(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】ドラム進退装置およびこれを備えたタイヤ試験機
(51)【国際特許分類】
G01M 1/02 20060101AFI20230823BHJP
G01M 1/16 20060101ALI20230823BHJP
G01M 17/02 20060101ALI20230823BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
G01M1/02
G01M1/16
G01M17/02
B60C19/00 H
(21)【出願番号】P 2020157634
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】住谷 敬志
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-350272(JP,A)
【文献】特開2006-308320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 1/02
G01M 1/16
G01M 17/02
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ試験位置においてタイヤの回転中心軸が上下方向に延びる姿勢である水平姿勢とされた前記タイヤを前記回転中心軸回りに回転させ前記タイヤに所定の試験を行うタイヤ試験機に備えられるドラム進退装置であって、
上下方向に延びるドラム軸と前記タイヤの外周面に当接するドラム外周面とを有する円筒状の回転ドラムと、
前記回転ドラムを前記ドラム軸
回りに回転可能に支持するドラムハウジングと、
前記ドラムハウジングの下方に配置されフレーム天板を有するベースフレームであって、前記回転ドラムの前記ドラム外周面が前記タイヤの外周面に対して接離するように前後方向に移動可能な前記ドラムハウジングを支持するベースフレームと、
前記回転ドラムが前記タイヤから受ける荷重を検出することが可能な荷重検出器と、
前後方向に延びる軸
回りに回転可能なように前記フレーム天板に支持される少なくとも一つのボールねじと、
前記少なくとも一つのボールねじを前記軸
回りに回転させることが可能な駆動源と、
前記ドラムハウジングに装着され、前記駆動源による前記少なくとも一つのボールねじの回転に伴って前記ドラムハウジングが前後方向に移動するように前記少なくとも一つのボールねじと係合する少なくとも一つのボールねじナットと、
前後方向に延びるとともに前記少なくとも一つのボールねじに対して左右方向に間隔をおいて配置されるように前記フレーム天板に装着され、前記ドラムハウジングを前後方向に沿って移動可能に支持する複数のリニアガイドと、
を備え、
前記ベースフレームは、
上下方向および前後方向にそれぞれ延びるとともに左右方向に並んで配置され前記フレーム天板をそれぞれ支持する複数の縦板であって、上下方向から見て前記少なくとも一つのボールねじと重なるように配置される少なくとも一つの第1縦板と、上下方向から見て前記複数のリニアガイドと重なるようにそれぞれ配置される複数の第2縦板とを含む複数の縦板と、
前記複数の縦板を左右方向においてそれぞれ接続する複数の横板と、
を有する、ドラム進退装置。
【請求項2】
前記少なくとも一つのボールねじは、左右方向に間隔をおいて配置されるように前記フレーム天板にそれぞれ回転可能に支持される複数のボールねじを含み、
前記少なくとも一つのボールねじナットは、前記複数のボールねじとそれぞれ係合する複数のボールねじナットを含み、
前記複数の縦板の前記少なくとも一つの第1縦板は、上下方向から見て前記複数のボールねじと重なるようにそれぞれ配置される複数の第1縦板を含む、請求項1に記載のドラム進退装置。
【請求項3】
前記複数のボールねじは左右方向において互いに対向して配置される2つのボールねじから構成され、
前記複数のリニアガイドは前記2つのボールねじの左右両外側に配置される2つのリニアガイドから構成され、
前記複数の第1縦板は、上下方向から見て前記2つのボールねじと重なるようにそれぞれ配置される2つの第1縦板から構成され、
前記複数の第2縦板は、上下方向から見て前記2つのリニアガイドと重なるようにそれぞれ配置される2つの第2縦板から構成される、請求項2に記載のドラム進退装置。
【請求項4】
前記複数のリニアガイドは左右方向において互いに対向して配置される2つのリニアガイドから構成され、
前記複数のボールねじは前記2つのリニアガイドの左右両外側に配置される2つのボールねじから構成され、
前記複数の第1縦板は、上下方向から見て前記2つのボールねじと重なるようにそれぞれ配置される2つの第1縦板から構成され、
前記複数の第2縦板は、上下方向から見て前記2つのリニアガイドと重なるようにそれぞれ配置される2つの第2縦板から構成される、請求項2に記載のドラム進退装置。
【請求項5】
前記2つの第1縦板および前記2つの第2縦板を含む4つの縦板のうち左右外側の2つの縦板の断面二次モーメントは、左右内側の2つの縦板の断面二次モーメントよりも大きく設定されている、請求項3または4に記載のドラム進退装置。
【請求項6】
前記2つの第2縦板の断面二次モーメントは、前記2つの第1縦板の断面二次モーメントよりも大きく設定されている、請求項3または4に記載のドラム進退装置。
【請求項7】
前記複数の縦板は、
上端部および下端部を含み、上下方向および前後方向に延びる縦板本体と、
前記縦板本体の前記上端部から左右方向にそれぞれ延びるように前記上端部に接続され、前記フレーム天板を支持する上側支持板と、
前記縦板本体の前記下端部から左右方向にそれぞれ延びるように前記下端部に接続され、床面に設置される下側設置板と、
をそれぞれ含む、請求項1乃至6の何れか1項に記載のドラム進退装置。
【請求項8】
前記複数の縦板は、それぞれH型鋼から構成される、請求項
7に記載のドラム進退装置。
【請求項9】
前記ベースフレームは、前記タイヤ試験位置において前記タイヤを回転可能に支持するスピンドルを支持することが可能なように配置されるスピンドル支持板を更に備え、
前記複数の縦板の前記縦板本体の前記上端部は、
前記上側支持板に接続される後側上端部と、
前記後側上端部の前方において当該後側上端部よりも低い位置に配置され、前記スピンドル支持板を支持する前側上端部と、
をそれぞれ有する、請求項7または8に記載のドラム進退装置。
【請求項10】
前記ドラムハウジングは、
前記回転ドラムの上方に配置され、前記回転ドラムを回転可能に支持する上壁と、
前記回転ドラムの下方に配置され、前記回転ドラムを回転可能に支持する底壁と、
前記回転ドラムの左右両側にそれぞれ配置され、前記上壁と前記底壁とを互いに接続する左右一対の側壁と、
を有し、
前記ドラムハウジングの前記底壁は、前記ドラムハウジングが前記ベースフレームに対して前後方向に相対移動可能なように前記少なくとも一つのボールねじナットをそれぞれ保持する少なくとも一つのナット保持部を有する、請求項1乃至9の何れか1項に記載のドラム進退装置。
【請求項11】
前記ベースフレームの前記フレーム天板に装着され、前記少なくとも一つのボールねじの前端部を支持し前記ドラムハウジングから前記少なくとも一つのボールねじに掛かる荷重を受ける少なくとも一つのボールねじ支持部を更に備え、
前記少なくとも一つのナット保持部は、前記ドラム軸よりも前方に配置されている、請求項10に記載のドラム進退装置。
【請求項12】
前記回転ドラムは前記タイヤ試験位置においてトラックバス用のタイヤに対する試験を行うためのものであり、前記回転ドラムの直径が1500mm以上に設定されている、請求項1乃至11の何れか1項に記載のドラム進退装置。
【請求項13】
前記タイヤ試験位置においてタイヤの回転中心軸が上下方向に延びる姿勢である水平姿勢とされた前記タイヤを前記回転中心軸回りに回転させることが可能なスピンドルと、
前記タイヤを前記タイヤ試験位置に搬入するとともに前記タイヤ試験位置から搬出することが可能である搬送装置と、
前記タイヤ試験位置に配置された前記タイヤの外周面に前記回転ドラムを接離させることが可能な、請求項1乃至12の何れか1項に記載のドラム進退装置と、を備えるタイヤ試験機。
【請求項14】
前記スピンドルは、
前記水平姿勢とされた前記タイヤを上方から支持する上スピンドルと、
前記水平姿勢とされた前記タイヤを下方から支持する下スピンドルと、
を有し、
前記上スピンドルと前記下スピンドルとの間に前記タイヤが配置されることを可能とするように、前記上スピンドルを前記下スピンドルに対して相対的に昇降させる昇降機構を更に備え、
