(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】エレベータロープの画像を生成する方法、該方法を実行する制御装置およびコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
B66B5/02 C
(21)【出願番号】P 2022503934
(86)(22)【出願日】2019-08-16
(86)【国際出願番号】 FI2019050588
(87)【国際公開番号】W WO2021032904
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591159044
【氏名又は名称】コネ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】KONE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バルユス、 ペッテリ
(72)【発明者】
【氏名】キンナリ、 ヨウコ
(72)【発明者】
【氏名】ヒイピオ、 リスト
(72)【発明者】
【氏名】スオパヤルビ、 ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】シポラ、 テエム
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/216129(WO,A1)
【文献】特開2018-087063(JP,A)
【文献】特開平11-325841(JP,A)
【文献】特開2013-127434(JP,A)
【文献】特開平01-224605(JP,A)
【文献】特開2019-156554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的な測定瞬間から得られる測定データからエレベータロープの第1の周縁部および第2の周縁部を特定し、
前記エレベータロープにおける前記特定した第1の周縁部および前記エレベータロープにおける前記特定した第2の周縁部に基づいて、前記連続的な測定瞬間の測定データを組み合わせることによって前記エレベータロープの画像を生成
し、
前記特定は以下の、
前記センサの中央部にある少なくとも1つの画素から読取りをした測定データから開始して、前記センサの外方にある画素に向けて画素単位で解析を続けることか、
前記センサの最外部にある少なくとも1つの画素から読取りをした測定データから開始して、前記センサの内方にある画素に向けて画素単位で解析を続けることのいずれか一方により実行されるエレベータロープの画像を生成する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記測定データはセンサのすべての画素から同時に取得される方法。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の方法において、前記エレベータロープの画像の生成は、該エレベータロープの山部/谷部の画像を生成することを含む方法。
【請求項4】
請求項1ないし
3のいずれかに記載の方法において、該方法はさらに、
前記エレベータロープにおける前記特定した第1の周縁部と前記エレベータロープにおける第2の周縁部との距離に基づいて前記エレベータロープの幅を特定することを含む方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の方法において、前記エレベータロープの幅を、該エレベータロープの所定の長さにわたる距離が最大である同一の測定瞬間における第1の周縁部の山部および第2の周縁部の山部をエレベータロープの幅として特定することによって、山部/谷部の画像から特定する方法。
【請求項6】
請求項
4または
5に記載の方法において、前記エレベータロープの画像を、幅データに対する測定時間のフーリエ変換を適用することにより周波数領域に生成する方法。
【請求項7】
請求項
6に記載の方法において、該方法はさらに、
前記周波数領域の前記エレベータロープの画像から少なくとも1つの立上り低周波数成分を識別し、
該少なくとも1つの立上り低周波数成分を識別すると、前記エレベータロープの少なくとも1本の緩んだストランドに関する表示を生成する方法。
【請求項8】
請求項
3に記載の方法において、該方法はさらに、前記エレベータロープの山部/谷部の画像に基づいて該エレベータロープの測定位置を推定することを含む方法。
【請求項9】
少なくとも1つの処理部と、
コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つの記憶部とを有しエレベータロープの画像を生成する制御装置において、
前記少なくとも1つの記憶部および前記コンピュータプログラムコードは、前記少なくとも1つの処理部を用いて前記制御装置に、
連続的な測定瞬間から得られる測定データから前記エレベータロープの第1の周縁部および第2の周縁部を特定させ、
前記エレベータロープにおける前記特定した第1の周縁部および前記エレベータロープにおける前記特定した第2の周縁部に基づいて、前記連続的な測定瞬間の前記測定データを組み合わせることにより、前記エレベータロープの画像を生成させるように構成され
、
該制御装置はさらに、
前記センサの中央部にある少なくとも1つの画素から読取りをした測定データから開始して、前記センサの外方にある画素に向けて画素単位で解析を続けることか、
前記センサの最外部にある少なくとも1つの画素から読取りをした測定データから開始して、前記センサの内方にある画素に向けて画素単位で解析を続けることのいずれかにより前記特定を実行するように構成されている制御装置。
【請求項10】
請求項
9に記載の制御装置において、該制御装置はセンサのすべての画素から同時に測定データを取得するように構成されている制御装置。
【請求項11】
請求項
9または10に記載の制御装置において、該制御装置は、前記エレベータロープの画像を該エレベータロープの山部/谷部の画像として生成するように構成されている制御装置。
