(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】モータ、及び、モータの状態判定装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/173 20060101AFI20230823BHJP
H02K 11/215 20160101ALI20230823BHJP
【FI】
H02K5/173 A
H02K11/215
(21)【出願番号】P 2019224278
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】久冨 祐也
(72)【発明者】
【氏名】民辻 敏泰
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-273547(JP,A)
【文献】実開昭49-140546(JP,U)
【文献】米国特許第5998894(US,A)
【文献】特開2004-156779(JP,A)
【文献】特開平04-125045(JP,A)
【文献】実公昭16-001384(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/173
H02K 11/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するロータと、
前記ロータの周方向に対向して配置されているステータと、
前記回転軸を回転可能に支持する一対の軸受部と、
を備え、
前記一対の軸受部は、
前記回転軸とともに回転可能な第1軸受、前記第1軸受とともに回転可能な第2軸受、及び、前記第1軸受と前記第2軸受とが連動して回転するように結合しているカップリング部をそれぞれ有し、
前記一対の軸受部がそれぞれ有する前記カップリング部は、連動して回転するように結合している、
モータ。
【請求項2】
前記第1軸受は、
前記回転軸とともに回転可能な第1内輪と、前記第1内輪の外周側に設けられている第1外輪と、前記第1内輪と前記第1外輪との間に配置されている第1転動体とを有し、
前記第2軸受は、
前記回転軸の軸線方向において前記第1軸受とは離れた位置に設けられていて、前記第1外輪とともに回転可能な第2内輪と、前記第2内輪の外周側に設けられている第2外輪と、前記第2内輪と前記第2外輪との間に配置されている第2転動体とを有し、
前記カップリング部は、前記第1外輪と前記第2内輪とを回転可能に結合する、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記一対の軸受部のうち少なくとも一方の動作を検出する軸受動作検出部を備え、
前記軸受動作検出部は、前記第1外輪の回転動作に応じた軸受動作情報を出力する、
請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記軸受動作検出部は、
前記第1外輪とともに回転可能な軸受動作検出マグネットと、前記軸受動作検出マグネットの回転動作に応じて前記軸受動作情報を出力する軸受動作検出センサと、を有する、
請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記軸受動作検出センサは、前記一対の軸受部のうちの前記軸受動作検出部が設けられた軸受部の外周側に設けられた基板に搭載されている、
請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記軸受動作検出部は、前記カップリング部の外周側に設けられている、
請求項3乃至5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
前記基板には、前記ロータの回転動作に応じたロータ動作情報を出力するロータ動作検出部が搭載されている、
請求項5に記載のモータ。
【請求項8】
モータの軸受部の状態を判定する状態判定装置であり、
前記モータは、
回転軸を有するロータと、
前記ロータの周方向に対向して配置されているステータと、
前記回転軸を回転可能に支持し、前記回転軸とともに回転可能な第1軸受、前記第1軸受とともに回転可能な第2軸受、及び、前記第1軸受と前記第2軸受とが連動して回転するように結合しているカップリング部をそれぞれ有する一対の軸受部と、
前記一対の軸受部の少なくとも一方に設けられて、前記第1軸受の回転動作に応じた軸受動作情報を出力する軸受動作検出部と、
を備え、
前記一対の軸受部は、
前記第1軸受は、前記回転軸とともに回転可能な第1内輪と、前記第1内輪の外周側に設けられている第1外輪と、前記第1内輪と前記第1外輪との間に配置されている第1転動体とを有し、
前記第2軸受は、前記回転軸の軸線方向において前記第1軸受とは離れた位置に設けられていて、前記第1外輪とともに回転可能な第2内輪と、前記第2内輪の外周側に設けられている第2外輪と、前記第2内輪と前記第2外輪との間に配置されている第2転動体とを有し、
前記カップリング部は、前記第1外輪と前記第2内輪とを回転可能に結合し、
前記軸受動作検出部は、前記第1外輪の回転動作に応じた軸受動作情報を出力し、
前記状態判定装置は、
前記軸受動作検出部が出力した前記軸受動作情報に基づいて前記一対の軸受部の回転運動の状態を判定する状態判定部を備える、
モータの状態判定装置。
【請求項9】
前記状態判定装置は、
前記軸受動作情報に基づいて、前記一対の軸受部の少なくともいずれかが劣化しているか否か判定する、
請求項8に記載のモータの状態判定装置。
【請求項10】
前記軸受動作検出部は、前記一対の軸受部の一方に設けられていて、
前記一対の軸受部の一方が劣化したとき、前記カップリング部の回転動作により、前記一対の軸受部のうちいずれか一方が有している前記第1軸受が劣化していると判定する、
請求項8または9に記載のモータの状態判定装置。
【請求項11】
前記一対の軸受部の他方が劣化したとき、前記カップリング部の回転動作により、前記一対の軸受部のうちいずれか一方が有している前記第1軸受が劣化していると判定する、
請求項10に記載のモータの状態判定装置。
【請求項12】
前記モータは、
ロータの回転動作に応じたロータ動作情報を出力するロータ動作検出部を備え、
前記状態判定部は、
前記軸受動作情報及び前記ロータ動作情報に基づいて前記第1軸受の回転運動の状態を判定する、
請求項8乃至11のいずれか1項に記載のモータの状態判定装置。
【請求項13】
前記軸受動作情報は、前記第1外輪の回転数に応じた情報であり、
前記ロータ動作情報は、前記ロータの回転数に応じた情報である、
請求項12に記載のモータの状態判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、及び、モータの状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータは、その故障の一因として、ロータに取り付けられる回転軸を支持する軸受の故障などの異常が挙げられる。
【0003】