前記ドラム進退装置は、前記ベースフレームを囲むように配置される複数の支持脚であって、床面に設置される下端部と前記昇降機構を支持する上端部と前記ベースフレームに接続されるフレーム接続部とをそれぞれ有する複数の支持脚を更に有する、請求項13に記載のタイヤ試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに所定の試験を行うために、回転ドラムをタイヤに向かって進退させるドラム進退装置およびこれを備えたタイヤ試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤのユニフォミティなどを測定するタイヤ試験機が知られている。当該タイヤ試験機は、タイヤを上下方向に延びる回転中心軸回りに回転可能に支持するスピンドルと、スピンドルの回転中心軸と平行な回転中心軸回りに回転可能に支持され且つタイヤの外周面に当接可能とされた回転ドラムと、回転ドラムに加わる荷重を計測可能なロードセルと、を有する。スピンドルに装着されたタイヤに空気が充填されタイヤの外周面に回転ドラムが押し付けられると、タイヤがスピンドルによって回転され、回転ドラムの軸部分に装着されたロードセルがタイヤの荷重変動データを計測する。計測された荷重変動データに基づいて、タイヤの均一性(ユニフォミティ)が評価される。
【0003】
このように、タイヤ試験機においてタイヤ回転中の荷重変動をロードセルによって計測するためには、装置に十分な剛性が要求される。特に、装置の剛性が不十分な場合、ロードセルに装置の振動が伝わり計測値に影響を及ぼすことがある。このため、日本工業規格JIS D4233-2001、団体規格JASO C67-2000、SAE J332REV.NOV2002などには、ロードセルによる計測値に影響を及ぼすことのないよう装置の振動を抑えることについての規格がそれぞれ制定されている。
【0004】
特許文献1には、回転ドラムをタイヤに対して接離可能に進退させるドラム進退装置が開示されている。当該装置は、試験場所に固定されたベースと、回転ドラムを回転可能に支持するとともにベースに対して進退可能なキャリッジフレームとを備える。ベースは前後方向に延びる箱型形状を有している、また、ベースの上面部には、それぞれ前後方向に延びる一対のレールと、当該一対のレールの間に前後方向に延びるボールスクリューとを有する。一方、キャリッジフレームの下面部には一対のレールにそれぞれ係合するベアリングブロックと、ボールスクリューと係合するボールナットとをそれぞれ有する。ボールスクリューが回転されると、その回転駆動力がボールナットを介してキャリッジフレームに伝達され、当該キャリッジフレームが一対のレールに沿って前後方向に移動する。この結果、キャリッジフレームに回転可能に支持された回転ドラムがタイヤの外周面に当接可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたようなドラム進退装置の構造では、一般的な普通乗用車のタイヤよりも大きなサイズのタイヤに対して試験を行うと、装置の剛性不足によって、その振動がロードセルの計測値に影響を及ぼしやすいという問題がある。具体的に、国際規格ISO13326 1998では、普通乗用車用のタイヤ、トラックバス用の大径のタイヤのそれぞれに対して回転ドラムのドラム径が規定されており、普通乗用車用のタイヤに対しては回転ドラムのドラム径が830mmから1000mmの範囲(参考値854mm)に、トラックバス用のタイヤに対しては回転ドラムのドラム径が1520mmから1710mmの範囲(参考値1600mm)にそれぞれ規定されている。後者の場合には、回転ドラムの重量が非常に重くなるため、装置の剛性が低く固有振動数が低い場合には、装置が振動しやすく、その振動がロードセルの計測値に影響を及ぼしやすくなる。特許文献1に記載された技術では、このような条件に対してもベースの剛性を維持するような具体的な技術が開示されていないため、普通乗用車のタイヤよりも大きなサイズのタイヤに対して試験を行う場合に、計測値に対する装置の振動の影響を無視できないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、普通乗用車のタイヤよりも大きなサイズのタイヤに対して試験を行う場合であっても、計測値に対する装置の振動の影響を低減することが可能なドラム進退装置およびこれを備えたタイヤ試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって提供されるのは、タイヤ試験位置においてタイヤの回転中心軸が上下方向に延びる姿勢である水平姿勢とされた前記タイヤを前記回転中心軸回りに回転させ前記タイヤに所定の試験を行うタイヤ試験機に備えられるドラム進退装置である。当該ドラム進退装置は、上下方向に延びるドラム軸と前記タイヤの外周面に当接するドラム外周面とを有する円筒状の回転ドラムと、前記回転ドラムを前記ドラム軸周りに回転可能に支持するドラムハウジングと、前記ドラムハウジングの下方に配置されフレーム天板を有するベースフレームであって、前記回転ドラムの前記ドラム外周面が前記タイヤの外周面に対して接離するように前後方向に移動可能な前記ドラムハウジングを支持するベースフレームと、前記回転ドラムが前記タイヤから受ける荷重を検出することが可能な荷重検出器と、前後方向に延びる軸周りに回転可能なように前記フレーム天板に支持される少なくとも一つのボールねじと、前記少なくとも一つのボールねじを前記軸周りに回転させることが可能な駆動源と、前記ドラムハウジングに装着され、前記駆動源による前記少なくとも一つのボールねじの回転に伴って前記ドラムハウジングが前後方向に移動するように前記少なくとも一つのボールねじと係合する少なくとも一つのボールねじナットと、前後方向に延びるとともに前記少なくとも一つのボールねじに対して左右方向に間隔をおいて配置されるように前記フレーム天板に装着され、前記ドラムハウジングを前後方向に沿って移動可能に支持する複数のリニアガイドと、を備え、前記ベースフレームは、上下方向および前後方向にそれぞれ延びるとともに左右方向に並んで配置され前記フレーム天板をそれぞれ支持する複数の縦板であって、上下方向から見て前記少なくとも一つのボールねじと重なるように配置される少なくとも一つの第1縦板と、上下方向から見て前記複数のリニアガイドと重なるようにそれぞれ配置される複数の第2縦板とを含む複数の縦板と、前記複数の縦板を左右方向においてそれぞれ接続する複数の横板と、を有する。
【0009】
本構成によれば、回転ドラムがタイヤに対して進退可能なようにドラムハウジングを支持するベースフレームが、ボールねじに対応してその直下に配置される第1縦板と、リニアガイドに対応してその直下に配置される第2縦板とを有しているため、回転ドラムがタイヤから受ける荷重がドラムハウジングからボールねじおよびリニアガイドに掛かっても、各縦板が当該荷重を上下方向に沿って安定して受けとめることができる。このため、普通乗用車のタイヤよりも大きなサイズのタイヤに対して試験を行うために、所定の規格に沿って大きな重量を有する回転ドラムがドラムハウジングに支持される場合でも、ベースフレームの剛性および固有振動数を高く保持することができるため、回転ドラムの回転や回転ドラムがタイヤから受ける荷重によってドラム進退装置が振動することを抑制し、その振動が荷重検出器の計測値に影響を及ぼすことを低減することが可能となる。
【0010】
上記の構成において、前記少なくとも一つのボールねじは、左右方向に間隔をおいて配置されるように前記フレーム天板にそれぞれ回転可能に支持される複数のボールねじを含み、前記少なくとも一つのボールねじナットは、前記複数のボールねじとそれぞれ係合する複数のボールねじナットを含み、前記複数の縦板の前記少なくとも一つの第1縦板は、上下方向から見て前記複数のボールねじと重なるようにそれぞれ配置される複数の第1縦板を含むものでもよい。
【0011】
本構成によれば、複数のボールねじおよび複数のボールねじナットによって回転ドラムを含むドラムハウジングをタイヤに対して安定して進退させることができる。また、複数のボールねじの直下に複数の第1縦板がそれぞれ配置されているため、回転ドラムがタイヤから受ける荷重がドラムハウジングから複数のボールねじにそれぞれ掛かっても、各縦板が当該荷重を上下方向に沿って安定して受けとめることができる。
【0012】
上記の構成において、前記複数のボールねじは左右方向において互いに対向して配置される2つのボールねじから構成され、前記複数のリニアガイドは前記2つのボールねじの左右両外側に配置される2つのリニアガイドから構成され、前記複数の第1縦板は、上下方向から見て前記2つのボールねじと重なるようにそれぞれ配置される2つの第1縦板から構成され、前記複数の第2縦板は、上下方向から見て前記2つのリニアガイドと重なるようにそれぞれ配置される2つの第2縦板から構成されるものでもよい。
【0013】
本構成によれば、一対のリニアガイドがドラムハウジングの左右外側部分を安定して支持するため、ドラムハウジングの移動をより安定してガイドすることができる。また、リニアガイドとボールねじが全て縦板と重なるように配置されているので、縦板と重ならない様に配置した場合と比べて、固有振動数を相対的に高くすることができる。
