(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】現像装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20230823BHJP
G03F 7/30 20060101ALI20230823BHJP
B05C 11/08 20060101ALI20230823BHJP
B05B 7/04 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
H01L21/30 569C
H01L21/30 569E
G03F7/30 501
B05C11/08
B05B7/04
(21)【出願番号】P 2019217238
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】西山 耕二
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-326555(JP,A)
【文献】特開平09-106934(JP,A)
【文献】特開2000-232058(JP,A)
【文献】特開2003-163147(JP,A)
【文献】特開2009-027188(JP,A)
【文献】特開2010-010433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B05C 11/08
G03F 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平姿勢で保持する基板保持部と、
水平方向に延び前記基板保持部の上方に位置するノズルアームと、
前記ノズルアームに取り付けられて前記基板保持部の上方に設けられかつ前記基板保持部により保持された基板に現像液を供給する
複数のノズルと、
円環形状の水平断面を有し、上下方向に延びるように形成され、前記ノズルアームを嵌め込み可能な切り欠き部を有し、当該切り欠き部に前記ノズルアームが嵌め込まれた状態で平面視で前記
複数のノズルを取り囲みかつ側面視で前記
複数のノズルの少なくとも一部と重なるように構成されたノズルカバーと、
前記ノズルカバーの下方の位置で前記ノズルカバーから離間するように設けられ、前記基板保持部の少なくとも下部を収容する収容器と、
平面視で前記基板保持部を取り囲むように構成されるとともに、側面視で前記収容器に重なりかつ前記ノズルカバーから離間する第1の状態と側面視で前記ノズルカバーの下端および前記収容器の上端に重なる第2の状態とに移行するように上下方向に昇降可能に構成され
かつ円環形状の水平断面を有し、少なくとも上下方向に延びるカップと、
前記第1の状態と前記第2の状態とに移行するように、前記カップを上下動させる昇降駆動部と、
上部開口を有し、前記基板保持部、前記
複数のノズル、前記ノズルカバー、前記収容器、前記カップを収容する筐体と、
前記筐体の前記上部開口に配置され
かつ空気ガイドに供給された空気をフィルタを通して前記上部開口に導いて、前記筐体内に下降気流を形成する気流形成部とを備え、
前記収容器は、前記筐体内の雰囲気を前記筐体の外部に排出する排気部を有し、
前記カップが前記第2の状態にあるときに、前記ノズルカバー、前記カップおよび前記収容器により取り囲まれる処理空間が形成されるとともに、前記筐体内でかつ前記ノズルカバー、前記カップおよび前記収容器の外部に前記処理空間よりも高い圧力を有する非処理空間が形成される、現像装置。
【請求項2】
前記筐体および前記排気部は、前記カップが前記第2の状態にあるときに前記非処理空間の圧力が前記処理空間の圧力よりも高くなるように構成された、請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記筐体は、前記カップが前記第2の状態にあるときに前記非処理空間を前記筐体の外部から閉塞する閉塞部を有する、請求項1または2記載の現像装置。
【請求項4】
前記カップが前記第2の状態にあるときに、前記カップと前記収容器との間には、前記処理空間と前記非処理空間とを連通させる隙間が形成され、
前記現像装置は、
前記隙間を閉塞するシールをさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記
複数のノズル
の各々は、気体と前記現像液の液滴とを含む混合流体を噴射する二流体ノズルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項6】
前記
複数のノズルから基板に供給される現像液は、露光されたネガ型の感光性ポリイミドを溶解する現像液である、請求項1~5のいずれか一項に記載の現像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の現像処理を行う現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等に用いられるFPD(Flat Panel Display)用基板、半導体基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等の各種基板上に形成された感光性膜の現像処理を行うために、現像装置が用いられる。
【0003】
例えば、現像装置は、基板を水平姿勢で保持しつつ回転させるスピンチャックと、基板上に現像液を供給するノズルと、スピンチャックにより保持される基板を取り囲むように設けられるカップとを備える。現像処理時には、スピンチャックにより回転する基板上にノズルから現像液が供給される。現像処理時に基板上に供給される現像液は、基板の周囲に飛散する。基板の周囲に飛散する現像液の大部分はカップにより受け止められ、回収される。
【0004】
カップの上端は開口している。そのため、現像処理時に基板から飛散する現像液の一部は、カップの上端開口からカップの外部に飛散し、カップおよびその周辺部材に付着する可能性がある。カップおよびその周辺部材に付着する現像液は、現像装置内にパーティクルを発生させる要因となる。
【0005】
現像装置内でのパーティクルの発生を抑制するために、特許文献1に記載された現像装置は、カップの上端開口を閉塞する蓋体を備える。蓋体には、複数の現像液供給ノズルを挿入可能なスリットが形成されている。その現像装置においては、現像処理時に、基板がスピンチャックにより保持された状態でカップの上端開口が蓋体により閉塞される。また、蓋体のスリットに複数の現像液供給ノズルが挿入され、スピンチャックにより回転される基板に現像液が供給される。それにより、複数の現像液供給ノズルから基板への現像液の供給が蓋体およびカップにより閉塞された空間内で行われるので、現像処理時にカップの上方に現像液が飛散することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された現像装置においては、基板に現像液が供給される際に、基板の上方に蓋体が存在する。この場合、蓋体およびカップの内側の空間に下降気流を発生させることはできない。そのため、現像液の種類によっては、基板から飛散する現像液が蓋体の下面に付着する。蓋体に付着した現像液の液滴が基板上に落下すると、基板の現像不良が発生する可能性がある。
