(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】O/Wエマルジョンの製造方法、O/Wエマルジョン、及びO/Wエマルジョンを製造するためのシステム
(51)【国際特許分類】
B01J 13/00 20060101AFI20230823BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20230823BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B01J13/00 A
A61K9/107
A61K8/06
(21)【出願番号】P 2020555438
(86)(22)【出願日】2019-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2019058193
(87)【国際公開番号】W WO2019197198
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】102018205493.2
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513046917
【氏名又は名称】ベー.ブラウン メルスンゲン アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン シュミット
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】カルステン グルムバッハ
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ブラウン
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-533183(JP,A)
【文献】特表2013-526517(JP,A)
【文献】特表2017-505349(JP,A)
【文献】特開昭59-049832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00
A61K 9/107
A61K 8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)油相及び水相を提供する工程、
b)前記油相及び前記水相を予備混合してO/Wプレエマルジョンを形成する工程、及び
c)少なくとも1つのカウンタジェット分散機により前記O/Wプレエマルジョンを均質化してO/Wエマルジョンを形成する工程、
を含む、O/Wエマルジョン
の製造方法であって、
工程b)が、少なくとも1つのローターステーター分散機により実施されること、
前記油相及び前記水相が、互いに空間的に分離して前記少なくとも1つのローターステーター分散機に供給されること、
前記油相及び前記水相が、チューブインチューブ配置又はホースインホース配置によって、前記少なくとも1つのローターステーター分散機に供給されること、
前記油相及び前記水相を、強制通過によって、前記少なくとも1つのローターステーター分散機の液滴粉砕ゾーンに通過させること、及び
工程c)が、500バール~2000バールのポンプ圧力及び30℃~80℃のO/Wプレエマルジョンの温度で実施されること、
を特徴とする、O/Wエマルジョンの製造方法。
【請求項2】
前記油相及び前記水相を、前記少なくとも1つのローターステーター分散機
の剪断ゾーンに通過させることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
工程c)が、1000バール~1900バール
のポンプ圧力により実施されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程c)が
、40℃~77.5℃
のO/Wプレエマルジョンの温度で実施されることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程c)が実施されるときに、前記O/Wプレエマルジョンを前記少なくとも1つのカウンタジェット分散機に繰り返し通過させることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程c)が、複数のカウンタジェット分散機により実施されることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程c)が、直列に接続された2つのカウンタジェット分散機により実施されることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1のカウンタジェット分散機が、第2のカウンタジェット分散機よりも高いポンプ圧力で運転されることを特徴とする、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のカウンタジェット分散機は、最大で1500バール
のポンプ圧力で運転され、第2のカウンタジェット分散機は、1000バール未満
のポンプ圧力で運転されることを特徴とする、請求項
7又は
8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのカウンタジェット分散機の下流に減圧器が接続されていることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法に従って製造される又は製造できる、及び/又は、<0.04%
のPFAT5値を有するO/Wエマルジョン。
【請求項12】
O/Wエマルジョンの製造のための、及び/又は、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法を実施するためのシステムであって、前記システムは、油相と水相を予備混合してO/Wプレエマルジョンを形成するための少なくとも1つの分散機、及び、前記O/WプレエマルジョンをO/Wエマルジョンに均質化するための少なくとも1つの下流のカウンタジェット分散機とを有することを特徴とする、前記システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、O/Wエマルジョンの製造方法、O/Wエマルジョン、及びO/Wエマルジョンを製造するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エマルジョンは、目に見える分離のない2つの通常は非混和性の液体の細かく分割された混合物を意味すると理解されている。一方の液体(相)は、他方の液体中に分配された小さな液滴を形成する。液滴を形成する相は内部相又は分散相と呼ばれている。液滴が中に浮いている相は、外相又は連続相と呼ばれている。水と油のエマルジョンは、油中水型エマルジョン(W/Oエマルジョン)と水中油型エマルジョン(O/Wエマルジョン)に区別される。
【0003】
エマルジョンの別の重要な構成要素は、液滴の形成を促進し、分離(相分離)を妨げる乳化剤である。
【0004】
典型的には、エマルジョンを製造するために使用される成分は、最初に予備混合されて、粗く分散されたプレエマルジョンを形成し、これは、粗製又はプレエマルジョン又はプレミックスとも呼ばれることがある。これに続いて均質化が行われ、分散相が液滴に分割される(微細乳化)。粗製又はプレエマルジョンの液滴サイズスペクトルは、より小さな液滴に向かって大幅にシフトする。
【0005】
非経口用途のためのO/Wエマルジョンは、通常、最初に油相と水相をローターステータースターラーを使用して、続いてピストンギャップホモジナイザーを使用して均質化することによって製造される。ピストンギャップホモジナイザーは、いわゆる高圧ホモジナイザーであり、高圧ポンプと均質化ノズルをベースにしている。高圧ポンプはエネルギーを蓄積し、均質化バルブにおける圧力を解放することにより液滴サイズを減少させるために使用できる。ピストンギャップホモジナイザーでは、100~数百バールの圧力を達成できる。ピストンギャップホモジナイザーでは、プレエマルジョンは一般に中央の供給ボアを通してポンプで送られ、次にプレエマルジョンはバルブシートとバルブピストンの間のラジアルギャップを通過する。