【0014】
一方、上記の構成において、前記複数のリニアガイドは左右方向において互いに対向して配置される2つのリニアガイドから構成され、前記複数のボールねじは前記2つのリニアガイドの左右両外側に配置される2つのボールねじから構成され、前記複数の第1縦板は、上下方向から見て前記2つのボールねじと重なるようにそれぞれ配置される2つの第1縦板から構成され、前記複数の第2縦板は、上下方向から見て前記2つのリニアガイドと重なるようにそれぞれ配置される2つの第2縦板から構成されるものでもよい。
【0015】
本構成によれば、一対のボールねじが一対のリニアガイドよりも左右外側に配置されているため、作業者がボールねじおよびボールねじナットのメンテナンスを容易に行うことができる。また、リニアガイドとボールねじが全て縦板と重なるように配置されているので、縦板と重ならない様に配置した場合と比べて、固有振動数を相対的に高くすることができる。
【0016】
上記の構成において、前記2つの第1縦板および前記2つの第2縦板を含む4つの縦板のうち左右外側の2つの縦板の断面二次モーメントは、左右内側の2つの縦板の断面二次モーメントよりも大きく設定されていることが望ましい。
【0017】
本構成によれば、左右外側の縦板の剛性を高く維持することができるため、左右内側の縦板の厚みを薄くしてベースフレームの重量を低減することや、左右内側の縦板に開口部や切り欠きを設けることでベースフレームの溶接作業性を向上することができる。
【0018】
上記の構成において、前記2つの第2縦板の断面二次モーメントは、前記2つの第1縦板の断面二次モーメントよりも大きく設定されていることが望ましい。
【0019】
本構成によれば、相対的に振動の影響の出やすい2つのリニアガイド及びそれと重なる位置の下方に配置される2つの第2縦板によって剛性が高く維持されたベースフレームでドラムハウジングからの曲げモーメントを主に受けることができる。このため、相対的に振動の影響の出にくい2つのボールねじと重なるようにそれぞれ配置される2つの第1縦板の剛性を相対的に下げることができる。
【0020】
上記の構成において、前記複数の縦板は、上端部および下端部を含み、上下方向および前後方向に延びる縦板本体と、前記縦板本体の前記上端部から左右方向にそれぞれ延びるように前記上端部に接続され、前記フレーム天板を支持する上側支持板と、前記縦板本体の前記下端部から左右方向にそれぞれ延びるように前記下端部に接続され、床面に設置される下側設置板と、をそれぞれ含むことが望ましい。
【0021】
本構成によれば、複数の縦板が断面I字構造を有しその安定性を高めることができるため、回転ドラムがタイヤから受ける荷重がドラムハウジングからボールねじおよびリニアガイドに掛かっても、各縦板が当該荷重を上下方向に沿って更に安定して受けとめることができる。
【0022】
上記の構成において、前記複数の縦板は、それぞれH型鋼から構成されることが望ましい。
【0023】
本構成によれば、各縦板に高い剛性を有し汎用されているH型鋼を利用することで、専用の鋼材を用いる場合と比較して、複数の縦板を含むベースフレームの剛性を安価かつ確実に高めることができる。
【0024】
上記の構成において、前記ベースフレームは、前記タイヤ試験位置において前記タイヤを回転可能に支持するスピンドルを支持することが可能なように配置されるスピンドル支持板を更に備え、前記複数の縦板の前記縦板本体の前記上端部は、前記上側支持板に接続される後側上端部と、前記後側上端部の前方において当該後側上端部よりも低い位置に配置され、前記スピンドル支持板を支持する前側上端部と、をそれぞれ有することが望ましい。
【0025】
本構成によれば、ベースフレームの複数の縦板およびスピンドル支持板によってスピンドルを回転可能に支持することができるため、タイヤと回転ドラムとが互いに押圧される際の荷重をベースフレームによって安定して受け止めることができる。このため、ドラム進退装置の振動を低減するとともに、スピンドルの倒れを抑止することができる。
【0026】
上記の構成において、前記ドラムハウジングは、前記回転ドラムの上方に配置され、前記回転ドラムを回転可能に支持する上壁と、前記回転ドラムの下方に配置され、前記回転ドラムを回転可能に支持する底壁と、前記回転ドラムの左右両側にそれぞれ配置され、前記上壁と前記底壁とを互いに接続する左右一対の側壁と、を有し、前記ドラムハウジングの前記底壁は、前記ドラムハウジングが前記ベースフレームに対して前後方向に相対移動可能なように前記少なくとも一つのボールねじナットをそれぞれ保持する少なくとも一つのナット保持部を有することが望ましい。
【0027】
本構成によれば、ドラムハウジングの底壁が少なくとも一つのナット保持部を有するため、回転ドラムとボールねじとが上下方向において互いに近接して配置され、回転ドラムの倒れ、ねじれを抑制することができる。
【0028】
上記の構成において、前記ベースフレームの前記フレーム天板に装着され前記少なくとも一つのボールねじの前端部を支持し前記ドラムハウジングから前記少なくとも一つのボールねじに掛かる荷重を受ける少なくとも一つのボールねじ支持部を更に備え、前記少なくとも一つのナット保持部は前記ドラム軸よりも前方に配置されていることが望ましい。
【0029】
本構成によれば、ボールねじ支持部とボールねじナットとの前後方向における距離を小さくすることができるため、回転ドラムからボールねじ支持部への荷重の伝達経路が短くなり、ドラムハウジングの倒れやねじれを更に抑止することができる。
【0030】
上記の構成において、前記回転ドラムは前記タイヤ試験位置においてトラックバス用のタイヤに対する試験を行うためのものであり、前記回転ドラムの直径が1500mm以上に設定されていることが望ましい。
【0031】
本構成によれば、トラック用やバス用の大きなサイズのタイヤに対して試験を行うために、所定の規格に沿って、直径1500mm以上の回転ドラムがドラムハウジングに支持される場合でも、ベースフレームの剛性および固有振動数を高く保持することができるため、回転ドラムの回転や回転ドラムがタイヤから受ける荷重によってドラム進退装置が振動することを抑止し、その振動が荷重検出器の計測値に影響を及ぼすことを低減することが可能となる。
【0032】
本発明の他の局面に係るタイヤ試験機は、前記タイヤ試験位置においてタイヤの回転中心軸が上下方向に延びる姿勢である水平姿勢とされた前記タイヤを前記回転中心軸回りに回転させることが可能なスピンドルと、前記タイヤを前記タイヤ試験位置に搬入するとともに前記タイヤ試験位置から搬出することが可能である搬送装置と、前記タイヤ試験位置に配置された前記タイヤの外周面に前記回転ドラムを接離させることが可能な、上記の何れかに記載のドラム進退装置と、を備える。
【0033】
本構成によれば、普通乗用車のタイヤよりも大きなサイズのタイヤに対して試験を行う場合であっても、計測値に対する装置の振動の影響を低減することが可能なタイヤ試験機を提供することができる。
【0034】
上記の構成において、前記スピンドルは、前記水平姿勢とされた前記タイヤを上方から支持する上スピンドルと、前記水平姿勢とされた前記タイヤを下方から支持する下スピンドルと、を有し、前記上スピンドルと前記下スピンドルとの間に前記タイヤが配置されることを可能とするように、前記上スピンドルを前記下スピンドルに対して相対的に昇降させる昇降機構を更に備え、前記ドラム進退装置は、前記ベースフレームを囲むように配置される複数の支持脚であって、床面に設置される下端部と前記昇降機構を支持する上端部と前記ベースフレームに接続されるフレーム接続部とをそれぞれ有する複数の支持脚を更に有することが望ましい。
【0035】