なお、モータにおける軸受の故障予兆の有無を適切に診断するために、電動機(モータ)の軸部材の一端側に設置される第1軸受の温度を検出する第1温度センサと、軸部材の他端側に設置される第2軸受の温度を検出する第2温度センサと、第1軸受の温度と第2軸受の温度との差に基づいて第1軸受及び第2軸受の故障予兆の有無を診断する軸受故障予兆診断手段と、を備えるものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータにおいて、軸受に異常が発生した場合には、ロータの回転に支障が生じるため、軸受を交換する必要がある。特に、サーバの内部を冷却するための冷却ファン用のモータ(以下「ファンモータ」という)は、ファンモータが故障することでサーバの使用にも支障が出るため、高い信頼性が要求されている。ファンモータにおける軸受の高い信頼性とは、具体的には、軸受に異常が発生するまでの期間、つまり軸受の寿命が長いこと、あるいは、軸受の寿命を予測し得ることが挙げられる。
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、軸受の寿命を予測して信頼性を向上し得るものの、2つの軸受それぞれに温度センサを備える必要があるため、温度センサの取り付け場所の確保する必要があるなど、モータの構成が複雑になっていた。
【0007】
本発明は、上述の課題を一例とするものであり、簡易な構成でモータにおける軸受の信頼性を向上することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るモータは、回転軸を有するロータと、前記ロータの周方向に対向して配置されているステータと、前記回転軸を回転可能に支持する一対の軸受部と、を備え、前記一対の軸受部は、前記回転軸とともに回転可能な第1軸受、前記第1軸受とともに回転可能な第2軸受、及び、前記第1軸受と前記第2軸受とが連動して回転するように結合しているカップリング部をそれぞれ有し、前記一対の軸受部がそれぞれ有する前記カップリング部は、連動して回転するように結合している。
【0009】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記第1軸受は、前記回転軸とともに回転可能な第1内輪と、前記第1内輪の外周側に設けられている第1外輪と、前記第1内輪と前記第1外輪との間に配置されている第1転動体とを有し、前記第2軸受は、前記回転軸の軸線方向において前記第1軸受とは離れた位置に設けられていて、前記第1外輪とともに回転可能な第2内輪と、前記第2内輪の外周側に設けられている第2外輪と、前記第2内輪と前記第2外輪との間に配置されている第2転動体とを有し、前記カップリング部は、前記第1外輪と前記第2内輪とを回転可能に結合する。
【0010】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記一対の軸受部のうち少なくとも一方の動作を検出する軸受動作検出部を備え、前記軸受動作検出部は、前記第1外輪の回転動作に応じた軸受動作情報を出力する。
【0011】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記軸受動作検出部は、前記第1外輪とともに回転可能な軸受動作検出マグネットと、前記軸受動作検出マグネットの回転動作に応じて前記軸受動作情報を出力する軸受動作検出センサと、を有する。
【0012】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記軸受動作検出センサは、前記一対の軸受部のうちの前記軸受動作検出部が設けられた軸受部の外周側に設けられた基板に搭載されている。
【0013】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記軸受動作検出部は、前記カップリング部の外周側に設けられている。
【0014】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記基板には、前記ロータの回転動作に応じたロータ動作情報を出力するロータ動作検出部が搭載されている。
【0015】
上記目的を達成するために、モータの軸受部の状態を判定する状態判定装置であり、前記モータは、回転軸を有するロータと、前記ロータの周方向に対向して配置されているステータと、前記回転軸を回転可能に支持し、前記回転軸とともに回転可能な第1軸受、前記第1軸受とともに回転可能な第2軸受、及び、前記第1軸受と前記第2軸受とが連動して回転するように結合しているカップリング部をそれぞれ有する一対の軸受部と、前記一対の軸受部の少なくとも一方に設けられて、前記第1軸受の回転動作に応じた軸受動作情報を出力する軸受動作検出部と、を備え、前記一対の軸受部は、前記第1軸受は、前記回転軸とともに回転可能な第1内輪と、前記第1内輪の外周側に設けられている第1外輪と、前記第1内輪と前記第1外輪との間に配置されている第1転動体とを有し、前記第2軸受は、前記回転軸の軸線方向において前記第1軸受とは離れた位置に設けられていて、前記第1外輪とともに回転可能な第2内輪と、前記第2内輪の外周側に設けられている第2外輪と、前記第2内輪と前記第2外輪との間に配置されている第2転動体とを有し、前記カップリング部は、前記第1外輪と前記第2内輪とを回転可能に結合し、前記軸受動作検出部は、前記第1外輪の回転動作に応じた軸受動作情報を出力し、前記状態判定装置は、前記軸受動作検出部が出力した前記軸受動作情報に基づいて前記一対の軸受部の回転運動の状態を判定する状態判定部を備える。
【0016】
本発明の一態様に係るモータの状態判定装置において、前記状態判定装置は、前記軸受動作情報に基づいて、前記一対の軸受部の少なくともいずれかがが劣化しているか否か判定する。
【0017】
本発明の一態様に係るモータの状態判定装置において、前記軸受動作検出部は、前記一対の軸受部の一方に設けられていて、前記一対の軸受部の一方が劣化したとき、前記カップリング部の回転動作により、前記一対の軸受部のうちいずれか一方が有している前記第1軸受が劣化していると判定する。
【0018】
本発明の一態様に係るモータの状態判定装置において、前記一対の軸受部の他方が劣化したとき、前記カップリング部の回転動作により、前記一対の軸受部のうちいずれか一方が有している前記第1軸受が劣化していると判定する。
【0019】
本発明の一態様に係るモータの状態判定装置において、前記モータは、ロータの回転動作に応じたロータ動作情報を出力するロータ動作検出部を備え、前記状態判定部は、前記軸受動作情報及び前記ロータ動作情報に基づいて前記第1軸受の回転運動の状態を判定する。
【0020】
本発明の一態様に係るモータの状態判定装置において、前記軸受動作情報は、前記第1外輪の回転数に応じた情報であり、前記ロータ動作情報は、前記ロータの回転数に応じた情報である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、モータにおける軸受の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る実施の形態のモータを備えるファン装置の構成を概略的に示す正面図である。
【
図2】