【請求項12】
請求項
9ないし
11のいずれかに記載の制御装置において、該制御装置はさらに、
前記エレベータロープにおける前記特定した第1の周縁部と前記エレベータロープにおける第2の周縁部との距離に基づいて前記エレベータロープの幅の特定を実行する制御装置。
【請求項13】
請求項
12に記載の制御装置において、該制御装置は、前記エレベータロープの所定の長さにわたる距離が最大である同一の測定瞬間における第1の周縁部の山部および第2の周縁部の山部を前記エレベータロープの幅として特定することによって、山部/谷部の画像から前記エレベータロープの幅を特定するように構成されている制御装置。
【請求項14】
請求項
12または
13に記載の制御装置において、該制御装置は、幅データに対する測定時間のフーリエ変換を適用することにより、前記エレベータロープの画像を周波数領域に生成するように構成される制御装置。
【請求項15】
請求項
14に記載の制御装置において、該制御装置はさらに、
前記周波数領域における前記エレベータロープの画像から少なくとも1つの立上り低周波数成分を識別し、
該少なくとも1つの立上り低周波数成分を識別すると、前記エレベータロープの緩んだストランドに関する表示を生成する制御装置。
【請求項16】
請求項
11に記載の制御装置において、該制御装置はさらに、
前記エレベータロープの山部/谷部の画像に基づいて該エレベータロープの測定位置の推定を実行する制御装置。
【請求項17】
少なくとも1つの処理部によって実行されると、制御装置に請求項1ないし請求項
8のいずれかに記載の方法を実行させるエレベータロープの画像を生成するコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にエレベータの技術分野に関するものである。より具体的には、本発明は、エレベータシステムに用いるロープモニタ方式に関するものである。
【背景】
【0002】
エレベータの安全性は、確保すべき最も重要な事項の1つである。エレベータシステムは懸架ロープ、過速度調速ロープおよび補償ロープなどのロープを含む。これらのロープは推定寿命を有する摩耗部品であるため、ロープの状態をモニタしてエレベータシステムの安全な使用およびロープ寿命の予測可能性を確保する必要がある。
【0003】
一般的には、昨今のエレベータソリューションで使用されているロープは、ストランド鋼線ロープである。ロープは、いずれもロープを損傷させる可能性がある腐食、疲労、摩耗、化学的侵食および機械的損壊の影響を受けるであろう。エレベータロープの状態をモニタする従来的な方法における難題は、損傷したロープを新しいロープ一式に交換するためのいわゆる廃棄基準を決定することである。特に、意思決定とりわけロープ状態の評価は、ロープの断線のような視認可能な検出、ならびにロープの摩耗および過度の錆びつき等の全体的な状態に基づいているので、従来の方法では時間がかかり不正確であった。断線の検出の他に、ロープ直径の変化および張力に対する許容度もモニタする必要がある。
【0004】
国際公開公報第2018/101296号には、エレベータロープをモニタする解決方式が記載されている。この解決方式は、複数のカメラを使用して走行中のエレベータロープの全周を撮像することに基づくものであり、カメラで撮像された画像は、複数のカメラで撮像された複数の画像から生成された全周画像を解析することによって、エレベータロープの異常を検出する画像処理手段に送られる。本解決策は、画像に関連付けられる情報を提供する速度/位置検出装置も含み、複数の画像を適切な手法で合成する。しかしながら、同公報に記載の解決方式は、画像の合成と合成画像の解析に時間を要するがゆえに迅速に動作しないのみならず、本解決方式の複雑な構造に起因してコストもかかるという点で問題がある。
【0005】
したがって、既存の解決方式の不利益を少なくとも部分的に軽減し、効率的な方式でエレベータロープの状態をモニタ可能な新規の解決策を取り入れる必要がある。
【概要】
【0006】
以下に、簡略化した概要を示し、種々の発明の実施形態のいくつかの態様について基本的な理解が得られるようにする。本概要は、本発明の広範な全体像を示すものではない。本概要は、本発明の手がかりとなるまたは重要な要素を特定するものでも、発明の範囲を画定するものでもない。以下の概要は、単に、発明の実施形態を例示する一層詳細な説明の導入部として、簡略化した形式で発明のいくつかの概念を提示するものにすぎない。
【0007】
本発明は、エレベータロープをモニタするエレベータロープモニタ装置、方法、コンピュータプログラム製品およびシステムを提供することを目的とする。
【0008】
本発明の目的は、各独立請求項により定義されるような、エレベータロープをモニタするエレベータロープモニタ装置、方法、コンピュータプログラム製品およびシステムによって達成される。
【0009】
第1の態様によれば、エレベータロープの画像を生成する方法が提供され、本方法では、連続的な測定瞬間から得られる測定データからエレベータロープの第1の周縁部および第2の周縁部を特定し、エレベータロープにおける特定した第1の周縁部およびエレベータロープにおける特定した第2の周縁部に基づいて連続的な測定瞬間の測定データを組み合わせることによってエレベータロープの画像を生成する。
【0010】
測定データは、センサのすべての画素から同時に取得されてもよい。
【0011】
さらに、特定は以下の、センサの中央部にある少なくとも1つの画素から読取りをした測定データから開始して、センサの外方にある画素に向けて画素単位で解析を続けることか、センサの最外部にある少なくとも1つの画素から読取りをした測定データから開始して、センサの内方にある画素に向けて画素単位で解析を続けることのいずれか一方により実行してもよい。
【0012】
エレベータロープの画像の生成は、エレベータロープの山部/谷部の画像を生成することを含んでいてもよい。
