(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】SiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子、SiC結合ダイヤモンド粒子で形成された多孔質成形品、その製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C04B 35/52 20060101AFI20230823BHJP
B24D 3/18 20060101ALI20230823BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C04B35/52
B24D3/18
B24D3/00 320B
B24D3/00 340
B24D3/00 330D
(21)【出願番号】P 2020548677
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2019056457
(87)【国際公開番号】W WO2019175333
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】102018203882.1
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】マッセイ ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】クンツェ シュテフェン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン マティアス
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-113774(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0307067(US,A1)
【文献】特表2001-515836(JP,A)
【文献】特表昭62-500012(JP,A)
【文献】特表2013-530914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/52
B24D 3/18
B24D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンド 30体積%-65体積%、SiC 70体積%-35体積%、Si 0体積%~30体積%の組成を有するSiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子であって、
個々の硬質材料粒子中のダイヤモンド粒子が、熱処理によって形成されたSiC及びSiによって凝集的に結合され、
50μm-5000μm、好ましくは2000μm未満、さらに好ましくは1000μm未満の粒径を有する、
SiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子
を製造する方法であって、
前記ダイヤモンド粒子が、有機バインダーと混合され、乾燥造粒工程により造粒され、
無酸素雰囲気中で熱処理を行い、有機成分を熱分解し、熱分解の過程で有機バインダーからその場で生成した炭素をダイヤモンド粒子の表面にガラス状で堆積させ、
この熱処理の間に、又は混合した粉末状ケイ素及び粒子状のスペーサー(S)を用いたその後の第2の熱処理において、ケイ化が行われ、
炭化ケイ素が、ダイヤモンド粒子の表面に析出した炭素及び/又はダイヤモンド粒子との化学反応により同時に形成されることで、前記硬質材料粒子が形成され、
個々の硬質材料粒子中のダイヤモンド粒子は、熱処理の過程で反応により形成されたSiC及びケイ素と凝集的に結合しているが、形成された造粒物の大部分が分離されているか若しくは形成された造粒物が完全に分離されているか又はそれらの表面において互いに距離を保っており、これは添加されたケイ素及び/又はスペーサー(S)によるものである、
前記有機バインダー及びその量は、使用されるダイヤモンド粒子の全質量に対して1.5質量%~20質量%の割合で炭素源として使用されるように選択される、
方法。
【請求項2】
前記SiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子において、前記硬質材料粒子中の前記ダイヤモンド粒子の平均粒径d
50が5μm~500μmである、
請求項1に記載の
方法。
【請求項3】
前記SiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子において、前記ダイヤモンド粒子の表面の90%以下がSiCと結合している、
請求項1又は2に記載の
方法。
【請求項4】
前記スペーサー(S)は、造粒物同士の強固な結合を最小限にするために、Siでは濡れにくい、Siと合金を形成しない、及び/又はSiと反応しない化学元素又は化合物であり、これらの化学元素又は化合物は、好ましくは六方晶BN、Si
3N
4、AlN、Al
2O
3、SiO
2、ZrO
2、及び特に周期表の第4族及び第5族から選択される遷移金属の窒化物、炭化物である、
請求項
1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ダイヤモンド粒子が、少なくとも二つの異なる粒度画分、好ましくは一つの粗粒度画分及び一つの微細粒度画分、より好ましくは、粗粒度の直径の0.1から0.3倍の直径を有するとともに、粗粒度画分の5体積%-50体積%の割合を有する微細粒度画分を有する、
請求項
1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
平均粒径d
50が5μm~1000μmの範囲、好ましくは10μm~150μmの範囲であり、この範囲において、ダイヤモンド粒子の含有量に対して10体積%-200体積%、好ましくは60体積%分-160体積%の体積を有するケイ素粉末を、ケイ化前に造粒粒子に添加する、請求項
