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特許7335922環化重合性モノマーを含有する3Dプリント用インク
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  • 特許-環化重合性モノマーを含有する3Dプリント用インク 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】環化重合性モノマーを含有する3Dプリント用インク
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20230823BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20230823BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230823BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230823BHJP
   C08G 61/00 20060101ALI20230823BHJP
   C08F 20/28 20060101ALI20230823BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B29C64/106
B29C64/264
B33Y10/00
B33Y70/00
C08G61/00
C08F20/28
C08F2/44 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021077226
(22)【出願日】2021-04-30
(62)【分割の表示】P 2019540414の分割
【原出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2021119058
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】62/453,169
(32)【優先日】2017-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/573,756
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597013711
【氏名又は名称】スリーディー システムズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ピンヨン シュィ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン フォン
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/143559(WO,A1)
【文献】特開2011-177964(JP,A)
【文献】特開2011-137123(JP,A)
【文献】UV/EB高化技術の最新応用展開-3Dプリンターから住環境まで-,第1版,日本,シーエムシー出版,2014年07月07日,p80-p88
【文献】機能性オリゴマー(CNシリーズ),https://www.tomoe-co.jp/upload/cProductsJA/25QU044-cProductsJA_content-014.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元プリントシステムで使用するためのインクであって、インクの総質量に基づき、
10~50質量%の環化重合性モノマー、及び
40~80質量%のオリゴマー硬化性材料
を含み、
前記オリゴマー硬化性材料の質量平均分子量は400~10,000の範囲内であり、
前記環化重合性モノマーは式(I)の構造
【化1】
式中、
Xは、O、S、NH、NR 、又はCR であり;
は、H、又は1~6の炭素原子を有する炭化水素基であり;
は1~4の炭素原子を有する炭化水素基であり;
は1~4の炭素原子を有する炭化水素基であり;

であり;
は1~4の炭素原子を有する炭化水素基であり;
は1~4の炭素原子を有する炭化水素基であり;
及びR の炭素原子の総数は5を超えない]
を有し、
該インクは、硬化た状態で、ASTM D638に準拠して測定した場合に40~70MPaの引張強度を有し、かつASTM D256に準拠して測定した場合に1~4ft・lb/in(約53~214J/m)(ノッチ付き)の耐衝撃性を有し、ここで、硬化した状態のインクは少なくとも95%が重合又は架橋されている、インク。
【請求項2】
前記環化重合性モノマーが、インクの総質量に基づき、20~40質量%の量でインク中に存在する、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記環化重合性モノマーのアクリレート部分のα-炭素とエテニル又はエチニル部分のα-炭素が、1,5-の関係を有する、請求項1又は2に記載のインク。
【請求項4】
前記環化重合性モノマーのアクリレート部分のα-炭素とエテニル又はエチニル部分のα-炭素が、1,6-の関係、1,7-の関係、又は1,8-の関係を有する、請求項1又は2に記載のインク。
【請求項5】
XがOである、請求項1~4のいずれか一項に記載のインク。
【請求項6】
XがS、NH、NR、又はCRである、請求項1~4のいずれか一項に記載のインク。
【請求項7】
及びRの炭素原子の総数が4を超えない、請求項1、2、5、及び6のいずれか一項に記載のインク。
【請求項8】
及びRの炭素原子の総数が3を超えない、請求項1、2,5、及び6のいずれか一項に記載のインク。
【請求項9】
及びRの炭素原子の総数が2である、請求項1、2,5、及び6のいずれか一項に記載のインク。
【請求項10】
前記環化重合性モノマーが式(II)の構造を有する、請求項1又は2に記載のインク。
【化2】
【請求項11】
追加のモノマー硬化性材料をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のインク。
【請求項12】
少なくとも1つの光開始剤をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のインク。
【請求項13】
少なくとも1つの着色剤、又は禁止剤及び安定剤からなる群より選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のインク。
【請求項14】
該インクの粘度が、30℃で1,600センチポアズ(cP)以下である、請求項1~13のいずれか一項に記載のインク。
【請求項15】
前記オリゴマー硬化性材料の質量平均分子量が00~,000の範囲内である、請求項1~14のいずれか一項に記載のインク。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、参照することによってその全体が本願に援用される、2017年2月1日出願の米国仮特許出願第62/453,169号、及び2017年10月18日出願の米国仮特許出願第62/573,756号に基づき、35U.S.C§119(e)に従う優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本出願はインクに関するものであり、より詳細には、三次元(3D)プリントシステムで使用するための環化重合性モノマーを含有するインクに関する。
【背景技術】
【0003】
サウスカロライナ州ロックヒル所在の3D Systems社製のProJect(商標)3Dプリンタなどのいくつかの市販の3Dプリンタは、液体としてプリントヘッドを通して噴射されるインク(造形材料としても知られている)を使用して、様々な3D物体、物品又は部品を形成する。他の3Dプリントシステムも、プリントヘッドを通して噴射されるか或いは基体上に分配されるインクを使用する。一部の例では、インクは周囲温度で固体であり、高温の噴射温度で液体に変化する。他の例では、インクは周囲温度で液体である。さらには、一部の例では、インクを基体上に分配及び/又は堆積させた後にインクを硬化させることができる。
【0004】
他の3Dプリンタは、流体インク又は造形材料、或いは粉末インク又は造形材料のリザーバ、バット又は容器から3D物品を形成する。一部の例では、結合剤材料、或いはレーザ又は他のエネルギー源を使用して、段階的な様式で、インク又は造形材料の層を選択的に固化又は固結させて3D物品を提供する。
【0005】
3Dプリントシステム用インクを使用して、上記の様式での使用を含めて、様々な用途のための様々な物品を形成することができる。しかしながら、優れた機械的特性を有する物品を形成することができるインクに対する非常に高い需要がある。例えば、熱可塑性材料から形成した物品と同様の機械的特性を有する物品を形成することができるインクに対する高い需要がある。
【0006】
従来のアクリレートを含有する3Dプリントシステム用インクを用いて非常に良好な解像度で物品をプリントできるが、得られる物品はしばしば、硬く、脆弱であり、又は柔軟であるが壊れやすいものとなる。そのような物品の耐衝撃性は、一部の他の物品と比較して特に低いものとなり得る。従って、改善された機械的特性を有する物品を形成する、3Dプリント用の改善されたアクリレート含有インクに対する要求が存在する。特に、熱可塑性材料から形成される物品が示す機械的特性に近い機械的特性を有する物品を製造するアクリレート含有インクに対する要求が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様において、一部の実施形態では、従来のアクリレート含有インクを超える1つ以上の利点をもたらし得る、3Dプリンタと共に使用するためのインクを本明細書に記載する。例えば、本明細書に記載のインクを用いて、従来のアクリレート含有インクを用いてプリントしたものと比較して、耐衝撃性の改善を含めて、改善された機械的特性を有する物品をプリントすることができる。一部の実施形態では、本明細書に記載のインクを用いてプリントした物品は、従来のアクリレート含有インクを用いてプリントした物品と比較して、改善された引張弾性率、引張強度、及び/又は伸びも有する。加えて、一部の例では、本明細書に記載のインクは、従来のアクリレート含有インクと比較して、低減された粘度を有する。結果として、本明細書に記載のインクを、ステレオリソグラフィ(SLA)、デジタルライトプロセシング(DLP)、及びマルチジェットプリンティング(Multi-Jet Printing)(MJP)に基づく3Dプリンタなど、様々な異なる3Dプリンタで使用することができる。さらに、少なくとも部分的にはその低減された粘度により、本明細書に記載のインクは容易かつ迅速にプリントすることもできる。
【0008】
一部の実施形態では、本明細書に記載の3Dプリントシステムで使用するためのインクは、インクの総質量に基づき、10~70質量%又は20~40質量%の環化重合性モノマーを含む。環化重合性モノマーは、アクリレート部分、及びエテニル又はエチニル部分を含み、アクリレート部分のα-炭素と、エテニル又はエチニル部分のα-炭素は、1,5-、1,6-、1,7-、又は1,8-の関係を有し得る。一部の例では、環化重合性モノマーは、式(I)の構造を有するモノマーであってよい:
【化1】
式中、
Xは、O、S、NH、NR、又はCRであり;
は、H、又は1~10の炭素原子を有する炭化水素基であり;
は1~4の炭素原子を有する炭化水素基であり;
は1~4の炭素原子を有する炭化水素基であり;

であり;
は1~4の炭素原子を有する炭化水素基であり;及び
は1~4の炭素原子を有する炭化水素基である。
加えて、
及びRの炭素原子の総数は5を超えない。例えば、一部の例では、式(I)により表される環化重合性モノマーは、より特異的な式(II)の構造を有する:
【化2】
【0009】
上記の環化重合性モノマーに加えて、本明細書に記載のインクは、一部の例では、インクの総質量に基づき、80質量%までのオリゴマー硬化性材料及び/又は80質量%までの追加のモノマー硬化性材料をさらに含み得る。また、本明細書に記載のインクは、少なくとも1つの光開始剤,少なくとも1つの着色剤、又はその両方を含み得る。加えて、本明細書に記載のインクは、禁止剤及び安定剤からなる群より選択される1つ以上の添加剤を含み得る。さらに、本明細書に記載のインクは、15質量%まで又は10質量%までの非硬化性ポリマー又はオリゴマーを含むことも可能である。
【0010】
さらには、本明細書に記載のインクは、一部の例では、30℃で1600センチポアズ(cP)以下、又は30℃で500cP以下の粘度を有する。
【0011】
別の態様では、上記のインクのいずれかを使用して3D物品をプリントする方法を本明細書に記載する。一部の例では、例えば、そのような方法は、流体状態のインクの層を基体上に選択的に堆積させることを含む。さらには、一部の実施形態では、全てのインクの層の堆積が完了する前に、そのインクを部分的に硬化させる。部分的に硬化させることは、アクリレート重合を介して、環化重合性モノマーのアクリレート部分及び/又はインクの他のアクリレート含有種を重合させることを主に含む。加えて、一部の例では、全てのインクの層の堆積の完了に続いて、インクを後硬化させる。後硬化は、一部の実施形態では、インクの環化重合性モノマーのアクリレート部分と、エテニル又はエチニル部分とを環化重合させることを主に含む。さらに、一部の例では、部分的硬化及び後硬化はそれぞれ、光硬化、すなわち、光源を用いて硬化させることを含む。さらには、一部の実施形態では、後硬化に用いられる光源は、部分的硬化に用いられる光源よりも高いエネルギーを有する。例えば、一部の例では、後硬化に用いられる光源は水銀ランプであってよく、部分的硬化に用いられる光源はキセノンアークランプであってよい。
【0012】
本明細書に記載される3D物品をプリントする別の方法において、その方法は、流体状態の本明細書に記載のインクを容器内に保持する工程、及び前記容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、インクの第1の流体層の少なくとも一部を固化させ、それによって、物品の第1の断面を画成する第1の固化層を形成する工程を含む。そのような方法は、第1の固化層を上昇又は降下させて、容器内の流体インクの表面にインクの第2の流体層を提供する工程、及び、容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、インクの第2の流体層の少なくとも一部を固化させ、それによって物品の第2の断面を画成する第2の固化層を形成する工程をさらに含んでいてよく、前記第1の断面と第2の断面は、z方向に互いに結合している。下記にてさらに説明するように、前述の工程を、3D物品を完成するのに必要な所望の回数だけ繰り返してよい。さらには、一部の例では、容器内のインクにエネルギーを選択的に印加する工程は、インクを部分的に硬化させることを含む。インクを部分的に硬化させることは、アクリレート重合を介して、環化重合性モノマーのアクリレート部分及び/又はインクの1つの又は他の追加のアクリレート含有種を重合させることを主に含み得る。加えて、一部の例では、記載の方法は、3D物品を、その形成に続いて後硬化することをさらに含む。後硬化は、一部の例では、インクの環化重合性モノマーのアクリレート部分と、エテニル又はエチニル部分とを環化重合させることを主に含み得る。さらに、部分的硬化及び後硬化はそれぞれ、光硬化を含み得る。一部のそのような例では、後硬化に用いられる光源は、部分的硬化に用いられる光源よりも高いエネルギーを有し得る。例えば、水銀(Hg)ランプを後硬化のために用いてよく、またキセノンアークランプを部分的硬化のために用いてよい。
【0013】
さらに別の態様では、プリントされた3D物品を本明細書に記載する。特に、上記のインクから及び/又は上記の方法を用いて形成された3D物品を開示する。そのようなプリントされた3D物品は、一部の例では、本明細書にさらに記載するように、一部の他の3D物品と比較して優れた機械的特性を有する。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記載の3D物品は、熱可塑性成形物品が示す機械的特性と同様の1つ以上の機械的特性を有する。
【0014】
以下の詳細な説明において、これらの及び他の実施形態をより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本明細書に記載の一部の実施形態に従う環化重合性モノマーの重合を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明、及び実施例を参照することにより、本明細書に記載の実施形態をより容易に理解することができる。しかしながら、本明細書に記載の要素、装置、及び方法は、詳細な説明及び実施例に示される特定の実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態は、本開示の原理の単なる例示であることを認識されたい。本開示の精神及び範囲を逸脱することなく、多くの変更及び適応が当業者に容易に明らかとなるであろう。
【0017】
加えて、本明細書に開示の全ての範囲は、その中に含まれる全ての部分範囲を包含すると理解されたい。例えば、記述範囲「1.0~10.0」は、1.0以上の最小値で始まり、10.0以下の最大値で終わる任意の全ての部分範囲、例えば、1.0~5.3、又は4.7~10.0、又は3.6~7.9を含むと解釈されたい。
【0018】
また、本明細書に開示の全ての範囲は、特に明記のない限り、その範囲の端点を含むものと考えるべきである。例えば、「5と10の間」、「5から10」又は「5~10」の範囲は、一般に、端点の5及び10を含むと考えるべきである。
【0019】
さらに、「まで」という句が、量又は数量に関連して使用されている場合、その量は、少なくとも検出可能な量又は数量であると理解すべきである。例えば、特定量「まで」の量で存在する材料は、検出可能な量から、特定量を含むその特定量までの量で存在し得る。
【0020】
「三次元プリントシステム」、「三次元プリンタ」、「プリント」などの用語は、ステレオリソグラフィ、選択的堆積、噴射、溶融堆積モデリング、マルチジェットモデリング、並びに三次元物体を製造するために造形材料又はインクを使用する当技術分野で現在知られている又は将来知られ得る他の付加製造技術により、三次元物品又は物体を作製するための様々な固体自由形状製造技術を広く記述する。
【0021】
I.3Dプリント用インク
1つの態様では、3Dプリンタと共に使用するためのインクを本明細書に記載する。一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、環化重合性モノマーを含む。加えて、本明細書に記載のインクは、一部の例では、以下の1つ以上をさらに含む:オリゴマー硬化性材料;追加のモノマー硬化性材料;少なくとも1つの光開始剤;少なくとも1つの着色剤;並びに、禁止剤及び安定剤からなる群より選択される1つ以上の添加剤。
【0022】
次に、インクの具体的成分について検討するとして、本明細書に記載のインクは、環化重合性モノマーを含む。環化重合性モノマーは、アクリレート部分、及びエテニル又はエチニル部分を含む。一部の実施形態では、エテニル部分は、ビニル部分、アリル部分、又は(メタ)アクリレート部分であってよく、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレート、或いはその混合物又は組合せを含む。エチニル部分は、一部の実施形態では、アセチレンエチン基又はプロパルギル基である。さらに、アクリレート部分のα-炭素と、エテニル又はエチニル部分のα-炭素は、1,5-、1,6-、1,7-、又は1,8-の関係を有する。理論に拘束されることを意図するものではないが、そのようなモノマーは、環化重合を介して硬化又は重合させることができると考えられる。例えば、モノマーのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分とを環化重合させて、5、6、7、又は8員環を形成することができる。本明細書に記載の例示的な環化重合性モノマーの環化重合を図1に示す。理論に拘束されることを意図することなく、この環化重合は、特に他のアクリレート含有インクと比較した場合に本明細書に記載のインクを用いて3Dプリントした物品でみられる機械的性質の改善に少なくとも部分的に寄与し得ると考えられる。さらには、再度理論に拘束されることを意図するものではないが、本明細書に記載の環化重合性モノマーは、アクリレート重合を介して重合又は硬化させることもでき、この第2の重合又は硬化経路の存在は、本明細書に記載の環化重合性モノマーを含有するインクから形成される物品の特性をさらに改善し得ると考えられる。この第2の重合又は硬化経路も図1に示す。
【0023】
特に適した環化重合性モノマーに関して、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクの環化重合性モノマーは、式(I)の構造を有する:
【化3】
式中、Xは、O、S、NH、NR、又はCRであってよく;Rは、H、又は1~10の炭素原子を有する炭化水素基であってよく;Rは1~4の炭素原子を有する炭化水素基であってよく;Rは1~4の炭素原子を有する炭化水素基であってよく;R
であってよく;Rは1~4の炭素原子を有する炭化水素基であってよく;Rは1~4の炭素原子を有する炭化水素基であってよく;さらに、R及びRの炭素原子の総数は5を超えない。式(I)中の炭化水素基はいずれも、分枝でも直鎖でも、また飽和でも不飽和でもよく、さらに、炭化水素基は、飽和又は不飽和の、置換又は非置換の炭化水素環であるか又はそれを含んでいてよい。
【0024】
特定の実施形態では、Rは、H、或いは1~10の炭素原子、1~9の炭素原子、1~8の炭素原子、1~7の炭素原子、2~6の炭素原子、2~5の炭素原子、又は2~4の炭素原子を有する炭化水素基である。好ましい実施形態では、Rは3~6の炭素原子を有する炭化水素基である。一部の実施形態では、Rは、飽和又は不飽和の、置換又は非置換の5~10炭素原子環であるか又はそれを含んでいてよい。例えば、Rは、置換又は非置換のフェニル環であってよい。
