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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20230823BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H01L21/30 502D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019170833
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021047334
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】本野 智大
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正也
(72)【発明者】
【氏名】春本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕二
(72)【発明者】
【氏名】中山 知佐世
(72)【発明者】
【氏名】有澤 洋
(72)【発明者】
【氏名】宮本 周治
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-057640(JP,A)
【文献】特開2009-231661(JP,A)
【文献】特開2018-195686(JP,A)
【文献】特開2005-277242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/26-268、21/30
21/42-21/428、21/477-21/479
21/68
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に露光処理を行う露光装置であって、
基板を収容可能な処理空間を形成するとともに上部開口を有する周壁部材と、
前記上部開口を塞ぎ、真空紫外線を出射可能な出射面を有する光出射部と、
前記光出射部による露光時において、前記光出射部の下方の前記処理空間内で基板を支持する基板支持部とを備え、
前記周壁部材は、不活性ガスを下方から上方へ導く流路と、前記流路と前記処理空間とを連通させる開口部とを有し、
前記開口部は、互いに対向する第1の側面および第2の側面を有し、
前記第1の側面と前記第2の側面との間の距離は、前記流路の下流端部から前記処理空間に向かって漸次増加し、
前記流路の前記下流端部から前記開口部に流出する不活性ガスが衝突する衝突面が設けられ、前記衝突面は、露光時に前記基板支持部に支持される基板よりも上方に位置する、露光装置。
【請求項2】
前記周壁部材は、円筒形状を有する、請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記周壁部材は、前記処理空間の雰囲気を排出する排気部を含む、請求項1または2記載の露光装置。
【請求項4】
前記衝突面は、前記光出射部の下面の一部により構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記衝突面は、前記周壁部材内に設けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記周壁部材には、下部開口が形成され、
前記露光装置は、
前記下部開口を閉塞可能および開放可能に構成された閉塞部材と、
外部と前記基板支持部との間での基板の受け渡し時に前記閉塞部が前記下部開口の下方にある第1の位置に移動し、基板の露光時に前記閉塞部材が前記下部開口を閉塞する第2の位置に移動するように前記閉塞部材を制御する昇降駆動部とをさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項7】
前記基板支持部は、前記閉塞部材の上面に設けられる、請求項6記載の露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空紫外線を用いて基板に露光処理を行う露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に形成された膜を改質させるために、真空紫外線が用いられる場合がある。例えば、特許文献1には、基板上の誘導自己組織化材料を含む膜に真空紫外線を用いて露光処理を行う露光装置が記載されている。
【0003】
その露光装置は、処理室、投光部および閉塞部を備える。処理室は、上部開口および内部空間を有する。投光部は処理室の上部開口を塞ぐように処理室の上方に配置されている。処理室の側面には、処理室の内部と外部との間で基板を搬送するための搬送開口が形成されている。
【0004】
基板の露光処理時には、まず搬送開口が開放され、その搬送開口を通して処理室の内部に基板が搬入される。次に、処理室の内部に基板が配置された状態で、搬送開口が閉塞され、その処理室の内部空間が密閉される。また、基板に照射される真空紫外線が酸素により減衰することを低減するために、処理室内の全体の雰囲気が不活性ガスで置換される。処理室内の酸素濃度が予め定められた濃度まで低減すると、処理室の上部開口を通して基板に真空紫外線が照射される。これにより、基板上の膜が改質される。その後、搬送開口が再度開放され、露光後の基板が処理室の外部に搬出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-159828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、特許文献1に記載された露光装置においては、低酸素雰囲気で露光処理が行われる。そこで、露光が行われる処理室全体の雰囲気は、不活性ガスにより置換される。しかしながら、不活性ガスが均一に置換されるまで長時間を要することがある。不活性ガスの置換が不均一であると、露光処理の精度が低下する。また、不活性ガスの置換に要する時間が長期化すると、露光処理の効率が低下する。
【0007】
本発明の目的は、露光処理の精度および効率を向上させることが可能な露光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る露光装置は、基板に露光処理を行う露光装置であって、基板を収容可能な処理空間を形成するとともに上部開口を有する周壁部材と、上部開口を塞ぎ、真空紫外線を出射可能な出射面を有する光出射部と、光出射部による露光時において、光出射部の下方の処理空間内で基板を支持する基板支持部とを備え、周壁部材は、不活性ガスを下方から上方へ導く流路と、流路と処理空間とを連通させる開口部とを有し、開口部は、互いに対向する第1の側面および第2の側面を有し、第1の側面と第2の側面との間の距離は、流路の下流端部から処理空間に向かって漸次増加し、流路の下流端部から開口部に流出する不活性ガスが衝突する衝突面が設けられ、衝突面は、露光時に基板支持部に支持される基板よりも上方に位置する。