本構成によれば、複数の支持脚が昇降機構の自重を受けるとともにベースフレームに接続されることで、ベースフレームの設置安定性を高め、計測値に対する装置の振動の影響を更に低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、普通乗用車のタイヤよりも大きなサイズのタイヤに対して試験を行う場合であっても、計測値に対する装置の振動の影響を低減することが可能なドラム進退装置およびこれを備えたタイヤ試験機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の一部の斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機のドラム進退装置の斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るドラム進退装置の斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るドラム進退装置の分解斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るドラム進退装置のベースフレームの斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るドラム進退装置のベースフレームの断面斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るドラム進退装置のベースフレームを構成する複数の縦板の斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るドラム進退装置のドラムハウジングの斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るドラム進退装置のドラムハウジングの分解斜視図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るドラム進退装置のドラムハウジングの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明のタイヤ試験機1の一実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1、
図2は、本実施形態に係るタイヤ試験機1の平面図および側面図である。また、
図3は、本実施形態に係るタイヤ試験機1の一部の斜視図である。なお、以後の各図面では、タイヤ試験機1の一部を構成するドラム進退装置400の回転ドラム4の進退方向を前後方向として、上下および左右の各方向が示されているが、当該方向は本発明に係るドラム進退装置およびタイヤ試験機の構造や使用態様を限定するものではない。
【0039】
タイヤ試験機1は、本体フレーム1Sと、スピンドル2と、タイヤ搬送機構3と、回転ドラム4および上下一対のロードセル4Lを含むドラム進退装置400と、昇降ユニット50(昇降機構)と、マーキングユニット60と、を備える。タイヤ試験機1は、所定のタイヤ試験位置PにおいてタイヤT(
図2)の回転中心軸が上下方向に延びる姿勢である水平姿勢とされた前記タイヤTを前記タイヤ回転中心軸回りに回転させ前記タイヤTに所定の試験を行う。本実施形態では、タイヤ試験機1はトラックバス用のタイヤTに対して所定の試験を行う。
【0040】
本体フレーム1Sは、タイヤ試験機1の略中央部に配置されており、その内部にタイヤ試験位置Pが形成されている。また、本体フレーム1Sは、スピンドル2を回転可能に支持する。本体フレーム1Sは、ベースフレーム100と、中間フレーム101と、上部フレーム102と、を有する(
図2および
図3)。
【0041】
スピンドル2は、タイヤ試験位置Pにおいて上下方向に延びる基準回転中心軸2S回りにタイヤTを回転可能に支持する。スピンドル2は、下スピンドル21と、上スピンドル22と、を有する(
図2および
図3)。
【0042】
タイヤ搬送機構3(
図2)は、平面視でタイヤ試験位置Pを通るように水平な搬送方向D1に沿って配設されており、水平姿勢とされたタイヤTをタイヤ試験位置Pに搬入することが可能である一方、タイヤTをタイヤ試験位置Pから搬送方向D1に沿って搬出することが可能とされている。
【0043】
回転ドラム4は、ドラム進退装置400に回転可能に支持されている。回転ドラム4は、タイヤ搬送機構3で搬送されるタイヤTの搬送方向D1とほぼ直交する方向(左右方向)において、タイヤ試験位置P(スピンドル2)に所定の間隔をおいて対向して配置されている。この回転ドラム4は、スピンドル2の基準回転中心軸2Sと平行な方向(上下方向)に延びるドラム軸4Sとドラム外周面とを有し、前記ドラム軸回りに回転自在とされた円筒状の部材であり、前記ドラム外周面にはタイヤTが走行する模擬路面4Aが形成されている。模擬路面4AがタイヤTの外周面に当接することで、回転ドラム4がタイヤTに従動して回転する。
【0044】
なお、本実施形態では、トラックバス用のタイヤTに対応して、回転ドラム4のドラム径(直径)が1520mmから1710mmの範囲(参考値1600mm)に設定されており、回転ドラム4は少なくとも1500mm以上のドラム径を有する大型かつ大きな重量を有する回転体である。
【0045】
ドラム進退装置400は、この回転ドラム4を水平方向に押し動かすことで、タイヤTに対して接近(前進)および離脱(後退)させることができる。なお、本実施形態に係るドラム進退装置400のその他の構造については後記で詳述する。
【0046】
上下一対のロードセル4L(荷重検出部)は、回転ドラム4の回転中心軸(ドラム軸4S)の上下延長線上にそれぞれ配置され(
図1には上側のみ示している)、回転ドラム4がタイヤTから受ける荷重を検出、測定する。ロードセル4Lは、回転ドラム4をドラム進退装置400に支持するために用いられており、回転ドラム4の上部と下部とに1つずつ配備され、回転ドラム4に作用する軸垂直方向の荷重を測定する。なお、本実施形態では、ロードセル4Lは、2軸ロードセルであり、上記のタイヤ荷重を制御する(回転ドラム4のタイヤTに対する押し付け荷重が所定の範囲となるように回転ドラム4の進退位置を制御する)とともに、RFV(ラジアルフォースバリエーション:タイヤ径方向の力の変動の大きさ)およびLFV(ラテラルフォースバリエーション:タイヤ軸方向の力の変動の大きさ)を計測する。すなわち、本実施形態に係るタイヤ試験機1は、後記のボールねじ及びモーターの組合せを用いて、回転ドラム4をスピンドル2に近接させ、回転ドラム4の模擬路面4AにタイヤTを接触させつつタイヤ回転時の荷重変動をロードセル4Lで計測することで、タイヤTの均一性を評価するタイヤユニフォミティマシンとして構成されている。
【0047】
タイヤ搬送機構3は、ベルトコンベア式の構造からなる。タイヤ搬送機構3は、搬入コンベア7と、搬送コンベア8と、搬出コンベア9と、搬入フレーム7Sと、搬出フレーム9Sと、を有する。
図1では、タイヤTが右側(上流側)から左側(下流側)に向かって搬送される。
【0048】
搬入コンベア7は、タイヤTをタイヤ試験位置Pに向かって搬送する。搬入コンベア7によって搬送されたタイヤTは、搬送コンベア8の上流側部分に受け渡される。搬送コンベア8は、搬入コンベア7からタイヤTを受け入れるとともに、タイヤTをタイヤ試験位置Pに搬入する。搬送コンベア8は、タイヤTをタイヤ試験位置Pにおいて一時停止させる。その後、タイヤTに所定の試験が施されると、搬送コンベア8は、タイヤTを更に下流側に搬送する。搬送コンベア8によって搬送されたタイヤTは、搬出コンベア9に受け渡される。搬出コンベア9は、搬送コンベア8からタイヤTを受け入れるとともに、タイヤTを更に下流側に搬送する。
【0049】
なお、搬入コンベア7、搬送コンベア8および搬出コンベア9は、タイヤ搬送機構3が有する不図示の駆動部によって周回駆動される。更に、搬送コンベア8は、前記駆動部に含まれる不図示のエアシリンダよって昇降可能とされている。タイヤ試験位置Pに搬入されたタイヤTは、搬送コンベア8の下降によって下スピンドル21に受け渡される。
図3では、搬送コンベア8が最も下方の下方位置に移動した状態が示されている。搬送コンベア8が最も上方の上方位置に移動されると、搬送コンベア8は搬入コンベア7および搬出コンベア9と同じ高さに配置され、タイヤTを搬送可能となる。
【0050】
搬入フレーム7Sは、搬入コンベア7を周回可能に支持しており、搬出フレーム9Sは、搬出コンベア9を周回可能に支持している。また、搬出フレーム9Sは、タイヤ試験位置Pにおける試験結果に応じてタイヤTに所定のマーキングを施すマーキングユニット60(
図2)を支持している。
【0051】
昇降ユニット50(
図3)は、上スピンドル22を昇降可能かつ回転可能に支持する。より詳しくは、昇降ユニット50は、下スピンドル21と上スピンドル22との間にタイヤTが配置されることを可能とするように、上スピンドル22を下スピンドル21に対して相対的に昇降させる。昇降ユニット50は、
図2、
図3の上部フレーム102の左右一対のガイドフレーム102A(
図3)に沿って上下に移動することが可能である。
【0052】
下スピンドル21は、前記水平姿勢とされたタイヤTのうち下側に位置するビード部である下ビード部に装着される下リム61を下方から保持することが可能であり、前記下リム61を介してタイヤTが基準回転中心軸2S周りに回転可能なようにタイヤTを下方から支持する。
【0053】
上スピンドル22は、前記水平姿勢とされたタイヤTのうち上側に位置するビード部である上ビード部に装着される上リム62を上方から保持することが可能であり、前記上リム62を介してタイヤTが基準回転中心軸2S周りに回転可能なようにタイヤTを上方から支持する。
【0054】
なお、タイヤTがタイヤ試験位置Pに配置されると、タイヤTのタイヤ回転中心軸がスピンドル2の基準回転中心軸2Sと合致する。タイヤ試験機1は、タイヤ試験位置Pにおいて試験を受けるタイヤTのサイズ(外径、内径、幅)、形状などに応じて、複数種の下リム61および上リム62を有しており、各タイヤTに応じて適切な下リム61および上リム62がタイヤ試験位置Pに配置される。
