IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-乳化組成物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20230823BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20230823BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20230823BHJP
   A23L 2/62 20060101ALI20230823BHJP
   A23L 2/58 20060101ALI20230823BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A23L5/00 L
A23L29/10
A23L2/00 A
A23L2/00 L
A23L2/00 M
A23L2/00 F
A23L2/62
A23L2/58
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019556771
(86)(22)【出願日】2018-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2018044328
(87)【国際公開番号】W WO2019107574
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2017232127
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017232130
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度 科学技術振興機構 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三内 剛
(72)【発明者】
【氏名】木下 圭剛
(72)【発明者】
【氏名】坂田 慎
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/084518(WO,A1)
【文献】特開2016-187344(JP,A)
【文献】米国特許第03891620(US,A)
【文献】国際公開第2013/146387(WO,A1)
【文献】特開平08-140623(JP,A)
【文献】特開平02-042943(JP,A)
【文献】井戸隆雄,FFI Reports ガティガム,Foods & Food Ingred J Jpn,2006年,Vol.211, No.7,p.641-645,641ページ左欄第2段落、642ページ左欄第2段落、643ページ右欄、図6
【文献】IDO,T. et al.,Natural Hydrocolloid Emulsifiers (2) Emulsification Properties of GATIFOLIA (Gum Ghatti) Used for Em,Foods & Food Ingred J Jpn,2008年,Vol.213, No.4,p.365-371,要旨
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】

油性成分
ガティガム;
ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩よりなる群から選択される少なくとも1種の無機塩;並びに
製剤全量に対して5~25質量%のプロピレングルコール及び/又は20~80質量%のグリセリン
を含有する乳化香料製剤、乳化色素製剤、又は曇り剤であって、
製剤全量に対する前記無機塩の含有量の総量が2~9質量%である、
前記製剤
【請求項2】
前記ガティガムが0.040×100.60×10の範囲内の重量平均分子量を有する低分子ガティガムである、請求項1に記載の乳化香料製剤、乳化色素製剤、又は曇り剤。
【請求項3】

油性成分
ガティガム;並びに
製剤全量に対して5~25質量%のプロピレングルコール及び/又は20~80質量%のグリセリン;
を含有する乳化香料製剤、乳化色素製剤、乳化栄養強化剤製剤、乳化機能性素材製剤、又は曇り剤の乳化安定性を向上させる方法であり、
前記製剤に、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩よりなる群から選択される少なくとも1種の無機塩を、製剤全量に対する総量が2~9質量%になる割合で添加する工程を有する方法。
【請求項4】
前記ガティガムが0.040×100.60×10の範囲内の重量平均分子量を有する低分子ガティガムである、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガティガムは、優れた乳化剤であることができる。これに関して、例えば、特許文献1では、ガティガムを用いて調製された乳化組成物が提案されている。
しかし、更に優れた乳化剤の開発が求められている。
本発明が属する技術分野を包含する化学分野において、一般的に、塩化ナトリウム等の塩は、エマルジョンブレーカーとして使用されている。
このことから理解される通り、通常、塩化ナトリウム等の金属塩は、乳化の維持、及び乳化性の向上等が求められる場合には、他の目的において必要であっても、その使用が避けられる。
このような技術常識に合致して、特許文献2では、脱金属処理(脱塩化)することで乳化性を向上させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/084518号
【文献】特開2007-289124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、安定性に優れた乳化組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、
水、
油性成分、
ガティガム、及び
周期表第1族又は第2族に属する元素の塩
を含有する乳化組成物。
によって前記課題が解決できることを見出し、及び本発明を完成させた。
【0006】
本発明は、次の態様を包含する。
【0007】
項1.
水、
油性成分、
ガティガム、及び
周期表第1族又は第2族に属する元素の塩
を含有する乳化組成物。
項2.
前記油性成分の含有量が、0.1~50質量%の範囲内である項1に記載の乳化組成物。
項3.
前記ガティガムの含有量が、0.1~40質量%の範囲内である
項1又は2のいずれか一項に記載の乳化組成物。
項4.
前記ガティガムの含有量が、前記油性成分100質量部に対し、1~40000質量部の範囲内である
項1~3のいずれか一項に記載の乳化組成物。
項5.
前記塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムからなる群より選択される1種以上である
項1~4のいずれか一項に記載の乳化組成物。
項6.
前記塩の含有量が、0.01質量部以上である
項1~5のいずれか一項に記載の乳化組成物。
項7.
更に、多価アルコールを含有する
項1~6のいずれか一項に記載の乳化組成物。
項8.
前記多価アルコールが、プロピレングリコール、及びグリセリンからなる群より選択される1種以上である、項7に記載の乳化組成物。
項9.
前記ガティガムが0.020×10~1.10×10の範囲内の重量平均分子量を有する低分子ガティガムである、項1~8のいずれか一項に記載の乳化組成物。
項10.
油性成分、
ガティガム、及び
周期表第1族又は第2族に属する元素の塩
を含有し、且つ
前記ガティガム、及び周期表第1族又は第2族に属する元素の塩を含有する外相内に、
前記油性成分を含有する内相が配置されている
微粒子組成物。
項11.
項1~9のいずれか一項に記載の乳化組成物を乾燥することを含む項10に記載の微粒子組成物の製造方法。
項12.
項1~9のいずれか一項に記載の乳化組成物又は項10に記載の微粒子組成物をそれぞれ含有する、乳化香料製剤、乳化色素製剤、乳化栄養強化剤製剤、乳化機能性素材製剤、又は曇り剤。
項13.
項1~9のいずれか一項に記載の乳化組成物又は項10に記載の微粒子組成物を含有する飲食品。
項14.
項1~9のいずれか一項に記載の乳化組成物又は項10に記載の微粒子組成物を含有する水性組成物。
項15.
飲料の不透明度の増強方法であって、
飲料に、項1~9のいずれか一項に記載の乳化組成物又は項10に記載の微粒子組成物を添加する方法。
項16.
水、
油性成分、及び
ガティガム、
を含有する乳化組成物の乳化安定性を向上させる方法であり、
前記組成物に、周期表第1族又は第2族に属する元素の塩を、添加する工程を有する方法。
項17.
