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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】蓋を有する保護素子
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/175 20060101AFI20230823BHJP
   H01H 85/045 20060101ALI20230823BHJP
   H01H 85/06 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
H01H85/175
H01H85/045 B
H01H85/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022127125
(22)【出願日】2022-08-09
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】111118418
(32)【優先日】2022-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】510101697
【氏名又は名称】功得電子工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Conquer Electoronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.26,Wucyuan 5th RD.,Wugu Dist.,New Taipei City,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】邱 鴻智
(72)【発明者】
【氏名】邱 柏碩
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/142141(WO,A1)
【文献】特開2013-201064(JP,A)
【文献】国際公開第2015/025885(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0312600(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/04 - 85/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体、蓋及び融剤を備えた保護素子であって、
前記本体は、
電気絶縁材料からなり、第1表面及び1第2の表面を有する台座と、
前記台座の第1表面に形成された内側接続層と、
前記台座の第2の表面に形成されて前記内側接続層と電気的に接続された外側接続層と、
前記台座の第1表面に設置されて前記内側接続層と電気的に接続された低融点合金層であって、少なくとも一つの溶断領域を有し、各前記溶断領域は、当該低融点合金層と前記内側接続層との接続箇所に隣接している、低融点合金層と、を有し、
前記蓋は前記本体に覆設され、前記蓋の内側面には、互いに連通する収容溝及び少なくとも一つのガイド路が設けられ、各前記ガイド路は、前記低融点合金層の溶断領域のうちの一つに対応し、
前記融剤は前記蓋の収容溝内に点状に設けられ、前記保護素子の温度が上昇し始めると、前記融剤は溶融状態になって前記収容溝から前記ガイド路に流入し、前記低融点合金層の溶断領域上に配置される、保護素子。
【請求項2】
前記蓋のガイド路の数は二つであり、前記二つのガイド路は前記収容溝の両側に夫々位置している、請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
前記ガイド路は、互いに対して平行になるように配置され、且つ前記収容溝に対して直交になるように配置されている、請求項2に記載の保護素子。
【請求項4】
前記収容溝は、収容空間と、前記収容空間の両側に夫々配置されている二つの側方止め壁とによって構成され、
各前記ガイド路は、前記側方止め壁の一方の端部に直交して配置された突起リブを有し、
前記突起リブは、前記収容溝の収容空間に隣接し且つ前記収容空間と互いに連通する段差部を有し、
前記段差部の、前記収容空間から離間した側部は長側壁となっている、請求項3に記載の保護素子。
【請求項5】
前記突起リブの、前記側方止め壁に隣接する低壁の厚みが、前記側方止め壁の厚みよりも小さい、請求項4に記載の保護素子。
【請求項6】
前記台座によって覆われるように前記台座内に埋設された発熱層を更に備え、
前記発熱層は、前記外側接続層及び前記低融点合金層と電気的に接続されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項7】
