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特許7335807アリルモノマーと過酸化物とをベースにした有機ガラス製造用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】アリルモノマーと過酸化物とをベースにした有機ガラス製造用組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/34 20060101AFI20230823BHJP
   C08F 18/24 20060101ALI20230823BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C08F4/34
C08F18/24
G02C7/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019522844
(86)(22)【出願日】2017-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 FR2017052957
(87)【国際公開番号】W WO2018078291
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】1660378
(32)【優先日】2016-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ラファージュ,メラニ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン エメリク,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ディソン,ジャン-ピエール
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-229020(JP,A)
【文献】特開平01-228957(JP,A)
【文献】特表2011-515548(JP,A)
【文献】特開昭58-167124(JP,A)
【文献】特開平08-208716(JP,A)
【文献】特開平08-073514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00- 4/58
C08F 4/82
C08F 6/00-246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種または複数のアリルモノマーおよび/またはアリルコポリマーの重合での下記式(I)の少なくとも1種の過酸化物の使用:
1-アルコキシ-1-t-アルキルパーオキシシクロヘキサン (I)
(ここで、
アルコキシ基は1~4個の炭素原子を有し、
t-アルキル基は4~12個の炭素原子を有し、
シクロヘキサン環は1~3個のアルキル基(各アルキル基は1~3個の炭素原子を有する)で置換されていてもよい)
であって、
アリルモノマーがビス(アリルカーボネート)モノマーから選択され、
アリルコポリマーが、ビス(アリル)カーボネートモノマーとポリエーテルジオールとの重合で得られ、かつ/又は式(II):
[ここで、
a およびR c は下記式のアリル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、
(ここで、R d は水素原子、ハロゲン原子、および直鎖または分岐鎖のC 1 -C 4 アルキル基から選択される)
b はアルキレン基、アルキレンエーテル基、芳香族アルキレンエーテル基、アルキレンポリエーテル基、アルキレンカーボネート基およびこれらの混合物の中から選択される]
のジオールビス(アリルカーボネート)モノマーの重合で得られる、使用。
【請求項2】
式(I)の過酸化物が下記の中から選択される請求項1に記載の使用:1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサン(TAPMC)、1-メトキシ-1-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン(TBPMC)、1-メトキシ-1-t-アミルパーオキシ-35-トリメチルシクロヘキサン、1-メトキシ-1-t-ブチルパーオキシ-35-トリメチルシクロヘキサン、1-エトキシ-1-t-アミルパーオキシシクロヘキサン(TAPEC)、1-エトキシ-1-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン(TBPEC)、1-エトキシ-1-t-アミルパーオキシ-35-トリメチルシクロヘキサンおよび/または1-エトキシ-1-t-ブチルパーオキシ-35-トリメチルシクロヘキサン。
【請求項3】
式(I)の過酸化物が1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサンである請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
アリルモノマーが下記の式(II)のジオールビス(アリルカーボネート)モノマーから選択される請求項1~3のいずれか一項に記載の使用:
[ここで、
aおよびRcは下記式のアリル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、
(ここで、Rdは水素原子、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子または塩素原子、および直鎖または分岐鎖のC1-C4アルキル基から選択される)
bはアルキレン基、アルキレンエーテル基、芳香族アルキレンエーテル基、アルキレンポリエーテル基、アルキレンカーボネート基およびこれらの混合物の中から選択される]
【請求項5】
アリルモノマーが下記の中から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載の使用:
エチレングリコールビス(アリルカーボネート)、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、エチレングリコールビス(2-クロロアリルカーボネート)、トリエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、1,3-プロパンジオールビス(アリルカーボネート)、プロピレングリコールビス(2-エチルアリルカーボネート)、1,3-ブテンジオールビス(アリルカーボネート)、14-ブテンジオールビス(2-ブロモアリルカーボネート)、ジプロピレングリコールビス(アリルカーボネート)、トリメチレングリコールビス(2-エチルアリルカーボネート)、ペンタメチレングリコールビス(アリルカーボネート)、イソプロピレンビスフェノールA-ビス(アリルカーボネート)およびこれらの混合物。
【請求項6】
アリルモノマーがジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)である請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
アリルコポリマーが請求項4または5に記載のジオールビス(アリルカーボネート)モノマーの重合で得られる請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
アリルコポリマーがビス(アリル)カーボネートモノマーとポリエーテルジオールとの重合で得られる請求項1~のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか一項に記載の式(I)の少なくとも一種の過酸化物、請求項1、5および6のいずれか一項に記載の少なくとも一種のアリルモノマー、および/または、請求項1及び8のいずれか一項に記載の少なくとも一種のアリルコポリマーを含む重合可能な組成物。
【請求項10】
式(I)以外の過酸化物、好ましくは下記の式(III)の過酸化物の中から選択される少なくとも1種の追加の過酸化物をさらに含む請求項に記載の組成物:
ビス-t-アルキルパーオキシシクロヘキサン (III)
[ここで、