【0013】
また、本方法はさらに、エレベータロープにおける特定した第1の周縁部とエレベータロープにおける第2の周縁部との距離に基づいてエレベータロープの幅を特定することを含んでいてもよい。エレベータロープの幅は、エレベータロープの所定の長さにわたる距離が最大である同一の測定瞬間における第1の周縁部の山部および第2の周縁部の山部をエレベータロープの幅として特定することによって、山部/谷部の画像から特定されてもよい。
【0014】
エレベータロープの画像は、幅データに対する測定時間のフーリエ変換を適用することにより周波数領域に生成されてもよい。本方法はさらに、周波数領域のエレベータロープの画像から少なくとも1つの立上り低周波数成分を識別し、少なくとも1つの立上り低周波数成分を識別するとエレベータロープの少なくとも1本の緩んだストランドに関する表示を生成することができる。
【0015】
本方法はさらに、エレベータロープの山部/谷部の画像に基づいてエレベータロープの測定位置を推定することを含んでいてもよい。
【0016】
第2の態様によれば、エレベータロープの画像を生成する制御装置は、少なくとも1つの処理部と、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つの記憶部とを有し、少なくとも1つの記憶部およびコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つの処理部を用いて制御装置に、連続的な測定瞬間から得られる測定データからエレベータロープの第1の周縁部および第2の周縁部を特定させ、エレベータロープにおける特定した第1の周縁部およびエレベータロープにおける特定した第2の周縁部に基づいて連続的な測定瞬間の測定データを組み合わせることにより、エレベータロープの画像を生成させるように構成されている。
【0017】
制御装置は、センサのすべての画素から同時に測定データを取得するような構成を採ってもよい。
【0018】
さらに、制御装置は、センサの中央部にある少なくとも1つの画素から読取りをした測定データから開始して、センサの外方にある画素に向けて画素単位で解析を続けることか、センサの最外部にある少なくとも1つの画素から読取りをした測定データから開始して、センサの内方にある画素に向けて画素単位で解析を続けることのいずれかにより特定を実行するような構成を採ってもよい。
【0019】
制御装置は、エレベータロープの画像をエレベータロープの山部/谷部の画像として生成するように構成することができる。
【0020】
また、制御装置はさらに、エレベータロープにおける特定した第1の周縁部とエレベータロープにおける第2の周縁部との距離に基づいてエレベータロープの幅の特定を実行することができる。例えば、制御装置は、エレベータロープの所定の長さにわたる距離が最大である同一の測定瞬間における第1の周縁部の山部および第2の周縁部の山部をエレベータロープの幅として特定することによって、山部/谷部の画像からエレベータロープの幅を特定するように構成することができる。
【0021】
制御装置は、幅データに対する測定時間のフーリエ変換を適用することにより、エレベータロープの画像を周波数領域に生成するように構成することもできる。制御装置はさらに、周波数領域におけるエレベータロープの画像から少なくとも1つの立上り低周波数成分を識別し、少なくとも1つの立上り低周波数成分を識別すると、エレベータロープの緩んだストランドに関する表示を生成することができる。
【0022】
制御装置はさらに、エレベータロープの山部/谷部の画像に基づいてエレベータロープの測定位置の推定を実行することができる。
【0023】
第3の態様によれば、少なくとも1つの処理部によって実行されると、制御装置に上述の方法を実行させるエレベータロープの画像を生成するコンピュータプログラム製品が提供される。
【0024】
本願において、「多数の」という語は、1から始まる任意の正の整数、例えば1、2または3のことを意味する。本願において、「複数の」という語は、2から始まる任意の正の整数、例えば2、3または4のことを意味する。
【0025】
構成および動作方法の両方に関して、本発明の例示的かつ非限定的な種々の実施形態は、本発明の付加的な目的および利点と併せて、添付図面と関連付けて読み取ることにより、例示的かつ非限定的な具体的実施形態についての下記説明から最適に理解できるであろう。
【0026】
本願書類において、動詞「有する」および「含む」は、記載されていない構成の存在を除外も義務付けもしない、任意の限定として使用される。従属請求項に記載されている構成は、特に明示的に記載されていない限り、相互かつ自由に組合せ可能である。さらに、本願書類を通じて、「1つの」すなわち単数形の使用は、複数性を除外するものではないと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
添付図面の各図では、本発明の実施態様が例として示されているが、限定の意図はない。
【
図1】エレベータロープモニタ装置の一例をブロック図として概略的に示す図である。
【
図2】本発明を適用可能なエレベータシステムを概略的に示す図である。
【
図3】電磁放射源をブロック図として概略的に示す図である。
【
図4B】エレベータロープモニタ装置との関連で適用可能な放射開口の非限定的な例を概略的に示す図である。
【
図5】エレベータロープモニタ装置におけるセンサ側の例を概略的に示す図である。
【
図6】本発明の実施態様に係るエレベータロープの画像を概略的に示す図である。
【
図7】本発明の実施態様に係る方法の例を概略的に示す図である。
【
図8】本発明の実施態様に係るエレベータロープモニタ装置にある制御装置の例を概略的に示す図である。
【例示的実施形態の説明】
【0028】
明細書に記載される下記具体例は、添付の特許請求の範囲の技術的範囲および/または適用可能性を限定するものと理解すべきではない。明細書に一覧や群分けして記載される下記の例は、特に明示的な記載なき限り網羅的なものではない。