1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
硬質材料粒子が、好ましくはB
4C、TiC及びTiB
2から選択される少なくとも1つのさらなる相で形成される、
請求項
1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
平均粒径が10μm~50μm、好ましくは15μm~30μm、より好ましくは10μm~20μmのダイヤモンド粒子を用いる、
請求項
1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
硬質材料粒子が、特に押出又は鋳造法によって、規定された形状、好ましくは球状、円筒状、角柱状、ピラミッド状にされる、
請求項
1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
粒径が50μm~150μmの範囲のケイ素粒子を、ダイヤモンド粒子に加えて有機バインダーを含む懸濁液で覆う、又は熱処理時に分解する粉末状の有機物、好ましくはポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエチレン若しくはポリプロピレン若しくはデンプンの粒子を添加混合し、
さらに熱分解、Si粉末とスペーサー(S)との混合、及びSiCの反応生成を伴う熱処理を行いうことで、内部が中空である硬質材料粒子を得るが、ここで、
粉末状ケイ素の添加割合は、ダイヤモンド粒子の含有量に対して10体積%~200体積%、好ましくは60体積%~160体積%である、
請求項
1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
SiC結合ダイヤモンド粒子からなる多孔質成形品であって、
空隙率は10%~40%、好ましくは10%~30%の範囲であるとともに、その平均孔径が10μm~100μm、好ましくは20μm~50μmであり、
ダイヤモンド 30体積%-65体積%、SiC 70体積%-35体積%、Si 0体積%-30体積%、好ましくはダイヤモンド40体積%-60体積%、SiC 60体積%-40体積%、Si 2体積%-20体積%からなり、
存在するダイヤモンド粒子の平均粒径は5μm~500μm、好ましくは30μm~100μm、より好ましくは>50μm-200μmである、
成形品。
【請求項12】
摩擦学的応力又は研磨応力が生じた場合に摩耗することで材料に細孔が形成されるようなスペーサー機能を有する少なくとも一つのさらなる相が存在し、
前記さらなる相は、非ダイヤモンド炭素、Si
3N
4ただし焼結したものを含む、Al
2O
3又は遷移アルミナ、不浸透性又は多孔質のガラスビーズ、又は高融点のケイ化物又はホウ化物、特にTiSi
2、MoSi
2、WSi
2、TiB
2、W
2B
5、WB
2若しくはZrO
2を伴い、様々なドーパント、少なくとも一つの他の耐火性の酸化物又はケイ酸塩、特にMgO若しくはタルク、少なくとも一つの遷移金属炭化物、オキシカーバイド、窒化物又はホウ化物で成形されている、
請求項
11に記載の成形品。
【請求項13】
請求項
11又は12のいずれかに記載の成形品を製造する方法であって、
SiCを伴ったダイヤモンド粒子、有機バインダー及び有機物質の粒子、好ましくは細孔形成剤としての粉末プラスチック、特にポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエチレン又はポリプロピレン又はデンプンであって、好ましくは平均粒径d
50が30μm~100μmの範囲にあるものを、熱処理の前に混合し、成形プロセスによって成形し、
さらに無酸素雰囲気中で熱処理を行うが、その中で有機成分が熱分解され、熱分解の過程で有機バインダーからその場で生成された炭素がダイヤモンド粒子の表面にガラス状に堆積するが、この熱処理の間、又は外部から供給されたケイ素を用いたその後の第2の熱処理に間において、ケイ化が行われ、炭化ケイ素は、ダイヤモンド粒子の表面に堆積した炭素及び前記ダイヤモンドとの化学反応によって同時に形成され、
前記成形品の組成は、ダイヤモンド 30体積%-65体積%、SiC 70体積%-35体積%、Si 0%~30体積%であり、空隙率は10%-40%の範囲である、
方法。
【請求項14】
前記有機バインダーが、使用されるダイヤモンド粒子の全質量に対して1.5質量%~20質量%の割合で炭素源として使用されるように、前記有機バインダー及びその量が選択される、
請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
ダイヤモンド粒子は、少なくとも二つの異なる粒度画分、好ましくは一つの粗粒度画分と一つの微細粒度画分、より好ましくは、粗粒度画分の直径の0.1倍から0.3倍の大きさと、粗粒度画分の5体積%-50体積%の割合とを有する微細粒度画分を有するものが使用される、
請求項
13又は14に記載の方法。
【請求項16】
有機物、好ましくは粉末プラスチック、特にポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエチレン若しくはポリプロピレン又はデンプンの粒子を、20体積%~40体積%の範囲の割合で添加する、
請求項
13~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
非ダイヤモンド炭素、B
4C、TiC及びTiB
2、Si
3N
4ただし焼結したものを含む、Al
2O
3又は遷移アルミナ、不浸透性又は多孔質ガラスビーズ、高融点のケイ化物又はホウ化物、特にTiSi
2、MoSi
2、WSi
2、TiB
2、W
2B
5、WB
2若しくはZrO
2を伴い、様々なドーパント、少なくとも一つの他の耐火性の酸化物又はケイ酸塩、特にMgO若しくはタルク、少なくとも一つの遷移金属炭化物、オキシカーバイド、窒化物又はホウ化物を含むさらなる相が、成形前に均質に混合される、
請求項