各t-アルキル基は4~12個の炭素原子を有し、シクロヘキサン環は1~3個のアルキル基(各アルキル基は1~3個の炭素原子を有する)で置換されていてもよく]
好ましくは、式(III)の過酸化物は1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-35-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサンおよびこれらの混合物から成る群の中から選択される。
【請求項11】
式(I)の過酸化物と、式(I)以外の過酸化物、好ましくは式(III)の過酸化物の中から選択される少なくとも1種の追加の過酸化物との比が、99:1~30:70の間、好ましくは99:1~50:50の間、より好ましくは80:20~60:40の間にある請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも一種の光開始剤、好ましくはアセトフェノンおよびベンゾフェノンの誘導体から選択される光開始剤をさらに含む請求項11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項12のいずれか一項に記載の組成物の有機ガラス、好ましくは眼鏡用レンズの製造での使用。
【請求項14】
請求項12のいずれか一項に記載の重合可能な組成物を重合して得られるポリマー組成物。
【請求項15】
請求項12のいずれか一項に記載の重合可能な組成物を重合して得られる有機ガラス。
【請求項16】
器具、光検出器の窓または眼鏡用レンズの中から選択される請求項15に記載の有機ガラス。
【請求項17】
1種または複数の有機染料および/または顔料で着色された眼鏡用レンズから選択される請求項16に記載の有機ガラス。
【請求項18】
請求項12のいずれか一項に記載の重合可能な組成物を40~140℃、好ましくは50~130℃、より好ましくは60℃~130の範囲の温度で重合する段階を少なくとも1つ含むことを特徴とする請求項14に記載のポリマー組成物の製造方法。
【請求項19】
少なくとも下記の一連の工程を含む有機ガラスの製造方法:
(1)請求項12のいずれか一項に記載の重合可能な組成物を、少なくとも一つの金型を備えた装置に導入する工程、
(2)上記組成物を40~140℃、好ましくは50~130℃、より好ましくは60~130℃の範囲の一又は複数の温度で重合する工程、
(3)得られた有機ガラスを取り出す工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のアリルモノマーおよび/または少なくとも一つのアリルコポリマーの重合での特定の有機過酸化物の使用に関するものである。
本発明はさらに、少なくとも1種のアリルモノマーおよび/または少なくとも一種のアリルコポリマーと、以下に定義の構造を有する少なくとも一種の有機過酸化物とを含む重合性組成物にも関するものである。
本発明はさらに、有機ガラス(verres organiques)、好ましくは顔料および/または有機染料すなわち少なくとも一種の着色剤を用いて着色ができる眼鏡用レンズ製造での上記定義の組成物の使用にも関するものである。
本発明はさらに、上記定義の組成物を重合して有機ガラスを製造する方法と、その有機ガラス自体にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機ガラス、例えば光学機器または光学検出器のウインドウ(窓)または眼鏡用レンズ(lentilles ophtalmiques)は、一種または複数の重合開始剤、特に有機過酸化物の存在下で一種または複数のアリルモノマーおよび/またはアリルコポリマーのフリーラジカル重合で製造できる。
【0003】
この重合は例えば成形工程を含むプロセス中に実施することができる。その場合には、重合開始剤の存在下でアリルモノマーおよび/またはアリルコポリマーの混合物を含む組成物を実質的に凹凸形状を有する金型中に注型し、緩やかな温度でゆっくり重合し、硬化させる。重合完了後、用途に応じた種々の加工処理を行って所望の有機ガラス製品にする。別の方法では、上記組成物を2枚の金型の間に注型し、重合後に対応形状の有機ガラスを得る。
【0004】
上の重合開始剤として通常使用されている有機過酸化物は加熱された時に一般に極めて不安定な化学種である。従って、制御できない温度上昇があった時に、ある種の有機過酸化物は発熱し、自己加速分解し、発火および/または爆発する危険がある。こうした挙動のために有機ガラスの製造場所への危険物の輸送と貯蔵に関する特別な規則に合わせるのが難しい。
【0005】
そのため、有機過酸化物を溶剤中に液体の形で配合(希釈)して熱的不安定性を減らすことで、実質的に安全に輸送、貯蔵できるようにするのが特に有利である。この溶剤は「フレグマタイザー(phlegmatisants)、脱感作剤」ともよばれる
【0006】
この目的で、ジアルキルパーオキシジカーボネートのファミリーに属する有機過酸化物はアリルモノマー、例えばジエチレングリコ-ルビス(アリルカーボネート)(ADC)(例えば、PPG社からCR-39(登録商標)の名称で市販され、また、三井グループのAcomon社からRAV7の名称で市販されている)に溶かされている。この場合、アリルモノマーは反応性フレグマタイザー(phlegmatisant reactif)の役目をする。すなわち、アリルモノマーは有機過酸化物を可溶化する一方、有機ガラスを形成するアリルモノマーおよび/またはアリルコポリマーの重合に関与する。
【0007】
特に、アリルモノマーおよび/またはアリルコポリマーのラジカル重合時に、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)中にジイソプロピルパーオキシジカーボネート(一般にIPPとよばれる)を溶かして使用する(組成物の総重量に対して27重量%の量)ことによって、有機ガラスの光学特性、特に透明性が向上し、着色が減り、機械的特性が良くなる。換言すれば、上記のような有機過酸化物組成物を用いて得られる有機ガラスは透明、無色で、摩耗の点で優れた機械的特性を有する。
このような有機過酸化物系組成物はArkema社からLuperox(登録商標)IPP27の名称で市販され、Akzo社からPerkadox(登録商標)IPP-NS27の名称で市販されている。
【0008】
しかし、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートをベースにした組成物は保管や輸送時に温度が制御不能に上昇した場合に制御不能な分解を起こすリスクが極めて高い。
【0009】
事実、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートは「冷たい(コールド)過酸化物(peroxyde froid)」とよばれる。すなわち、この過酸化物単独または他の過酸化物および/またはフレグマタイザー(脱感作剤)(反応性でも非反応性でもよい)との混合物中でのこの過酸化物の輸送最高温度(制御温度ともよばれる)20℃である(危険物の輸送に関するUN勧告の2015年の19版の第2.5.3.2.4セクションに従った輸送最高温度)。
【0010】
より一般的には、本発明で「冷たい(コールド)過酸化物」とは上記定義の輸送最高温度を有する任意の過酸化物系組成物を意味する。
【0011】
従って、アリルモノマー中にジイソプロピルパーオキシジカーボネートを希釈した場合でも、制御できない分解のリスクを最小限にするために、上記Luperox(登録商標)IPP27やPerkadox(登録商標)IPP-NS27のような製品の輸送は常に20℃以下の温度で行なう必要がある。そのため、輸送と保管の条件が大幅に複雑になる。
【0012】
さらに、有機過酸化物を脱感作(フレグマタイズ)する機能を有するアリルモノマーの重合が開始するリスクを減らすためにも、上記製品の輸送および保管中の温度を制御する必要がある。
【0013】
また、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートにはアリルモノマー中の濃度が30重量%以上になると貯蔵および輸送中に反応性が過剰に高くなるという欠点もある。
【0014】
