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特許7335814動物飼料添加物としてのリグニン含有マイクロセルロース
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  • 特許-動物飼料添加物としてのリグニン含有マイクロセルロース 図1
  • 特許-動物飼料添加物としてのリグニン含有マイクロセルロース 図2
  • 特許-動物飼料添加物としてのリグニン含有マイクロセルロース 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】動物飼料添加物としてのリグニン含有マイクロセルロース
(51)【国際特許分類】
   A23K 10/32 20160101AFI20230823BHJP
   A23K 50/75 20160101ALI20230823BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20230823BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20230823BHJP
【FI】
A23K10/32
A23K50/75
A23K10/30
A23K20/163
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019561722
(86)(22)【出願日】2018-05-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 FI2018050352
(87)【国際公開番号】W WO2018206852
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】20175420
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】523143992
【氏名又は名称】ノルディック・バイオプロダクツ・グループ・オサケユフティオ
【氏名又は名称原語表記】Nordic Bioproducts Group OY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】カリ・ヴァンハタロ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイッキ・ハンヌカイネン
(72)【発明者】
【氏名】アスコ・コスキマキ
(72)【発明者】
【氏名】オッリ・ダール
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-509373(JP,A)
【文献】特開2018-110551(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056275(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/159250(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0112193(US,A1)
【文献】種々の方法で測定した未晒パルプの蒸解度測定値間の比較,紙パ技協誌,1961年07月10日,第15巻第7号,442-449
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 - 50/90
C08B 1/00 - 37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも70重量%のグルコース含量および20重量%までであるリグニン含量を有するリグニン含有微結晶セルロース(MCC)を含む家禽飼料添加物。
【請求項2】
微結晶セルロース原料のリグニン含量が、原料の15重量%までであり、原料が、針葉樹または広葉樹をベースとする材料であるか、または綿、草、バガス、穀類作物のわら、亜麻、麻、サイザル、マニラ麻または竹などの非木材リグノセルロース系植物材料である、請求項1に記載の家禽飼料添加物。
【請求項3】
微結晶セルロース原料のリグニン含量が、原料の10重量%までである、請求項2に記載の家禽飼料添加物。
【請求項4】
微結晶セルロース原料のリグニン含量が、原料の5重量%までである、請求項2に記載の家禽飼料添加物。
【請求項5】
針葉樹または広葉樹をベースとする材料が、その化学パルプである、請求項2~4のいずれか1つに記載の家禽飼料添加物。
【請求項6】
基本的な家禽飼料当たりの家禽飼料添加物の含有率が、乾燥物質ベースで、1kg/tn~15kg/tnである、請求項1~5のいずれか1つに記載の家禽飼料添加物。
【請求項7】
微結晶セルロースが、8~100μmの平均粒径を有する、請求項1~のいずれか1つに記載の家禽飼料添加物。
【請求項8】
微結晶セルロースが、10~60μmの平均粒径を有する、請求項に記載の家禽飼料添加物。