13~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
成形前に、平均粒径d
50が20μm~100μmの間にあるケイ素粉末を出発材料と混合し、成形中にその粒径を保持することで細孔をケイ化中に形成する、
請求項
13~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
請求項1~
10のいずれかに記載の
方法により得られたSiC結合硬質材料粒子又は請求項
11~12のいずれかに記載の成形品の使用であって、
砥石、摩耗保護のために硬質材料の粒子で補強された物品、及び摩耗保護用品であって、砥石車、軸付砥石といったものの製造、又は保護及び耐摩耗用途のための、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子、SiC結合ダイヤモンド粒子で形成された多孔質成形品、その製造方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な硬質材料粒子が、単独で、若しくは造粒物の形態で、又は材料マトリックス内に埋め込まれて、多種多様な用途、特に研削の形態の材料除去機械加工の用途に供されることが典型的である。ダイヤモンド粒子は硬質材料粒子として使用され、非常に高い硬度を有することが知られている。しかし、ダイヤモンド単独では、様々な用途において不利な点があり、例えば、熱サイクル応力や、マトリックス材料中の結合特性に関して、不利となり得る。さらに、ダイヤモンド粒子は、特定の環境条件下で化学的に分解するか、又はマトリックス若しくは複合材料から剥離することもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、特定の使用分野に適合させるべく、ダイヤモンド粒子から形成された純粋な造粒物に比べて改良された特性を有する造粒物又は成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は課題を解決するために請求項1に記載の特徴を有する硬質材料粒子、請求項14に記載の特徴を有する成形品を提供する。請求項4は硬質材料粒子の製造方法に関し、請求項16は成形品の製造方法に関する。請求項23は硬質材料粒子及び成形品の使用に関する。従属クレームの特徴によって、さらに向上した構成とし、発展させることができる。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、SiC結合ダイヤモンドからなる超硬質研磨材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】SiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の硬質材料粒子は、SiC結合ダイヤモンドから形成され、20μm~5mmの粒径で得ることができる。硬質材料粒子は、ダイヤモンド 30体積%-65体積%、SiC 70体積%-35体積%、Si 0体積%~30体積%で形成される。ダイヤモンド 40体積%-60体積%、SiC 60体積%-40体積%、Si 2体積%-20体積%が好ましい。
【0008】
ダイヤモンド粒子の粒度分布をマルチモーダル(多峰性,multimodal)にすることで、硬質材料粒子中で相互に結合しているダイヤモンド粒子の充填密度を高めてもよい。
【0009】
好ましい微細画分は、粗粒ダイヤモンド粒子の画分の直径の0.1倍から0.3倍の大きさを有し、粗粒画分の5体積%-50体積%の割合を有する。好ましくは粗粒画分の5体積%-30体積%をマルチモーダル粒度の画分の中で用いる。
【0010】
ここでダイヤモンド粒子は、個々の硬質材料粒子の表面領域にて熱処理で形成されたSiCとSiに結合することで凝集する。
【0011】
またこれと同時に、ダイヤモンド粒子の表面領域全てが、反応によって形成されたSiCに結合することで凝集する必要はなく、表面領域の全てが結合することで凝集しているわけではないことが好ましい。その結果、意図的に形成した破断箇所を効果的に得られ、機械的応力が十分に高い場合に破断を起こすことができる。例えば、研削加工の場合には、ダイヤモンド粒子及び/又はSiCの領域が凝集複合体から離脱することがあるが、これが研削加工において優れた効果をもたらす。
【0012】
材料中のダイヤモンド粒子の平均粒径(mittlere PartikelgroBe)d50は、5μm~500μm、好ましくは5μm~100μmの範囲内に保たれる。硬質材料粒子中のダイヤモンド粒子の粒度分布は、充填密度を増加させるためにマルチモーダルである。したがって、少なくとも2つの異なる粒度画分を使用できる。
【0013】
特に好ましくは、ダイヤモンド粒子の1つの微細画分及び1つのより粗い粒度の画分が存在し:微細な方の粒度の画分は、粗粒画分の直径の0.1から0.3倍の大きさを有し、硬質材料粒子中において粗粒画分の5体積%-50体積%の割合を有する。粗粒画分の5体積%-30体積%が観察されることがさらに好ましい。
【0014】
造粒物の製造方法では、ダイヤモンド粒子と有機バインダーとを含む懸濁液、又はダイヤモンド粒子と有機バインダーを含む懸濁液若しくは分散液とを用いる。造粒乾燥工程では、ダイヤモンド粒子の一部又は全部が被覆される。その結果、それらは造粒物の形状にまとめられる。
【0015】
無酸素雰囲気中で熱処理する場合は、熱分解を行い、有機バインダーの成分を熱分解し、熱分解の過程で有機バインダーからその場生成した炭素をダイヤモンド粒子の表面にガラス状に析出させる。
【0016】
この熱処理の間に、又は粉末状ケイ素を添加したその後の第2の熱処理において、ケイ化(Silicierung)を行う。粉末状ケイ素は、ケイ化の前に添加できる。
【0017】
ダイヤモンド粒子の表面に析出した炭素と化学反応させて炭化ケイ素を形成し、ダイヤモンド 30体積%-65体積%、SiC 70体積%-35体積%、Si 0体積%-30体積%の硬質材料粒子を得る。
【0018】