【0029】
図1では、エレベータロープモニタ装置を形成する設備のいくつかのコンポーネントおよび/またはエンティティのブロック図を概略的に描き、本発明の1つ以上の実施形態の例示的な枠組みを示す。
図1に概略的に示す本設備は、後述するエレベータロープの画像を形成する測定データの生成に適している。本設備は、電磁放射源110と、電磁放射源110から電磁放射を受信する少なくとも1つのセンサ130とを有することができる。換言すれば、電磁放射源110は、放射ビーム120を発するように構成することができる。エレベータロープモニタ装置は、少なくとも1本のエレベータロープ150が放射ビーム120を通り抜けるように配置されるため、1本以上のロープ150の少なくとも一部分の投影画像がセンサ130上に生成される。
図1の非限定的な例では、エレベータロープモニタ装置は、2本のロープのそれぞれに対して専用のセンサ130を配置してモニタするよう構成されている。センサ130のタイプは、放射源110によって生成される電磁放射に応じて選択される。さらに、本設備は、エレベータロープモニタ装置の1つ以上のエンティティを制御するように構成可能な処理装置140を有していてもよい。例えば、制御装置140は、電磁放射源110への制御信号を生成し、さらに少なくとも1つのセンサ130からの測定データを読み取り、さらに測定データを解析すること等によって、放射ビームの生成を制御するような構成を採ってもよい。さらに、測定データおよび/または測定データの解析結果を、例えばクラウドネットワークに構築されるデータセンタに送信して、予防保守に利用することもできる。制御装置140は、少なくとも1つのセンサ130から受信した測定データからエレベータロープ150の画像を生成するように構成することができる。例えば、エレベータロープ150の画像は、エレベータロープ150の一部分を示すデータ、または、測定データが長さ沿いに生成されるエレベータロープ150の長さの関数としてのエレベータロープ150の画像に相当するものでよい。さらに、エレベータロープ150の画像は、エレベータロープ150の付加画像としてパラメータを確立できるようにするものでもよく、例えば、画像を通じてロープの少なくとも1つの特性を評価する目的に使用できる。前述したエンティティおよび他の配設可能なエンティティは、適用可能なデータバスを用いて相互通信できるように接続してもよい。データバスは、例えばエレベータの通常の使用速度において、エレベータの状態をモニタするのに十分なほど高速でデータを伝送するのに適していることが好ましい。
【0030】
図2は、エレベータロープモニタ装置が設置されているエレベータシステムを概略的に示す。簡略化されたエレベータシステムは牽引シーブ210を有し、シーブ210上を多数本のエレベータロープ150が走行する。多数本のエレベータロープ150は、エレベータかご220とカウンタウェイト230とを連結する。したがって、巻上機(
図2では不図示)を用いてトラクションシーブに力を付与することによって、エレベータかご220はエレベータシャフト内で目的階間を移動することが可能となる。
図2で示すように、エレベータロープモニタ装置、すなわち、少なくとも電磁放射源110および1つ以上のセンサ130を取り付けるのに有利な場所は、例えば機械室またはシャフトのいずれかに設けられた牽引シーブ210もしくは転向プーリに近接している場所であり、または、過速度調速器を使用している場合にはプーリに近接していてもよい。なぜならば、少なくとも1本のエレベータロープ150の軌道からの逸脱が最小限であれば、エレベータロープモニタ装置の動作は、少なくとも部分的には改善されるからである。加えて、エレベータロープモニタ装置またはこの装置の少なくとも前述した部品を取り付けることにより、前述のとおりエレベータロープ150を効率的な手法でモニタすることができる。なぜならばこの場合、エレベータロープの大部分はエレベータの動作中にモニタ装置を通過するからである。換言すれば、
図2に概略的に示すように具体化をすれば、エレベータの動作中に少なくとも1本のエレベータロープ150の状態をオンラインでモニタできる。通常動作とは、通常のエレベータ動作およびエレベータの保守稼働を含むこととなろうが、これらには限定されない。さらに、本方式で懸架ロープのモニタを実行する場合、センサはエレベータカーに設置した転向プーリからの適用可能な距離に配置してもよい。
【0031】
図3では、ある例示的実施形態による電磁放射源110のブロック図を概略的に示す。
図3の電磁放射源110は、例示的実施態様によるいくつかのコンポーネントおよびエンティティを示している。
図3で概略的に示すように、本実施形態によれば、電磁放射源110はケーシング300を有していてもよく、ケーシング300の内部には、エレベータロープモニタ装置内で用いられる放射を発するように構成された放射素子310が配設されている。例えば、放射素子310は、既定の波長帯域の電磁放射を発するダイオードであってもよい。発せられた電磁放射はビーム状であり、多数のレンズを含んで構成されるレンズ320に到達するようにしてもよい。レンズ320のタイプとしては例えば、放射素子310から発する放射束を実質的に平行な線束にコリメートすることができるものを選択してもよい。レンズ320の非限定的な例としては、ケイ酸塩、合成樹脂またはガラス等から製造された凸状コリメートレンズであってもよい。コリメートされた放射は、レンズ320によって、照光孔とも称される放射開口330に導くことができる。放射開口330は、コリメートされた放射の少なくとも一部を遮断して所望の方式の放射ビームを生成するように配置される。例示的な実施形態によれば、このような放射開口330を電磁放射源110に用いることにより、線形状の少なくとも1本の放射ビームを生成することができる。すなわち、線形放射ビームが生成される。明確化の観点からは、線形放射ビームは面状光線として理解すべきである。さらに、実施形態のいくつかの例では、電磁放射源110が放射窓340を含むものでもよい。放射窓340は閉鎖体300を塞ぐように配置され、そのようにして電磁放射源を汚れから保護する。放射窓は、例えば、照射された電磁放射が通り抜けるガラス製であってもよい。このようにして、生成された線形放射ビームは、光源110から少なくとも1つのセンサ120に向けて出力されることになる。