【請求項9】
微結晶セルロースが、15~30μmの平均粒径を有する、請求項に記載の家禽飼料添加物。
【請求項10】
微結晶セルロースが、20μm未満の平均粒径を有する、請求項に記載の家禽飼料添加物。
【請求項11】
25日間の給餌試験中に、家禽飼料添加物なしの対照飼料と比較して、家禽の体重増加を少なくとも2%増加させる、請求項1~10のいずれか1つに記載の家禽飼料添加物。
【請求項12】
家禽の体重増加が、少なくとも7%である、請求項11に記載の家禽飼料添加物。
【請求項13】
基本的家禽飼料処方および請求項1~12のいずれか1つに記載の家禽飼料添加物を一緒に混合することによる、家禽飼料の製造方法。
【請求項14】
基本的家禽飼料処方が、乾燥物質ベースで、1 kg/tn:15 kg/tnの比率で、請求項1~12のいずれか1つに記載の家禽飼料添加物と置き換えられる、家禽飼料の製造方法。
【請求項15】
基本的家禽飼料処方が、小麦-大豆ベースである、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
家禽飼料の飼料添加物としてのリグニン含有微結晶セルロースの使用。
【請求項17】
リグニン含有微結晶セルロースが、少なくとも140℃の温度およびセルロースの乾燥重量で計算された少なくとも8%の濃度における、リグノセルロース系出発物質の酸加水分解によって得られる、請求項16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に生産動物に標的化されたリグニン含有マイクロセルロースを含む動物飼料添加物に関する。このような動物飼料添加物は、基本的な動物の飼料を部分的に置き換えるように設計されており、それにより動物の成長を改善し、より安価な動物飼料製品が提供される。
【背景技術】
【0002】
アールト大学の研究科学者は、以前に、森林産業の副産物から純粋な微結晶セルロース(MCC)画分を製造する独自の方法を開発しており、この方法は、生産動物の飼料サプリメントとしてのこれらの画分の適用性を促進すると推定されている(欧州特許EP 2 822 397)。反芻動物におけるMCCの栄養価を明らかにするために、科学者は、低エネルギーおよび高エネルギーの食事において、配合飼料を2つの異なるセルロース画分で部分的に置き換えるインビトロ第一胃シミュレーションを実施した。MCC画分は、第一胃内乳酸の形成において有意な用量依存的抑制効果を有し、第一胃内pHに直接影響した。この結果は、乳酸産生第一胃細菌の増殖および発酵活性が抑制されたことを示唆した。興味深いことに、セルロース画分が他の発酵パラメーター(たとえば、VFA生産および微生物バイオマスなど)に与える影響は最小限であった。
【0003】
乳酸菌は、飼料由来のエネルギーの大部分が吸収される、ブロイラー鶏の小腸の微生物の支配的なグループである。小腸の細菌が特定の栄養素について宿主と直接競合することは注目に値する。したがって、これらの細菌集団の阻害は、宿主による栄養素の捕捉に大きな影響を与え、体重増加と飼料要求効率を改善する可能性がある。「茶色」のMCCはフェノール化合物を含み、抗菌特性を有する可能性がある。したがって、MCCを飼料に含めることにより、小腸の微生物活性が低下し、ブロイラー鶏の能力に有益な効果を与える可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
市販の微結晶セルロースは、以前から、動物飼料サプリメント用に、利用されている。このような微結晶セルロースの重要な不利益の1つは、価格が高いことである。このように、動物飼料業界でマイクロセルロース、特にリグニンを含む微結晶セルロースを価格的に有利に利用する新しい手段が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概略
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。いくつかの特定の実施態様は、従属請求項で定義される。
【0006】
本発明の1つの態様によれば、リグニン含有マイクロセルロースを含む動物飼料添加物が提供される。
【0007】
本発明の別の態様によれば、リグニン含有微結晶セルロースを含む動物飼料添加物が提供される。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、基本的な動物飼料を本発明による動物飼料添加物で部分的に置き換えることによって動物飼料を生産する方法が提供される。
【0009】
この態様および他の態様は、以下に記載され、請求されるように、既知の解決策を凌ぐその利点と共に、本発明によって達成される。
【0010】
本発明による動物飼料添加物は、主に請求項1に記載されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る動物飼料の製造方法は、主に請求項10に記載されていることを特徴とする。
【0012】