得られたダイヤモンド造粒物は、粉末状ケイ素と混合され、さらに任意に添加される粒子スペーサーと混合され、粒子スペーサーは、最小限の範囲でしか造粒物が破壊せず、もしあったとしても、少なくともその領域においてダイヤモンド粒子を分離するものに過ぎない。これにより、凝集物の激しい摩耗につながるような強力な研磨等によらずとも、SiCに結合しているダイヤモンド硬質材料粒子の分離を簡単にする、又は可能にする。
【0019】
有機バインダー及び/又はダイヤモンド粒子がコーティングされるか、又は懸濁液中に存在するその量は、使用されるダイヤモンド粒子の全質量に対して1.5質量%~20質量%の割合で有機バインダーが炭素源として使用されるように選択される。ダイヤモンド粒子の結合に利用されるSiCは、熱分解で放出される炭素とケイ素との化学反応から基本的に得られる。これにより、得られた硬質材料粒子の特性が以下のように改善される。
【0020】
- 熱安定性の向上、
【0021】
- 硬質材料粒子の破壊挙動を調整可能、(比較的多量の触媒残渣(鉄・ニッケル)を含むダイヤモンドを使用する場合、これらは内部で弱められ、1425°Cから1650°Cの間でケイ化温度を調整することで、使用条件下でのダイヤモンド粒子の破壊を制御できる(温度が高いと、より低い負荷での破壊につながる)。
【0022】
温度>1525°Cでのケイ化の保持時間を延長することにより、SiCマトリックス中へのダイヤモンド粒子の集積に影響を与えることができる。比較的長い時間高温であると、厳しい摩擦学的応力下でダイヤモンド粒子がより早く分離する。1650°C,20分の保持時間でのケイ化の場合、非ダイヤモンド炭素の界面は厚さ>50nmにて形成された。その結果、SiC結合が部分的に切断されるとダイヤモンド粒子が放出される。<=1600°Cでのケイ化の場合、<60分でダイヤモンド粒子がしっかりと取り込まれ、硬いSiC結合が部分的に破壊されてもダイヤモンド粒子は脱落しない。ヌープ硬度のインテグラル(Integrale Knoop-Harten)>40~45GPaがこのような硬質材料粒子にて測定される。
【0023】
結果としてダイヤモンド粒子とSiC及びSiとの間の結合強度が低下し、硬質材料粒子が研削による機械加工に使用されるときに望ましい効果を発揮することがある。
【0024】
硬質材料粒子中のダイヤモンド粒子は、反応によって形成されたSiCへの結合に加えて、反応によっては変換されていないSiに結合することで凝集してもよい。しかしながら、この遊離Siは、1nm厚~μm厚のSiC層によってダイヤモンドから分離されるのが典型的である。
【0025】
好ましくは、ダイヤモンド粒子の表面の90%以下、特に好ましくは80%以下がSiC及びSiと結合する。添加される有機バインダー及びケイ素の量及び種類は、適宜選択される。その場での(in situ)反応によるSiCの生成の主な炭素源は有機バインダーである。また、SiCへの浸透時にダイヤモンド粒子がSiと表面反応してSiCを生成する。したがってSiCへのダイヤモンド粒子の強固な化学結合が保証される。バインダーからの炭素によりダイヤモンドの反応割合が低減するため、より高いダイヤモンド含有量が得られる。
【0026】
この反応によりβ-SiCが形成されることが好ましく、造粒物中に混合された任意のSiC(通常は安価なα-SiCである)が、形成されたSiCマトリックス/ネットワークに組み込まれてもよい。しかし、これによりダイヤモンド粒子の密度が減少するので、一般的にこれを混合する利点がない。しかし、特定の目的、特に価格を下げたい時に、α-SiCを添加してもよい。
【0027】
硬質材料粒子は、ディスク造粒機を用いて、若しくは、例えば、Eirichミキサーを用いて、又は流動床又はスプレー造粒を用いて、有機バインダー及び溶媒の含有量を最小限にして造粒することによって製造できる。造粒物の形状の物質を圧縮してから粉砕してもよい。これにより、より高いダイヤモンド粒子密度が得られる。
【0028】
有機バインダーを400°C~1400°Cの不活性雰囲気中で熱分解することで、熱分解状態のダイヤモンド含有量を基準として、非ダイヤモンド炭素の含有量を1.5質量%-20質量%としてもよい。
【0029】
個々のケイ化された硬質材料粒子の粒度分布は、分級/粉砕、例えばふるい分けによって微細化することができ、求められる条件に適合させることができる。分級に先立って、例えばジョークラッシャーを用いて機械的に分割できる。
【0030】
本発明に用いる有機バインダーは、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、糖、セルロース及びフェノール樹脂から選ばれる有機化合物又はそれら混合物であってもよい。ここでいうバインダーは、造粒物の形状のダイヤモンド粒子同士の結合がその主な機能であることから、利用される有機成分の総称として解釈する。有機成分はまた、バインダーの実質部分に加えて、分散剤、湿潤剤、可塑剤(例:PEG)及び消泡剤を含有してもよい。
【0031】
硬質材料粒子にはケイ素が浸透している。この目的のために、ダイヤモンド粒子と有機バインダーとで造粒物を形成してもよく、造粒物の形成は熱処理における熱分解の前、又は好ましくは熱分解後に行ってもよく、熱処理は、平均粒径d50が5μm~1000μmの範囲、好ましくは10μm~150μmの範囲であり、この範囲において、ダイヤモンド粒子の含有量に対して10体積%~200体積%、好ましくは20体積%~100体積%の体積を有するSi粉末を添加及び混合して行ってもよい。
【0032】
ケイ素粉末の粒径は5μm以上で、ダイヤモンド粒子と有機バインダーとで形成される造粒物の粒径の2倍以下であることが、個々の粒子間の十分な距離を確保するために好ましい。ケイ化後の粉砕にトラブルが起こらないように間隔を空ける。ケイ素含有量は、反応性の結合を行うために必要な2倍を超えてはならない。1.5倍か、1.1倍程度が望ましい。
【0033】
浸透は、熱分解を合わせて行う熱処理の中で行ってもよいし、2回目以降の熱処理の中で行ってもよい。その後の熱処理では、最高温度を1650℃に維持することが好ましく、真空条件が特に好ましい。