前記ガティガムが0.020×10~1.10×10の範囲内の重量平均分子量を有する低分子ガティガムである、項16に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安定性(特に、乳化安定性)の高い乳化組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】乳化物理安定性の評価試験(虐待試験)の模式図である。左に試験系の側面図を、右に上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は乳化組成物に関する。以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
【0011】
[1]乳化組成物
本発明の乳化組成物は、
水、
油性成分、
ガティガム、及び
周期表第1族又は第2族に属する元素の塩
を含有する乳化組成物である。
【0012】
本発明の乳化組成物は、好適に乳化製剤(emulsified formulation)であることができる。
本発明の乳化組成物は、油性成分のうちの有効成分の種類等に応じて、各種用途に適用できる。
本発明の乳化組成物は、例えば、
(a)有効成分が香料である場合、乳化香料製剤として適用でき、
(b)有効成分が色素である場合、乳化色素製剤として適用でき、
(c)有効成分が栄養成分(例:油溶性ビタミン、油溶性アミノ酸)である場合、乳化栄養強化剤製剤(栄養成分の補填・強化の目的で使用される食品添加物)(例:乳化ビタミン製剤、又は乳化アミノ酸製剤)として適用でき、及び
(d)有効成分が機能性素材(例:機能性脂質(例:DHA、EPA)、クルクミン、アスタキサンチン、ルテイン等)である場合、乳化機能性素材製剤
として適用できる。
また、更に、本発明の乳化組成物は、
(e)飲料等の水性媒体に適度な曇りを付与する曇り剤(別名:濁り剤、クラウディ)
として適用できる。
【0013】
本発明の乳化組成物は、好適に、水中油型乳化組成物であることができる。
より説明的に述べると、本発明の乳化組成物は、好適に、
水を媒体として含有する連続相である水相、及び
油溶性素材及び/又は油性媒体を含有する粒子形態の油相(本明細書中、これを油含有粒子と称する場合がある)を含有することができる。
【0014】
(1) 水
本発明で用いられる水の例は、純水、イオン交換水、及び水道水を包含する。
【0015】
(2) 油性成分
本発明で用いられる油性成分(すなわち、油相を構成する成分)は、油溶性素材(これは、脂溶性素材を包含する)、及び油性媒体からなる群から選択される1種以上より構成される。
【0016】
(2-1) 油溶性素材
本発明で用いられる油溶性素材の例は、油溶性香料、油溶性色素、及び油溶性生理活性物質等の有効成分を包含する。
【0017】
(2-1-1) 油溶性香料
本発明で用いられる油溶性香料(これは、脂溶性香料を包含する。)は、香気成分を含有する油溶性又は脂溶性の物質であればよく、その限りにおいて制限されない。
本発明で使用する油溶性香料は、好ましくは、飲食品に添加可能な可食性香料であるか、又は香粧品として人体に適用可能な香料である。
【0018】
前記香料の例は、
動物性又は植物性の天然原料から、不揮発性溶剤抽出、揮発性溶剤抽出、又は超臨界抽出等、或いはこれらの組合せ等により得られる抽出物;
水蒸気蒸留、又は圧搾法等により得られる精油、及び回収フレーバー等の天然香料;
化学的手法で合成された香料である、合成香料;
これらの香料を油脂及び/又は溶媒に、添加した、及び/又は溶解させた香料ベース
を包含する。
前記天然香料の形態の例は、
アブソリュート、エッセンス、及びオレオレジン等の抽出物;
コールドプレス等により得られる搾液;並びに
アルコールによる抽出物、又は、水及びアルコールの混合液による抽出物、(これら抽出物として、いわゆる、チンキ)
を包含する。
【0019】
これら香料の具体例は、
オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ライム油、及びマンダリン油等の柑橘系精油類;
ラベンダー油等の花精油類(又はアブソリュート類);
ペパーミント油、スペアミント油、及びシナモン油等の精油類;
オールスパイス、アニスシード、バジル、ローレル、カルダモン、セロリ、クローブ、ガーリック、ジンジャー、マスタード、オニオン、パプリカ、パセリ、及びブラックペパー等のスパイス類の精油類(又はオレオレジン類);
リモネン、リナロール、ゲラニオール、メントール、オイゲノール、及びバニリン等の合成香料類;
コーヒー、カカオ、バニラ、及びローストピーナッツ等の豆由来の抽出油;
紅茶、緑茶、及びウーロン茶等の茶由来のエッセンシャル類;並びに
合成香料化合物
を包含できる。
これらの香料は1種単独で使用することもできるが、通常は2種以上を任意に組み合わせて調合香料として用いられる。
本発明でいう「香料」は、単一化合物からなる香料のみならず、かかる調合香料をも包含する概念として定義される。
【0020】
(2-1-2) 油溶性色素
本発明で用いられる油溶性色素(これは、脂溶性色素を包含する。)は、着色成分を含有する油溶性又は脂溶性の物質であればよく、その限りにおいて制限されない。
本発明で使用する油溶性色素は、好ましくは、飲食品に添加可能な可食性色素であるか、又は香粧品として人体に適用可能な色素である。
【0021】
当該油溶性色素の例は、パプリカ色素、トウガラシ色素、ウコン色素、アナトー色素、トマト色素、マリーゴールド色素、ヘマトコッカス藻色素、デュナリエラカロチン、ニンジンカロチン、パーム油カロチン、β-カロチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、クリプトキサンチン、クルクミン、リコピン、ルテイン、アポカロテナール、フコキサンチン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、ノルビキシン、ビキシン、及びクロロフィル等を包含できる。
これらの油溶性色素は、それぞれ単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0022】
(2-1-3) 油溶性生理活性物質
本発明で用いられる油溶性生理活性物質(これは、脂溶性生理活性物質を包含する。)は、生体に有用な油溶性又は脂溶性の物質であればよく、その限りにおいて制限されない。
前記の記載から理解される通り、当該油溶性生理活性物質を含有する乳化組成物は、例えば、薬剤、栄養強化剤(例:ビタミン剤、アミノ酸剤)、又は機能性素材製剤等として利用することができる。
本発明で使用する油溶性生理活性物質は、好ましくは、飲食品に添加可能な可食性物質であるか、又は香粧品として人体に適用可能な物質である。
【0023】
前記油溶性生理活性物質の例は、
油溶性薬剤;
肝油、ビタミンA(例:レチノール等)、ビタミンA油、ビタミンD(例:エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等)、ビタミンB2酪酸エステル、アスコルビン酸脂肪酸エステル、ビタミンE(例:トコフェロール、トコトリエノール、トコフェロール酢酸エステル等)、及びビタミンK(例:フィロキノン、メナキノン等)等の脂溶性ビタミン類;
リモネン、リナロール、ネロール、シトロネロール、ゲラニオール、シトラール、l-メントール、オイゲノール、シンナミックアルデヒド、アネトール、ペリラアルデヒド、バニリン、及びγ-ウンデカラクトン等の植物精油類;
レスベラトロール、油溶性ポリフェノール、グリコシルセラミド、セサミン、ホスファチジルセリン、コエンザイムQ10、ユビキノール、クルクミン、アスタキサンチン、ルテイン、及びα-リポ酸;
α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、及びドコサヘキサエン酸等のΩ-3系脂肪酸;並びに
リノール酸、及びγ-リノレン酸等のΩ-6系脂肪酸;植物ステロール等の機能性素材等が挙げられる。
なかでも、その好適な例は、脂溶性ビタミン、コエンザイムQ10、及びα-リポ酸;並びに
α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、及びドコサヘキサエン酸等のΩ-3系脂肪酸
を包含する。
【0024】