【0006】
高圧ホモジナイザーでは、剪断力及び膨張力、衝撃流や、通常の場合、キャビテーション力も決定的な程度まで有効である。キャビテーションとは、圧力変動による液体中の空洞の生成と溶解である。キャビテーションは、物体が液体中で非常に速く移動することによって(例えば、プロペラやスターラーによって)、又は液体が例えばノズルを通って急速に移動することによって、及び超音波への暴露によって引き起こされる。
【0007】
非経口投与を目的とするO/Wエマルジョンは、特定の仕様を満たさなければならない。例えば、かかるエマルジョンは、最低限の医療基準に適合するために、500nm、好ましくは350nmの平均液滴直径を超えてはならない。
【0008】
さらに、かかるO/Wエマルジョンは、<0.05%のいわゆるPFAT5値を有するべきである。この値は、O/Wエマルジョンの油相内の、直径、特に平均直径が5μm~50μmである液滴の百分率を定義する。これは、患者の脂肪塞栓症を回避するための安全パラメーターである。
【0009】
O/Wエマルジョンを製造するための従来のプロセスの欠点は、長いプロセス時間、特に、製造されるO/Wエマルジョンの品質に関して、特に、プロセス制御オプションが限られている又は不十分であることが多い点である。例えば、プロセスパラメーターからのわずかな逸脱でも、不良なバッチが発生し、その結果、かなりの規模でのバッチ廃棄をもたらすおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術から知られているO/Wエマルジョンの製造方法に関連して生じる不利益を回避し、特により短いプロセス時間及びより良いプロセス制御によって特徴付けられる、O/Wエマルジョンを製造するための方法を提供することである。本発明の目的はまた、関連するO/Wエマルジョン及びO/Wエマルジョンを製造するための関連するシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的は、本発明によれば、それぞれの主請求項に記載の、O/Wエマルジョンの製造方法、O/Wエマルジョンによって、及びシステムによっても達成される。好ましい構成は、特にそれぞれの従属請求項に見出すことができる。特許請求の範囲の内容は、参照により本詳細な説明の内容に明示的に組み込まれる。
【0012】
第1の態様によれば、本発明は、特に非経口投与用の、水中油型エマルジョン(以下、O/Wエマルジョンと略記)を製造するための方法に関する。この方法は、以下の工程:
a)油相及び水相を提供する工程、
b)油相及び水相を予備混合、すなわち予備均質化又は予備乳化して、水中油型プレエマルジョン、すなわち水中油型前駆体エマルジョン(以下、O/Wプレエマルジョンと略す。)を形成する工程、及び
c)少なくとも1つのカウンタジェット分散機によりO/Wプレエマルジョンを均質化してO/Wエマルジョンを形成する工程、
を含む。
【0013】
本発明の文脈において、「水相」という用語は、完成したO/Wエマルジョン、すなわち、本発明による方法によって製造されたO/Wエマルジョンでは、外相又は連続相を形成する水又は含水液体、特に、水溶液を意味すると理解されるべきである。
【0014】
本発明の文脈において、「油相」という用語は、完成したO/Wエマルジョン、すなわち本発明による方法によって製造されたO/Wエマルジョンでは、液滴の形態にあり、内相又は分散相を形成する油及び/又は脂質、及び/又は、油及び/又は脂質含有液体、特に油及び/又は脂質含有溶液を意味すると理解されるべきである。
【0015】
本発明の文脈において、「液滴」という用語は、O/Wプレエマルジョン及び/又はO/Wエマルジョンの内部相又は分散相を形成する、油滴及び/又は脂肪滴、すなわち、少なくとも1種の油及び/又は少なくとも1種の脂質、及び/又は、油及び/又は脂質含有液滴からなる液滴、油滴を意味すると理解される。典型的には、この場合、O/Wプレエマルジョンは、O/Wエマルジョンより広い液滴直径分布によって、及び/又はO/Wエマルジョンよりも大きな直径、特により大きな平均直径の液滴によって特徴付けられる。
【0016】
本発明の文脈において、「カウンタジェット分散機」という表現は、少なくとも2つ、好ましくは2つの対向するボア又はチャネルからのプレエマルジョン(プレエマルジョン又は粗エマルジョン)の2つ以上のジェットが液滴粉砕ゾーンで互いに出会う高圧ホモジナイザーを意味すると理解されるべきである。プレエマルジョンジェットが出会うと、プレエマルジョン中に存在する液滴は、特に剪断力の作用下で粉砕される。したがって、前述の液滴粉砕ゾーンは剪断ゾーンと呼ばれることもある。液滴が粉砕される程度は、特に、O/Wプレエマルジョン又はO/Wプレエマルジョンジェットがカウンタジェット分散機内で搬送される搬送速度に依存する。O/Wプレエマルジョン又はO/Wプレエマルジョンジェットの搬送速度は、カウンタジェット分散機のポンプ、特に高圧ポンプによって生じる圧力を介して制御することができる。
【0017】
「少なくとも1つのカウンタジェット分散機」という表現は、以下でより詳細に説明するように、カウンタジェット分散機、又は、好ましくは、複数のカウンタジェット分散機、すなわち2つ又は3つ以上のカウンタジェット分散機を意味することもある。
【0018】
工程c)を実施するために提供される少なくとも1つのカウンタジェット分散機は、好ましくは、少なくとも2つ、特に2つ、好ましくは2つの対向するチャネル又はそれ以上のチャネルを有する。チャネルは、例えばマイクロメートル範囲の内径を有する。結果として、O/Wプレエマルジョン中に存在する液滴の特に強力な剪断、及びその結果として、狭い又は制限された液滴直径分布を有するO/Wエマルジョンの製造を達成することができる。
【0019】
少なくとも1つのカウンタジェット分散機のチャネルは、さらに、特に、Y字型の構成又は配置を有することができる。
【0020】
本発明は、とりわけ、以下の驚くべき発見及び利点に基づく。
- 油相と水相を予備乳化し、その後、少なくとも1つのカウンタジェット分散機を使用して高圧均質化することにより、一方ではO/Wエマルジョンの製造時間が大幅に短縮され、他方では製造されるO/Wエマルジョンの品質をよりよく制御することができ、特に、この製造は、質的に高品質のO/Wエマルジョンを達成することができる。
- 例えば、本発明による方法により、処理時間を最大75%短縮することが可能である。その結果、製造コストを大幅に節約でき、単位時間あたりに製造できるエマルジョンバッチの数を大幅に増やすことができる。全体として、これは生産性の大幅な向上をもたらす。
- 生産性の観点から、カウンタジェット分散機が、一般的に、静的、すなわち一定のチャンバー寸法を有することも有利である。これにより、スケールアッププロセスの実施が容易になる。例えば、複数のカウンタジェット分散機を使用する場合、チャンバーの数を体積に比例してスケールアップすることができる。
- 品質の観点から、少なくとも1つのカウンタジェット分散機の使用によって、製造される最終的なO/Wエマルジョンの液滴直径分布を目標としたやり方で特定及び制御できることが特に有利である。例えば、本発明による方法は、特に、180nm~340nm、特に200nm~320nm、好ましくは200nm~300nm、特に好ましくは240nm~280nmの液滴直径、特に平均液滴直径(光子相関分光法、PCSによって決定される)を有するO/Wエマルジョンの製造を可能にする。
- さらに、以下でより詳細に説明するように、本発明による方法の助けを借りて、製造されるO/WエマルジョンのPFAT5値をより良好に制御でき、特に大幅に低減できることが有利である。結果として、本発明によって製造されたO/Wエマルジョンの非経口投与の場合の脂肪塞栓症のリスクを大幅に低減することができる。
【0021】