【0025】
特定の実施形態では、R及びRはそれぞれ個別に、1~4の炭素原子、1~3の炭素原子、又は1~2の炭素原子を有する炭化水素基である。R及びRは同じであっても異なっていてもよい。好ましい実施形態では、R及びRはそれぞれ個別に、1~2の炭素原子を有する直鎖飽和炭化水素基であり、R及びRの炭素原子の総数は4を超えない。
【0026】
一部の特定の実施形態では、R及びRはそれぞれ個別に、H、或いは1~4の炭素原子、1~3の炭素原子、又は1~2の炭素原子を有する炭化水素基であり、R及びRは同じであっても異なっていてもよい。
【0027】
さらに他の特定の実施形態では、式(I)に示される環化重合性モノマーは、式(II)に示される特定構造を有していてよい:
【化4】
【0028】
上記の環化重合性モノマーは、本開示の目的と矛盾しない任意の量で、本明細書に記載のインク中に存在していてよい。一部の例では、環化重合性モノマーは、合計で、インクの総質量に基づき、約70質量%まで、約60質量%まで、約50質量%まで、約40質量%まで、約30質量%まで、約20質量%まで、又は約10質量%までの量で、インク中に存在する。一部の例では、本明細書に記載のインクは、インクの総質量に基づき、約10~70質量%の環化重合性モノマーを含む。一部の実施形態では、インクは、インクの総質量に基づき、約10~60質量%、10~50質量%、10~40質量%、10~30質量%、10~20質量%、20~70質量%、20~60質量%、20~50質量%、20~45質量%、20~40質量%、20~35質量%、又は20~30質量%の環化重合性モノマーを含む。
【0029】
次に、本明細書に記載のインクの他の具体的成分について検討するとして、本明細書に記載のインクは、1つ以上のオリゴマー硬化性材料及び/又は1つ以上の追加のモノマー硬化性材料(追加のモノマー硬化性材料は、上記の環化重合性モノマーに対して「追加」のものである)をさらに含み得る。硬化性材料は、本明細書における参照目的のために、1つ以上の硬化性又は重合性部分を有する化学種を含む。「重合性部分」は、本明細書における参照目的のために、3Dプリント物品又は物体を提供するために重合又は硬化させることができる部分を含む。そのような重合又は硬化は、本開示の目的と矛盾しないあらゆる様式で実施することができる。一部の実施形態では、例えば、重合又は硬化は、重合又は架橋反応を開始するのに十分なエネルギーを有する電磁放射線を重合性又は硬化性材料に照射することを含む。例えば、一部の例では、紫外線(UV)放射を利用することができる。従って、一部の例では、重合性部分は、UV重合性部分など、光重合性又は光硬化性部分を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の硬化性材料は、約300nm~約400nm、又は約320nm~約380nmの範囲にわたる波長で光重合性又は光硬化性である。或いは、他の例では、硬化性材料は、電磁スペクトルの可視波長において光重合性である。
【0030】
さらに、重合反応は、一部の例では、エチレン性不飽和点を含めて、不飽和点間における反応のような、フリーラジカル重合反応を含む。他の重合反応を用いてもよい。当業者に理解されるように、本明細書に記載の硬化性材料を重合又は硬化させるのに使用される重合反応は、互いに反応して1つ以上の共有結合を形成できる1つ以上の官能基又は部分を有する複数の「モノマー」又は化学種の反応を含み得る。
【0031】
本明細書に記載の硬化性材料の重合性部分の1つの非限定的な例は、ビニル部分、アリル部分、又は(メタ)アクリレート部分などのエチレン性不飽和部分であり、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレート、或いはその混合物又は組合せを含む。
【0032】
本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料中に含まれる「オリゴマー」種は、それ自体ポリマー又はオリゴマーであり、比較的高分子量、又は比較的高粘度を有する。これら種も、本明細書に記載の1つ以上の不飽和点を介するなど、追加の重合を受けることができる。本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料中のオリゴマー種の集団は、(例えば、集団内の、単一性のない分子量分布を有するウレタンアクリレートの特定の塊によって、或いはエチレングリコール単位の分布及び/又はエトキシ単位の分布を有するエトキシル化ポリエチレングリコールの特定の塊によって示され得るような)その集団を通して変動する分子構造及び/又は式を有し得る。本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料の質量平均分子量は、一般的に、約400~10,000、約600~10,000、又は約500~7,000の範囲内であってよい。
【0033】
「オリゴマー」種とは対照的に、本明細書に記載の追加のモノマー材料中に含まれる「モノマー(単量体)」種は、それ自体はポリマー又はオリゴマーではなく、比較的低分子量、又は比較的低粘度を有する。追加のモノマー硬化性材料中に含まれる「モノマー」種は、(例えば、エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレートの特定の塊(a specified mass)、又は上記の硬化性モノマーの特定の塊によって示され得るような)その集団を通して一貫した又は明確に規定された分子構造及び/又は式を有し得る。加えて、一部の実施形態では、本明細書に記載の追加のモノマー硬化性材料は、ASTM D2983に準拠して測定した場合に、25℃で500センチポアズ(cP)以下の粘度を有するが、「オリゴマー」硬化性材料は、ASTM D2983に準拠して測定した場合に、25℃で1000cP以上の粘度を有する。
【0034】
本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料又は追加のモノマー硬化性材料の重合性部分の1つの非限定的な例は、ビニル部分、アリル部分、又は(メタ)アクリレート部分などのエチレン性不飽和部分であり、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレート、或いはそれらの混合物又は組合せを含む。
【0035】
加えて、本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料及び追加のモノマー硬化性材料は、単官能性、二官能性、三官能性、四官能性、五官能性、又はそれ以上の官能性の硬化性種を含み得る。本明細書における参照目的のために、「単官能性」硬化性種は、1つの硬化性又は重合性部分を有する化学種を含む。同様に、「二官能性」硬化性種は、2つの硬化性又は重合性部分を有する化学種を含み;「三官能性」硬化性種は、3つの硬化性又は重合性部分を有する化学種を含み;「四官能性」硬化性種は、4つの硬化性又は重合性部分を有する化学種を含み;「五官能性」硬化性種は、5つの硬化性又は重合性部分を有する化学種を含む。従って、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクの単官能性硬化性材料はモノ(メタ)アクリレートを含み、本明細書に記載のインクの二官能性硬化性材料はジ(メタ)アクリレートを含み、本明細書に記載のインクの三官能性硬化性材料はトリ(メタ)アクリレートを含み、本明細書に記載のインクの四官能性硬化性材料はテトラ(メタ)アクリレートを含み、本明細書に記載のインクの五官能性硬化性材料はペンタ(メタ)アクリレートを含む。他の単官能性、二官能性、三官能性、四官能性、及び五官能性の硬化性材料も使用することができる。
【0036】
さらには、単官能性、二官能性、三官能性、四官能性、及び五官能性の硬化性材料は、一部の例では、比較的低分子量の種(すなわちモノマー種)、又は比較的高分子量の種(すなわちオリゴマー種)を含んでいてよい。
【0037】
一般的に、本開示の目的と矛盾しないあらゆるオリゴマー硬化性材料を、本明細書に記載のインクにおいて使用してよい。一部の例では、例えば、オリゴマー硬化性材料は、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを含む。さらに、一部の実施形態では、本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料は、脂肪族ポリエステルウレタンアクリレートオリゴマー及び/又はアミノアクリレートオリゴマー樹脂(EBECRYL7100など)を含む。一部の例では、本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料は、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート又はポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートを含む。一部の実施形態では、オリゴマー硬化性材料は、単官能性脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートを含む。さらには、一部の例では、オリゴマー硬化性材料は、ポリエチレングリコール、エトキシル化又はプロポキシル化ネオペンチルグリコール、エトキシル化又はプロポキシル化ビスフェノールA、エトキシル化又はプロポキシル化ビスフェノールF、エトキシル化又はプロポキシル化ビスフェノールS、エトキシル化又はプロポキシル化1,1,1-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、或いはエトキシル化又はプロポキシル化グリセロールトリ(メタ)アクリレートを含めて、脂肪族、脂環式又は芳香族ジオールのジアクリレート及び/又はジメタクリレートエステルを含む。
【0038】
さらには、本開示の目的に合致するオリゴマー硬化性材料は、一部の例では、例えば式(II)に従う環化重合性モノマーなどの本明細書に記載されているような環化重合性モノマーに由来する1つ以上の構造単位を含むか又はそれから形成されたポリマー又はオリゴマーを含まない。同様に、一部の例では、オリゴマー硬化性材料は、本明細書に記載されているような環化重合性モノマー(例えば式(II)に従う環化重合性モノマー)並びに(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、不飽和モノカルボン酸、並びに芳香族ビニル及びN-置換マレイミドからなる群より選択される少なくとも1つのモノマーに由来する構造単位を含むポリマー又はオリゴマーを含まない。寧ろ、一部の好ましい実施形態では、本明細書に記載のインクは、本明細書に記載の環化重合性モノマー(例えば、式(II)に従う環化重合性モノマー)を、硬化前のモノマー硬化性材料としてのみ含む。
【0039】