これらの油溶性生理活性物質は、それぞれ単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0025】
(2-2) 油性媒体
本発明で用いられる油性媒体は、油相を構成する担体を意味することができ、その例は、油性溶媒、及び油相への添加剤(例:比重調整剤)を包含する。
本発明で用いられる油性溶媒は、好適に、前記油溶性素材の溶媒として使用できるもの、具体的には前記油溶性素材と相溶可能なものであることができる。
本発明で用いられる油性媒体は、好ましくは、飲食品に添加可能な可食性物質であるか、又は香粧品として人体に適用可能な物質である。
【0026】
本発明で用いられる油性媒体の例は、
菜種油、コーン油、パーム油、大豆油、オリーブ油、ホホバ油、ヤシ油、エレミ樹脂、及びマスティック樹脂等の植物性油脂類;
牛脂、及び豚脂等の動物性油脂類;及び
ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、ロジン、ダンマル樹脂、エステルガム、グリセリン脂肪酸エステル、及び中鎖トリグリセリド(MCT)(中鎖脂肪酸油)等のその他の油性媒体
を包含する。
これらはそれぞれ単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0027】
本発明で用いられる油性媒体は、
好ましくは、グリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリド、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、及び植物性油脂類からなる群より選択される1種以上であり、及び
より好ましくは、グリセリン脂肪酸エステル、及びトリグリセリド(より好ましくは中鎖トリグリセリド)からなる群より選択される1種以上である。
【0028】
ここで中鎖トリグリセリド(MCT)は、炭素数6~12程度、好ましくは炭素数6~10、より好ましくは炭素数8~10の中鎖脂肪酸からなるトリアシルグリセロールをいい、一般に市販されているものを制限なく使用することができる。
当該中鎖トリグリセリド(MCT)の具体例は、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸、及びカプリン酸混合トリグリセリド等、並びにこれらの混合物を包含できる。
【0029】
本発明の乳化組成物における油性成分の含有量の下限は、
例えば、
0.1質量%、
好ましくは0.5質量%、及び
より好ましくは1質量%
であることができる。
油性成分の含有量の上限は、
例えば、
50質量%以下、
好ましくは45質量%以下、
より好ましくは40質量%以下、及び
更に好ましくは35質量%以下
であることができる。
【0030】
本発明の乳化組成物における油性成分の含有量は、水性溶媒100質量部に対し、0.1~100質量部の範囲内であることが好ましく、0.15~90質量部の範囲内であることがより好ましく、0.2~80質量部の範囲内であることが更に好ましく、及び0.3~70質量部の範囲内であることが特に好ましい。
【0031】
前記水性溶媒は、水、多価アルコール及びエタノールを含有する。
【0032】
(3) ガティガム
本明細書中、「ガティガム」は、ガティノキ(Anogeissus latifolia Wallich)の樹液(分泌液)に由来する多糖類であり、通常、室温、又はそれ以上の温度条件下で、30質量%程度まで水に溶解する水溶性多糖類である。
【0033】
ガティガムの分子量は、通常、1.2×10~2×10の範囲内である。
本明細書中、用語「ガティガム」は、狭義に、このような通常のガティガムを意味する場合がある。
本明細書中、このような、通常よりも分子量が低いガティガム(本明細書中、これを「低分子ガティガム」と称する場合がある。)もまた好適に使用され得る。
本明細書中、用語「ガティガム」が、広義で(すなわち、前記低分子ガティガムをも包含することを意図して)用いられているか、狭義で(すなわち前記通常の分子量を有するものを意図して)用いられているかは、技術常識及び本願の明細書の文脈から理解され得る。
また、 低分子ガティガムとの区別のため、本明細書中、当該通常のガティガムを、便宜上、高分子ガティガムと称する場合がある。
前記低分子ガティガムの分子量は、
通常、0.020×10~1.10×10の範囲内であり、
好ましくは0.020×10~0.90×10の範囲内、
より好ましくは0.020×10~0.60×10の範囲内、
更に好ましくは0.025×10~0.50×10の範囲内、
より更に好ましくは0.030×10~0.40×10の範囲内、
特に好ましくは0.030×10~0.30×10の範囲内、
より特に好ましくは0.030×10~0.35×10の範囲内、及び
更に特に好ましくは0.040×10~0.30×10の範囲内
である。
【0034】
本発明においてガティガムの分子量は、重量平均分子量を意味する。
すなわち、本明細書中、ガティガムについての表現である「高分子」及び「低分子」は、重量平均分子量に基づくことができる。
重量平均分子量は、以下の条件のGPC分析で測定される。
検出器: RI
移動相: 100mM KSO
流量: 1.0ml/min
温度: 40℃
カラム: TSKgel GMPWXL 30cm (ガードPWXL)
インジェクション: 100μl
プルランスタンダード: Shodex STANDARD P-82
【0035】
本発明で用いられるガティガムのうち、高分子ガティガムは、好ましくは前記分子量(すなわち、1.2×10~2×10の範囲内の分子量)を有し、且つ水溶性である。
本明細書中、「水溶性」とは、大過剰量の水に完全に、又は実質的に完全に溶解できる性質をいう。
当該水は、純水、イオン交換水、及びイオンを含有する水等、任意の種類の水であることができ、及びその温度もガティガムが溶解する温度を適宜選択し得る。
すなわち、水の種類又は温度を適宜設定することで、水に溶解させることができるガティガムであれば、本発明に、好適に使用できる。
本発明で用いられるガティガムは、好ましくは、前記分子量を有し、且つ3倍質量以上の水に、室温(ここで、具体的には、25℃)で、完全に、又は実質的に溶解するガティガムである。
【0036】
本発明で用いられる低分子ガティガムの分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量の比)(Mw/Mn)は、
好ましくは1.1~13の範囲内、
より好ましくは1.1~10の範囲内、
更に好ましくは1.1~8の範囲内、
より更に好ましくは1.1~6の範囲内、及び
特に好ましくは1.1~4の範囲内
である。
【0037】
本発明で用いられるガティガムの分子量の分布もまた、前記の条件のGPC分析で測定される。
【0038】
このような低分子ガティガムは、国際出願PCT/JP2017/035739(WO/2018/062554)の明細書に記載の低分子ガティガムであることができる。
【0039】
[2]低分子ガティガムの製造方法
本発明で用いられる低分子ガティガムは、特に限定されないが、例えば、以下に説明する製造方法、又はこれに類似する方法により製造できる。
【0040】
本発明で用いられる低分子ガティガムの製造方法は、原料であるガティガムを低分子化処理する工程を含む。
【0041】
原料であるガティガムとしては、商業的に入手可能なガティガムを使用できる。
商業上入手可能なガティガム製品としては、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の「ガティガムSD」等が挙げられる。
前述した通り、市場で流通しているガティガムの重量平均分子量は、通常、1.2×10~2×10の範囲内である。
原料であるガティガムとしては、目的とする分子量の低分子ガティガムが製造可能であれば特に制限されず、その一部に低分子量のガティガムを元々含有していてもよい。
例えば、原料であるガティガムは、0.020×10を超える重量平均分子量(好ましくは0.025×10を超える重量平均分子量、より好ましくは0.030×10を超える重量平均分子量、及び更に好ましくは0.080×10を超える重量平均分子量)のガティガム分子画分を含有するガティガムであることができる。
【0042】
当該製造方法における低分子化処理の方法は、特に限定されないが、その好適な例は、加熱分解処理、酸分解処理、及び酵素分解処理からなる群より選択される1種以上の処理方法等の、水の存在下での低分子化処理方法を包含する。