本発明に従って提供される水相は、乳化剤を使用して、すなわち、水又は含水液体に乳化剤を添加することによって提供することができる。特に、水相は、乳化剤を水又は含水液に溶解させることによって提供することができる。この目的のために、水相を40℃~80℃、特に50℃~70℃の温度に加熱することができる。使用される乳化剤は、リン脂質、動物由来のリン脂質、植物由来のリン脂質、例えば卵レシチンなどのレシチン、オキアミリン脂質、及び上記の乳化剤のうちの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される化合物であることができる。
【0022】
さらに、水相は、添加剤を使用して、すなわち、水又は含水液体に添加剤を添加することによって提供することができる。特に、水相は、添加剤を水又は含水液体に溶解させることによって提供することができる。使用される添加剤は、乳化助剤、安定化剤、等張化剤、及び上記の添加剤のうちの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される化合物であることができる。使用される乳化助剤は、例えば、長鎖脂肪酸のアルカリ金属塩、例えば、16~18個の炭素原子を有する脂肪酸のアルカリ金属塩であることができる。使用される安定化剤又は等張化剤は、例えば、特にグリセロール、グルコース、キシリトール、及び上記の安定化剤又は等張化剤のうちの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される多価アルコールであり得る。
【0023】
油相は、植物由来の油、中鎖トリグリセリド(MCT)、動物由来の油、海洋由来の油、及び上記の油又は脂質のうちの少なくとも2種の混合物からなる群から好ましくは選択される油及び/又は脂質を使用して提供することができる。使用することができる植物由来の油は、例えば、ベニバナ油及び/又は大豆油である。これらの油は、ω-6シリーズの多価不飽和脂肪酸(主にリノール酸、18:2 ω-6)の割合が高い一方で、ω-3脂肪酸(ほとんどがα-リノレン酸として、18:3 ω-3)の含有量が低いという特徴がある。中鎖トリグリセリド(MCT)は、炭素原子数6~14、特に好ましくは炭素原子数8~10の炭素鎖長を有する。使用することができる海洋由来の油は、例えば、魚油及び/又はオキアミ油である。オキアミから得られるオキアミ油のように、冷水魚から得られる魚油は、多価不飽和脂肪酸(主にエイコサペンタエン酸、EPA、20:5 ω-3及びドコサヘキサエン酸、DHA、20:6 ω-3)の比率が高い一方で、ω-6脂肪酸の含有量は低いという特徴がある。例えば、好適な魚油は、技術的にかなりの程度の冷水魚から得られたものである。魚油は一般的に、炭素原子数12~22の脂肪酸のトリグリセリドを含む。使用することができる魚油は、例えば、イワシ油、サーモン油、ニシン油、サバ油、及び上記の魚油のうちの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される油である。代替的又は追加的に、対応する魚油濃縮物及び/又はオキアミ油を使用してもよい。
【0024】
油相は、乳化剤を使用して、すなわち、乳化剤を、油又は油混合物に、油含有液体に、脂質又は脂質混合物に、あるいは脂質含有液体に加えること、特に、乳化剤を油又は油混合物に、油含有液体に、脂質又は脂質混合物に、あるいは脂質含有液体に溶解させることによって提供することもできる。この場合、使用される乳化剤は、リン脂質及び少なくとも2種のリン脂質の混合物からなる群から好ましくは選択される化合物であることができる。
【0025】
油相は、添加剤を使用して、すなわち、添加剤を、油又は油混合物に、油含有液体に、脂質又は脂質混合物に、あるいは脂質含有液体に加えること、特に、乳化剤を油又は油混合物、油含有液体、脂質又は脂質混合物、あるいは脂質含有液体に溶解させることによって提供することもできる。使用される添加剤は、例えば、抗酸化剤、例えば、トコフェロール及び/又は生理学的に無害なトコフェロールエステル、例えばα-トコフェロールアセテートなどのであることができる。
【0026】
さらに、乳化剤を含む水相及び乳化剤を含まない油相を提供することができる。O/Wエマルジョンを製造するための、英国法(English method)と呼ばれるこの変法は、少量の乳化剤がしばしば必要とされる下記の大陸法(continental method)よりも優れている。
【0027】
あるいは、乳化剤を含まない水相及び乳化剤を含む油相を提供することができる。O/Wエマルジョンを製造するための大陸法と呼ばれるこの変法には、リン脂質の良好な分散性のため、処理時間の短縮をもたらすという利点がある。
【0028】
本発明による方法は、英国法又は大陸法のいずれかに基づいて、特にプロセスシーケンスを変更することなく、及び/又はプロセスプラントを変換することなく、格別の利点を伴って実施することができる。
【0029】
原則として、油相及び水相を、工程b)を実施する前にすでに一つにまとめられてもよい。特に、工程b)が実施される前に、油相がすでに水相に加えられてもよい。
【0030】
あるいは、油相及び水相は、工程b)を実施するときにのみ一つにすることができる。
【0031】
本発明の1つの構成では、工程b)は、少なくとも1つのローターステーター分散機、特にローターステータースターラーを使用して実施される。
【0032】
本発明の文脈における「ローターステーター分散機」という用語は、ローターステーターの原理に基づいて作動する、すなわちローター及びステーター(いわゆるローターステーターシステム)を含む分散機、特に撹拌機又はプレホモジナイザーを意味するものとする。
【0033】
少なくとも1つのローターステーター分散機のローター及び/又はステーターの構成、例えば剪断スロットの幅及び/又は数及び/又は相互間隔、及び/又はローターの速度、及び/又は油相及び水相が少なくとも1つのローターステーター分散機を通過する流量によって、液滴粉砕、特に液滴剪断のための比エネルギー入力に特に有利に影響を及ぼすことができる。
【0034】
本発明のさらなる構成において、油相及び水相は、互いに空間的に分離して少なくとも1つのローターステーター分散機に供給される。
【0035】
本発明のさらなる構成において、油相及び水相は、同軸管、すなわちチューブインチューブ配置によって、又は同軸ホース、すなわちホースインホース配置によって、少なくとも1つのローターステーター分散機に供給される。このようにして、少なくとも1つのローターステーター分散機内の各液滴が十分な乳化剤濃度に曝されることを特に有利に確保することができる。本発明による方法が、例えば、英国法を使用して実施される場合、油相が中央管又は中央ホースを通過し、水相が中央管を取り囲む(同軸)外管又は中央ホースを囲む(同軸)外側ホースを通過することが好ましい。対照的に、大陸法を使用する場合、水相が中央管又は中央ホースを通過し、油相が中央管を取り囲む(同軸)外管又は中央のホースを取り囲む(同軸)外側ホースを通過することが好ましい。これらの方法の混合形式の場合は、英国法の構成を使用することができる。
【0036】
本発明の文脈において、「少なくとも1つのローターステーター分散機」という表現は、1つのローターステーター分散機又は複数のローターステーター分散機、すなわち2つ又は3つ以上のローターステーター分散機、例えば2、3、4又は5つのローターステーター分散機を意味することがある。
【0037】
したがって、工程b)は、原則として、たった1つのローターステーター分散機を使用して実施することができる。
【0038】
あるいは、工程b)は、複数のローターステーター分散機を使用して、特に並列に接続された複数のローターステーター分散機を使用して、及び/又は直列に接続された複数のローターステーター分散機を使用して実施することができる。特に、工程b)は、並列に接続されたローターステーター分散機のみを使用して実施できる。あるいは、工程b)は、直列に接続されたローターステーター分散機のみを使用して実施できる。特に有利なことに、ローターステーター分散機を並列及び/又は直列に接続することにより、プロセス時間に影響を及ぼさずにプロセス生産性及びプロセス品質の両方を向上させることができる。少なくとも1つのローターステーター分散機に関して前の段落で説明した特徴及び利点は、多数のローターステーター分散機の使用と同様に適用される。