図1に示すファン装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図1に示すファン装置が備える軸受部の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【
図4】
図1に示すファン装置が備える軸受部の構成を概略的に示す断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るモータの駆動制御装置の機能ブロック図である。
【
図6】
図1に示すファン装置が備えるモータにおける、下側の軸受部が劣化した場合の軸受部の動作、及び、軸受動作検出部の動作の推移を示すためのフローチャートである。
【
図7】
図1に示すファン装置が備えるモータにおける、上側の軸受部が劣化した場合の軸受部の動作、及び、軸受動作検出部の動作の推移を示すためのフローチャートである。
【
図8】
図6に示すモータの駆動制御装置による軸受部の状態検出処理の例を示すためのフローチャートである。
【
図9】
図1に示すファン装置が備えるモータにおける、(a)第1ホール信号に基づくロータ動作情報としてのFG信号、(b)第1軸受が正常に動作している状態における第2ホール信号に基づく軸受動作情報としての軸受回転数信号、(c)第1軸受が劣化した状態における第2ホール信号に基づく軸受動作情報としての軸受回転数信号、及び、(d)第1軸受が固着(故障)した状態における第2ホール信号に基づく軸受動作情報としての軸受回転数信号の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係るモータ及びモータの状態判定装置について図面を参照しながら説明する。
【0024】
<モータの実施の形態>
図1は、本発明に係る実施の形態のモータ10を備えるファン装置1の構成を概略的に示す正面図である。
図2は、ファン装置1の構成を概略的に示す断面図である。
図3は、ファン装置1が備える軸受部22A,22Bの構成を概略的に示す分解斜視図である。
図4は、ファン装置1が備える軸受部22A,22Bの構成を概略的に示す断面図である。
【0025】
以下の説明では、便宜上、軸線x方向において矢印a方向を上側aとし、矢印b方向を下側bとする。また、軸線xに垂直な径方向において、軸線xから遠ざかる方向(
図1の矢印c方向)を外周側cとし、軸線xに向かう方向(
図1の矢印d方向)を内周側dとする。以下の説明では、便宜上、
図1に示す方向をモータの側面とする。また、以下の説明では、便宜上、モータを上側aから下側bに向かって見る方向を正面、下側bから上側aに向かって見る方向を底面とする。
【0026】
図1乃至
図4に示すように、本実施の形態に係るモータ10は、回転軸23を有するロータと、ロータの周方向に対向して配置されているステータ24と、回転軸23を回転可能に支持する一対の軸受部22A,22Bとを備える。一対の軸受部22A,22Bは、回転軸23とともに回転可能な第1軸受221A,221B、第1軸受221A,221Bとともに回転可能な第2軸受222A,222B、及び、第1軸受221A,221Bと第2軸受222A,222Bとが連動して回転するように結合しているカップリング部223A,223Bをそれぞれ有し、一対の軸受部22A,22Bがそれぞれ有するカップリング部223A,223Bは、連動して回転するように結合している。以下、モータ10を備えるファン装置1の構成及び動作を具体的に説明する。
【0027】
[ファン装置の構成]
図1に示すように、ファン装置1は、ハブ25に複数の羽根28を備えるインペラ30と、インペラ30の外周を覆いファン装置1の外形形状を定めるケーシング40とを備える。インペラ30は、ハブ25がケーシング40の内部において軸線xを中心とする中央部に配置されている。
図2に示すように、ファン装置1は、インペラ30のハブ25の内部にモータ10が配置されている。
【0028】
図2に示すように、モータ10は、例えば、回転軸23、回転軸23に接続されているロータヨーク26、及びインペラ30がロータを構成するアウターロータ型のブラシレスDC(Direct Current)モータである。モータ10は、回転軸23、軸受ハウジング21、一対の軸受部22A,22B、ステータ24、ロータヨーク26、マグネット27、基板29、ロータ動作検出センサ(ロータ動作検出部の一例)36、及び、軸受動作検出部37を備える。
【0029】
図2に示すように、回転軸23は、軸線x方向を長手方向として配置されている棒状部材である。軸受ハウジング21は、ケーシング40の中央部に支持される中空の筒状体である。軸受ハウジング21は、一対の軸受部22A,22Bを介して回転軸23を回転可能に支持している。
図3に示すように、軸受ハウジング21は、円筒状のハウジング本体211の軸線x方向の一端に軸受部22Aを支持する軸受支持部212と、ハウジング本体211の軸線x方向の他端に軸受部22Bを支持する軸受支持部213とを備える。軸受支持部212,213は、それぞれ、ハウジング本体211の内周面に形成されている。
【0030】
図3及び
図4に示すように、一対の軸受部22A,22Bは、具体的には、上述のように軸受ハウジング21の軸線x方向の一端に設けられている軸受支持部212に支持される軸受部22Aと、軸受ハウジング21の軸線x方向の他端に設けられている軸受支持部213に支持される軸受部22Bとである。一対の軸受部22A,22Bは、それぞれ、第1軸受221A,221B、第2軸受222A,222B、及びカップリング部223A,223Bを備える。一対の軸受部22A,22Bそれぞれにおいて、第2軸受222A,222Bは、回転軸23の軸線x方向において第1軸受221A,221Bとは離れた位置に設けられている。
【0031】
図4に示すように、第1軸受221A,221Bは、第1内輪2211、第1外輪2212、及び第1転動体2213を備える。第1内輪2211は、
図2に示す回転軸23の外周面23aに装着可能な内周面を有する環状の部材である。第1内輪2211は、回転軸23の外周面23aに装着されることにより、回転軸23とともに回転可能である。第1外輪2212は、第1内輪2211の外周側cに設けられている。第1外輪2212は、第1内輪2211と同軸で第1内輪2211よりも大径の環状の部材である。第1転動体2213は、第1内輪2211と第1外輪2212との間に複数配置されている球状の部材である。第1軸受221は、第1内輪2211、第1外輪2212、及び第1転動体2213の間に潤滑剤が封入されている。
【0032】
第2軸受222A,222Bは、第2内輪2221、第2外輪2222、及び第2転動体2223を備える。第2内輪2221は、カップリング部223A,223Bに装着可能な内周面を有する環状の部材である。第2内輪2221は、カップリング部223A,223Bに装着されることにより、カップリング部223A,223Bを介して第1外輪2212とともに回転可能である。第2外輪2222は、第2内輪2221の外周側cに設けられている。第2外輪2222は、第2内輪2221と同軸で第2内輪2221よりも大径の環状の部材である。第2転動体2223は、第2内輪2221と第2外輪2222との間に複数配置されている球状の部材である。第2軸受222A,222Bは、第2内輪2221、第2外輪2222、及び第2転動体2223の間に潤滑剤が封入されている。第2軸受222A,222Bは、例えば、ゴムシールタイプのベアリングを用いるなどの手法により、第1軸受221A,221Bと比較して高回転でも回転しにくい性質を有していてもよい。
