(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】NK細胞培養培地用添加組成物、前記添加組成物を用いたNK細胞培養方法、及び前記培養方法で得られた皮膚トラブル改善用化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20230823BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230823BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20230823BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230823BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230823BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230823BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20230823BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230823BHJP
A61K 38/20 20060101ALN20230823BHJP
【FI】
C12N1/00 G
C12N5/0783
C12P21/00 A
A61P17/02
A61Q19/00
A61K35/17
A61K8/98
A61P17/00
A61K38/20
(21)【出願番号】P 2021557578
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 KR2020003943
(87)【国際公開番号】W WO2020197216
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】10-2019-0035275
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521404602
【氏名又は名称】シン,ジ ソプ
(73)【特許権者】
【識別番号】521404613
【氏名又は名称】シン,ウ ソプ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジ ソプ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ウ ソプ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ミン ジ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ドン ヒョク
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1760764(KR,B1)
【文献】特開2019-031470(JP,A)
【文献】特開2013-027385(JP,A)
【文献】特開2017-012010(JP,A)
【文献】特表2012-512842(JP,A)
【文献】特表2007-500217(JP,A)
【文献】特表2016-520081(JP,A)
【文献】特表平11-501656(JP,A)
【文献】国際公開第2018/097540(WO,A2)
【文献】特表2015-526088(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108220235(CN,A)
【文献】Justin L. Eddy et al.,Cellular Immunology,2014年06月18日,Vol. 290,p. 120-130
【文献】David J. Morgan et al.,frontiers in Immunology,2017年04月13日,Vol. 8, Article 432,p. 1-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御性T細胞(Treg)活性抑制用薬物の一つ以上を有効成分として含む、
NK細胞を増殖するためのNK細胞培養培地用添加組成物
であって、
前記有効成分は、ステロイド剤であって、NK細胞が増殖されるように作用し、
前記ステロイド剤はグルココルチコイド(glucocorticoids)であり、
前記グルココルチコイドは、コルチゾール(Cortisol)、コルチゾン(Cortisone)、プレドニゾロン(Prednisolone)、プレドニゾン(prednisone)、メチルプレドニゾロン(Methylpredni solone)、デキサメタゾン(Dexamethasone)、ベタメタゾン(Betamethasone)、トリアムシノロン(Triamcinolone)、酢酸フルドロコルチゾン(Fludrocortisone acetate)、及び酢酸デオキシコルチコステロン(deoxycorticosterone acetate)よりなる群から選ばれる1つ以上であり、
前記NK細胞培養培地用添加組成物は、さらに、IL-12およびIL-18を含有することを特徴とする、NK細胞培養培地用添加組成物。
【請求項2】
前記添加組成物は、NK細胞培養段階で前記NK細胞培養培地のT細胞が刺激された後に処理されることを特徴とする、請求項1に記載のNK細胞培養培地用添加組成物。
【請求項3】
前記ステロイド剤は0.2μg/ml以上の濃度で含まれることを特徴とする、請求項
1又は2に記載のNK細胞培養培地用添加組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法に適用されるナチュラルキラー細胞(Natural Killer cell、NK細胞)の培養方法に係り、より具体的には、制御性T細胞(Treg)を抑制してNK細胞を効率よく増幅及び活性化させるNK細胞培養培地用添加組成物、前記添加組成物を用いたNK細胞培養方法、及び前記培養方法で得られた皮膚トラブル改善用化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