本明細書に記載の一部の実施形態で有用である市販のオリゴマー硬化性材料のいくつかの非限定的な例として、以下のものが挙げられる:SARTOMER社がSR 611という商品名で市販している、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート;RAHN USA社がGENOMER 1122という商品名で市販している、単官能性ウレタンアクリレート;ALLNEX社がEBECRYL 8402という商品名で市販している、脂肪族ウレタンジアクリレート;DYMAX社がBR-952という商品名で市販している、多官能性アクリレートオリゴマー;DYMAX社がBR-371Sという商品名で市販している、脂肪族ポリエーテルウレタンアクリレート;及びDYMAX社がBR-541MBという商品名で市販している、脂肪族ポリエーテルウレタンメタクリレート。他の市販のオリゴマー硬化性材料も使用できる。
【0040】
本明細書に記載のインクで使用するのに適したウレタン(メタ)アクリレートは、一部の例では、典型的には、ヒドロキシル末端化ウレタンをアクリル酸又はメタクリル酸と反応させて対応するウレタン(メタ)アクリレートを得るか、又はイソシアネート末端化プレポリマーをヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレートと反応させてウレタン(メタ)アクリレートを得ることによる、公知の方法で調製することができる。適切なプロセスは、とりわけ、欧州特許出願公開第114982号及び同第133908号に開示されている。そのような(メタ)アクリレートオリゴマーの質量平均分子量は、一部の例では、約400~10,000、又は約500~7,000であってよい。ウレタン(メタ)アクリレートはまた、SARTOMER社からCN980、CN981、CN975及びCN2901という製品名で、或いはBOMAR Specialties社からBR-741という製品名で市販されている。本明細書に記載の一部の実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ASTM D2983と一致する様式で測定した場合に、約50℃で約140,000センチポアズ(cP)~約160,000cP、又は、約50℃で約125,000cP~約175,000cPの範囲の粘度を有する。一部の例では、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ASTM D2983と一致する様式で測定した場合に、約50℃で約100,000cP~約200,000cP、又は、約50℃で約10,000cP~約300,000cPの範囲の粘度を有する。
【0041】
オリゴマー硬化性材料は、本開示の目的と矛盾しない任意の量で本明細書に記載のインク中に存在していてよい。一部の例では、オリゴマー硬化性材料は、合計で、インクの総質量に基づき、約80質量%まで、約70質量%まで、約60質量%まで、約50質量%まで、約40質量%まで、約30質量%まで、又は約20質量%までの量で、インク中に存在する。一部の例では、本明細書に記載のインクは、インクの総質量に基づき、約10~80質量%のオリゴマー硬化性材料を含む。一部の実施形態では、インクは、インクの総質量に基づき、約10~70質量%、10~60質量%、10~50質量%、10~40質量%、10~30質量%、10~20質量%、15~80質量%、15~70質量%、15~40質量%、15~30質量%、20~80質量%、20~70質量%、20~60質量%、20~50質量%、20~40質量%、30~80質量%、30~70質量%、30~60質量%、30~50質量%、40~80質量%、40~70質量%、又は40~60質量%のオリゴマー硬化性材料を含む。
【0042】
加えて、本開示の目的と矛盾しないあらゆるモノマー硬化性材料を、本明細書に記載の追加のモノマー硬化性材料として使用してよい。一部の例では、本明細書に記載のインクの追加のモノマー硬化性材料は、例えば1つ以上の単官能性(メタ)アクリレート、二官能性(メタ)アクリレート、三官能性(メタ)アクリレート、四官能性(メタ)アクリレート及び/又は五官能性(メタ)アクリレートといった、1種又は複数種の(メタ)アクリレートを含む。一部の実施形態では、例えば、モノマー硬化性材料は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-又は3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、シクロへキシルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、イソデシルアクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ラウリルメタクリレート、又はそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、モノマー硬化性材料は、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、及びシクロヘキサンジメタノールジアクリレートの内の1つ以上を含む。加えて、一部の例では、モノマー硬化性材料は、1,3-又は1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン又はビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、ヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はビスフェノールSを含めて、脂肪族、脂環式又は芳香族ジオールのジアクリレート及び/又はジメタクリレートエステルを含む。本明細書に記載のモノマー硬化性材料はまた、1,1-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、及び/又はビス(トリメチロールプロパン)テトラ(メタ)アクリレートを含んでいてよい。さらに、一部の例では、モノマー硬化性材料は、エトキシル化又はプロポキシル化ネオペンチルグリコール、エトキシル化又はプロポキシル化ビスフェノールA、エトキシル化又はプロポキシル化ビスフェノールF、エトキシル化又はプロポキシル化ビスフェノールS、エトキシル化又はプロポキシル化1,1,1-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、又はエトキシル化又はプロポキシル化グリセロールトリ(メタ)アクリレートなどの、エトキシル化又はプロポキシル化種を含んでいてよい。
【0043】
本明細書に記載の一部の実施形態で追加のモノマー硬化性材料として有用である市販のモノマー硬化性材料の追加の非限定的な例として以下のものが挙げられる:SARTOMER社がSR 506という商品名で市販している、イソボルニルアクリレート(IBOA);SARTOMER社がSR 423Aという商品名で市販している、イソボルニルメタクリレート;SARTOMER社がSR 272という商品名で市販している、トリエチレングリコールジアクリレート;SARTOMER社がSR 205という商品名で市販している、トリエチレングリコールジメタクリレート;SARTOMER社がSR 833Sという商品名で市販している、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;SARTOMER社がSR 368という商品名で市販している、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;SARTOMER社がSR 339という商品名で市販している、2-フェノキシエチルアクリレート;SARTOMER社がSR 349という商品名で市販している、エトキシル化(3モル)ビスフェノールAジアクリレート;RAHN USA社がGENOMER 1120という商品名で市販している、環式単官能アクリレート;及びSARTOMER社がSR 399LVという商品名で市販している、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート。他の市販のモノマー硬化性材料も使用できる。
【0044】
追加のモノマー硬化性材料は、本開示の目的と矛盾しない任意の量で本明細書に記載のインク中に存在していてよい。一部の例では、モノマー硬化性材料は、合計で、インクの総質量に基づき、約80質量%まで、約70質量%まで、約60質量%まで、又は約50質量%までの量で存在する。一部の例では、本明細書に記載のインクは、インクの総質量に基づき、約0~80質量%の追加のモノマー硬化性材料を含む。一部の実施形態では、インクは、インクの総質量に基づき、約0~75質量%、0~70質量%、0~60質量%、0~50質量%、0~40質量%、0~35質量%、0~30質量%、0~25質量%、0~20質量%、0~15質量%、0~10質量%、又は0~5質量%の追加のモノマー硬化性材料を含む。
【0045】
次に、本明細書に記載インクの別の成分について検討するとして、本明細書に記載のインクは、少なくとも1つの光開始剤をさらに含んでいてよい。本開示の目的と矛盾しないあらゆる光開始剤を用いてよい。一部の例では、光開始剤は、フリーラジカルを生成するために、約250nmと約400nmの間、又は約300nmと約385nmの間の光を吸収するように動作可能な、α開裂型(単分子分解プロセス)の光開始剤又は水素引き抜き型の光増感剤-第3級アミン共力剤を含む。α開裂型の光開始剤の例としては、Irgacure 184(CAS 947-19-3)、Irgacure 369(CAS 119313-12-1)、及びIrgacure 819(CAS 162881-26-7)がある。光増感剤-アミンの組合せの例としては、Darocur BP(CAS 119-61-9)のジエチルアミノエチルメタクリレートとの組合せがある。
【0046】
加えて、一部の例では、光開始剤として、ベンゾイン、ベンゾインエーテル(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルなど)、ベンゾインフェニルエーテル及びベンゾインアセテートを含む、ベンゾイン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシアセトフェノン及び1,1-ジクロロアセトフェノンを含む、アセトフェノン類;ベンジル;ベンジルケタール(例えば、ベンジルジメチルケタール及びベンジルジエチルケタールなど);2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン及び2-アミルアントラキノンを含む、アントラキノン類;トリフェニルホスフィン;ベンゾイルホスフィンオキシド(例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin TPO)など);ベンゾフェノン及び4,4’-ビス(N,N’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;チオキサントン及びキサントン;アクリジン誘導体;フェナジン誘導体;キノキサリン誘導体又は1-フェニル-1,2-プロパンジオン;2-O-ベンゾイルオキシム;1-アミノフェニルケトン;又は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル1-ヒドロキシイソプロピルケトン、及び4-イソプロピルフェニル1-ヒドロキシイソプロピルケトンなどの1-ヒドロキシフェニルケトン類が挙げられる。