【0033】
カップリング部223A,223Bは、それぞれ第1軸受収容部2231、第2軸受収容部2232、段差部2233、及び、結合部2234を備える。カップリング部223A,223Bは、それぞれ径方向の寸法が異なる筒状の部分である第1軸受収容部2231及び第2軸受収容部2232と、第1軸受収容部2231及び第2軸受収容部2232を繋ぐ段差部2233とにより、第1外輪2212と第2内輪2221とを回転可能に結合している。
【0034】
第1軸受収容部2231は、第1軸受221の第1外輪2212を収容可能な内周面を有する。具体的には、第1軸受収容部2231は、第1外輪2212と協働して回転可能な形状及び寸法に形成されている。
【0035】
第2軸受収容部2232は、回転軸23の外周面23aに対して所定の空隙を有する形状及び寸法の内周面を有する。また、第2軸受収容部2232は、第2軸受222の第2内輪2221を収容可能な外周面を有する。第2軸受収容部2232は、第2内輪2221と協働して回転可能な形状及び寸法に形成されている。
【0036】
また、軸線x方向において上側aに設けられているカップリング部223Aと下側bに設けられているカップリング部223Bとは、連動して回転するように結合している。カップリング部223A,223Bは、具体的には、軸線x方向において第1軸受収容部2231とは反対側の端部に設けられている結合部2234A,2234Bにより、上側aのカップリング部223Aと、下側bのカップリング部223Bとが連動して回転するように結合している。上側aのカップリング部223Aに設けられている結合部2234Aと、下側bのカップリング部223Bに設けられている結合部2234Bとは、嵌合や接合などの構造により連動して回転するように結合している。結合部2234Aは、結合部2234Bの突部を受容可能な窪み部を有するように形成されている。結合部2234Bも、結合部2234Aの突部を収容可能な窪み部を有するように形成されている。カップリング部223A,223Bは、結合部2234Aの突部と結合部2234Bの突部が互いに収容しあうことにより、カップリング部223Aまたはカップリング部223Bの一方が回転する際に結合部2234Aと結合部2234Bとが接してカップリング部223Aまたはカップリング部223Bの他方とともに一体となって回転することができる。カップリング部223A,223Bがこのように構成されていることにより、軸線x方向上側aの第2軸受222Aと下側bの第2軸受222Bとが連動して回転することができる。
【0037】
なお、結合部2234A,2234Bの結合方法、それぞれの形状などは、特に限定されない。結合部2234A,2234Bは、カップリング部223A,223Bのどちらか一方の回転に応じて、他方が一体となって回転することができるように構成されていればよい。また、結合部2234A,2234Bは、モータ10として組み立てることが可能であれば、一体で形成されていてもよい。
【0038】
図2に示すように、ステータ24は、ケーシング40の例えば、下側bに固定されている。ステータ24は、例えば、複数の電磁鋼板を積層して形成されたステータコア241と、ステータコア241上に巻回されたコイル242と、ステータコア241に設けられたインシュレータ243と、を備えている。
【0039】
ロータヨーク26は、例えば、インペラ30のハブ25の内周部に設けられている。ロータヨーク26は、マグネット27を収容するために、例えば、概略筒状に形成されている。ロータヨーク26は、ハブ25と別体で形成しても一体で形成してもよい。マグネット27は、ロータヨーク26の内周面に取り付けられている。マグネット27は、内周側dに設けられているステータ24との間に所定の間隙を有するように設けられている。
【0040】
基板29は、
図2に示すように、軸受部22A,22Bの少なくとも一方、例えば、ステータ24の軸線x方向の他端にあたる下側の軸受部22Bの外周側cに設けられている。基板29は、例えば、軸受部22Bの外周側cに略円環形状に形成されている板状の基板である。基板29の上側aには、ロータ動作検出部としてのロータ動作検出センサ36が搭載されている。また、基板29の下側bには、軸受動作検出部37の軸受動作検出センサ372が搭載されている。
【0041】
ロータ動作検出センサ36は、上述のように基板29の上側aに搭載されている。ロータ動作検出センサ36は、ロータを構成しているインペラ30のハブ25の内周面に設けられているマグネット27の磁界範囲、例えば、マグネット27の下側bに配置されている。ロータ動作検出センサ36は、ロータに取り付けられているマグネット27が回転するのに伴い、このマグネット27の回転動作に応じた位置信号であるロータ動作情報としての第1ホール信号(ロータ動作情報の一例)を出力する。ロータ動作情報とは、具体的には、例えば、ロータの回転数あるいは回転速度の情報などのロータの回転数に応じた情報であり、具体的には、上述の第1ホール信号または第1ホール信号から算出したロータの回転数の情報(ロータ回転数信号)である。なお、ロータ動作検出センサ36の数は、本実施の形態に限定されない。
【0042】
軸受動作検出部37は、軸受動作検出マグネット371と軸受動作検出センサ372とにより構成されている。軸受動作検出マグネット371は、
図4に示すように、下側bの軸受部22Bの第1外輪2212の外周側c、例えば、軸受部22Bの第1外輪2212の外周側cを覆い第1外輪2212とともに回転可能なカップリング部223Bの第1軸受収容部2231の外周側cに設けられている。軸受動作検出マグネット371は、このように配置されていることで、第1外輪2212とともに回転可能である。軸受動作検出センサ372は、軸受動作検出マグネット371の磁界範囲、具体的には、軸受動作検出マグネット371の外周側cに位置する基板29の下側bに搭載されている。軸受動作検出センサ372は、第1外輪2212とともに回転するカップリング部223に取り付けられている軸受動作検出マグネット371が回転するのに伴い、この軸受動作検出マグネット371の回転動作に応じたホール信号である軸受動作情報としての第2ホール信号を出力する。軸受動作情報とは、具体的には、例えば、軸受の回転数あるいは回転速度の情報であり、具体的には、第2ホール信号または第2ホール信号から算出した第1軸受221の回転数に応じた情報(軸受回転数信号)である。なお、軸受動作検出部37の数は、本実施の形態に限定されない。
【0043】
<モータの状態判定装置の構成>
次に、モータの状態判定装置の構成について説明する。
【0044】