NK細胞は、初期の生体防御機構と人体の腫瘍免疫において重要な役割を果たすことが知られている。つまり、NK細胞は、主要組織適合遺伝子複合体(Major Histocompatibility Complex、MHC)の発現による免疫取得過程なしでも、特定の自家細胞、同種細胞、さらには異種がん細胞も殺傷することができ、特に、Class1 MHCを少なく発現するか或いは発現しない標的細胞をより上手く殺すことができる。したがって、NK細胞は、MHCが発現されない大部分のがん細胞を効果的に殺すことができ、その他にも、幾つかのウイルスに感染した細胞とジャンチプス菌(salmonella typhi)などの細菌を殺すことができる。しかし、このようにがん細胞の殺傷に優れた作用をするNK細胞は、健常な人の場合にも末梢血リンパ球の5~15%のみを占めており、特に重症のがん患者の場合にはその割合が1%未満に低下するので、免疫療法による別途の増幅過程なしではがん細胞を効果的に攻撃するのに限界がある。
【0003】
免疫療法は、がんの治療に最も重要な免疫細胞、例えばナチュラルキラー細胞(Natural Killer cell、NK細胞)、樹状細胞(DC)、B細胞、T細胞などを患者の血液から抽出した後、多様な種類の刺激剤を用いて、がんに強く作用する免疫細胞に育てた後、再び患者に注入する方法であって、患者自身の血液を使用するため、従来の化学療法などに比べて副作用も少なく、投与法も簡便であって、最近、盛んに研究されている。
【0004】
特に、NK細胞培養においてT細胞、特にヘルパーT細胞の役割が必要であるが、ヘルパーT細胞(Helper T cell又はTh cell)は、白血球の分化及び活性化を調節することにより体液性及び細胞性免疫を促進する細胞をという。細胞の表面にCD4タンパク質を持っているという特徴のため、CD4+T細胞とも呼ぶ。CD4+T細胞は、詳細機能によってさらにTh1、Th2、Th17、Tregなどに分類される。Th1細胞は、インターフェロン-γ(interferon-gamma、IFN-γ)と腫瘍壊死因子-β(Tumor Necrosis Factor beta、TNF-β)を分泌することにより、マクロファージの内部でエンドソームとリソソームとが融合してエンドリソソームを形成するように誘導する。一方、Th2細胞は、さまざまな種類のインターロイキン(interleukin、IL)を分泌してB細胞が形質細胞に分化するようにする。Th17細胞は、インターロイキン-17(IL-17)を分泌して好中球を集めさせる。制御性T細胞とも呼ばれTreg細胞は、免疫反応を促進するのではなく、むしろ抑えることにより、免疫の恒常性を維持しながら自己免疫反応などを遮断する。制御性T細胞(Treg)は、免疫系の構成成分であって、他の細胞の免疫反応を抑制するが、これは、免疫系で過剰な反応を防ぐために作られた重要な「自己点検」である。制御性T細胞は、侵入した微生物を成功的になくした後の免疫反応を止めるのに関与するほか、自己免疫細胞疾患を防ぐのにも関与する。免疫システムは、自己(self)と非自己を区別することができなければならない。自己/非自己の区別に失敗した場合、免疫システムは、体内の細胞と組織を破壊し、その結果、自己免疫疾患を起こす。制御性T細胞は、積極的に免疫システムの活性を抑制し、自己免疫疾患などの病的な自己反応を防ぐ。制御性T細胞がどのように抑制/調節活動をするかに対する分子単位作用原理は、まだ明らかに解明されておらず、免疫抑制サイトカインTGF-βとインターロイキン-10(IL-10)も、制御性T細胞の機能に関連していることが報告されている。
【0005】
一方、免疫細胞を活性化するために、さまざまな種類の抗体やサイトカイン(Cytokine)などを使用すると、制御性T細胞(regulatory T cells(Treg、Tregs))も一緒に活性化される。ただし、Tregは、活性化に他の細胞に比べてより時間がかかる。したがって、細胞培養の初期には細胞の数がよく増加するが、約8日~9日以上培養したときには活性化されたTregによって細胞の数が思ったほど増加しない場合がたまにある。特に免疫力が多く低下しているがん患者などで多く発見され、Treg細胞の数が多く活性化されている患者の場合にはこのような現象が顕著になるが、これはTregによる影響のせいである。
【0006】
よって、Tregによる影響を最小限に抑えて免疫細胞を大量に増殖することができるNK細胞大量培養方法に関する技術が開発される必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、かかる問題点を解決するために研究努力した結果、免疫細胞の培養時に制御性T細胞(Treg)の活性を阻害することができる技術を開発することにより、本発明を完成した。
【0008】
そこで、本発明の目的は、NK細胞培養の際に特定の時期にCD4+T細胞、特に制御性T細胞(Treg)の活性を阻害することによりNK細胞をより多く増殖させることができるNK細胞培養培地用添加組成物、前記添加組成物を用いたNK細胞培養方法、及びその方法で得られたNK細胞を含む免疫細胞治療剤を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、IFN-γとIL-10などの濃度が高い無血清免疫細胞培養液を有効成分として含むため炎症の除去に効果的に作用するので、皮膚トラブルの改善などに優れた効果を示す化粧料組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、IFN-γとIL-10などの濃度が高い無血清免疫細胞培養液を有効成分として含むため炎症の除去に効果的に作用するので、創傷や火傷などの傷の治療及び皮膚疾患の治療などに優れた効果を示す薬学組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の目的は、以上で言及した目的に制限されず、明示的に言及されていなくても、後述される発明の詳細な説明の記載から通常の知識を有する者が認識することが可能な発明の目的も当然含まれることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、制御性T細胞(Treg)活性抑制用薬物の一つ以上を有効成分として含む、NK細胞培養培地用添加組成物を提供する。