【0008】
また、特許文献1に記載された現像装置においては、カップに排気管が設けられている。現像処理時に蓋体により閉塞されたカップ内の雰囲気は、排気管を通して現像装置の外部に排出される。しかしながら、蓋体により閉塞されたカップ内の雰囲気を円滑に排気することは難しく、実際にはカップ内に現像液のミストが残留しやすい。カップ内に現像液のミストが残留した状態で蓋体が開かれると、カップ内に残留した現像液のミストがカップの外部に漏れ出る可能性がある。したがって、強い臭気を有する現像液が用いられる場合には、現像装置周辺の作業環境の快適性が低下する。
【0009】
本発明の目的は、基板の現像不良の発生を抑制しつつ現像装置周辺の作業環境の快適性の低下を抑制可能な現像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る現像装置は、基板を水平姿勢で保持する基板保持部と、水平方向に延び基板保持部の上方に位置するノズルアームと、ノズルアームに取り付けられて基板保持部の上方に設けられかつ基板保持部により保持された基板に現像液を供給する複数のノズルと、円環形状の水平断面を有し、上下方向に延びるように形成され、ノズルアームを嵌め込み可能な切り欠き部を有し、当該切り欠き部にノズルアームが嵌め込まれた状態で平面視で複数のノズルを取り囲みかつ側面視で複数のノズルの少なくとも一部と重なるように構成されたノズルカバーと、ノズルカバーの下方の位置でノズルカバーから離間するように設けられ、基板保持部の少なくとも下部を収容する収容器と、平面視で基板保持部を取り囲むように構成されるとともに、側面視で収容器に重なりかつノズルカバーから離間する第1の状態と側面視でノズルカバーの下端および収容器の上端に重なる第2の状態とに移行するように上下方向に昇降可能に構成されかつ円環形状の水平断面を有し、少なくとも上下方向に延びるカップと、第1の状態と第2の状態とに移行するように、カップを上下動させる昇降駆動部と、上部開口を有し、基板保持部、複数のノズル、ノズルカバー、収容器、カップを収容する筐体と、筐体の上部開口に配置されかつ空気ガイドに供給された空気をフィルタを通して上部開口に導いて、筐体内に下降気流を形成する気流形成部とを備え、収容器は、筐体内の雰囲気を筐体の外部に排出する排気部を有し、カップが第2の状態にあるときに、ノズルカバー、カップおよび収容器により取り囲まれる処理空間が形成されるとともに、筐体内でかつノズルカバー、カップおよび収容器の外部に処理空間よりも高い圧力を有する非処理空間が形成される。
【0011】
その現像装置においては、カップが第1の状態にあるときに基板保持部および収容器の側方から基板保持部に対するアクセスが可能になる。それにより、基板の現像処理前には、カップが第1の状態で維持され、筐体内に搬入される基板が基板保持部に渡される。基板の現像処理時には、基板保持部により基板が保持された状態で、カップが第1の状態から第2の状態に移行する。これにより、筐体内に処理空間と非処理空間とが形成される。この状態で、基板保持部により保持される基板に対して、基板の上方に位置するノズルから現像液が供給され、基板の現像が行われる。現像液の供給が停止され、基板の現像処理が終了すると、カップが第2の状態から第1の状態に移行する。また、基板保持部により保持された基板が取り出され、筐体外に搬出される。
【0012】
上記のように、ノズルから基板への現像液の供給は処理空間内で行われる。処理空間および非処理空間を含む筐体内には、筐体の上部開口に配置された気流形成部により下降気流が形成されている。そのため、基板に供給されて基板から飛散する現像液の液滴は、処理空間内の下降気流により、ノズルカバーの下方に設けられた収容器の排気部に円滑に導かれ、筐体の外部に排出される。それにより、基板から飛散する現像液が基板よりも上方に位置する部材に付着することが防止される。したがって、ノズル以外の部材から基板上に現像液の液滴が落下することがない。
【0013】
また、非処理空間の圧力は処理空間の圧力よりも高いので、処理空間内の雰囲気は非処理空間に進入しにくい。そのため、処理空間内で現像液を含む雰囲気が発生する場合でも、その雰囲気は非処理空間によりノズルカバー、カップおよび収容器の外部に漏洩しない。
【0014】
これらの結果、基板の現像不良の発生を抑制しつつ現像装置周辺の作業環境の快適性の低下を抑制することが可能になる。
【0015】
(2)筐体および排気部は、カップが第2の状態にあるときに非処理空間の圧力が処理空間の圧力よりも高くなるように構成されてもよい。この場合、筐体および排気部の構成により非処理空間の圧力が処理空間の圧力よりも高くなる。
【0016】
(3)筐体は、カップが第2の状態にあるときに非処理空間を筐体の外部から閉塞する閉塞部を有してもよい。この場合、非処理空間に下降気流が形成されることにより筐体の外部から非処理空間内に導かれる気体の一部は、閉塞部により非処理空間の外部に排出されない。一方、処理空間に下降気流が形成されることにより筐体の外部から処理空間内に導かれる気体の大部分は、排気部により処理空間の外部に排出される。それにより、非処理空間の圧力が処理空間の圧力に対して高くなる。
【0017】
(4)カップが第2の状態にあるときに、カップと収容器との間には、処理空間と非処理空間とを連通させる隙間が形成され、現像装置は、隙間を閉塞するシールをさらに備えてもよい。
【0018】
この場合、カップが第2の状態にあるときに、処理空間の圧力と非処理空間の圧力との関係が維持される。また、処理空間の雰囲気がカップと収容器との間の隙間を通して非処理空間に漏れ出ることが防止される。
【0019】
(5)複数のノズルの各々は、気体と現像液の液滴とを含む混合流体を噴射する二流体ノズルであってもよい。
【0020】
基板に混合流体が噴射される際には、基板の周辺に現像液のミストが飛散する。このような場合でも、上記の現像装置の構成によれば、基板に供給される現像液を含む雰囲気が現像装置の内部から現像装置の外部に漏れ出ることが防止される。
【0021】
(6)複数のノズルから基板に供給される現像液は、露光されたネガ型の感光性ポリイミドを溶解する現像液であってもよい。
【0022】
ネガ型の感光性ポリイミドを溶解する現像液は、強い臭気を有する。このような場合でも、上記の現像装置の構成によれば、基板に供給される現像液を含む雰囲気が現像装置の内部から現像装置の外部に漏れ出ることが防止される。したがって、現像装置周辺の作業環境の快適性の低下が抑制される。また、現像装置の周囲に、現像液の臭気を低減するための構成を設ける必要がなくなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、基板の現像不良の発生を抑制しつつ現像装置周辺の作業環境の快適性の低下を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る現像装置の概略構成を説明するための模式的斜視図である。