本発明による使用は、請求項16に記載されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によりかなりの利点が得られる。たとえば、本発明で利用されるマイクロセルロースおよび/または微結晶セルロースは、従来のマイクロセルロースおよび/または微結晶セルロースよりも生産コストおよび二酸化炭素排出量が著しく低い。リグニン含有マイクロセルロースおよび/または微結晶セルロースは、茶色のストックパルプから容易に生産することができ、生産が製紙工場に統合される場合、マイクロセルロースおよび/または微結晶セルロースの生産は大量に実行可能であり、動物飼料の生産において競争力のある価格がもたらされる。
【0014】
さらに、マイクロセルロースおよび/または微結晶セルロースは、有益な盲腸細菌の潜在的な繊維源として機能する可能性がある。したがって、腸管下部細菌の発酵の刺激の可能性は、動物の能力に大きな影響を与えうる。
【0015】
次に、特定の実施態様を参照して、本技術をより詳細に説明する。
【0016】
実施態様
本技術は、生産動物の飼料要求率(FCR)および体重増加(BWG)を増加させるリグニン含有マイクロセルロースの飼料添加物を提供する。このような飼料添加物は、生産が簡単で安価である。改善された飼料効率は、対照処置と比較して、飼料摂取量の減少および体重増加が改善された結果である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】25日間の給餌試験中の異なる処置グループにおける、ペン(囲い)当たりの平均飼料消費量を示す図表である。
図2】25日間の給餌試験中の異なる処置グループにおける、ニワトリの平均体重増加を示す図表である。
図3】25日間の給餌試験中の異なる処置グループにおける、ペンの平均飼料要求率を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明で用いるマイクロセルロースは、任意の既知の方法により製造することができる。
【0019】
しかしながら、本発明の好ましい実施態様によれば、マイクロセルロースは、フィンランド特許FI 126842 Bに記載の方法によって製造される。
【0020】
たとえば、1つの実施態様では、繊維状リグノセルロース系材料は、少なくとも140℃の温度およびセルロースの乾燥重量で計算された少なくとも8%の濃度において酸加水分解を受ける。鉱酸を使用する場合、酸は、セルロースの乾燥重量の約0.2~2%の量で(100重量%基準で)添加される。典型的には、加水分解は約1~6.5、特に2~6の範囲のpHで行われる。
【0021】
より具体的には、好ましい実施態様では、繊維状セルロース系リグニン含有材料は、少なくとも140℃、好ましくは140~185℃、より好ましくは150~180℃、最も適切には155~175℃の温度で弱酸加水分解を受ける。そのような実施態様では、濃度は、セルロースの乾燥重量に基づいて、典型的には、少なくとも8%、好ましくは8~50%、より好ましくは15~50%、さらにより好ましくは20~50%、および最も適切には25~45%である。加水分解は、繊維状セルロース系材料を酸と接触させること、好ましくは混合することにより、実施することができる。この実施態様の特定の利点は、出発材料中に存在するリグニンが、微結晶セルロース製品の生産を損なわないという発見にある。
【0022】
加水分解における出発材料として使用される繊維状セルロース系材料は、リグニンを含有する任意のセルロース系材料、たとえば、針葉樹または広葉樹をベースとする材料、好ましくはその化学パルプでありえ、その材料は、上記条件下で加水分解することができ、そして ヘミセルロースなどの、セルロースとリグニン以外の材料を含みうる。綿、草、バガス、穀類作物のわら、亜麻、麻、サイザル、マニラ麻または竹などの非木材リグノセルロース系植物材料も適当でありうる。
【0023】
本発明の1つの実施態様によれば、使用されるマイクロセルロースは、「高純度」マイクロセルロース、すなわち、高グルコース含量、特に少なくとも97重量%のグルコース含量、および最も適切には少なくとも98重量%のグルコース含量を有するマイクロセルロースの形態であるのが好ましい。
【0024】
本発明の別の実施態様によれば、マイクロセルロースは、「中純度」マイクロセルロースの形態であり、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、および最も適切には少なくとも90重量%のグルコース含量を有するリグニン含有マイクロセルロースであるのが好ましい。
【0025】
しかしながら、マイクロセルロースは、動物の発達と成長の現在の段階において給餌されるその動物のエネルギー必要量に応じて、さまざまな含量で飼料添加物に使用されうる。
【0026】