【0013】
好適な実施例において、前記有効成分は、ステロイド剤であって、NK細胞が増殖されるように作用する。
【0014】
好適な実施例において、前記ステロイド剤は、グルココルチコイド(glucocorticoids)である。
【0015】
好適な実施例において、前記グルココルチコイドは、コルチゾール(Cortisol)、コルチゾン(Cortisone)、プレドニゾロン(Prednisolone)、プレドニゾン(prednisone)、メチルプレドニゾロン(Methylpredni solone)、デキサメタゾン(Dexamethasone)、ベタメタゾン(Betamethasone)、トリアムシノロン(Triamcinolone)、酢酸フルドロコルチゾン(Fludrocortisone acetate)、及び酢酸デオキシコルチコステロン(deoxycorticosterone acetate)よりなる群から選ばれる1つ以上である。
【0016】
好適な実施例において、前記添加組成物は、NK細胞培養段階で前記NK細胞培養培地のT細胞が刺激された後に処理される。
【0017】
好適な実施例において、前記ステロイド剤は0.2μg/ml以上の濃度で含まれる。
【0018】
また、本発明は、血液から分離された末梢血単核細胞(PBMC)が培養される培養培地にNK細胞刺激用物質を処理するNK細胞刺激段階と、前記NK細胞刺激段階でNK細胞が刺激された後、前記培養培地にT細胞刺激用物質を処理するT細胞刺激段階と、前記T細胞刺激段階によってT細胞が刺激された後、制御性T細胞(Treg)活性抑制用薬物の一つ以上を含むNK細胞培養培地用添加組成物を前記培養培地に処理する添加組成物処理段階と、を含んでなる、NK細胞培養方法を提供する。
【0019】
好適な実施例において、前記NK細胞刺激用物質は、抗CD16抗体、抗CD56抗体及びIL-2、IL-12、IL-18よりなる群から選ばれる一つ以上であり、前記T細胞刺激用物質は、抗CD3抗体、抗CD4抗体及び抗CD28抗体よりなる群から選ばれる1つ以上である。
【0020】
好適な実施例において、前記制御性T細胞(Treg)活性抑制用薬物は、ステロイド剤であって、制御性T細胞(Treg)の免疫抑制活性を抑制することによりNK細胞がうまく増殖されるように作用する。
【0021】
好適な実施例において、前記T細胞刺激段階は培養2日目に行われ、前記添加組成物処理段階は培養3日目に行われる。
【0022】
好適な実施例において、前記添加組成物処理段階が培養5日後に1回以上さらに行われることができる。
【0023】
好適な実施例において、前記添加組成物は、前記ステロイド剤を0.2μg/mL以上の濃度で含み、前記ステロイド剤は、IL-12が0.5~5ng/mLの濃度、IL-18が2~50ng/mLの濃度で含まれるように前記IL-12及びIL-18を基本溶液に溶解させて形成されたサイトカイン1-1溶液又は担体に溶解される。
【0024】
好適な実施例において、前記添加組成物処理段階の実行後に11日乃至16日培養した後、NK細胞を収穫する段階をさらに含む。
【0025】
また、本発明は、上述したNK細胞培養方法によって得られたNK細胞を有効成分として含む免疫細胞治療剤を提供する。
【0026】
また、本発明は、上述したいずれか一つのNK細胞培養方法で20日以上培養されて分離されるか或いは収穫されて凍結した後、解凍されて活力が低下したNK細胞を準備する段階;及び前記準備されたNK細胞をサイトカイン1-1溶液で培養する段階;を含むNK細胞再活性化方法を提供する。
【0027】
また、本発明は、上述したいずれか一つのNK細胞培養方法で11日間培養した後、NK細胞を分離する段階;前記分離されたNK細胞をサイトカイン1-1溶液で培養する段階と、前記NK細胞を収穫して残った培地組成物を得る段階と、を含む、NK細胞培地組成物の製造方法を提供する。
【0028】
また、本発明は、上述したNK細胞培地組成物の製造方法によって得られたNK細胞培地組成物を有効成分として含む、皮膚トラブル改善用化粧料組成物を提供する。
【0029】
また、本発明は、上述したNK細胞培地組成物の製造方法によって得られたNK細胞培地組成物を有効成分として含む、皮膚疾患治療用薬学組成物を提供する。
【発明の効果】
【0030】
上述した本発明のNK細胞培養培地用添加組成物は、NK細胞培養の際に特定の時期にCD4+T細胞、特に制御性T細胞(Treg)の免疫抑制活性を抑制することによりNK細胞をより多く増殖させることができる。
【0031】
また、本発明の化粧料組成物及び薬学組成物は、IFN-γとIL-10などの濃度が高い無血清免疫細胞培養液を有効成分として含むため、炎症の除去に効果的に作用するので、皮膚トラブルの改善だけでなく、創傷や火傷などの傷の治療及び皮膚疾患の治療などに優れた効果がある。
【0032】
本発明のかかる技術的効果は、以上で言及した範囲のみに制限されず、明示的に言及されていなくても、後述される発明の実施のための具体的内容の記載から通常の知識を有する者が認識することができる発明の効果も当然含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施例に係るNK細胞培養方法において時間による細胞数の変化を示すグラフである。
【
図2a】本発明の実施例に係るNK細胞培養方法で培養された培養培地のFACSデータを示すグラフである。
【
図2b】比較例によって培養された培養培地のFACSデータを示すグラフである。
【
図3a】NK細胞の割合が約50%程度となる細胞を用いて、NK細胞培養培地用添加組成物に含まれるステロイド剤の濃度を約2倍高めてday3、day4、day8に処理したものと処理していないものを培養して得られたFACSデータを示すグラフである。
【
図3b】NK細胞の割合が約50%程度となる細胞を用いて、NK細胞培養培地用添加組成物に含まれるステロイド剤の濃度を約2倍高めてday3、day4、day8に処理したものと処理していないものを培養して得られたFACSデータを示すグラフである。
【
図4a】サイトカインと抗CD3抗体のみを用いてNK細胞培養の際にNK細胞培養培地用添加組成物を処理した培養培地のFACSデータを示すグラフである。