【0032】
特に、電磁放射がいわゆる可視光である波長の範囲内にある実施形態例では、放射窓340を汚れから保護する必要がある。実施形態によっては、放射窓を保護するための調節可能な保護カバーを、少なくとも1つのセンサ120に対向する放射窓340の表面上に配置することができる。例えば、保護カバーは、搬送装置すなわちソレノイド、電気モータまたはサーボモータなどのアクチュエータを備えていてもよい。搬送装置は、例えば、制御装置140により生成される制御信号に従って、放射窓340に対して保護カバーを少なくとも部分的に移動させる力を生成することができる。代替的または付加的に、放射窓340は、放射窓340上に多数の剥離可能な合成樹脂製保護フィルムを積層して配置するような構成によって保護することができる。そのため、剥離可能な合成樹脂製保護フィルムは例えば一度に1枚ずつはがすことができ、最上部にあるフィルムを剥離することによって汚れた最外層を取り除くことができる。そのようにして、エレベータロープモニタ装置を動作状態に維持することができる。
【0033】
図4Aおよび
図4Bは、とりわけ、少なくとも1つのセンサ130に向けて少なくとも1本の線形放射ビームを生成することが目的である場合に、エレベータロープモニタ装置の電磁放射源110で適用可能な放射開口330の非限定的な実施例を概略的に示す。
図4Aの放射開口330は1つの開口部すなわち孔を有する一方で、放射開口330は2本の線形放射ビームを生成する2つの開口部を有する。有利には、放射開口は生成された線形放射ビームがモニタ中のロープを越えて延伸するよう放射源110内に設けられ、これにより、センサ130はその両端部で、ロープを越えてきた放射を受信する。放射開口は、有利には放射素子310からコリメートレンズ320を介して受信した放射の少なくとも一部を遮断するのに適した材料で作られる。例えば、放射開口は鋼製であってもよい。
【0034】
放射開口330を使用する利点は、特に電磁放射が可視光である様々な実施形態例において、光の少なくとも一部を遮断してセンサ面に到達するようにすることが好ましいことにある。なぜならば、センサ130から取得可能なデータにより生成される画像のコントラストは、センサの検出領域外に漏れ出る光によって劣化するからである。したがって、放射開口330自体は必須の要素ではないが、本装置によるモニタ結果を改善すべく様々な実施形態例で使用できるものである。
【0035】
電磁放射源110は任意の適切な電磁放射を生成するように構成してもよく、これに応じてセンサ130が選択される。例示的な実施形態によれば、電磁放射は、例えば約380~740ナノメートルの波長を有する可視光である。有利な実施形態によれば、エレベータロープモニタ装置は、電磁放射をレーザ光として具体化してもよい。レーザ光は、例えば通常光に対して、コヒーレンス、指向性、単色性および高輝度性などの既知の利点を有している。このような理由で、レーザ光は測定用途に適している。したがって、これに応じて放射素子310を選択することができる。例えば、放射素子310は、5mWの出力パワーを有するシングルモードレーザなどのように、適用可能なレーザダイオードであってもよい。したがって、放射がレーザ光である場合、電磁放射源110は、センサ130、およびその間にあるロープ150などの物体に向けて線形のレーザパターンを生成することができる。
【0036】
エレベータロープモニタ装置はさらに、エレベータロープモニタ装置に使用される電磁放射を検出するのに適した少なくとも1つのセンサ130を有する。有利には、少なくとも1つのセンサ130は、放射を受けてモニタ中のロープ150によって生じる投影がセンサ130の検出領域内に完全に収まるように選択される。しかしながら、実施形態例によっては、ロープ150の一方の周縁部のみをモニタするようにセンサ130を配置することができ、または、ロープ150の一方の周縁部の影を1つのセンサ130で検出し、ロープ150の他方の周縁部の影を別のセンサ130で検出するような配置にすることができる。さらに別の実施形態によれば、センサ130は次のように選択してもよい。すなわち、センサ130は、モニタ対象となる複数本のロープ150の影がセンサ130の検出領域内に収まるようなサイズのものを選んでもよい。そして、各センサ130の状態の解析は、別々の信号処理で行ってもよい。
【0037】
図5は、エレベータロープモニタ装置のセンサ側の一例を概略的に示す。センサ側は、少なくとも1つのセンサ130が放射を検出することができ、かつ少なくとも受信した放射に基づいて生成されたデータをセンサ130から読み出すことができるようにセンサ130の動作を制御するのに必要なハードウェアおよびソフトウェアコンポーネントを含む回路基板510に、この少なくとも1つのセンサ130を搭載することで実現してもよい。実施形態によっては、少なくとも1つのセンサ130は、例えばガラス製である窓体520を用いて保護してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、窓体520は保護カバーを用いて、または多数の剥離可能な合成樹脂保護フィルムを用いて保護してもよく、これによって窓体520もしくはセンサ130に汚れが及ぶことを防止し、および/または、窓体520から合成樹脂保護フィルムを剥離すること等によって窓体520もしくはセンサ130から汚れを除去できるようになる。したがって、保護カバーおよび/または剥離可能な合成樹脂保護フィルムの具体化は、電磁放射源110の関連で述べたものに相当するものでもよい。
【0038】