【
図2】
図1の液処理ユニットの構成を説明するための模式的外観斜視図である。
【
図3】
図2の液処理ユニットの構成を説明するための模式的平面図である。
【
図4】
図2の液処理ユニットの構成を説明するための模式的縦断面図である。
【
図5】液処理ユニットのカップが第1の状態にあるときの現像装置の模式的縦断面図である。
【
図6】液処理ユニットのカップが第2の状態にあるときの現像装置の模式的縦断面図である。
【
図7】
図6の処理空間と非処理空間との間に発生する圧力の差を説明するための現像装置の模式的縦断面図である。
【
図8】
図1の現像装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【
図9】現像装置による基板の現像処理時の基本動作を示すフローチャートである。
【
図10】収容器へのリングシールの取り付け方法を説明するための分解図である。
【
図11】
図10のリングシールによるカップおよび収容器間の隙間の閉塞状態を示す図である。
【
図12】
図1の現像装置を備える基板処理装置の一例を示す模式的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態に係る現像装置について図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、基板とは、液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等に用いられるFPD(Flat Panel Display)用基板、半導体基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。
【0026】
また、本実施の形態において現像処理の対象となる基板は、主面および裏面を有する。その主面の少なくとも中央部には露光処理後の感光性膜が形成されている。この感光性膜は、例えばネガ型の感光性ポリイミド膜である。露光されたネガ型の感光性ポリイミド膜を溶解する現像液として、シクロヘキサノンまたはシクロペンタノン等を含む溶剤が用いられる。また、リンス液として、イソプロピルアルコールまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等を含む溶剤が用いられる。
【0027】
なお、本実施の形態において、「基板の現像処理」とは、基板の主面に形成された露光処理後の感光性膜に現像液を供給することにより、その感光性膜の一部を溶解することを意味する。
【0028】
[1]現像装置の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る現像装置の概略構成を説明するための模式的斜視図である。
図1に示すように、現像装置1は、基本的に筐体CA内に2つの液処理ユニットLPA,LPBが収容された構成を有する。
図1では、2つの液処理ユニットLPA,LPBの概略形状が点線で示される。液処理ユニットLPA,LPBの構成の詳細については後述する。
【0029】
筐体CAは、水平面内で一方向に延びる略直方体の箱形状を有する。具体的には、筐体CAは、第1の側壁板1w、第2の側壁板2w、第3の側壁板3w、第4の側壁板4w、床板5wおよび天井板6wが図示しないフレームに取り付けられることにより形成される。以下の説明では、水平面内で筐体CAが延びる方向に平行な方向を適宜第1の方向D1と呼び、水平面内で第1の方向D1に直交する方向を適宜第2の方向D2と呼ぶ。2つの液処理ユニットLPA,LPBは、筐体CA内で第1の方向D1に並ぶように床板5w上に配置されている。
【0030】
第1および第2の側壁板1w,2wは、矩形の板形状を有し、上下方向および第1の方向D1に平行でかつ互いに対向するように設けられている。第3および第4の側壁板3w,4wは、矩形の板形状を有し、上下方向および第2の方向D2に平行でかつ互いに対向するように設けられている。
【0031】
第2の側壁板2wには、筐体CAの内部と筐体CAの外部との間で基板を搬送するための2つの搬入搬出口phが形成されている。2つの搬入搬出口phは、液処理ユニットLPA,LPBにそれぞれ対応するように、第2の側壁板2wのうち第2の方向D2において液処理ユニットLPA,LPBに対向する2つの部分にそれぞれ形成されている。天井板6wには、第1の方向D1に並ぶように、2つの開口op1が形成されている。天井板6wにおける2つの開口op1の開口率は、筐体CAの上端全体が上方に開放されている状態と同じ程度に十分に大きく設定されている。
【0032】
天井板6wの2つの開口op1をそれぞれ塞ぐように、天井板6wの上方に2つのフィルタFLが設けられている。なお、2つのフィルタFLは、天井板6wの直下に設けられてもよい。
図1では、2つのフィルタFLが太い一点鎖線で示される。2つのフィルタFLは、例えばULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルタであり、筐体CAを構成する図示しないフレームまたは天井板6wに取り付けられている。筐体CAの天井板6w上には、2つのフィルタFLを取り囲むように空気ガイドAGが設けられている。
図1では、空気ガイドAGが二点鎖線で示される。
【0033】
筐体CAの外部には、気体供給部10が設けられている。気体供給部10は、例えばエアーコントロールユニットであり、電源がオンされている間、予め定められた条件を満たすように温度および湿度等の空気の状態を調整する。また、気体供給部10は、調整後の空気をダクトDUを通して空気ガイドAGに供給する。この場合、空気ガイドAGは、気体供給部10から供給された空気を、2つのフィルタFLを通して天井板6wの2つの開口op1に導く。それにより、温度および湿度等が調整された清浄な空気が筐体CA内に供給され、筐体CAの内部空間SPの全体に下降気流が発生する。
【0034】
筐体CAの外部には、さらに2つの液供給部11が設けられている。各液供給部11は、現像液供給源、リンス液供給源および各種流体関連機器を含み、液供給経路12を通して液処理ユニットLPA,LPBに現像液およびリンス液を供給する。
図1では、液供給経路12が一点鎖線で示される。なお、本実施の形態において、液供給経路12は、1または複数の配管およびバルブ等により形成される。
【0035】
現像装置1は、さらに制御部90を有する。制御部90は、例えばCPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータを含み、液処理ユニットLPA,LPBおよび2つの液供給部11を制御する。制御部90の詳細は後述する。
【0036】
[2]液処理ユニットの構成
図1の2つの液処理ユニットLPA,LPBは、同じ構成を有する。以下、2つの液処理ユニットLPA,LPBを代表して液処理ユニットLPAの構成を説明する。
図2は