【0009】
上記の構成によれば、不活性ガスは、周壁部材内に形成された流路を通って、下流端部に到達する。下流端部から開口部に供給された不活性ガスは、基板よりも上方の衝突面と衝突した後、第1の側面および第2の側面に沿って処理空間内に流入する。この場合、光出射部と基板との間の雰囲気を均一に置換することができる。また、処理空間内全体の雰囲気を置換する必要がない。したがって、置換に要する時間を短縮することができる。これらの結果、露光処理の効率化および高精度化が可能となる。
【0010】
(2)周壁部材は、円筒形状を有してもよい。この場合、円筒形状の周壁部材により形成される処理空間には気体が滞留するような隅部が存在しない。そのため、処理空間内の雰囲気を不活性ガスにより置換する際には、周壁部材の内周面に沿って円滑な気体の流れが形成される。それにより、置換に要する時間をより短縮するとともに置換に使用する不活性ガスを抑制することができる。
【0011】
(3)周壁部材は、処理空間の雰囲気を排出する排気部を含んでもよい。この場合、処理空間の雰囲気が排気部により排出されることにより、処理室内において不活性ガスの流れをより容易に形成することができる。したがって、処理空間の基板上の雰囲気の均一な置換に要する時間をより短縮することができる。
【0012】
(4)衝突面は、光出射部の下面の一部により構成される。この場合、周壁部材の上部開口を塞ぐ光出射部の下面の一部を衝突面とすることにより、衝突面を別途設ける必要がない。したがって、露光装置の製造コストを抑制することができる。
【0013】
(5)衝突面は、周壁部材内に設けられてもよい。この場合、周壁部材の一部を衝突面とすることにより、衝突面を別途設ける必要がない。したがって、露光装置の製造コストを抑制することができる。
【0014】
(6)周壁部材には、下部開口が形成され、露光装置は、下部開口を閉塞可能および開放可能に構成された閉塞部材と、外部と基板支持部との間での基板の受け渡し時に閉塞部が下部開口の下方にある第1の位置に移動し、基板の露光時に閉塞部材が下部開口を閉塞する第2の位置に移動するように閉塞部材を制御する昇降駆動部とをさらに備えてもよい。
【0015】
この場合、閉塞部材は、基板の受け渡し時に処理空間下方の第1の位置に移動する。これにより、外部と基板支持部との間で基板を容易に受け渡すことができる。また、基板の露光時には、閉塞部材が第1の位置の上方の第2の位置に移動する。これにより、下部開口を容易に閉塞することができる。
【0016】
(7)基板支持部は、閉塞部材の上面に設けられてもよい。この場合、基板支持部は、閉塞部材とともに上下方向に移動する。これにより、処理空間下方で露光装置の外部から基板支持部に基板を容易に載置することができる。また、基板の露光時には、基板支持部が上方に移動することにより、基板が光出射部に近接する。これにより、基板の露光処理の効率をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、露光処理の精度および効率を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る露光装置の構成を示す模式的断面図である。
図2図1の露光装置のうち一部の構成要素の動作を説明するための斜視図である。
図3図1の周壁部材の模式的平面図である。
図4図3の第1の気体流路の構成を示す拡大斜視図である。
図5図3の第2の気体流路の構成を示す拡大斜視図である。
図6】露光処理時における露光装置の基本動作を説明するための模式的側面図である。
図7】露光処理時における露光装置の基本動作を説明するための模式的側面図である。
図8】露光処理時における露光装置の基本動作を説明するための模式的側面図である。
図9】露光処理時における露光装置の基本動作を説明するための模式的側面図である。
図10】露光処理時における露光装置の基本動作を説明するための模式的側面図である。
図11】露光処理時における露光装置の基本動作を説明するための模式的側面図である。
図12図1の制御部により行われる一連の処理を示すフローチャートである。
図13図1の制御部により行われる一連の処理を示すフローチャートである。
図14】比較例のシミュレーションに用いた露光装置の一部の構成要素を示す模式的平面図である
図15】実施例1、実施例2および比較例1の比較結果を示す図である。
図16図1の露光装置を備える基板処理装置の一例を示す模式的ブロック図である。
図17】他の実施の形態に係る露光装置の構成を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る露光装置について図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、基板とは、液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等に用いられるFPD(Flat Panel Display)用基板、半導体基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。なお、以下に説明する基板は、少なくとも一部が円形状を有する基板であり、例えばノッチまたはオリエンテーションフラットが形成された円形基板である。また、基板の主面には、真空紫外線により改質される膜が形成されているものとする。
【0020】
さらに、以下に説明する露光装置においては、基板の主面が上方に向けられかつ基板の裏面(主面とは反対側の面)が下方に向けられた状態で、その基板の主面に上方から約120nm以上約230nm以下の波長を有する紫外線(以下、真空紫外線と呼ぶ。)が照射される。したがって、以下の説明において、基板の上面は基板の主面であり、基板の下面は基板の裏面である。
【0021】
[1]露光装置の構成
図1は本発明の実施の形態に係る露光装置の構成を示す模式的断面図であり、図2図1の露光装置100のうち一部の構成要素の動作を説明するための斜視図である。図1に示すように、露光装置100は、光出射部10、周壁部材20、下蓋部材30、基板支持機構40、気体供給系51、気体排出系52、昇降駆動部53および制御部60を含む。
【0022】
その露光装置100においては、基板Wに露光処理を行うための処理空間20Sが周壁部材20により形成される。具体的には、周壁部材20は、扁平な円筒形状を有する。周壁部材20の内周面により取り囲まれる空間が処理空間20Sとして用いられる。また、周壁部材20は、円環状の平坦な上端面23および下端面24を有する。上端面23の内側には上部開口21が形成され、下端面24の内側には下部開口22が形成されている。
【0023】