本明細書で使用される「マイクロセルロース」という用語は、微結晶セルロース(MCC)、粉末マイクロセルロース、および加水分解セルロースを含むことを意図している。MCCは一般に、アルファセルロースから精製され、部分的に解重合されたマイクロセルロースとして定義される。重合度は、典型的には、400未満である。同様に、粉末セルロースは、一般に、アルファセルロースから精製および分解されている。さらに、「マイクロセルロース」という用語は、リグニン含有マイクロセルロースを含むことが意図されており、これは(上記のように)、グルコース含量はより低いが、代わりにリグニンを含みうる。この場合、マイクロセルロースは、原料としてリグニン含有セルロースを使用して(本明細書に記載の手順に従って)製造される。
【0027】
本発明の1つの実施態様によれば、マイクロセルロースの平均粒径は、好ましくは8~100μm、より好ましくは10~60μm、さらにより好ましくは15~30μm、および最も適切には20μm未満である。
【0028】
本発明の1つの実施態様によれば、セルロース原料中のリグニン含量は、原料の、好ましくは15重量%まで、より好ましくは10重量%まで、最も適切には5重量%までであり、一方、ヘミセルロース含量は 好ましくは15重量%未満、より好ましくは10重量%未満である。
【0029】
本発明の1つの実施態様によれば、動物飼料添加物に使用される微結晶セルロースのリグニン含量は、微結晶セルロースの20重量%まで、好ましくは15重量%まで、および最も適切には10重量%までである。
【0030】
リグニン含量は、カッパー価で測定することができ、これは、ISO標準分析法による木材パルプの残留リグニン含量または漂白性の指標である。カッパー価は、所定の白色度のパルプを得るための木材パルプの漂白中に必要な化学物質の量を推定する。必要な漂白剤の量は、パルプのリグニン含量に関連するため、カッパー価は、パルプ化プロセスのリグニン抽出相の有効性をモニターするために使用することができる。それは、パルプの残留リグニン含量にほぼ比例する。
【0031】
本発明の1つの実施態様では、MCCの製造に使用される原料のカッパー価は、約80までであり、そこから、生成されるリグニン含有MCCのカッパー価は約100までであった。
【0032】
典型的には、リグニンは、マイクロセルロースの生産に問題を引き起こすので、リグノセルロース原料から除去される。しかしながら、本発明では、飼料添加物のエネルギー増加、リグニンの抗菌特性、および除去ステップによって生じるコスト削減などの利点が得られるので、リグニンを除去する必要はない。マイクロセルロース生産後のリグニンの添加は、同様の有利な効果をもたらさない。好ましい実施態様では、本発明は、抗菌剤を含まない給餌を可能にするか、または少なくとも動物飼料中の抗菌剤の量を本質的に減少させる。
【0033】
前述のように、動物飼料添加物は、基本的な動物飼料を部分的に置き換えるために設計されている。本発明の1つの実施態様によれば、基本的な動物飼料当たりの動物飼料添加物の含有率は、乾燥物質ベースで、1kg/tn~15kg/tn、好ましくは1kg/tn~5kg/tn、および最も適切には約5 kg/tnであるのが好ましい。
【0034】
本発明の発明者らは、本発明による動物飼料添加物が、25日間の給餌試験中に、動物飼料添加物なしの対照飼料と比較して、動物の体重増加を少なくとも2%、好ましくは少なくとも7%増加させることを発見した。この特定の給餌試験の試験動物はニワトリであったが、本明細書で提供される動物飼料添加物は、他の生産動物にも適用されうる。
【0035】
動物飼料要求率と体重増加に焦点を当てた実験に基づいて、基本的動物飼料を、本発明による動物飼料添加物で部分的に置き換えることが有利であると結論付けることができる。前述のように、基本的動物飼料ごとの動物飼料添加物の含有率は、乾燥物質ベースで1 tn/kg~15 tn/kgであることが好ましい。添加物を多量にすると、飼料の嗜好性の低下が原因である可能性が最も高い、飼料の過剰な浪費が明らかに見られた。適切な基本的動物飼料の1つのタイプは、大豆ベースである。しかしながら、他の一般的な動物飼料も使用することができる。
【0036】
本明細書中の「一実施態様(one embodiment)」または「一実施態様(an embodiment)」「に対する参照は、実施態様に関連して説明されている特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施態様に含まれることを意味する。したがって、本明細書中のさまざまな場所に記載された「一実施態様における(in one embodiment)」または「一実施形態における(in an embodiment)」という句は、必ずしもすべてが同じ実施態様を参照しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造または特性が、1つ以上の実施態様において、任意の適切な様式で組み合わせられてもよい。たとえば、約または実質的になどの用語を使用して数値が参照される場合、正確な数値も開示される。
【0037】