【
図4b】サイトカインと抗CD3抗体のみを用いてNK細胞培養の際にNK細胞培養培地用添加組成物を処理していない培養培地のFACSデータを示すグラフである。
【
図5a】抗CD3抗体を固定化させる方法でNK細胞培養の際にNK細胞培養培地用添加組成物を処理した培養培地のFACSデータを示すグラフである。
【
図5b】抗CD3抗体を固定化させる方法でNK細胞培養の際にNK細胞培養培地用添加組成物を処理していない培養培地のFACSデータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明で使用する用語は、特定の実施例を説明するために使用されたもので、本発明を限定するものではない。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味を有しない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品又はこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするもので、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品又はこれらの組み合わせの存在又は付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0035】
「第1」、「第2」などの用語は、多様な構成要素の説明に使用できるが、これらの構成要素は、これらの用語によって限定されてはならない。これらの用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使われる。例えば、本発明の権利範囲から逸脱することなく、第1構成要素は第2構成要素と命名でき、同様に第2構成要素も第1構成要素と命名できる。
【0036】
また、別に定義しない限り、技術的或いは科学的用語を含んで、ここで使用される全ての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。一般に使用される辞典に定義されているような用語は、関連技術の文脈上において持つ意味と一致する意味であると解釈されるべきであり、本明細書において明白に定義しない限りは、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されない。
【0037】
本発明において、「免疫細胞」は、NK細胞及びT細胞のみを含む意味で使用された。「NK細胞」は、NK細胞とNKT細胞をすべて含む意味で使用されるが、場合によっては、NK細のみを意味するものとしても使用できる。
【0038】
時間関係に関する説明の場合、例えば、「~の後」、「~に続いて」、「~次に」、「~前に」などで時間的前後関係が説明される場合は、「すぐに」又は「直接」が使用されない限り、連続的ではない場合も含む。
【0039】
以下、添付図面及び好適な実施例を参照して本発明の技術的構成を詳細に説明する。
【0040】
しかし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態で具体化されることもできる。明細書全体にわたって、本発明を説明するために使用される同じ参照番号は同じ構成要素を示す。
【0041】
本発明の技術的特徴は、制御性T細胞(Treg)活性抑制用薬物の新規用途に関することであり、特に、制御性T細胞(Treg)活性抑制用薬物の一つ以上を有効成分として含むことで、NK細胞培養の際に特定の時期にCD4+T細胞、特に制御性T細胞(Treg)の免疫抑制活性を阻害することによりNK細胞をより多く増殖させることができるNK細胞培養培地用添加組成物、これを用いたNK細胞培養方法、その方法により得られた免疫細胞治療剤及び培地組成物にある。
【0042】
つまり、NK細胞を培養する際に、NK細胞は、初期だけでなく、培養中にも刺激が必要であるが、T細胞の刺激は初期刺激のみで十分なので、NK細胞刺激物質でNK細胞をまず刺激した後、T細胞刺激物質でT細胞を刺激して活性化させ、活性化されたT細胞とNK細胞刺激物質が一緒にNK細胞をさらに刺激するようにした後、すぐに活性化されたT細胞のうちのCD4+T細胞、特に制御性T細胞(Treg)の免疫抑制活性を抑制することができる方法を見つけることができれば、NK細胞をより多く活性化或いは増殖させることができることは自明であるからである。
【0043】
このような事実を基に、本発明は、CD4+T細胞を抑制することが知られており、その中でも、Treg細胞をさらに抑制することが知られている制御性T細胞(Treg)活性抑制用薬物の作用をNK細胞の培養に活用することができるという、制御性T細胞(Treg)活性抑制用薬物の新規用途を開発した。
【0044】
より具体的には、制御性T細胞(Treg)活性抑制用薬物として広く知られているステロイド剤は、Th1、Th2、Th17、TregなどのCD4+T細胞を抑制して炎症及び疼痛除去効果があるものの、長期間使用した場合に免疫低下などの関連副作用が激しいことが知られているが、NK細胞培養の際には、免疫細胞の活性化後、ステロイド剤によってTreg細胞が抑制されると、むしろNK細胞の増殖及び活性化が抑制されず、培養中に免疫細胞がある程度過密してもNK細胞の活性化及び細胞増殖を妨害しないことを確認したからである。
【0045】
したがって、本発明のNK細胞培養培地用添加組成物は、制御性T細胞(Treg)活性抑制用薬物の一つ以上を有効成分として含む。
【0046】
ここで、前記有効成分は、制御性T細胞(Treg)の活性を抑制することさえできれば、公知の全ての薬物が使用できるが、一具現例としてステロイド剤を使用することができる。ステロイド剤は、CD4+T細胞、特に制御性T細胞(Treg)の免疫抑制活性を抑制することによりNK細胞の増殖に作用するものである。実験的に、ステロイド剤は、制御性T細胞の免疫反応抑制活性を除去して全体的にT細胞の成長をある程度抑制する特性も持つことが分かった。
【0047】