【0043】
前記加熱分解処理は、所望する重量平均分子量を有するガティガムが得られる条件を技術常識に基づいて適宜選択して、実施すればよい。
【0044】
通常、処理時間が長いほど、より重量平均分子量が小さいガティガムが得られる。
当該加熱分解処理の処理時間は、具体的には、例えば、0.01~8時間の範囲内であることができる。なお、当該時間は、加熱分解処理の処理温度に応じて適宜選択することができる。例えば、処理温度が高い場合は、処理時間を短くするなど適宜選択できる。
【0045】
加熱分解処理は、例えば、pH5以下のpH条件で、好適に実施できる。
【0046】
前記酸分解処理に用いられる酸の例は、クエン酸(これは、無水クエン酸を包含する。)、リン酸、フィチン酸、リンゴ酸、酒石酸、塩酸、酢酸、乳酸、及びアスコルビン酸を包含する。
当該酸は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0047】
通常、処理温度が高いほど、より重量平均分子量が小さいガティガムが得られる。
当該酸分解処理の処理温度は、例えば、60~200℃、好ましくは80~200℃の範囲内であることができる。
【0048】
通常、処理時間が長いほど、より重量平均分子量が小さいガティガムが得られる。
当該酸分解処理の処理時間は、例えば、0.01~8時間の範囲内であることができる。
【0049】
酸分解処理は、例えば、pH4以下の条件で、好適に実施できる。
【0050】
前記酵素分解処理に用いられる酵素の例は、
セルラーゼ;
マンナナーゼ;
ペクチナーゼ;
スクラーゼ;
ヘミセルラーゼ;
セルロシンAC40、セルロシンHC100、セルロシンTP25、及びセルロシンGM5(いずれも商品名、エイチビィアイ);
スミチームPX、及びスミチームAG2-L(いずれも商品名、新日本化学工業);
マセロチームA(商品名、ヤクルト薬品工業);並びに
マセレイティングエンザイムY(商品名、ヤクルト薬品工業)
を包含する。
当該酵素は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
当該酵素処理の条件(例:温度、時間、pH、及び添加物)は、使用される酵素に応じて適宜選択することができる。
【0051】
本発明で用いられるガティガムのうち、低分子ガティガムは、好ましくは前記分子量を有し、且つ水溶性である。
【0052】
本発明で用いられるガティガム(好ましくは、高分子ガティガム)は、好適な一態様として、以下の条件に従って測定されるガティガム水溶液(ブリックス15度)の粘度が20mPa・s以上であるガティガムを包含する。
ガティガム水溶液(ブリックス15度)の粘度の上限は、特に制限されないが、例えば、2000mPa・sであることができる。
[粘度測定条件]
1)イオン交換水(20℃)82gにガティガム18gを添加、及び撹拌し、ガティガム水溶液を調製する。
2)ガティガム水溶液を静置(5℃、18時間)し、発生した泡を除去する。
3)前記ガティガム水溶液のブリックス(Brix)が15度となるように、イオン交換水を適宜添加し、ブリックス15度のガティガム水溶液を調製する。当該水溶液を試料とする。
4)試料の粘度を、以下の条件で、B型粘度計(BM型、トキメック社)で測定する。
<条件>
ローター:No.2
回転数 :30rpm
回転時間:1分間
【0053】
本発明で用いられる低分子ガティガムは、好適な一態様として、以下の条件に従って測定される低分子ガティガム水溶液(ブリックス15度)の粘度が10mPa・s以上である低分子ガティガムを包含する。
低分子ガティガム水溶液(ブリックス15度)の粘度の上限は、特に制限されないが、例えば、1000mPa・sであることができる。
[粘度測定条件]
1)イオン交換水(20℃)82gに低分子ガティガム18gを添加、及び撹拌し、低分子ガティガム水溶液を調製する。
2)低分子ガティガム水溶液を静置(5℃、18時間)し、発生した泡を除去する。
3)前記低分子ガティガム水溶液のブリックス(Brix)が15度となるように、イオン交換水を適宜添加し、ブリックス15度の低分子ガティガム水溶液を調製する。当該水溶液を試料とする。
4)試料の粘度を、以下の条件で、B型粘度計(BM型、トキメック社)で測定する。
<条件>
ローター:No.2
回転数 :30rpm
回転時間:1分間
【0054】
本発明の乳化組成物における、ガティガムの含有量は、
好ましくは0.1~40質量%、
より好ましくは0.3~35質量%、
更に好ましくは0.5~25質量%、
より更に好ましくは0.6~20質量%、
特に好ましくは0.8~15質量%、
より特に好ましくは0.8~13質量%及び
最も好ましくは1~10質量%
の範囲内であることができる。
【0055】
本発明の乳化組成物中の、油性成分の総量100質量部に対する、前記ガティガム含有量は、
好ましくは1質量部以上、
より好ましくは2質量部以上、
更に好ましくは3質量部以上、
より更に好ましくは5質量部以上、
特に好ましくは8質量部以上、及び
より特に好ましくは10質量部以上
であることができる。
当該含有量は、
好ましくは40000質量部以下、
より好ましくは10000質量部以下、
更に好ましくは5000質量部以下、
より更に好ましくは1000質量部以下、
特に好ましくは500質量部以下、及び
より特に好ましくは300質量部以下
であることができる。
また、当該含有量は200質量部以下、150質量部以下、又は100質量部以下であることができる。
【0056】
(4) 塩
本発明では、前記ガティガム、及び周期表第1族又は第2族に属する元素の塩を併用することで、乳化安定性が高い乳化組成物を提供することができる。
当該塩は、無機塩又は有機塩であることができる。
当該塩は、好適に無機塩であることができる。
当該塩の具体例は、
ナトリウム塩(例:塩化ナトリウム)、
カリウム塩(例:塩化カリウム)、カルシウム塩(例:乳酸カルシウム、塩化カルシウム)、及び
マグネシウム塩(例:塩化マグネシウム)等
を包含する。
前記無機塩の好適な例は、
塩化ナトリウム、塩化カリウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウム
を包含する。
前記無機塩のより好適な例は、
塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化マグネシウム
を包含する、
当該無機塩の更に好適な例は、塩化ナトリウムを包含する。
【0057】
これらの塩はそれぞれ単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0058】
本発明の乳化組成物は前記塩を含有することを特徴とする。
【0059】
前記塩の含有量は、
好ましくは0.01質量%以上、
より好ましくは0.05質量%以上、
更に好ましくは0.1質量%以上、
より更に好ましくは0.5質量%以上、
特に好ましくは1質量%以上、
より特に好ましくは1.5質量%以上、及び
最も好ましくは2質量%以上
であることができる。
当該含有量は、
好ましくは9質量%以下、
より好ましくは8質量%以下、及び
更に好ましくは7質量%以下
であることができる。
【0060】
本発明の乳化組成物中の、ガティガム(好ましくは、高分子ガティガム)100質量部に対する、前記塩の含有量は
好ましくは0.01質量部以上、
より好ましくは0.1質量部以上、
更に好ましくは1質量部以上、
より更に好ましくは10質量部以上、
特に好ましくは20質量部以上、
より特に好ましくは30質量部以上、及び
最も好ましくは40質量部以上
であることができる。
当該含有量は、
9000質量部以下、
好ましくは5000質量部以下、
より好ましくは3000質量部以下
更に好ましくは2000質量部以下、及び
特に好ましくは1500質量部以下
であることができる。
【0061】
本発明の乳化組成物中の、ガティガム(好ましくは、低分子ガティガム)100質量部に対する、前記塩の含有量は
好ましくは0.01質量部以上、
より好ましくは0.1質量部以上、
更に好ましくは1質量部以上、
より更に好ましくは10質量部以上、
特に好ましくは15質量部以上、
より特に好ましくは20質量部以上、及び
最も好ましくは30質量部以上、
であることができる。
当該含有量は、
9000質量部以下、
好ましくは5000質量部以下、