前記発熱層、前記外側接続層及び前記低融点合金層と夫々電気的に接続されている発熱電極ユニットを更に備え、
前記発熱層は、前記発熱電極ユニットを介して前記外側接続層及び前記低融点合金層と電気的に接続されている、請求項6に記載の保護素子。
【請求項8】
前記発熱電極ユニットは内側発熱電極及び外側発熱電極を有し、
前記内側発熱電極は、前記低融点合金層によって覆われるように前記台座の第1表面に設置されて、前記発熱層及び前記低融点合金層と夫々電気的に接続され、
前記外側発熱電極は、前記台座の第2の表面に設置されて前記発熱層及び前記外側接続層と夫々電気的に接続されている、請求項7に記載の保護素子。
【請求項9】
前記内側接続層は、前記第1表面の二つの長辺の近傍に夫々配置された二つの内側ループ電極を有し、
前記外側接続層は、前記第2の表面の二つの長辺の近傍に夫々配置され、且つ前記内側ループ電極と夫々電気的に接続されている二つの外側ループ電極を有し、
前記低融点合金層は、前記二つの内側ループ電極に跨設され、
前記低融点合金層の溶断領域の数は二つであり、当該二つの溶断領域は、前記二つの内側ループ電極に夫々隣接している、請求項1から5のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項10】
前記内側接続層は、前記第1表面の二つの長辺の近傍に夫々配置された二つの内側ループ電極を有し、
前記外側接続層は、前記第2の表面の二つの長辺の近傍に夫々配置され、且つ前記内側ループ電極と夫々電気的に接続されている二つの外側ループ電極を有し、
前記低融点合金層は、前記二つの内側ループ電極に跨設され、
前記低融点合金層の溶断領域の数は二つであり、当該二つの溶断領域は、前記二つの内側ループ電極に夫々隣接している、請求項8に記載の保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路において他の電子部品と接続して電子部品を瞬間的過電流による破壊から守る保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、充電回路には、過電流や過電圧などの異常状態になったときに充電回路の充電ループを遮断して充電回路を守る保護素子が設けられている。従来の保護素子としては、電極層と接続する低融点合金層を本体に配置したものが一般的に知られている。このような保護素子は、閉回路であるときに、電極層を介して低融点合金層に電流が流れる。そして、過電流又は過電圧が流れると、低融点合金層が過熱により溶断して回路が遮断され、その結果、過電流又は過電圧による破壊が回避される。
【0003】
従来の保護素子の多くは、その低融点合金層に融剤が塗布されている。融剤は、低融点合金層の溶断を促進させる役割を果たすだけではなく、溶断される前の低融点合金層の酸化を抑制することもできる。しかしながら、低融点合金層に融剤を均一に塗布する作業は手間がかかる場合が多いため、改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低融点合金層に融剤を均一に塗布する作業にかかる手間を軽減できるように構造が改良された保護素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明に係る保護素子の特徴は、
本体、蓋及び融剤を備え、
前記本体は、
電気絶縁材料からなり、第1表面及び1第2の表面を有する台座と、
前記台座の第1表面に形成された内側接続層と、
前記台座の第2の表面に形成されて前記内側接続層と電気的に接続された外側接続層と、
前記台座の第1表面に設置されて前記内側接続層と電気的に接続された低融点合金層であって、少なくとも一つの溶断領域を有し、各前記溶断領域は、当該低融点合金層と前記内側接続層との接続箇所に隣接している、低融点合金層と、を有し、
前記蓋は前記本体に覆設され、前記蓋の内側面には、互いに連通する収容溝及び少なくとも一つのガイド路が設けられ、各前記ガイド路は、前記低融点合金層の溶断領域のうちの一つに対応し、
前記融剤は前記蓋の収容溝内に点状に設けられ、前記保護素子の温度が上昇し始めると、前記融剤は溶融状態になって前記収容溝から前記ガイド路に流入し、前記低融点合金層の溶断領域上に配置される点にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る保護素子は、蓋に収容溝及びガイド路を設ける構成とすることにより、熔融状態の融剤を低融点合金層の溶断領域に保持することを可能にした。その結果、保護素子の製造時には、融剤を収容溝内に設ければ済むので、製造工程を減らし、製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る保護素子を示す斜視図である。
図2】本発明に係る保護素子を示す分解斜視図である。