安全上の問題に関する上記の欠点を克服するために、有機ガラスを製造するためのアリルモノマーをベースにしたラジカル重合の開始剤としてのジイソプロピルパーオキシジカーボネートを他のものに替えるという考えはこれまでにも提案されている。
【0015】
例えば、芳香族ジアシルパーオキサイドまたはパーエステルタイプの使用が既に提案されている。
【0016】
しかし、このタイプの有機過酸化物、特に過酸化ベンゾイルは有機ガラスを強く黄変させる。パーエステルはアリルモノマー中に溶け難い上に、有機ガラスの機械的特性を弱くするという欠点を有している。これは、特に市販のLuperox(登録商標)575(t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート)、Luperox(登録商標)256(2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイル)パーオキシ)-ヘキサン)の場合である。
【0017】
同様に、アルキルヒドロパーオキシド、例えば、tert-ブチルヒドロパーオキシドも考えられている。
【0018】
しかし、これらの過酸化物は、ジアルキルパーオキシジカーボネートと比べて、アリルモノマーのラジカル重合を効果的に行うためにはフリーラジカルを発生させる温度が高過ぎるという欠点を有している。すなわち、アルキルヒドロパーオキシドの半減期温度(HLT)(すなわちアリルモノマーの重合時間と同程度の分解時間で所定時間内に過酸化物の半分が分解する温度)はかなり高く、ほぼ数10℃である。より低い温度でフリーラジカルを発生させるために第一鉄イオンのような化学的活性化システムを加えているが、得られるポリマーが着色し、有機ガラスの光学的品質を低下させることが証明されている。しかも、これらの活性化ヒドロシステムはアリルモノマーに難溶性である。
【0019】
10時間半減期温度が130℃以下である有機過酸化物のファミリーの中で、環状ペルケタール、例えばLuperox(登録商標)331またはTrigonox(登録商標)22(1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン)またはLuperox(登録商標)531またはTrigonox(登録商標)122(1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン)の名称で市販のものをテストした。これらの有機過酸化物は室温で輸送、保存できるという利点を有し、上記の危険物の輸送に関するUN勧告の輸送最高温度の問題はない。
【0020】
しかし、これらの市販製品で使用される有機過酸化物は炭化水素、鉱油またはフタル酸のような溶媒に希釈される。これらの溶媒は重合後に回収された有機ガラスの光学的および機械的性質を劣化させる。そのため、これらの製品は安全上の理由でアリルモノマーのラジカル重合で第3の非重合性材料を導入するが、それによって最終的に得られたポリマーが不均一になるリスクが増加するという欠点がある。
【0021】
変形方法では、他のパーカーボネート、例えばLuperox(登録商標)221または225(それぞれジ-n-プロピルパーカーボネートおよびジ-sec-ブチルパーカーボネート)の商品名のものの使用が考えられており、得られる有機ガラスは良好な光学的特性および機械的特性を有する。しかし、これらのパーカーボネートは依然として冷たい過酸化物に対応するため、輸送および保管の点でジイソプロピルパーオキシジカーボネート組成物と同じ安全上の問題がある。
【0022】
そのため、公知の過酸化物を用いて得られる有機ガラスは、冷たい過酸化物を用いて得られた有機ガラスよりも機械的および光学的な特性が劣るものになることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】米国特許第号US6506864明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の一つの目的は、上記の欠点を克服して、アリルモノマーおよび/またはアリルコポリマーのラジカル重合で使用される有機過酸化物を、単独または混合物の形で安全に貯蔵、輸送でき、しかも、得られた有機ガラスの光学的および機械的特性を損なわない他の重合開始剤に代えることにある。
換言すれば、単独または混合物として、厳密に20℃以上の高い温度条件下で貯蔵および輸送が可能で、しかも、光学的および機械的特性、特に透明性、低汚染性、耐着色性、耐摩耗性に優れた有機ガラスを製造することが可能な他の重合開始剤を提供するというニーズが真に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の対象は、下記式(I)の少なくとも1種の過酸化物の一種または複数のアリルモノマーおよび/またはアリルコポリマーの重合での使用にある:
1-アルコキシ-1-t-アルキルパーオキシシクロヘキサン (I)
[ここで、
アルコキシ基は1~4個の炭素原子を有し、
t-アルキル基は4~12個の炭素原子を有し、
シクロヘキサン環は1~3個の炭素原子を有するアルキル基(各アルキル基は1~3個の炭素原子を有する)で置換されていてもよい]
【発明の効果】
【0026】
式(I)の過酸化物は、それ単独または反応性または非反応性の他の過酸化物および/またはフレグマタイザー(phlegmatisants、脱感作剤)との混合物中で、有機過酸化物に関するUN推奨、2015、第19版、セクション2.5.3.2.4(UN, 19eme 饅ochdition de 2015, dans la section 2.5.3.2.4 relative aux peroxydes organiques)に従った輸送最高温度(温度制御)が厳密に20℃以上であるという利点を有している。
【0027】
式(I)の過酸化物を単独でまたは混合物として使用することで、上記の冷たい過酸化物、特に、ジアルキルパーオキシジカーボネートのファミリーに属する有機過酸化物、特に、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)に溶解したジイソプロピルパーオキシジカーボネートおよびLuperox(登録商標)IPP27またはPerkadox(登録商標)IPP-NS27の名称で市販のものと比較した時に、輸送および貯蔵上の安全条件を向上させることができる。
【0028】
すなわち、本発明の過酸化物はハンドリングが容易で、完全に安全で、輸送および貯蔵のコストを著しく削減することができる。
【0029】
式(I)の過酸化物の他の利点は単独で使用できる点にある。すなわち、有機ガラスの光学的および機械的特性に影響を与える危険性のある安全上の理由で添加されるオイルのような非重合性溶剤を使用しない状態で使用でき、しかも、輸送または貯蔵時の温度で重合を調節できない重合開始のリスクを増加させる危険性のあるアリルモノマーのような重合性溶剤を使用しないという利点がある。
【0030】
一般的には、式(I)の過酸化物を使用することで、過酸化物の生産現場で重合性溶剤または非重合性溶剤に貯蔵するための貯蔵設備(または溶剤を収容するための装置)が全く必要なくなる。これは大きな省スペース化であり、メンテナンスコストを大きく下げることができる。
【0031】
換言すれば、本発明の過酸化物は重合性溶剤または非重合性の溶剤の使用に関して生じる全ての問題を解決することができる。
【0032】
より具体的には、本発明の過酸化物の使用で、通常の過酸化物用フレグマタイザー(脱感作剤)、例えば炭化水素、例えばイソドデカン、鉱油、エステル、例えばフタルレート液体、エチルベンゼンまたはアリルモノマーを使用しないで済む。
【0033】
すなわち、式(I)の過酸化物は、熱的に不安定で、制御できない温度上昇で分解し易い従来の過酸化物よりはるかに広範囲の容器または装置に収容できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の過酸化物のアリルモノマーおよび/またはアリルコポリマーの効率的なラジカル重合を可能にする10時間半減期温度(HLT10時間)を与える。
【0035】
本発明の過酸化物は重合温度に近い1時間半減期温度(HLT1時間)を与えるのが好ましい。
【0036】