【0055】
次に、本実施形態に係るドラム進退装置400について更に詳述する。
図4および
図5は、それぞれ、本実施形態に係るタイヤ試験機1のドラム進退装置400を前方および後方から見た斜視図である。
図6は、
図4に示されるドラム進退装置400から回転ドラム4および後記のドラムハウジング40を取り外した状態のドラム進退装置400の分解斜視図である。
図7は、
図6に示されるドラム進退装置400から下スピンドル21およびドラム進退駆動部150などを取り外した状態を示す、ドラム進退装置400のベースフレーム100の斜視図である。
図8は、
図7に示されるベースフレーム100の矢印VIIIで示す切断面における断面斜視図である。
図9は、ベースフレーム100を構成する複数の縦板115の斜視図である。
【0056】
ドラム進退装置400は、タイヤ試験機1に備えられ、タイヤ試験機1の一部を構成する。また、
図3に示すように、ドラム進退装置400は、タイヤ搬送機構3の搬送コンベア8を支持するとともに、下スピンドル21および上スピンドル22を含むスピンドル2を回転可能に支持している。
【0057】
ドラム進退装置400は、ベースフレーム100と、前述の回転ドラム4と、ドラムハウジング40と、前述のロードセル4Lと、スピンドル回転駆動部105と、ドラム進退駆動部150と、を有する。
【0058】
ドラムハウジング40は、回転ドラム4を前記ドラム軸4S回りに回転可能に支持する。
【0059】
ベースフレーム100は、ドラムハウジング40の下方に配置され水平なベースフレーム天板112を有する。ベースフレーム100は、タイヤ試験機1が設置される試験現場の床面に設置され、回転ドラム4の模擬路面4A(ドラム外周面)がタイヤTの外周面に対して接離するように前後方向に移動可能なドラムハウジング40を支持する。
【0060】
スピンドル回転駆動部105は、ベースフレーム100の前端部に設けられており、スピンドル2の下スピンドル21を基準回転中心軸2S回りに回転駆動する。スピンドル回転駆動部105は、モーター、ギヤボックス、駆動プーリー、駆動ベルト、従動プーリーから構成され、下スピンドル21にモーターの回転力を伝達する。
【0061】
ドラム進退駆動部150は、回転ドラム4を支持するドラムハウジング40を前後方向に沿って進退させる。ドラム進退駆動部150は、モーターM(駆動源)と、カップリング151と、一対の減速機152と、一対のボールねじ153と、一対のボールねじ支持部154と、一対のボールねじナット155と、一対のリニアガイド(ガイドレールともいう)161と、4つのハウジング支持部(スライダともいう)162と、を有する。
【0062】
モーターMは、一対のボールねじ153を前後方向に延びる軸周りにそれぞれ回転させることが可能とされている。モーターMは、正逆方向にそれぞれ回転可能とされている。モーターMは、ベースフレーム100のベースフレーム天板112の後端部にブラケットを介して固定されている。カップリング151は、モーターMの出力を直交型の減速機152に伝達するように設けられており、当該カップリング151に一対の減速機152が連結されている。カップリング151および一対の減速機152は、モーターMの回転駆動力を一対のボールねじ153に同期して伝達する。この結果、一対のボールねじ153が、各軸回りに正逆方向に同期して回転される。
【0063】
一対のボールねじ支持部154は、ベースフレーム天板112の前端部において左右方向に間隔をおいてそれぞれ配置されている。この際、一対のボールねじ153は、左右方向において間隔をおいて互いに対向して配置される。各ボールねじ支持部154は、ボールねじ153の前端部を内部の軸受で回転可能に支持するとともに前端部の前後方向の位置を固定する。なお、ボールねじ153の後端部は前述の減速機152のフォローシャフト部に挿入されることで減速機152に連結、支持されている。このとき、減速機152の出力部であるフォローシャフト部は、ボールねじ153の後端部を回転方向において固定するとともに前後方向の位置を固定しない。この結果、各ボールねじ153が、前後方向に延びる軸周りに回転可能なようにベースフレーム天板112に支持される。また、軸受および減速機152がボールねじ153から無理な力を受けることを防止する。
【0064】
図6に示される一対のボールねじナット155は、後記のドラムハウジング40にそれぞれ装着、固定される。一対のボールねじナット155は、モーターMによる一対のボールねじ153の回転に伴ってドラムハウジング40が前後方向に移動するように各ボールねじ153と係合する。
【0065】
一対のリニアガイド161は、前後方向に延びるとともに一対のボールねじ153に対して左右方向に間隔をおいて配置されるようにベースフレーム天板112に装着され、ドラムハウジング40を前後方向に沿って移動可能に支持する。本実施形態では、一対のリニアガイド161は、一対のボールねじ153の左右両外側に配置される。各リニアガイド161は、ベースフレーム天板112の前端部から後端部にかけて直線状に配設されている。また、4つのハウジング支持部162は、ドラムハウジング40の後記のリニアガイド装着部414(
図12)にそれぞれ固定され、一対のリニアガイド161に沿って前後に移動可能なように各リニアガイド161に係合する。
【0066】
ベースフレーム100は、スピンドル支持板111と、ベースフレーム天板112と、4つの縦板115と、複数の横板116と、を有する。
【0067】
スピンドル支持板111は、ベースフレーム100の前側の上面部を画定する水平な板材である。
図7に示すように、スピンドル支持板111の中央部には当該スピンドル支持板111を上下方向に貫通する円形のスピンドル受入孔111Aが形成されている。そして、
図6に示すようにスピンドル受入孔111Aにスピンドル2の下スピンドル21が上方から挿通されることで、スピンドル支持板111(ベースフレーム100)が下スピンドル21(スピンドル2)を回転可能に支持する。なお、スピンドル2の上スピンドル22は、タイヤTを介して下スピンドル21の上方に配置され、試験時には下スピンドル21、タイヤTおよび上スピンドル22が一体で基準回転中心軸2S回りに回転する。ベースフレーム100がスピンドル支持板111を有しスピンドル2を支持することができるため、回転ドラム4がタイヤTに当接し荷重を付加する際に、ベースフレーム100の高い剛性によって下スピンドル21の基準回転中心軸2Sに対する傾きを抑制することができる。
【0068】
ベースフレーム天板112は、ベースフレーム100の後側の上面部を画定する水平な板材である。
図6に示すように、前述のスピンドル支持板111は、ベースフレーム天板112よりも低い位置に配置されている。また、
図7に示すように、ベースフレーム天板112は、一対のリニアガイド装着部112Aと、一対の前側支持部112Bと、一対の後側支持部112Cとを有する。一対のリニアガイド装着部112Aは、前述の一対のリニアガイド161が固定される部分である。また、一対の前側支持部112Bは、一対のボールねじ支持部154が固定される部分である。また、一対の後側支持部112Cは、
図5、
図6の減速機152のブラケットが固定される部分である。
【0069】
次に、
図7に示されるベースフレーム100において、スピンドル支持板111およびベースフレーム天板112を支持する構造について更に詳述する。
図8、
図9に示すように、ベースフレーム100は、4つの縦板115および複数の横板116によって、ドラム進行方向および上下方向において特に高い剛性を備えた構造を有している。
【0070】
4つの縦板115は、上下方向および前後方向にそれぞれ延びるとともに左右方向に並んで配置され、スピンドル支持板111およびベースフレーム天板112をそれぞれ支持する。
【0071】
上記の4つの縦板115のうち、左右内側の2つの縦板115がそれぞれ第1縦板と定義される。2つの第1縦板は、上下方向から見て前述の一対のボールねじ153と重なるように配置されている。すなわち、各ボールねじ153を下方に投射すると、各第1縦板に重なる。換言すれば、各第1縦板は、ボールねじ153の鉛直下方においてボールねじ153と平行に配置されている。なお、各第1縦板は、上下方向から見て、
図6に示されるボールねじ支持部154および減速機152ともそれぞれ重なるように配置されている。この結果、各第1縦板は、
図7に示される一の前側支持部112Bの左右方向の中央部と一の後側支持部112Cの左右方向の中央部とを結ぶ直線の鉛直下方にそれぞれ位置している。
【0072】