【0034】
粗いケイ素粉末を利用することも可能である。ただし、その場合にはSiCダイヤモンドの造粒物の10体積%-30体積%の範囲で、5μm~20μmの範囲の微細な粒度のケイ素粉末の画分をさらに使用することが好ましい。このように微細化することにより、元のSi粒子が多孔質酸化物/SiC表面層に残るため、問題なくSiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子を分離することができる。
【0035】
ケイ化後のSiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子をより容易に個別化できるようにするために、ケイ化又は熱分解の前に、Siによっては容易に濡れにくく、またSiと合金を形成せず、またスペーサーとしてSiと反応しない成分を混合できる。造粒物同士の強固な結合(固着)を最小限にするために、このような化学元素又は化合物をコーティングに利用できる。この目的のために、化学元素又は化合物を、好ましくはBN、Si3N4、AlN、Al2O3、SiO2、ZrO2、及び遷移金属、特に周期律表の第4族及び第5族から選択され得る(特にTi、Zr、Hf、V、Nb)の窒化物、炭化物から選択してもよい。
【0036】
この方法は、反応性の結合に必要なSiが既に造粒物に添加されており、ケイ化中に造粒物に外から添加する必要がない場合に特に有効である。
【0037】
SiC又はSiC-SiO2の殻が、ケイ素粒子の周囲に残っていてもよく、ケイ素粒子が造粒物に混合された場合でも、ケイ化された造粒物の山は、問題なく粉砕され、次いで、分級される(例えば、ジョークラッシャー、ふるい、空気分級機などで)。
【0038】
得られたSiC結合硬質材料粒子は、ケイ化後も凝集し得る。したがって、一般的には機械的に粉砕して分級すべきである(例えば、ジョークラッシャー、ボールミル、ふるい、空気分級機などで)。上述した手段は、同様に、凝集物にあまり摩耗や摩耗を与えずにこれを行えることを意味している。
【0039】
加えて、過剰のSiは、アルカリ溶液(例:20% NaOH)を用いて、室温又は60℃から沸点までの範囲の高温で、部分的又は完全に浸出され得る。これはまた、硬質材料粒子の分離に利用できる。
【0040】
得られた硬質材料粒子は研磨剤として利用できるが、硬質材料粒子として他のマトリックス材料に導入することもでき、したがって、プラスチック、金属又はセラミックと結合した新しい砥石/ディスクを製造できる。
【0041】
SiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子は、例えば、ガラスマトリックス又は他の金属マトリックスにより研磨ディスクに加工できる。本発明の硬質材料は、純粋なダイヤモンドと比較して、より良好な研磨特性の利点だけでなく、より大きな熱安定性を持つという利点も有する。
【0042】
SiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子は、典型的なセラミック技術に従ってマトリックス材料に導入できる。これらの硬質材料粒子は、成形前に乾燥した造粒物に別々に混合してもよい。又はこれらを出発組成物に添加し、次いで、適切な標準的なセラミック成形技術、例えば、ペレット化、プレス成形、スリップキャスティング、押出成形、射出成形、熱成形、又はさらなる追加的な工程によって処理してもよい。
【0043】
SiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子は、基本的にダイヤモンドとSiCからなるため、純粋な造粒物の形状のダイヤモンド材料とは異なる破壊挙動を有する。その結果、本発明の造粒物で形成され得る砥石は、純粋なダイヤモンドで形成される砥石よりも特定の条件下でより効果的である。
【0044】
SiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子の破壊挙動を調整できる。さらに、硬質材料粒子の破壊挙動を調整するために、異なるダイヤモンド特性を同様に使用できる。
【0045】
ダイヤモンド粒子とSiCとの結合は熱処理によって調整できる。触媒残渣(鉄・ニッケル)が比較的多いダイヤモンド粒子を使用する場合、内部が弱くなることがあり、ケイ化温度を1425°C~1650°Cの間で変化させることによって、使用条件下でダイヤモンドの破壊を制御できる(温度が高いと、より低い負荷での破壊につながる)。
【0046】
温度>1550°Cでのケイ化における保持時間を延長することにより、SiCマトリックス中のダイヤモンド粒子の結合に影響を及ぼすことができる。より長い時間とより高い温度により、厳しい摩擦学的応力下でダイヤモンド粒子がより速く分離する。1650°C、20分の保持時間でのケイ化の場合、非ダイヤモンド炭素の界面は>50nmの厚さにて形成できた。これによりSiC結合が部分的に切断されたときにダイヤモンド粒子が放出される。1600°C以下のケイ化の場合、<60分でダイヤモンド粒子が確実に取り込まれるので、SiC結合が部分的に切断されてもダイヤモンド粒子は脱落しない。このような硬質材料粒子でヌープ硬度のインテグラルを測定すると>40GPa~45GPaとなる。
【0047】
特定の研削用途には、定まった形状のSiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子が好ましい。押出工程や鋳造工程、又はプレス工程などのセラミック成形工程によって、粒子をケイ化する前に任意の所望の形状に成形することができ、特に押出工程又は鋳造工程によって球状、円筒状、角柱状、ピラミッド状に成形することが好ましい。
【0048】