本発明において、NK細胞培養培地用添加組成物に含まれるステロイド剤は、ステロイド剤として作用することができる公知の全てのステロイド剤薬物を使用することができるが、グルココルチコイド(glucocorticolids)系であり得る。一具現例として、コルチゾール(Cortisol)、コルチゾン(Cortisone)、プレドニゾロン(Prednisolone)、プレドニゾン(prednisone)、メチルプレドニゾロン(Methylpredni solone)、デキサメタゾン(Dexamethasone)、ベタメタゾン(Betamethasone)、トリアムシノロン(Triamcinolone)、酢酸フルドロコルチゾン(Fludrocortisone acetate)、及び酢酸デオキシコルチコステロン(deoxycorticosterone acetate)よりなる群から選ばれる1つ以上であることができる。
【0048】
本発明のNK細胞培養培地用添加組成物において、制御性T細胞(Treg)活性抑制用薬物は0.1μg/ml以上の濃度で含まれることができるが、制御性T細胞(Treg)活性抑制用薬物の一例として使用されたステロイド薬物類は、後述する実験例から分かるように、一度活性化されたNK細胞及びTc細胞などの細胞性免疫細胞の増殖には全く影響を与えないことを確認したとともに、培養時間が経つほどNK細胞の割合がさらに上がることが確認することができた。特に、ステロイド薬物の濃度が高くなると、T細胞の増殖率がある程度抑制されてステロイド薬物の濃度に比例してNK細胞の割合が相対的に多く高まる効果もあった。制御性T細胞(Treg)活性抑制用薬物として使用されたステロイド剤が0.1μg/ml未満で処理されると、CD4+T細胞、特に制御性T細胞(Treg)の免疫抑制活性を抑制する特性が十分に発揮されず、後述する実験例を介してステロイド剤が高濃度で処理されても9μg/mlを超えると、NK細胞の培養に及ぼす影響が大きく変わらないことが予測された。したがって、本発明のNK細胞培養培地用添加組成物に含まれる調節性T細胞(Treg)活性抑制用薬物は0.1μg/ml以上の濃度を持つことさえすれば、所望の効果を得ることができると予測される。
【0049】
また、公知のように、NK細胞培養の際に、NK細胞は、初期に刺激された後に十分に活性化されるためには必ず刺激されたT細胞の助けが必要であるので、本発明の添加組成物は、NK細胞培養段階でNK細胞培養培地のT細胞が刺激された後に処理できる。このようにNK細胞培養の際に、本発明のNK細胞培養培地用添加組成物をNK細胞培養培地のT細胞刺激後の適切な時期に使用すると、非常に効果的にTc及びNK免疫細胞増殖率、特にNK細胞の増殖率を増加させることができる。
【0050】
次に、本発明のNK細胞培養方法は、血液から分離された末梢血単核細胞(PBMC)が培養される培養培地にNK細胞刺激用物質を処理するNK細胞刺激段階と、前記NK細胞刺激段階でNK細胞が刺激された後、前記培養培地にT細胞刺激用物質を処理するT細胞刺激段階と、前記T細胞刺激段階によってT細胞が刺激された後、制御性T細胞(Treg)活性抑制用薬物の一つ以上を含むNK細胞培養培地用添加組成物を前記培養培地に処理する添加組成物処理段階と、を含むことができる。また、添加組成物処理段階の実行後に11日乃至16日培養した後、NK細胞を収穫する段階をさらに行うことができる。
【0051】
ここで、NK細胞刺激用物質は、抗CD16抗体、抗CD56抗体及びIL-2、IL-12、IL-18よりなる群から選ばれる一つ以上であり、T細胞刺激用物質は、抗CD3抗体、抗CD4抗体及び抗CD28抗体よりなる群から選ばれる1つ以上であることができる。
【0052】
より具体的には、一般的にNK免疫細胞培養の際にIL-2によってTh1を刺激して活性化する状態で抗CD16抗体、抗CD56抗体などのNK細胞刺激物質によってNK細胞を刺激する。また、抗CD3抗体などのT細胞刺激物質によってTh細胞を刺激して活性化されたTh1細胞によってNK細胞及びTc細胞を刺激するようになり、NK及びTc細胞が活性化され、特に、IL-12、IL-18及び抗CD16抗体、抗CD56抗体の刺激によってNK細胞が活性化され、うまく育てられる。しかし、抗CD3抗体などで刺激をすると、全てのT細胞を刺激するので、特にTh2などの体液性免疫細胞及びTregも一緒に刺激するが、これらの細胞は、NK細胞が活性化及び増殖されるのに役立たない。特に、Treg細胞は、NK細胞の活性化及び増殖を妨害するため、Treg細胞を無力化すると、NK細胞をうまく増殖させることができる。
【0053】
制御性T細胞(Treg)活性抑制用薬物のうちの複数種類のステロイド薬物は、T細胞、特にTregを抑制するので、時期に合わせてうまく使用すると、ナチュラルキラー細胞の培養に効果的に使用できるが、一具現例として、T細胞刺激段階は培養2日目に行われ、添加組成物処理段階は培養3日目に行われることができる。つまり、NK細胞培養0日及び/又は1日目にNK細胞刺激物質を処理してNK細胞を刺激した後、培養2日目に抗CD3抗体、抗CD4抗体又は抗CD28などのT細胞刺激物質でT細胞を刺激してTc、NK細胞などを活性化した後、培養3日目に、本発明のステロイド剤が含まれている添加組成物で処理すると、CD4+T細胞、特に制御性T細胞(Treg)の免疫抑制活性が抑制されるので、NK細胞などが増殖及び/又は活性化されるのに抑制活性を示さない。また、添加組成物処理段階が培養5日後に1回以上さらに行われることができる。
【0054】
このように本発明のNK細胞培養方法によってCD4+T細胞、特に制御性T細胞(Treg)を抑制すると、後述する実験例から分かるように、NK細胞の割合を、添加組成物を処理していない場合に比べて大幅に高めることができる。
【0055】
一方、本発明のNK細胞培養方法で使用される添加組成物は、制御性T細胞(Treg)活性抑制用薬物を0.1μg/mL以上の濃度で含むが、一具現例として、ステロイド剤は、サイトカイン1-1溶液(IL-12が0.5~5ng/mLの濃度、IL-18が2~50ng/mLの濃度で含まれるように前記IL-12及びIL-18を基本溶液に溶解させて形成)又は担体に溶解することができる。ここで、基本溶液(B溶液)は、IL-2、L-グルタミン及び細胞培養用培地を含むものである。
【0056】
