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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】粒状物処理装置および粒状物処理方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/248 20060101AFI20230823BHJP
   B65G 15/58 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B65G47/248 G
B65G15/58 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022080833
(22)【出願日】2022-05-17
(62)【分割の表示】P 2020200310の分割
【原出願日】2018-03-12
(65)【公開番号】P2022117508
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】中野 信行
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌宏
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-110142(JP,A)
【文献】特開平03-042415(JP,A)
【文献】特開昭61-047541(JP,A)
【文献】特開2004-018176(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0104741(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/248
B65G 15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物の表面の検査を行う粒状物検査装置であって、
粒状物を吸着保持しつつ、環状の搬送経路に沿って粒状物を搬送する環状搬送機構と、
前記環状搬送機構の前記搬送経路上の撮像位置において、粒状物の表面を撮像し、前記粒状物の表面の状態を検査する検査部と、
前記環状搬送機構の前記搬送経路上の反転位置において、粒状物の表裏を反転させるとともに、前記搬送経路における粒状物の幅方向の位置を移動させる反転機構と、
を備え、
前記反転機構は、
前記幅方向に対して傾斜した第1軸を中心とする円錐状または角錐状の第1側面を有する第1傾斜ドラムと、
前記第1傾斜ドラムと前記幅方向に隣接し、前記幅方向に対して傾斜した第2軸を中心とする円錐状または角錐状の第2側面を有する第2傾斜ドラムと、
を有し、
前記第1傾斜ドラムは、前記環状搬送機構から受け渡される粒状物を、前記第1側面に吸着保持しつつ回転して、前記第2傾斜ドラムへ粒状物を受け渡し、
前記第2傾斜ドラムは、前記第1傾斜ドラムから受け渡される粒状物を、前記第2側面に吸着保持しつつ回転して、前記環状搬送機構へ粒状物を受け渡す、粒状物検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粒状物検査装置であって、
前記環状搬送機構は、粒状物を吸着保持する吸着孔が前記幅方向に複数配列された保持面を、前記搬送経路に沿って回動させ、
前記保持面は、前記幅方向に隣接する第1領域および第2領域を有し、
前記反転機構は、前記第1領域の吸着孔に保持された粒状物を、前記第2領域の吸着孔へ移動させる、粒状物検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の粒状物検査装置であって、
前記環状搬送機構の搬送方向に見たときの、前記第1傾斜ドラムの頂角と前記第2傾斜ドラムの頂角との和は、180°である、粒状物検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の粒状物検査装置であって、
前記環状搬送機構の搬送方向に見たときの、前記第1傾斜ドラムの頂角および前記第2傾斜ドラムの頂角は、いずれも90°である、粒状物検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の粒状物検査装置であって、
前記第1傾斜ドラムと前記第2傾斜ドラムとは、同一の形状および大きさを有する、粒状物検査装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の粒状物検査装置であって、
前記第1傾斜ドラムは、前記第1側面に、前記第1軸を中心として円環状に配列された複数の吸着孔を有し、
前記第2傾斜ドラムは、前記第2側面に、前記第2軸を中心として円環状に配列された複数の吸着孔を有し、
前記複数の吸着孔に、粒状物が1つずつ吸着保持される、粒状物検査装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の粒状物検査装置であって、
前記第1傾斜ドラムは、前記第1側面に、前記第1軸を中心とする円環状の吸着スリットを有し、
前記第2傾斜ドラムは、前記第2側面に、前記第2軸を中心とする円環状の吸着スリットを有し、
前記吸着スリットに、複数の粒状物が吸着保持される、粒状物検査装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の粒状物検査装置であって、
前記第2側面における粒状物の吸着力は、前記第1側面における粒状物の吸着力よりも大きい、粒状物検査装置。
【請求項9】
粒状物の表面の検査を行う粒状物検査装置であって、
粒状物を吸着保持しつつ、環状の搬送経路に沿って粒状物を搬送する環状搬送機構と、
前記環状搬送機構の前記搬送経路上の撮像位置において、粒状物の表面を撮像し、前記粒状物の表面の状態を検査する検査部と、
前記環状搬送機構の前記搬送経路上の反転位置において、粒状物の表裏を反転させるとともに、前記搬送経路における粒状物の搬送方向の位置を移動させる反転機構と、
を備え、
前記反転機構は、
前記搬送方向に対して傾斜した第1軸を中心とする円錐状または角錐状の第1側面を有する第1傾斜ドラムと、
前記第1傾斜ドラムと前記搬送方向に隣接し、前記搬送方向に対して傾斜した第2軸を中心とする円錐状または角錐状の第2側面を有する第2傾斜ドラムと、
を有し、
前記第1傾斜ドラムは、前記環状搬送機構から受け渡される粒状物を、前記第1側面に吸着保持しつつ回転して、前記第2傾斜ドラムへ粒状物を受け渡し、
前記第2傾斜ドラムは、前記第1傾斜ドラムから受け渡される粒状物を、前記第2側面に吸着保持しつつ回転して、前記環状搬送機構へ粒状物を受け渡す、粒状物検査装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の粒状物検査装置であって、