適用可能なセンサ130は、形成されている1つの行、すなわち画素行に感光素子を含むセンサを指し示す、いわゆる線形感光アレイでもよい。このようなセンサ130は、高速で読取り可能という利点がある。しかしながら、他のセンサ、例えば、1行よりも広い領域に検知素子を有するセンサを具体化することもできる。
【0039】
上述したように、エレベータロープモニタ装置の電磁放射源110とエレベータロープモニタ装置のセンサ130は、相対的な位置関係をとり、モニタ中の少なくとも1本のエレベータロープ150は放射源110とセンサ130の間を走行するように配置されることとなる。エレベータロープモニタ装置内におけるロープ150の方向は、ロープ150の影の少なくとも一部分がセンサ130上に投影されるようにする。したがって、放射の一部は、ロープ150を通り過ぎてセンサ130に直接到達する。
【0040】
次に、本発明の少なくともいくつかの態様を、少なくとも1つのセンサ130から得られたデータの解析に関する態様を取り入れて説明する。まず、電磁放射源110による電磁放射の出力に応じて生成されたデータは、センサ130から、すなわちセンサの画素などのデータ記憶体から読み出すことができる。具体化に応じて、センサ130からのデータの読取りは、次のように行ってもよい。すなわち、画素からのデータの読取りはセンサ130から一度に行い、データから得られるロープ幅など1つ以上のパラメータを判定するデータの後処理は、測定データの解析で開始するようにして、その場合、解析は、センサ130の両側にある少なくとも片方の最外部画素から、好ましくは両方の最外部画素から取得すなわち読取りをした測定データから開始して、センサ130の中央画素へ向けて内方に、すなわちセンサ130の内方にある画素に向けて、例えば画素単位で解析を続けるようにする。この種の読取り技術を、外内読取りと呼ぶことができる。しかしながら、本発明に関してより好適な具体化では、同時にすなわち同一の時刻に複数の画素から取得された測定データの処理すなわち解析は、まずは中央部にある画素から取得された測定データが処理すなわち解析され、処理方向は中央部から外方、すなわち最外側の画素に向かうもの、換言すれば外側向きになるような構成を採ってもよい。これは、エレベータロープの影からセンサの中央部にある画素のデータを生成し、外方に向けた読取りによって1以上の周縁部を検出することができるやり方に相当する。この種の読取り技術を、内外読取りと呼ぶことができる。表示中央画素とは、エレベータロープ150の影を示すデータを含む画素のことを指す。一般に、エレベータロープ150の影を感知する画素は黒に対応する数値を有するように形成される。また、少なくとも一部の画素を全く読み取らないように構成してもよい。例えば、本発明の目的の少なくとも1つは、エレベータロープ150の画像を形成することによって、すなわちロープ150の影を表示する画像に基づいてエレベータロープ150の異常を検出することであるため、ロープ150の中央部を示す画素をすべて読み取る必要はない場合がある。なぜならば、そのようなデータから異常に関連する検出をすることは困難であり、より重要性が高いのはロープの周縁部領域となるからである。このようにして、すなわちセンサ130による検出領域を選択することによって、センサ130から読み取られ制御装置140によって解析されるデータを最適化することができる。
【0041】
センサからのデータ読取りに関しては、前述したとおり、複数の画素を同時に読み取ることが有利となる。複数の画素を同時に読み取れば、モニタしたパラメータの結果、例えばロープ幅に対するロープの振動の影響が軽減する。これは、少なくともいくつかの実施形態で重要となる。なぜならば、ロープは常にロープ長手軸に対する垂直面内を振動しているからであり、本方式のようにしないとモニタ精度を損ねる可能性がある。
【0042】
記載のとおり、センサのデータを一行ずつ、その走行径路に沿ったロープ150の移動に応じて、例えば、ロープ150の検査済長さの範囲内でのエレベータロープ150を表す画像として、画像を生成することができる。
図6は、データを組み合わせてロープのシルエットの画像を生成した、連続した読取過程でセンサから読み取られた測定データにより生成された画像の一例を概略的に示す。換言すれば、測定位置を通過したロープの走行に応じて、時間内における連続的な測定瞬間で測定データが生成される。
図7で概略的に示すように、時間内のある瞬間から得られた測定データから、エレベータロープ150の第1の周縁部およびエレベータロープ150の第2の周縁部の特定710をしてもよい。周縁部の特定は、例えば、データの後処理により得られるなどした測定データの値を基準値と比較することによって実行することができる。比較により、センサのデータすなわち複数の画素から取得した値は黒など暗色を示す値に相当するのか、または明色を示す値に相当するのかが示される。より具体的には、値はコントラスト値を示していてもよい。測定データの測定値がある数値から別の数値に急速に変化したと認識することによって、エレベータロープ150の周縁部を検出してもよい。
図6に示すような画像の生成720は、エレベータロープ150の走行時の連続瞬間で取得された連続的な測定データからエレベータロープ150の周縁部を検出した後に、エレベータロープ150における特定した第1の周縁部およびエレベータロープ150における特定した第2の周縁部に応じて測定データすなわちデータ列を組み合わせることにより実行してもよい。その結果として、エレベータロープ150の画像は、エレベータロープ150がセンサ130により画定された測定地点を通過して走行した長さに沿って生成されてもよい。エレベータロープ150の画像は、本発明の様々な実施形態では、エレベータソリューションにおいて一般的に適用されるエレベータロープ150のストランドを具体化しているのでロープを谷部および山部で示す画像(すなわち山部/谷部の画像)を指し示す。
【0043】