図1の液処理ユニットLPAの構成を説明するための模式的外観斜視図であり、
図3は
図2の液処理ユニットLPAの構成を説明するための模式的平面図であり、
図4は
図2の液処理ユニットLPAの構成を説明するための模式的縦断面図である。
図4では、液処理ユニットLPAのうち一部の構成が示される。また、
図2~
図4では、処理対象の基板Wが点線で示される。
【0037】
図2に示すように、液処理ユニットLPAは、ノズルカバー20、支持台30、支持柱31、ノズルアーム32、複数(本例では3つ)の現像ノズル33および複数(本例では3つ)のリンスノズル34を含む。また、液処理ユニットLPAは、カップ40、昇降駆動部49、収容器50、排気管61、排液管62、基板保持装置70および吸引装置78をさらに含む。
図2では、複数の構成要素の構造の理解を容易にするために、液処理ユニットLPAの複数の構成要素のうち一部の構成要素と他の構成要素とが上下に分離された状態で示される。具体的には、
図2においては、複数の現像ノズル33、複数のリンスノズル34およびノズルカバー20を含む一部の構成要素と、カップ40および収容器50を含む他の構成要素とが上下に分離された状態で示される。
【0038】
図1の筐体CA内では、収容器50が床板5w(
図1)上に固定される。収容器50は、側壁部51および底部52を含む。側壁部51は、円環形状の水平断面を有し、一定の内径および一定の外径で上下方向に延びるように形成されている。底部52は、側壁部51の下端を閉塞するように形成されている。
【0039】
底部52には、2つの貫通孔が形成されている。底部52の一方の貫通孔の形成部分に排気管61が接続されている。排気管61は、筐体CA内の雰囲気を、筐体CAの外部に設けられる図示しない排気装置に導く。それにより、収容器50における排気管61の接続部分は、排気部として機能する。収容器50において、排気管61の端部(開口端)は底部52よりも上方に位置する。
【0040】
また、底部52には、他方の貫通孔の形成部分に排液管62がさらに接続されている。排液管62は、基板Wの現像処理時に、後述するようにカップ40から収容器50の底部に流れる液体(現像液およびリンス液)を筐体CAの外部に設けられる図示しない排液装置に導く。それにより、収容器50における排液管62の接続部分は、排液部として機能する。収容器50において、排液管62の端部(開口端)は排気管61の端部よりも下方に位置する。
【0041】
収容器50内には、基板保持装置70の少なくとも下部が収容される。具体的には、基板保持装置70は、吸着保持部71、スピンモータ72およびモータカバー79(
図4)を含む。
図2では、モータカバー79の図示が省略されている。
図3に示すように、スピンモータ72は、平面視で収容器50の中央に位置するように底部52上に固定されている。
図3では、収容器50の側壁部51が太い点線で示される。
図4に示すように、スピンモータ72には、上方に向かって延びるように回転軸73が設けられている。回転軸73の上端に吸着保持部71が設けられている。吸着保持部71は、収容器50の上端よりも上方に突出している。
【0042】
図2に示すように、収容器50の外部には、吸引装置78が設けられている。吸着保持部71は、吸引装置78が動作することにより基板Wの裏面中央部を吸着可能に構成されている。吸着保持部71が基板Wの裏面中央部を吸着することにより、基板Wが収容器50の上方の位置で水平姿勢で保持される。また、基板Wが吸着保持部71により吸着保持された状態でスピンモータ72が動作することにより、基板Wが水平姿勢で回転する。
【0043】
図4に示すように、モータカバー79は、略椀形状を有し、開放された径大部分が下方を向くように収容器50に固定されている。モータカバー79の上端中央部には回転軸73を挿入可能な貫通孔が形成されている。モータカバー79は、そのモータカバー79の上端中央部の貫通孔に回転軸73が挿入された状態で、回転軸73を除くスピンモータ72の上端部分と水平面内でスピンモータ72を取り囲む一定幅の空間とを上方から覆っている。モータカバー79の外周端部と側壁部51の内周面との間には、一定幅の隙間が形成されている。
【0044】
ここで、上記の排気管61の端部は、モータカバー79の下方に位置する。それにより、基板Wの現像処理時に、収容器50の上方から落下する液体(現像液およびリンス液)が排気管61の内部に進入することが防止される。
【0045】
図2に示すように、収容器50内には、基板保持装置70の下部に加えて、カップ40の少なくとも下端が収容される。ここで、カップ40は、収容器50内で上下方向に昇降可能に構成されている。また、カップ40は、内壁部41、外壁部42および液受け部43を含む。内壁部41、外壁部42および液受け部43の各々は、円環形状の水平断面を有し、少なくとも上下方向に延びるように設けられている。
図3に示すように、カップ40は、平面視で基板保持装置70を取り囲むように構成されている。
図3では、カップ40を構成する内壁部41、外壁部42および液受け部43が太い二点鎖線で示される。
【0046】
図4に示すように、液受け部43の外径および内径は、上端から下方に向かうにつれて漸次拡大されている。液受け部43の下端の外径(液受け部43の最大外径)は、収容器50の側壁部51の内径よりも小さい。そのため、液受け部43の外周端部と側壁部51の内周面との間には、一定幅の隙間が形成されている。
【0047】
内壁部41および外壁部42の各々は、一定の内径および一定の外径で一方向に延びるように形成されている。内壁部41の内径は、液受け部43の上端の内径(液受け部43の最小内径)に等しい。外壁部42の内径および外径は、内壁部41の外径よりも大きく、液受け部43の下端の内径(液受け部43の最大内径)よりも小さい。
【0048】
内壁部41は、液受け部43の上端から上方に向かって延びるように形成されている。外壁部42は、内壁部41を取り囲むようにかつ内壁部41の外周面から上方に向かって延びるように形成されている。このような構成により、液受け部43上には、内壁部41の外周面、外壁部42の内周面および液受け部43の環状の外周面により取り囲まれかつ上方に開放された円環状空間RSが形成されている。
【0049】
図2に示すように、
図1の筐体CA内で収容器50の近傍には昇降駆動部49が設けられる。昇降駆動部49は、モータまたはエアシリンダ等の駆動機構を含み、カップ40を支持するとともにカップ40を上下動させることにより、カップ40を第1の状態と第2の状態とに移行させる。カップ40の第1の状態および第2の状態については後述する。
【0050】
図1の筐体CA内では、支持台30が第1の方向D1において収容器50に隣り合うように床板5w(
図1)上に固定される。支持台30上には、その支持台30の上端からさらに上方に延びるように支持柱31が設けられている。支持柱31には、水平方向に距離延びるノズルアーム32が支持柱31の軸心の周りで回転可能に取り付けられている。
【0051】