前記検査部は、
粒状物の表面を撮影するカメラ
を含む、粒状物検査装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の粒状物検査装置であって、
前記粒状物は錠剤である、粒状物検査装置。
【請求項12】
粒状物の表面の検査を行う粒状物検査方法であって、
a)環状の搬送経路に粒状物を搬入する工程と、
b)前記工程a)の後に、前記搬送経路に沿って粒状物を搬送しつつ、前記搬送経路上の撮像位置において、粒状物の第1面を撮像し、前記粒状物の表面の状態を検査する工程と、
c)前記工程b)の後に、前記搬送経路上の反転位置において、粒状物の表裏を反転させるとともに、前記搬送経路における粒状物の幅方向の位置を移動させる工程と、
d)前記工程c)の後に、前記搬送経路に沿って粒状物を搬送しつつ、前記撮像位置において、粒状物の第2面を撮像し、前記粒状物の表面の状態を検査する工程と、
e)前記工程d)の後に、前記搬送経路から粒状物を搬出する工程と、
を有し、
前記工程c)では、前記幅方向に対して傾斜した第1軸を中心とする円錐状または角錐状の第1側面を有する第1傾斜ドラムと、前記第1傾斜ドラムと前記幅方向に隣接し、前記幅方向に対して傾斜した第2軸を中心とする円錐状または角錐状の第2側面を有する第2傾斜ドラムとを用いて、前記第1傾斜ドラムにおいて、前記搬送経路から受け渡される粒状物を、前記第1側面に吸着保持しつつ回転して、前記第2傾斜ドラムへ粒状物を受け渡し、前記第2傾斜ドラムにおいて、前記第1傾斜ドラムから受け渡される粒状物を、前記第2側面に吸着保持しつつ回転して、前記搬送経路へ粒状物を受け渡す、粒状物検査方法。
【請求項13】
粒状物の表面の検査を行う粒状物検査方法であって、
a)環状の搬送経路に粒状物を搬入する工程と、
b)前記工程a)の後に、前記搬送経路に沿って粒状物を搬送しつつ、前記搬送経路上の撮像位置において、粒状物の第1面を撮像し、前記粒状物の表面の状態を検査する工程と、
c)前記工程b)の後に、前記搬送経路上の反転位置において、粒状物の表裏を反転させるとともに、前記搬送経路における粒状物の搬送方向の位置を移動させる工程と、
d)前記工程c)の後に、前記搬送経路に沿って粒状物を搬送しつつ、前記撮像位置において、粒状物の第2面を撮像し、前記粒状物の表面の状態を検査する工程と、
e)前記工程d)の後に、前記搬送経路から粒状物を搬出する工程と、
を有し、
前記工程c)では、前記搬送方向に対して傾斜した第1軸を中心とする円錐状または角錐状の第1側面を有する第1傾斜ドラムと、前記第1傾斜ドラムと前記搬送方向に隣接し、前記搬送方向に対して傾斜した第2軸を中心とする円錐状または角錐状の第2側面を有する第2傾斜ドラムとを用いて、前記第1傾斜ドラムにおいて、前記搬送経路から受け渡される粒状物を、前記第1側面に吸着保持しつつ回転して、前記第2傾斜ドラムへ粒状物を受け渡し、前記第2傾斜ドラムにおいて、前記第1傾斜ドラムから受け渡される粒状物を、前記第2側面に吸着保持しつつ回転して、前記搬送経路へ粒状物を受け渡す、粒状物検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状物の表面に所定の処理を行う粒状物処理装置および粒状物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品である錠剤の表面には、製品を識別するための文字やコードが印刷される。また、ラムネ等の錠菓にも、マークやイラストが印刷される場合がある。従来、このような錠剤・錠菓等の粒状物の表面に、インクジェット方式で画像を印刷する印刷装置が知られている。特に、近年では、後発医薬品の普及により、錠剤の種類が多様化している。このため、錠剤を識別しやすくするために、錠剤の表裏両面に、インクジェット方式で鮮明に印刷を行う技術が注目されている。
【0003】
特許文献1の印刷装置は、上流側の搬送部(3)と下流側の搬送部(4)とを有する。上流側の搬送部(3)では、錠剤を搬送しつつ、第1の印刷部(201)により、錠剤に印刷を行う。下流側の搬送部(4)では、上流側の搬送部(3)から錠剤を表裏反転させた状態で受け取って搬送しつつ、第2の印刷部(202)により、錠剤に印刷を行う。これにより、錠剤の表面および裏面に対して印刷を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-223323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、上流側の搬送部(3)と下流側の搬送部(4)との双方に、印刷部と、印刷部に付随する撮像部とが、設けられている。すなわち、特許文献1では、錠剤の一方の面に対して印刷および撮影を行うための処理部と、錠剤の他方の面に対して印刷および撮影を行うための処理部とが、別々に設けられている。このため、特許文献1の構造では、印刷装置の部品点数が多くなり、印刷装置を小型化することが困難であった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、粒状物の表裏両面に対して所定の処理を行うことが可能であり、かつ、従来よりも装置を小型化できる、粒状物検査装置および粒状物検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、粒状物の表面の検査を行う粒状物検査装置であって、粒状物を吸着保持しつつ、環状の搬送経路に沿って粒状物を搬送する環状搬送機構と、前記環状搬送機構の前記搬送経路上の撮像位置において、粒状物の表面を撮像し、前記粒状物の表面の状態を検査する検査部と、前記環状搬送機構の前記搬送経路上の反転位置において、粒状物の表裏を反転させるとともに、前記搬送経路における粒状物の幅方向の位置を移動させる反転機構と、を備え、前記反転機構は、前記幅方向に対して傾斜した第1軸を中心とする円錐状または角錐状の第1側面を有する第1傾斜ドラムと、前記第1傾斜ドラムと前記幅方向に隣接し、前記幅方向に対して傾斜した第2軸を中心とする円錐状または角錐状の第2側面を有する第2傾斜ドラムと、を有し、前記第1傾斜ドラムは、前記環状搬送機構から受け渡される粒状物を、前記第1側面に吸着保持しつつ回転して、前記第2傾斜ドラムへ粒状物を受け渡し、前記第2傾斜ドラムは、前記第1傾斜ドラムから受け渡される粒状物を、前記第2側面に吸着保持しつつ回転して、前記環状搬送機構へ粒状物を受け渡す。
【0008】