同様に、上記の4つの縦板115のうち、左右外側の2つの縦板115がそれぞれ第2縦板と定義される。2つの第2縦板は、上下方向から見て前述の一対のリニアガイド161と重なるように配置されている。すなわち、各リニアガイド161を下方に投射すると、各第2縦板に重なる。換言すれば、各第2縦板は、リニアガイド161の鉛直下方においてリニアガイド161と平行に配置されている。また、各第2縦板は、
図7に示されるリニアガイド装着部112Aの鉛直下方にも位置している。
【0073】
また、複数の横板116は、上記の複数の縦板115を左右方向においてそれぞれ接続する。なお、
図7に示すように、最も前側の横板116である前側横板116Aには開口部116Bが形成されている。開口部116Bには、スピンドル回転駆動部105(
図4)の駆動ベルトが挿通される。
【0074】
4つの縦板115の構造について更に詳述すると、各縦板115は、縦板本体115Aと、上板115B(上側支持板)と、下板115C(下側設置板)とを有する。
【0075】
縦板本体115Aは、上端部115A1および下端部115A2を含み、上下方向および前後方向に延びる板状部である。
【0076】
上板115Bは、縦板本体115Aの上端部115A1から左右方向にそれぞれ延びるように上端部115A1に接続され、ベースフレーム天板112を支持する。本実施形態では、上板115Bは、縦板本体115Aの後側部分にのみ配置されている。
【0077】
下板115Cは、縦板本体115Aの下端部115A2から左右方向にそれぞれ延びるように下端部115A2に接続され、試験現場の床面に設置される。なお、当該床面と下板115Cとの間に他の部材が介在してもよい。
【0078】
更に、上記の各縦板115の縦板本体115Aの上端部115A1は、後側上端部115Fと、前側上端部115Dとを有する。後側上端部115Fは、前述の上板115Bに接続される。また、前側上端部115Dは、後側上端部115Fの前方において当該後側上端部115Fよりも低い位置に配置され、スピンドル支持板111を支持する。
【0079】
本実施形態では、上記の4つの縦板115は、公知のH型鋼から構成されている。すなわち、
図9に示すように、4つのH型鋼が上下方向に沿ってI型となる姿勢とされ互いに隣接して配置されている。4つのH型鋼の後側の上面部には、ベースフレーム天板112を載置可能な天板載置面115Sが形成されている。一方、4つのH型鋼の前側上端部分がそれぞれ切り欠かれることによって、スピンドル支持板111を載置可能な支持板載置面115Tが形成されている。このように、大きな断面二次モーメントを有する4つのH型鋼によってベースフレーム100の骨格部分を構成することによって、ベースフレーム100内の溶接個所を少なくすることができるとともに、安価で高い剛性を備えたベースフレーム100を実現することができる。
【0080】
更に、4つの縦板115のうち内側の2つの縦板115(第1縦板)には、矩形状の開口部115Eが形成されている。この結果、外側の2つの縦板115の断面二次モーメントは、内側の2つの縦板115(第2縦板)の断面二次モーメントよりも大きく設定されている。このように、左右外側の縦板115の剛性を高く維持することで、左右内側の縦板115の厚みを薄くすることや開口部や切り欠きを設けることができるため、ベースフレーム100の溶接作業性を向上することができる。特に、内側の2つの縦板115に開口部115Eが形成されることで、内部へのアクセスがしやすく、4つの縦板115および複数の横板116の溶接による接合が容易となる。なお、本実施形態では、リニアガイド161の下方の縦板115には開口部115Eを形成せず、ボールねじ153の下方の縦板115に開口部115Eを形成している。リニアガイド161はドラムハウジング40を支持する機能を有しているため、その直下の縦板115に開口部115Eを形成しないことで、曲げモーメントによる撓みに基づく振動のみならず上下方向の振動も生じることを抑止している。一方、ボールねじ153には、ドラムハウジング40を直接的に支持する機能を有していないため、上記のような上下方向の振動は生じにくい。このため、その直下の縦板115に開口部115Eを形成することが可能となる。一方、左右両外側の縦板115に開口部115Eが形成されている場合には、外側からのアクセス性が向上するため、ベースフレーム100内における溶接作業を容易に行うことができる。
【0081】
更に、ドラム進退装置400は、4つの中間フレーム支持部113(支持脚)を有している。4つの中間フレーム支持部113は、ベースフレーム100を囲むように、ベースフレーム100の四隅にそれぞれ接続されている。各中間フレーム支持部113は、床面に設置される下端部と、中間フレーム101および上部フレーム102を支持することで昇降ユニット50(昇降機構)を支持する上端部と、ベースフレーム100に接続される上下2つのフレーム接続部と、をそれぞれ有する。複数の中間フレーム支持部113が昇降ユニット50、中間フレーム101および上部フレーム102の自重を受けるとともにベースフレーム100に接続されることで、ベースフレーム100の設置安定性を高め、計測値に対する装置の振動の影響を更に低減することが可能となる。
【0082】
更に、
図10は、本実施形態に係るドラム進退装置400のドラムハウジング40の斜視図である。
図11および
図12は、ドラムハウジング40の分解斜視図である。
【0083】
ドラムハウジング40は、下部ハウジング41と、上部ハウジング42とを有する。下部ハウジング41は、正面視でU字状の構造物であり、上部ハウジング42は、下部ハウジング41の上端部に接続される。この結果、下部ハウジング41と上部ハウジング42との間に、ドラム収容空間40Sが形成される。ドラム収容空間40Sは、回転ドラム4の模擬路面4Aがドラムハウジング40の前方に露出するように、回転ドラム4を収容可能な空間である。
【0084】
下部ハウジング41は、底部411(底壁)と、左右一対の側部412(側壁)と、左右一対のボールねじブロック413(ナット保持部)と、4つのリニアガイド装着部414(被支持部)と、左右複数のサイド補強板415と、を有する。
【0085】
底部411は、回転ドラム4の下方に水平に延びるように配置され、回転ドラム4を回転可能に支持する。底部411は、底板411Aと、複数の底部横板411Bと、複数の底部縦板411Cとを有する。底板411Aは、底部411のベース部分となる板材である。底板411Aの中央部には、円形のドラム軸受入孔41Sが形成されている。ドラム軸受入孔41Sは、回転ドラム4のドラム軸4Sの下端部を受け入れる。複数の底部横板411Bおよび複数の底部縦板411Cは、底板411Aの下面部に格子状に接続されており、底部411の剛性を高めるものである。
【0086】
左右一対の側部412は、底部411の左右両端部から立設されている。各側部412は、側部ベース板412Aと、側部上板412Bと、前後複数の側部横板412Cと、側部カバー412Dとを有する。側部ベース板412Aは、側部412のベース部分となる板材であり、底板411Aの端部に接続される。側部上板412Bは、側部ベース板412Aの上端部に接続され、側部412の上端部を画定する。前後複数の側部横板412Cは、側部ベース板412Aに固定されるとともに、底板411Aの端部と側部上板412Bとを上下に接続する。側部カバー412Dは、
図12に示される側部ベース板412A、底板411A、側部上板412B、複数の側部横板412Cによって形成される空間を外側から塞ぐように、各板に固定される。この結果、側部412が箱型構造を有し、ドラムハウジング40の剛性を高く維持する。
【0087】
左右一対のボールねじブロック413は、前記複数の底部横板411Bのうち最も前側の底部横板411Bの内側にそれぞれ配置されている。各ボールねじブロック413は、箱型形状を有しており、ボールねじ153を受け入れるボールねじ挿通孔413Aが形成されている。また、ボールねじブロック413には、前述のボールねじナット155が固定される。すなわち、ボールねじブロック413は、ドラムハウジング40がベースフレーム100に対して前後方向に相対移動可能なようにボールねじナット155を保持する。なお、本実施形態では、各ボールねじブロック413は、ドラムハウジング40のドラム軸4Sよりも前方に配置されている。また、
図10に示すように、前記最も前側の底部横板411Bにも、ボールねじ153を受け入れる孔部が形成されている。このように、ボールねじナット155が底部411に配置されることで、ボールねじ153と回転ドラム4との上下方向における距離(相対高さ)を小さくすることができる。このため、回転ドラム4がタイヤTに当接した際に、発生する曲げモーメントを小さくすることが可能となり、ドラムハウジング40の変形を抑えることができる。
【0088】
4つのリニアガイド装着部414は、底部411の前後左右の四隅にそれぞれ配置されており、前述のハウジング支持部162(