本明細書で使用される場合、複数のアイテム、構造要素、構成要素、および/または材料は、便宜のために共通のリストで提示されうる。しかしながら、これらのリストは、リストの各メンバーが個別の一意のメンバーとして個別に識別されるかのように解釈されるべきである。前述の例は、1つ以上の特定の用途における本発明の原理の例示であるが、実施の形態、使用法、および詳細における多くの修正が、発明力を行使することなく、そして本発明の原理と概念から逸脱することなく行われうることは当業者には明らかであろう。したがって、以下に記載される特許請求の範囲によるものを除いて、本発明が限定されることは意図されていない。
【0038】
この文書では、「含む(comprise)」および「包含する(include)」という動詞は、言及されていない特徴の存在を除外も要求もしない非限定として使用される。従属項に記載される特徴は、特に明記されない限り、相互に自由に組み合わせることができる。さらに、「a」または「an」、すなわち、単数形の使用は、本明細書を通じて、複数を除外するものではないことを理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、動物飼料産業において、リグニン含有マイクロセルロースおよび/またはリグニン含有微結晶セルロースを含む動物飼料添加物を使用することにより、たとえば、動物飼料要求率および体重増加、ならびに動物の能力を高めるために利用することができる。本発明による動物飼料添加物は、安価で生産され、改善された飼料効率を提供する。
【実施例
【0040】
材料および方法
新たに孵化したニワトリを15羽からなるグループに分けた。表1参照。補正されていない対照に加えて、3つのMCC投与量を試験した。各飼料を8つのペンに給餌した。この構成で、鳥の数は合計480羽であった。
【0041】
適用された飼料は、MTT Agrifood Research Finlandによって処方および製造された。基本的飼料処方(スターター;1~15日およびグロワー;16~25日)は小麦-大豆ベースであった。
【0042】
処置グループは、以下の通りであった:
1.補正なしの対照飼料(基本飼料)
2.MCC、1 kg/ton(乾燥物質ベースで置き換えられた基本飼料)
3.MCC、5 kg/ton(乾燥物質ベースで置き換えられた基本飼料)
4.MCC、15 kg/ton(乾燥物質ベースで置き換えられた基本飼料)
【0043】
MCCバッチの乾燥物質含量は、飼料製造の時点で、~40%であった。
【0044】
表1:給餌試験構成
【表1】
【0045】
給餌試験およびサンプル処置
動物および住居:25日間の実験は、フィンランド南部のソメロ(Somero)にあるAlimetricsのブロイラー鶏舎で行った。1日目、新たに孵化した480羽のロス508ブロイラーのヒナを、32個の0.75 m×1.5 mの木屑を敷いたオープンペンに、1ペン当たり15羽の鳥を割り当て、給餌処置ごとに8個のペンで複製した。処置当たりの鳥は、120羽であった。
【0046】
ホールの温度は、最初は30℃に上げ、最初の2週間はヒナをさらに加熱できるように育雛ランプを調節した。育成期間中、温度を徐々に低下させた。実験中、ペン内の温度を自動記録システムでモニターした。明暗サイクルは、1日あたり18時間の明期、6時間の暗期とし、成長期間中に徐々に光強度を低下させた。空気の湿度を加湿器で上昇させ、湿度も毎日モニターし、記録した。ヒナは試験中を通して、飼料と水を自由に摂取することができた。ペンごとに2つの給餌器があり、水をニップル給水ラインから流した。
【0047】
能力分析:480羽の孵化したてのヒナを、1日目に個別に体重を測定した後、ペンに移し、飲食させた。15日目と25日目に再びすべてのヒナの体重を測定した(屠殺)。ペンに与えられた飼料の重量を量り、食べ残しの重量を15日目(スターター飼料)と25日目(グロワー飼料)に計量した。したがって、飼料消費、飼料要求率(FCR、各ペンで提供される飼料をペンの鳥の総体重で割ったもの)および鳥の体重増加(BWG)を1~15日および15~25日に測定した。ペンで死亡した鳥、および脚の問題、怪我、またはその他の健康上の問題のために頸椎脱臼により安楽死させた鳥を計量および記録し、剖検のために冷凍庫に保管した。
【0048】
サンプリング:ペン当たり2羽のヒナが、15日目と25日目に屠殺され、それらの回腸および盲腸をサンプリングした。後で微生物パラメーターを分析できるように、128個の回腸および128個の盲腸消化物サンプルをすべて、冷凍庫に保管した。
【0049】
統計分析
統計分析は、測定されたすべてのパラメーターについての両側t検定で構成された。検定は、ダネットの事後検定が使用されているとおり、補正なしで処置に対して実行されたが、個々の処置が同時にテストされた他の処置から独立するようにt検定が選択された。
【0050】
スチューデントのt検定のよる有意性:
p値 <0.01 ~
p値 <0.05 *
p値 <0.01 **
p値 <0.001 ***