より好ましくは3000質量部以下、
更に好ましくは2000質量部以下、及び
特に好ましくは1500質量部以下
であることができる。
【0062】
(5) 多価アルコール
本発明の乳化組成物は、多価アルコールを含有することができる。
これにより、乳化組成物の保存安定性を向上させることができ、及び防腐効果が高い乳化組成物を提供できる。
本発明で使用できる多価アルコールの例は、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール(D-ソルビトール)、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、キシロース、グルコース、ラクトース、マンノース、オリゴトース、果糖ブドウ糖液糖、及びシュクロース等を包含する。
これらの多価アルコールは、それぞれ単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
本発明において多価アルコールは、好ましくは、プロピレングリコール、若しくはグリセリン、又はこれらの組合せである。
【0063】
本発明の乳化組成物における多価アルコールの含有量は、
例えば、3~80質量%、
好ましくは5~60質量%、
より好ましくは6~50質量%、及び
更に好ましくは8~45質量%
の範囲内であることができる。
多価アルコールとしてプロピレングリコールを用いる場合、本発明の乳化組成物におけるプロピレングリコールの含有量は、
例えば、3~40質量%、
好ましくは5~30質量%、
より好ましくは8~25質量%、及び
更に好ましくは10~20質量%
の範囲内であることができる。
【0064】
多価アルコールとしてグリセリンを用いる場合、本発明の乳化組成物におけるグリセリンの含有量は、
例えば、5~80質量%、
好ましくは10~70質量%、
より好ましくは15~60質量%、
更に好ましくは20~55質量%、及び
より更に好ましくは25~50質量%
の範囲内であることができる。
【0065】
前述のとおり、乳化組成物に多価アルコールを含有させることで、乳化組成物の保存安定性を向上させることができ、且つ防腐効果が高い乳化組成物を提供できるという利点を有する。
しかしその一方で、多価アルコールの使用は、不都合に、乳化組成物の乳化安定性の低下を引き起こし得る。
この問題に関し、本発明では、ガティガム、及び前記塩を含有させることで、多価アルコールを含有するにもかかわらず、乳化安定性が高い乳化組成物を提供できる。
【0066】
防腐効果の観点から、従来の乳化組成物には通常、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム等の合成保存料が使用されてきた。
しかし、これらの合成保存料には、
(1)その使用が、乳化組成物の風味に悪影響を与える場合があること、及び
(2)所定の菌に効果を奏する一方で、効果を奏し難い菌が存在すること
等の問題が存在する。
更に、近年の消費者の健康志向により、合成保存料が忌避される傾向にある。
本観点からは、本発明の乳化組成物は合成保存料を実質的に含有しないことが望ましい。
これらの点に関し、本発明によれば、実質的に合成保存料の使用を抑制しても、又はこれを使用せずとも、防腐性及び乳化安定性に優れる乳化組成物を提供することができる。
【0067】
(6) 本発明の乳化組成物の性質
(6-1) pH
本発明の乳化組成物のpHは、通常、2~6、好ましくは2~4.5、より好ましくは2~4、及び更に好ましくは2.5~3.5の範囲内である。
本範囲のpHを有することで、乳化安定性がより向上し、且つ防腐性が高い乳化組成物を提供することができる。
乳化組成物のpHを前記範囲に調整するために、必要に応じて酸を使用することができる。
酸は、例えば、有機酸、無機酸、又はこれらの組合せであることができる。
酸の例は、クエン酸、フィチン酸、アスコルビン酸、リン酸、乳酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、ピロリン酸、及び塩酸等が挙げられる。
これらの酸は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明において好ましい酸は、クエン酸、フィチン酸、アスコルビン酸、リン酸、及び乳酸からなる群から選択される1種以上である。
本発明の乳化組成物には、本発明の効果を妨げない範囲において、その他の任意成分として、水溶性ビタミン類、増粘安定剤、抗酸化剤、キレート剤、又は酸化防止剤等を含んでいてもよい。
本発明の乳化組成物は、本発明の効果を妨げない範囲において、エタノールを含有することができる。
エタノールを含有させることで、防腐効果が高い乳化組成物を提供できる。
本発明の乳化組成物におけるエタノールの含有量は、
例えば、1~50質量%、
好ましくは3~30質量%、及び
より好ましくは4~20質量%
の範囲内であることができる。
【0068】
(6-2) 乳化安定性
本発明の乳化組成物は、乳化安定性に優れるという利点を有する。
本明細書において、「乳化安定性」とは、乳化性(乳化粒子の形成のしやすさ)、乳化保存安定性(保存時の乳化粒子の安定性)、及び乳化物理安定性(物理的外力に対する乳化粒子の安定性)を包含する。
具体的には、本発明の乳化組成物は、後記で実施例について記載する基準で評価した場合に、高い安定性を示すことができる。
【0069】
(6-3) 形態又は形状
本発明の乳化組成物の形態又は形状は特に制限されない。
例えば、本発明の乳化組成物は、液体形態であってもよく、又は、粉末化手段によって粉末化された形態であってもよい。
【0070】
本発明の乳化組成物の乳化粒子の粒子径は、目的とする用途に応じて、適宜、調整することができる。
本発明の乳化組成物(ここで、好ましくは、高分子ガティガムを含有する乳化組成物)の乳化粒子径は、メジアン径(体積基準)で、好ましくは1.8μm以下、より好ましくは1.5μm以下、更に好ましくは1.2μm以下、より更に好ましくは1.1μm以下、特に好ましくは1.0μm以下、及びより更に好ましくは0.9μm以下である。
当該メジアン径(体積基準)の下限は特に制限されないが、例えば、0.08μm、0.1μm以上、0.12μm以上、0.15μm以上、0.2μm以上、0.25μm又は0.3μm以上である。
本発明の乳化組成物(ここで、好ましくは、高分子ガティガムを含有する乳化組成物)において、粒子径が1.3μm以上である粒子の頻度(すなわち、全粒子数に対する割合。本明細書中、これを「1.3μm↑」と表記する場合がある。)は、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは30%以下、より更に好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下、より特に好ましくは7%以下、及び最も好ましくは5%以下である。
1.3μm↑の下限は特に制限されないが、例えば、0.1%、0.5%又は0.7%である。
【0071】
本発明の乳化組成物(ここで、好ましくは、低分子ガティガムを含有する乳化組成物)の乳化粒子径は、メジアン径(体積基準)で、好ましくは1.2μm以下、より好ましくは1.1μm以下、更に好ましくは1μm以下、より更に好ましくは0.9μm以下、特に好ましくは0.85μm以下、より特に好ましくは0.8μm以下、及び最も好ましくは0.75μm以下である。
当該メジアン径(体積基準)の下限は特に制限されないが、例えば、0.08μm、0.1μm以上、0.12μm以上、0.15μm以上、0.2μm以上、又は0.3μm以上である。
本発明の乳化組成物(ここで、好ましくは、低分子ガティガムを含有する乳化組成物)において、粒子径が1.3μm以上である粒子の頻度(すなわち、全粒子数に対する割合。本明細書中、これを「1.3μm↑」と表記する場合がある。)は、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは15%以下、より更に好ましくは10%以下、特に好ましくは7%以下、及びより特に好ましくは5%以下である。
1.3μm↑の下限は特に制限されないが、例えば、0.5%、0.7%又は0.9%である。
【0072】
[3] 乳化組成物の調製方法
本発明の乳化組成物は、
(1)水、ガティガム(これは、高分子ガティガム、及び低分子ガティガムを包含する。)、及び前記塩を含有する水相、及び