本実施の形態において、モータ10の駆動制御装置3は、モータ10の軸受部22A,22Bの状態を判定する状態判定装置として機能する。駆動制御装置3は、モータ10の軸受動作検出部37の軸受動作検出センサ372が出力した軸受動作情報と、ロータ動作検出センサ36が出力したロータ動作情報とを用いて第1軸受221の回転運動の状態を判定する状態判定部としての軸受異常判定部35を備える。後述するように、軸受異常判定部35は、軸受動作情報に基づいて、第1軸受221が劣化しているか否かを判定する。また、軸受異常判定部35は、軸受動作情報とロータ動作情報とに基づいて、第1軸受が故障しているか否かを判定する。以下、モータの状態判定装置として機能するモータ10の駆動制御装置3について説明する。
【0045】
図5は、本発明の実施の形態に係るモータ10の駆動制御装置3の機能ブロック図である。
図6に示すように、モータ10の駆動制御装置(状態判定装置の一例)3は、速度指令解析部31、第1回転数算出部321、第2回転数算出部322、PWM(Pulse Width Modulation)指令部33、PWM信号生成部34、軸受異常判定部(状態判定部の一例)35を備える。駆動制御装置3は、例えば、MCU(Micro Controller Unit)のように、本発明に係る駆動制御装置3による下記の機能ブロックを実現するためのプログラムを含む各種コンピュータプログラムを実行可能な情報処理装置と、コンピュータプログラムやプログラム実行時のデータなどを記憶するROM(Read Only Memory)のような記憶装置とにより実現される。また、ROMには、後述の軸受異常判定部35による処理で用いられる第1軸受221が劣化していると判定する際に用いられる閾値、及び、第1軸受221が故障していると判定される際の軸受回転数信号(軸受動作情報の一例)S5に対するロータ回転数信号(ロータ動作情報の一例)S2の比率に関する情報も格納されている。
【0046】
速度指令解析部31は、サーバの制御部など不図示の外部機器からのモータ10の速度指令信号Scを受信し、PWM指令部33に指示を与えるための目標回転数信号S1を生成する。
【0047】
第1回転数算出部321は、モータ10に取り付けられてロータのマグネット27の回転数を検出するために設けられているロータ動作検出センサ36が取得した第1ホール信号Sh1(ロータの回転数に関する情報;ロータ動作情報の一例)を取得して、第1ホール信号Sh1に基づいてロータの回転数を算出してロータ回転数信号S2を出力する。第1回転数算出部321は、ロータ回転数信号S2をPWM指令部33及び軸受異常判定部35に出力する。また、第1回転数算出部321は、算出したロータの回転数をFG(Frequency Generator)信号FGとして外部機器に出力する。
【0048】
第2回転数算出部322は、モータ10において軸受部22A,22Bの第1軸受221A,221Bの第1外輪2212の回転数を検出するために設けられている軸受動作検出部37から取得した第2ホール信号Sh2(第1軸受221の第1外輪2212の回転数に関する情報)を取得して、第2ホール信号Sh2に基づいて第1外輪2212の回転数を算出して軸受回転数信号S5を出力する。第2回転数算出部322は、軸受回転数信号S5を軸受異常判定部35に出力する。
【0049】
PWM指令部33は、速度指令解析部31から出力された目標回転数信号S1、及び、第1回転数算出部321から出力されたロータ回転数信号S2に基づいて生成するPWM設定指示信号S3をPWM信号生成部34に出力する。PWM設定指示信号S3は、PWM信号生成部34が生成するPWM信号の設定、つまりモータ10を所望の回転数で駆動するのに必要なPWM信号のデューティ比を指示する信号である。
【0050】
PWM信号生成部34は、PWM指令部33が出力したPWM設定指示信号S3に基づいて、モータ駆動部2を制御する駆動制御信号Sd、つまり所望のデューティ比のPWM信号S4を生成し、出力する。
【0051】
モータ駆動部2は、駆動制御信号Sdに基づいてモータ10を駆動する。
【0052】
軸受異常判定部35は、第1回転数算出部321が算出したロータ動作情報、及び、第2回転数算出部322が算出した軸受動作情報に基づいて一対の軸受部22A,22Bの回転運動の状態を判定する状態判定部として機能する。
【0053】
軸受異常判定部35は、軸受動作検出センサ372から軸受動作情報、つまり第1外輪2212が回転していることを示すパルス信号の第2ホール信号Sh2が出力され、第2回転数算出部322から軸受回転数信号S5が出力された場合、軸受部22A,22Bにおいて第2軸受222が回転軸23とともに回転していると判定する。
【0054】
軸受異常判定部35は、軸受動作情報(例えば、軸受回転数信号S5)とロータ動作情報(例えば、ロータ回転数信号S2)とを比較することによって、軸受部22A,22Bの第1軸受221に劣化や故障などの異常が生じているか否かを検出する。具体的には、軸受異常判定部35は、軸受動作情報とロータ動作情報とを比較することによって、第1外輪2212が回転している場合であり、第1外輪2212の回転数に対するロータの回転数の比率が所定の数値未満である場合に、第1軸受221の劣化(機能低下)が生じていると判定する。また、軸受異常判定部35は、軸受動作情報とロータ動作情報とを比較することによって、第1外輪2212の回転数に対するロータの回転数の比率が所定の数値以上である場合に、第1軸受221の異常状態、すなわち劣化が進行し、回転軸23と第1軸受221とが固着、つまり故障していると判定する。軸受異常判定部35は、検出した軸受部22A,22Bの状態の情報を異常報知信号Saとして外部機器に出力する。なお、軸受異常判定部35は、ロータ動作情報と軸受動作情報とを用いて第1軸受221の劣化または故障を判定するものであればよい。このため、軸受異常判定部35は、ロータ回転数信号S2に代えて、例えば、第1ホール信号Sh1またはFG信号を処理に用いてもよい。また、軸受異常判定部35は、軸受回転数信号S5に代えて、例えば、第2ホール信号Sh2を処理に用いてもよい。
【0055】
[ファン装置及び駆動制御装置の動作]
次に、以上説明した構成を備えるファン装置1及びファン装置1のモータ10の駆動制御装置3の動作について説明する。
【0056】
図6は、ファン装置1が備えるモータ10における、下側bの軸受部22Bが劣化した場合の軸受部22A,22Bの動作、及び、軸受動作検出部37の動作の推移を示すためのフローチャートである。
図7は、ファン装置1が備えるモータ10における、上側aの軸受部22Aが劣化した場合の軸受部22A,22Bの動作、及び、軸受動作検出部37の動作の推移を示すためのフローチャートである。
図8は、モータ10の駆動制御装置3による軸受部22A,22Bの状態検出処理の例を示すためのフローチャートである。
図9は、ファン装置1が備えるモータ10における、(a)第1ホール信号Sh1に基づくロータ動作情報としてのFG信号、(b)第1軸受221が正常に動作している状態における第2ホール信号Sh2に基づく軸受動作情報としての軸受回転数信号S5、(c)第1軸受が劣化した状態における第2ホール信号Sh2に基づく軸受動作情報としての軸受回転数信号S5、及び、(d)第1軸受が固着(故障)した状態における第2ホール信号Sh2に基づく軸受動作情報としての軸受回転数信号S5の模式図である。