ノズルアーム32は、現像装置1のメンテナンス時を除いて、基本的に第1の方向D1に延びる状態で固定される。この状態で、ノズルアーム32の中央部分は基板保持装置70の上方に位置する。ノズルアーム32には、基板保持装置70により保持される基板Wに対向するように、複数の現像ノズル33および複数のリンスノズル34が取り付けられている。さらに、ノズルアーム32には、
図3に示すように、平面視で複数の現像ノズル33および複数のリンスノズル34を取り囲むように、ノズルカバー20が取り付けられている。
図3では、ノズルカバー20が太い実線で示される。
【0052】
ノズルカバー20は、円環形状の水平断面を有し、上下方向に延びるように形成されている。ノズルカバー20は、側面視で複数の現像ノズル33および複数のリンスノズル34の各々の少なくとも一部に重なる(後述する
図5等参照)。
【0053】
図2に示すように、ノズルカバー20には、第1の方向D1において互いに対向する2つの部分に、下端から上方に一定距離延びる切り欠き部21が形成されている。ノズルアーム32に対するノズルカバー20の取り付けは、2つの切り欠き部21にノズルアーム32を嵌め込むことにより行われる。ノズルカバー20がノズルアーム32に取り付けられた状態で、ノズルカバー20および収容器50は、上下方向において互いに離間する。
【0054】
ノズルカバー20の外径および内径は一定である。ノズルカバー20の内径はカップ40の内壁部41の外径よりも大きく、ノズルカバー20の外径はカップ40の外壁部42の内径よりも小さい。それにより、ノズルカバー20は、
図3に示すように、平面視でカップ40の円環状空間RSに重なる。
【0055】
本実施の形態で用いられる複数の現像ノズル33および複数のリンスノズル34は、液体および気体の混合流体を噴射可能なソフトスプレー方式の二流体ノズルである。
図1の液供給部11から複数の現像ノズル33に現像液が供給されることにより、各現像ノズル33から現像液の液滴と不活性ガスとを含む混合流体が下方に向かって噴射される。また、
図1の液供給部11から複数のリンスノズル34にリンス液が供給されることにより、各リンスノズル34からリンス液の液滴と不活性ガスとを含む混合流体が下方に向かって噴射される。
【0056】
現像装置1のメンテナンス時には、ノズルアーム32からノズルカバー20が取り外される。また、ノズルアーム32が、
図2に二点鎖線で示すように第2の方向D2に延びる状態で保持される。それにより、液処理ユニットLPAの上方の位置からカップ40、収容器50および基板保持装置70へのアクセスが容易になる。
【0057】
現像装置1においては、液処理ユニットLPA,LPBに対する基板Wの搬入搬出時に、カップ40が第1の状態で維持される。一方、基板保持装置70により保持される基板Wの現像処理時に、カップ40が第2の状態で維持される。カップ40の第1の状態および第2の状態について説明する。
【0058】
図5は液処理ユニットLPA,LPBのカップ40が第1の状態にあるときの現像装置1の模式的縦断面図であり、
図6は液処理ユニットLPA,LPBのカップ40が第2の状態にあるときの現像装置1の模式的縦断面図である。
図5および
図6では、複数の現像ノズル33および複数のリンスノズル34を含む一部の構成要素が一点鎖線で示される。
【0059】
図5に示すように、カップ40は、第1の状態にあるときに、収容器50の内部に位置する。すなわち、カップ40は、第1の状態にあるときに、側面視で収容器50に重なり、ノズルカバー20から離間する。したがって、カップ40が第1の状態にあるときには、カップ40および収容器50の側方から基板保持装置70に対するアクセスが可能になる。それにより、現像装置1の外部から搬入される基板Wを液処理ユニットLPA,LPBの吸着保持部71上に載置することができる。また、液処理ユニットLPA,LPBの吸着保持部71上に載置された基板Wを取り出し、現像装置1の外部に搬出することができる。
【0060】
カップ40の高さ(上下方向の寸法)は、上下方向におけるノズルカバー20および収容器50間の距離よりも大きくなるように設定されている。
図6に示すように、カップ40は、第2の状態にあるときに、側面視でノズルカバー20の下端および収容器50の上端に重なる。このとき、カップ40の上端とノズルカバー20の下端近傍の内周面とが近接する。また、カップ40の下端と収容器50の上端近傍の内周面とが近接する。それにより、筐体CA内にノズルカバー20、カップ40および収容器50により取り囲まれる処理空間SPaが形成される。また、筐体CA内でかつノズルカバー20、カップ40および収容器50の外部に非処理空間SPbが形成される。
【0061】
カップ40が第2の状態にあるときに、カップ40の液受け部43の内周面は、吸着保持部71により保持される基板Wを取り囲む。それにより、基板Wの現像処理時に、複数の現像ノズル33および複数のリンスノズル34から基板Wに供給される現像液およびリンス液の大部分が、液受け部43の内周面により受け止められて、収容器50へ導かれる。
【0062】
本実施の形態に係る現像装置1においては、筐体CA内に処理空間SPaおよび非処理空間SPbが形成されることにより、処理空間SPa内の圧力と非処理空間SPb内の圧力との間に差が生じる。
図7は、
図6の処理空間SPaと非処理空間SPbとの間に発生する圧力の差を説明するための現像装置1の模式的縦断面図である。
図7では、液処理ユニットLPa,LPbの処理空間SPaが太い点線で示され、非処理空間SPbが太い一点鎖線で示される。
【0063】
処理空間SPaおよび非処理空間SPbには、
図7に白抜きの矢印で示すように、上方から清浄な空気が継続して供給される。ここで、現像装置1において、筐体CA内の雰囲気を排出するための排気管61の端部は、収容器50の内部空間、すなわち処理空間SPaに位置する。そのため、処理空間SPa内では、上方から下方に向かって清浄な空気が円滑に流れ、筐体CAの外部に排出される。一方、非処理空間SPbには、その非処理空間SPb内の雰囲気を筐体CAの外部に積極的に排出するための構成が設けられていない。特に、
図7に示すように、本例の床板5wは、非処理空間SPbを筐体CAの下方から閉塞する閉塞部cpを有する。それにより、非処理空間SPbに下降気流を形成するために筐体CAの上部の開口op1から非処理空間SPbに導かれる空気の一部は、閉塞部cpにより非処理空間SPbの外部に排出されない。これらの結果、非処理空間SPb内の圧力は、処理空間SPa内の圧力に対して大きくなる。
【0064】
[3]現像装置1の制御部の構成
図8は、
図1の現像装置1の制御部90の構成を示すブロック図である。
図8に示すように、制御部90は、昇降制御部91、液制御部92、回転制御部93および吸引制御部94を含む。
図8の制御部90の各部の機能は、例えばCPUがメモリに記憶された所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0065】