【0039】
工程b)は、例えば、インラインULTRA-TURRAX(登録商標)の名称で市販されている1つ又は複数のローターステーター分散機を使用して実施することができる。
【0040】
本発明のさらなる構成において、油相及び水相は、好ましくは排他的に、少なくとも1つのローターステーター分散機の液滴粉砕ゾーン、特に剪断ゾーンを通過する。この文脈において、「液滴粉砕ゾーン」という表現は、ローター及び/又はステーターの作用により、特に剪断力の影響下で、液滴粉砕が起こるゾーン、すなわち、少なくとも1つのローターステーター分散機の領域又はセクションを意味するものとする。この段落に記載されている手順は、少なくとも1つのローターステーター分散機の液滴粉砕ゾーン、特に剪断ゾーンを通る油相及び水相の強制通過と呼ばれることもある。結果として、(すでに)工程b)の間に、直径、特に平均直径が1μmを超える液滴の大幅な減少を達成することが特に有利である。
【0041】
原則として、O/Wエマルジョンを形成するために、O/Wプレエマルジョンを、直接、すなわち、さらなる中間工程なしで均質化することができる。結果として、製造時間のさらなる短縮、及びその結果としてのプロセス生産性のさらなる増加を有利な方法で達成することができる。
【0042】
あるいは、O/Wプレエマルジョンは、工程c)を実施する前に、中間貯蔵装置又は容器を通過させることができる。中間貯蔵装置又は容器は、特に有利であり、プロセスフローを維持するのに役立ち、したがって、少なくとも1つのローターステーター分散機と少なくとも1つのカウンタジェット分散機との間の調整を容易にする。
【0043】
本発明のさらなる構成において、工程c)は、500バール(bar)~2000バール、特に800バール~1900バール、好ましくは1000バール~1500バールのポンプ圧力を使用して実施される。この段落に開示されているポンプ圧力は、液滴の粉砕、特に液滴の剪断、及び好ましくは狭い又は制限された液滴の直径分布を達成するために特に有利であることが見出された。
【0044】
本発明の文脈において、「ポンプ圧力」という表現は、少なくとも1つのカウンタジェット分散機のポンプ、特に高圧ポンプによって生成される圧力を意味すると理解されることを意図している。これは、とりわけ、少なくとも1つのカウンタジェット分散機内でのO/Wプレエマルジョン、特にO/Wプレエマルジョンジェットの搬送速度に対して責任を負う。したがって、少なくとも1つのカウンタジェット分散機の液滴粉砕ゾーン、特に剪断ゾーン内のO/Wプレエマルジョンジェットの衝撃の速度、ひいては液滴粉砕、及びO/Wエマルジョンを形成するO/Wプレエマルジョンの均質化を、ポンプ圧力を介して制御することができる。この範囲で、ポンプ圧力は、本発明の文脈において均質化圧力と呼ばれることもある。
【0045】
本発明のさらなる構成において、工程c)は、30℃~80℃、特に40℃~77.5℃、好ましくは40℃~75℃、特に好ましくは40℃~65℃のO/Wプレエマルジョンの温度で実施される。言い換えれば、少なくとも1つのカウンタジェット分散機が、30℃~80℃、特に40℃~77.5℃、好ましくは40℃~75℃、特に好ましくは40℃~65℃の温度で運転されることが好ましく、言い換えれば、工程c)を実施するときのO/Wプレエマルジョンの温度が30℃~80℃、特に40℃~77.5℃、好ましくは40℃~75℃、特に好ましくは40℃~65℃であることが好ましい。したがって、この段落に開示されている温度は、本発明の文脈では均質化温度と呼ばれることもある。この段落に開示されている温度は、液滴粉砕、特に液滴剪断、及び好ましくは狭い又は制限された液滴直径分布を達成するために特に有利であることが(も)見出された。
【0046】
例えば、工程c)を実施するための少なくとも1つのカウンタジェット分散機は、1900バールのポンプ圧力及び40℃のO/Wプレエマルジョンの温度で運転することができる。
【0047】
工程c)を実施するための少なくとも1つのカウンタジェット分散機は、例えば、1500バールのポンプ圧力及び50℃のO/Wプレエマルジョンの温度で運転することもできる。
【0048】
工程c)を実施するための少なくとも1つのカウンタジェット分散機は、例えば、1000バールのポンプ圧力及び60℃のO/Wプレエマルジョンの温度で運転することもできる。
【0049】
本発明のさらなる構成において、O/Wプレエマルジョンは、工程c)を実施するときに、少なくとも1つのカウンタジェット分散機を2回以上、特に2回、3回、4回又は5回通過させる。O/Wプレエマルジョンを少なくとも1つのカウンタジェット分散機に数回通過させることにより、特に平均液滴直径及び/又はPFAT5値に関して、プロセス品質の向上を特に有利に達成することができる。
【0050】
本発明のさらなる構成において、工程c)は、複数のカウンタジェット分散機によって、特に2、3、4又は5つのカウンタジェット分散機によって実施される。工程c)は、好ましくは、並列に接続された複数のカウンタジェット分散機によって、及び/又は直列に接続された複数のカウンタジェット分散機によって実施される。複数のカウンタジェット分散機を使用することにより、特にカウンタジェット分散機を並列及び/又は直列に接続することにより、特に平均液滴直径及び/又はPFAT5値に関して、プロセス品質の大幅な改善も達成することができる。さらに、この手法により、プロセス生産性を向上させることができる。カウンタジェット分散機を直列に接続しても、プロセス時間は変わらない。並列接続の場合、プロセス時間は比例して短縮される。したがって、全体として、大幅な時間の節約があり、それによって、単位時間あたりに製造できるO/Wエマルジョンバッチの数が大幅に増加し、その結果、プロセス生産性の大幅な向上を達成することができる。
【0051】
特に、工程c)は、並列に接続されたカウンタジェット分散機のみを使用して実施することができる。
【0052】
あるいは、工程c)は、直列に接続されたカウンタジェット分散機のみを使用して実施することができる。
【0053】
本発明のさらなる構成において、工程c)は、直列に接続された少なくとも2つのカウンタジェット分散機を使用して、特に直列に接続された2つのカウンタジェット分散機のみを使用して実施される。第1のカウンタジェット分散機は、好ましくは、第2の、すなわち下流のカウンタジェット分散機よりも高いポンプ圧力で運転される。第1のカウンタジェット分散機は、特に好ましくは、最大1900バール、好ましくは最大1500バールのポンプ圧力で、特に800バール~1400バール、好ましくは1000バール~1200バールのポンプ圧力で運転され、第2のすなわち、下流のカウンタジェット分散機は、1000バール未満のポンプ圧力、特に500バール~800バール、好ましくは500バールのポンプ圧力で運転される。
【0054】
本発明はさらに、1μm~50μmの直径、特に平均直径を有する液滴が、1000バール未満、特に500バール~800バール、できれば500バールのポンプ圧力で優先的に粉砕され得るという驚くべき発見に基づく。その結果、特に有利な点として、PFAT5値を制御できる。これは、非経口投与されるO/Wエマルジョンにとって重要である。
【0055】
さらに、本発明は、圧力カスケードによって、特に、直列に接続された少なくとも2つのカウンタジェット分散機によって、最後から2番目の段落に記載されているように、第1のカウンタージェット分散機を、第2の(下流)カウンタジェット分散機よりも高いポンプ圧力で運転し、特に第1のカウンタジェット分散機のポンプ圧力によって、直径、特に平均直径が<500nm、特に<400nm、好ましくは<350nm、特に、200nm~320nm、好ましくは200nm~300nm、特に好ましくは240nm~280nmの液滴を生成させることができ、さらに、特に第2のカウンタジェット分散機のポンプ圧力によって、特に、1μm以上、特に1μm~50μmまでの直径、特に平均直径を有する液滴の割合を大幅に、特に再現性よく減少させることができるという驚くべき発見に基づく。