【0057】
以下、
図6、及び、
図9を参照して、ファン装置1が備えるモータ10における、下側bの軸受部22Bが劣化した場合の軸受部22A,22Bの動作、及び、軸受動作検出部37の動作の推移を説明する。
【0058】
図6に示すように、モータ10は、駆動電流が流れることで、回転軸23の回転が開始する(ステップS1)。モータ10の回転軸23は、
図2に示すように、軸受ハウジング21に装着された一対の軸受部22A,22Bによって回転可能に支持されている。また、回転軸23は、上側aの一端がインペラ30のハブ25と結合している。このため、モータ10が駆動されることによって回転軸23が軸線xを中心に回転し、それに伴ってインペラ30も軸線xを中心に回転する。
【0059】
モータ10は、一対の軸受部22A,22Bが、回転軸23とともに回転可能な第1軸受221A,221Bと、第1軸受221A,221Bとともに回転可能な第2軸受222A,222Bと、をそれぞれ備える。ここで、一対の軸受部22A,22Bは、第1軸受221A,221Bの第1内輪2211と回転軸23の外周面23aとが接しているため、第1内輪2211と回転軸23とがともに回転する。第1軸受221A,221Bは、第1外輪2212がカップリング部223A,223Bの第1軸受収容部2231と接している。第2軸受222A,222Bは、第2内輪2221がカップリング部223A,223Bの第2軸受収容部2232と接している。このため、軸受部22A,22Bは、第1軸受221A,221Bが劣化または故障して第1内輪2211と第1外輪2212とが一体となって回転すると、第2軸受222A,222Bが回転軸23とともに回転する。
【0060】
以上のように構成されているモータ10の軸受部22A,22Bにおいて、通常(稼働後の所定時間)の状態では、第1軸受221A,221Bが正常な動作機能を有しているため、第1内輪2211が第1転動体2213及び第1外輪2212に支持されて回転軸23とともに回転する。この場合において、ロータ動作検出センサ36は、ロータが、例えば、所定の回転数で回転しているときに
図9(a)のように回転動作に応じたパルス信号(第1ホール信号Sh1)を出力する。
【0061】
つまり、モータ10では、通常の状態において、第1内輪2211が回転軸23とともに回転するため、第1外輪2212及び第1外輪2212とともに回転可能なカップリング部223A,223Bは回転しない。このため、カップリング部223Bの外周側cに取り付けられている軸受動作検出マグネット371も回転しない(ステップS11)。軸受動作検出マグネット371が回転しないため、軸受動作検出センサ372から出力される第2ホール信号Sh2は、
図9(b)に示すように、パルス信号ではなくHighまたはLowの一定の信号として出力される(ステップS12)。
【0062】
その後、モータ10において、軸受部22A,22Bのうち、下側b、すなわち、軸線x方向において軸受動作検出マグネット371が設けられている側の軸受部22Bの第1軸受221Bの動作機能の劣化が開始する(ステップS2)。軸受部22Bにおいて、第1軸受221Bの回転トルクが第2軸受222Aの起動トルクを上回ると、カップリング部223B及び第2軸受222Bの回転が開始する(ステップS3)。具体的には、軸受部22Bでは、第1軸受221Bの第1内輪2211と、第1外輪2212及び第1転動体2213が一体となって回転軸23とともに回転する。モータ10では、このように第1軸受221Bの動作機能が劣化、あるいは故障したなどの異常が発生した状態に、第1軸受221Bでは、その劣化や故障状況に応じて、第1軸受221Bの回転トルクが上昇し、第1内輪2211とともに第1外輪2212が回転する。このため、第1外輪2212及び第1外輪2212とともに回転可能なカップリング部223Bも、第1外輪2212とともに回転する。そして、カップリング部223Bの外周側cに取り付けられている軸受動作検出マグネット371も回転を開始する(ステップS31)。この場合、第1軸受221Bは、第1内輪2211と第1転動体2213とが完全に固着していないため、ロータとは異なる比率で回転動作を継続している。つまり、第1軸受221Bにおいて、第1外輪2212の回転が回転軸23(ロータ)に対して低回転数で回転していてロータの回転数とは同期していないため、軸受動作検出センサ372から出力される第2ホール信号Sh2は、
図9(c)に示すように、
図9(a)に示したFG信号とは異なる周期で出力されている(ステップS32)。
【0063】
カップリング部223A,223Bは、上述のように第1軸受収容部2231の内周面が第1軸受221A,221Bの第1外輪2212とともに回転可能に接続している。このように、第1軸受221Bにおいて第1内輪2211とともに第1外輪2212が回転する(共回りする)状態になる(ステップS4)と、第1軸受221Bの回転トルクが第2軸受222Bの起動トルクを上回る。このとき、軸受部22Bでは、カップリング部223Bを介して第2軸受222Bが回転軸23とともに回転を開始する。すなわち、第2軸受222Bの第2内輪2221は、上述のようにカップリング部223Bの第2軸受収容部2232の外周面に取り付けられていて、カップリング部223Bの回転に応じて回転可能である。このため、モータ10において、カップリング部223B、及び第2軸受222Bが回転軸23とともに回転する(ステップS5)。
【0064】
モータ10では、このように第1軸受221Bの動作機能が劣化、あるいは故障した状態が進行すると、第1軸受221Bにおいて、第1内輪2211、第1転動体2213、及び第1外輪2212の回転数は、徐々に上昇し最終的に回転軸23と一体となって回転軸23と同一の回転数で回転する。このため、第1外輪2212及び第1外輪2212とともに回転可能なカップリング部223Bも、第1外輪2212とともに回転軸23と同一の回転数で回転する。また、カップリング部223Bの外周側cに取り付けられている軸受動作検出マグネット371の回転数も第1外輪2212の回転数と同様に上昇し、回転軸23と同一の回転数で回転する(ステップS51)。つまり、第1軸受221Bにおいて、第1外輪2212の回転が回転軸23(ロータ)とは同期しているため、軸受動作検出センサ372から出力される第2ホール信号Sh2は、周波数が上昇し、
図9(d)に示すように、
図9(a)に示したFG信号とはほぼ同様の周波数で出力される(ステップS52)。
【0065】
次に、
図7、及び、
図9を参照して、ファン装置1が備えるモータ10における、上側aの軸受部22Aが劣化した場合の軸受部22A,22Bの動作、及び、軸受動作検出部37の動作の推移を説明する。なお、以下の説明において、先に説明した下側bの軸受部22Bが劣化した場合の軸受部22A,22Bの動作、及び、軸受動作検出部37の動作の推移と共通の処理については同一の番号を用い、相違点のみを説明する。
【0066】
図7に示すように、モータ10は、駆動電流が流れることで、回転軸23の回転が開始し、ステップS1からステップS12までの動作及び処理が行われる。