周壁部材20の上部開口21を塞ぐように周壁部材20の上方に光出射部10が設けられている。光出射部10は、ハウジング11、透光板13、面状の光源部14および電源装置15を含む。
【0024】
ハウジング11は、底壁部11a、角筒形状の周壁部11bおよび天井部11cを有する。底壁部11a、周壁部11bおよび天井部11cにより内部空間10Sが形成される。なお、図2では、光出射部10のうちハウジング11のみが一点鎖線で示される。
【0025】
図1に示すように、ハウジング11の底壁部11aには、下部開口12が形成されている。下部開口12は、例えば円形状を有する。下部開口12の内径は、周壁部材20の内径よりもやや小さい。透光板13は、下部開口12を閉塞するように底壁部11aに取り付けられている。本実施の形態では、透光板13は石英ガラス板である。透光板13の材料として、真空紫外線を透過する他の材料が用いられてもよい。
【0026】
光源部14および電源装置15は、ハウジング11の内部空間10Sに収容される。光源部14は、真空紫外線を出射する複数の棒形状の光源素子LEが所定間隔で水平に配列された構成を有する。各光源素子LEは、例えばキセノンエキシマランプであってもよいし、他のエキシマランプまたは重水素ランプ等であってもよい。電源装置15は、光源部14に電力を供給する。
【0027】
底壁部11aの下面には、透光板13の下面が出射面13Sとして処理空間20Sに向くように、周壁部材20の上端面23が接続されている。このような構成により、光源部14から発生される真空紫外線は、出射面13Sを通して処理空間20S内に出射される。
【0028】
下蓋部材30は、周壁部材20の下方で上下方向に移動可能に設けられている。また、下蓋部材30は、上下方向の移動により下部開口22を閉塞可能および開放可能に構成されている。以下、下蓋部材30が下部開口22を閉塞する位置を蓋閉塞位置と呼び、下蓋部材30が下部開口22を開放する位置を蓋開放位置と呼ぶ。昇降駆動部53は、例えばステッピングモータを含み、図2に太い点線の矢印で示すように、蓋閉塞位置と蓋開放位置との間で下蓋部材30を上下方向に移動させる。
【0029】
下蓋部材30は、光出射部10の出射面13Sに対向する平坦な上面31を有する。下蓋部材30の上面31には、図1に示すように、シール部材39が取り付けられている。下蓋部材30が蓋閉塞位置にある状態においては、シール部材39が周壁部材20の下端面24のうち下部開口22を取り囲む部分に密着する。シール部材39は、例えばOリングからなる。
【0030】
また、下蓋部材30の上面31には、基板Wの下面を支持可能に構成された複数(本例では3つ)の支持部材38が取り付けられている。各支持部材38は、球状のプロキシミティボールであり、例えばセラミックで形成される。
【0031】
さらに、下蓋部材30の中央部には、後述する複数の支持ピン41にそれぞれ対応する複数の貫通孔32が形成されている。また、下蓋部材30の下面における複数の貫通孔32の形成部分には、一定距離下方に延びるように複数の収容管33が設けられている。各収容管33は、貫通孔32の内径と同じ内径を有する。収容管33の下端部には、その収容管33の内周面からその軸心に向かうように形成された内向きフランジが形成されている。
【0032】
基板支持機構40は、複数(本例では3つ)の支持ピン41およびピン連結部材42を含む。各支持ピン41は、先端部材41aおよび支持軸41bを含む。複数の支持軸41bは、それぞれ上下方向に延びるように設けられ、下蓋部材30の複数の貫通孔32および複数の収容管33にそれぞれ挿入されている。ピン連結部材42は、複数の支持軸41bの下端部を連結するとともに露光装置100の図示しないベース部分に固定されている。複数の先端部材41aは、複数の支持軸41bの上端部にそれぞれ設けられ、例えばセラミックまたは樹脂で形成される。
【0033】
下蓋部材30が蓋開放位置にある場合、複数の先端部材41a(複数の支持ピン41の上端部)は、下蓋部材30に取り付けられた複数の支持部材38の上端よりも上方に位置する。それにより、図1に示すように、複数の先端部材41a上に処理対象の基板Wが支持される。このとき、基板Wの上面は光出射部10の出射面13Sに対向する。
【0034】
下蓋部材30が蓋開放位置から蓋閉塞位置に向けて上方に移動すると、基板支持機構40の複数の先端部材41aは、下蓋部材30の複数の貫通孔32を通して収容管33の内部に収容される。そのため、下蓋部材30が蓋閉塞位置にある場合、複数の先端部材41a(複数の支持ピン41の上端部)は、下蓋部材30に取り付けられた複数の支持部材38の上端よりも下方に位置する。それにより、複数の先端部材41a上に支持された基板Wは、複数の支持部材38に渡される。
【0035】
ここで、基板支持機構40の各先端部材41aには、支持軸41bの直径よりも大きい直径を有する外向きフランジが形成されている。一方、複数の収容管33の各々の下端部に形成された内向きフランジの上面部分には、先端部材41aの外向きフランジの下面に接触可能なシール部材(図示せず)が設けられている。これらのシール部材は、例えばOリングからなる。また、各シール部材は、下蓋部材30が蓋閉塞位置にあるときに、処理空間20S、貫通孔32の内部空間および収容管33の内部空間と処理空間20Sの外部との間の気体の流れを遮断する。それにより、処理空間20Sが密閉される。
【0036】
図1の気体供給系51は、配管51a、不活性ガス供給源(図示せず)およびバルブ(図示せず)等を含む。また、気体排出系52は、配管52a、バルブ(図示せず)および排気設備(図示せず)等を含む。
【0037】
周壁部材20の内部には、周壁部材20の外部と処理空間20Sを連通する第1の気体流路25および第2の気体流路26が形成されている。周壁部材20の詳細については後述する。
【0038】
第1の気体流路25には、気体供給系51から延びる配管51aが接続されている。第2の気体流路26には、気体排出系52から延びる配管52aが接続されている。
【0039】
気体供給系51は、図示しない不活性ガス供給源から配管51aおよび第1の気体流路25を通して処理空間20Sに不活性ガスを供給する。本実施の形態では、不活性ガスとして窒素ガスが用いられる。気体排出系52は、周壁部材20の処理空間20Sの雰囲気を第2の気体流路26および配管52aを通して周壁部材20の外部に排出する。
【0040】
配管52aには、酸素濃度計52bが設けられる。酸素濃度計52bは、配管52aを流れる気体の酸素濃度を処理空間20S内の酸素濃度として計測し、計測された酸素濃度を所定周期で制御部60に与える。酸素濃度計52bは、例えばガルバニ電池式酸素センサまたはジルコニア式酸素センサである。
【0041】