本願の第2発明は、第1発明の粒状物検査装置であって、前記環状搬送機構は、粒状物を吸着保持する吸着孔が前記幅方向に複数配列された保持面を、前記搬送経路に沿って回動させ、前記保持面は、前記幅方向に隣接する第1領域および第2領域を有し、前記反転機構は、前記第1領域の吸着孔に保持された粒状物を、前記第2領域の吸着孔へ移動させる。
【0009】
本願の第3発明は、第1発明の粒状物検査装置であって、前記環状搬送機構の搬送方向に見たときの、前記第1傾斜ドラムの頂角と前記第2傾斜ドラムの頂角との和は、180°である。
【0010】
本願の第4発明は、第3発明の粒状物検査装置であって、前記環状搬送機構の搬送方向に見たときの、前記第1傾斜ドラムの頂角および前記第2傾斜ドラムの頂角は、いずれも90°である。
【0011】
本願の第5発明は、第4発明の粒状物検査装置であって、前記第1傾斜ドラムと前記第2傾斜ドラムとは、同一の形状および大きさを有する。
【0012】
本願の第6発明は、第1発明から第5発明までのいずれか1発明の粒状物検査装置であって、前記第1傾斜ドラムは、前記第1側面に、前記第1軸を中心として円環状に配列された複数の吸着孔を有し、前記第2傾斜ドラムは、前記第2側面に、前記第2軸を中心として円環状に配列された複数の吸着孔を有し、前記複数の吸着孔に、粒状物が1つずつ吸着保持される。
【0013】
本願の第7発明は、第1発明から第5発明までのいずれか1発明の粒状物検査装置であって、前記第1傾斜ドラムは、前記第1側面に、前記第1軸を中心とする円環状の吸着スリットを有し、前記第2傾斜ドラムは、前記第2側面に、前記第2軸を中心とする円環状の吸着スリットを有し、前記吸着スリットに、複数の粒状物が吸着保持される。
【0014】
本願の第8発明は、第1発明から第7発明までのいずれか1発明の粒状物検査装置であって、前記第2側面における粒状物の吸着力は、前記第1側面における粒状物の吸着力よりも大きい。
【0015】
本願の第9発明は、粒状物の表面の検査を行う粒状物検査装置であって、粒状物を吸着保持しつつ、環状の搬送経路に沿って粒状物を搬送する環状搬送機構と、前記環状搬送機構の前記搬送経路上の撮像位置において、粒状物の表面を撮像し、前記粒状物の表面の状態を検査する検査部と、前記環状搬送機構の前記搬送経路上の反転位置において、粒状物の表裏を反転させるとともに、前記搬送経路における粒状物の搬送方向の位置を移動させる反転機構と、を備え、前記反転機構は、前記搬送方向に対して傾斜した第1軸を中心とする円錐状または角錐状の第1側面を有する第1傾斜ドラムと、前記第1傾斜ドラムと前記搬送方向に隣接し、前記搬送方向に対して傾斜した第2軸を中心とする円錐状または角錐状の第2側面を有する第2傾斜ドラムと、を有し、前記第1傾斜ドラムは、前記環状搬送機構から受け渡される粒状物を、前記第1側面に吸着保持しつつ回転して、前記第2傾斜ドラムへ粒状物を受け渡し、前記第2傾斜ドラムは、前記第1傾斜ドラムから受け渡される粒状物を、前記第2側面に吸着保持しつつ回転して、前記環状搬送機構へ粒状物を受け渡す。
【0016】
本願の第10発明は、第1発明から第9発明までのいずれか1発明の粒状物検査装置であって、前記検査部は、粒状物の表面を撮影するカメラを含む。
【0017】
本願の第11発明は、第1発明から第10発明までのいずれか1発明の粒状物検査装置であって、前記粒状物は錠剤である。
【0018】
本願の第12発明は、粒状物の表面の検査を行う粒状物検査方法であって、a)環状の搬送経路に粒状物を搬入する工程と、b)前記工程a)の後に、前記搬送経路に沿って粒状物を搬送しつつ、前記搬送経路上の撮像位置において、粒状物の第1面を撮像し、前記粒状物の表面の状態を検査する工程と、c)前記工程b)の後に、前記搬送経路上の反転位置において、粒状物の表裏を反転させるとともに、前記搬送経路における粒状物の幅方向の位置を移動させる工程と、d)前記工程c)の後に、前記搬送経路に沿って粒状物を搬送しつつ、前記撮像位置において、粒状物の第2面を撮像し、前記粒状物の表面の状態を検査する工程と、e)前記工程d)の後に、前記搬送経路から粒状物を搬出する工程と、を有し、前記工程c)では、前記幅方向に対して傾斜した第1軸を中心とする円錐状または角錐状の第1側面を有する第1傾斜ドラムと、前記第1傾斜ドラムと前記幅方向に隣接し、前記幅方向に対して傾斜した第2軸を中心とする円錐状または角錐状の第2側面を有する第2傾斜ドラムとを用いて、前記第1傾斜ドラムにおいて、前記搬送経路から受け渡される粒状物を、前記第1側面に吸着保持しつつ回転して、前記第2傾斜ドラムへ粒状物を受け渡し、前記第2傾斜ドラムにおいて、前記第1傾斜ドラムから受け渡される粒状物を、前記第2側面に吸着保持しつつ回転して、前記搬送経路へ粒状物を受け渡す。
【0019】
本願の第13発明は、粒状物の表面の検査を行う粒状物検査方法であって、a)環状の搬送経路に粒状物を搬入する工程と、b)前記工程a)の後に、前記搬送経路に沿って粒状物を搬送しつつ、前記搬送経路上の撮像位置において、粒状物の第1面を撮像し、前記粒状物の表面の状態を検査する工程と、c)前記工程b)の後に、前記搬送経路上の反転位置において、粒状物の表裏を反転させるとともに、前記搬送経路における粒状物の搬送方向の位置を移動させる工程と、d)前記工程c)の後に、前記搬送経路に沿って粒状物を搬送しつつ、前記撮像位置において、粒状物の第2面を撮像し、前記粒状物の表面の状態を検査する工程と、e)前記工程d)の後に、前記搬送経路から粒状物を搬出する工程と、を有し、前記工程c)では、前記搬送方向に対して傾斜した第1軸を中心とする円錐状または角錐状の第1側面を有する第1傾斜ドラムと、前記第1傾斜ドラムと前記搬送方向に隣接し、前記搬送方向に対して傾斜した第2軸を中心とする円錐状または角錐状の第2側面を有する第2傾斜ドラムとを用いて、前記第1傾斜ドラムにおいて、前記搬送経路から受け渡される粒状物を、前記第1側面に吸着保持しつつ回転して、前記第2傾斜ドラムへ粒状物を受け渡し、前記第2傾斜ドラムにおいて、前記第1傾斜ドラムから受け渡される粒状物を、前記第2側面に吸着保持しつつ回転して、前記搬送経路へ粒状物を受け渡す、粒状物検査方法。
【発明の効果】
【0020】
本願の第1発明~第13発明によれば、粒状物の両面に対して、搬送経路上の同一の処理位置において、所定の処理を行うことができる。これにより、装置の部品点数を低減できるとともに、装置を小型化できる。
【0021】
特に、本願の第1発明~第8発明および第12発明によれば、反転機構に必要な搬送方向の長さを抑制できる。
【0022】
特に、本願の第3発明によれば、同一の保持面において、粒状物の表裏を反転させるとともに、粒状物の幅方向の位置を移動させることができる。
【0023】
特に、本願の第5発明によれば、第1傾斜ドラムと第2傾斜ドラムとを、部品として共通化できる。
【0024】