【0067】
その後、モータ10において、軸受部22A,22Bのうち、上側a、すなわち、軸線x方向において軸受動作検出マグネット371が設けられている側とは反対側の軸受部22Aの第1軸受221Aの動作機能の劣化が開始する(ステップS20)。軸受部22Aにおいて、第1軸受221Aの回転トルクが第2軸受222Aの起動トルクを上回ると、カップリング部223A及び第2軸受222Aの回転が開始する(ステップS30)。具体的には、軸受部22Aでは、第1軸受221Aの第1内輪2211と、第1外輪2212及び第1転動体2213が一体となって回転軸23とともに回転する。モータ10では、このように第1軸受221Aの動作機能が劣化、あるいは故障したなどの異常が発生した状態において、第1軸受221Aでは、その劣化や故障状況に応じて、第1軸受221Aの回転トルクが上昇し、第1内輪2211とともに第1外輪2212が回転する。このため、第1外輪2212及び第1外輪2212とともに回転可能なカップリング部223Aも、第1外輪2212とともに回転する。
【0068】
結合部2234A,2234Bにより、カップリング部223Aとともに回転可能に結合されているカップリング部223Bも回転する(ステップS6)。そして、カップリング部223Bの外周側cに取り付けられている軸受動作検出マグネット371も回転を開始する(ステップS61)。この場合、第1軸受221Aは、第1内輪2211と第1転動体2213とが完全に固着していないため、ロータとは異なる比率で回転動作を継続している。つまり、第1軸受221Aにおいて、第1外輪2212の回転が回転軸23(ロータ)に対して低回転数で回転していてロータの回転数とは同期していないため、軸受動作検出センサ372から出力される第2ホール信号Sh2は、
図9(c)に示すように、
図9(a)に示したFG信号とは異なる周期で出力されている(ステップS62)。
【0069】
カップリング部223A,223Bは、上述のように第1軸受収容部2231の内周面が第1軸受221A,221Bの第1外輪2212とともに回転可能に接続している。このように、第1軸受221Aにおいて第1内輪2211とともに第1外輪2212が回転する(共回りする)状態になる(ステップS40)と、第1軸受221Aの回転トルクが第2軸受222Aの起動トルクを上回る。このとき、軸受部22Aでは、カップリング部223Aを介して第2軸受222Aが回転軸23とともに回転を開始する。すなわち、第2軸受222Aの第2内輪2221は、上述のようにカップリング部223Aの第2軸受収容部2232の外周面に取り付けられていて、カップリング部223Aの回転に応じて回転可能である。このため、モータ10において、カップリング部223A、及び第2軸受222Aが回転軸23とともに回転する。また、カップリング部223Aに結合されている下側bのカップリング部223Bも、カップリング部223Aと一体となって回転する(ステップS7)。
【0070】
モータ10では、このように第1軸受221Aの動作機能が劣化、あるいは故障した状態が進行すると、第1軸受221Aにおいて、第1内輪2211、第1転動体2213、及び第1外輪2212の回転数は、徐々に上昇し最終的に回転軸23と一体となって回転軸23と同一の回転数で回転する。このため、第1外輪2212及び第1外輪2212とともに回転可能なカップリング部223A,223Bも、第1外輪2212とともに回転軸23と同一の回転数で回転する。また、カップリング部223Bの外周側cに取り付けられている軸受動作検出マグネット371の回転数も第1外輪2212の回転数と同様に上昇し、回転軸23と同一の回転数で回転する(ステップS71)。つまり、第1軸受221Aにおいて、第1外輪2212の回転が回転軸23(ロータ)とは同期しているため、軸受動作検出センサ372から出力される第2ホール信号Sh2は、周波数が上昇し、
図9(d)に示すように、
図9(a)に示したFG信号とはほぼ同様の周波数で出力される(ステップS72)。
【0071】
図8は、モータ10の駆動制御装置3による軸受部22A,22Bの状態検出処理の例を示すためのフローチャートである。
図8に示す駆動制御装置3による軸受部22A,22Bの状態検出処理の例では、軸受異常判定部35は、上述のように、第1外輪2212が回転している場合であり、第1外輪2212の回転数に対するロータの回転数の比率が所定の数値未満である場合に、第1軸受221の劣化(機能低下)が生じていると判定する。また、軸受異常判定部35は、第1外輪2212の回転数に対するロータの回転数の比率が所定の数値以上である場合に、第1軸受221の劣化が進行し、回転軸23と第1軸受221とが固着、つまり故障していると判定する。
図8に示す軸受部22A,22Bの状態検出処理の例では、軸受動作情報として軸受動作検出部37から出力される第2ホール信号Sh2を用いる。また
図8に示す軸受部22A,22Bの状態検出処理の例では、ロータ動作情報としてFG信号を用いる。
【0072】
軸受異常判定部35は、第2回転数算出部322を介して第2ホール信号Sh2について、
図9(c)または
図9(d)で示したパルス出力波形であるか否かを判定する(ステップS101)。
【0073】
第2ホール信号Sh2がパルス出力波形ではない場合、つまり
図9(b)で示した正常な状態の信号である場合(ステップS101:NO)、軸受異常判定部35は、第2ホール信号Sh2に基づいて、モータ10の軸受部22A,22Bにおいて第1軸受221A,221Bは正常(第1内輪2211が回転軸23と回転し、第1外輪2212が回転していない状態)であると判定する(ステップS102)。
【0074】
第2ホール信号Sh2がパルス出力波形である場合、つまり
図9(c)または
図9(d)で示した第1軸受221A,221Bが劣化や故障したときに出力される信号である場合(ステップS101:YES)、軸受異常判定部35は、第2ホール信号Sh2とFG信号とを比較し、ロータの回転数に対する第1外輪の回転数の比率が所定の値であるか否かを判定する(ステップS103)。例えば、第1軸受221Aが劣化した場合は、第1軸受221Aの回転トルクが徐々に高まることにより、第2ホール信号Sh2のパルス信号の周期がFG信号のようにパルス信号の周期に近づく。すなわち、言い換えると、第1軸受221Aが劣化した場合は、第1軸受221Aの回転数が、モータ10の実回転数である所定の回転数に近づく。本ステップでは、第2ホール信号Sh2とFG信号FGの周期の比率に基づき、第1軸受221Aが劣化しているか、あるいは、第1軸受221Aが故障しているかのいずれかを判定する。
【0075】
第2ホール信号Sh2の周期が、
図9(c)で示したようにFG信号の周期と比較して所定の比率のパルス出力波形ではない(本実施の形態では、
図9(a)のFG信号よりも長い周期)場合(ステップS103:NO)、軸受異常判定部35は、第1外輪2212が回転しているが、その回転が回転軸23(ロータ)の回転とは同期していないため、第1軸受221が所定回転数未満で回転している劣化状態であると判定する(ステップS104)。
【0076】
一方、第2ホール信号Sh2の周期が、