制御部60は、例えばCPU(中央演算処理装置)およびメモリにより構成される。制御部60のメモリには、各種制御プログラムが記憶されている。制御部60のCPUがメモリに記憶された制御プログラムを実行することにより、図1に一点鎖線の矢印で示すように、露光装置100内の各構成要素の動作が制御される。
【0042】
[2]周壁部材20の構成
図3は、図1の周壁部材20の模式的平面図である。図3では、光出射部10のハウジング11の外形および下部開口12が一点鎖線で示される。また、図3では、処理空間20S内に収容される基板Wと周壁部材20との間の位置および大きさの関係が理解しやすいように、基板Wにドットパターンが付され、周壁部材20にハッチングが付されている。
【0043】
図3に示すように、露光処理が行われる際には、処理空間20S内の略中央部に位置するように、基板Wが基板支持機構40(図1)により支持される。この状態で、周壁部材20の内周面は、基板Wの外周端部に対向する。また、基板Wの外周端部と周壁部材20の内周面との間の距離は、略一定に保持される。
【0044】
また、図3では、下蓋部材30に形成される3つの貫通孔32と、下蓋部材30に取り付けられる3つの支持部材38とが、点線で示される。3つの貫通孔32は、平面視で下蓋部材30の中心30Cを基準とする仮想円cr1上で等間隔に形成されている。一方、3つの支持部材38は、平面視で下蓋部材30の中心30Cを基準とする仮想円cr2上で等間隔に形成されている。ここで、仮想円cr2は、仮想円cr1よりも大きく、基板Wの直径の1/2程度の大きさを有する。それにより、3つの支持部材38により基板Wが支持される際には、3つの貫通孔32により基板Wが支持される場合に比べて、基板Wの支持の安定性が向上する。
【0045】
ここで、露光装置100による露光対象となる基板Wの直径D1が300mmである場合、周壁部材20の内径D2は、例えば300mmよりも大きく400mm以下であり、300mmよりも大きく350mm以下であることが好ましく、300mmよりも大きく320mm以下であることがより好ましい。本例の周壁部材20の内径D2は、310mmである。
【0046】
また、周壁部材20の高さは、例えば5mmよりも大きく50mm以下であり、5mmよりも大きく20mm以下であることが好ましい。本例の周壁部材20の高さは、10mmである。周壁部材20の後述する第1の側面27a、第2の側面27b、第3の側面28aおよび第4の側面28bの高さは、例えば1mmよりも大きく10mm以下であり、1mmよりも大きく5mm以下であることが好ましい。本例の周壁部材20の第1の側面27a、第2の側面27b、第3の側面28aおよび第4の側面28bの高さは、2mmである。
【0047】
上記のように、周壁部材20の内部に第1の気体流路25および第2の気体流路26が形成されている。図4は、図3の第1の気体流路25の構成を示す拡大斜視図である。図4に示すように、第1の気体流路25は、上流流路部25Aおよび下流流路部25Bを含み、断面L字状を有する。
【0048】
具体的には、上流流路部25Aは、周壁部材20の外側面の下部から内方に水平に延びる。下流流路部25Bは、上流流路部25Aの内方の端部から周壁部材20の上端面23まで上方に垂直に延びる。上流流路部25Aの外方の端部が第1の気体流路25の上流端部25aとなる。下流流路部25Bの上方の端部が第1の気体流路25の下流端部25bとなる。
【0049】
第1の気体流路25の上流端部25aに配管51aが接続される。この場合、配管51aから第1の気体流路25の上流端部25aに供給された不活性ガスが、上流流路部25A内で外方から内方に水平に導かれる。その後、不活性ガスは、下流流路部25B内で下方から上方に供給され、第1の気体流路25の下流端部25bから上方に噴出される。
【0050】
周壁部材20の上端面23には、第1の気体流路25と処理空間20Sとを連通させる有底の第1の開口部27が形成される。具体的には、第1の開口部27は、第1の気体流路25の下流端部25bの上方の空間を挟んで互いに対向する第1の側面27aおよび第2の側面27bを有する。第1の側面27aと第2の側面27bとの間の距離は、第1の気体流路25の下流端部25bから処理空間20Sに向かって漸次増加する。本例において、第1および第2の側面27a,27bは平面状に形成されるが、実施の形態はこれに限定されない。第1および第2の側面27a,27bは、例えば曲面状に形成されてもよい。
【0051】
第1の気体流路25の下流端部25bの上方には、第1の開口部27に噴出された不活性ガスが衝突する衝突面29が設けられる。衝突面29は、露光時に複数の支持部材38に支持される基板Wの上面よりも上方に位置する。本例では、図1の光出射部10のハウジング11の底壁部11aが衝突面29として用いられる。
【0052】
第1の気体流路25の下流端部25bから噴出された不活性ガスは、衝突面29に衝突するとともに、第1の開口部27の第1および第2の側面27a,27bに導かれて処理空間20Sに供給される。この場合、図3に矢印で示すように、不活性ガスが水平面内で広がるように処理空間20S内で拡散する。これにより、処理空間20Sにおける光出射部10と基板Wとの間の空間に、短時間でかつ均一に不活性ガスを供給することができる。
【0053】
図5は、図3の第2の気体流路26の構成を示す拡大斜視図である。図5に示すように、周壁部材20の上端面23には、第2の気体流路26と処理空間20Sとを連通させる有底の第2の開口部28が形成される。本例では、第1の開口部27および第2の開口部28は、処理空間20Sを挟んで互いに対向する(図3参照)。
【0054】
第2の開口部28は、第2の気体流路26の上流端部26aの上方の空間を挟んで互いに対向する第3の側面28aおよび第4の側面28bを有する。第3の側面28aと第4の側面28bとの間の距離は、処理空間20Sから第2の気体流路26の下流端部25bに向かって漸次減少する。本例において、第3および第4の側面28a,28bは平面状に形成されるが、実施の形態はこれに限定されない。第3および第4の側面28a,28bは、例えば曲面状に形成されてもよい。
【0055】
また、第2の気体流路26の上流端部26aの上方には、図1の光出射部10のハウジング11の底壁部11aが位置する。図1の気体排出系52が動作することにより、処理空間20Sの雰囲気がハウジング11の底壁部11aならびに第2の開口部28の第3および第4の側面28a,28bに沿って上流端部26aから第2の気体流路26内に導かれる。
【0056】
第2の気体流路26は、上流流路部26Aおよび下流流路部26Bを含み、断面L字状を有する。具体的には、上流流路部26Aは、周壁部材20の上端面23から下方に垂直に延びる。下流流路部26Bは、上流流路部26Aの下方の端部から周壁部材20の外側面に水平に延びる。上流流路部26Aの上方の端部が第2の気体流路26の上流端部26aとなる。下流流路部26Bの外方の端部が第2の気体流路26の下流端部26bとなる。