(2)油性成分
を混合することにより調製できる。
当該混合は、水、油性成分、ガティガム、及び前記塩が混合されれば、その手段、又は方法、及び条件は限定されない。当該混合は、それ自体が乳化処理であってもよく、或いは乳化処理を伴ってもよい。
【0073】
当該乳化処理は、ホモジナイザー(例:高圧ホモジナイザー、ホモディスパー、ホモミキサー、ポリトロン式撹拌機、コロイドミル、ナノマイザー等)等の乳化機を用いた乳化処理であることができる。当該乳化処理の条件は、用いる乳化機の種類等に応じて、適宜決定すればよい。
【0074】
本発明の乳化組成物は、水、油性成分、ガティガム、及び前記塩を混合後、乳化処理を行うことが望ましい。
本発明における乳化組成物の調製方法は、以下の好適な態様Aを包含する。
(好適な態様A)
水、油性成分、ガティガム、及び前記塩を含有する乳化組成物の調製方法であって、
(A1)前記水、前記油性成分、前記ガティガム及び前記塩を含有する混合液を調製する工程、及び
(A2)前記混合液を乳化処理する工程
を含む、乳化組成物の調製方法。
【0075】
また、本発明の乳化組成物の調製方法は、以下の好適な態様Bを包含する。
(好適な態様B)
水、油性成分、ガティガム、及び前記塩を含有する乳化組成物の調製方法であって、
(工程B1)前記水、前記ガティガム、及び前記塩を含有する水相を調製する工程、
(工程B2)前記水相、及び油性成分の混合液を調製する工程、並びに
(工程B3)前記混合液を乳化処理する工程、
を含有する、乳化組成物の調製方法。
【0076】
本発明の乳化組成物は、適宜、適当な方法を採用して、所望する形態に調製できる。
例えば、本発明の乳化組成物を粉末化された形態にする場合、噴霧乾燥又は凍結乾燥等の粉末化手段を採用すればよい。
【0077】
[4] 微粒子組成物
本発明はまた、
油性成分、
ガティガム(これは、高分子ガティガム、及び低分子ガティガムを包含する。)、及び
周期表第1族又は第2族に属する元素の塩
を含有し、且つ
前記ガティガム、及び周期表第1族又は第2族に属する元素の塩を含有する外相内に、
前記油性成分を含有する内相が配置されている
微粒子組成物
を提供する。
【0078】
当該微粒子組成物は、前記で説明した本発明の乳化組成物から水を除去した組成物であることができる。
【0079】
このことから当業者が理解する通り、当該微粒子組成物についての詳細は、本発明の乳化組成物についての前記説明、及び技術常識に基づいて理解可能である。
【0080】
当該微粒子組成物の内相は、その外相に被覆されていることができる。当該内相は、ほぼ完全に、又は完全に前記外相によって被覆されていることが好ましい。
【0081】
当該微粒子組成物は、例えば、前記で説明した本発明の乳化組成物を、慣用の方法(例:凍結乾燥、スプレードライ)によって乾燥することによって製造できる。
[5] 水性組成物
本発明はまた、前記乳化組成物を含有する水性組成物に関する。
当該水性組成物の種類は、特に制限されないが、例えば、飲食品、香粧品(これは化粧料を含む)、医薬、又は医薬部外品、好ましくは飲食品、及びより好ましくは飲料であることができる。
当該水性組成物における、本発明の乳化組成物の含有量は当該組成物の種類及び用途等によって異なることができるが、例えば、0.001~5質量%の範囲内、又は0.01~1質量%の範囲内であることができる。
【0082】
[5.1] 飲食品
本発明はまた、前記乳化組成物を含有する飲食品にも関する。
飲食品の種類は特に制限されないが、具体的には、当該飲食品の例は、
乳飲料、乳酸菌飲料、炭酸飲料、果実飲料(例:果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果汁入り炭酸飲料、果肉飲料)、野菜飲料、野菜及び果実飲料、リキュール類等のアルコール飲料、コーヒー飲料、粉末飲料、スポーツ飲料、サプリメント飲料等の飲料類;
紅茶飲料、緑茶、ブレンド茶等の茶飲料類(なお、飲料類と茶飲料類は、「飲料」に包含される。);
カスタードプリン、ミルクプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;
ミルクアイスクリーム、果汁入りアイスクリーム及びソフトクリーム、アイスキャンディー等の冷菓類;
チューインガム及び風船ガム等のガム類(例:板ガム、糖衣状粒ガム);
コーティングチョコレート(例:マーブルチョコレート等)、風味を付加したチョコレート(例:イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等)等のチョコレート類;
ハードキャンディー(例:ボンボン、バターボール、マーブル等)、ソフトキャンディー(例:キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等)、糖衣キャンディー、ドロップ、及びタフィ等のキャンディー類;
コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類;
セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ、ソース等の液体調味料類;
ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ、シロップ等のジャム類;
赤ワイン等の果実酒;及び
シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ、桃等の加工用果実;
漬物等の農産加工品
を包含する。
当該飲食品の種類は、なかでも好ましくは飲料、デザート類(特に好適にはゼリー)、キャンディー類、ジャム、漬物、又は液体調味料であり、及びより好ましくは飲料である。
当該飲食品の例は、これらの製品の半製品、及び中間製品等も包含する。
【0083】
当該飲食品中には、本発明の乳化組成物に由来する油含有粒子が好適に存在する。
【0084】
[6] 乳化組成物の乳化安定性を向上させる方法(乳化安定性向上方法)
本発明はまた、以下の態様を有する、乳化組成物の乳化安定性を向上させる方法にも関する。
水、
油性成分、及び
ガティガム(これは、高分子ガティガム、及び低分子ガティガムを包含する。)、
を含有する乳化組成物の乳化安定性を向上させる方法であり、
前記組成物に、前記塩を添加する工程を有する方法。
【0085】
本方法は、前記本発明の乳化組成物の実施態様、及び調製方法と同じ、又は類似することができ、及び前記本発明の乳化組成物の調製方法を参照して理解され得る。
【0086】
本発明における乳化組成物の乳化安定性を向上させる方法は、好ましくは、前記塩を含有する工程が、乳化粒子形成前に実施される態様を包含する。
本発明における乳化組成物の乳化安定性を向上させる方法は、以下の好適な一態様を包含する。
【0087】
(好適な一態様)
前記ガティガム(これは、高分子ガティガム、及び低分子ガティガムを包含する。)を含有する乳化組成物の乳化安定性を向上させる方法であって、
1)水、油性成分、前記ガティガム、及び前記塩
を含有する混合液を調製する工程;並びに
2)前記混合液を乳化処理し、乳化組成物を調製する工程
を含む方法。
【0088】
当該好適な態様のより具体的な例は、
A)当該工程1、及び2において、
前記水、前記油性成分、及び前記ガティガムを含有する混合組成物に、更に前記塩を添加し、及び乳化処理し、前記乳化組成物を調製する具体例;
B)当該工程1、及び2において、
前記水、前記油性成分、及び前記塩を含有する混合組成物に、更に前記ガティガムを添加し、及び乳化処理し、前記乳化組成物を調製する具体例;
C)当該工程1、及び2において、
前記水、前記ガティガム、及び前記塩を含有する混合組成物に、更に前記油性成分を添加し、及び乳化処理し、前記乳化組成物を調製する具体例;並びに
D)当該工程1、及び2において、
前記油性成分、前記ガティガム、及び前記塩を含有する混合組成物に、更に前記水を添加し、及び乳化処理し、前記乳化組成物を調製する具体例
を包含する。
【0089】
念のために記載するに過ぎないが、これらの例(特に、例A、及び例B)において、前記乳化処理は、前記した各混合組成物に乳化処理が施されていてもよく、この場合、更なる成分の追加後は、更なる乳化処理、又は単なる混合処理を実施し得る。
【実施例
【0090】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。