p値 <0.0001 ****
【0051】
飼料消費量
図1は、25日間の給餌期間の終わりにおけるペン当たりのブロイラー鶏の平均飼料消費量を示す。MCCの最高(15 kg/tn)投与量は、補正なしの対照と比較して飼料消費量を統計的に有意に増加させた(p <0.05)。しかしながら、飼料消費量の増加が、鳥がペンの周りに餌をばらまき、無駄にしたためであることは注目に値する。これは、MCC濃度が高いために飼料が美味ではなかったことを示唆する。飼料の浪費が過剰であるため、試験期間は28日から25日に短縮された。低(1 kg/tn)および中間(5 kg/tn)用量のMCCでは、同様の飼料消費または無駄の増加は観察されなかった。実際、飼料摂取量は、対照と比較して、特に5 kg/tnのMCC含有物では低くなる傾向があった。
【0052】
体重増加(BWG)
1つの中間時点(15日目)および25日間の給餌期間の終わりに、個々の動物についてBWGをモニターした。対照グループの鶏の平均BWGは、試験終了時で1364グラムであった。図2に示すように、MCCを5 g/tn含む場合、BWGは有意に増加した(対照と比較して、鳥当たり約96 gの増加)。5kg/tnのMCCを含む場合に飼料消費量が少なくなる傾向があったため、この結果は驚くべきものであった。さらに、最高(15 kg/tn)のMCC投与量は、BWGを増加させた。しかしながら、上記のように飼料消費量も増加した。
【0053】
15日目におけるBWGのパターンは、25日目のパターンと同様であった。
【0054】
飼料要求率(FCR)
FCRは、飼料質量を体重に変換することにおける動物の効率の尺度、すなわち、1キログラムの体重増加を行うための飼料摂取量である。したがって、FCRの低い動物は、飼料の効率的な使用者と見なされる。
【0055】
25日間の給餌期間後の異なる処置グループの鳥の平均FCR値を図3に示す。飼料消費量とBWGの結果から予想されるように、MCC(1または5 kg/tn)を飼料に含む場合、ブロイラー鶏のFCRが大幅に改善された。最も有意な改善は、5 kg/tnを含有する場合に観察された(p <0.01)。この結果は確かに有望であり、MCCが能力を向上させる飼料添加物として適用される可能性があることを示唆する。最高のMCC含有レベルでは、この処置グループ内での飼料消費量および無駄の大幅な増加のため、対照とは統計的に有意な差を示さなかった。
【0056】
5 kg/tnのMCC封入用量が、1日目から15日目のスターター飼料期間中にFCRのさらに有意な改善(p <0.001)を示したことは注目に値する。
【0057】
死亡率
本試験のブロイラー鶏は、下痢などの病気または消化器系の問題の兆候を示さなかったため、死亡したニワトリまたは処分されたニワトリはいずれも感染症についての獣医検査に送られなかった。25日間の給餌期間中に、合計18羽の鳥が死亡または処分された(死亡率3.75%)。この試験では、MCC処置はいずれもヒナの死亡率に影響を及ぼさなかった。
【0058】
むすび
本研究の目的は、実験的な給餌試験において、MCCがブロイラー鶏の成長能力に影響を及ぼすかどうかを発見することであった。我々の以前の第1胃シミュレーション研究では、MCC画分は、VFA生産を損なうことなく、第1胃乳酸形成に対して有意な用量依存的抑制効果を示した。この結果は、MCC含有物が、乳酸産生第一胃細菌の増殖および発酵活性を特異的に阻害したことを示唆する。
【0059】
乳酸菌は、飼料由来のエネルギーの大部分が吸収されるブロイラー鶏の小腸の主要な微生物群であることが知られている。小腸細菌は、特定の栄養素を求めて宿主と直接競合することも知られている。したがって、この給餌試験は、第1胃シミュレーションのようにMCCが飼料に含まれることによる乳酸菌の同様の特異的阻害がブロイラー鶏でも発生するかどうかを評価することを目的としており、より重要なことは、そのような阻害が、飼料由来の栄養素に対する競合の減少により動物の能力パラメーターを改善するかどうかである 。
【0060】
本実験では、特に5 kg/tnのMCCが、25日間の試験期間全体でロス508ブロイラー鶏のBWGとFCRを有意に改善したことが示唆された。飼料効率の改善は、対照処置と比較した場合の飼料摂取量の減少と体重増加の改善の結果としてであった。この研究の結果から、最高(15 kg/tn)のMCC含有率がブロイラー鶏の飼料に適用するには高すぎることも示された。これは、飼料の嗜好性の低下が原因である可能性が最も高いことにより飼料の過剰な浪費として明らかに見られた。
【0061】
得られた結果は確かに有望であり、上部消化管での飼料由来栄養素の競合の減少という上記の仮説を裏付けている。改善された能力のもう1つの可能性は、MCCが有益な盲腸細菌の潜在的な繊維源として機能する可能性があることである。したがって、下部腸管の細菌の発酵の刺激は、動物の能力に大きな影響を与える可能性がある。
【0062】
引用リスト
EP 2 822 397
FI 126842 B
図1
図2
図3