図3図2のA-A線に沿った台座の断面図である。
図4図2のB-Bに沿った台座の断面図である。
図5】本発明に係る保護素子を示す他の角度での分解斜視図である。
図6】融剤が溶融する前の本発明に係る保護素子を一方の側面から見た断面図である。
図7】融剤が溶融する前の本発明に係る保護素子を他方の側面から見た断面図である。
図8】融剤が溶融した後の本発明に係る保護素子を一方の側面から見た断面図である。
図9】融剤が溶融した後の本発明に係る保護素子を他方の側面から見た断面図である。
図10】蓋を透視して示す、融剤が溶融した後の本発明に係る保護素子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の意図する目的を達成するために採用された技術的手段を、実施形態を用いて図面を参照しながら説明する。ここで、図面は、構成要素とそのアセンブリ間の関係を説明することによって構造又は方法に係る本発明を説明するためのものに過ぎないので、簡略化されている。したがって、図面に示された構成要素は、実際の数、実際の形状、実際の寸法及び実際のスケールで示されているわけではなく、図面に示された構成要素の寸法又はスケールは、拡大又は簡略化されている。より理解しやすいように、図中の構成要素を実際の数、実際の形状、実際の寸法やスケールから適宜変更しているが、実際の要素のレイアウトはより複雑である可能性がある。
【0009】
図1に示すように、本発明に係る保護素子は、本体10及び蓋20を備えている。
【0010】
図1図4に示すように、本体10は、台座11、内側接続層12、外側接続層13、発熱層14、及び低融点合金層15を有している。台座11は、単一の電気絶縁材料からなるものであり、第1表面111及び1第2の表面112を有している。内側接続層12は台座11の第1表面111に形成されている。外側接続層13は、台座11の第2の表面112に形成され且つ内側接続層12と電気的に接続されている。外側接続層13は、外部の充電ループと電気的に接続するためのものである。発熱層14は、台座11によって覆われるように台座11内に埋設されている。発熱層14は、外側接続層13と電気的に接続されている。低融点合金層15は、台座11の第1表面111に形成され且つ内側接続層12及び発熱層14と電気的に接続されている。低融点合金層15は、内側接続層12と電気的に接続されている箇所に隣接する少なくとも一つの溶断領域151を有している。
【0011】
一実施形態において、内側接続層12は、第1表面111の二つの長辺の近傍に夫々配置されている二つの内側ループ電極121を有している。外側接続層13は、第2の表面112の二つの長辺の近傍に夫々配置され、且つ内側ループ電極121と夫々電気的に接続されている二つの外側ループ電極131を有している。低融点合金層15は、二つの内側ループ電極121に跨設されている。低融点合金層15が有する溶断領域151の数は二つであり、これらの溶断領域151は、二つの内側ループ電極121に隣接している。外側ループ電極131を介して外側接続層13が外部の充電ループと接続されたとき、外側ループ電極131、内側ループ電極121及び低融点合金層15を電流が流れる閉回路が形成される。
【0012】
図2図5図7に示すように、蓋20は本体10に覆設されている。蓋20の内側面21には、互いに連通する収容溝22及び少なくとも一つのガイド路23が設けられている。各ガイド路23は、低融点合金層15の溶断領域151のうちの一つに対応している。収容溝22内には、粘度の高い物質である融剤30が点状に設けられている。電流が流れて全体の温度が上昇し始めると、融剤30は溶融状態(図8図10参照)になるが、溶融状態の融剤30はサイフォンの原理により収容溝22からガイド路23に流入し、その結果、低融点合金層15の溶断領域151上に自ずと配置される。これにより、低融点合金層15を守ること及び溶断領域151の確実な溶断を促進させることが可能になる。一実施形態において、蓋20に設けられたガイド路23の数は二つである。これら二つのガイド路23は収容溝22の両側に夫々位置し、各ガイド路23は、溶断領域151のうちの一つに対応している。二つのガイド路23は互いに対して平行になるように配置され、且つ収容溝22に対して直交になるように配置されている。各ガイド路23の長さは、収容溝22の長さよりも長い。
【0013】