【0047】
光開始剤は、アセトフェノン、2,2-ジアルコキシベンゾフェノン、及び1-ヒドロキシフェニルケトン(例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン又は2-ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン(=2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルアセトフェノン)など)を含めて、HeCdレーザ放射線源との使用に機能できる光開始剤も含み得る。加えて、一部の例では、光開始剤は、ベンジルジメチルケタールなどのベンジルケタール類を含めて、Arレーザ放射線源との使用に機能できる光開始剤を含む。一部の実施形態では、適切な光開始剤は、α-ヒドロキシフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール又は2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、或いはそれらの混合物を含む。
【0048】
本明細書に記載のインクに含めることができる別のクラスの光開始剤として、化学線を吸収して重合開始のためのフリーラジカルを生成することができるイオン性染料-対イオン化合物が挙げられる。いくつかのイオン性染料-対イオン化合物、及びその動作モードが、欧州特許出願公開第0223587号、並びに米国特許第4,751,102号、同第4,772,530号、及び同第4,772,541号に開示されている。
【0049】
光開始剤は、本開示の目的と矛盾しない任意の量で本明細書に記載のインク中に存在し得る。一部の実施形態では、光開始剤は、インクの総質量に基づき、約5質量%までの量でインク中に存在する。一部の例では、光開始剤は、約0.1質量%~約5質量%の範囲の量で存在する。
【0050】
加えて、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、1つ以上の光増感剤をさらに含む。一般的に、そのような増感剤は、存在し得る1つ以上の光開始剤の有効性を高めるためにインクに加えることができる。一部の例では、増感剤は、イソプロピルチオキサントン(ITX)又は2-クロロチオキサントン(CTX)を含む。
【0051】
増感剤は、本開示の目的と矛盾しない任意の量でインク中に存在し得る。一部の実施形態では、増感剤は、インクの総質量に基づき、約0.1質量%~約2質量%、又は約0.5質量%~約1質量%の範囲の量で存在する。
【0052】
次に、本明細書に記載インクの別の成分について検討するとして、本明細書に記載のインクは、少なくとも1つの着色剤も含み得る。本明細書に記載のインクの着色剤は、粒状顔料などの粒状着色剤、又は分子染料などの分子着色剤であってよい。本開示の目的と矛盾しないあらゆるそのような粒状又は分子着色剤を使用してよい。一部の例では、例えば、インクの着色剤は、TiO及び/又はZnOなどの無機顔料を含む。一部の実施形態では、インクの着色剤は、RGB、sRGB、CMY、CMYK、L、又はPantone(登録商標)カラライゼーションスキームにおいて使用するための着色剤を含む。一部の例では、本明細書に記載のインクの1つ以上の着色剤は白色を呈する。他の例では、着色剤は黒色を呈する。本明細書に記載の一部の実施形態での使用に適した着色剤のいくつかの非限定的な例として、SUN UVDJ107、SUN UVDJ150、SUN UVDJ322、SUN UVDJ350、SUN UVDJ354、RJA D3010-FX-Y150、RJA D3410-FX-Y150、RJA D3410-FX-K、PENN COLOR 9B898、及びPENN COLOR 9B989、DNS-GKC-103W、及びOb White Dyeが挙げられる。さらには、一部の例では、本明細書に記載の粒状着色剤は、約5μm未満、又は約1μm未満の平均粒径を有する。一部の例では、本明細書に記載の粒状着色剤は、約500nm未満の平均粒径、例えば、約400nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、又は約150nm未満の平均粒径を有する。一部の例では、粒状着色剤は、約50~5000nm、約50~1000nm、又は約50~500nmの平均粒径を有する。
【0053】
着色剤は、本開示の目的と矛盾しない任意の量で本明細書に記載のインク中に存在し得る。一部の例では、着色剤は、インクの総質量に基づき、約2質量%までの量、或いは、約0.005~2質量%、0.01~2質量%、0.01~1.5質量%、0.01~1質量%、0.01~0.5質量%、0.1~2質量%、0.1~1質量%、0.1~0.5質量%、又は0.5~1.5質量%の量で、インク中に存在する。
【0054】
さらには、本明細書に記載のインクは、一部の実施形態では、1つ以上の他の添加剤をさらに含む。一部の例では、例えば、本明細書に記載のインクは、1つ以上の重合禁止剤及び/又は安定剤をさらに含む。重合禁止剤は、組成物に付加的な熱的安定性をもたらすためにインクに添加され得る。本開示の目的と矛盾しないあらゆる重合禁止剤を用いてよい。さらには、重合禁止剤は、重合の速度を遅延又は低下させる、及び/又は、重合禁止剤が消費されるまでのある期間又は「誘導時間」の間、重合が生じるのを防ぐことができる。さらに、一部の例では、本明細書に記載の重合禁止剤は、「付加型」の禁止剤である。本明細書に記載の禁止剤はまた、「連鎖移動型」の禁止剤であってもよい。一部の例では、適切な重合禁止剤はメトキシヒドロキノン(MEHQ)を含む。
【0055】
安定剤は、一部の実施形態では、1つ以上の酸化防止剤を含む。安定剤は、本開示の目的と矛盾しないあらゆる酸化防止剤を含み得る。一部の例では、適切な酸化防止剤として、本明細書に記載の一部の実施形態において重合禁止剤としても使用できる、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)などの様々なアリール化合物が挙げられる。より一般的には、単一種が安定剤と重合禁止剤の両方の役割を果たし得る。一部の例では、複数の禁止剤及び/又は安定剤を使用することも可能であり、その際、異なる禁止剤及び/又は安定剤が、異なる効果をもたらす及び/又は相乗的に機能する。
【0056】
重合禁止剤及び/又は安定剤は、本開示の目的と矛盾しない任意の量でインク中に存在し得る。一部の実施形態では、重合禁止剤は、約0.01質量%~約2質量%、又は約0.05質量%~約1質量%の範囲の量で存在する。同様に、一部の例では、安定剤は、インクの総質量に基づき、約0.1質量%~約5質量%、約0.5質量%~約4質量%、又は約1質量%~約3質量%の量でインク中に存在する。
【0057】
一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは粘度調整剤(viscosity modifying agent)をさらに含み得る。粘度調整剤の非限定的な例として、飽和脂肪酸又は飽和脂肪酸の組合せ、或いは植物油などの油が挙げられる。本明細書に記載のインクは、5質量%まで、3質量%まで、1質量%まで、0.5質量%まで、又は0.1質量%までの、本発明の目的と矛盾しない粘度調整剤を含み得る。
【0058】
同様に、一部の例では、本明細書に記載のインクは、非硬化性ポリマー又はオリゴマーを含み得る。そのような「非硬化性(non-curable)」ポリマー又はオリゴマーは、エチレン性不飽和部分又は他の光硬化性部分などの、上述した重合性部分を排除する又は含まなくてよい。もちろん、そのような「非硬化性」ポリマー又はオリゴマーは、(非硬化性ポリマー又はオリゴマーの形成前に重合性部分を含まないのではなく)非硬化性ポリマー又はオリゴマーの形成後に、ポリマー又はオリゴマー骨格(及び/又はポリマー又はオリゴマーのペンダント基)中に重合性部分を含まないことを理解されたい。本明細書に記載の非硬化性ポリマー又はオリゴマーの非限定的な例として、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリジエン、ポリアミド、ポリエステル、及びポリアクリロニトリルが挙げられる。加えて、一部の例では、非硬化性ポリマー又はオリゴマーは、ポリオレフィンコポリマー(例えば、ポリプロピレンコポリマー、若しくはPPC)、又はポリジエン-ポリアクリロニトリルコポリマー(例えば、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー)などの、コポリマーを含む。
【0059】
本明細書に記載のインクは、様々な所望の特性を示し得る。例えば、本明細書に記載のインクは、本開示の目的と矛盾しない任意の凝固点、融点、及び/又は他の相転移温度を有していてよい。一部の例では、インクは、相変化インクと共に使用するように設計された3Dプリントシステムを含めて、一部の3Dプリントシステムにおいて使用される温度と整合する凝固点及び融点を有する。一部の実施形態では、インクの凝固点は約40℃超である。一部の例では、例えば、インクは、約45℃~約55℃又は約50℃~約80℃の範囲の温度を中心とした凝固点を有する。一部の例では、インクは、約40℃未満又は約30℃未満の凝固点を有する。
【0060】
さらには、本明細書に記載の一部の実施形態では、インクは、急な凝固点又は他の相転移を示す。一部の例では、例えば、インクは、約1~10℃、約1~8℃、又は約1~5℃の範囲のような、狭い温度範囲で凝固する。一部の実施形態では、急な凝固点を有するインクは、X±2.5℃の温度範囲で凝固し、ここで、Xは、凝固点の中心となる温度である(例えば、X=65℃)。
【0061】
加えて、本明細書に記載のインクは、一部の例では、一部の3Dプリントシステムにおいて直面する噴射温度で流体である。さらには、一部の実施形態では、インクは、三次元的にプリントされた物品又は物体の作製中に、表面にひとたび堆積されると固化する。或いは、他の例では、インクは、表面への堆積時には実質的に流体のままである。インクの固化は、一部の実施形態では、インク又はインクの成分の相変化を通して生じる。相変化は、液体から固体への相変化又は液体から半固体への相変化を含み得る。さらに、一部の例では、インクの固化には、低粘度状態から高粘度状態への粘度の上昇など、インクの粘度の上昇が含まれる。インクの固化は、インクの硬化によって生じてもよい。
【0062】
加えて、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、未硬化のときに、MJP又はSLAシステムなどの1つ以上の3Dプリントシステムの要件及びパラメータに整合する粘度プロファイルを有する。例えば、一部の例では、本明細書に記載のインクは、30℃で、1600センチポアズ(cP)以下、1200cP以下、又は800cP以下の動的粘度を有する。好ましい実施形態では、本明細書に記載のインクは、ASTM D2983に準拠して測定した場合に(例えば、ブルックフィールドモデルDV-II+粘度計を使用)、30℃で500cp以下の動的粘度を有する。一部の例では、本明細書に記載のインクは、未硬化のときに、ASTM D2983に準拠して測定した場合に、30℃で、約200~1600cP、約200~1200cP、約200~800cP、約200~500cP、又は約200~400cPの動的粘度を示す。