【0091】
以下、各表中の組成を示す数値は、特に記載がない場合、質量%を表すことができる。
【0092】
材料
実施例で使用した材料の説明を以下に記載する。
ガティガム(高分子ガティガム):GATIFOLIA RD。以下、Gum GHと略記する場合がある。
低分子ガティガム:以下の方法で、調製した。以下、Gum GLと略記する場合がある。
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT):カプリル酸/カプリン酸=3/2、日清オイリオ社
【0093】
低分子ガティガムの調製
ガティガム[GATIFOLIA RD(製品名)(三栄源エフ・エフ・アイ)の12質量%水溶液(クエン酸 0.2質量%)を、120℃、2気圧(蒸気圧)、及び0.5時間の条件で酸分解処理して、低分子ガティガムを調製した。
その分子量、及び分子量分布を、以下の条件のGPC分析で測定した。
その結果、重量平均分子量(Mw)が0.13×10、数平均分子量(Mn)が0.05×10、及びMw/Mnが2.7であった。
(GPC分析条件)
検出器: RI
移動相: 100mM KSO
流量: 1.0ml/min
温度: 40℃
カラム: TSKgel GMPWXL 30cm (ガードPWXL)
インジェクション: 100μl
プルランスタンダード: Shodex STANDARD P-82
同様にして、但し、酸分解処理の条件を調整して、平均分子量が異なる複数種の低分子ガティガムを調製した。
以下、「重量平均分子量」を、単に「平均分子量」と記載する場合がある。
【0094】
略号
本明細書中、以下の略号を使用する場合がある。
Gum GH:ガティガム(高分子ガティガム)
Gum GL:低分子ガティガム
SAIB:ショ糖酢酸イソ酪酸エステル
MCT:中鎖脂肪酸油
NaCl:塩化ナトリウム
V.E:トコフェロール
β-カロテン:β-カロテン懸濁液
【0095】
実施例中、以下の材料を使用した。なお、本明細書中、重量平均分子量を単に平均分子量と記載する場合がある。
ガティガム(高分子ガティガム)(Gum GH):GATIFOLIA RD(製品名)(三栄源エフ・エフ・アイ)、平均分子量120万
低分子ガティガム(Gum GL):上記で調製した低分子ガティガム
中鎖脂肪酸油(MCT):スコレー64G(製品名)(日清オイリオ)
ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB):Eastman Sustane SAIB(製品名)(Eastman Chemical)
オレンジオイル:ORANGE OIL 12010(製品名)(Citra Source)
V.E:DL-α-トコフェロール(製品名)(BASF)
β-カロテン:β-カロテンの中鎖脂肪酸トリグリセリド懸濁液(β-カロテン含量30%)
Gum GH水溶液(溶液と略記する):25質量% ガティガム水溶液(高分子ガティガム水溶液)
Gum GL水溶液:28質量% 低分子ガティガム水溶液
なお、「水溶液」を、「溶液」と略記する場合がある。
【0096】
製造例1(高分子ガティガム含有製剤)
乳化製剤の製造1
比較例1-1(Ref. 1-1)及び実施例1-1~1-7(Ex.1-1~Ex.1-7)の各乳化製剤を、表1-1に示す処方に従って、次のように、製造した。
群2の成分を、撹拌(2500RPM、3分間)して、混合した。
これに、群3の成分を添加し、及び撹拌(2500RPM、1分間)して混合した。
これに、100℃に加熱した群1の成分を添加し、及び撹拌(2500RPM、3分間)して、混合した。
得られた溶液をろ過(100メッシュ)した後、ナノマイザーによって処理(50MPa×3回)した。
得られた乳化製剤のpHは2.5~3.5の範囲内であった。
【0097】
【表1-1】
【0098】
試験例1(高分子ガティガム含有製剤の試験)
調製した乳化製剤(乳化組成物)について、初期乳化性(保存開始時の乳化性)、保存安定性、及び物理安定性の各試験を行った。
【0099】
これらの試験においては、以下の方法及び条件を採用した。
評価方法
【0100】
(A)乳化性、及び乳化状態の評価方法
乳化性、及び乳化状態は、乳化粒子の粒子径(メジアン径(D50)、及び1.3μm↑)により、評価した。
【0101】
(A1)粒子径
A1a)メジアン径(D50)
メジアン径(D50)は、以下の装置、方法、及び条件により測定した。
(装置及び方法)
装置:粒度分布測定装置Microtrac MT3000EX-II(マイクロトラック・ベル社)
方法及び条件:屈折率1.81、測定範囲0.021~2000μm、体積基準
(A1b)1.3μm↑
「1.3μm↑」は、粒子径が1.3μm以上の粒子の頻度である。
その数値は全粒子数に対する割合であり、単位は%である。
これについては、前記メジアン径(D50)と同じ装置及び方法により測定した。
【0102】
(B)濁度[0.1%E(720nm)]の評価
濁度は、試料(乳化製剤)の0.1%水希釈液の720nmにおける濁度である。
曇り剤として好適な濁度の目安は、0.2以上である。
その上限は特に制限されないが、例えば1、好ましくは0.8である。
【0103】
(測定方法)
前記「(2)濁度」の「0.1%E(720nm)」は、各試料(乳化製剤)をイオン交換水で0.1%水溶液に希釈し、当該希釈液の720nmの濁度を以下に示す条件で測定した。
(装置)
分光光度計:分光光度計V-660DS、日本分光社
【0104】
試験1-1.乳化製剤の乳化性及び保存安定性(1)(高温短期保存での経時変化)(高分子ガティガム含有製剤の試験)
調製した乳化製剤を30mLガラス瓶に充填し、及び60℃の恒温槽で保存した。
前記粒子径(D50、及び1.3μm↑)及び前記濁度(0.1%E)の評価を、保存開始時、3日後、7日後、及び14日後に実施して、保存開始時の乳化性、及び、乳化製剤の保存安定性を確認した。
その結果を表1-2に示した。
【0105】
【表1-2】
【0106】
試験1-2.保存安定性(2)(中低温保存)(高分子ガティガム含有製剤の試験)
調製した乳化製剤を30mLガラス瓶に充填し、及び40℃、25℃、又は5℃で保存した。
前記メジアン径(D50)、前記1.3μm↑及び前記濁度の評価を、保存開始時、1月後、及び2.5月に実施した。
1月後の試験結果を表1-3に、及び2.5月後の試験結果を表1-4に示した。なお、保存開始時のデータは、試験1-1と共通のデータである。
【0107】
【表1-3】
【0108】
【表1-4】
【0109】
1-3.乳化製剤の物理安定性試験の物理的負荷条件(高分子ガティガム含有製剤の試験)
乳化製剤の物理安定性の試験では、撹拌羽根を用いる物理的負荷条件を採用した。
使用器具、及び負荷方法を以下に示す。更に、使用器具の模式図を図1に示す。
使用器具:200mLビーカー(ガラス製、直径65mm、高さ90mm)
撹拌羽根(直径5mmの金属棒の先端部に直径32mmの3枚羽根を備える)
負荷方法:1)200mLビーカーに、試料(乳化製剤)200gをはかりとる。
2)試料を60℃で20分間静置する。
3)200mLビーカー底部からの高さ15mmに羽根を設置する。
4)回転数1300rpmの条件で、撹拌羽根で試料を撹拌する。
5)所定時間(0分、3分、6分)で乳化製剤をサンプリングし、前記a)メジアン径(D50)、及びb)1.3μm↑の評価を行った。
その結果を、表1-5に示した。
【0110】
【表1-5】
【0111】
これから理解される通り、食塩の添加による、乳化製剤の乳化性の向上、及び保存安定性及び物理安定性の向上が確認された。
【0112】
製造例2(低分子ガティガム含有製剤)
乳化製剤の製造2
比較例2-1(Ref.2-1)及び実施例2-1~2-7(Ex. 2-1~Ex. 2-7)の各乳化製剤を、表2-1に示す処方に従って、次のように、製造した。低分子ガティガムは、分子量13万のものを使用した。
群2の成分を、撹拌(2500RPM、3分間)して、混合した。
これに、群3の成分を添加し、及び撹拌(2500RPM、1分間)して混合した。
これに、100℃に加熱した群1の成分を添加し、及び撹拌(2500RPM、3分間)して、混合した。
得られた溶液をろ過(100メッシュ)した後、ナノマイザーによって処理(50MPa×3回)した。
得られた乳化製剤のpHは2.5~3.5の範囲内であった。
【0113】
【表2-1】
【0114】