本発明組成物の重合温度は使用した過酸化物の1時間半減期温度に対してプラス/マイナス20℃、好ましくは、過酸化物の1時間半減期温度に対してプラス/マイナス10℃であるのが好ましい。
【0037】
混合物の過酸化物の場合の重合温度は最高HLTを有する過酸化物の1時間半減期温度に対してプラス/マイナス20℃、好ましくは最高HLTを有する過酸化物の1時間半減期温度に対してプラス/マイナス10℃であるのが好ましい。
【0038】
「重合温度」という用語は架橋の熱サイクル中に達する最高温度を意味する。
【0039】
従って、本発明の過酸化物は、有機ガラスの着色を回避するために添加する第一鉄イオンのような化学的に活性させるシステムを使用せずにアリルモノマーおよび/またはアリルコポリマーの重合を開始させることができる。
【0040】
式(I)の一種または複数の過酸化物の存在下で、一種または複数のアリルモノマーおよび/またはアリルコポリマーを重合して得られた有機ガラスは良好な光学的および機械的特性を有する。特に、本発明で得られた有機ガラスは透明で、わずかに着色しているか無色で、耐摩耗性である。
【0041】
従って、式(I)の過酸化物は、一種または複数のアリルモノマーおよび/またはアリルコポリマーを重合して有機ガラスを製造するのに使用できる。
【0042】
本発明の他の対象は、上記の式(I)の少なくとも一種の過酸化物と、少なくとも1種のアリルモノマーおよび/または少なくとも一つのアリルコポリマーとを含む組成物に関するものである。
【0043】
本発明組成物は重合後に光学的および機械的特性に優れた有機ガラスにすることができる。
【0044】
従って、本発明組成物は重合可能またはポリマー化可能である。
【0045】
本発明の別の対象は上記定義の組成物を重合して得られる有機ガラスにある。
【0046】
本発明はさらに、金型を備えた装置で上記定義の組成物を重合する工程を少なくとも含む有機ガラスの製造方法に関するものである。
【0047】
本発明の他の特徴および利点は以下の説明および実施例から明らかになるであろう。以下では、特に断らない限り、値の範囲の限界は範囲に含まれる。
【0048】
「少なくとも1種」という用語は「1つまたは複数」と同じである。
【0049】
使用
上記のとおり、本発明は、式(I)の一種または複数の過酸化物の1種または複数のアリルモノマーおよび/または1種または複数のアリルコポリマーの重合開始剤としての使用に関するものである。
【0050】
すなわち、本発明は特に、一種または複数のアリルモノマーおよび/または一種または複数のアリルコポリマーのラジカル重合での式(I)の一種または複数の過酸化物の使用に関するものである。
換言すれば、式(I)の一種または複数の過酸化物をラジカル重合開始剤として使用する。
【0051】
式(I)の過酸化物は一種または複数のアリルモノマーおよび/または一種または複数のアリルコポリマーのラジカル重合で単独で使用でき、または混合して、特に他の重合開始剤と一緒に使用することができる。
【0052】
式(I)の過酸化物は単独で使用するのが好ましい。
【0053】
あるいは、式(I)の過酸化物は一種または複数の下記の式(III)の過酸化物と混合して使用することができる。
ビス-t-アルキルパーオキシシクロヘキサン (III)
(ここで、
各t-アルキル基は4~12個の炭素原子を有し、シクロヘキサン環は1~3個のアルキル基で置換されていてもよく、このアルキル基は1~3個の炭素原子を有する)
【0054】
式(III)の化合物は、1、1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-3、3、5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサンおよびこれらの混合物からなる群から選択するのが好ましい。
【0055】
特に好ましい混合物は、式(I)としての1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサンと、一種または複数の式(III)の化合物、好ましくは、1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-3、3、5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1ジ(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサンおよびこれらの混合物の中から選択される化合物とを含む。
が挙げられます。
【0056】
式(I)の過酸化物を一種または複数の他の重合開始剤、好ましくは一種または複数の式(III)の過酸化物と混合して使用する場合の、式(I)の化合物と他の重合開始剤、好ましくは、一種または複数の式(III)の過酸化物との比は99:1~30:70の間、好ましくは50:50~99:1の間、より好ましくは60:40~80:20の間である。
【0057】
式(I)の過酸化物
本発明の過酸化物は下記の式(I)の構造を有する:
1-アルコキシ-1-t-アルキルパーオキシシクロヘキサン (I)
(ここで、
アルコキシ基は1~4個の炭素原子を含み、
t-アルキル基は4~12個の炭素原子を含み、
シクロヘキサン環は1~3つのアルキル基で置換されていてもよく、ここで、各アルキル基は1~3個の炭素原子を有する)
【0058】
式(I)のアルコキシ基はメトキシまたはエトキシ基、好ましくはメトキシ基に対応するのが好ましい。
【0059】
式(I)のt-アルキル基は4~8個の炭素原子、好ましくは4個または5個の炭素原子、より好ましくは5個の炭素原子を有するのが好ましい。
【0060】
本発明の一つの実施形態では、シクロヘキサン環は1~3のアルキル基(各アルキル基は1~3個の炭素原子を有する)で置換されており、好ましくは3つのアルキル基(各アルキル基は1個の炭素原子を有する)で置換されている。
【0061】
式(I)の過酸化物は1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサン(TAPMC)、1-メトキシ-1-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン(TBPMC)、1-メトキシ1-t-アミルパーオキシ-3、3、5-トリメチルシクロヘキサン、1-メトキシ-1-t-ブチルパーオキシ-3、3、5-トリメチルシクロヘキサン、1-エトキシ-1-t-アミルパーオキシシクロヘキサン(TAPEC)、1-エトキシ-1-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン(TBPEC)、1-エトキシ-1-t-アミーパーオキシ-3、3、5-トリメチルシクロヘキサンおよび/または1-エトキシ-1-t-ブチルパーオキシ3,3,5-トリメチルシクロヘキサンから選択するのが好ましい。
【0062】
式(I)の過酸化物はアルケマ社からLuperox(登録商標)V10の商品名で販売されている1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサン(TAPMC)であるのがより好ましい。
【0063】
式(I)の過酸化物は10時間半減期温度(HLT10時間で表示)が60℃以上且つ130℃以下であるのが有利である。
【0064】
混合物
式(I)の過酸化物は混合物、特に、他の重合開始剤との混合物として使用することもできる。
式(I)の過酸化物は一種または複数の下記の式(III)の過酸化物と混合して使用するのが好ましい。
ビス-t-アルキルパーオキシシクロヘキサン (III)
(ここで、
t-アルキル基は4~12個の炭素原子を有し、
シクロヘキサン環は1~3個のアルキル基(各アルキル基は1~3個の炭素原子を有する)で置換されていてもよい)
【0065】
式(III)の化合物は1、1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-3、3、5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンおよびこれらの混合物からなる群から選択するのが好ましい。
【0066】