【0057】
第2の気体流路26の下流端部26bに配管52aが接続される。この場合、第2の開口部28からの不活性ガスが、上流流路部26A内で上方の上流端部26aから下方に導かれる。その後、不活性ガスは、下流流路部26B内で内方から外方に水平に導かれ、配管52aに排出される。これにより、処理空間20S内において不活性ガスの流れをより容易に形成することができる。したがって、処理空間20Sの基板W上の雰囲気の均一な置換に要する時間を短縮することができる。
【0058】
[3]露光処理時における露光装置100の基本動作
上記のように、本実施の形態に係る露光装置100においては、処理対象となる基板Wに例えば172nmの波長を有する真空紫外線が照射されることにより露光処理が行われる。ここで、基板Wに向かう真空紫外線の経路上に多量の酸素が存在すると、酸素分子が真空紫外線を吸収して酸素原子に分離するとともに、分離した酸素原子が他の酸素分子と再結合することによりオゾンが発生する。この場合、基板Wに到達する真空紫外線が減衰する。真空紫外線の減衰は、約230nmよりも長い波長の紫外線の減衰に比べて大きい。そこで、本実施の形態に係る露光装置100においては、基板Wの上方の酸素濃度が低く維持された処理空間20S内で基板Wに真空紫外線が照射される。以下、露光処理時における露光装置100の基本動作について説明する。
【0059】
図6図11は、露光処理時における露光装置100の基本動作を説明するための模式的側面図である。図6図11では、蓋開放位置pa1および蓋閉塞位置pa2がそれぞれ下蓋部材30の上面31(図1)の高さ位置で示される。
【0060】
露光装置100に電源が投入される前の初期状態において、下蓋部材30は蓋閉塞位置pa2にあるものとする。露光装置100の電源がオン状態になると、図6に白抜きの矢印a1で示すように、下蓋部材30が蓋開放位置pa1に移動する。
【0061】
次に、基板支持機構40の複数の先端部材41aが周壁部材20よりも下方に位置する状態で、露光装置100の外部から露光装置100の内部に基板Wが搬入される。この場合、図7に白抜きの矢印a2で示すように、図示しない搬送装置により搬送される基板Wが、露光装置100の側方から周壁部材20と複数の先端部材41aとの間の空間に挿入され、複数の先端部材41a上に載置される。この状態で、基板Wの上面は、処理空間20Sを挟んで光出射部10の出射面13Sに対向する。上記の搬送装置は、例えば後述する図16の搬送装置220である。
【0062】
次に、図8に白抜きの矢印a3で示すように、下蓋部材30が蓋閉塞位置pa2に移動する。これにより、基板Wが処理空間20S内に収容された状態で、周壁部材20の下部開口22が下蓋部材30により閉塞される。また、処理空間20S内で、基板Wが複数の支持部材38により支持される。さらに、下蓋部材30に設けられた複数の収容管33の下端部が複数の先端部材41aおよび図示しないシール部材により閉塞される。それにより、処理空間20Sが密閉される。
【0063】
この状態で、図8に太い一点鎖線の矢印で示すように、不活性ガスが図1の気体供給系51から不活性ガスが第1の気体流路25を通して第1の開口部27に供給される。そこで、第1の気体流路25の下流端部25bから噴出した不活性ガスは、衝突面29に衝突する。衝突面29への衝突により、不活性ガスの流れる方向は、垂直方向から水平方向に変換される。その後、不活性ガスは、図3の第1の開口部27の第1の側面27aおよび第2の側面27bに沿いかつ衝突面29に沿って処理空間20S内に供給される。
【0064】
また、処理空間20S内の雰囲気が第2の開口部28および第2の気体流路26を通して図1の気体排出系52により露光装置100の外部に排出される。それにより、処理空間20S内の雰囲気が漸次不活性ガスに置換され、処理空間20S内の酸素濃度が低下する。
【0065】
その後、処理空間20S内の酸素濃度が予め定められた濃度(以下、目標酸素濃度と呼ぶ。)まで低下すると、図9に太い実線の矢印で示すように、光出射部10の光源部14から出射面13Sを通して基板Wの上面に真空紫外線が照射される。ここで、目標酸素濃度は、露光処理後で周壁部材20の下部開口22が開放される際に、周壁部材20の近傍におけるオゾンの濃度が予め許容された濃度(0.1ppm)以下となるように設定され、例えば1%である。処理空間20S内の酸素濃度が目標酸素濃度まで低下したか否かは、例えば図1の酸素濃度計52bから出力される信号に基づいて判定することができる。なお、基板Wに真空紫外線が照射される間、不活性ガスによる処理空間20S内の雰囲気の置換動作は継続して行われてもよいし、停止されてもよい。
【0066】
基板Wに照射される真空紫外線の露光量(基板上の単位面積当たりに照射される真空紫外線のエネルギー)が予め定められた設定露光量に到達すると、基板Wの上面に対する真空紫外線の照射が停止される。このようにして基板Wの上面が露光されることにより、基板Wに形成された膜が所定の露光条件に従って改質される。
【0067】
ここで、目標酸素濃度の環境下で基板Wに照射される真空紫外線の照度(基板上の単位面積当たりに照射される真空紫外線の仕事率)は既知であるものとする。この場合、基板Wに照射される真空紫外線の露光量は、真空紫外線の照度と真空紫外線の照射時間とに基づいて定まる。本実施の形態では、基板Wに照射される真空紫外線の露光量が予め定められた設定露光量に到達したか否かは、真空紫外線の照射が開始されてから設定露光量に対応する時間(露光時間)が経過したか否かに基づいて判定される。
【0068】
基板Wの上面に対する真空紫外線の照射が停止された後、図10に白抜きの矢印a4で示すように、下蓋部材30が蓋開放位置pa1に移動する。これにより、周壁部材20の下部開口22が開放され、基板Wが複数の先端部材41a上に支持された状態で処理空間20Sの下方に取り出される。
【0069】
最後に、図11に白抜きの矢印a5で示すように、複数の先端部材41a上に支持された基板Wが、図示しない搬送装置により受け取られ、露光装置100の側方に搬出される。上記の搬送装置は、例えば後述する図16の搬送装置220である。
【0070】
[4]露光処理時に制御部60により行われる一連の処理
図12および図13は、図1の制御部60により行われる一連の処理を示すフローチャートである。図12および図13に示される一連の処理は、例えば露光装置100の電源がオフ状態からオン状態に切り替わることにより開始される。まず、制御部60は、図1の昇降駆動部53を制御することにより、下蓋部材30を蓋開放位置pa1に移動させる(ステップS1)。
【0071】