特に、本願の第6発明によれば、第1傾斜面および第2傾斜面における吸着保持後の粒状物の位置ずれが生じにくい。
【0025】
特に、本願の第7発明によれば、粒状物の受け渡しの際に、多少の位置ずれがあったとしても、粒状物を保持できる。
【0026】
特に、本願の第8発明によれば、第1側面から第2側面への粒状物の受け渡し時に、粒状物の脱落が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】錠剤印刷装置の側面図である。
図2】錠剤印刷装置の上面図である。
図3】錠剤印刷装置の下面図である。
図4】環状搬送機構の部分斜視図である。
図5】ヘッドの下面図である。
図6】反転機構を搬送方向に見た図である。
図7】反転機構を搬送方向に見た図である。
図8】制御部と各部との接続を示したブロック図である。
図9】錠剤印刷装置における印刷処理の流れを示したフローチャートである。
図10】第1領域における錠剤の搬送の様子を示した図である。
図11】第2領域における錠剤の搬送の様子を示した図である。
図12】変形例に係る錠剤印刷装置の側面図である。
図13】変形例に係る反転機構を搬送方向に見た図である。
図14】変形例に係る錠剤印刷装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、環状搬送機構により錠剤が搬送される方向を「搬送方向」と称し、搬送方向に対して垂直かつ保持面に沿う方向を「幅方向」と称する。
【0029】
<1.錠剤印刷装置の全体構成>
図1は、本発明に係る粒状物処理装置の一例である錠剤印刷装置1の側面図である。図2は、錠剤印刷装置1の上面図である。図3は、錠剤印刷装置1の下面図である。
【0030】
この錠剤印刷装置1は、粒状物である複数の錠剤9を搬送しながら、各錠剤9の表裏両面に、製品名、製品コード、会社名、ロゴマーク等の画像を印刷する装置である。錠剤9は、素錠(裸錠)であってもよいし、糖衣錠、フィルムコーティング錠(FC錠)等のコーティング錠であってもよい。また、錠剤9は、硬カプセル剤および軟カプセル剤を含むカプセル剤であってもよい。また、本発明における「粒状物」は、医薬品としての錠剤に限らず、健康食品としての錠剤や、ラムネ等の錠菓であってもよい。
【0031】
図1図3に示すように、本実施形態の錠剤印刷装置1は、搬入機構10、環状搬送機構20、印刷部30、第1カメラ40、第2カメラ50、乾燥機構60、反転機構70、搬出機構80、および制御部90を備えている。
【0032】
搬入機構10は、錠剤印刷装置1に投入された複数の錠剤9を、環状搬送機構20へ搬入するための機構である。搬入機構10は、振動フィーダ、回転フィーダ、シュート等により構成される整列機構(図示省略)と、搬入ドラム11とを有する。錠剤印刷装置1に投入された複数の錠剤9は、整列機構により複数の列(本実施形態では、3列)に整列されて、搬入ドラム11の外周面に供給される。搬入ドラム11は、整列された複数の錠剤9を、外周面に吸着保持しつつ回転し、環状搬送機構20へ錠剤9を受け渡す。
【0033】
環状搬送機構20は、複数の錠剤9を保持しつつ、環状の搬送経路に沿って搬送する機構である。環状搬送機構20は、一対のプーリ21と、一対のプーリ21の間に掛け渡された環状の搬送ベルト22とを有する。一対のプーリ21の一方は、搬送用モータ23から得られる動力により回転する。これにより、搬送ベルト22が、図1中の矢印の方向に回動する。このとき、一対のプーリ21の他方は、搬送ベルト22の回動に伴い従動回転する。
【0034】
図4は、環状搬送機構20の部分斜視図である。図4に示すように、搬送ベルト22の外周面である保持面220には、複数の吸着孔221が設けられている。複数の吸着孔221は、搬送方向および幅方向に、等間隔に配列されている。また、図1に示すように、環状搬送機構20は、搬送ベルト22の内側の空間から気体を吸い出す吸引機構24を有する。吸引機構24を動作させると、搬送ベルト22の内側の空間が、大気圧よりも低い負圧となる。複数の錠剤9は、当該負圧によって、吸着孔221に吸着保持される。
【0035】
このように、複数の錠剤9は、搬送ベルト22の表面に、搬送方向よび幅方向に整列した状態で保持される。そして、環状搬送機構20は、搬送ベルト22を回動させることによって、複数の錠剤9を、環状の搬送経路に沿って搬送する。後述する4つのヘッド31の下方では、複数の錠剤9は、水平方向に搬送される。
【0036】
また、図1中に破線で示したように、環状搬送機構20は、第1ブロー機構25および第2ブロー機構26を有する。第1ブロー機構25は、搬送ベルト22の内側、かつ、後述する第1傾斜ドラム71と搬送ベルト22を介して対向する位置に、設けられている。第1ブロー機構25は、搬送ベルト22の複数の吸着孔221のうち、第1傾斜ドラム71と対向する吸着孔221のみに、気体を吹き付ける。そうすると、当該吸着孔221が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔221における錠剤9の吸着が解除され、搬送ベルト22から第1傾斜ドラム71へ、錠剤9が受け渡される。
【0037】
第2ブロー機構26は、搬送ベルト22の内側、かつ、後述する搬出シュート81と搬送ベルト22を介して対向する位置に、設けられている。第2ブロー機構26は、搬送ベルト22の複数の吸着孔221のうち、搬出シュート81と対向する吸着孔221のみに、気体を吹き付ける。そうすると、当該吸着孔221が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔221における錠剤9の吸着が解除され、搬送ベルト22から搬出シュート81を通って搬出コンベア82へ、錠剤9が受け渡される。
【0038】
図2および図3に示すように、本実施形態の搬送ベルト22の保持面220は、反転機構70による反転前の錠剤9を保持する第1領域A1と、反転後の錠剤9を保持する第2領域A2とを有する。第1領域A1と第2領域A2とは、幅方向に隣接する。本実施形態では、第1領域A1および第2領域A2に、吸着孔221が、幅方向に3列ずつ設けられる。上述した搬入機構10により搬入される錠剤9は、第1領域A1の吸着孔221に吸着保持される。また、両面に印刷がされた複数の錠剤9は、第2領域A2の吸着孔221から搬出機構80へ受け渡される。
【0039】