試験例2(低分子ガティガム含有製剤の試験)
調製した乳化製剤(乳化組成物)について、初期乳化性、保存安定性、及び物理安定性の各試験を行った。
【0115】
これらの試験においては、以下の方法及び条件を採用した。
評価方法
【0116】
(A)乳化性、及び乳化状態の評価方法
乳化性、及び乳化状態は、乳化粒子の粒子径(メジアン径(D50)、及び1.3μm↑)により、評価した。
【0117】
A1)粒子径
A1a)メジアン径(D50)
メジアン径(D50)は、以下の装置、方法、及び条件により測定した。
(装置及び方法)
装置:粒度分布測定装置Microtrac MT3000EX-II(マイクロトラック・ベル社)
方法及び条件:屈折率1.81、測定範囲0.021~2000μm、体積基準
A1b)1.3μm↑
「1.3μm↑」は、粒子径が1.3μm以上の粒子の頻度である。
その数値は全粒子数に対する割合であり、単位は%である。
これについては、前記メジアン径(D50)と同じ装置及び方法により測定した。
【0118】
(B)濁度[0.1%E(720nm)]の評価
濁度は、試料(乳化製剤)の0.1%水希釈液の720nmにおける濁度である。
曇り剤として好適な濁度の目安は、0.2以上である。
その上限は特に制限されないが、例えば1、好ましくは0.8である。
【0119】
(測定方法)
前記「(2)濁度」の「0.1%E(720nm)」は、各試料(乳化製剤)をイオン交換水で0.1%水溶液に希釈し、当該希釈液の720nmの濁度を以下に示す条件で測定した。
(装置)
分光光度計:分光光度計V-660DS、日本分光社
【0120】
試験2-1.乳化製剤の乳化性及び保存安定性(1)(高温短期保存での経時変化)(低分子ガティガム含有製剤の試験)
調製した乳化製剤を30mLガラス瓶に充填し、及び60℃の恒温槽で保存した。
前記粒子径(D50、及び1.3μm↑)及び前記濁度(0.1%E)の評価を、保存開始時、3日後、7日後、及び14日後に実施して、保存開始時の乳化性、及び、乳化製剤の保存安定性を確認した。
その結果を表2-2に示した。
【0121】
【表2-2】
【0122】
試験2-2.保存安定性(2)(中低温保存)(低分子ガティガム含有製剤の試験)
調製した乳化製剤を30mLガラス瓶に充填し、及び40℃、25℃、又は5℃で保存した。
前記メジアン径(D50)、前記1.3μm↑及び前記濁度の評価を、保存開始時、1月後、及び2.5月に実施した。
1月後の試験結果を表2-3に、及び2.5月後の試験結果を表2-4に示した。なお、保存開始時のデータは、試験2-1と共通のデータである。
【0123】
【表2-3】

【0124】
【表2-4】
【0125】
2-3.乳化製剤の物理安定性試験の物理的負荷条件(低分子ガティガム含有製剤の試験)
乳化製剤の物理安定性の試験では、撹拌羽根を用いる物理的負荷条件を採用した。
使用器具、及び負荷方法を以下に示す。更に、使用器具の模式図を図1に示す。
使用器具:200mLビーカー(ガラス製、直径65mm、高さ90mm)
撹拌羽根(直径5mmの金属棒の先端部に直径32mmの3枚羽根を備える)
負荷方法:1)200mLビーカーに、試料(乳化製剤)200gをはかりとる。
2)試料を60℃で20分間静置する。
3)200mLビーカー底部からの高さ15mmに羽根を設置する。
4)回転数1300rpmの条件で、撹拌羽根で試料を撹拌する。
5)所定時間(0分、3分、6分)で乳化製剤をサンプリングし、前記a)メジアン径(D50)、及びb)1.3μm↑の評価を行った。
その結果を、表2-5に示した。
【0126】
【表2-5】
【0127】
これから理解される通り、食塩の添加による、乳化製剤の乳化性の向上、及び保存安定性及び物理安定性の向上が確認された。
【0128】
製造例3(ガティガム含有製剤)
(塩の有無、ガティガムの濃度及び分子量のバリエーション)
(3-1)[GumG溶液(Mw 120万、25質量%水溶液)]
比較例3-1~3-5(Ref. 3-1~3-5)及び実施例3-1~3-5(Ex.3-1~Ex.3-5)の各乳化製剤を、表3-1に示す処方[GumG溶液(Mw 120万)]に従って、ガティガムの量(濃度)を変化させて、次のように、製造した。以下、処方中の量の数値の単位は、前記の処方と同様、質量%である。
群2の成分を、撹拌(2500RPM、3分間)して、混合した。
これに、群3の成分を添加し、及び撹拌(2500RPM、1分間)して混合した。
これに、100℃に加熱した群1の成分を添加し、及び撹拌(2500RPM、3分間)して、混合した。
得られた溶液をろ過(100メッシュ)した後、ナノマイザーによって処理(50MPa×3回)した。
得られた乳化製剤のpHは2.5~3.5の範囲内であった。
(3-2)[GumG溶液(Mw 15万、28質量%水溶液)]
同様に、比較例3-6~3-10(Ref. 3-6~3-10)及び実施例3-6~3-10(Ex.3-6~Ex.3-10)の各乳化製剤を、表3-2[GumG溶液(Mw 15万)]に示す処方に従って、製造した。
(3-3)[GumG溶液(Mw 5万、9万、25万、各28質量%水溶液)]
同様に、比較例3-11~3-13(Ref. 3-11~3-13)及び実施例3-11~3-13(Ex.3-11~Ex.3-13)の各乳化製剤を、表3-3[GumG溶液(Mw 5万、9万、25万)]に示す処方に従って、製造した。
【0129】
【表3-1】
【0130】
【表3-2】


















【0131】
【表3-3】
【0132】
試験例3(ガティガム含有製剤)
(塩の有無、ガティガムの濃度及び分子量のバリエーション)
製造例3で製造した各種製剤について、試験例1及び2の方法に従って、初期乳化性、保存安定性、及び物理安定性の各試験を行った。結果を以下の各表に示した。
【0133】
(乳化性、保存安定性)
【0134】
【表3-4】
【0135】
(物理安定性)
【0136】
【表3-5】






【0137】
(乳化性、保存安定性)
【0138】
【表3-6】














【0139】
(物理安定性)
【0140】
【表3-7】





































【0141】
(乳化性、保存安定性)
【0142】
【表3-8】














【0143】
(物理安定性)
【0144】
【表3-9】
【0145】
製造例4(ガティガム含有製剤)
(塩のバリエーション)
(4-1)[GumG溶液(Mw 120万、25質量%水溶液)]
次表に示す処方[GumG溶液(Mw 120万)]に従って、ガティガムの量(濃度)を変化させて、実施例4-1~4-5(Ex.4-1~Ex.4-5)の各乳化製剤を製造した。
【0146】
【表4-1】
【0147】
(4-2)[GumG溶液(Mw 15万、28質量%水溶液)]
同様に、次表の処方[GumG溶液(Mw 15万)]の製剤(実施例4-6~4-10(Ex.4-6~Ex.4-10))を製造した。
【0148】
【表4-2】
【0149】
(4-3)[βカロテン含有乳化製剤]
同様に、βカロテンを含有する、次の2つの表[前者はGumG溶液(Mw 120万、25質量%水溶液)、後者はGumG溶液(Mw 15万、28質量%水溶液)]の処方の製剤を製造した。
【0150】
【表4-3】
【0151】
【表4-4】
【0152】
試験例4(ガティガム含有製剤)
(塩のバリエーション)
製造例4で製造した各種製剤について、試験例1及び2の方法に従って、初期乳化性、保存安定性、及び物理安定性の各試験を行った。結果を以下の各表に示した。










【0153】
(4-1)(乳化性、保存安定性)
(4-1-1)[GumG溶液(Mw 120万、25質量%水溶液)]
【0154】
【表4-5】














【0155】
(4-1-2)[GumG溶液(Mw 15万、28質量%水溶液)]
【0156】
【表4-6】












【0157】
(4-1-3)[βカロテン含有乳化製剤;GumG溶液(Mw 120万、25質量%水溶液)]
【0158】
【表4-7】
【0159】
(4-1-4)[βカロテン含有乳化製剤;GumG溶液(Mw 15万、28質量%水溶液)
【0160】
【表4-8】
【0161】
これから理解される通り、様々な塩の添加による、様々な乳化製剤の乳化性の向上、及び保存安定性及び物理安定性の向上が確認された。
図1