次に、制御部60は、基板Wが複数の先端部材41a上に載置されたか否かを判定する(ステップS2)。この判定は、例えば露光装置100内に基板支持機構40上の基板Wの有無を検出するセンサ(例えば光電センサ等)を設け、そのセンサからの出力に基づいて行われてもよい。あるいは、露光装置100の外部の制御装置(例えば、後述する図16の制御装置210)からの指令信号に基づいて行われてもよい。
【0072】
複数の先端部材41a上に基板Wが載置されない場合、制御部60は、基板Wが複数の支持ピン41の先端部材41aに載置されるまでステップS2の処理を繰り返す。一方、複数の先端部材41a上に基板Wが載置されると、制御部60は、図1の昇降駆動部53を制御することにより、下蓋部材30を蓋閉塞位置pa2に移動させる(ステップS3)。
【0073】
次に、制御部60は、図1の気体排出系52を制御することにより周壁部材20の処理空間20S内の雰囲気を排出させる(ステップS4)。また、制御部60は、図1の気体供給系51を制御することにより周壁部材20の処理空間20S内に不活性ガスを供給させる(ステップS5)。ステップS4,S5の処理は、いずれか一方の処理が先に行われてもよいし、同時に行われてもよい。
【0074】
次に、制御部60は、図1の酸素濃度計52bにより計測される酸素濃度に基づいて、処理空間20Sの酸素濃度が目標酸素濃度まで低下したか否かを判定する(ステップS6)。
【0075】
処理空間20Sの酸素濃度が目標酸素濃度まで低下しない場合、制御部60は、処理空間20Sの酸素濃度が目標酸素濃度に到達するまでステップS6の処理を繰り返す。一方、処理空間20Sの酸素濃度が目標酸素濃度まで低下すると、制御部60は、図1の光出射部10を制御することにより、光源部14から処理空間20S内の基板Wに向けて真空紫外線を出射させる(ステップS7)。これにより、真空紫外線が基板Wに照射され、基板Wに形成された膜が改質する。
【0076】
次に、制御部60は、光源部14が真空紫外線の出射を開始した時点から上記の露光時間が経過したか否かを判定する(ステップS8)。露光時間が経過していない場合、制御部60は、露光時間が経過するまでステップS8の処理を繰り返す。一方、露光時間が経過すると、制御部60は、光出射部10における真空紫外線の出射を停止させる(ステップS9)。
【0077】
次に、制御部60は、図1の気体排出系52を制御することにより処理空間20S内の雰囲気の排出を停止させる(ステップS10)。また、制御部60は、図1の気体供給系51を制御することにより処理空間20S内への不活性ガスの供給を停止させる(ステップS11)。ステップS9,S10,S11の処理は、いずれか一部の処理が先に行われてもよいし、全ての処理が同時に行われてもよい。
【0078】
次に、制御部60は、図1の昇降駆動部53を制御することにより、下蓋部材30を蓋開放位置pa1に移動させる(ステップS12)。その後、制御部60は、基板Wが複数の先端部材41a上から搬送されたか否かを判定する(ステップS13)。この判定は、ステップS2の処理と同様に、例えば露光装置100内に基板支持機構40上の基板Wの有無を検出するセンサ(例えば光電センサ等)を設け、そのセンサからの出力に基づいて行われてもよい。あるいは、露光装置100の外部の制御装置(例えば、後述する図16の制御装置210)からの指令信号に基づいて行われてもよい。基板Wが搬送されない場合、制御部60は、基板Wが搬送されるまでステップS13の処理を繰り返す。一方、制御部60は、基板Wが搬送されると、上記のステップS2の処理に戻る。
【0079】
[5]実施例および比較例
実施例1および実施例2では、上記の実施の形態の周壁部材20を用いて、処理空間20S内の雰囲気を窒素ガスに均一に置換するシミュレーションが行われた。比較例1では、図14に示す周壁部材20Aを用いて、処理空間20S内の雰囲気を窒素ガスに均一に置換するシミュレーションが行われた。シミュレーションにおいては、窒素ガスの流量、窒素ガスの供給時間および置換後の酸素濃度が比較された。なお、窒素ガスの供給および排出は同時に行なわれており、窒素ガスの供給量および処理空間20S内の雰囲気の排出量は等しい。
【0080】
図14は、比較例における周壁部材20Aの構成要素を示す模式的平面図である。図14に示すように、比較例の周壁部材20Aは、第1の開口部27および第2の開口部28を含まない。また、第1および第2の気体流路25,26に代えて、第3および第4の気体流路25C,26Cがそれぞれ設けられる。なお、周壁部材20Aの厚さ、高さおよび内径D2は、実施例1および実施例2の周壁部材20の厚さ、高さおよび内径D2とそれぞれ同じである。
【0081】
第3および第4の気体流路25C,26Cは、周壁部材20Aの外周面から内周面にかけて形成された貫通孔であり、周壁部材20Aの外部と処理空間20Sとを連通する。また、第3および第4の気体流路25C,26Cは、処理空間20Sを挟んで互いに対向する。第3の気体流路25Cにより処理空間20S内に窒素ガスが供給され、第4の気体流路26Cにより処理空間20S内の雰囲気が排出される。
【0082】
図15は、実施例1、実施例2および比較例1の比較結果を示す図である。図15に示すように、実施例1では、供給される窒素ガスの流量が10L/minのとき、19秒経過後に処理空間20Sの酸素濃度は1%以下となった。実施例2では、供給される窒素ガスの流量が13L/minのとき、13秒経過後に処理空間20Sの酸素濃度は1%以下となった。一方、比較例1では、供給される窒素ガスの流量が9L/minのとき、20秒経過後に処理空間20Sの酸素濃度は6%となった。
【0083】
実施例1、実施例2および比較例1の比較結果から、上記の実施の形態の周壁部材20を用いることにより、均一な置換に要する時間を短縮しつつ酸素濃度を十分に低くすることが可能であることが確認された。
【0084】
[6]効果
(1)上記の露光装置100においては、不活性ガスは周壁部材20に形成された第1の気体流路25を通って、下流端部25bに到達する。下流端部25bから第1の開口部27に供給された不活性ガスは、基板Wよりも上方の衝突面29と衝突した後、第1の側面27aおよび第2の側面27bに沿って処理空間20S内に流入する。この場合、出射面13Sと基板Wとの間の雰囲気を均一に置換することができる。また、処理空間20S内全体の雰囲気を置換する必要がない。したがって、置換に要する時間を短縮することができる。これらの結果、露光処理の効率化および高精度化が可能となる。
【0085】
(2)上記の露光装置100においては、周壁部材20は、円筒形状を有する。この場合、円筒形状の周壁部材20により形成される処理空間20S内には気体が滞留するような隅部が存在しない。そのため、処理空間20S内の雰囲気を不活性ガスにより置換する際には、周壁部材20の内周面に沿って円滑な気体の流れが形成される。それにより、置換に要する時間を短縮するとともに置換に使用する不活性ガスを抑制することができる。