印刷部30は、搬送ベルト22により搬送される錠剤9の表面に、インクジェット方式で印刷を行う処理部である。図1および図2に示すように、本実施形態の印刷部30は、4つのヘッド31を有する。4つのヘッド31は、搬送ベルト22の上方に位置し、錠剤9の搬送方向に沿って、一列に配置されている。各ヘッド31は、搬送ベルト22の第1領域A1と第2領域A2との双方に跨がって、幅方向に延びる。4つのヘッド31は、錠剤9の表面に向けて、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色)のインク滴を吐出する。すると、これらの各色により形成される単色画像の重ね合わせによって、錠剤9の表面に、多色画像が記録される。なお、各ヘッド31から吐出されるインクには、日本薬局方、食品衛生法等で認可された原料により製造された可食性インクが使用される。
【0040】
図5は、1つのヘッド31の下面図である。図5には、搬送ベルト22と、搬送ベルト22に保持された複数の錠剤9とが、二点鎖線で示されている。図5中に拡大して示したように、ヘッド31の下面である吐出面310には、インク滴を吐出可能な複数のノズル311が設けられている。本実施形態では、ヘッド31の下面に、複数のノズル311が、搬送方向および幅方向に二次元的に配列されている。各ノズル311は、幅方向に位置をずらして配列されている。このように、複数のノズル311を二次元的に配置すれば、各ノズル311の幅方向の位置を、互いに接近させることができる。ただし、複数のノズル311は、幅方向に沿って一列に配列されていてもよい。
【0041】
ノズル311からのインク滴の吐出方式には、例えば、圧電素子であるピエゾ素子に電圧を加えて変形させることにより、ノズル311内のインクを加圧して吐出する、いわゆるピエゾ方式が用いられる。ただし、インク滴の吐出方式は、ヒータに通電してノズル311内のインクを加熱膨張させることにより吐出する、いわゆるサーマル方式であってもよい。
【0042】
第1カメラ40は、印刷前の錠剤9の表面を撮影するための処理部である。第1カメラ40は、搬入ドラム11よりも搬送経路の下流側かつ4つのヘッド31よりも搬送経路の上流側に位置する。また、第1カメラ40は、第1領域A1と第2領域A2との双方に跨がって、幅方向に延びる。第1カメラ40には、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子が幅方向に配列されたラインセンサが用いられる。第1カメラ40は、搬送ベルト22により搬送される複数の錠剤9を撮影する。撮影により取得された画像は、第1カメラ40から後述する制御部90へ送信される。制御部90は、第1カメラ40から得られた画像に基づいて、各吸着孔221における錠剤9の有無、錠剤9の位置、および錠剤9の姿勢を検出する。また、制御部90は、第1カメラ40から得られた画像に基づいて、各錠剤9に欠け等の欠陥が無いかどうかの検査も行う。
【0043】
第2カメラ50は、印刷後の錠剤9の表面を撮影するための処理部である。第2カメラ50は、4つのヘッド31よりも搬送経路の下流側かつ乾燥機構60よりも搬送経路の上流側に位置する。また、第2カメラ50は、第1領域A1と第2領域A2との双方に跨がって、幅方向に延びる。第2カメラ50には、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子が幅方向に配列されたラインセンサが用いられる。第2カメラ50は、搬送ベルト22により搬送される複数の錠剤9を撮影する。撮影により取得された画像は、第2カメラ50から後述する制御部90へ送信される。制御部90は、第2カメラ50から得られた画像に基づいて、錠剤9の表面に印刷された画像の良否を検査する。
【0044】
乾燥機構60は、錠剤9の表面に付着したインクを乾燥させる機構である。乾燥機構60は、第2カメラ50よりも搬送経路の下流側かつ後述する搬出シュート81よりも搬送経路の上流側に位置する。また、乾燥機構60は、第1領域A1と第2領域A2との双方に跨がって、幅方向に延びる。乾燥機構60には、例えば、搬送ベルト22により搬送される錠剤9へ向けて、加熱された気体(熱風)を吹き付ける、熱風供給機構が用いられる。錠剤9の表面に付着したインクは、熱風により乾燥して、錠剤9の表面に定着する。
【0045】
このように、本実施形態の錠剤印刷装置1は、印刷部30、第1カメラ40、第2カメラ50、および乾燥機構60の4つの処理部を有する。各処理部は、搬送経路上の各処理位置において、錠剤9の表面に対して、印刷、撮影、および乾燥の各処理を行う。
【0046】
反転機構70は、搬送ベルト22により搬送される錠剤9の表裏を反転させるとともに、第1領域A1から第2領域A2へ錠剤9を移動させる機構である。反転機構70は、後述する搬出シュート81よりも搬送経路の下流側かつ搬入ドラム11よりも搬送経路の上流側に位置する。以下では、搬送経路上の反転機構70が設けられる位置を「反転位置」と称する。
【0047】
図6および図7は、反転機構70を下側から搬送方向に見た図である。図6および図7に示すように、本実施形態の反転機構70は、第1傾斜ドラム71と第2傾斜ドラム72とを有する。第1傾斜ドラム71は、幅方向に対して傾斜した第1軸C1を中心とする円錐状の第1側面710を有する。第1軸C1の周りにおける第1側面710の一部は、搬送ベルト22の第1領域A1と、僅かな隙間を介して対向する。また、第1傾斜ドラム71は、第1モータ73の出力軸に固定されている。第1モータ73を駆動させると、第1傾斜ドラム71は、第1軸C1を中心として回転する。
【0048】
第2傾斜ドラム72は、幅方向に対して傾斜した第2軸C2を中心とする円錐状の第2側面720を有する。第1傾斜ドラム71と第2傾斜ドラム72とは、互いの頂部が対向するように、幅方向に隣接配置される。第2軸C2の周りにおける第2側面720の一部は、搬送ベルト22の第2領域A2と、僅かな隙間を介して対向する。また、第2軸C2の周りにおける第2側面720の他の一部は、第1側面710と、僅かな隙間を介して対向する。また、第2傾斜ドラム72は、第2モータ74の出力軸に固定されている。第2モータ74を駆動させると、第2傾斜ドラム72は、第2軸C2を中心として回転する。
【0049】
本実施形態では、搬送方向に見たときの、第1傾斜ドラム71の頂角と、第2傾斜ドラム72の頂角とは、いずれも90°である。また、保持面220に対する第1軸C1の傾斜角度は、45°である。また、保持面220に対する第2軸C2の傾斜角度は、45°である。したがって、第1側面710と第2側面720とは、保持面220に対して90°の位置において、互いに対向する。このように、第1傾斜ドラム71と第2傾斜ドラム72とを、同一の形状および同一の大きさとすれば、第1傾斜ドラム71と第2傾斜ドラム72とを、部品として共通化できる。これにより、錠剤印刷装置1の製造コストを低減できる。
【0050】