図6)がそれぞれ固定される。この結果、ドラムハウジング40が4つのハウジング支持部162を介して、左右一対のリニアガイド161に前後方向に移動可能に支持される。
【0089】
左右複数のサイド補強板415は、底部411の左右両端部に前後に並んで固定されており、底部411と左右一対の側部412との剛性を高める。
【0090】
上部ハウジング42は、回転ドラム4の上方に水平に延びるように配置され、回転ドラム4を回転可能に支持する。上部ハウジング42は、上部ハウジングベース板420と、前後一対の上部ハウジング横板421と、左右複数の上部ハウジング縦板422とを有する。このように上部ハウジング42も格子状の構造を有しており、ドラムハウジング40の剛性を高めることができる。上部ハウジングベース板420の中央部には、円形のドラム軸受入孔42Sが形成されている。ドラム軸受入孔42Sは、回転ドラム4のドラム軸4Sの上端部を受け入れる。なお、前述の左右一対の側部412は、底部411と上部ハウジング42とを上下方向において互いに接続する。
【0091】
このように、ドラムハウジング40を構成する下部ハウジング41の各部分が小さな箱型構造を有しており、その集合体として製缶構造のドラムハウジング40の剛性を高めることができる。このため、ドラムハウジング40の軽量化が実現され、ドラムハウジング40の固有振動数を相対的に大きくすることができる。なお、
図11に示すように、上部ハウジング42の上面部は開放されており箱型構造を有していないが、複数の上部ハウジング横板421および複数の上部ハウジング縦板422によって上部ハウジング42の剛性が高く維持されている。この結果、上部ハウジング42の上面部を塞ぐ部材を有する場合と比較して、ドラムハウジング40の軽量化が実現される。
【0092】
また、回転ドラム4がタイヤTに押圧されると、
図10に一点鎖線周りに示す矢印のように、回転ドラム4は水平な軸周りにねじれて振動しようとする。しかしながら、本実施形態では、左右一対の側部412と底部411との接合部周辺に、複数のサイド補強板415(
図12)や斜めカバー416(
図10)が設けられているとともに、各側部412が箱型構造を有している。このため、回転ドラム4およびこれを支持するドラムハウジング40の上記のようなねじれが抑止される。
【0093】
なお、前述の上下一対のロードセル4Lは、下部ハウジング41のドラム軸受入孔41Sおよび上部ハウジング42のドラム軸受入孔42Sにそれぞれ装着される。すなわち、上下一対のロードセル4Lのうちの上側のロードセル4L(上側ロードセル)は、ドラムハウジング40の上部ハウジング42(上壁)に装着され、前記ドラム軸4Sに掛かる荷重を検出する。また、上下一対のロードセル4Lのうちの下側のロードセル4L(下側ロードセル)は、下部ハウジング41の底部411のドラム軸受入孔41Sに装着され、前記ドラム軸4Sに掛かる荷重を検出する。特に、本実施形態では、下側のロードセル4Lの左右両外側に一対のボールねじナット155が配置されており、これらの部材は上下方向において略同じ高さに配置されている。このため、ドラムハウジング40の倒れの影響をロードセル4Lが受けにくくなる。
【0094】
また、前述のように、左右のボールねじナット155およびこれを保持する一対のボールねじブロック413は、ドラムハウジング40の底部411の前端部に配置されている。このため、ボールねじ153を支持するボールねじ支持部154とボールねじナット155との距離が短くなり、系の剛性を高めることができる。また、タイヤT、回転ドラム4、ドラムハウジング40、ボールねじナット155、ボールねじ153およびボールねじ支持部154の順に伝わる荷重の伝達経路が短くなり、ドラムハウジング40の倒れやねじれを抑止することができる。なお、ボールねじ153の後端部を支持する減速機152には、回転ドラム4(ドラムハウジング40)がタイヤTから受ける荷重はほとんど掛からない。
【0095】
以上のように、本実施形態では、回転ドラム4がタイヤTに対して進退可能なようにドラムハウジング40を支持するベースフレーム100が、ボールねじ153に対応してその直下に配置される第1縦板と、リニアガイド161に対応してその直下に配置される第2縦板とを有しているため、回転ドラム4がタイヤTから受ける荷重がドラムハウジング40からボールねじ153およびリニアガイド161に掛かっても、各縦板が当該荷重を上下方向に沿って安定して受けとめることができる。このため、普通乗用車のタイヤTよりも大きなサイズのタイヤTに対して試験を行うために、所定の規格に沿って大きな重量を有する回転ドラム4がドラムハウジング40に支持される場合でも、ベースフレーム100の剛性および固有振動数を高く保持することができるため、ドラム進退装置400が振動することを抑制し、その振動がロードセル4Lの計測値に影響を及ぼすことを低減することが可能となる。特に、各縦板が、ドラムハウジング40の前後方向および上下方向の変形を抑え、ドラムハウジング40を振動しにくくすることができる。また、本実施形態のように、回転ドラム4を含むドラムハウジング40の重心高さと、ボールねじ153による駆動支持点及びリニアガイド161によるガイド位置とが上下にオフセットしている場合、ドラムハウジング40を側面から見た時にドラムハウジング40が前後方向に揺れやすくなる。この場合、ドラムハウジング40がベースフレーム100に大きな曲げモーメントを作用させ、ベースフレーム100を変形させ揺れが生じやすくなる。このような場合でも、本実施形態に係るベースフレーム100では、上記のような曲げモーメントに強い梁構造を有しているため、上記のように振動がロードセル4Lの計測値に影響を及ぼすことを低減することが可能となる。
【0096】
また、このような構成によれば、第1縦板および第2縦板を含むベースフレーム100の構造によってドラム進退装置400の小サイズ化が実現され、その重量およびコストも低減することが可能になる。この結果、試験現場への輸送、設置が容易となる。特に、ドラム進退装置400およびこれを備えるタイヤ試験機1の輸送に際して船を利用する場合には、市場に流通しているコンテナを利用することが可能となり、輸送コストや輸送期間等を抑えることが可能となる。
【0097】
また、本実施形態では、複数のボールねじ153および複数のボールねじナット155によって回転ドラム4を含むドラムハウジング40をタイヤTに対して安定して進退させることができる。また、複数のボールねじ153の直下に複数の第1縦板がそれぞれ配置されているため、回転ドラム4がタイヤTから受ける荷重がドラムハウジング40から複数のボールねじ153に掛かっても、各縦板が当該荷重を上下方向に沿って安定して受けとめることができる。
【0098】
更に、本実施形態では、ボールねじ153の高さ方向の位置を、回転ドラム4を含むドラムハウジング40の重心位置に近く配置することが可能であり、かつ、ドラムハウジング40のボールねじブロック413の剛性を十分に確保することができる。このため、ドラムハウジング40の振動を抑えることが可能であるとともに、当該振動をベースフレーム100が上下方向に沿って安定して受けとめることができる。
【0099】
また、本実施形態のように、2つ(複数)のボールねじ153によってドラムハウジング40を前後に移動させる場合、2つのボールねじブロック413が左右方向においてドラム軸4Sおよびロードセル4Lと異なる位置に配置可能とされる。これに対して、1本のボールねじ153によってドラムハウジング40を前後に移動させる場合には、1つのボールねじブロック413がロードセル4Lの更に下方に配置されることとなり、回転ドラム4を含むドラムハウジング40の重心位置に対するオフセットが大きくなる。この場合、2つ(複数)のボールねじ153を有する場合と比較すると、ベースフレーム100の固有振動数を高く保持することが相対的に困難になる。
【0100】
また、本実施形態では、一対のリニアガイド161がドラムハウジング40の左右外側部分を安定して支持するため、ドラムハウジング40の移動をより安定してガイドすることができる。また、リニアガイド161とボールねじ153が全て縦板115と重なるように配置されているので、これらが縦板115と重ならない様に配置された場合と比べて、固有振動数を相対的に高くすることができる。更に、一対のリニアガイド161を一対のボールねじ153の両内側に設ける場合よりも相対的にドラムハウジング40の左右一対の側部412(側壁)の近くに設けることができるので、回転ドラム4がタイヤTからの荷重を受けた際のドラムハウジング40の変形による固有振動数の低下を相対的に高くすることができる。
【0101】