昇降制御部91は、液処理ユニットLPA,LPBの昇降駆動部49の動作を制御する。それにより、各液処理ユニットLPA,LPBのカップ40が第1の状態と第2の状態とに移行する。液制御部92は、
図1の2つの液供給部11の動作を制御する。それにより、各液処理ユニットLPA,LPB内で複数の現像ノズル33から現像液が噴射され、複数のリンスノズル34からリンス液が噴射される。
【0066】
回転制御部93は、
図1の液処理ユニットLPA,LPBのスピンモータ72の動作を制御する。また、吸引制御部94は、
図1の液処理ユニットLPA,LPBの吸引装置78の動作を制御する。それにより、各基板保持装置70において基板Wが水平姿勢で吸着保持され、回転される。
【0067】
[4]現像装置の基本動作
現像装置1の基本動作について説明する。
図9は、現像装置1による基板Wの現像処理時の基本動作を示すフローチャートである。初期状態においては、気体供給部10から現像装置1に温度および湿度等が調整された空気が供給されている。また、筐体CA内の雰囲気は、液処理ユニットLPA,LPBの排気管61から図示しない排気装置に導かれている。それにより、筐体CA内には清浄な下降気流が形成されている。さらに、初期状態においては、カップ40は、第1の状態で維持されているものとする。
【0068】
基板Wの現像処理の開始前には、まず、液処理ユニットLPA,LPBに処理対象となる基板Wが搬入される。また、
図5に示すように、基板保持装置70上に基板Wが載置される。基板Wの現像処理が開始されると、
図8の吸引制御部94は、基板保持装置70の吸着保持部71により基板Wが吸着されるように、液処理ユニットLPA,LPBの吸引装置78を制御する(ステップS11)。
【0069】
次に、
図8の昇降制御部91は、カップ40が第1の状態から第2の状態へ移行するように、液処理ユニットLPA,LPBの昇降駆動部49を制御する(ステップS12)。
【0070】
次に、
図8の回転制御部93は、基板Wが回転軸73の周りで回転するように、液処理ユニットLPA,LPBのスピンモータ72を制御する(ステップS13)。
【0071】
次に、
図8の液制御部92は、複数の現像ノズル33から基板Wに予め定められた時間現像液が供給されるように、液処理ユニットLPA,LPBにそれぞれ対応する液供給部11を制御する(ステップS14)。また、
図8の液制御部92は、複数のリンスノズル34から基板Wに予め定められた時間リンス液が供給されるように、液処理ユニットLPA,LPBにそれぞれ対応する液供給部11を制御する(ステップS15)。
【0072】
次に、
図8の回転制御部93は、リンス液の供給停止から一定時間経過した後基板Wの回転が停止するように、液処理ユニットLPA,LPBのスピンモータ72を制御する(ステップS16)。
【0073】
次に、
図8の昇降制御部91は、カップ40が第2の状態から第1の状態へ移行するように、液処理ユニットLPA,LPBの昇降駆動部49を制御する(ステップS17)。
【0074】
最後に、
図8の吸引制御部94は、基板保持装置70の吸着保持部71による基板Wの吸着が解除されるように、液処理ユニットLPA,LPBの吸引装置78を制御する(ステップS18)。それにより、基板Wの現像処理が終了する。現像処理後の基板Wは、液処理ユニットLPA,LPBから搬出される。
【0075】
[5]効果
(1)本実施の形態に係る現像装置1においては、基板Wの現像処理前に、各液処理ユニットLPA,LPBのカップ40が第1の状態で維持され、各液処理ユニットLPA,LPBの筐体CA内に搬入される基板Wが基板保持装置70に渡される。基板Wの現像処理時には、基板保持装置70により基板Wが保持された状態で、カップ40が第1の状態から第2の状態に移行する。これにより、筐体CA内に処理空間SPaと非処理空間SPbとが形成される。この状態で、複数の現像ノズル33から基板Wに現像液が供給される。また、複数のリンスノズル34から基板Wにリンス液が供給される。このようにして基板Wの現像処理が終了すると、カップ40が第2の状態から第1の状態に移行する。また、基板保持装置70により保持された基板Wが取り出され、筐体CA外に搬出される。
【0076】
上記のように、複数の現像ノズル33から基板Wへの現像液の供給は処理空間SPa内で行われる。処理空間SPaおよび非処理空間SPbを含む筐体CA内には、筐体CAの上部の開口op1に配置された空気ガイドAGおよびフィルタFLにより清浄な下降気流が形成されている。そのため、基板Wに供給されて基板Wから飛散する現像液の液滴は、処理空間SPa内の下降気流により、ノズルカバー20の下方に設けられた収容器50内の排気管61に円滑に導かれ、筐体CAの外部に排出される。それにより、基板Wから飛散する現像液が基板Wよりも上方に位置する部材に付着することが防止される。したがって、複数の現像ノズル33および複数のリンスノズル34以外の部材から基板W上に現像液およびリンス液の液滴が落下することがない。その結果、基板Wの現像不良の発生が抑制される。
【0077】
また、非処理空間SPbの圧力は処理空間SPaの圧力よりも高いので、処理空間SPa内の雰囲気は非処理空間SPbに進入しにくい。そのため、処理空間SPa内で現像液を含む雰囲気が発生する場合でも、その雰囲気は非処理空間SPbによりノズルカバー20、カップ40および収容器50の外部に漏洩しない。本実施の形態で用いられる現像液は、ネガ型の感光性ポリイミドを溶解する現像液であり、強い臭気を有する。このように現像液が強い臭気を有する場合でも、上記の構成によれば、その現像液が現像装置1の内部から現像装置1の外部に漏れ出ることが防止される。その結果、現像装置1周辺の作業環境の快適性の低下が抑制される。
【0078】
(2)上記のように、複数の現像ノズル33は、二流体ノズルである。二流体ノズルにより基板Wに現像液を含む混合流体が噴射される際には、基板Wの周辺に現像液のミストが飛散する。このような場合でも、上記の現像装置1の構成によれば、基板Wに供給される現像液を含む雰囲気が現像装置1の内部から現像装置1の外部に漏れ出ることが防止される。
【0079】
(3)上記の現像装置1においては、カップ40が第2の状態にあるときに、カップ40の上端とノズルカバー20の下端近傍の内周面とが近接する。このとき、平面視でノズルカバー20の外周面とカップ40の内壁部41の内周面との間の距離は、例えば2mm~4mm程度に設定されることが好ましい。この場合、処理空間SPa内の雰囲気が非処理空間SPbへ漏れ出ることがより防止される。
【0080】
(4)また、上記の現像装置1においては、カップ40が第2の状態にあるときに、カップ40の下端と収容器50の上端近傍の内周面とが近接する。このとき、平面視でカップ40の液受け部43の外周端部と収容器50の側壁部51の内周面との間の距離は、例えば2mm~4mm程度に設定されることが好ましい。この場合、処理空間SPa内の雰囲気が非処理空間SPbへ漏れ出ることがより防止される。