第1側面710には、複数の吸着孔711が設けられている。本実施形態では、第1側面710の母線に沿って等間隔に配列された3つの吸着孔711が、第1軸C1を中心として円環状に、等角度間隔で設けられている。同様に、第2側面720にも、複数の吸着孔721が設けられている。本実施形態では、第2側面720の母線に沿って等間隔に配列された3つの吸着孔721が、第2軸C2を中心として円環状に、等角度間隔で設けられている。
【0051】
第1傾斜ドラム71の内部空間の圧力は、図示を省略した吸引機構によって、大気圧よりも低い負圧に保たれている。第1傾斜ドラム71は、この負圧によって、複数の吸着孔711に、錠剤9を1つずつ保持する。同様に、第2傾斜ドラム72の内部空間の圧力も、図示を省略した吸引機構によって、大気圧よりも低い負圧に保たれている。第2傾斜ドラム72は、この負圧によって、複数の吸着孔721に、錠剤9を1つずつ保持する。
【0052】
また、図6中に破線で示したように、第1傾斜ドラム71の内部には、第3ブロー機構75が設けられている。第3ブロー機構75は、第1傾斜ドラム71の複数の吸着孔711のうち、第2傾斜ドラム72と対向する吸着孔711のみに、気体を吹き付ける。そうすると、当該吸着孔711が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔711における錠剤9の吸着が解除され、第1傾斜ドラム71の吸着孔711から、第2傾斜ドラム72の吸着孔721へ、錠剤9が受け渡される。
【0053】
また、図6中に破線で示したように、第2傾斜ドラム72の内部には、第4ブロー機構76が設けられている。第4ブロー機構76は、第2傾斜ドラム72の複数の吸着孔721のうち、搬送ベルト22の第2領域A2と対向する吸着孔721のみに、気体を吹き付ける。そうすると、当該吸着孔721が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔721における錠剤9の吸着が解除され、第2傾斜ドラム72の吸着孔721から、搬送ベルト22の第2領域A2の吸着孔221へ、錠剤9が受け渡される。
【0054】
図7に示すように、搬送ベルト22の第1領域A1の吸着孔221に保持されて、反転位置まで搬送された錠剤9は、第1傾斜ドラム71へ受け渡される。第1傾斜ドラム71は、搬送ベルト22から受け取った錠剤9を、第1側面710の吸着孔711に吸着保持しつつ回転して、第2傾斜ドラム72へ受け渡す。その後、第2傾斜ドラム72は、第1傾斜ドラム71から受け取った錠剤9を、第2側面720の吸着孔721に吸着保持しつつ回転して、搬送ベルト22の第2領域A2の吸着孔221へ受け渡す。これにより、第1領域A1から第2領域A2へ、錠剤9の幅方向の位置が移動するとともに、錠剤9の表裏が反転する。
【0055】
第2傾斜ドラム72の複数の吸着孔721の吸着力は、第1傾斜ドラム71の複数の吸着孔711の吸着力よりも、やや大きくするとよい。そうすれば、第1傾斜ドラム71の吸着孔711から第2傾斜ドラム72の吸着孔721への錠剤9の受け渡し時に、錠剤9の脱落が生じにくくなる。ただし、第1傾斜ドラム71の複数の吸着孔711の吸着力と、第2傾斜ドラム72の複数の吸着孔721の吸着力とは、同一であってもよい。
【0056】
搬出機構80は、環状搬送機構20から錠剤印刷装置1の外部へ、複数の錠剤9を搬出するための機構である。図1および図3に示すように、搬出機構80は、搬出シュート81と搬出コンベア82とを有する。搬出シュート81は、乾燥機構60よりも搬送経路の下流側かつ反転機構70よりも搬送経路の上流側に位置する。また、搬出シュート81は、搬送ベルト22の第2領域A2に対向している。第2領域A2の吸着孔221に吸着された錠剤9が、搬出シュート81の位置に到達すると、第2ブロー機構26により錠剤9の吸着が解除される。これにより、搬送ベルト22の第2領域A2から、搬出シュート81を通って搬出コンベア82の上面へ、錠剤9が落下する。そして、落下した錠剤9が、搬出コンベア82によって、錠剤印刷装置1の外部へ搬出される。
【0057】
制御部90は、錠剤印刷装置1内の各部を動作制御するための手段である。図8は、制御部90と、錠剤印刷装置1内の各部との接続を示したブロック図である。図8中に概念的に示したように、制御部90は、CPU等のプロセッサ91、RAM等のメモリ92、およびハードディスクドライブ等の記憶部93を有するコンピュータにより構成される。記憶部93内には、印刷処理を実行するためのコンピュータプログラムCPが、インストールされている。
【0058】
また、図4に示すように、制御部90は、上述した搬入機構10(整列機構および搬入ドラム11を含む)、環状搬送機構20(搬送用モータ23、吸引機構24、第1ブロー機構25、および第2ブロー機構26を含む)、印刷部30(4つのヘッド31を含む)、第1カメラ40、第2カメラ50、乾燥機構60、反転機構70(第1モータ73、第2モータ74、および吸引機構を含む)、および搬出機構80(搬出コンベア82を含む)と、それぞれ有線または無線により通信可能に接続されている。制御部90は、記憶部93に記憶されたコンピュータプログラムCPやデータをメモリ92に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムCPに基づいて、プロセッサ91が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、複数の錠剤9に対する印刷処理が進行する。
【0059】
<2.処理の流れについて>
続いて、上記の錠剤印刷装置1を用いた印刷処理の流れについて、説明する。以下では、ある1つの錠剤9に対して行われる処理について、順に説明する。ただし、この錠剤印刷装置1では、複数の錠剤9が順次に搬送されつつ処理され、錠剤印刷装置1の内部には、同時に複数の錠剤9が存在する。
【0060】
図9は、錠剤印刷装置1における印刷処理の流れを示したフローチャートである。図10は、図9のステップS1~S6における錠剤9の搬送(第1領域A1における錠剤9の搬送)の様子を示した図である。図11は、図10のステップS6~S11における錠剤9の搬送(第2領域A2における錠剤9の搬送)の様子を示した図である。
【0061】
錠剤印刷装置1に錠剤9が投入されると、まず、搬入機構10が、錠剤9を環状搬送機構20へ搬入する(ステップS1)。搬入された錠剤9は、搬送ベルト22の第1領域A1の吸着孔221に吸着保持される。そして、搬送ベルト22の回動に伴い、環状の搬送経路に沿って、錠剤9が搬送される。
【0062】