【0063】
本明細書に記載のインクは、硬化状態において、上記のものに加えて、様々な所望の特性を示し得る。「硬化」状態のインクは、本明細書で用いられる場合には、少なくとも部分的に硬化されている、すなわち少なくとも部分的に重合及び/又は架橋されている硬化性材料又は重合性成分を含むインクを含む。例えば、一部の例では、硬化したインクは、少なくとも約70%が重合又は架橋されている、或いは少なくとも約80%が重合又は架橋されている。一部の実施形態では、硬化したインクは、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%が重合又は架橋されている。一部の例では、硬化したインクは、約80%と約99%の間が重合又は架橋されている。
【0064】
一部の例では、本明細書に記載のインクは、硬化したときに、ASTM D638に準拠して測定した場合に、約10~70%、10~60%、約15~50%、又は約20~50%の破断伸びを有する。さらに、本明細書に記載の硬化したインクは、一部の例では、ASTM D638に準拠して測定した場合に、約40~70MPa、約40~60MPa、又は約45~55MPaの引張強度を有し得る。加えて、本明細書に記載の硬化したインクは、一部の実施形態では、ASTM D638に準拠して測定した場合に、約1800~2100MPa、約1900~2100MPa、又は約1950~2050MPaの引張弾性率を有し得る。また、本明細書に記載の硬化したインクは、ASTM D256に準拠して測定した場合に、1~4ft・lb/in(約53~214J/m)(ノッチ付き)、1~3ft・lb/in(約53~160J/m)(ノッチ付き)、又は1~2ft・lb/in(約53~107J/m)(ノッチ付き)の耐衝撃性(衝撃強さ)を有し得る。最後に、一部の例では、本明細書に記載の硬化したインクは、ASTM D790に準拠して測定した場合に、2000~2500MPa、2100~2400MPa、又は2100~2200MPaの曲げ弾性率を有する。
【0065】
さらには、一部の例では、本明細書に記載のインクは、硬化したときに、複数の上記の特性を示し得る。例えば、一部の実施形態では、インクは、硬化したときに、ASTM D638に準拠して測定した場合に、約40~70MPaの引張強度;ASTM D256に準拠して測定した場合に、1~4ft・lb/in(約53~214J/m)の耐衝撃性;及びASTM D638に準拠して測定した場合に、約10~70%の破断伸びを有する。
【0066】
本明細書に記載のインクは、本開示の目的と矛盾しないあらゆる様式で製造することができる。一部の実施形態では、例えば、本明細書に記載のインクの調製方法は、インクの成分を混合する工程、混合物を溶融する工程、及び溶融混合物を濾過する工程を含む。混合物を溶融する工程は、一部の例では、約75℃、又は約75℃~約85℃の範囲の温度で行われる。一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、インクの全ての成分を反応容器に入れ、得られた混合物を攪拌しながら約75℃~約85℃の範囲の温度に加熱することによって製造される。加熱及び攪拌は、混合物が実質的に均質化された溶融状態に達するまで継続される。通常、噴射又は吐出或いは他のプリントプロセスと干渉し得るあらゆる大きく望ましくない粒子を除去するために、溶融混合物を流動可能な状態の間に濾過してよい。その後、濾過した混合物を周囲温度まで冷却し、3Dプリントシステムで使用する準備が整うまで保管してよい。
【0067】
II.3D物品をプリントする方法
別の態様では、3D物品又は物体をプリントする方法を本明細書に記載する。本明細書に記載の3D物品又は物体をプリントする方法は、層ごとの様式で、本明細書に記載のインクの複数の層から3D物品を形成することを含み得る。上記セクションIに記載のいずれのインクを用いてもよい。例えば、一部の例では、インクは、インクの総質量に基づき、10~70又は20~40質量%の上記セクションIに記載の環化重合性モノマーを含む。加えて、一部の実施形態では、インクは、30℃で1,600cp以下又は500cp以下の動的粘度を有する。さらに、3D物品のコンピュータ可読形式の画像に従って、インクの層を堆積させることができる。一部の実施形態では、予め選択されたコンピュータ支援設計(CAD)パラメータに従って、インクを堆積させる。さらには、一部の例では、本明細書に記載のインクの1つ以上の層は、約10μm~約100μm、約10μm~約80μm、約10μm~約50μm、約20μm~約100μm、約20μm~約80μm、又は約20μm~約40μmの厚さを有する。他の厚さも可能である。
【0068】
加えて、本明細書に記載の3D物品をプリントする方法には、例えば、MJP又はSLAの3Dプリント方法が含まれ得ると解されたい。例えば、一部の例では、3D物品をプリントするMJP法は、3Dプリントシステムの造形パッドなどの基体上に、流体状態の本明細書に記載のインクの層を選択的に堆積させることを含む。加えて、一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、1つ以上のインクの層のうちの少なくとも1つの層を支持材料で支持することをさらに含む。本開示の目的と矛盾しないいずれの支持材料も使用できる。
【0069】
本明細書に記載の方法は、インクの層を硬化させる工程を含んでいてよい。例えば、一部の例では、本明細書に記載の3D物品をプリントする方法は、インクを硬化させるのに十分な波長及び強さの電磁放射線にインクを曝すことをさらに含み、硬化は、インクの1つ以上の成分の1つ以上の重合性部分又は官能基を重合させることを含み得る。一部の例では、堆積されたインクの層を、別の又は隣接するインクの層の堆積の前に硬化させる。加えて、堆積されたインクの1つ以上の層を硬化させる工程は、一部の実施形態では、その1つ以上の層を、例えば紫外(UV)線、可視光線、又は赤外線などの電磁放射線に曝すことにより行われる。
【0070】
「材料堆積」法(MJPなど)又は「バット重合」法(SLAなど)を含めて、様々な方法に関するさらなる詳細を以下に提供する。
【0071】
A.材料堆積法
材料堆積法では、本明細書に記載のインクの1つ以上の層を基体上に選択的に堆積させ、さらに硬化させる。インクの硬化は、インクの1つの層、各層、いくつかの層、又は全ての層の選択的堆積の後に生じ得る。
【0072】
一部の例では、本明細書に記載のインクを、3Dプリントシステムの造形パッドなどの基体上に、流体状態で選択的に堆積させる。選択的堆積には、例えば、事前に選択されたCADパラメータに従ってインクを堆積させることが含まれ得る。例えば、一部の実施形態では、プリントすべき所望の3D物品に対応するCADファイルの図面を作製し、十分な数の水平スライスにスライスする。その後、CADファイルの図面の水平スライスに従って、層ごとにインクを選択的に堆積させて所望の3D物品をプリントする。「十分な」数の水平スライスは、例えば正確かつ精密にそれを製造するために、所望の3D物品をうまくプリントするのに必要な数である。
【0073】
さらに、一部の実施形態では、事前に選択された量の本明細書に記載のインクを、適切な温度に加熱し、適切なインクジェットプリンタの1つ又は複数のプリントヘッドを通して噴射させて、プリントチャンバ内のプリントパッド上に層を形成する。一部の例では、事前に選択されたCADパラメータに従ってインクの各層を堆積させる。インクを堆積させるための適切なプリントヘッドは、一部の実施形態では、圧電プリントヘッドである。本明細書に記載のインク及び支持材料の堆積に適したさらなるプリントヘッドは、様々なインクジェットプリント装置製造メーカーから市販されている。例えば、Xerox、Hewlett Packard、又はRicohのプリントヘッドを一部の例で使用し得る。
【0074】
加えて、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、堆積した際に実質的に流体のままである。或いは、他の例では、インクは、堆積してすぐに相変化を示す、及び/又は、堆積してすぐに固化する。さらには、一部の例では、プリント環境の温度を、インクの噴射された液滴が受容面と接触すると固化するように制御し得る。他の実施形態では、インクの噴射された液滴は、受容面と接触しても固化せず、実質的に流体状態のままである。加えて、一部の例では、各層が堆積された後、堆積された材料は、次の層の堆積前に、電磁放射線(例えば、UV線、可視光線又は赤外線)を用いて平坦化及び硬化される。任意選択で、平坦化及び硬化の前に、いくつかの層を堆積させてもよく、或いは、多数の層を堆積及び硬化させた後に、1つ以上の層を堆積させ、その後硬化させずに平坦化してもよい。平坦化により、分配された材料を平らにして過剰な材料を除去し、プリンタの支持プラットフォーム上に均一に滑らかな露出した面又は平坦な上向きの面を作り出すことによって、材料の硬化前に1つ以上の層の厚さを補正する。一部の実施形態では、平坦化は、1つ以上のプリント方向において逆回転し得るが、1つ以上の他のプリント方向においては逆回転しないローラなどの、ワイパ装置を用いて達成される。一部の例では、ワイパ装置は、ローラと、ローラから過剰の材料を除去するワイパとを備える。さらに、一部の例では、ワイパ装置は加熱される。硬化前の本明細書に記載の噴射されたインクの粘稠度は、一部の実施形態では、その形状を保持するのに十分であり、かつ平坦化装置からの過剰な粘性抵抗に曝されないことが望ましいことに留意されたい。
【0075】
さらには、支持材料は、使用する場合には、インクについて上述した様式に準拠する様式で堆積され得る。支持材料は、例えば、支持材料がインクの1つ以上の層に隣接又は連続するように、事前に選択されたCADパラメータに従って堆積され得る。支持材料の噴射された液滴は、一部の実施形態では、受容面と接触すると固化又は凝固する。一部の例では、堆積された支持材料もまた平坦化、硬化、又は平坦化及び硬化を受ける。本開示の目的と矛盾しないあらゆる支持材料を使用することができる。
【0076】
インク及び支持材料の層状の堆積を、3D物品が形成されるまで繰り返してよい。一部の実施形態では、3D物品をプリントする方法は、インクから支持材料を除去する工程をさらに含む。
【0077】