特に好ましい混合物は式(I)の化合物としての1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサンと、少なくとも1種の式(III)の化合物、好ましくは1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-3、3、5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンおよびこれらの混合物から選択される化合物とからなる。
【0067】
式(I)の過酸化物を一種または複数の他の重合開始剤、好ましくは一種または複数の式(III)の過酸化物と混合して使用する場合の、式(I)の化合物と他の重合開始剤、好ましくは一種または複数の式(III)の過酸化物との比は99:1~30:70の間、好ましくは50:50~99:1の間、より好ましくは60:40~80:20の間である。
【0068】
アリルモノマーおよび/またはアリルコポリマー
アリルモノマーはビス(アリルカーボネート)モノマーから選択できる。
アリルモノマーは下記式(II)のジオールビス(アリルカーボネート)から選択するのが有利である:
[ここで、
aおよびRcは下記式のアリル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、
【0069】
(ここで、
dはから下記選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、好ましくはフッ素または塩素原子、
-直鎖または分岐鎖のC1-C4アルキル基)
bはアルキレン基、アルキレンエーテル基、芳香族アルキレンエーテル基、アルキレンポリエーテル基、アルキレンカーボネート基およびこれらの混合物から選択される]
【0070】
式(II)のRaおよびRcは同一であるのが好ましい。
好ましくは、RaとRcが同一でアリル基を表し、Rdが水素原子、塩素原子、臭素原子、メチルまたはエチルを表す。
【0071】
より好ましくは、RaとRcが同一でアリル基を表し、Rdが水素原子を表す。
【0072】
好ましくは、Rbはアルキレン基、アルキレンエーテル基または芳香族アルキレンエーテル基を表す。
【0073】
より好ましくは、Rbはアルキレン基またはアルキレンエーテル基を表す。
【0074】
さらに好ましくは、Rbはアルキレンエーテル基、特に下記式の基である:
-CH2CH2-O-CH2CH2
【0075】
式(II)において、Rbは脂肪族である(すなわち芳香族アルキレンエーテルではない)のが好ましい。換言すれば、アリルモノマーは式(II)の脂肪族ジオールビス(アリルカーボネート)モノマーから選択するのが好ましい。
【0076】
アリルモノマーは下記から選択するのが好ましい:
エチレングリコールビスアリルカーボネート、ジエチレングリコールビス(2-メチルカーボネート)、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)またはADC、エチレングリコールビス(2-クロロアリルカーボネート)、トリエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、1,3-プロパンジオールビス(アリルカーボネート)、プロピレングリコールビス(2-エチルアリルカーボネート)、1,3-ブテンジオールビス(アリルカーボネート)、1、4-ブテンジオールビス(2-ブロモアリルカーボネート)、ジプロピレングリコールビス(アリルカーボネート)、トリメチレングリコールビス(2-エチルアリルカーボネート)、ペンタメチレングリコールビス(アリルカーボネート)、イソビスフェノール-A ビス(アリルカーボネート)およびこれらの混合物
【0077】
好ましいアリルモノマーはジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)で、ADCとよばれ、PPG社からCR-39の商品名で販売され、三井グループのAcomon社からRAV7の商品名で販売されている。
【0078】
他のアリルモノマーも単独または上記ジオールビス(アリルカーボネート)モノマー、例えばジオール構造を有しないビス(アリルカーボネート)モノマーと組み合わせて使用することができる。
【0079】
アリルコポリマーは上記ジオールビス(アリルカーボネート)モノマーの重合で得ることができる。
【0080】
このアリルコポリマーはポリオールポリ(アリルカーボネート)から選択するのが好ましい。
【0081】
ポリオールポリ(アリルカーボネート)はポリオールとビス(アリルカーボネート)モノマーとの重合で得られる。
【0082】
ポリオールポリ(アリルカーボネート)の製造で使用するポリオールの中では特に下記のポリオールを挙げることができる:1,6-ヘキサンジオール、
1,4-ジメタノールシクロヘキサン、ポリラクトンジオール、ポリエトキシ化グリセロールオール、α、α-キシレンジオール、1、4-ビス(ヒドロキシエチル)トルエン、2,2-(ビス(4-ヒドロキシエチル)フェニル)プロパン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート。
【0083】
ポリオールポリ(アリルカーボネート)から選択されるアリルコポリマーは上記のアリルモノマー、特に式(II)のジオールビス(アリルカーボネート)モノマーと組み合わせて使用することができる。
【0084】
アリルコポリマーはビス(アリル)カーボネートモノマーとポリエーテルジオールとの重合から得ることができる。
【0085】
ポリエーテルジオールはポリエーテルジオールのホモポリマー、コポリマーまたはブロックポリマーから選択するのが好ましい。その例は[特許文献1](米国特許第号US6506864明細書)に記載されている。
【0086】
本発明は、好ましくは、1種または複数のアリルモノマー、好ましくは式(II)のジオールビス(アリルカーボネート)モノマーから選択されるアリルモノマーのラジカル重合での少なくとも1種の式(I)の過酸化物の使用に関するものである。
【0087】
より好ましくは、本発明はジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(ADC)のラジカル重合での1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサン(TAPMC)の使用に関するものである。
【0088】
組成物
すでに述べたように、本発明組成物は少なくとも一種のアリルモノマーおよび/または少なくとも一種のアリルコポリマーと、上記の式(I)の過酸化物から選択される少なくとも一種の重合開始剤とを含む。
【0089】
本発明組成物は少なくとも1種のアリルモノマーを含むのが好ましい。
【0090】
本発明組成物はビス(アリルカーボネート)モノマーから選択される少なくとも一種のアリルモノマーを含むのか好ましい。
【0091】
好ましくは、本発明組成物は式(II)のジオールビス(アリルカーボネート)モノマーから選択される少なくとも一種のアリルモノマー、特に式(II)の脂肪族ジオールビス(アリルカーボネート)モノマーを含む。
【0092】
本発明の一の実施形態では、本発明組成物は少なくとも一種のアルコキシ基がメトキシまたはエトキシ基を表す式(I)の過酸化物と、式(II)中のRaおよびRcが同一でアリル基を表し、Rdが水素原子を表し、Rbがアルキレン基またはアルキレンエーテル基を表す式(II)のジオールビス(アリルカーボネート)モノマーから選択される少なくとも一種のアリルモノマーとを含む。
【0093】
好ましくは、本発明組成物は1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサンと、上記の式(II)のジオールビス(アリルカーボネート)モノマーから選択される少なくとも一種のアリルモノマーとを含む。
【0094】
より好ましくは、本発明組成物は、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)と、1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサンとを含む。
【0095】
