリング9dがキャップ3のコネクタ収容部31の内周に摺接してコネクタCとキャップ3との間がシールされる。
【0037】
また、コネクタCにおける保持部材9の段部9cとばね受けとしてのスナップリング33との間にはコイルばねでなるばね35が介装されており、コネクタCは、ばね35によって付勢されてストッパとしてのスナップリング34へ押し付けられている。よって、コネクタCは、ばね35によってピストンロッド5から離間する
図2中上方へ向けて付勢されるとともにストッパとしてのスナップリング34によって
図2中上方への移動が規制され、キャップ3に対してばね35の付勢力によって軸方向に位置決めされている。
【0038】
そして、キャップ3の内径で一番狭いのは、コネクタ収容部31の内周部分となっており、スナップリング33をキャップ3から取り外すとコネクタCをロッド側となる
図2中下方へ引き抜きできる。また、スナップリング34をキャップ3から取り外すとコネクタCはキャップ3に対して反ロッド側となる
図2中上方へ引き抜くこともできる。
【0039】
また、本実施の形態では、コネクタCの径方向の最大幅は、ピストンロッド5のキャップ側端となるキャップ側筒5bの内径よりも小さく、コネクタCをキャップ側筒5b内に挿入できる。
【0040】
フロントフォークFFは、以上のように構成されており、メンテナンス作業を行う場合、以下のようにして、分解作業を行う。車体側チューブ1からキャップ3を取り外すには、スナップリング34を取り外してコネクタCとばね35をキャップ3からフォーク本体F外へ一旦引き出してからキャップ3を回して車体側チューブ1から取り外す。そして、ナット40を緩めてから、キャップ3をピストンロッド5に対して回転させ、キャップ3とピストンロッド5とを分離する。その後、スナップリング33を取り外してコネクタCをキャップ3のピストンロッド端から引き抜き、コネクタCをピストンロッド5のキャップ側筒5b内に収容する。すると、キャップ3のみを車体側チューブ1から取り外しできる。
【0041】
そうすると、キャップ3を車体側チューブ1から配線7の干渉を受けずに完全に取り外すことが可能となる。キャップ3を車体側チューブ1から取り外すと分解作業が終了して車体側チューブ1の上端開口部が完全に開放され、フォーク本体F内の懸架ばね23やシールの交換、ダンパDおよび液溜室R内の作動油の交換或いは注油といったメンテナンス作業を行える状態となる。
【0042】
メンテナンス終了後にキャップ3とコネクタCをフォーク本体Fに取り付ける場合は、まず、コネクタCをキャップ3内を通過させてキャップ3の反ロッド側へ引き出し、キャップ3の内周にスナップリング33を装着する。そして、ピストンロッド5をキャップ3に螺子込み、ナット40をキャップ3側へ向けて締めこんで、キャップ3とナット40とでダブルナット掛けしてキャップ3をピストンロッド5に螺子締結する。つづいて、スナップリング33を装着したキャップ3を車体側チューブ1の上端内周に取り付けた後に、ばね35とともにコネクタCをキャップ3内に収容して、スナップリング34をキャップ3に取り付ければ、キャップ3とコネクタCをフォーク本体Fに固定できる。本実施の形態のフロントフォークFFでは、前述のようなキャップ3の着脱の際にコネクタCとキャップ3とを分離できるのでキャップ3の着脱作業が容易となるとともにキャップ3のフォーク本体Fからの完全分離が可能となる。また、キャップ3の着脱の際にコネクタCとキャップ3とを分離できるので、キャップ3の着脱の際に配線7を捩ってしまう恐れがなく配線7の切断や疲労を防止できる。
【0043】
このように本実施の形態のフロントフォークFFでは、車体側チューブ1と車軸側チューブ2とを有して伸縮可能なテレスコピック型のフォーク本体Fと、車体側チューブ1の車体側端に装着される環状のキャップ3と、車軸側チューブ2内に設けられるシリンダ4と、シリンダ4内に軸方向移動自在に挿入されるとともに一端がキャップ3に連結される筒状のピストンロッド(ロッド)5と、シリンダ4内に収容されるソレノイド(電気機器)Sと、キャップ3の内周にピストンロッド5側へ引き抜き可能に装着されてソレノイド(電気機器)Sに電気的に接続されるコネクタCとを備えて構成されている。このように構成されたフロントフォークFFでは、コネクタCがキャップ3からロッド側へ引き抜き可能であるから、コネクタCをキャップ3から引き抜いて離脱させて配線7に邪魔されずに簡単にキャップ3を車体側チューブ1から完全に取り外して車体側チューブ1の上端開口部を開放できる。よって、本実施の形態のフロントフォークFFによれば、内部にソレノイド(電気機器)Sを備えていてもメンテナンス作業が容易となる。また、このフロントフォークFFによれば、コネクタCをキャップ3から取り外した状態でキャップ3の車体側チューブ1への着脱を行えるので、このキャップ3の車体側チューブ1への着脱の際に配線7を捩ることがなく配線7の切断や疲労を防止できる。