また、本実施形態では、2つの第1縦板および2つの第2縦板を含む4つの縦板115のうち左右外側の2つの縦板の断面二次モーメントは、左右内側の2つの縦板の断面二次モーメントよりも大きく設定されている。このような構成によれば、左右外側の縦板の剛性を高く維持することができるため、左右内側の縦板の厚みを薄くしてベースフレーム100の重量およびコストを低減することや、左右内側の縦板に開口部や切り欠きを設けることでベースフレーム100の溶接作業性を向上することができる。
【0102】
更に、4つの縦板115のうち内側の2つ縦板115(第2縦板)の断面二次モーメントは、外側の2つの縦板(第1縦板)の断面二次モーメントよりも大きく設定されている。このような構成によれば、相対的に振動の影響の出やすい一対のリニアガイド161及びそれと重なる位置の下方に配置される2つの第2縦板によって剛性が高く維持されたベースフレーム100でドラムハウジング40からの曲げモーメントを主に受けることができる。このため、相対的に振動の影響の出にくい2つのボールねじ153と重なるようにそれぞれ配置される2つの第1縦板の剛性を相対的に下げることができる。
【0103】
また、本実施形態では、各縦板115が縦板本体115Aと上板115Bと下板115Cとを有するため、各縦板115の安定性を高めることができる。このため、回転ドラム4がタイヤTから受ける荷重がドラムハウジング40からボールねじ153およびリニアガイド161に掛かっても、各縦板が当該荷重を上下方向に沿って更に安定して受けることができる。
【0104】
また、本実施形態では、高い剛性を有し汎用されているH型鋼を利用することで、専用の鋼材を用いる場合と比較して、複数の縦板115を含むベースフレーム100の剛性を安価に高めることができる。なお、本実施形態のように、上記のようなH型鋼をI型に配置することで、ベースフレーム100を構成する梁の断面二次モーメントを大きくし、曲げモーメントに対する変形を抑え、ドラムハウジング40の振動を安定して抑えることができる。更に、I型構造の上面部には他の部材を配置しやすく、下面部によって床面への設置性を高めることができる。
【0105】
また、本実施形態では、ベースフレーム100の複数の縦板115によってスピンドル支持板111を介してスピンドル2を回転可能に支持することができるため、タイヤTと回転ドラム4とが互いに押圧される際の荷重をベースフレーム100によって安定して受け止めることができる。このため、ドラム進退装置400の振動を低減するとともに、スピンドル2の倒れを抑止することができる。
【0106】
また、本実施形態では、ドラムハウジング40の底部411が2つのボールねじブロック413を有するため、回転ドラム4とボールねじ513とが上下方向において互いに近接して配置され、回転ドラム4の倒れ、ねじれを抑制することができる。
【0107】
また、本実施形態では、2つのボールねじブロック413は、回転ドラム4のドラム軸4Sよりも前方に配置される。また、ドラム進退装置400は、ベースフレーム100のベースフレーム天板112にそれぞれ装着され、ボールねじ153の前端部を支持しドラムハウジング40からボールねじ153に掛かる荷重を受ける一対のボールねじ支持部154を更に有する。このような構成によれば、ボールねじ支持部154とボールねじナット155との前後方向における距離を小さくすることができるため、荷重の伝達経路が短くなり、ドラムハウジング40の倒れやねじれを抑止し振動を抑えることができる。
【0108】
また、本実施形態では、トラック用やバス用の大きなサイズのタイヤTに対して試験を行うために、所定の規格に沿って、直径1500mm以上の回転ドラム4がドラムハウジング40に支持される場合でも、ベースフレーム100の剛性および固有振動数を高く保持することができるため、回転ドラム4の回転や回転ドラム4がタイヤTから受ける荷重によってドラム進退装置400が振動することを抑止し、その振動がロードセル4Lの計測値に影響を及ぼすことを低減することが可能となる。
【0109】
更に、本実施形態では、複数の中間フレーム支持部113が昇降ユニット50(中間フレーム101、上部フレーム102)の自重を受けるとともにベースフレーム100に接続されることで、ベースフレーム100の設置安定性を高め、計測値に対する装置の振動の影響を更に低減することが可能となる。
【0110】
以上、本発明の一実施形態に係るドラム進退装置400およびこれを備えたタイヤ試験機1について説明したが、本発明はこれらの形態に限定されるものではなく、以下のような変形実施形態が可能である。
【0111】
(1)上記の実施形態では、
図6に示すように、ベースフレーム100のベースフレーム天板112上には、一対のボールねじ153と一対のリニアガイド161とが配置される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。一対のリニアガイド161の間、望ましくはその中央部に、一つのボールねじ153が配置される態様でもよい。この場合、ドラムハウジング40に装着されボールねじ153と係合するボールねじナット155も一つ設けられれば良い。また、ボールねじ153(減速機152およびボールねじ153)の鉛直下方に複数の縦板115のうちの一の縦板115が配置さればよい。
【0112】
また、
図6において、左右方向の内側に一対のリニアガイド161が配置され、当該一対のリニアガイド161の左右両外側に一対のボールねじ153が配置されてもよい。この場合、一対のボールねじ153が一対のリニアガイド161よりも左右外側に配置されているため、作業者はボールねじ153およびボールねじナット155のメンテナンスを容易に行うことができる。また、リニアガイド161とボールねじ153が全て縦板115と重なるように配置されているので、これらが縦板115と重ならない様に配置された場合と比べて、固有振動数を相対的に高くすることができる。なお、この場合も、4つの縦板115が各リニアガイド161および各ボールねじ153の鉛直下方にそれぞれ配置されればよい。また、3以上のボールねじ153および3以上のリニアガイド161がベースフレーム天板112上に配置されてもよく、各ボールねじ153および各リニアガイド161の鉛直下方に縦板115がそれぞれ配置されればよい。換言すれば、ベースフレーム天板112上には、複数のボールねじ153および複数のリニアガイド161がそれぞれ配置されてもよい。この場合、ボールねじ153の鉛直下方に位置する縦板115が本発明の第1縦板を構成し、リニアガイド161の鉛直下方に位置する縦板115が本発明の第2縦板を構成する。
【0113】
(2)また、上記の実施形態では、左右のボールねじナット155およびこれを保持する一対のボールねじブロック413が、ドラムハウジング40の底部411の前端部に配置される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、底部411の前後中央部または後端部に配置されてもよい。なお、これらの部材が底部411の後端部に配置される場合には、ボールねじ153の支持を減速機152に任せてもよいし、減速機152の直ぐ前側にボールねじ支持部154が配置されてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 タイヤ試験機
1S 本体フレーム
100 ベースフレーム
101 中間フレーム
102 上部フレーム
102A ガイドフレーム
105 スピンドル回転駆動部
111 スピンドル支持板
111A スピンドル受入孔
112 ベースフレーム天板
112A リニアガイド装着部
112B 前側支持部
112C 後側支持部
113 中間フレーム支持部(支持脚)
115 縦板
115A 縦板本体
115B 上板(上側支持板)
115C 下板(下側設置板)
115D 前側上端部
115E 開口部
115F 後側上端部
115S 天板載置面
115T 支持板載置面
116 横板
150 ドラム進退駆動部
151 カップリング
152 減速機
153 ボールねじ
154 ボールねじ支持部
155 ボールねじナット
161 リニアガイド
162 ハウジング支持部
2 スピンドル
21 下スピンドル
22 上スピンドル
2S 基準回転中心軸
3 タイヤ搬送機構
4 回転ドラム
40 ドラムハウジング
400 ドラム進退装置
40S ドラム収容空間
41 下部ハウジング
411 底部(底壁)
411A 底板
411B 底部横板
411C 底部縦板
412 側部(側壁)
412A 側部ベース板
412B 側部上板
412C 側部横板
412D 側部カバー
413 ボールねじブロック(ナット保持部)
413A ボールねじ挿通孔
414 リニアガイド装着部
415 サイド補強板
416 斜めカバー
41S、42S ドラム軸受入孔
42 上部ハウジング(上壁)
4A 模擬路面
4L ロードセル(荷重検出器)
4S ドラム軸
50 昇降ユニット(昇降機構)
60 マーキングユニット
61 下リム
62 上リム
7 搬入コンベア
8 搬送コンベア
9 搬出コンベア
M モーター
P タイヤ試験位置
T タイヤ