【0081】
[6]処理空間SPaの密閉性を高めるための構成
上記の液処理ユニットLPA,LPBにおいては、カップ40が第2の状態にあるときに、カップ40と収容器50との間に処理空間SPaと非処理空間SPbとを連通させる隙間が形成される。この隙間は、基板Wの現像処理時における処理空間SPaの密閉性を低下させる。そこで、液処理ユニットLPA,LPBの各々は、カップ40が第2の状態にあるときに、カップ40と収容器50との間に形成される隙間を閉塞するリングシールを備えてもよい。
【0082】
図10は収容器50へのリングシールの取り付け方法を説明するための分解図であり、
図11は
図10のリングシール81によるカップ40および収容器50間の隙間の閉塞状態を示す図である。
図11では、第2の状態にあるカップ40と収容器50との位置関係が外観斜視図で示されるとともに、カップ40と収容器50との間の近接部分の拡大断面図が吹き出し内に示される。
【0083】
図10に示すように、本例では、収容器50の側壁部51の上端に、リングシール81およびリングプレート82がこの順で載置される。リングシール81は、柔軟性を有する樹脂により形成される。リングシール81の内径は、側壁部51の内径よりも小さく、カップ40の液受け部43の最大外径(液受け部43の下端部の外径)よりも小さい。さらに、リングシール81の内径は、カップ40の外壁部42の外径よりも大きい。一方、リングシール81の外径は、側壁部51の外径に等しい。
【0084】
リングプレート82は、リングシール81よりも高い剛性を有する樹脂により形成される。リングプレート82の内径は側壁部51の内径以上であり、リングプレート82の外径は、側壁部51の外径に等しい。
【0085】
上下方向において、側壁部51の外周部、リングシール81の外周端部およびリングプレート82の外周端部が重なる状態で、リングプレート82が、例えばリングシール81を通して側壁部51の上端にねじ止めされる。それにより、収容器50の上端に、収容器50の内周縁から収容器50の内方へ一定距離突出するようにリングシール81が固定される。
【0086】
上記の構成によれば、
図11の吹き出し内に示すように、カップ40が第2の状態にあるときに、リングシール81の内周縁が液受け部43の外周面に当接する。それにより、カップ40と収容器50との間に形成される隙間が閉塞される。したがって、処理空間SPa内の雰囲気が非処理空間SPbへ漏れ出ることがさらに防止される。
【0087】
上記の液処理ユニットLPA,LPBにおいては、カップ40が第2の状態にあるときに、ノズルカバー20とカップ40との間にも処理空間SPaと非処理空間SPbとを連通させる隙間が形成される。この隙間は、基板Wの現像処理時における処理空間SPaの密閉性を低下させる。そこで、液処理ユニットLPA,LPBの各々は、カップ40が第2の状態にあるときに、ノズルカバー20とカップ40との間に形成される隙間を閉塞するリングシールを備えてもよい。この場合、リングシールは、
図10および
図11の例と同様に、例えばノズルカバー20の下端またはカップ40の上端に設けることができる。それにより、処理空間SPa内の雰囲気が非処理空間SPbへ漏れ出ることがさらに防止される。
【0088】
[7]
図1の現像装置1を備える基板処理装置
図12は、
図1の現像装置1を備える基板処理装置の一例を示す模式的ブロック図である。
図12に示すように、基板処理装置100は、露光装置300に隣接して設けられ、制御装置110、搬送装置120、塗布処理部130、現像処理部140および熱処理部150を備える。
【0089】
制御装置110は、例えばCPUおよびメモリ、またはマイクロコンピュータを含み、搬送装置120、塗布処理部130、現像処理部140および熱処理部150の動作を制御する。搬送装置120は、基板Wを塗布処理部130、現像処理部140、熱処理部150および露光装置300の間で搬送する。
【0090】
塗布処理部130は、未処理の基板Wの主面上に感光性膜を形成する(塗布処理)。感光性膜が形成された塗布処理後の基板Wには、露光装置300において露光処理が行われる。現像処理部140は、
図1の現像装置1を複数含む。各現像装置1は、露光処理後の基板Wに現像液を供給し、基板Wの現像処理を行う。熱処理部150は、塗布処理部130による塗布処理、現像処理部140による現像処理、および露光装置300による露光処理の前後に基板Wの熱処理を行う。
【0091】
なお、塗布処理部130は、基板Wに反射防止膜を形成してもよい。この場合、熱処理部150には、基板Wと反射防止膜との密着性を向上させるための密着強化処理を行うための処理ユニットが設けられてもよい。また、塗布処理部130は、基板W上に形成された感光性膜を保護するためのカバー膜を基板Wに形成してもよい。
【0092】
図12の基板処理装置100においては、
図1の現像装置1により基板Wの現像処理が行われる。それにより、基板Wの現像不良の発生が抑制される。したがって、製品の歩留まりが向上するとともに、基板Wの製造コストが低減される。また、強い臭気を有する現像液が用いられる場合でも、その現像液を含む雰囲気が各現像装置1から漏れ出ることが防止される。したがって、基板処理装置100周辺に現像液の臭気の発生を抑制するための新たな構成を設ける必要がない。
【0093】
[8]他の実施の形態
(1)上記実施の形態に係る現像装置1においては、筐体CA内に収容される液処理ユニットLPA,LPBにより2枚の基板Wが同時に現像処理されるが、本発明はこれに限定されない。液処理ユニットLPAにおける基板Wの現像処理と液処理ユニットLPBにおける基板Wの現像処理とは、同時に行われてもよいし、互いに異なるタイミングで行われてもよい。
【0094】
例えば、一方の液処理ユニットLPA(LPB)で基板Wの現像処理が行われ、他方の液処理ユニットLPB(LPA)で基板Wの現像処理が行われない場合を想定する。この場合、一方の液処理ユニットLPA(LPB)においてはカップ40が第2の状態に維持され、他方の液処理ユニットLPB(LPA)においてはカップ40が第1の状態に維持される。それにより、筐体CA内では、一方の液処理ユニットLPA(LPB)内に1つの処理空間SPaが形成され、他方の液処理ユニットLPB(LPA)の内部空間は非処理空間SPbとなる。
【0095】
(2)上記実施の形態に係るノズルカバー20は円環形状の水平断面を有するが、本発明はこれに限定されない。ノズルカバー20は、平面視で複数の現像ノズル33および複数のリンスノズル34を取り囲むように構成されていればよく、四角形、五角形または六角形等の多角形状の水平断面を有してもよい。
【0096】
また、上記実施の形態に係るカップ40の内壁部41、外壁部42および液受け部43の各々も円環形状の水平断面を有するが、本発明はこれに限定されない。内壁部41、外壁部42および液受け部43の各々は、平面視で基板保持装置70を取り囲むように構成されていればよく、多角形状の水平断面を有してもよい。
【0097】