【0056】
例えば、第1のカウンタジェット分散機は、1900バールのポンプ圧力で運転することができ、第2のカウンタジェット分散機は、500バールのポンプ圧力で運転することができる。
【0057】
また、例として、第1のカウンタジェット分散機は、1500バールのポンプ圧力で運転することができ、第2のカウンタジェット分散機は、500バールのポンプ圧力で運転することができる。
【0058】
また、例として、第1のカウンタジェット分散機は、1200バールのポンプ圧力で運転することができ、第2のカウンタジェット分散機は、500バールのポンプ圧力で運転することができる。
【0059】
さらに、第1のカウンタジェット分散機及び第2のカウンタジェット分散機はそれぞれ、同じ温度のO/Wプレエマルジョンで運転することができる。この点に関して、O/Wプレエマルジョンに関連してこれまでの説明ですでに開示された均質化温度が参照される。例えば、第1のカウンタジェット分散機及び第2のカウンタジェット分散機の両方は、50℃のO/Wプレエマルジョンの温度で運転することができる。
【0060】
カウンタジェット分散機として、ナノジェット(Nanojet)又はマイクロフルイダイザー(Microfluidizer)(登録商標)の名称で市販されている1つ又は複数のカウンタジェット分散機を使用することが可能である。
【0061】
さらなる構成において、減圧器は、少なくとも1つのカウンタジェット分散機の下流に接続される。減圧器は、好ましくは、少なくとも1つのカウンタジェット分散機によって生じる圧力、特にポンプ圧力に対して逆圧(counter pressure)を生じるように構成される。例えば、減圧器は、10バール~100バール、特に30バール~70バールの逆圧を生じるように構成することができる。減圧器を使用することにより、プロセス安定性を特に有利に達成することができる。特に、ガス放出現象は減圧器によって回避することができる。複数のカウンタジェット分散機の場合、各カウンタジェット分散機の下流に減圧器を接続することができる。
【0062】
本発明による方法は、好ましくは、液滴直径、特に180nm~340nm、特に200nm~320nm、好ましくは240nm~280nmの平均液滴直径(光子相関分光法、PCSによって決定される)を有するO/Wエマルジョンを製造するために使用される。
【0063】
さらに、本発明による方法は、<0.05%、特に<0.04%、好ましくは<0.03%、より好ましくは<0.02%、特に好ましくは≦0.01%、特に<0.01%のPFAT5値を有するO/Wエマルジョンを製造するために使用される。本発明による方法によって、例えば、0.001%~0.01%のPFAT5値を有するO/Wエマルジョンを製造することができる。
【0064】
本発明のさらなる構成において、非経口的に投与されるO/Wエマルジョンは、本発明による方法によって製造される。
【0065】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様による方法によって製造される、又は製造することができる水中油型エマルジョン(以下、O/Wエマルジョンと略される)に関する。
【0066】
あるいは、又は組み合わせて、第2の態様によれば、本発明は、<0.04%、特に<0.03%、好ましくは<0.02%、特に好ましくは≦0.01%、特に<0.01%のPFAT5値を有する水中油型エマルジョン(以下、O/Wエマルジョンと略す。)に関する。例えば、O/Wエマルジョンは0.001%~0.01%のPFAT5値を有することができる。
【0067】
O/Wエマルジョンが、180nm~340nm、特に200nm~320nm、好ましくは200nm~300nm、特に好ましくは240nm~280nm平均液滴直径(光子相関分光法、PCSによって決定される)を有する場合も好ましい。
【0068】
O/Wエマルジョンのさらなる特徴及び利点に関して、本発明の第1の態様の文脈でなされた記述を完全に参照する。本発明による方法に関連してそこに記載されている特徴及び利点はまた、本発明の第2の態様によるO/Wエマルジョンにも同様に適用される。
【0069】
第3の態様によれば、本発明は、水中油型エマルジョン(以下、O/Wエマルジョンと略す。)を製造するためのシステム、及び/又は本発明の第1の態様による方法を実施するためのシステムに関する。
【0070】
このシステムは、油相及び水相を、予備混合、すなわち、予均質化又は予備乳化して、水中油型プレエマルジョン(水中油型前駆体エマルジョン)(以下、O/Wプレエマルジョンと略す。)を形成するための少なくとも1つの分散機、及び、O/Wプレエマルジョンを水中油型エマルジョン(以下、O/Wエマルジョンと略す。)に均質化するための少なくとも1つの好ましくは下流のカウンタジェット分散機とを有する。
【0071】
少なくとも1つの分散機(O/Wプレエマルジョンを予備混合するためのもの)は、好ましくは、ローターステーター分散機、特にローターステーターとして設計される。
【0072】
このシステムは、1つのローターステーター分散機又は複数のローターステーター分散機、すなわち、2つ、3つ、4つ又は5つのローターステーター分散機などの2つ又は3つ以上のローターステーター分散機を有することができる。
【0073】
特に、このシステムは、並列に接続された複数のローターステーター分散機、及び/又は直列に接続された複数のローターステーター分散機を有することができる。
【0074】
さらに、このステムは、1つのカウンタジェット分散機又は複数のカウンタジェット分散機、すなわち、2つ又は3つ以上のカウンタジェット分散機、例えば2つ、3つ、4つ又は5つのカウンタジェット分散機などを有することができる。
【0075】
特に、このシステムは、並列に接続された複数のカウンタジェット分散機、及び/又は直列に接続された複数のカウンタジェット分散機を有することができる。
【0076】
このシステムは、好ましくは、直列に接続された少なくとも2つのカウンタジェット分散機を有する。
【0077】
さらに、中間容器は、少なくとも1つの分散機(O/Wプレエマルジョンを予備混合するため)と少なくとも1つのカウンタジェット分散機との間に接続されてもよい。中間容器は、プロセスフローを緩衝することによって特に有利な、少なくとも1つのローターステーター分散機と少なくとも1つのカウンタジェット分散機との間の調整を容易にする。
【0078】
さらに、減圧器は、少なくとも1つのカウンタジェット分散機の下流に接続されてもよい。本発明のさらなる特徴及び利点は、図の説明及び関連する図、並びに例の形での好ましい実施形態についての以下の説明から生じる。この場合、単一の機能をそれぞれ個別に又は互いに組み合わせて実装できる。以下に記載される実施形態は、本発明を限定せずに、例として本発明を単に反映するものである。
以下は、図に概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】
図1は、本発明に従って使用することができるカウンタジェット分散機のマイクロチャネル構造である。
【
図2】
図2は、本発明による方法のフロー図である。
【
図3】
図3は、本発明による方法のさらなるフロー図である。
【
図4】
図4は、本発明による方法のさらなるフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
図1は、本発明に従って使用することができるカウンタジェット分散機のチャネル構造1を示す。示したチャネル構造1は、Y字型の配置を有し、例えば、マイクロメートル範囲の内径dを有することができる。O/Wプレエマルジョンを、カウンタジェット分散機のポンプ(高圧ポンプ)によって生じた圧力によって、入口2及び3を介してチャネル構造1に通過させることができる。チャネル4と6が対向して配置されているため、O/Wプレエマルジョンのジェットは液滴粉砕ゾーン5で互いに遭遇する。特に剪断力の影響下で、O/Wプレエマルジョン中に存在する液滴の粉砕が起こる。得られたO/Wエマルジョンは、出口7を介してチャネル構造1を出ることができる。