次に、本発明の免疫細胞治療剤は、上述したNK細胞培養方法で得られたNK細胞を有効成分として含む。本発明の免疫細胞治療剤は、概して、NK細胞を生理食塩水などの担体に含ませてリンガー形式で患者の体内に投与できるが、NK細胞には影響を与えないものの、患者の治療に有効な公知の成分をさらに含むことができる。ここで、患者は、人間だけでなく、哺乳動物を含むことができる。
【0057】
また、本発明のNK細胞再活性化方法は、活力が低下したNK細胞の力価を高めるための方法であって、上述したNK細胞培養方法で20日以上培養されて分離されるか、或いは上述したNK細胞培養方法で収穫されて凍結保管された後、解凍されて活力が低下したNK細胞を準備する段階と、前記準備されたNK細胞をサイトカイン1-1溶液で培養する段階と、を含む。
【0058】
一般的に、リンパ球細胞の培養初期、すなわち、細胞が若いとき(培養初期)には、IL-2などのサイトカイン(cytokine)の高濃度でうまく増殖されるが、培養約8~10日後には増殖率が低下し、上手く育てられない。この時、サイトカイン(cytokine)の濃度を薄くすれば、Tregの免疫抑制活性を低下させることにより、比較的にうまく増殖される。ところが、この場合、NK細胞増殖率が大きくないだけでなく、弱いNK細胞の場合にはその活性を失いやすい。このとき、IL-2、IL-12、IL-18などのサイトカイン(Cytokine)が含まれている溶液で処理すると、NK細胞の活性度が上がるが、Treg細胞も一緒に活性化されてNK細胞の数が減少し、一貫してNK細胞を活性化することが容易ではない。Tregが弱ければ、NK細胞の活性化がある程度になることもできるが、殆どは、細胞の数が急激に減少するか、或いは特に重症のがん患者の場合にはNK細胞が活性化されないことが多い。しかし、本発明のNK細胞培養方法のように培養初期にNK細胞とT細胞を刺激した後、ステロイド剤を含む添加組成物を処理してTregを抑えた状態では、培養8~10日後にサイトカインの濃度を高めれば、NK細胞の増殖に妨げることなくNK細胞がうまく増殖及び活性化される。
【0059】
特に、本発明の再活性化方法によれば、NK細胞は培養3~4週に細胞分裂がほぼ最後に達し、非常に老いて活性を失った細胞であっても上手く活性化されることを確認した。
【0060】
次に、本発明のNK細胞培地組成物の製造方法は、大量のIFN-γとIL-10を含む培地組成物を得るための方法であって、NK細胞培養方法で11日間培養した後、NK細胞を分離する段階と、前記分離されたNK細胞をサイトカイン1-1溶液で培養する段階と、前記NK細胞を収穫して残った培地組成物を得る段階と、を含む。つまり、IL-10は、マクロファージをM2b型に誘導して炎症を除去する役割を果たすようにすることが知られているからである。
【0061】
次に、本発明の化粧料組成物及び薬学組成物は、上述したNK細胞培地組成物の製造方法で得られた培地組成物を有効成分として使用することができる。特に、本発明の培地組成物は、後述する実験例のようにIFN-γとIL-10が多く含まれていることが確認され、皮膚トラブルの改善だけでなく、傷の治療及び皮膚疾患の治療に効果的である。また、NK細胞培養の際に得られた培地組成物の効果が記載されている韓国特許公開第10-2018-0057359号公報によれば、皮膚美白、色素沈着の除去、しわ改善のうちの一つ以上に有効であり、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、にきび、虫刺されによって生じた炎症などに炎症改善効果が良かった。特に、かゆみを迅速になくす効果があり、火傷、創傷などの治療による皮膚再生効果と沈着色素の除去効果が非常に良いことが確認されるので、本発明の化粧料組成物及び薬学組成物に対する有効性が間接的に裏付けられることが分かる。
【0062】
また、後述する本発明のNK細胞培養方法の幾つかの実施例で使用される免疫細胞培養用培地添加キット(NKTM)は、免疫細胞培養の各段階で培地に添加できるようにそれぞれ個別に包装され、内容物、すなわち構成成分が異なるBユニット(基本溶液、B溶液)、C1-1ユニット(サイトカイン1-1溶液)、C1-2ユニット、C2ユニット、A1ユニット、A2ユニット及びDユニットを含んで構成されるが、各ユニットについての詳細な説明、及び前記ユニットを用いて免疫細胞を培養する培養過程(NKTM培養過程)に対する具体的な条件についての詳細な説明は、韓国特許公開第10-2018-0057359号公報(以下、「先行特許」という)に開示されているので、下記の実施例では、先行特許に記載されたている部分と異なる部分だけを重点的に説明する。
【実施例1】
【0063】
1.基本溶液(B溶液)の準備
IL-2 2.2mgと500mM L-グルタミン溶液100mLを浮遊細胞培養用基本培地(基本培地にIL-2又はL-グルタミンが既に存在する場合、最終濃度を合わせるために添加量を調整する)に入れて溶かし、最終的に10Lにして基本溶液(B溶液)を製造した。
【0064】
2.サイトカイン1-1溶液の準備
IL-12 20μgとIL-18 125μgを蒸留水に溶かして10mLにしてサイトカイン溶液(C溶液)を製造した。C溶液1mLを基本溶液(B1溶液)1000mLに溶かしてサイトカイン1-1溶液(C1-1溶液)を製造した。
【0065】
3.NK細胞培養培地用添加組成物の製造
サイトカイン1-1溶液にリン酸デキサメタゾンナトリウム(Dexamethasone sodium phosphate)が1μg/mLの濃度で含まれるように溶解させ、NK細胞培養培地用添加組成物1を準備した。
【実施例2】
【0066】
プレドニゾロン(prednisolone)(ソロンド錠、5mg/錠、ユハンヤンヘン製)をRPMI培地に溶かして167μg/mLの濃度にした後、C1-1溶液で20倍に希釈して濃度8.3μg/mLのNK細胞培養培地用添加組成物2を準備した。
【実施例3】
【0067】
メチルプレドニゾロン(methylprednisolone)(PD錠、4mg/錠、JW中外製薬製)をRPMI培地に溶かして80μg/mLの濃度にし、C1-1溶液で10倍に希釈して濃度8μg/mLのNK細胞培養培地用添加組成物3を準備した。
【実施例4】
【0068】