以下では、第1領域A1の吸着孔221に保持された状態において、錠剤9の外側を向く面を「第1面」と称する。また、当該状態において、吸着孔221に吸着される面を「第2面」と称する。図2および図3では、第1面と第2面とを区別するために、錠剤9の第1面に斜線を付している。ただし、この「第1面」および「第2面」は、錠剤9の本来の表裏面とは無関係である。例えば、錠剤9が割線錠である場合に、第1領域A1に保持される複数の錠剤9の中に、割線を有する面が第1面となる錠剤9と、割線が無い面が第1面となる錠剤9とが、混在していてもよい。
【0063】
錠剤9が第1カメラ40の下方に到達すると、第1カメラ40は、錠剤9の第1面を撮影する。これにより、錠剤9の第1面の画像データを取得する。取得された画像データは、第1カメラ40から制御部90へ送信される。また、制御部90は、第1カメラ40から受信した画像データに基づいて、第1面の印刷前検査を行う(ステップS2)。具体的には、吸着孔221における錠剤9の有無、錠剤9の表裏、錠剤9の鉛直軸周りの回転姿勢、錠剤9の吸着孔221に対する位置ずれ、錠剤9の形状欠陥の有無、等が検査される。
【0064】
次に、錠剤9が印刷部30の下方に到達すると、4つのヘッド31が、錠剤9の第1面に向けてインク滴を吐出する。これにより、錠剤9の第1面に画像が印刷される(ステップS3)。このとき、制御部90は、上述したステップS2の検査結果に基づいて、各錠剤9に印刷すべき画像を調整する。例えば、表面用の画像と裏面用の画像とのうち、各錠剤9の表裏に応じて適切な画像を選択し、選択された画像を、各錠剤9の回転姿勢に応じて回転させる。そして、調整後の画像に基づいて、ヘッド31に印刷信号を入力する。その結果、各錠剤9の第1面に、適切な画像が適切な姿勢で印刷される。
【0065】
続いて、錠剤9が第2カメラ50の下方に到達すると、第2カメラ50は、錠剤9の第1面を撮影する。これにより、錠剤9の第1面の画像データを取得する。取得された画像データは、第2カメラ50から制御部90へ送信される。また、制御部90は、第2カメラ50から受信した画像データに基づいて、第1面の印刷後検査を行う(ステップS4)。具体的には、制御部90は、例えば、第2カメラ50から受信した画像データと、予め用意された正常画像のデータとを、比較することにより、各錠剤9の第1面に印刷された画像が正常であるか否かを判定する。
【0066】
続いて、錠剤9が乾燥機構60の位置に到達すると、乾燥機構60は、錠剤9の第1面に向けて、熱風を吹き付ける。これにより、錠剤9の第1面に付着したインクが乾燥して、第1面にインクが定着する(ステップS5)。
【0067】
その後、錠剤9が反転位置に到達すると、反転機構70が、錠剤9の幅方向の位置を移動させるとともに、錠剤9の表裏を反転させる(ステップS6)。具体的には、まず、第1傾斜ドラム71が、第1領域A1から受け渡される錠剤9を、吸着保持しつつ回転し、第2傾斜ドラム72へ受け渡す。そして、第2傾斜ドラム72が、第1傾斜ドラム71から受け取った錠剤9を、吸着保持しつつ回転し、第2領域A2へ錠剤9を受け渡す。これにより、搬送ベルト22の第1領域A1から第2領域A2へ、錠剤9が移動する。また、錠剤9は、第2面を外側に向けた姿勢で、第2領域A2の吸着孔221に吸着保持される。
【0068】
続いて、錠剤9が第1カメラ40の下方に到達すると、第1カメラ40は、錠剤9の第2面を撮影する。これにより、錠剤9の第2面の画像データを取得する。取得された画像データは、第1カメラ40から制御部90へ送信される。また、制御部90は、第1カメラ40から受信した画像データに基づいて、第2面の印刷前検査を行う(ステップS7)。具体的には、吸着孔221における錠剤9の有無、錠剤9の表裏、錠剤9の鉛直軸周りの回転姿勢、錠剤9の吸着孔221に対する位置ずれ、錠剤9の形状欠陥の有無、等が検査される。
【0069】
次に、錠剤9が印刷部30の下方に到達すると、4つのヘッド31が、錠剤9の第2面に向けてインク滴を吐出する。これにより、錠剤9の第2面に画像が印刷される(ステップS8)。このとき、制御部90は、上述したステップS7の検査結果に基づいて、各錠剤9に印刷すべき画像を調整する。例えば、表面用の画像と裏面用の画像とのうち、各錠剤9の表裏に応じて適切な画像を選択し、選択された画像を、各錠剤9の回転姿勢に応じて回転させる。そして、調整後の画像に基づいて、ヘッド31に印刷信号を入力する。その結果、各錠剤9の第2面に、適切な画像が適切な姿勢で印刷される。
【0070】
続いて、錠剤9が第2カメラ50の下方に到達すると、第2カメラ50は、錠剤9の第2面を撮影する。これにより、錠剤9の第2面の画像データを取得する。取得された画像データは、第2カメラ50から制御部90へ送信される。また、制御部90は、第2カメラ50から受信した画像データに基づいて、第2面の印刷後検査を行う(ステップS9)。具体的には、制御部90は、例えば、第2カメラ50から受信した画像データと、予め用意された正常画像のデータとを、比較することにより、各錠剤9の第2面に印刷された画像が正常であるか否かを判定する。
【0071】
続いて、錠剤9が乾燥機構60の位置に到達すると、乾燥機構60は、錠剤9の第2面に向けて、熱風を吹き付ける。これにより、錠剤9の第2面に付着したインクが乾燥して、第2面にインクが定着する(ステップS10)。
【0072】
その後、錠剤9が搬出シュート81の位置に到達すると、搬送ベルト22から搬出シュート81を通って搬出コンベア82へ、錠剤9が落下する。そして、搬出コンベア82により、錠剤9が錠剤印刷装置1の外部へ搬出される(ステップS11)。
【0073】
以上のように、この錠剤印刷装置1は、環状の搬送経路に沿って錠剤9を搬送する。そして、搬送経路の一部において、錠剤9の表裏を反転させるとともに、錠剤9の幅方向の位置を移動させる。このため、錠剤9の両面に対して、搬送方向の同じ位置において、第1カメラ40による撮影、印刷部30による印刷、第2カメラ50による撮影、および乾燥機構60による乾燥、の各処理を実行できる。したがって、第1面に対するこれらの処理と、第2面に対するこれらの処理とを、別々の位置において行う場合と比べて、錠剤印刷装置1の部品点数を低減できる。また、錠剤印刷装置1を小型化できる。
【0074】
特に、本実施形態では、第1傾斜ドラム71および第2傾斜ドラム72を用いて、錠剤9の表裏の反転と、幅方向の移動とを実現している。この機構によれば、搬送方向の位置を変化させることなく、錠剤9の表裏の反転と、幅方向の移動とを、行うことができる。したがって、反転機構70に必要な搬送方向の長さを抑制できる。これにより、錠剤印刷装置1をより小型化できる。
【0075】
<3.変形例>
以上、本発明の主たる実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0076】