【0086】
(3)上記の露光装置100においては、周壁部材20が処理空間20S内の雰囲気を排出する第2の気体流路26を有する。この場合、処理空間20Sの雰囲気が気体排出系52により排出されることにより、処理空間20S内において不活性ガスの流れをより容易に形成することができる。したがって、処理空間20Sの基板W上の雰囲気の均一な置換に要する時間を短縮することができる。
【0087】
(4)上記のように、周壁部材20の上部開口21を塞ぐ光出射部10の下面の一部である底壁部11aを衝突面29とすることにより、衝突面29を別途設ける必要がない。したがって、露光装置の製造コストを抑制することができる。
【0088】
(5)上記の露光装置100においては、下蓋部材30は、処理空間20Sへの基板Wの搬入および搬出時に処理空間20S下方の蓋開放位置pa1に移動する。これにより、露光装置100の外部と基板支持機構40の先端部材41aとの間で基板Wを容易に受け渡すことができる。また、基板Wの露光時には、下蓋部材30が上方の蓋閉塞位置pa2に移動する。これにより、下部開口22を容易に閉塞することができる。
【0089】
(6)上記の露光装置100においては、複数の支持部材38が下蓋部材30の上面31に設けられる。この場合、複数の支持部材38は、下蓋部材30とともに上下方向に移動する。これにより、処理空間20S下方で露光装置100の外部から複数の支持部材38に基板Wを載置することができる。また、基板Wの露光時には、複数の支持部材38が上方に移動することにより、基板Wが出射面13Sに近接する。これにより、基板Wの露光処理の効率をより向上させることができる。
【0090】
[7]図1の露光装置100を備える基板処理装置
図16は、図1の露光装置100を備える基板処理装置の一例を示す模式的ブロック図である。図16に示すように、基板処理装置200は、露光装置100に加えて、制御装置210、搬送装置220、熱処理装置230、塗布装置240および現像装置250を備える。
【0091】
制御装置210は、例えばCPUおよびメモリ、またはマイクロコンピュータを含み、露光装置100、搬送装置220、熱処理装置230、塗布装置240および現像装置250の動作を制御する。搬送装置220は、基板処理装置200による基板Wの処理時に、基板Wを露光装置100、熱処理装置230、塗布装置240および現像装置250の間で搬送する。
【0092】
熱処理装置230は、塗布装置240による塗布処理および現像装置250による現像処理の前後に基板Wの熱処理を行う。塗布装置240は、所定の処理液を基板Wの上面に塗布することにより、真空紫外線により改質される膜を基板Wの上面に形成する。具体的には、本例の塗布装置240は、基板Wの上面に誘導自己組織化材料を含む処理液を塗布する。この場合、誘導自己組織化材料に生じるミクロ相分離により基板Wの上面上に2種類の重合体のパターンが形成される。
【0093】
露光装置100は、塗布装置240により膜が形成された基板Wの上面に真空紫外線を照射する。それにより、基板W上に形成された2種類の重合体のパターン間の結合が切断される。現像装置250は、露光後の2種類の重合体のパターンのうち一方の重合体を除去するための溶剤を、現像液として基板Wに供給する。それにより、基板W上に他方の重合体からなるパターンが残留する。
【0094】
なお、塗布装置240は、真空紫外線により改質される膜として、誘導自己組織化材料を含む膜に代えてSOC(Spin-On-Carbon)膜が形成されるように、所定の処理液を基板Wの上面に塗布してもよい。この場合、SOC膜が形成された基板Wを真空紫外線を用いて露光することにより、SOC膜を改質することができる。
【0095】
塗布装置240においてSOC膜が形成される場合には、塗布装置240において露光処理後のSOC膜上にさらにレジスト膜が形成されてもよい。この場合、レジスト膜が形成された基板Wが基板処理装置200の外部に設けられる露光装置により露光された後、現像装置250がその露光後の基板Wに現像処理を行ってもよい。
【0096】
上記の露光装置100によれば、単純かつコンパクトな構成で基板Wの清浄度を低下させることなく露光処理の効率を向上させることが可能である。したがって、図15の基板処理装置200によれば、基板Wの処理精度が向上するとともに、基板Wの製造コストを低減することが可能になる。
【0097】
[8]他の実施の形態
(1)上記実施の形態に係る露光装置100においては、処理空間20S内の雰囲気を排出する第2の気体流路26が設けられているが、本発明はこれに限定されない。
【0098】
例えば、第1の気体流路25および第1の流路の下流端部25bに処理空間20Sを挟んで対向した位置に複数の排気口を設けてもよい。この場合、処理空間20Sの雰囲気が複数の排気口により排出されることにより、処理空間20S内において不活性ガスの流れをより容易に形成することができる。したがって、処理空間20Sの基板W上の雰囲気の均一な置換に要する時間を短縮することができる。
【0099】
(2)上記実施の形態に係る露光装置100においては、第1の気体流路25および第2の気体流路26は、断面L字状を有するが、本発明はこれに限定されない。
【0100】
例えば、第1の気体流路25および第2の気体流路26は、周壁部材20の下方から上方に垂直方向に貫通する孔によって形成されてもよい。
【0101】
(3)上記の実施の形態に係る露光装置100においては、第2の開口部28および第2の気体流路26が形成されるが、本発明はこれに限定されない。
【0102】
例えば、図14に示す第4の気体流路26Cのように、周壁部材20の外周面から内周面にかけて形成された貫通孔によって形成されてもよい。
【0103】
(4)上記実施の形態に係る露光装置100においては、周壁部材20の上部開口21を塞ぐ光出射部10の下面の一部である底壁部11aを衝突面29としているが、本発明はこれに限定されない。
【0104】
例えば、第1の開口部27の上面に周壁部材20の一部に形成されてもよい。この場合も、周壁部材20内の一部を衝突面29とすることにより、衝突面29を別途設ける必要がない。したがって、露光装置100の製造コストを抑制することができる。
【0105】
(5)上記実施の形態に係る露光装置100においては、露光処理中に処理空間20S内の酸素濃度が目標酸素濃度まで低下したか否かの判定が酸素濃度計52bの出力に基づいて行われるが、本発明はこれに限定されない。
【0106】
例えば、下部開口22が閉塞された時点から処理空間20S内の酸素濃度が目標酸素濃度に到達するまでに要する時間(以下、濃度到達時間と呼ぶ。)が既知である場合には、上記の判定が濃度到達時間に基づいて行われてもよい。この場合、酸素濃度計52bが不要となり、露光装置100の構成が単純化する。
【0107】