さらに、上記実施の形態に係る収容器50の側壁部51も円環形状の水平断面を有するが、本発明はこれに限定されない。側壁部51は、平面視で基板保持装置70を取り囲むように構成されていればよく、多角形状の水平断面を有してもよい。
【0098】
(3)上記実施の形態に係る現像装置1においては、筐体CAが天井板6wを有するが、筐体CAは天井板6wを有しなくてもよい。この場合、開放された筐体CAの上端開口が、筐体CAの上部開口として機能する。また、この場合、フィルタFLは、筐体CAを構成する図示しないフレームに取り付けられる。
【0099】
(4)上記実施の形態に係る現像装置1においては、1つの筐体CA内に2つの液処理ユニットLPA,LPBが設けられるが、本発明はこれに限定されない。筐体CA内には、1つの液処理ユニットのみが設けられてもよいし、3以上の液処理ユニットが設けられてもよい。
【0100】
(5)上記実施の形態に係る現像装置1においては、カップ40が内壁部41および外壁部42を有するが、本発明はこれに限定されない。カップ40は、内壁部41および外壁部42のうち一方のみを有してもよい。
【0101】
(6)上記実施の形態に係る現像装置1においては、複数の現像ノズル33および複数のリンスノズル34の各々が二流体ノズルにより構成されるが、本発明はこれに限定されない。複数の現像ノズル33および複数のリンスノズル34の各々は、二流体ノズル以外の種類のノズルであってもよい。
【0102】
(7)上記実施の形態に係る現像装置1においては、2つの液処理ユニットLPA,LPBにそれぞれ対応するように2つの液供給部11が設けられるが、本発明はこれに限定されない。現像装置1には、2つの液処理ユニットLPA,LPBに共通に用いられる1つの液供給部11が設けられてもよい。
【0103】
[9]請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記実施の形態では、基板保持装置70が基板保持装置の例であり、複数の現像ノズル33がノズルの例であり、ノズルカバー20がノズルカバーの例であり、収容器50が収容器の例であり、カップ40がカップの例であり、昇降駆動部49が昇降駆動部の例である。
【0104】
また、開口op1が上部開口の例であり、筐体CAが筐体の例であり、空気ガイドAGおよびフィルタFLが気流形成部の例であり、収容器50の底部52における排気管61の接続部が排気部の例であり、現像装置1が現像装置の例であり、
図7の床板5wの閉塞部cpが閉塞部の例であり、
図10および
図11のリングシール81がシールの例である。
【0105】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
[10]参考形態
参考形態に係る現像装置は、基板を水平姿勢で保持する基板保持部と、基板保持部の上方に設けられかつ基板保持部により保持された基板に現像液を供給するノズルと、平面視でノズルを取り囲みかつ側面視でノズルの少なくとも一部と重なるように構成されたノズルカバーと、ノズルカバーの下方の位置でノズルカバーから離間するように設けられ、基板保持部の少なくとも下部を収容する収容器と、平面視で基板保持部を取り囲むように構成されるとともに、側面視で収容器に重なりかつノズルカバーから離間する第1の状態と側面視でノズルカバーの下端および収容器の上端に重なる第2の状態とに移行するように上下方向に昇降可能に構成されたカップと、第1の状態と第2の状態とに移行するように、カップを上下動させる昇降駆動部と、上部開口を有し、基板保持部、ノズル、ノズルカバー、収容器、カップを収容する筐体と、筐体の上部開口に配置され、筐体内に下降気流を形成する気流形成部とを備え、収容器は、筐体内の雰囲気を筐体の外部に排出する排気部を有し、カップが第2の状態にあるときに、ノズルカバー、カップおよび収容器により取り囲まれる処理空間が形成されるとともに、筐体内でかつノズルカバー、カップおよび収容器の外部に処理空間よりも高い圧力を有する非処理空間が形成される。
その現像装置においては、カップが第1の状態にあるときに基板保持部および収容器の側方から基板保持部に対するアクセスが可能になる。それにより、基板の現像処理前には、カップが第1の状態で維持され、筐体内に搬入される基板が基板保持部に渡される。基板の現像処理時には、基板保持部により基板が保持された状態で、カップが第1の状態から第2の状態に移行する。これにより、筐体内に処理空間と非処理空間とが形成される。この状態で、基板保持部により保持される基板に対して、基板の上方に位置するノズルから現像液が供給され、基板の現像が行われる。現像液の供給が停止され、基板の現像処理が終了すると、カップが第2の状態から第1の状態に移行する。また、基板保持部により保持された基板が取り出され、筐体外に搬出される。
上記のように、ノズルから基板への現像液の供給は処理空間内で行われる。処理空間および非処理空間を含む筐体内には、筐体の上部開口に配置された気流形成部により下降気流が形成されている。そのため、基板に供給されて基板から飛散する現像液の液滴は、処理空間内の下降気流により、ノズルカバーの下方に設けられた収容器の排気部に円滑に導かれ、筐体の外部に排出される。それにより、基板から飛散する現像液が基板よりも上方に位置する部材に付着することが防止される。したがって、ノズル以外の部材から基板上に現像液の液滴が落下することがない。
また、非処理空間の圧力は処理空間の圧力よりも高いので、処理空間内の雰囲気は非処理空間に進入しにくい。そのため、処理空間内で現像液を含む雰囲気が発生する場合でも、その雰囲気は非処理空間によりノズルカバー、カップおよび収容器の外部に漏洩しない。
これらの結果、基板の現像不良の発生を抑制しつつ現像装置周辺の作業環境の快適性の低下を抑制することが可能になる。
【符号の説明】
【0106】
1…現像装置,1w…第1の側壁板,2w…第2の側壁板,3w…第3の側壁板,4w…第4の側壁板,5w…床板,6w…天井板,10…気体供給部,11…液供給部,12…液供給経路,20…ノズルカバー,21…切り欠き部,30…支持台,31…支持柱,32…ノズルアーム,33…現像ノズル,34…リンスノズル,40…カップ,41…内壁部,42…外壁部,43…液受け部,49…昇降駆動部,50…収容器,51…側壁部,52…底部,61…排気管,62…排液管,70…基板保持装置,71…吸着保持部,72…スピンモータ,73…回転軸,78…吸引装置,79…モータカバー,81…リングシール,82…リングプレート,90…制御部,91…昇降制御部,92…液制御部,93…回転制御部,94…吸引制御部,100…基板処理装置,110…制御装置,120…搬送装置,130…塗布処理部,140…現像処理部,150…熱処理部,300…露光装置,AG…空気ガイド,CA…筐体,D1…第1の方向,D2…第2の方向,DU…ダクト,FL…フィルタ,LPA,LPB…液処理ユニット,SP…内部空間,SPa…処理空間,SPb…非処理空間,W…基板,cp…閉塞部,op1…開口,ph…搬入搬出口