図9(d)で示したようにFG信号の周期と比較して所定の比率(本実施の形態では、
図9(a)のFG信号と同じ周期)のパルス出力波形である場合(ステップS103:YES)、軸受異常判定部35は、第1軸受221において、第1外輪2212の回転が回転軸23(ロータ)の回転と同期している(第1軸受221が回転軸23と同じ所定の回転数で回転している)と判定し、第1軸受221Aの第1内輪2211、第1外輪2212、及び第1転動体2213が固着している故障状態であると判定する(ステップS104)。
【0077】
以上のように構成されているモータ10によれば、第1軸受221及び第2軸受222を有する一対の軸受部22A,22Bにより回転軸23を支持しているモータ10において、第1軸受221の第1外輪2212の動作状況を検出する軸受動作検出部37から第2ホール信号Sh2を出力することができる。また、モータ10の駆動制御装置3によれば、モータ10から出力された第2ホール信号Sh2に基づく軸受回転数信号S5から軸受部22A,22Bの動作状態を判定している。このため、軸受部22A,22Bにおいて第1軸受221または第2軸受222のいずれが動作しているか、すなわち軸受部22A,22Bの動作状態を容易に判定することができる。つまり、以上のように構成されているモータ10の駆動制御装置3によれば、モータ10の軸受部22A,22Bの動作状態を容易に判定することができるため、軸受部22A,22Bの交換時期、寿命を予測することができる。
【0078】
モータ10によれば、軸線x方向において上側aと下側bとに離れて設けられている一対の軸受部22A,22Bそれぞれが有しているカップリング部223A,223Bが連動して回転するように結合しているため、一方の軸受部、例えば、軸受部22Bの異常発生状況を軸受動作検出部37の軸受動作検出マグネット371と軸受動作検出センサ372により監視することにより、一対の軸受部22A,22Bのいずれか一方で発生する故障を検出ことができる。つまり、モータ10によれば、簡易な構造で軸受部22A,22Bの故障を検出して軸受の信頼性を向上することができる。また、モータ10によれば、カップリング部223A,223Bの結合部2234A,2234Bが噛み合うことにより一体となって回転可能になる構造のため、高回転時でもカップリング部223A,223B、カップリング部223A,223Bに取り付けられている第2軸受222A,222Bが回転しにくくなる。
【0079】
従って、以上のように構成されているモータ10の駆動制御装置3によれば、軸受の信頼性を向上することができる。
【0080】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のモータ及びモータの状態判定装置を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。例えば、以上説明した実施の形態において、モータ10は、アウターロータ型のブラシレスDCモータであったが、本発明においてモータの種類や構造はこれに限定されない。また、以上説明した実施の形態では、軸受部22A,22Bの第1軸受221と第2軸受222とが軸線x方向に離れた位置に配置されている場合には、カップリング部223を用いて第1外輪2212と第2内輪2221とを接続していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1外輪2212と第2内輪2221とを溶接などで連結して同様の作用を得てもよい。また、モータ10の駆動制御装置3において、異常報知信号SaとFG信号とが共通の出力ラインで出力されてもよい。また、モータ10の駆動制御装置3において、異常判定に用いるモータ10のロータ回転数信号S2と軸受回転数信号S5の所定値は、上述の例には限定されず、任意の値を採用することができる。また、軸受回転数信号S5の周期とロータ回転数信号S2の周期とが同等であるか否かの判定は、軸受回転数信号S5の周期とロータ回転数信号S2の周期との相関関係に基づいて判定すればよいため、両周期が同一でなくてもよい。さらに、本実施の形態において、軸受部22A,22Bの回転動作を検出する軸受動作検出部37は、下側bの軸受部22Bにのみ取り付けられていたが、上側aの軸受部22Aに軸受動作検出部37が取り付けられていても、一対の軸受部22A,22Bにそれぞれ軸受動作検出部37が取り付けられていてもよい。
【0081】
第2軸受222A,222Bは、上述したゴムシールタイプのベアリングを用いる以外の手法により、第1軸受221A,221Bと比較して高回転でも回転しにくい性質を有していてもよい。具体的には、第2軸受222Bの外周側cに設けられている軸受動作検出マグネット371の近傍に鉄板などの磁性部材を例えば、軸受ハウジング21の内周側dに付加する構造とし、カップリング部223Bが回転しにくくなるようにしてもよい。また、第2軸受222A,222Bの第2内輪2221の内周側dに設けられている、カップリング部223A,223Bの外周側cにマグネットを配置し、ステータ24に対して磁力を発生させてカップリング部223A,223Bが回転しづらくなるような吸引力を与えるようにしてカップリング部223A,223Bが回転しにくくなるようにしてもよい。
【0082】
また、例えば、第1軸受221A,221Bと第2軸受222A,222Bは、それぞれに用いられる構成要素の機械的摩擦係数や潤滑剤の粘度の相違などにより、互いの動粘度が相違してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…ファン装置、2…モータ駆動部、3…駆動制御装置(状態判定装置の一例)、10…モータ、21…軸受ハウジング、22A,22B…軸受部、23…回転軸、23a…外周面、24…ステータ、25…ハブ、26…ロータヨーク、27…マグネット、28…羽根、29…基板、30…インペラ、31…速度指令解析部、33…PWM指令部、34…PWM信号生成部、35…軸受異常判定部(状態判定部の一例)、36…ロータ動作検出センサ(ロータ動作検出部の一例)、37…軸受動作検出部、40…ケーシング、211…ハウジング本体、212…軸受支持部、213…軸受支持部、221A,221B(221)…第1軸受、222A,222B(222)…第2軸受、223A,223B…カップリング部、241…ステータコア、242…コイル、243…インシュレータ、321…第1回転数算出部、322…第2回転数算出部、371…軸受動作検出マグネット、372…軸受動作検出センサ、2211…第1内輪、2212…第1外輪、2213…第1転動体、2221…第2内輪、2222…第2外輪、2223…第2転動体、2231…第1軸受収容部、2232…第2軸受収容部、2233…段差部、2234A、2234B(2234)…結合部、Sc…速度指令信号、S1…目標回転数信号、S2…ロータ回転数信号(ロータ動作情報の一例)、S3…PWM設定指示信号、S4…PWM信号、S5…軸受回転数信号(軸受動作情報の一例)、Sd…駆動制御信号、Sh1…第1ホール信号(ロータ動作情報の一例)、Sh2…第2ホール信号(軸受動作情報の一例)、Sa…異常報知信号、FG…FG信号