(6)上記実施の形態に係る露光装置100においては、処理空間20Sに収容された基板Wが、下蓋部材30に取り付けられた複数の支持部材38により支持された状態で露光処理が行われるが、本発明はこれに限定されない。下蓋部材30に複数の支持部材38が取り付けられる代わりに、基板支持機構40が上下方向に移動可能に設けられてもよい。図17は、他の実施の形態に係る露光装置100の構成を示す模式的断面図である。図17の露光装置100が図1の露光装置100と異なる点を説明する。
【0108】
図17の露光装置100においては、下蓋部材30に複数の支持部材38(図1)および複数の収容管33(図1)が取り付けられていない。一方、基板支持機構40は、複数の支持ピン41が下蓋部材30の複数の貫通孔32にそれぞれ挿入された状態で、露光装置100のベース部分に対して上下方向に移動可能に設けられている。また、図17の露光装置100は、基板支持機構40を上下方向に移動させるための昇降駆動部54をさらに備える。
【0109】
ここで、複数の支持ピン41の上端部が処理空間20S内に位置するときの基板支持機構40の上下方向の位置を処理位置と呼び、処理位置から一定距離下方の位置を待機位置と呼ぶ。
【0110】
昇降駆動部54は、例えばステッピングモータを含み、処理位置と待機位置との間で基板支持機構40を上下方向に移動させることが可能に構成される。このような構成により、本例では、下蓋部材30が蓋開放位置pa1にありかつ基板支持機構40が待機位置にある状態で、露光装置100の外部から搬入される基板Wが基板支持機構40の複数の先端部材41aにより受け取られる。
【0111】
露光装置100に搬入された基板Wが基板支持機構40により受け取られると、下蓋部材30が蓋閉塞位置pa2に移動するとともに基板支持機構40が処理位置に移動する。それにより、基板Wが処理空間20Sに収容される。複数の先端部材41aにより支持された基板Wに真空紫外線が照射される。
【0112】
基板Wの露光が終了すると、下蓋部材30が蓋開放位置pa1に移動するとともに基板支持機構40が待機位置に移動する。それにより、基板Wが処理空間20Sの下方に取り出される。最後に、複数の先端部材41aにより支持された基板Wが露光装置100の外部に搬出される。
【0113】
上記の構成において、複数の先端部材41aおよび下蓋部材30は、下蓋部材30および基板支持機構40がそれぞれ蓋閉塞位置pa2および処理位置にある場合に、複数の貫通孔32を閉塞可能に構成される。それにより、露光処理時の処理空間20Sの密閉状態が確保される。
【0114】
なお、図17の露光装置100においては、処理空間20Sの密閉状態が確保されるのであれば、基板Wの種類および処理の内容に応じて光出射部10の出射面13Sと基板Wとの間の距離を調整してもよい。この場合、光出射部10の出射面13Sと基板Wとの間の距離をより小さくすることにより、露光時間を短縮することができる。それにより、露光処理の効率を向上させることが可能になる。
【0115】
図17の例では、下蓋部材30および基板支持機構40を駆動するための構成として昇降駆動部53,54が個別に設けられるが、本発明はこれに限定されない。図17の露光装置100には昇降駆動部53,54に代えて、下蓋部材30および基板支持機構40をともに駆動可能に構成された一の昇降駆動部が設けられてもよい。
【0116】
その昇降駆動部は、例えば1つのモータとそのモータの回転軸に設けられる第1のカムおよび第2のカムとを含んでもよい。この場合、第1のカムは、モータにより発生される回転力により下蓋部材30を蓋開放位置pa1および蓋閉塞位置pa2間で昇降させることが可能に構成される。また、第2のカムは、モータにより発生される回転力により基板支持機構40を待機位置および処理位置間で昇降させることが可能に構成される。
【0117】
あるいは、その昇降駆動部は、例えば1つのエアシリンダと棒状の軸部材とを含んでもよい。この場合、軸部材には、下蓋部材30および基板支持機構40が取り付けられる。この構成においては、例えば軸部材の一端部が固定された状態で、エアシリンダが軸部材の他端部を上下方向に移動させる。それにより、下蓋部材30が蓋開放位置pa1および蓋閉塞位置pa2間で昇降し、基板支持機構40が待機位置および処理位置間で昇降する。
【0118】
上記の構成によれば、露光装置100の部品点数が低減されるとともに露光装置100の製造コストの増加を抑制することができる。
【0119】
(7)上記実施の形態に係る露光装置100においては、処理空間20Sを密閉するために基板支持機構40に先端部材41aが設けられるが、本発明はこれに限定されない。例えば、処理空間20Sについて、極めて高い密閉性が要求されない場合には、基板支持機構40に先端部材41aは設けられなくてもよい。
【0120】
[9]請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記実施の形態では、支持部材38が基板支持部の例であり、第1の気体流路25が流路の例であり、気体排出系52が排気部の例であり、光出射部10の底壁部11aが光出射部の下面の一部の例であり、下蓋部材30が閉塞部材の例であり、蓋開放位置pa1が第1の位置の例であり、蓋閉塞位置pa2が第2の位置の例である。
【0121】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【符号の説明】
【0122】
10…光出射部,10S…内部空間,11…ハウジング,11a…底壁部,11b…周壁部,11c…天井部,12,22…下部開口,13…透光板,13S…出射面,14…光源部,15…電源装置,20,20A…周壁部材,20S…処理空間,21…上部開口,23…上端面,24…下端面,25…第1の気体流路,25A,26A…上流流路部,25B,26B…下流流路部,25C…第3の気体流路,25a,26a…上流端部,25b,26b…下流端部,26…第2の気体流路,26C…第4の気体流路,27…第1の開口部,27a…第1の側面,27b…第2の側面,28…第2の開口部,28a…第3の側面,28b…第4の側面,29…衝突面,30…下蓋部材,30C…中心,31…上面,32…貫通孔,33…収容管,38…支持部材,39…シール部材,40…基板支持機構,41…支持ピン,41a…先端部材,41b…支持軸,42…ピン連結部材,51…気体供給系,51a,52a…配管,52…気体排出系,52b…酸素濃度計,53,54…昇降駆動部,60…制御部,100…露光装置,200…基板処理装置,210…制御装置,220…搬送装置,230…熱処理装置,240…塗布装置,250…現像装置,cr1,cr2…仮想円,LE…光源素子,pa1…蓋開放位置,pa2…蓋閉塞位置
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