硬質材料粒子は、剛性、硬度又は耐摩耗性を高めるために、他の材料への混合物として使用することもできる。これは、例えば、粒子補強材として金属に使用したり、その他の材料に使用したりすることができ、例えば、防犯(einbruchshemmende)機能を有するもの(コンクリートなど)や非常に耐久性の高い粗面を作ることを目的としたもの、例えば、安全関連エリアの濡れた状態での滑りを防ぐためのものなどに使用できる。
【0049】
これにより、ダイヤモンド粒子で形成された凝集体をSiCで包み込むことが可能となり、熱安定性が高く、酸化物や金属マトリックスとの相互作用に対しても非常に安定である。これは、例えば超硬合金、Al2O3などの重要なマトリックス材料への硬質材料粒子の取り込みを改善する。
【0050】
内部が中空である硬質材料粒子を製造するために、50pm~150pmの範囲の粒径を有するケイ素粒子に、ダイヤモンド粒子に加えて有機バインダーを含む懸濁液を適用するか、又はダイヤモンド粒子及び有機バインダーに加えて、熱処理中に分解する粉末状重合体、好ましくはポリウレタンを含む懸濁液を使用し、次いで熱分解及びSiCの反応形成が行われる熱処理を行ってもよい。重合体としてポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン又はポリプロピレン又はデンプンも好ましくは添加できる。重合体は、平均粒径d50が30pm~100pmのものを熱処理前に添加し、熱処理中に熱分解することが好ましい。
【0051】
この形態の硬質材料粒子はまた、ダイヤモンド粒子と特にSiCとの間の結合の強度が低下し、場合によってはSiとの結合の強度が低下しているため、研削に使用する場合に有利な特性を有する。これにより、研削加工時のダイヤモンド粒子の分離を改善することができ、新たなエッジが形成されるので好ましい効果が得られる。その効果は、既に説明したように、材料化合物が形成された表面領域を減少させたものを使用した場合と同様である。
【0052】
あるいは、SiC結合ダイヤモンドから多孔質成形品として研磨ディスクを直接製造することも可能である。このような成形品は、10%~40%、好ましくは10%~30%の範囲の空隙率を有し、10μm~100μm、好ましくは20μm~50μmの平均孔径を有する。それらは、ダイヤモンド 30体積%-65体積%、SiC 70体積%-35体積%及びSi 1体積%~30体積%、好ましくはダイヤモンド 40体積%-60体積%、SiC 60体積%-40体積%及びSi 2体積%~20体積%からなり、含有するダイヤモンド粒子は、5μm~500μmの範囲、好ましくは30μm~100μmの範囲、より好ましくは>50μm-200μmの平均粒径を有する。
【0053】
SiC結合ダイヤモンド粒子で形成された材料は、例えば、20体積%-50体積%の少なくとも一つの軟質相を含んでいてもよく、摩擦学的な又は研磨性の応力が生じた場合に摩耗し、それにより材料中に孔を形成するが、その平均粒径は10μm-50μm、好ましくは15μm~30μm又は10μm~20μmであってもよい。この設計は、SiCボンドダイヤモンドからなる研削砥石に特に有利である。
【0054】
ダイヤモンド粒子及びSiCと比較して低い機械的強度を有するこの/これらの軟質相は、非ダイヤモンド炭素、BN、Si3N4であってもよく、これは部分的に焼結してもよい、Al2O3又は遷移アルミナ、不浸透性又は多孔質ガラスビーズ、高融点ケイ化物又はホウ化物(例えば、TiSi2,MoSi2,WSi2,TiB2,W2B5,WB2,Zr02)であってもよく、多種多様なドーパント、少なくとも一つの他の高融点酸化物又はケイ酸塩(例えば、MgO、タルク、...)、少なくとも一つの遷移金属炭化物又はオキシ炭化物、又はそれ以外の窒化物又はホウ化物、特に周期表の4族及び5族(特にTi、Zr、Hf、V、Nbの)の窒化物又はホウ化物であってもよい。多孔質は、製品において同じ結果をもたらすことができるので、この文脈においては相と考えることもできる。
【0055】
好ましくは、この/これらの相の20%容積-30容積%(ダイヤモンドに加えてSiC及びSi)が材料中に存在し得る。
【0056】
また、以下のようにして成形体を製造することも可能であり、すなわちダイヤモンド粒子がSiC、有機バインダー及び有機物質の粒子、好ましくは細孔形成剤としての粉末プラスチック、特にポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエチレン又はポリプロピレン又はデンプンを含有し、好ましくは30μm~100μmの範囲の平均粒径d50を有するものと、熱処理前に混合され、成形加工により形成できる。この成形体を無酸素雰囲気中で熱処理し、有機成分を熱分解し、熱分解の過程で有機バインダーからその場で(in situ)生成した炭素をダイヤモンド粒子の表面にガラス状に堆積させる。この熱処理の間、又は外部から供給された、好ましくは粉末状のケイ素によるその後の第2の熱処理の間、ケイ化が行われる。ここで、炭化ケイ素は、ダイヤモンド粒子及びダイヤモンドの表面に堆積した炭素との化学反応によって形成され、構成材料の組成は、ダイヤモンド 30体積%-65体積%、SiC 70体積%-35体積%、Si 0体積%~30体積%、及び空隙率が10体積%-40体積%の範囲にある。
【0057】
有機物の粒子、特に粉状重合体は、ここでは20体積%~40体積%の割合で添加される。
【0058】
平均粒径d50が20μm~100μmのケイ素粉末を、成形前の材の製造用原料に混合し、成形時に粒径を維持することで、ケイ化時に細孔が形成される。
【0059】
そうでなければ、構成要素の製造において、特に請求項5~7、及び請求項8~11及び13の一部の特徴に関連する硬質材料粒子の製造に使用され得るのと同じパラメータ及び手順を選択できる。
【0060】
砥石を製造するために、造粒物は、ケイ化処理の前に、好ましくは熱分解処理の前に、成形プロセス、例えば、プレス、静水圧プレス、押出又は鋳造にかけられる。これに続いて、ケイ化が行われ、ダイヤモンド粒子は、粒子内の上述の硬質材料粒子と同様に、SiCマトリックス/構造に三次元的に結合する。摩擦学的応力又は研磨応力の下で摩耗を受け、それによって材料内に細孔を生成する細孔形成剤又は軟質相は、典型的なセラミック技術に従ってマトリックス材料に導入できる。これらはまた、プレス前に乾燥した造粒物に別々に混合してもよい。