【0081】
図2は、英国法による本発明による方法のフロー図を概略的に示す。
【0082】
水相を提供するために、ローターステーターシステム11を備えた予備分散機10が使用される。これにより、例えば卵レシチンなどの乳化剤を水、特に注射用水(WFI)中に分散させることができる。乳化剤に加えて、水を、例えばグリセロールなどの安定化剤又は等張化剤、及び例えばオレイン酸ナトリウムなどの乳化剤と混合することもできる。その後、混合物を、例えば、60分間にわたって、55℃~75℃の温度に、加熱又は温度制御することができる。
【0083】
油相を、撹拌要素21を備えた予備温度制御容器として構成することができる容器20内に提供することができる。油相を提供するために、例えば、大豆油及び中鎖トリグリセリド(MCT)並びにα-トコフェロールを使用することができる。容器20で生成された混合物も、例えば55℃~75℃の温度に加熱又は温度制御することができる。
【0084】
次に、このようにして提供された油相及び水相を、ローターステーター分散機30に供給する。この場合、油相及び水相を、好ましくは、互いに空間的に分離してローターステーター分散機30に供給する。これは、例えば、同軸管又は同軸ホースによって達成することができる。これにより、油滴が十分な乳化剤濃度にさらされることが確保される。
【0085】
油相及び水相は、好ましくは、ローターステーター分散機30の剪断ゾーン32を通過する。その結果、直径、特に平均直径が1μm以上の油滴の効果的な粉砕がこのプロセス段階ですでに達成される、以下のことができる。ローターステーター分散機30では、油相と水相が予備混合され、O/Wプレエマルジョンを形成する。
【0086】
ローターステーター分散機の出口34を介して、O/Wプレエマルジョンを、中間貯蔵容器40を介して少なくとも1つのカウンタジェット分散機50に供給することができる。中間貯蔵装置又は容器は、特に有利なことに、プロセスフローを維持するのに役立ち、したがって、ローターステーター分散機30と少なくとも1つのカウンタジェット分散機50との間の調整を容易にする。
【0087】
カウンタジェット分散機50は、高圧ポンプ、特に、500バール~1900バールの範囲内の圧力を生じることができる高圧ポンプによって運転される。カウンタジェット分散機50内で生成されたポンプ圧力によって、O/Wプレエマルジョンは、好ましくは対向するチャネルを備えたマイクロチャネル構造を通してポンプで送られる。この場合、O/Wプレエマルジョンのジェットは液滴粉砕ゾーンで互いに接触し、その結果、特に剪断力の影響下で、O/Wプレエマルジョン中に存在する液滴が粉砕される。この場合、特に有利なことに、直径、特に平均直径(光子相関分光法、PCSによって決定される)が180nm~340nm、特に200nm~320nm、好ましくは240nm~280nmである液滴を生成させることができる。
【0088】
次に、カウンタジェット分散機50で生成されたO/Wエマルジョンは、さらに、適切な包装サイズで充填するために、充填容器70に移すことができる。
【0089】
図3は、英国法に従って実施される本発明による方法のさらなるフロー図を概略的に示す。
【0090】
示した方法は、直列に接続された2つのカウンタジェット分散機50及び60で実施されるという点で、
図1に示される方法とは異なる。
【0091】
この場合、180nm~340nm、特に200nm~320nm、好ましくは200nm~300nm、特に好ましくは240nm~280nmの直径、特に平均直径(光子相関分光法、PCSによって決定される)を有する液滴が、好ましくは、第1のカウンタジェット分散機50で生成され、一方、第2の、すなわち下流のカウンタジェット分散機60では、好ましくは、1μm以上の直径、特に平均直径を有する液滴の割合が減少し、PFAT5値が減少する。この目的のために、第1のカウンタジェット分散機50を、例えば、1500バールのポンプ圧力で運転することができ、カウンタジェット分散機50内のO/Wプレエマルジョンは、好ましくは50℃の温度を有する。第2のカウンタジェット分散機60は、好ましくは500バールのポンプ圧力で運転され、カウンタジェット分散機60内のO/Wエマルジョンは、好ましくは50℃の温度を有する。
【0092】
他の点では、プロセスシーケンス及び参照番号は、
図2に示されるプロセスシーケンス及び
図2に示される参照番号に対応する。
【0093】
図4は、本発明による方法のさらなるフロー図を概略的に示す。ただし、この場合、手順は大陸法に基づく。
【0094】
この目的のために、水相は、予備温度制御容器として構成することができる容器15によって提供され、油相は、ローターステーターシステム23を備えた予備分散機25によって提供される。
【0095】
水相を提供するために、水、特に注射用水(WFI)を、例えば、水酸化ナトリウム水溶液及びグリセロールと混合することができ、こうして得られた混合物を、例えば、撹拌要素13を用いて撹拌しながら55℃~75℃の温度に加熱又は温度制御することができる。油相を提供するために、例えば、オレイン酸、大豆油及び中鎖トリグリセリドを、乳化剤、例えば卵レシチンや、抗酸化剤、例えばα-トコフェロールなどと混合し、することができ、このようにして得られた混合物を撹拌しながら55℃~75℃の温度に加熱又は温度制御することもできる。
【0096】
他の点では、プロセスシーケンス及び参照番号は、
図2に示されるプロセスシーケンス及び
図2に示される参照番号に対応する。
【実施例】
【0097】
1.非経口脂肪エマルジョンの調製(リポフンジンMCT/LCT 20%)
調製プロセスは、以下の3つのプロセス工程に分割した。
最初の工程で、油相と水相を準備した。水相は、乳化剤を粉砕し、溶解させるために、撹拌槽型反応器で調製した。油相は、マグネチックスターラー上で単純に油相の温度を制御することによって生成させた。
【0098】
第2の工程において、O/Wプレエマルジョンを、インラインULTRA-TURRAX(登録商標)(Ytron-Z)の名称で市販されているローターステーター分散機によって調製した。従来のプロセスとは対照的に、油相と水相を、強制通過によってローターステーター分散機の剪断ゾーンを通過させた。これにより、油相の全部分が均質化ゾーンを通過することも確保された。古典的な撹拌槽型反応器では、ローターステータースターラーへの油相の導入は統計的に考慮されることができるのみで、経験は、それが限られた範囲でしか制御できない望ましくない広い粒子分布につながることを示している。
【0099】
第3の工程において、最終的な微細エマルジョンを、カウンタジェット分散機として構成されたPSI-40タイプの高圧ホモジナイザーを使用して生成させた。動的バルブを使用して液滴を分解する従来のプロセスで使用されるピストンギャップホモジナイザーとは対照的に、カウンタジェット分散機は、液滴を分解するための静的マイクロチャネル構造を有する。
【0100】
1.1. ローターステーター分散機(インラインローターステーター、Ytron-Z)
使用したローターステーター分散機(Ytron-Z)は、11個の主要な構成要素から構成されていた。原材料(油相と水相)は、ディスクバルブを介してそれぞれ開閉できる2つの供給漏斗を介してのシステムへの計量添加のために供給することができる。そこから、原材料は2つのダイヤフラムモーター駆動計量ポンプ(ProMinent(登録商標)Sigma/1 コントロールタイプS1Cb)の入口に直接流れ込んだ。これらの2つのポンプは、電気モーターによって駆動される振動変位ポンプの原理に基づいて動作した。これにより、ストローク運動がプッシュロッドによって計量ダイヤフラムに伝達された。予め決定した計量プロファイルに従ってストロークを実施でき、原材料の特性(粘度及び/又はガス放出特性)に応じて調整できるように、ディスプレーサのストローク運動を継続的に記録及び調整した。各油滴が直接乳化剤濃度に曝されるように、計量添加は、チューブインチューブ構造を有する計量ヘッドを介して行った。油相は内管の中心を介して供給し、水相は周囲の外管に供給した。原材料を、2つの計量ポンプによって反応器ヘッドに直接ポンプ輸送し、強制通路を通って回転ローター/ステーターセットに直接流れ込んだ。これは、三相モーター(ATB Motorenwerke GmbH、IM B3;1.5kW)によって駆動した。