モニタ中の特質に応じて、さらなるデータ解析を選択してもよい。少なくとも下記の特性、すなわちロープ幅(円形断面を有するロープの直径を参照)、ロープにおけるストランドの緩みは、少なくとも1つのセンサ130から受信したデータにより生成された画像から導き出すことができる。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、ロープ幅は、上述のようにセンサからのデータをもとにロープ150の第1の周縁部および当該ロープの第2の周縁部を検出することによって、ならびに、2つの周縁部間にある画素に基づきロープの幅を特定することによって測定することができる。例えば、画素サイズまたは1ミリメートル毎などある距離に対する画素数は既知であり、その情報に基づいて幅を測定することができる。ロープ150の第1および第2の周縁部を検出するため、規則を決め、この規則をセンサ130から得られた測定データに適用することによって、周縁部を特定することができる。ロープの幅がわかると、エレベータロープ130の好適な幅を定義する比較値と比較することができ、両値の間に、場合によっては許容限界内で、所定の限度を超える開きがあると、異常の検出を行うようにしてもよい。エレベータロープ150の幅は、測定瞬間毎に、すなわちデータ列の測定データから確定してもよい。例えば、エレベータロープ150の統計値は、エレベータロープ150の平均幅または予め規定された長さ毎の幅などエレベータロープ150の幅を示す複数の値から導き出してもよい。
【0045】
エレベータロープ150の画像が山部/谷部の画像である本発明の様々な実施形態において、エレベータロープ150の幅は、エレベータロープ150の所定の長さにわたる距離が最大である同一の測定瞬間における第1の周縁部の山部および第2の周縁部の山部をエレベータロープ150の幅として特定することによって、山部/谷部の画像から特定することができる。代替的または付加的に、いくつかの統計値を、例えば複数の山部から割り出した複数の距離値から算出してもよい。また、いくつかの他の実施形態では、谷部を幅の特定地点として用いることができる。
【0046】
上記に加えて、さらなる規則を設定して、ロープ幅の特定能力を向上させ、および/または算出に要する演算能力を最適化してもよい。例えば、測定設備内におけるエレベータロープ150がとり得る位置に由来するいくつかの規則を決めてもよい。1つ目の非限定的な例として、複数のセンサ130が測定設備内で使用されている場合、エレベータロープ150の周縁部はセンサ間隙には位置しないものとしてもよい。さらに、別の規則として、エレベータロープ150の周縁部はセンサ縁端の外側には位置しないものと定義してもよい。代替的または付加的に、1つまたは複数の閾値を設定してエレベータロープ150の周縁部の検出を行ってもよく、設定は例えば、コントラスト値または範囲を周囲環境に最も適するように調整することである。
【0047】
本発明におけるさらに別の実施形態によれば、ロープ150の異常を検出する解析には、緩んだストランドの解析を含めてもよい。緩んだストランドの解析、すなわち緩んだストランドの検出は、ロープ150の幅データに対する測定時間のフーリエ変換、例えば短時間フーリエ変換を実行することによる多数の緩んだストランドの検出を含んでいてもよい。測定データは、フーリエ変換を介して周波数領域で示されるので、ロープ150の緩んだストランドを示すことが可能な周波数スペクトログラムにおいて、立上り低周波数成分などの周波数成分を検出することができる。例えば、制御装置140は、周波数領域で表される測定データから取得可能な値と比較される緩んだストランドの比較値を利用することができる。多数の緩んだストランドを検出すると、ロープ150が異常であるか否かを、既定の規則を適用して決定することができる。例えば、比較値すなわち規則は、立上り低周波数成分の傾斜および/またはその振幅を定義して、当該の周波数成分がエレベータロープ150の緩んだストランドを表しているか否かを判定することができる。1以上の立上り低周波数成分が識別される場合に、制御装置150がエレベータロープ150の緩んだストランドに関する表示を生成するような構成を採ることができ、これによって、ロープ150に不具合があると判断することができる。多数の低周波数成分について理解を深める参考までに、一般的にエレベータロープは6~9本の外側ストランドを有するので、低周波数は、1/外側ストランド数、2/外側ストランド数、3/外側ストランド数などとなる。
【0048】
本願明細書から導き出されるように、本発明の様々な実施形態によれば、エレベータロープ150の異常を検出することができる。本発明を用いて、例えば、モニタ中のエレベータロープ150をロープ長における位置、すなわちロープ150の長手方向位置の関数として表示することにより、高度な解決策を確立することができる。より具体的には、エレベータロープ150の外形寸法、すなわち、エレベータロープ150の周縁部が重要となり得る。この類の表示では、あらゆるセンサ読取りにおいてセンサに対するエレベータロープ150の位置および/または速度が既知であることを要する場合がある。速度情報は、例えば、モータエンコーダによる測定で取得してもよい。この点を考慮すると、例えば
図6(ロープ150の周縁領域)から見出せるように、ストランドの山部または谷部の変量もまた、ロープの走行長を関数とした測定位置の推定手段として用いることができる。このような手段によって、エレベータロープ150を表示することができる。したがって、エレベータロープ150から、異常を有している位置など重要性のある計測位置を測定することができる。
【0049】
ロープ150の解析に関しては、上述の非限定的な例を適用することによって、ロープ150の異常を検出することが可能となる。解析自体を実行する前に、センサ130から得られたデータを処理して、例えば背景光に起因する干渉を、測定中にセンサから得られたデータから取り除けるようにしてもよい。背景光量は、例えば、電磁放射源110を用いた放射を実行せずに、試験測定によって決定することができる。