【0061】
少なくともダイヤモンド粒子と有機バインダーとで形成された造粒物には、所望の細孔数に応じた個数と大きさのケイ素又はケイ化物粒子を導入できる。熱処理中の毛管現象により、好ましくは減圧下で、材料に対してその場での(in situ)浸透が起きるので、外部からケイ素を添加する必要はない。
【0062】
細孔又はそれに代わって素早く摩耗する粒子は、以下のように生成され得る:
【0063】
1)細孔形成剤(PMMA、デンプン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの有機粒子)を添加してもよく、ケイ化の際に熱分解して緻密な表面層を形成することで、ケイ素の浸入を防止したり、BNやSi02などからなるSiに対して濡れ性の悪い表面を形成したりすることができる。
【0064】
2) 細孔の数に応じた個数及び大きさのSi又はケイ化物粒子を造粒物に添加してもよい。熱処理中に毛管現象の結果として、好ましくは減圧下で、その場で(in situ)で加工物に浸透するので、Siを外部から添加する必要はない。
【0065】
3) 耐摩耗性粒子は、典型的なセラミック技術に従って成形品の材料に導入できる。これらの粒子は、例えば、造粒物の形状のダイヤモンド材料又は硬質材料粒子の間、又はそれ以外では出発懸濁液中に乾燥形態で混合してもよい。この後、成形し、熱分解/ケイ化によってさらに加工する。
【0066】
4) また、本発明のSiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子を完成した成形品の状態でダイヤモンド粒子及びバインダーと混合し、次いで、それらを成形し、次いで、熱分解及びケイ化することも可能である。この目的のために必要なSiは、外部から添加してもよく、又はダイヤモンド粒子-バインダー混合物、懸濁液に直接導入してもよい。後者の場合、Si粒度は、所望の細孔サイズにほぼ対応する。
【0067】
加えて、過剰のSiをアルカリ溶液(例:20% NaOH)で室温又は高温(60°Cから沸騰温度)で部分的又は完全に浸出させて、細孔を空にできる。
【0068】
同様に、SiC結合硬質材料粒子の空隙率を達成できる。
【0069】
また、SiC結合ダイヤモンド造粒物や多孔質は、一つの成形品の中に複数の層を積層する形態で使用することも可能である。より高い剛性を得るため、又は工具との接続性を向上させるために、SSiC若しくはSiSiC、又は短繊維若しくは長繊維の強化SiCセラミックスからなる基板を下地として使用することができ、これに硬質材料粒子を配置して固定することができる。
【0070】
SiC結合硬質材料粒子又は構成要素は、好ましくは、砥粒として、砥石の製造のために、保護及び摩耗保護のための用途のための硬質材料粒子強化構成要素と共に、砥石、取り付け点として、又は保護及び耐摩耗用途のために使用できる。
【0071】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0072】
次の図を参照のこと。
【0073】
図1はSiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子の製造方法である。
【0074】
【0075】
図1の左側の図は、ダイヤモンド粒子と熱分解バインダー(ダイヤモンドの太い黒い輪郭)からなる造粒物を示す。これらはSiとスペーサーSで分離されている。これは、SiCがケイ化して反応的に形成される前の状態である。
【0076】
ケイ化の際には、熱分解の際にダイヤモンド粒子の表面にある粉末状のSiとガラス状の炭素とからSiCマトリックスが形成される。珪化した後も、プレースホルダでパーリングされているので、分離しやすい。ケイ化後でも、スペーサーによって離間しているので、容易に分割される。
【0077】
図2の左側の図は、ダイヤモンド粒子からなる混合物からなる成形体であって、熱分解されたバインダーによって表面にガラス状炭素層を有するものを示す。さらに、細孔形成剤としてポリウレタン粒子Pが存在する。
【0078】
図2の右側の図は、ケイ化後の状態を示す。ダイヤモンド粒子は、反応により形成されたSiCで形成されたマトリックス中に埋め込まれる。マトリックスはSiのアイランドと細孔Poを含む。Si及び細孔Poは、「所定の破断点」に準ずるものを形成するので、機械的及び/又は摩擦学的ストレスが発生した場合には、ダイヤモンド粒子は、SiC残留物と一緒であっても成形品から脱落ので、使用中における研磨又は摩擦学的要件に適応することができる。同時に、細孔は、摩耗若しくは冷却又は追加の研磨剤のためのプールとして機能する。
【0079】
例1
【0080】
平均粒径d50 50μmのダイヤモンド粉末を有機バインダーと共に造粒する。ここで、ダイヤモンド粉末と有機バインダーとを水又は溶媒中で混合し、造粒技術(例えば、噴霧造粒、流動層造粒、ビルドアップ造粒等)により凝集させる。得られた造粒物の平均粒径は500μmであった。生成した造粒物をAr雰囲気中800°Cで熱分解し、バインダーの有機成分をガラス状炭素に変換した。このガラス状炭素は、凝集体中の造粒物の形状のダイヤモンド又はそのバルクの間の結合相として機能し、反応性ケイ素の浸透中にさらに反応して炭化ケイ素を与える。バルク材として1550°Cの真空条件下でケイ化を行った。この目的のために、製造された炭素被覆ダイヤモンド粒は、約200μmの平均粒径d50を有する粗ケイ素粉末と、さらに平均粒径d50=10μmを有する微粉末状ケイ素との混合物と混合される。結晶化したケイ素とSiCで形成された個々の造粒物間のブリッジ形成を防止するために、ここではケイ素粉末の微細画分が主にスペーサーとして作用し、結果として、ジョークラッシャーでSiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子を個別化し、ふるい分けによりそれらを再度分級することが容易に可能である。このようにして、例えば450μmと550μmとの間の粒度を有する狭い粒度範囲のものを生成できる。