【0044】
また、本実施の形態のフロントフォークFFでは、ピストンロッド(ロッド)5のキャップ側端であるキャップ側筒5bの内径は、コネクタCの最大幅よりも大径であるので、キャップ3を取り外した後でコネクタCをピストンロッド(ロッド)5を収容できる。このように本実施の形態のフロントフォークFFによれば、コネクタCをピストンロッド(ロッド)5内に収容できるから、フロントフォークFFのメンテナンス時にコネクタCが邪魔にならずメンテナンス作業を容易に行える。
【0045】
さらに、本実施の形態のフロントフォークFFでは、キャップ3に着脱可能に装着されるスナップリング(ばね受け)33と、一端がスナップリング(ばね受け)33に支持されてコネクタCをピストンロッド(ロッド)5から離間する方向へ付勢するばね35と、キャップ3に着脱可能に装着されてコネクタCのピストンロッド(ロッド)5から離間する方向への移動を規制するスナップリング(ストッパ)34とを備えている。このように構成されたフロントフォークFFでは、スナップリング(ばね受け)33のキャップ3からの取り外しによってコネクタCをキャップ3からロッド側へ引き抜きできるとともに、スナップリング(ストッパ)34の取り外しによってコネクタCをキャップ3から反ロッド側へ引き出せる。よって、本実施の形態のフロントフォークFFによれば、キャップ3を車体側チューブ1へ取り付けた後にコネクタCをキャップ3へ取り付ける作業がフォーク本体F外から容易に行える。また、このように構成されたフロントフォークFFによれば、コネクタCの外周形状の寸法が異なったり、コネクタCの外周形状を設計変更したりしても、ばね35によってコネクタCを決められた位置に位置決めでき、コネクタCをキャップ3に確実に固定できる。なお、ばね35を省略してコネクタCをスナップリング33,34で直に挟持することもできるが、コネクタCの外周形状の寸法に狂いがあるとコネクタCがキャップ3内で軸方向にガタついたり或いはコネクタCの固定自体が難しくなったりすることがある。また、本実施の形態では、ばね受けとストッパにスナップリング33,34を利用しているが、ばね受けとストッパは、キャップ3の内周に着脱可能に装着されるものであればよく、スナップリング33,34に限定されるものではない。
【0046】
さらに、本実施の形態のフロントフォークFFでは、コネクタCがソレノイド(電気機器)Sに電気的に接続される端子6を収容するコネクタ本体8と、コネクタ本体8を保持する保持部材9とを備えて構成されている。このように構成されたフロントフォークFFでは、端子6を収容するコネクタ本体8をキャップ3に直に固定される保持部材9で保持するので、異なる形状のコネクタ本体8にも対応してコネクタCをキャップ3に固定できる。
【0047】
また、本実施の形態のフロントフォークFFでは、保持部材9は、コネクタ本体8がインサートされて成形されるモールド樹脂で形成されている。このように構成されたフロントフォークFFでは、端子6と一体化されたコネクタ本体8を保持部材9を形成する型内にインサートして型内に保持部材9となるモールド樹脂を注入するインサート成型でコネクタCを製造でき、コネクタCを容易に製造できる。
【0048】
なお、本実施の形態のフロントフォークFFでは、電気機器をソレノイドSとしているが、電気機器はソレノイドSのみに限られず、ダンパDが電気粘性流体や磁気粘性流体を利用したダンパであって粘度を変化させるのにコイルを利用する場合には電気機器をコイルとしてもよい。また、電気機器は、フロントフォークFF内のダンパDの減衰力を調節するために用いられるもの以外にも、ダンパD内の圧力の検知やフォーク本体Fの伸縮変位の検知を行うためのセンサ類であってもよい。つまり、本発明は、シリンダ4内に電気機器が収容されるフロントフォークFFに適用できる。なお、電気機器がシリンダ4に対して変位しても電気機器の少なくとも一部がシリンダ4内に挿入される状態であれば、シリンダ4内に電気機器が収容されるとの定義に合致する。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・車体側チューブ、2・・・車軸側チューブ、3・・・キャップ、4・・・シリンダ、5・・・ピストンロッド(ロッド)、6・・・端子、8・・・コネクタ本体、9・・・保持部材、33・・・スナップリング(ばね受け)、34・・・スナップリング(ストッパ)、35・・・ばね、C・・・コネクタ、F・・・フォーク本体、S・・・ソレノイド(電気機器)