リン酸ベタメタゾンナトリウム(betamethasone sodium phosphate)(ハンオルベタメタゾン注、5.2mg/1mLのアンプル、ハンオルバイオファーマ製)は、ハンオルベタメタゾン注1μLをC1-1溶液10mLに溶かして濃度0.4μg/mLのNK細胞培養培地用添加組成物4を準備した。
【実施例5】
【0069】
次の方法でNK細胞を培養した。
【0070】
1.培地添加キットの準備
(1)A液:抗CD16抗体及び抗CD56抗体がそれぞれ0.01~1.5μg/mLの濃度で含まれるように抗CD16抗体及び抗CD56抗体をB1溶液に溶かして作った溶液
(2)A1溶液:抗CD16抗体が0.1~15μg/mLの濃度で含まれるように抗CD16をC1-1溶液に溶かして作った溶液
(3)A2溶液:抗CD56抗体が0.1~15μg/mLの濃度で含まれるように抗CD56抗体をC1-1溶液に溶かして作った溶液
(4)B1溶液:浮遊細胞培養用基本培地溶液にIL-2を1000~4000IU/mLの濃度となるように作った溶液
(5)B2溶液:B1よりIL-2の濃度が2倍である溶液
(6)C1-1溶液:IL-12が0.5~5ng/mLの濃度、IL-18が2~50ng/mLの濃度で含まれるようにIL-12及びIL-18をB1溶液に溶かして作った溶液
(7)C5溶液:C1-1溶液よりIL-2、IL-18の濃度が5倍である溶液
(8)D溶液:抗CD3抗体が1~12μg/mLの濃度で含まれるように抗CD3抗体をC1-1溶液に溶かして作った溶液
(9)R溶液:サイトカイン(Cytokine)や抗体が含まれておらず、L-グルタミンが3~12mMの濃度で含まれている浮遊細胞培養用基本培地溶液
【0071】
2.培養過程
リンパ球抽出及び自己血漿準備段階を先行特許と同様に行った。
【0072】
Day0:血液から分離したPBMC1.0×107個をC1-1溶液に溶かして培養を開始した。
Day1:細胞培養中の細胞にA2溶液1mLを追加した。
Day2:細胞培養中の細胞にD溶液1mLを追加した。
Day3:細胞培養中の細胞にNK細胞培養培地用添加組成物1を5mL追加した。
Day4:必要な場合は、より大きな培養容器に細胞を移して培養する。細胞培養中の細胞にR溶液3mLを追加するか、或いはC1-1溶液10mLで培地を交換する。
Day5:細胞培養中の細胞にA1溶液20mLを追加した。
Day6:細胞培養中の細胞にA溶液20mLを追加した。
Day7:細胞培養中の細胞にB1溶液40mLを追加した。
Day8:細胞培養中の細胞にR溶液300mLを追加した。
Day10:細胞培養中の細胞にR溶液300mLを追加した。
Day11:細胞培養中の細胞にB2溶液300mLとC5溶液50mLを追加した。
Day14~Day19:細胞を収穫した。
【実施例6】
【0073】
Day3にNK細胞培養培地用添加組成物2を4.5mL追加した以外は、実施例5と同様の方法でNK細胞を培養した。
【実施例7】
【0074】
Day3にNK細胞培養培地用添加組成物3を4.5mL追加した以外は、実施例5と同様の方法でNK細胞を培養した。
【実施例8】
【0075】
Day3にNK細胞培養培地用添加組成物4を4.5mL追加した以外は、実施例5と同様の方法でNK細胞を培養した。
【0076】
比較例1
Day3にNK細胞培養培地用添加組成物1を添加していない以外は、実施例5と同様の方法でNK細胞を培養した。
【0077】
実験例1
制御性T細胞(Treg)抑制用薬物の一つ以上を有効成分として含むNK細胞培養培地用添加組成物がNK細胞培養の際に及ぼす効果を確認するために、実施例5と同様の方法でNK細胞培養の際に得られる細胞増殖結果と、比較例1と同様の方法で得られる細胞増殖結果を観察し、その結果を表1(単位:×10
7個)、表2、
図1~
図2bに示した。
【0078】
【0079】
【0080】
表1及び
図1から分かるように、免疫細胞を培養する過程でday2に抗CD3抗体で処理してTh細胞を刺激した後、実施例5のようにday3にステロイド系注射剤であるデキサメタゾン1μLが含まれているNK細胞培養培地用添加組成物を培地に入れて培養し、day4にTh2、Tregなどによって作られたサイトカイン(cytokine)を除去するために既存の培地を除去し、C1溶液で交換して培養し続けて得られた細胞の数と、ステロイド剤を使用していない比較例1で得られた細胞の数とを比較すると、初期細胞数の差を勘案して、その増殖率が比較例1よりも実施例5の方法でday14まで培養したときに約4.3倍以上、day17まで培養したときに約5.9倍以上さらに増殖されたことを確認することができた。また、表2、
図2a及び
図2bから分かるように、増殖培養培地でNK細胞が占める割合だけでなく、活性度も実施例5が比較例1よりもさらに高いことが分かる。一方、実施例5において、Day4に培地交換後にもステロイド薬物を入れれば効果がさらに良いこともあるが、day3に1回のみ処理しても効果が非常に良いことが分かる。
【0081】
また、既に公知になっているように、リンパ球の培養で得られた活性化リンパ球をエフェクター細胞(effector cell)、血液がん細胞株(K562)を標的細胞(target cell)としてそれぞれ使用し、がん細胞に比べて活性化リンパ球の割合を10:1に設定して血液がん細胞株に対する活性化リンパ球の殺害能力を測定する力価分析を行ったとき、活性化リンパ球の中でNK細胞が占める割合が高いほどその値が高いことは当然なので、本発明によって培養されたNK細胞の比重が非常に高い活性化リンパ球の治療効果に優れるのは当然予測することができるだろう。
【0082】
実験例2
制御性T細胞(Treg)抑制用薬物として様々なステロイド剤を含むNK細胞培養培地用添加組成物の効果を確認するために、実施例6~8と同様の方法でNK細胞培養の際に得られる細胞増殖結果を観察し、その結果を表3(単位:×107個)に示した。
【0083】
【0084】
表3から分かるように、デキサメタゾンを含むNK細胞培養培地用添加組成物1とは異なり、それぞれプレドニゾロンを含有するNK細胞培養培地用添加組成物2、メチルプレドニゾロンを含有するNK細胞培養培地用添加組成物3、及びリン酸ベタメタゾンナトリウムを含むNK細胞培養培地用添加組成物4が添加された実施例6~8の場合も、非常にうまく増殖されることを確認することができる。
【0085】
実験例3