【0101】
生成物は、ローター/ステーターを通過し、圧縮空気駆動ピンチバルブ(KVT GmbH)によって狭められた生成物出口を介して反応器ヘッドを出た。
【0102】
ピンチバルブは、一方では、2つのダイヤフラム計量ポンプの正確な機能のための技術的に義務的な逆圧バルブとして機能し、他方では、反応器ヘッドがその動作体積に達し、プロセス中に空で運転しないことを保証するために、生成物出口用のリダクションユニットとして機能した。システムは、プログラム可能なロジックコントローラー(PLC、SIMATIC、Siemens AG)を使用してスイッチキャビネットを介して制御した。2つの計量ポンプの比率とローターステーター分散機の速度は、スイッチキャビネットドアに取り付けられたタッチパネルを介して同時に入力及び開始できる。ローターステーター分散機のシャフトは、生成物潤滑メカニカルリングシールによってシールした。
【0103】
ローターディスクを、フェザーキーによって三相モーターの回転シャフトにクランプし、Oリングシールを備えたローターねじによって回転シャフトにしっかりと固定した。ステーターを反応器カバーにしっかりとねじで取り付け、ステーターは、リアクターヘッドを閉じたときにローターディスクに接触することなく動いた。反応器ヘッドは、Oリングシールとクランプ接続を用いて閉じた。
【0104】
1.2. モデルエマルジョンの処方(リポフンジン(Lipofundin)MCT/LCT 20%;非経口脂肪エマルジョン)
O/Wエマルジョンの一例を調製するために、以下の表1に示す処方を使用した。
【0105】
【0106】
1.3. 手順:
ダブルジャケットを介して温度制御ユニットによって65℃のプロセス温度に加熱された10リットルの撹拌タンク内で水相を生成させた。このプロセス工程は、本質的に、水相で乳化剤を粉砕及び水和するのに役目を果たした。このプロセス工程では、卵レシチン(乳化剤)、グリセロール、オレイン酸ナトリウムを撹拌タンクに入れ、注射用の温度制御された(65℃の)水(WfI)で10リットルの容積にした。
【0107】
分散のために、IKA T 50ULTRA-TURRAX(登録商標)の名称で入手可能なローターステータースターラーを最大速度(10,000回転/分)で使用した。撹拌タンクのジャケット温度制御によって65℃で同時に温度制御しながら、ローターステータースターラーの撹拌タンク内で分散を1時間行った。
【0108】
続いて、水相を、インラインULTRA-TURRAX(登録商標)での使用に備えて、マグネチックスターラー上で75℃のプロセス温度でさらに温度制御し、インラインローターステータリアクターの第1の貯蔵容器に移した。この貯蔵容器は、乳化中に水相をプロセス温度にするジャケット温度制御も備えていた。この工程で水相の準備が完了した。
【0109】
油相を生成させるために、大豆油、MCT及びα-トコフェロールをガラスビーカーに入れ、次にマグネチックスターラー上で75℃のプロセス温度で温度制御し、インラインULTRA TURRAX(登録商標)での使用の準備をし、インラインローターステーターリアクターの第2の貯蔵容器に移した。この貯蔵容器は、乳化中に油相をプロセス温度にするジャケット温度制御も備えていた。この工程で油相の準備が完了した。
【0110】
スロット幅1mm、最内歯リングについてスターラー円周33mm、中央歯リングについてスターラー円周44mm、及び外歯リングについてスターラー円周55mmのローターを使用した。
【0111】
ステーターの歯間隔は0.5mmであった。3つの歯付きリングの円周は、内歯リングで38mm、中歯リングで49mm、外歯リングで60mmであった。
【0112】
乳化の開始前に、計量添加及びローターステーター速度のプロセスパラメーターを、以下の表2に従って、インラインローターステーターの制御ユニットのPLCに設定した。
【0113】
【0114】
システムを始動した後、生成物出口の圧力を2バールの逆圧に設定した。O/Wプレエマルジョンをガラスビーカーの生成物出口で収集し、撹拌下に継続的に保った。
【0115】
次に、O/Wエマルジョンを、カウンタジェット分散機として構成されたPSI-40タイプの高圧ホモジナイザーに3回通過させることによって微細に乳化させた。従来の動的バルブの代わりに、この高圧ホモジナイザーは、静的なマイクロメートルサイズのチャネル構造を使用し、そこで液滴の崩壊が起こった。チャネルの寸法がはるかに狭く不変であるため、剪断力がより集約的になり、流れの分布がより小さくかつ再現性があり、より狭い液滴分布をもたらした。さらに、それらの静的なチャンバージオメトリのため、かかる高圧ホモジナイザーはより容易にスケーリングできる。液滴の崩壊は、316Lステンレス鋼ケーシングに沈められたダイヤモンドコアからなる相互作用チャンバー(剪断チャンバー)で起った。このダイヤモンドコアは上記の微細構造チャネルを備え、そこで液滴を加速させ、高いプロセス圧力で破壊させた。乳化にはいわゆるYチャンバーを使用した。かかるチャンバー内のマイクロチャネルはY字型に形成された。この場合、500バール~2000バールのプロセス圧力が可能であった。
【0116】
高いプロセス圧力でのキャビテーションによって引き起こされる損傷から相互作用チャンバーを保護するために、APM(補助処理モジュール)を相互作用チャンバー(二次チャンバー)の下流に接続した。この二次チャンバーは減圧器として機能し、一次チャンバーの出口側(出口)に低い逆圧を発生させた。したがって、誘導キャビテーションを伴う直接大気圧に対する相互作用チャンバーの減圧が防止された。実際には、APMモジュールは、ステンレス鋼ケーシングに特別な寸法の穴が設けられたステンレス鋼コアであった。
【0117】
高圧ホモジナイザーのために、以下のプロセスパラメーター及びチャンバー構成を確立した:
【0118】
【0119】
E101Dチャンバーは、単一スロットのYチャンバーであり、最大20L/hの流量を提供した。
【0120】
APMモジュールは、一次チャンバーE101Dについて約50バールの逆圧を提供した。
【0121】
チャンバー構成をさらに最適化することによって、PSI-40高圧ホモジナイザーを用いてさらに改善されたエマルジョン品質を達成することができた。この構成は、以下のプロセスパラメーターで設定された。
【0122】
【0123】
E101Dチャンバーは、単一スロットのYチャンバーであり、最大20L/hの流量を提供した。
【0124】
APMモジュール(低減された逆圧)は、一次チャンバE101Dに逆圧を提供したが、50バールに近い減少した逆圧であった。
【0125】
生じた逆圧に関する情報は、製造業者のデータに基づく。
【0126】
以下の粒子分析を使用して、製造されたO/Wエマルジョンを特徴付けた。
【0127】
a)光子相関分光法(PCS):
この方法を使用して、ブラウン運動は、分散粒子の散乱光信号の自己相関関数の助けを借りて定量化される。測定では、規定波長の光線がレーザーによってサンプルを通過し、それによってレーザー光が散乱される。散乱光の強度は、粒子を取り巻く分子の非指向性拡散により、時間に依存する揺らぎの影響を受ける。これらの時間依存干渉現象は、散乱粒子のサイズに依存する。ナノメートル[nm]単位の平均粒子径又は液滴直径が出力パラメーターとして使用される。
【0128】
b)顕微鏡画像の記録(顕微鏡写真):