上記過酸化物は、組成物中に存在するアリルモノマーおよび/またはアリルコポリマーの総重量に対して0.01~10重量%、好ましくは0.01~5重量%の範囲の量で本発明組成物中に存在することができる。
【0096】
好ましくは、過酸化物は組成物中に存在するアリルモノマーの全重量に対して0.01~10重量%、好ましくは0.01~5重量%の範囲の量で本発明組成物中に存在することができる。
【0097】
本発明組成物はさらに、式(I)の有機過酸化物以外の少なくとも1種の異なる重合開始剤を含むことができる。
【0098】
この場合、重合開始剤は式(I)の有機過酸化物とは異なる追加の有機過酸化物または非過酸化物化合物にすることができる。
【0099】
特に、本発明組成物は式(I)の有機過酸化物とは異なる少なくとも1種の追加の有機過酸化物を含むことができる。
【0100】
この追加の有機過酸化物は下記の式(III)の過酸化物から選択するのが好ましい:
ビス-t-アルキルパーオキシシクロヘキサン (III)
(ここで、
t-アルキル基は4~12個の炭素原子を有し、
シクロヘキサン環は1~3個のアルキル基(各アルキル基は1~3個の炭素原子を有する)で置換されていてもよい)
【0101】
式(III)の化合物は1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-3、3、5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサンおよびこれらの混合物から選択するのが好ましい。
【0102】
特に好ましい混合物は、式(I)の化合物としての1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサンと、少なくとも1種の式(III)の化合物、好ましくは、1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-3、3、5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサンおよびこれらの混合物から成る群から選択される化合物とを含む。
【0103】
式(I)の過酸化物を式(I)以外の少なくとも1種の異なる追加の過酸化物、好ましくは式(III)の過酸化物から選択される追加の過酸化物と混合して使用する場合には、式(I)の過酸化物と式(I)以外の少なくとも1種の異なる追加の過酸化物、好ましくは式(III)の過酸化物から選択される追加の過酸化物との比率は99:1~30:70の間、好ましくは50:5099の間、より好ましくは60:40~80:20の間であるのが好ましい。
【0104】
本発明に係る組成物はさらに、1種以上の光開始剤、例えばアセトフェノンおよびベンゾフェノンの誘導体から選択される光開始剤を含むことができる。
【0105】
本発明組成物はさらに、アリルモノマー以外に1種または複数の追加のモノマーを含むことができる。
【0106】
この追加のモノマーはアクリルモノマーまたはメタクリルモノマー、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ビニルアセテート、イソアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルアジペートから選択できる。
【0107】
本発明組成物はさらに、少なくとも一種の顔料および/または少なくとも一種の有機染料すなわち少なくとも1種の着色剤を含むことができる。
【0108】
この場合、本発明組成物は、組成物中に顔料を分散させるための少なくとも一種の分散剤を含むことができる。
【0109】
好ましい一つの実施形態では、本発明組成物はジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)と、1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサンと、少なくとも一種の顔料および/または有機染料とを含み、必要に応じてさらに少なくとも1種の分散剤を含む。
【0110】
好ましい着色剤は顔料である。
【0111】
組成物中に存在し得える顔料は有機または無機の顔料である。
【0112】
無機顔料の中では特に無機顔料を挙げることができ、これは必要に応じて表面処理することができる。
【0113】
無機顔料は酸化チタン、特に二酸化チタン、酸化鉄、例えば赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、酸化ジルコニウムから選択するのが好ましい。
【0114】
有機顔料はフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、クロモフタルビオレット、酸化クロモフタルグリーンから選択できる。
【0115】
顔料の中ではフタロシアニン顔料、特に、銅フタロシアニン顔料、特にブルー銅フタロシアニン顔料および酸化鉄が挙げられる。
【0116】
本発明の一つの実施形態では、顔料は無機である。顔料が有機であるのが有利である。
【0117】
本発明組成物は室温で特定の液体である。すなわち、10℃~30℃の間の温度、好ましくは15℃~25℃の間の温度で液体である。
【0118】
上記定義の本発明組成物は重合性組成物である。すなわち、熱の作用下、特に少なくとも40℃~140℃の範囲の温度で重合可能である。
【0119】
本発明はさらに、上記で定義の重合性組成物の有機ガラスの製造、好ましくは顔料および/または有機染料を用いて着色することが可能な眼鏡用レンズの製造での使用に関するものである。
【0120】
本発明組成物は離型剤、例えばZelec(登録商標)UNを含むのが好ましい。
【0121】
有機ガラス
本発明の重合性組成物は硬化後に有機ガラス、プラスチックレンズになる。
従って、本発明は、上記定義の組成物の重合で得られる有機ガラスに関するものである。
【0122】
より具体的には、本発明はさらに、上記定義の組成物のラジカル重合で得られる有機ガラスに関するものである。
【0123】
有機ガラスは、機器または光検出器の窓または眼鏡用レンズから選択するのが好ましい。有機ガラスは眼鏡用レンズから選択するのが好ましい。
【0124】
本発明で眼鏡用レンズという用語は眼鏡に取り付けることができるレンズを意味し、目を保護し、特に太陽から保護し、特に紫外線から保護し(サングラス)または屈折異常(ビジョン)を補正する機能を有する。後者の場合、眼鏡用レンズは単焦点、二焦点、三焦点または累進レンズであるのが好ましい。
【0125】
すなわち、眼鏡用レンズは多焦点、累進または逆累進レンズすなわち複数の焦点を有するレンズにすることができる。
【0126】
得られた眼鏡用レンズはコーティングで被覆するか、表面処理することができる。
【0127】
有利には、本発明は、上記定義の組成物を重合して得られる眼鏡用レンズに関するものである。
【0128】
本発明の一つの実施形態では、眼鏡用レンズは1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサンと、式(II)のジオールビス(アリルカーボネート)モノマーから選択される少なくとも一種のアリルモノマーからなる組成物の重合で得られる。
【0129】
好ましくは、眼鏡用レンズは1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサンと、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)とからなる組成物の重合で得られる。
【0130】
本発明の一つの実施形態では、有機ガラスは1種または複数の顔料および/または有機染料で着色された眼鏡用レンズから選択される。
【0131】
この実施形態では、眼鏡用レンズは1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサンと、式(II)のジオールビス(アリルカーボネート)モノマーのから選択される少なくとも一種のアリルモノマーと、1種または複数の顔料および/または有機染料とを含む組成物の重合から得られるのが好ましい。
【0132】