NK細胞の割合が約50%程度となる細胞を使用し、NK細胞培養培地用添加組成物に含まれるステロイド剤の濃度を約2倍に高めてday3、day4、day8に添加して培養した以外は、実施例5と同様の方法を行って得られた結果と、NK細胞の割合が約50%程度となる細胞を使用したことを除けば比較例1と同様の方法を行って得られた結果とを比較し、それぞれ
図3a及び
図3bに示した。
【0086】
図3a及び
図3bは、本発明のNK細胞培養培地用添加組成物が使用される場合には、NK細胞の割合が81.35%であるが、本発明のNK細胞培養培地用添加組成物が使用されない場合には、NK細胞の割合が51.76%であることを示すので、最初からNK細胞の細胞割合が高い状態で培養を開始しても、本発明のNK細胞培養培地用添加組成物が処理されると、培養過程でNK細胞の増殖率をさらに高めることを確認することができる。
【0087】
実験例4
本発明のNK細胞培養培地用添加組成物の効果を確認するために、実施例のように別途のNK細胞培養用添加キットを使用せず、一般的に使用されるNK細胞培養方法を用いて、NK細胞を次のとおりに培養した。リンパ球(1×10
7)を分離してNK免疫細胞の刺激のためのIL-2、IL-12、IL-18などのサイトカイン(Cytokine)を用いて、細胞刺激後培養2日目に抗CD3抗体を刺激して培養し、CD16、CD56抗体などは全く使用せず、培養3日目にNK細胞培養培地用組成物1を処理した。その後、培地は、IL-2が添加された一般培地を使用した。細胞数の増加に応じて培地を添加しながら細胞を培養した。14日間培養を行い続けた後、その結果を表4、
図4a及び
図4bに示した。
【0088】
下記表4、
図4a及び
図4bから分かるように、別途の培地添加キットを使用せず、サイトカインと抗CD3抗体のみを用いて、NK細胞培養の際にも本発明のNK細胞培養培地用添加組成物を培養3日目に処理すると、使用しない場合よりも14日培養後のNK細胞が2倍以上にうまく増殖され、NK細胞の比重が31.1%とさらに大きいだけでなく、NKT細胞も26.2%にうまく増殖される。
【0089】
【0090】
実験例5
本発明のNK細胞培養培地用添加組成物の効果を確認するために、実施例のように別途のNK細胞培養用添加キットを使用せず、一般的に使用されるNK細胞培養方法、特に固定化された抗CD3抗体を用いて、次のとおりにNK細胞を培養した。抗CD3抗体をT25フラスコに固定化した後、分離されたリンパ球(0.8×10
7)を約1時間反応させ、その後、IL-2及びCD16、CD56抗体を用いて培養した。CD16、CD56抗体は2日目、4日目、6日目に刺激をし、培養3日目にNK細胞培養培地用組成物1を処理した。その後、培地は、IL-2が添加された一般培地を使用した。細胞数の増加に応じて培地を添加し、細胞を培養した。14日間培養を行い続けた後、その結果を表5、
図5a及び
図5bに示した。
【0091】
下記表5、
図5a及び
図5bから分かるように、別途の培地添加キットを使用せず、抗CD3抗体をT25フラスコに固定化し、サイトカイン、抗CD16及び抗CD56抗体を用いて、NK細胞培養の際にも本発明のNK細胞培養培地用添加組成物を培養3日目に処理すると、使用しない場合よりも14日培養後にNK細胞が2倍以上に上手く増殖され、NK細胞の比重が49.72%とさらに大きく増殖された。
【0092】
【0093】
実施例9
本発明のNK細胞培養培地用添加組成物が、活力が低下した細胞の再活性に及ぼす影響力を実験するために、実施例5の方法によってTreg細胞を抑制しつつ培養して25日目になり、活性が低下した老化細胞を用いて再活性化を次のように試みた。既存の培地を除去するために遠心分離して上澄み液を除去し、一般培地(RPMI)に入れて約2時間培養した後、培地をC1溶液で交換して3日培養した。
【0094】
実験例6
実施例9で再活性化されたNK細胞の活性度を測定し、その結果を表6に示した。
下記表6に示すように、Tregによって活性が抑制されずに増加することが観察され、細胞の数も急激に減少することは観察されなかった。ただし、測定誤差とも考えられるが、細胞が老化して自然減少する程度の若干の細胞数減少は観察された。この方法は、非常に短時間内(1日~3日)にNK細胞を活性化することができる方法であって、老化細胞だけでなく、末梢血から直ちに分離したPBMC中のNK細胞の活性化はもとより、凍結後に解凍されて活力が低下したNK細胞の再活性化にも非常に効果的であると予測される。
【0095】
【0096】
実施例10
血液内にIL-10の濃度が高いためTreg細胞が多く活性化されているものと思われるヒトからPBMCを得た以外は、実施例5と同様の方法でNK細胞を培養した後、day12に細胞を取り出して既存の培養液を除去し、C1溶液を用いて2日間培養した後、NK細胞を分離して残った培養培地組成物を得た。
【0097】
実験例7
実施例10で得られた培養培地組成物の成分を確認し、その結果を表7に示した。
【0098】
【0099】
表7は培養12日にC1溶液で刺激して2日培養の際に細胞の数がうまく増加し、IFN-γとIL-10が多く増加するのはもとより、IL-8は非常に少ない量だけが作られることを示す。これに対し、C1溶液で活性化せずにそのまま分離すると、全体的にサイトカインが少なく増加することが分かる。このようにTreg細胞が発達したヒトの免疫細胞であっても、本発明のNK細胞培養培地用組成物で処理した後、培養12日にC1溶液で刺激したときに細胞の数が減少せずに増加し、大量のIFN-γとIL-10を作ることを確認することができる。一方、IL-8は、好中球を集め、炎症に多く関連するサイトカイン(Cytokine)であり、IL-10は、マクロファージをM2b型に誘導して炎症を除去する役割を果たすことが知られており、このように得た培養培地組成物は、皮膚トラブルの改善だけでなく、炎症から誘発される皮膚疾患治療などにも効果的である。
【0100】
本発明は、以上で説明したように好適な実施例を挙げて図示及び説明したが、前述した実施例に限定されず、本発明の精神を逸脱することなく、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって様々な変更及び修正が可能である。