インクの硬化は、1つのインクの層、各インクの層、いくつかのインクの層、又は所望の3D物品をプリントするのに必要な全てのインクの層の選択的堆積の後に生じ得る。一部の実施形態では、堆積されたインクの部分的硬化は、1つのインクの層、各インクの層、いくつかのインクの層、又は所望の3D物品をプリントするのに必要な全てのインクの層の選択的堆積の後に行われる。「部分的に硬化された」インクは、本明細書における参照目的のために、更なる硬化を受けることができるものである。例えば、部分的に硬化されたインクは、約30%まで重合又は架橋されている、或いは約50%まで重合又は架橋されている。一部の実施形態では、部分的に硬化されたインクは、約60%まで、約70%まで、約80%まで、約90%まで、又は約95%まで重合又は架橋されている。
【0078】
一部の実施形態では、堆積されたインクの部分的硬化は、電磁放射線源を用いてインクに照射する、又はインクを光硬化することを含み得る。例えば、UV線、可視光線、又は赤外線を放射する電磁放射線源など、本開示の目的と矛盾しないあらゆる電磁放射線源を使用することができる。例えば、一部の実施形態では、電磁放射線源は、例えばキセノン(Xe)アークランプなど、約300nm~約900nmの波長を有する光を放射するものであってよい。
【0079】
さらには、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクの部分的硬化は、(メタ)アクリレート重合を介して、環化重合性モノマーのアクリレート部分を重合させること及び/又はインクの1つ上の他の(メタ)アクリレート含有種を重合させることを含む。一部の例では、部分的硬化は主にそのような(メタ)アクリレート重合を含む。例えば、一部の例では、重合の50%超、60%超、又は70%超が、例えばインクのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分の環化重合などの他の重合経路を介するのではなく、アクリレート重合を介して生じる。所望の3D物品の構築中に実施される部分的硬化中に、(メタ)アクリレート重合経路以外の経路を介して一部の重合が生じても又は全く生じなくてもよい。
【0080】
さらに、一部の実施形態では、部分的硬化が行われた後に、後硬化が行われる。例えば、一部の例では、後硬化は、所望の3D物品を形成するのに必要な全てのインクの層を選択的に堆積させた後、全てのインクの層を部分的に硬化させた後、或いは前記の工程の両方を実施した後に、実施される。さらには、一部の実施形態では、後硬化は光硬化を含む。本開示の目的と矛盾しないあらゆる電磁放射線源を、本明細書に記載の後硬化工程に使用してよい。例えば、一部の実施形態では、電磁放射線源は、部分的硬化に使用される電磁放射線源よりも高いエネルギー、低いエネルギー、又はそれと同じエネルギーを有する光源であってよい。後硬化に用いられる電磁放射線源が部分的硬化に使用されるものよりも高いエネルギー(すなわち、より短い波長)を有する一部の例では、キセノン(Xe)アークランプを部分的硬化に使用することができ、水銀(Hg)ランプを後硬化に使用することができる。
【0081】
加えて、一部の例では、本明細書に記載のインクの堆積された層の後硬化は、インクの環化重合性モノマーのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分との環化重合を含む。一部の例では、後硬化は主にそのような環化重合を含む。例えば、一部の実施形態では、後硬化中の重合の50%超、60%超、又は70%超が、例えば(メタ)アクリレート重合を介するなどの他の経路によるものではなく、環化重合を介して生じる。後硬化中に、本明細書に記載の環化重合以外の経路を介して一部の重合が生じても又は全く生じなくてもよい。
【0082】
加えて、後重合の後に、一部の例では、堆積されたインクの層は、少なくとも約80%が重合又は架橋されている、或いは少なくとも約85%が重合又は架橋されている。一部の実施形態では、堆積されたインクの層は、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%が重合又は架橋される。一部の例では、堆積されたインクの層は、約80~100%、約80~99%、約80~95%、約85~100%、約85~99%、約85~95%、約90~100%、又は約90~99%が重合又は架橋される。
【0083】
B.バット重合法
SLA法などのバット重合法を用いて、本明細書に記載のインクから3D物品を形成することも可能である。従って、一部の例では、本明細書に記載の3D物品をプリントする方法は、本明細書に記載のインクを流体状態で容器内に保持する工程、及び容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、インクの流体層の少なくとも一部を固化し、それによって、3D物品の断面を画成する固化層を形成する工程を含む。加えて、本明細書に記載の方法は、インクの固化層を上昇又は降下させて、容器内の流体インクの表面に未固化インクの新しい又は第2の流体層を提供し、続いて、容器内のインクにエネルギーを再び選択的に印加し、インクの新しい又は第2の流体層の少なくとも一部を固化して、3D物品の第2の断面を画成する第2の固化層を形成する工程をさらに含み得る。さらに、インクを固化するためにエネルギーを印加することによって、3D物品の第1及び第2の断面を、z方向(又は、上記の上昇又は降下方向に対応する造形方向)に互いに結合又は接着させることができる。さらには、容器内のインクにエネルギーを選択的に印加する工程は、インクを硬化させるのに十分なエネルギーを有する電磁放射線を印加することを含み得る。一部の例では、電磁放射線は、300~900nmの平均波長を有し、他の実施形態では、電磁放射線は、300nm未満の平均波長を有する。一部の例では、硬化放射は、コンピュータ制御されたレーザ光線によって提供される。加えて、一部の例では、インクの固化層を上昇又は降下させる工程は、流体インクの容器内に配置された昇降プラットフォームを使用して行われる。本明細書に記載の方法はまた、昇降プラットフォームを上昇又は降下させることによってもたらされる流体インクの新しい層を平坦化する工程も含み得る。このような平坦化は、一部の例では、ワイパ又はローラによって行うことができる。
【0084】
3D物品を提供するために、前述のプロセスを所望の回数だけ繰り返してよいことをさらに理解されたい。例えば、一部の例では、このプロセスを「n」回繰り返すことができ、ここで、nは、約100,000まで、約50,000まで、約10,000まで、約5000まで、約1000まで、又は約500までであってよい。従って、一部の実施形態では、本明細書に記載の3D物品をプリントする方法は、容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、インクのn番目の流体層の少なくとも一部を固化し、それによって、3D物品のn番目の断面を画成するn番目の固化層を形成する工程、インクのn番目の固化層を上昇又は降下させて、容器内の流体インクの表面に、未固化インクの(n+1)番目の層を提供する工程、容器内のインクの(n+1)番目の層にエネルギーを選択的に印加して、インクの(n+1)番目の層の少なくとも一部を固化して、3D物品の(n+1)番目の断面を画成する(n+1)番目の固化層を形成する工程、インクの(n+1)番目の固化層を上昇又は降下させて、容器内の流体インクの表面に、未固化インクの(n+2)番目の層を提供する工程、及び、前述の工程の繰返しを続けて3D物品を形成する工程を含み得る。さらに、インクの層にエネルギーを選択的に印加する工程など、本明細書に記載の方法の1つ以上の工程を、コンピュータ可読フォーマットにある3D物品の画像に従って行うことができることを理解されたい。ステレオリソグラフィを使用する3Dプリントの一般的な方法は、特に、米国特許第5,904,889号及び同第6,558,606号にさらに記載されている。
【0085】
上述のプリントプロセスを行うことにより、高い特徴解像度を有する本明細書に記載のインクからプリントされた3D物品を提供することができる。本明細書での参照目的のために、物品の「特徴解像度(feature resolution)」とは、物品の制御可能な物理的特徴の最小寸法であり得る。物品の特徴解像度は、マイクロメートル(μm)などの距離の単位、又は、1インチ当たりのドット数(dpi)を単位として記載することができる。当業者に理解されるように、より高い特徴解像度は、より高いdpi値に相当し、またμmでのより短い距離に相当する。一部の例では、本明細書に記載のインクを堆積又は固化することによって形成される物品は、高温での解像度を含めて、約500μm以下、約200μm以下、約100μm以下、又は約50μm以下の特徴解像度を有し得る。一部の実施形態では、物品は、約50μmと約500μmの間、約50μmと約200μmの間、約50μmと約100μmの間、又は約100μmと約200μmの間の特徴解像度を有する。それに対応して、一部の例では、本明細書に記載の物品は、少なくとも約100dpi、少なくとも約200dpi、少なくとも約250dpi、少なくとも約400dpi、又は少なくとも約500dpiの特徴解像度を有する。一部の例では、物品の特徴解像度は、約100dpiと約600dpiの間、約100dpiと約250dpiの間、又は約200dpiと約600dpiの間である。
【0086】
上記のようなバット重合法において、インクは上記のセクションIIAで記載されたように部分的に硬化され得る。例えば、一部の実施形態では、容器内のインクにエネルギーを選択的に印加してインクの流体層の少なくとも一部を固化させる工程は、インクの流体層の少なくとも一部を部分的に硬化させることを含み得る。他の実施形態では、インクの流体層の少なくとも一部を部分的に硬化させることは、インクの第1の層を提供及び固化した後、インクの第2の層を提供又は固化する前又は後、或いは、インクの1つ、いくつか、又は全てのその後の層を提供又は固化する前又は後に、生じ得る。
【0087】
加えて、本明細書に記載のバット重合法の一部の実施形態では、部分的硬化の後、或いは所望の3D物品が形成された後に、上記のセクションIIAで記載したような後硬化が行われ得る。所望の3D物品は、例えば、CADファイルにおける設計に対応する物品であり得る。
【0088】
III.プリントされた3D物品
別の態様では、プリントされた3D物品を本明細書に記載する。一部の実施形態では、プリントされた3D物品は、本明細書に記載のインクから形成される。本明細書の上記セクションIに記載のいずれのインクを用いてもよい。例えば、一部の例では、インクは、上記のセクションIに記載のように、インクの総質量に基づき、10~70又は20~40質量%の環化重合性モノマーを含む。さらに、一部の実施形態では、インクは、硬化前に、30℃で1,600cp以下又は500cp以下の動的粘度を有する。さらには、一部の例では、本明細書に記載のプリントされた3D物品は、硬化したとき(例えば、後硬化したとき)に、射出成形した熱可塑性材料物品と同様の機械的特性を示し得る。例えば、そのようなプリントされた3D物品は、一部の例では、ASTM D638に準拠して測定した場合に、約10~70%、約10~60%、約15~50%、又は約20~50%の破断伸びを示し得る。さらに、本明細書に記載のプリントされた3D物品は、一部の例では、ASTM D638に準拠して測定した場合に、約40~70MPa、約40~60MPa、又は約45~55MPaの引張強度を有し得る。加えて、本明細書に記載のプリントされた3D物品は、一部の実施形態では、ASTM D638に準拠して測定した場合に、約1800~2100MPa、約1900~2100MPa、又は約1950~2050MPaの引張弾性率を有し得る。とりわけ、本明細書に記載のプリントされた3D物品は、ASTM D256に準拠して測定した場合に、1~4ft・lb/in(約53~214J/m)(ノッチ付き)、1~3ft・lb/in(約53~160J/m)(ノッチ付き)、又は1~2ft・lb/in(約53~107J/m)(ノッチ付き)の耐衝撃性を有し得る。最後に、本明細書に記載のプリントされた3D物品は、ASTM D790に準拠して測定した場合に、2000~2500MPa、2100~2400MPa、又は2100~2200MPaの曲げ弾性率を有し得る。