より具体的には、眼鏡用レンズは1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサンと、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)と、1種または複数の顔料および/または有機染料とを含む組成物の重合から得られるのが好ましい。
【0133】
重合性組成物から得られる製品
本発明の別の対象は、式(I)の一種または複数の過酸化物の存在下で一種または複数アリルモノマーおよび/または、一種または複数のアリルコポリマーの重合で得られる製品にある。
【0134】
すなわち、本発明の製品は、式(I)の一種または複数の過酸化物の存在下で、一種または複数のアリルモノマーおよび/または一種または複数のコポリマーアリルを重合して得られるポリマー組成物(またはポリマー製品)である。
【0135】
従って、このポリマー組成物は上記定義の重合性組成物、特に、重合性組成物の各成分の重合で得られる。
【0136】
換言すれば、上記ポリマー組成物は、優れた機械的および光学的特性、特に光学的性質を有する任意の物品を製造するための物質として機能する樹脂に対応する。
【0137】
上記ポリマー組成物またはポリマー製品は、その優れた機械的および光学的特性、特に、透明度および低着色性あるいは無着色性を利用して、有機ガラスまたはその他の物品に成形するのが好ましい。
【0138】
上記ポリマー組成物は室温で固体である。すなわち、10℃~30℃の温度、好ましくは15℃~25℃の温度で固体である。
【0139】
ポリマー組成物の製造方法
本発明はさらに、上記定義の重合性組成物を40℃~140℃、好ましくは50℃~130℃、好ましくは60℃~130℃の少なくとも一つの範囲の温度で重合させる工程を含む上記定義のポリマー組成物の製造方法に関するものである。
【0140】
有機ガラスの製造方法
有機ガラスの製造方法は、少なくとも一つの金型を有する装置中で、上記定義の組成物を40℃~140℃、好ましくは50℃~130℃、好ましくは60℃~130℃の少なくとも一つの範囲の温度で重合させる工程を含む上記定義のポリマー組成物の製造方法に関するものである。
【0141】
本発明の一つの実施形態では、有機ガラスの製造方法が少なくとも下記の工程を含む:
(1)少なくとも一つの型を有する装置に上記定義の重合性組成物を導入する工程、
(2)上記組成物を40~140℃、好ましくは50~130℃、より好ましくは60~130℃の範囲の一つまたは複数の温度で重合する工程。この重合工程は収縮(ヒケ)の除去および重合制御のために一連の異なる温度で行うのが好ましい。
(3)有機ガラスを回収する工程。
【0142】
本発明の一つの実施形態では、上記の導入工程は、少なくとも一つの金型を有する装置中に本発明の重合性組成物の注型(キャスティング)または射出する工程である。
【0143】
上記装置は複雑な形状を有する少なくとも1つの金型、例えば、2枚の平面金型、凹部と凸部を有する金型、または凹形状を有する金型を有することができる。
【0144】
上記装置は凹部と凸部を有する金型であるのが好ましい。
【0145】
より一般的には、上記装置は所望の有機ガラスの最終幾何学形状に対応する幾何学形状を有する少なくとも1つの金型を有するのが好ましい。
【0146】
上記装置は、所望の有機ガラスの最終幾何学形状に対応する幾何学形状を有する一つの表面と、上記の最終幾何学形状の役目はしないが、後で処理が可能な有機ガラスの第2の表面を形成することができる別の面とを有する少なくとも1つの金型を有することができる。
【0147】
上記の導入工程は所望の表面形状を有する2つの型、例えば、凹形を有するモールドと凹形を有するモールドとを有する金型の間に重合性組成物を注入する工程にするのが好ましい。
【0148】
本発明の一つの実施形態では、上記組成物は式(I)の少なくとも1種の過酸化物と、式(II)のジオールビス(アリル)モノマーから選択される少なくとも1種のアリルモノマーと、少なくとも1種の顔料および/または有機染料とを含むのが好ましい。
【0149】
この実施形態では、上記組成物は少なくとも1種の分散剤を含むことができる。
【0150】
重合工程は特にラジカル重合である。
【0151】
重合工程は40~140℃、好ましくは50~130℃、より好ましくは60~130℃の温度範囲で重合を行なせるのに十分な時間、特に10時間~30時間、熱処理することで実施できる。
【0152】
温度は重合工程中に徐々に増加させることができる。
【0153】
この重合工程で所望の有機ガラスが得られる。
【0154】
有機ガラスの製造方法は、重合工程後に、ガラス中の残留応力を除去するために有機ガラスのアニール工程を含むことができる。このアニール工程は60~130℃、好ましくは70~100℃の温度で1時間~20時間の時間で行うことができる。
【0155】
有機ガラスの回収工程はモールドを開いて有機ガラスを回収する工程である。
【0156】
従って、有機ガラスの製造方法は、複雑な形状を有する少なくとも1つの金型、例えば2つの平面を有する金型、凹部と凸部を有する金型、好ましくは少なくとも一つの凹形金型と少なくとも1つの凸形金型と有する金型を有する装置に本発明組成物を注型(キャスティング)または射出ふる工程と、金型を閉じる工程と、上記定義の組成物を重合させる工程と、型を開いて有機ガラスを回収する工程とを有する。
【0157】
上述のように、本発明方法で眼鏡用レンズを製造することができる。
【0158】
本発明製造方法で得られる有機ガラスには任意タイプを処理、例えば表面処理をして、機械的および光学的特性またはその他の特性、例えば濡れ性を向上させることができる。
【0159】
既に述したように、本発明の一つの実施形態では、本発明の重合性組成物は少なくとも種または複数の着色剤、好ましくは少なくとも一種または複数の顔料および/または少なくとも種または複数の有機染料をさらに含むことができる。
【0160】
あるいは、本発明の有機ガラスの製造方法は、有機ガラスを得た後すなわち重合工程の後に、少なくとも1種の着色剤、好ましくは少なくとも一種の顔料を添加する工程をさらに含むことができる。
【0161】
本発明方法で得られる有機ガラスは優れた機械的および光学的特性を有している。
【0162】
本発明の有機ガラスの学的品質は以下の少なくとも一つを測定することによって評価できる:
(1)(ASTM規格D-542に従った)アッベ屈折計で測定可能な「屈折率(nD 20)」
(2)以下の式を用いて(ASTM規格D-1925-63に従った)Macbeth1500Plus分光光度計を用いて得られる黄色度指数(l'indice de jaunissement、YI):
YI=100/(1.277X-1.06Z)
(ここで、
X、YおよびZはCIE規格1976に従ったX-RITE社のSP60タイプの光測色計で380~780nmのスペクトル全体で測定したサンプルの三色座標(coordonnees trichromatique)である)
【0163】
黄色度指数YIはCIE規格1976に従ったX-RITE社のSP60タイプの光測色計で得るのが好ましい。
【0164】
本発明の有機ガラスのCIE規格1976に従った黄色度指数YIは-10~+10の間、好ましくは-5~+5の間、最も好ましくは-1~+2の間であるのが好ましい。
【0165】
ヘイズ値はASTM規格D1003規格に従って決定できる。
本発明の有機ガラスのヘイズ値は5以下、好ましくは1以下、さらにより好ましくは0.5以下であるのが好ましい。
【0166】
本発明の有機ガラスの機械的特性は下記のパラメータの少なくとも一つを測定することによって評価できる:
(1)(ASTM規格D-785に従った)ロックウェル硬度計を用いて測定したロックウェル硬度
(2)(ASTM規格D2240;BS903パートA26に従った)ショアD硬度
本発明の有機ガラスのショアD硬度は65.0以上であるのが好ましい。
(3)弾性率、または
(4)摩擦係数。
【0167】
以下、本発明の実施例を説明するが本発明が、これに限定されるものではない。
【実施例
【0168】
A.1-メトキシ-1-t-アミルパーオキシシクロヘキサン(TAPMC)合成例
t-アミルヒドロパーオキシド(TAHP)と、シクロヘキサノンと、メタノールとの混合物を作り、-6℃~-4℃の温度で70%硫酸を用いて処理した。