<3-1.第1変形例>
上記の実施形態では、反転機構70が、錠剤9の表裏を反転させるとともに、錠剤9の幅方向の位置を移動させていた。しかしながら、反転機構70は、錠剤9の幅方向の位置を移動させることなく、錠剤9の表裏を反転させるものであってもよい。図12は、そのような反転機構70を備えた錠剤印刷装置1の側面図である。図12の例では、乾燥機構60よりも搬送経路の下流側、かつ、排出シュート81よりも搬送経路の上流側の反転位置に、第1ブロー機構25および反転機構70が設けられている。
【0077】
この例では、搬送ベルト22の保持面220に、反転前の錠剤9と、反転後の錠剤9とが、搬送方向に3つずつ交互に配列される。図12では、反転前の錠剤9に、斜線を付している。第1ブロー機構25は、反転前の錠剤9が反転位置に到達すると、当該錠剤9に向けて気体を吹き付ける。これにより、搬送ベルト22に保持されつつ搬送される複数の錠剤9のうち、反転前の錠剤9のみが、反転機構70へ受け渡される。
【0078】
図12の反転機構70は、上記の実施形態の反転機構70と同等の構成を有する。ただし、図12の例では、第1傾斜ドラム71と第2傾斜ドラム72とが、搬送方向に隣接配置されている。このため、搬送ベルト22から錠剤9を受け取った反転機構70は、錠剤9の表裏を反転させつつ、錠剤9を搬送方向へ移動させる。そして、反転後の錠剤9を、搬送ベルト22の吸着孔220へ受け渡す。なお、反転後の錠剤9を保持する吸着孔220は、反転前の錠剤9を保持していた吸着孔220と同じ吸着孔220であってもよいし、搬送方向の異なる位置の吸着孔220であってもよい。
【0079】
このような構成でも、1つの環状搬送機構20の中で、錠剤9の両面に対して、第1カメラ40による撮影、印刷部30による印刷、第2カメラ50による撮影、および乾燥機構60による乾燥、の各処理を実行できる。したがって、第1面に対するこれらの処理と、第2面に対するこれらの処理とを、別々の環状搬送機構において行う場合と比べて、錠剤印刷装置1の部品点数を低減できる。また、錠剤印刷装置1を小型化できる。
【0080】
<3-2.第2変形例>
上記の実施形態の第1傾斜ドラム71および第2傾斜ドラム72は、複数の小孔である吸着孔711,721を有していた。しかしながら、図13に示すように、第1傾斜ドラム71は、第1側面710に、第1軸C1を中心とする円環状の吸着スリット712を有していてもよい。また、第2傾斜ドラム72は、第2側面720に、第2軸C2を中心とする円環状の吸着スリット722を有していてもよい。そして、これらの吸着スリット712,722に、複数の錠剤9を吸着保持してもよい。このようにすれば、吸着スリット712,722の任意の位置において、錠剤9を吸着保持できる。したがって、錠剤9の受け渡しの際に、錠剤9に多少の位置ずれがあったとしても、錠剤9を吸着保持できる。
【0081】
ただし、上記の実施形態のように、小孔である吸着孔711,721で錠剤9を吸着保持する方が、吸着後の錠剤9の位置ずれが生じにくいというメリットがある。
【0082】
<3-3.第3変形例>
上記の実施形態では、搬送方向に見たときの、第1傾斜ドラム71の頂角と、第2傾斜ドラム72の頂角とは、いずれも90°であった。しかしながら、第1傾斜ドラム71の頂角および第2傾斜ドラム72の頂角は、必ずしも90°でなくてもよい。ただし、同一の保持面220において、錠剤9を反転させつつ移動させたい場合には、搬送方向に見たときの第1傾斜ドラム71の頂角と第2傾斜ドラム72の頂角との和を、180°とすることが好ましい。例えば、搬送方向に見たときの第1傾斜ドラム71の頂角を60°とし、搬送方向に見たときの第2傾斜ドラム72の頂角を120°としてもよい。
【0083】
<3-4.第4変形例>
上記の実施形態では、第1傾斜ドラム71の第1側面710は、第1軸C1を中心とする円錐状の面であった。また、第2傾斜ドラム72の第2側面720は、第2軸C2を中心とする円錐状の面であった。しかしながら、第1側面710および第2側面720は、四角錐、六角錐、八角錐などの多角錐状の面であってもよい。
【0084】
<3-5.第5変形例>
上記の実施形態では、搬送ベルト22の保持面220が、幅方向の中央を境として、第1領域A1と第2領域A2とに2分割されていた。しかしながら、第1領域A1および第2領域A2の位置関係は、必ずしも上記の通りでなくてもよい。例えば、図14のように、搬送ベルト22の保持面220に、複数の第1領域A1と、複数の第2領域A2とが設けられていてもよい。そして、第1領域A1と第2領域A2とが、幅方向に交互に配列されていてもよい。この場合、第1領域A1から第2領域A2へ錠剤9を反転させつつ移動させる反転機構が、複数設けられていてもよい。
【0085】
<3-6.他の変形例>
また、上記の実施形態の反転機構70は、第1傾斜ドラム71と第2傾斜ドラム72とを有するものであった。しかしながら、反転機構70は、他の機構により、錠剤9の表裏の反転と幅方向の移動とを実現するものであってもよい。例えば、錠剤9を搬送ベルト22から他の2つの搬送ベルトに順次に移載して、再び搬送ベルト22へ移載することによって、錠剤9の表裏を反転させつつ、錠剤9の幅方向の位置を移動させてもよい。
【0086】
また、上記の実施形態では、印刷部30に、4つのヘッド31が設けられていた。しかしながら、印刷部30に含まれるヘッド31の数は、1~3つであってもよく、5つ以上であってもよい。
【0087】
また、上記の実施形態の錠剤印刷装置1は、環状搬送機構20の搬送経路上において錠剤9に処理を行う処理部として、印刷部30、第1カメラ40、第2カメラ50、および乾燥機構60を備えていた。しかしながら、錠剤印刷装置1は、これらの処理部のうちの一部のみを備えていてもよい。また、錠剤印刷装置1は、他の処理部を備えていてもよい。
【0088】
また、装置内の細部の構成については、本願の各図と相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 錠剤印刷装置
9 錠剤
10 搬入機構
20 環状搬送機構
22 搬送ベルト
30 印刷部
31 ヘッド
40 第1カメラ
50 第2カメラ
60 乾燥機構
70 反転機構
71 第1傾斜ドラム
72 第2傾斜ドラム
73 第1モータ
74 第2モータ
80 搬出機構
90 制御部
220 保持面
221 吸着孔
710 第1側面
711 吸着孔
712 吸着スリット
720 第2側面
721 吸着孔
722 吸着スリット
A1 第1領域
A2 第2領域
C1 第1軸
C2 第2軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図13
図14