【0089】
本明細書に記載の一部の実施形態を、以下の非限定的な実施例でさらに説明する。
【実施例
【0090】
本明細書に記載の一部の実施形態に従うインクを以下のように調製した。特に、様々なインクを調製するために、表Iの成分を反応容器内で混合した。表Iにおける量は、インクの総質量に基づき、特定されるインクの各成分の質量%を示す。各インクに関して、適切な混合物を攪拌しながら約75~85℃の温度に加熱した。混合物が実質的に均質化された溶融状態に達するまで加熱及び攪拌を継続した。溶融混合物を濾過した。次に、濾過した混合物を周囲温度まで冷却させた。インク1及び比較インク1の30℃での粘度をASTM D2983に準拠して測定し、結果を下記の表IIに含める。
【表1】
【0091】
上記の表Iにおいて、インク1、2、3、及び4のモノマー硬化性材料は、上記の式(II)の構造を有する環化重合性モノマーであった。比較インク1のモノマー硬化性材料は、SR 339とIBOA(それぞれ、15.59質量%及び22.04質量%)の混合物であった。比較インク2のモノマー硬化性材料は、SR 339(25.24質量%)とGenomer 1120(8.33質量%)の混合物であった。インク1のオリゴマー硬化性材料は、比較インク1のものと同じであり、インク2のオリゴマー硬化性材料は、比較インク2のものと同じであった。同様に、インク1と比較インク1の他の成分は同じであり、インク2と比較インク2の他の成分は同じであった。
【0092】
SLAプリントシステムを使用して、インク1及び2、並びに比較インク1及び2を用いて、層ごとに3D物品をプリントした。3D物品の各層を提供した後、次の層を提供する前にキセノンアークランプを用いて各層を部分的に硬化した。3D物品の全ての層を提供した後、水銀ランプを用いて物品を後硬化した。特に、後硬化は、水銀ランプを用いて10回の2分の長さの露光を含んだ。
【0093】
インク1及び2並びに比較インク1及び2から形成されたプリントされた3D物品の機械的特性を以下のように測定し、その結果を表IIに記録する。破断伸びはASTM D638に準拠して測定した;引張強度はASTM D638に準拠して測定した;引張弾性率はASTM D638に準拠して測定した;耐衝撃性(ノッチ付き)はASTM D256に準拠して測定した;及び曲げ弾性率はASTM D790に準拠して測定した。
【表2】
【0094】
上記のインク1、2、3、及び4に加えて、本発明に従う他のインクを下記の表IIIの量を用いて提供する。表IIIにおける量は、インクの総質量に基づき、特定されるインクの各成分の質量%を示す。加えて、「PI」は「光開始剤」を表す。
【0095】
【表3】
【0096】
本明細書において言及された全ての特許文献は、参照によってその全体が本明細書に取り込まれる。本発明の様々な実施形態は、本発明の様々な目的を実現するために記載されている。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示であることを理解されたい。本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、多くの変更及び適応が当業者に容易に明らかとなるであろう。
【0097】
他の実施形態
1.三次元プリントシステムで使用するためのインクであって、
インクの総質量に基づき、10~70質量%の環化重合性モノマーを含み、
前記環化重合性モノマーは、アクリレート部分及びエテニル又はエチニル部分を含み、
前記アクリレート部分のα-炭素とエテニル又はエチニル部分のα-炭素は、1,5-、1,6-、1,7-、又は1,8-の関係を有する、インク。
【0098】
2.前記環化重合性モノマーは、インクの総質量に基づき、20~40質量%の量でインク中に存在する、実施形態1に記載のインク。
【0099】
3.前記アクリレート部分のα-炭素とエテニル又はエチニル部分のα-炭素は、1,5-の関係を有する、実施形態1又は2に記載のインク。
【0100】
4.前記アクリレート部分のα-炭素とエテニル又はエチニル部分のα-炭素は、1,6-の関係を有する、実施形態1又は2に記載のインク。
【0101】
5.前記アクリレート部分のα-炭素とエテニル又はエチニル部分のα-炭素は、1,7-の関係を有する、実施形態1又は2に記載のインク。
【0102】
6.前記アクリレート部分のα-炭素とエテニル又はエチニル部分のα-炭素は、1,8-の関係を有する、実施形態1又は2に記載のインク。
【0103】
7.前記環化重合性モノマーは式(I)の構造を有する、実施形態1~6のいずれかに記載のインク:
【化5】
式中、
Xは、O、S、NH、NR、又はCRであり;
は、H、又は1~10の炭素原子を有する炭化水素基であり;
は1~4の炭素原子を有する炭化水素基であり;
は1~4の炭素原子を有する炭化水素基であり;

であり;
は1~4の炭素原子を有する炭化水素基であり;
は1~4の炭素原子を有する炭化水素基であり;及び
及びRの炭素原子の総数は5を超えない。
【0104】
8.XはOである、実施形態7に記載のインク。
【0105】
9.XはSである、実施形態7に記載のインク。
【0106】
10.XはNH又はNRである、実施形態7に記載のインク。
【0107】
11.XはCRである、実施形態7に記載のインク。
【0108】
12.R及びRの炭素原子の総数は4を超えない、実施形態7~11のいずれかに記載のインク。
【0109】
13.R及びRの炭素原子の総数は3を超えない、実施形態7~11のいずれかに記載のインク。
【0110】
14.R及びRの炭素原子の総数は2である、実施形態7~11のいずれかに記載のインク。
【0111】
15.前記環化重合性モノマーは式(II)の構造を有する、実施形態7に記載のインク。
【化6】
【0112】
16.インクの総質量に基づき、
10~80質量%のオリゴマー硬化性材料;及び
80質量%までの追加のモノマー硬化性材料
をさらに含む、実施形態1~15のいずれかに記載のインク。
【0113】
17.少なくとも1つの光開始剤をさらに含む、実施形態1~16のいずれかに記載のインク。
【0114】
18.少なくとも1つの着色剤をさらに含む、実施形態1~17のいずれかに記載のインク。
【0115】
19.禁止剤及び安定剤からなる群より選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、実施形態1~18のいずれかに記載のインク。
【0116】
20.該インクの粘度が、30℃で1,600センチポアズ(cP)以下である、実施形態1~19のいずれかに記載のインク。
【0117】
21.該インクの粘度が、30℃で500cP以下である、実施形態20に記載のインク。
【0118】
22.三次元物品をプリントする方法であって、
三次元物品を形成するために流体状態のインクの層を基体上に選択的に堆積させる工程を含み、
前記インクは、請求項1~21のいずれか1項に記載のインクを含む、方法。
【0119】
23.全てのインクの層の堆積が完了する前に、前記インクを部分的に硬化させる工程をさらに含む、実施形態22に記載の方法。
【0120】
24.インクを部分的に硬化させる工程が、アクリレート重合を介してインクのアクリレート含有種を重合させることを主に含む、実施形態23に記載の方法。
【0121】
25.全てのインクの層の堆積が完了した後に、前記インクを後硬化させる工程をさらに含む、実施形態23に記載の方法。
【0122】
26.インクを後硬化させる工程が、前記モノマーのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分とを環重合させることを主に含む、実施形態25に記載の方法。
【0123】
27.部分的に硬化させること及び後硬化がそれぞれ光硬化を含む、実施形態25に記載の方法。
【0124】
28.後硬化に用いられる光源が、部分的硬化に用いられる光源よりも高いエネルギーを有する、実施形態27に記載の方法。
【0125】
29.後硬化に水銀ランプが用いられ、かつ部分的硬化にキセノンアークランプが用いられる、実施形態28に記載の方法。
【0126】
30.三次元物品をプリントする方法であって、
流体状態のインクを容器内に保持する工程;
前記容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、前記インクの第1の流体層の少なくとも一部を固化させ、それによって物品の第1の断面を画成する第1の固化層を形成する工程;
前記第1の固化層を上昇又は降下させて、容器内の流体インクの表面にインクの第2の流体層を提供する工程;及び
前記容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、前記インクの第2の流体層の少なくとも一部を固化させ、それによって物品の第2の断面を画成する第2の固化層を形成する工程であって、前記第1の断面と第2の断面とがz方向に互いに結合される工程
を含み、
前記インクは、実施形態1~21のいずれかに記載のインクを含む、方法。
【0127】
31.前記容器内のインクにエネルギーを選択的に印加する工程が、インクを部分的に硬化させることを含む、実施形態30に記載の方法。
【0128】
32.インクを部分的に硬化させることが、アクリレート重合を介してインクのアクリレート含有種を重合させることを主に含む、実施形態31に記載の方法。
【0129】
33.三次元物品の形成の後に、前記三次元物品を後硬化させる工程をさらに含む、実施形態31に記載の方法。
【0130】
34.三次元物品を後硬化させる工程が、前記環化重合性モノマーのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分とを環重合させることを主に含む、実施形態33に記載の方法。
【0131】
35.部分的に硬化させること及び後硬化がそれぞれ光硬化を含む、実施形態33に記載の方法。
【0132】
36.後硬化に用いられる光源が、部分的硬化に用いられる光源よりも高いエネルギーを有する、実施形態35に記載の方法。
【0133】
37.後硬化に水銀ランプが用いられ、かつ部分的硬化にキセノンアークランプが用いられる、実施形態36に記載の方法。
【0134】
38.実施形態1~21のいずれかに記載のインクから形成されたプリントされた三次元物品。
図1