15分後に、1-メトキシ-1-t-アミルパーオキシシクロヘキサンと、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)-シクロヘキサンおよび未反応出発物質のシクロヘキサノンおよびTAHPとの平衡混合物が形成される。反応混合物中には少量(約2%)のシクロヘキサノンジメチルケタール(CDMK)も得られる。反応混合物を冷水で処理した後、有機相から水性相を分離し、洗浄して精製する。
一例として示したこの方法で本発明方法の主たる開始剤は製造できるが、当業者は必要に応じて周知の他の手段を用いることができるということは理解できよう。また、同じファミリー(TAPMC近いか、非常に近い)に属する有機過酸化を製造して、本発明の枠組み、すなわちアリルモノマーおよび/またはアリルコポリマーの重合で得られる同じ技術的効果を有することを確認した。
【0169】
B.硬化性組成物の製造例
PPG社からCR-39(登録商標)の名称で市販のジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(CAS142-22-3)と、1-メトキシ-1-t-アミルパーオキシシクロヘキサン(TAPMC)とをベースにした重合性組成物を製造した。この組成物はStepan社から市販の離型剤Zelec(登録商標)Aを含むのが好ましい。
1-メトキシ-1-t-アミルパーオキシシクロヘキサンの含有量はジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)の重量に対して4重量%である。
【0170】
C.有機ガラスの製造例
上記で得られた組成物を凹部と凸部を有する金型内に流し込む。キャスティング後、金型の凹部上に凸部を閉じ、アセンブリを90℃の温度まで加熱する。10時間から30時間かけて60℃~130℃の温度勾配またはステップで加熱する。
こうして得られた重合生成物を130℃までの温度範囲で1~20時間アニールする。その後、有機ガラスを回収する。
得られた有機ガラスは上記のパラメータの少なくとも1つを有する良好な光学的および機械的特性を有している。
【0171】
D.光学特性を測定するための2つの平面システム(Syst鐔ochme biplan)
複数の有機ガラスに対して複数の光学特性すなわち黄変指数(YI)と、ヘイズ(ヘイズ)と、ショアD硬度とを測定した。各有機ガラスは上記プロトコルに従って製造したが、重合は平坦な2枚のガラスプレートの間で行った。各ガラスプレートは10×15cm、厚さ4mmで、垂直に配置され、直径4mmのシリコーンゴムのシールによって互い分離され、アセンブリにクランプによって一定圧力の機械的力を加えた。全ての試験は型の頂部の空気を抜いて実施した。
【0172】
黄色度指数YIはCIE規格1976(カラースペース)に従ったX-RITE社のスペクトロカラーメータータイプSP60で測定した。三色座標はLab Hunter社のものである。測定値は標準較正タイル(白と黒)、シリアル番号20609D65:10°18/02/2010、WOA89274を用いて毎日較正した。
【0173】
YIの測定は厚さ4mmの有機ガラスで行い、Leneta Form 2Aカードのホワイトゾーン(分光光度計で較正した後の黄色度指数の測定値が10.48)で測定したYIとの差で表した。
【0174】
ヘイズ値はヘイズメーター(ASTM規格D1003に従ったBYK-GARDNER社のHaze-Gard plus装置(標準較正(ゼロ)No.4733-明るさ較正4732))を用いて求めた。
【0175】
ショアD硬度はポータブル式硬度計HPE IIショアDタイプ(BAREISS社製、DIN EN ISO規格868、ISO規格7619、ASTM規格D2240;BS 903パートA269)を用いて測定した。
【0176】
以下の有機過酸化物を試験した:
(1)Arkema社からLuperox(登録商標)IPP27の名称で市販のジイソプロピルパーオキシジカーボネート(CAS 105-64-6)をCR-39(登録商標)中に27重量%(比較例1)
(2)Arkema社からLuperox(登録商標)V107の名称で市販の1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサン(TAPMC)(本発明、実施例2)
(3)Arkema社からLuperox(登録商標)V10およびLuperox(登録商標)231の名称で市販の70重量%の1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサン(TAPMC)と、30重量%の1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンとのび混合物(本発明、実施例3)
(4)Arkema社からLuperox(登録商標)V10およびLuperox(登録商標)531M60の名称で市販の70重量%の1-メトキシ-1-tert-アミルパーオキシシクロヘキサン(TAPMC)と、30重量%の1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)-シクロヘキサンとの混合物(本発明、実施例4)
(5)Arkema社からLuperox(登録商標)TAECの名称で市販のOO-tert-アミル-O-(2-エチルヘキシル)モノパーオキカーボネート(比較例5)
(6)Arkema社からLuperox(登録商標)TBECの名称で市販のOO-tert-ブチル-O-(2エチルヘキシル)モノパーオキカーボネート(比較例6)
【0177】
使用した有機過酸化物の以下のスキームに従った分解温度(1時間および10時間半減期温度(HLT))の関数として熱硬化サイクルを採用した:使用した過酸化物の10時間半減期温度(HLT10時間)(過酸化物の混合物の場合には、最高HLT10時間を有する過酸化物、例えば、実施例3ではLuperox(登録商標)231、実施例4ではLuperox(登録商標)531M60のHLT10時間)まで14時間かけて昇温し、次に、使用した過酸化物の1時間半減期温度(HLT1時間)(過酸化物の混合物の場合には最高HLT1時間を有する過酸化物、例えば、実施例3ではLuperox(登録商標)231、実施例4ではLuperox(登録商標)531M60のHLT1時間)まで4時間かけて昇温し、その後、70℃に冷却し、この温度で金型から離型した。
【0178】
結果を以下の表に示す。
【0179】
活性酸素%は以下のように表される:
A[O]=n*16*タイター(%)/Mw
(ここで、
n=過酸化物分子中に存在する過酸化官能基の数、
16は酸素原子の分子量 g/モル
Mwは過酸化物の分子量 g/モル)
【0180】
TAPMCを使用しても、IPP27を用いて作った対照と比較して、有意に高い温度で黄色度指数はほとんど変化しない点に留意されたい。
【0181】
さらに、実施例1とほぼ同じ活性酸素含量(約0.23%)で、実施例3および実施例4の組成物のYI値は、実施例1よりも温度が高くしたにもかかわらず有意に変化せず、硬度を高くでき、離型時にシートが脆性にならない点にも留意されたい。
【0182】
また、本発明の環状二官能過酸化物(実施例3)またはtert-アミルパ-ケタール(実施例4)を添加すると、A[O]が約0,12~0.13%に相当する低い用量で、実施例1の硬度に近い硬さに近づけることができる点にも留意されたい。
【0183】
比較例5および比較例6から、モノ-tert-アミルパーカーボネート Luperox(登録商標)TAECおよびモノ-tert-ブチルパーカーボネート Luperox(登録商標)TBECでは、実施例1の対照および実施例2~4と比較して、黄色度指数YIがはるかに高いシートになると結論付けることができる。さらに、比較例6の場合には、硬度は比較例5と同等であるが、硬化後の離型時にシートが破断し、シールから容易に外すことかできず、一部は破断した。
【0184】
従って、比較例5および比較例6は、これらのタイプのパーカーボネート過酸化物の使用では、優れた黄色度YIと低ヘイズと高硬度とを有するシートは形成できず、離型時に破壊を伴うことを示している。