【0050】
図8は、本発明の一実施形態による制御装置140を概略的に示す。制御装置140は、処理装置810、記憶部820、および他のエンティティとの通信インタフェース830を有していてもよい。ここで、処理装置810は、説明した方法ステップの少なくとも一部を実行する1つ以上のタスクを実現するように構成された1以上の処理部を含んでいてもよい。例えば、処理装置810は、既述の方式による本発明の他のエンティティと同様に、電磁放射源110および/または少なくとも1つのセンサ130の動作、さらにはエレベータの動作でさえ制御するように構成することができる。記憶部820は、処理装置810によって実行されると制御装置140にエレベータロープ150の画像の生成ならびに生成画像の解析および/または後処理など上述の動作をさせるコンピュータプログラムコードを記憶するような構成であってもよい。さらに記憶部820は、記載したとおり、基準値および他のデータを記憶するような構成を採ってもよい。通信インタフェース830は、例えば処理装置810の制御下で、記載したようにエンティティとの通信を可能にする1つ以上の通信プロトコルを実現するような構成であってもよい。通信インタフェースは、無線による通信および/または有線方式での通信などを可能にするために必要なハードウェアおよびソフトウェアコンポーネントを含むものであってもよい。明確化の観点から
図8では概略的に示した制御装置140は非限定的な例であり、他の具体化を採用してもよい。例えば、制御装置140は、クラウドコンピューティング方式などのディストリビューション方式として構成してもよく、この場合、測定データはローカルエンティティから受信し、本発明に係る方法を実行し、本方法の結果に関する表示、例えばエレベータロープ150の状態を示す表示を生成する。データ記録形式等の表示を、例えば、所定の視覚法もしく聴覚法として示してもよく、または所定のエンティティに送信してもよい。
【0051】
明確化の観点から、本願で開示する方法を実行する制御装置140はエレベータロープモニタ装置またはその一部とは別のものでもよいと理解すべきである。一般的には、制御装置140は、上述した画像の生成を実行するものでよい。
【0052】
上述したように、本発明のいくつかの態様は、ロープ150の画像の生成によって、またはロープ150の少なくとも1つの特性を表す値によってエレベータロープ150をモニタする方法に関する。制御装置140は、測定データを受信すると、エレベータロープ150の画像を生成し、当該画像についての、およびできる限りはエレベータロープ150の少なくとも1つの特性を表す他のデータについての解析をするように構成してもよい。本発明の種々の実施形態によれば、解析は、測定設備を通過して走行するエレベータロープ150の長さの関数としてエレベータロープ150の画像を生成する動作を含むことがある。換言すれば、例えば
図6に概略的に示すようなエレベータロープ150の画像は、少なくとも1つの電磁放射源110および少なくとも1つのセンサ120を通り過ぎて移動するエレベータロープ150の長さに沿って生成されてもよい。制御装置140によって実行される解析により、受信した測定データから生成されたエレベータロープ150の画像から1つ以上の実現値を検出するように構成してもよく、検出は例えば、画像の1つ以上のパラメータを比較データと比較することによってなされる。比較データは、エレベータロープ150の幅に対する比較値、エレベータロープ150の周縁部を示すデータに対する比較値(例えば、山部/谷部の値)、エレベータロープ150の緩んだストランドを示すデータに対する比較値のうち少なくとも1つを含むものでよい。本発明の様々な実施形態に係る方法は、上述したように、解析などのさらなる動作を含んでいてもよい。
【0053】
さらに、本発明のいくつかの態様はエレベータロープ150のモニタの用に供するコンピュータプログラム製品に関し、これが少なくとも1つの処理部によって実行されると、エレベータロープモニタ装置の制御装置に上述の方法を実行させる。コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラム製品を実行するように構成された処理部にアクセス可能な非一時的なコンピュータ可読媒体、例えば適用可能な記憶装置に記憶することができる。
【0054】
本発明のさらなる態様は、記載のとおりのエレベータロープモニタ装置と、エレベータロープモニタ装置の少なくとも1つの電磁放射源110とエレベータロープモニタ装置の少なくとも1つのセンサ120との間を移動するように配置された少なくとも1本のエレベータロープ150とを有するエレベータシステムに関する。当然ながら、エレベータシステムは、例えば
図2の説明で述べたように、さらなる構成部分およびエンティティを含んでいてもよい。しかしながら、本発明は、本願で述べたような測定設備を用いて測定データを導き出せることには必ずしも限定されず、任意の測定設備または装置を用いて対応する測定データを生成することにより、上述のような画像を生成したり解析を実行したりしてもよい。
【0055】
本発明に係る解決策によれば、以下の態様、すなわち、プーリ周囲のロープ曲がりまたは無潤滑ロープ等によって引き起こされるロープの幅の変化や、1本以上の緩んだストランドの検出のうち少なくともいくつかに関して、エレベータロープの状態をモニタすることができる。説明した解決策は十分に高速なものであるので、通常の使用時または保守駆動時に、ロープを十分に高い分解能で検査することができる。エレベータロープの調整モニタは、自動的に(例えばクラウドなどからの接続による遠隔操作により)またはエレベータ設置現場において保守技術者によるモニタ装置を使用した手作業で行われるようにしてもよい。
【0056】
明細書に記載された上記具体例は、添付の特許請求の範囲の適用可能性および/または解釈を限定するものと理解すべきではない。明細書に一覧や群分けされて記載された上記の例は、特に明示的な記載なき限り網羅的なものではない。