【0081】
SiC結合ダイヤモンド硬質材料粒子は、反応によって形成されたダイヤモンド及び炭化ケイ素と、反応により炭化ケイ素を生じることのなかった残留ケイ素とからなる。
【0082】
例2
【0083】
中空造粒物の形状のビーズ材料の製造には、ビルドアップ造粒が利用される。そのために、平均粒径d50が50μmのダイヤモンド粉末を、有機バインダーを用いて懸濁液中に分散させる。次いで、造粒時にダイヤモンド粒子を含有する懸濁液を、造粒時に平均粒径d50=100μmの粗ケイ素粒子に噴霧することでビルドアップ造粒により二成分凝集体を得る(流動層造粒)。
【0084】
得られた造粒物の平均粒径はd50=500μmであった。この造粒物を非酸化性雰囲気下800°Cで熱分解し、バインダーの有機成分をガラス状炭素に変換した。このガラス状炭素は、このガラス状炭素の被覆が形成された表面のダイヤモンド粒子間の結合相として機能し、この炭素は、反応性ケイ素の浸透中にさらに反応して炭化ケイ素を生じる。
【0085】
このようにして得られた造粒物は、真空下1550°Cでの最終熱処理時に、内側から外側に向かって固化する。ケイ化は、平均粒径10μmの粉末状ケイ素の、より微細な画分を添加することによって促進できる。ケイ素粉末の微細画分は、ダイヤモンド、結晶化ケイ素及びSiCからなる造粒物間のブリッジ形成を防止するためのスペーサーとして主に作用する。
【0086】
ビルドアップ造粒の技術を用いることで、内部から外側へのケイ化により中空の造粒物の形状の物質を生成する。生成した造粒物は、ダイヤモンド、反応により生成した炭化ケイ素及び残留している可能性のある未反応のケイ素からなる。これらはケイ化後に分級され、使用される。
【0087】
残留した未反応Siは撹拌しながら20% NaOH中60°Cで1時間以内に溶解できた。
【0088】
例3
【0089】
ダイヤモンド含有懸濁液によって多孔質ダイヤモンド研磨剤を製造する。この懸濁液では、平均粒径d50=50μm及び5μmからなる二峰性(bimodale)ダイヤモンド粒径画分が使用される。さらに、懸濁液中に存在する別の固体成分は、平均粒径d50が100μmのケイ素粉末である。スペーサーとしては、平均粒径d50=200μmのポリスチレン粉末を用いた。ダイヤモンド/ケイ素/ポリスチレンの組成は体積比で2:2:1である。水性懸濁液に用いられるバインダーは、乾燥時に架橋する水性ポリ酢酸ビニル分散体である。
【0090】
懸濁液はスリップキャスティングで加工され、成形される。最終熱処理の際に、ダイヤモンド含有成形体は、非酸化性雰囲気下で800°Cで熱分解された後、1550°Cの真空条件下で反応的に結合され、熱分解の過程で、揮発性成分のガス放出を伴うガラス状炭素に変換される。このガラス状炭素は凝集体中のダイヤモンド粒子間の結合相として機能し、続いて行われる反応性ケイ素浸透中にさらに反応して炭化ケイ素を与える。ポリスチレンのスペーサーはほぼ完全に揮発性成分として分解され、これらは造粒物で形成された研磨剤中の細孔の形をとる。反応性の結合では、材料中に存在するケイ素が融解し、熱分解した有機バインダーから生じた炭素と反応し、ダイヤモンド粒子表面上に堆積する。これにより、研磨剤として使用可能な多孔質ダイヤモンド-SiC-Si含有材料複合体が形成される。
【0091】
例4
【0092】
ここでは、ダイヤモンド含有懸濁液によって、多孔質研磨ダイヤモンド媒体を製造する。平均粒径d50が50μm、5μmのダイヤモンド粒子を有する二峰性ダイヤモンド粒径画分を用いる。さらに、懸濁液中には、第二の固体成分として、平均粒径d50=100μmのケイ素粉末が存在する。ダイヤモンドとケイ素固体の質量比は2:1である。
【0093】
水性懸濁液に用いられる有機バインダーは、乾燥時に架橋するポリ酢酸ビニル分散体である。また、懸濁液には発泡剤として界面活性剤が添加される。
【0094】
この懸濁液を高速撹拌によって発泡させ、非吸収性の型に流し込み、凍結乾燥する。脱型に続き、熱処理工程を行う。ここでダイヤモンド含有成形品を非酸化性雰囲気下で800°Cで熱分解し、続いて1550°Cにて真空条件下で反応性の結合を行う。熱分解は、バインダーの有機成分が揮発性成分のガスを放出し、ガラス状炭素に変換するため、ダイヤモンド粒子の表面が被覆される。熱処理中の反応性の結合では、存在するケイ素が融解し、熱分解したバインダー中に存在する炭素とダイヤモンド粒子表面にて反応する。これにより、多孔質ダイヤモンド-SiC-Si含有材料複合体が形成される。
【0095】
例5
【0096】
ダイヤモンド含有造粒物より多孔質ダイヤモンド研磨剤媒体を製造する。造粒物は、通常の造粒技術(例えば、噴霧造粒、流動層造粒、ビルドアップ造粒等。)によりさらに凝集させ、その平均サイズを200μm-1000μmとする。製造された造粒物は、平均粒径d50=50μmのダイヤモンド画分、平均粒径d50=50μmのケイ素画分、及び平均粒径d50=100μmのポリスチレン粉末画分を含む。造粒物の形状の物質は、水性懸濁液中で糖系有機バインダーによって結合される。ダイヤモンド/ケイ素/ポリスチレンの組成は1:1:1体積比である。
【0097】
次いで、この造粒物を加圧成形する(例えば、等方圧プレスや一軸プレス)。続いて、非酸化性雰囲気下、800°Cで熱分解することにより、バインダーの有機成分が揮発性成分の排出を伴ってガラス状炭素に変換され、ダイヤモンド粒子の表面が被覆される。スペーサーとしてのポリスチレン粒子はほぼ完全に揮発性成分に分解され、これらは最終製品中の細孔となる。その後の反応性の結合において、材料中に存在するケイ素は溶融し、熱分解されたバインダーから得られた存在する炭素と反応し、ダイヤモンド粒子表面は炭化ケイ素でコーティングされる。これにより、多孔質ダイヤモンド-SiC-Si含有材料複合体が形成される。