一実施形態において、収容溝22は、収容空間222と、収容空間222の両側に夫々配置されている二つの側方止め壁221とによって構成されている。各ガイド路23は、側方止め壁221の一方の端部に直交して配置された突起リブ231を有している。突起リブ231は、側方止め壁221に隣接するその低壁233の厚みが側方止め壁221の厚みよりも小さくなるように、段差部232(すなわち厚みが異なる連續した凹溝)を有している。段差部232は収容溝22の収容空間222に隣接し且つ収容空間222と連通している。段差部232の、収容空間222から離間した側部は長側壁234となっている。図8図10に示すように、側方止め壁221及び収容空間222を設けることは、融剤30を点状に設ける際の位置合わせを容易にし、且つ初期位置への融剤30の保持に役に立つ。また、融剤30が溶融して収容空間222から段差部232に流入した際(図8図10参照)、長側壁234は、融剤30が溶断領域151に保持されるように、融剤30の流れを効果的に制御できる。一実施形態において、長側壁234の下縁は連続した弧状部に構成されてもよい。この場合、長側壁234を低融点合金層15に近接させた際に、連続した弧状部の下縁と低融点合金層15との接触面積が低減するので、低融点合金層15が損傷することを回避することができる。
【0014】
外部の充電ループが動作すると、電流は外側接続層13から導入されて内側接続層12及び低融点合金層15を流れていく。ここで、内側接続層12と低融点合金層15との接続箇所に溶断領域151が隣接していることから、過電流が流れて回路温度が上昇すると、これに反応して溶断領域151の温度が真っ先に上昇することになる。更に、ガイド路23の設置により融剤30が溶断領域151に確実的に保持されるので、溶断領域151の溶断を融剤30によって促進させることができる。その結果、回路を素早く遮断して外部の充電ループを破壊から守ることが可能になる。
【0015】
一実施形態において、図2図4に示すように、発熱層14は発熱電極ユニット16と電気的に接続されており、発熱電極ユニット16は、外側接続層13及び低融点合金層15と夫々電気的に接続されている。この構成では、外部の充電ループからの電流が流れると発熱層14が発熱するので、台座11内には熱が蓄積されるのであるが、蓄積された熱が台座11を介して低融点合金層15に伝達されることで、低融点合金層15の過熱による溶断が一層促進されることになる。一実施形態において、発熱電極ユニット16は、内側発熱電極161と、二つの外側発熱電極162とを有している。内側発熱電極161は、低融点合金層15によって覆われるように台座11の第1表面111に設置されている。内側発熱電極161は、発熱層14及び低融点合金層15と夫々電気的に接続されている。外側発熱電極162は、台座11の第1表面111及び第2の表面112に夫々設置されている(又は、第2の表面112に一つの外側発熱電極162が設置されるようにしてもよい)。外側発熱電極162は、発熱層14及び外側接続層13と夫々電気的に接続されている。外部の充電ループからの電流は、外側接続層13を介して発熱層14に流れ、外側発熱電極162、発熱層14、内側発熱電極161及び低融点合金層15によって発熱ループが構成される。
【0016】
一実施形態において、外側ループ電極131と内側ループ電極121との電気的接続、内側発熱電極161と発熱層14との電気的接続、並びに外側発熱電極162と外側接続層13及び発熱層14との電気的接続は、台座11内に設置された複数の導電貫通穴によって実現される。
【0017】
上述した実施形態は例示にすぎず、本発明を限定するものではない。本発明を上記実施形態により説明したが、本発明はこれら開示された実施形態に限定されず、当業者であれば、本発明の技術的思想を逸脱することなく、様々な変更および修飾を加えて均等物とすることができる。したがって、上記実施形態に変更、改変および修飾を加えた内容もまた、本発明の技術的思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0018】
10 本体
11 台座
111 第1表面
112 第2の表面
12 内側接続層
121 内側ループ電極
13 外側接続層
131 外側ループ電極
14 発熱層
15 低融点合金層
151 溶断領域
16 発熱電極ユニット
161 内側発熱電極
162 外側発熱電極
20 蓋
21 内側面
22 収容溝
221 側方止め壁
222 収容空間
23 ガイド路
231 突起リブ
232 段差部
233 低壁
234 長側壁
30 融剤
【要約】
【課題】低融点合金層に融剤を均一に塗布する作業にかかる手間を軽減できるように構造が改良された保護素子を提供する。
【解決手段】低融点合金層15が設けられた台座11と、収容溝22及びガイド路23が設けられた蓋20とを備え、ガイド路23は低融点合金層15の溶断領域151に対応し、蓋20の収容溝22に融剤30が点状に設けられている。融剤30は、熔融すると収容溝22からガイド路23に流入し、低融点合金層15の溶断領域151に保持される。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10