顕微鏡画像記録のために、各場合に1つの液滴(約10lのサンプル)を、100倍のイマージョンオイルレンズを備えた光学顕微鏡下でスライド上に観察した。スライド上の5点(左上、左下、右下、右上、中央)でこのサンプルからサンプル画像を取得し、ソフトウェアを使用して2μmのサイズの液滴をカウントして評価した。
【0129】
単位[液滴]による顕微鏡写真を出力パラメーターとして使用した。顕微鏡写真は、1つの観察されたサンプルボリュームの5つのサンプル画像からの液滴の数に対応した。
【0130】
2.異なる均質化温度と圧力でのO/Wエマルジョンの調製
1.に従って調製された脂肪エマルジョンを、異なる均質化温度及び圧力を使用して調製した。タイプPSI-40カウンタジェット分散機を使用した。Microfluidicsによる説明(チャンバーユーザーガイド、12/30/14)から、均質化中にプロセス温度が圧力によってどのように変化するかが知られている(100バール当たり2.5℃)。この温度は、O/Wプレエマルジョンのそれぞれの試験温度TH、すなわち、少なくとも1つのカウンタジェット分散機に入る前のO/Wプレエマルジョンの温度に加え、本発明の文脈における均質化温度を与えた。例えば、少なくとも1つのカウンタジェット分散機に入る前に20℃の温度を有するO/Wプレエマルジョンの場合、45℃のカウンタジェット分散機内のO/Wプレエマルジョンの温度は、1000バールの均質化圧力(ポンプ圧力)で動作するカウンタジェット分散機の場合で計算される。
【0131】
測定したのは、5マイクロメートルより大きいエマルジョン液滴の百分率(PFAT5)、光子相関分光法(PCS)を使用して測定された平均粒子径又は液滴直径(MDS=平均液滴サイズ)、顕微鏡カウントを使用した液滴の数、及びpH値であった。
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
表5~10に示される試験結果は、O/Wエマルジョンの平均液滴直径が500nmの値を超えてはならないというO/Wエマルジョンの非経口投与に必要な最低限の医療基準が、製造されたすべてのO/Wエマルジョンにより満たされることを示している。さらに、表5~10に表形式で示される結果は、平均液滴直径が、圧力の増加及び/又は均質化サイクルの数の増加とともに減少し得ることを示している。
【0139】
さらに、得られた試験結果は、1μmを超え、特に1μm~5μmの間の直径、特に平均直径を有する液滴が、好ましくは1000バール未満の均質化圧力で、特に500バールの均質化圧力で、粉砕されることを示している。これにより、特に、直列に接続された2つのカウンタジェット分散機の場合、最初のカウンタジェット分散機を介して生成されるO/Wエマルジョンの平均液滴径と、第2の、すなわち下流のカウンタジェット分散機によって生成されるO/WエマルジョンのPFAT5値とを制御できる。このようにして、平均液滴直径に関する既存の最低限の基準とPFAT5値に関して必要とされる最低限の基準の両方を、目標とする方法で満たすことができ、したがって、プロセス品質を大幅に向上させることができる。
【0140】
3.様々な圧力レベルでの均質化によるO/Wエマルジョンの調製
1.に従って調製された脂肪エマルジョンを、直列に接続された2つのカウンタジェット分散機(それぞれのPSI-40タイプ)を使用して製造された。ここで得られた結果を以下の表11~13に示す。
【0141】
2.7. 第1圧力段階 1900バール
【表11】
【0142】
2.8. 第1圧力段階 1500バール
【表12】
【0143】
2.9. 第1圧力段階 1000バール
【表13】
【0144】
表形式で示た結果は、平均液滴直径に関して非経口的に投与されるO/Wエマルジョンに必要な医学的な最低限の基準が、製造された全てのO/Wエマルジョンによって満たされたことを示している。これらの結果は、直列に接続された第2のカウンタジェット分散機を使用することにより、平均液滴直径をさらに減少させることができることも示している。第2のカウンタジェット分散機が、均質化圧力(ポンプ圧力)<1000バール、特に500バールの均質化圧力で運転される場合、非経口的に投与されるO/Wエマルジョンに適用可能なPFAT5値を著しく低下させることができる。したがって、全体として、特に製造されるO/Wエマルジョンの平均液滴径とPFAT5値に関して、プロセス品質の大幅な向上を達成できる。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
a)油相及び水相を提供する工程、
b)前記油相及び前記水相を予備混合してO/Wプレエマルジョンを形成する工程、及び
c)少なくとも1つのカウンタジェット分散機により前記O/Wプレエマルジョンを均質化してO/Wエマルジョンを形成する工程、
を含む、O/Wエマルジョン、特に非経口投与用のO/Wエマルジョンの製造方法。
[態様2]
工程b)が、少なくとも1つのローターステーター分散機により実施されることを特徴とする、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記油相及び前記水相が、互いに空間的に分離して前記少なくとも1つのローターステーター分散機に供給されることを特徴とする、態様2に記載の方法。
[態様4]
前記油相及び前記水相が、チューブインチューブ配置によって、前記少なくとも1つのローターステーター分散機に供給されることを特徴とする、態様2又は3に記載の方法。
[態様5]
前記油相及び前記水相を、前記少なくとも1つのローターステーター分散機の液滴粉砕ゾーン、特に剪断ゾーンに通過させることを特徴とする、態様2~4のいずれか一つに記載の方法。
[態様6]
工程c)が、1000バール~1900バール、特に1000バール~1500バール、好ましくは1200バール~1500バールのポンプ圧力により実施されることを特徴とする、態様1~5のいずれか一つに記載の方法。
[態様7]
工程c)が、30℃~80℃、特に40℃~77.5℃、好ましくは40℃~75℃、特に好ましくは40℃~65℃のO/Wプレエマルジョンの温度で実施されることを特徴とする、態様1~6のいずれか一つに記載の方法。
[態様8]
工程c)が実施されるときに、前記O/Wプレエマルジョンを前記少なくとも1つのカウンタジェット分散機に繰り返し通過させることを特徴とする、態様1~7のいずれか一つに記載の方法。
[態様9]
工程c)が、複数のカウンタジェット分散機により実施されることを特徴とする、態様1~8のいずれか一つに記載の方法。
[態様10]
工程c)が、直列に接続された2つのカウンタジェット分散機により実施されることを特徴とする、態様1~9のいずれか一つに記載の方法。
[態様11]
第1のカウンタジェット分散機が、第2のカウンタジェット分散機よりも高いポンプ圧力で運転されることを特徴とする、態様10に記載の方法。
[態様12]
前記第1のカウンタジェット分散機は、最大で1500バール、特に800バール~1400バール、好ましくは1000バール~1200バールのポンプ圧力で運転され、第2のカウンタジェット分散機は、1000バール未満、特に500バール~800バール、好ましくは500バールのポンプ圧力で運転されることを特徴とする、態様10又は11に記載の方法。
[態様13]
前記少なくとも1つのカウンタジェット分散機の下流に減圧器が接続されていることを特徴とする、態様1~12のいずれか一つに記載の方法。
[態様14]
態様1~13のいずれか一つに記載の方法に従って製造される又は製造できる、及び/又は、<0.04%、特に<0.03%、好ましくは<0.02%、特に好ましくは≦0.01%のPFAT5値を有するO/Wエマルジョン。
[態様15]
O/Wエマルジョンの製造のための、及び/又は、態様1~13のいずれか一つに記載の方法を実施するためのシステムであって、前記システムは、油相と水相を予備混合してO/Wプレエマルジョンを形成するための少なくとも1つの分散機、及び、前記O/WプレエマルジョンをO/Wエマルジョンに均質化するための少なくとも1つの下流のカウンタジェット分散機とを有することを特徴とする、前記システム。