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特許7336041内部相対移動補償付きの洋上移送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】内部相対移動補償付きの洋上移送システム
(51)【国際特許分類】
   B63B 27/10 20060101AFI20230823BHJP
   B63B 27/16 20060101ALI20230823BHJP
   B63B 27/30 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B63B27/10 Z
B63B27/16
B63B27/30
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022572461
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2021063894
(87)【国際公開番号】W WO2021239728
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】2025683
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519048908
【氏名又は名称】イーグル-アクセス ビー.ヴィ.
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】クリトジー マルコ ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】プリンス ウィレム フレデリク
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/161584(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/199543(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/103139(WO,A1)
【文献】特表2019-526486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 27/10
B63B 27/16
B63B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上作業中に人々及び/又は貨物を移送するための洋上移送システム(1)であって、
・静止ベース部(Ba)と、ほぼ垂直な第1の軸(Z1)を中心に前記静止ベース部(Ba)に対して回転可能な可動ベース部(Bb)とを有するベース(B)と、
・アーム構造物(CA、GA)と、
・要素(LSE、RE)と、
・一次測定システム(PMS)と、
・アクチュエータシステム(AA)と、
・制御システム(CS)と、を含み、
前記アーム構造物(CA、GA)が、ほぼ水平な第2の軸(X2)を中心に前記可動ベース部(Bb)に対して回転可能であるように、前記アーム構造物(CA、GA)は、前記可動ベース部(Bb)に取り付けられ、
前記要素(LSE、RE)は、移送作業中に前記アーム構造物(CA、GA)のアーム先端(T)によって支持されるように構成され、
前記一次測定システム(PMS)は、前記要素(LSE、RE)が前記アーム先端(T)によって支持される場合、移送作業中に外部基準に対する前記要素(LSE、RE)の相対移動を測定するように構成され、
前記アクチュエータシステム(AA)は、第1のアクチュエータ組立体(AA1)を使用して前記可動ベース部(Bb)を前記静止ベース部(Ba)に対して回転させ、第2のアクチュエータ組立体(AA2)を使用して前記アーム構造物(CA、GA)を前記可動ベース部(Bb)に対して回転させるように構成され、
前記制御システム(CS)は、前記アーム先端(T)が要素(LSE、RE)を支持する場合、移送作業中に前記外部基準に対する前記要素(LSE、RE)の測定された相対移動を補償するために、前記一次測定システム(PMS)の出力に応じて前記アクチュエータシステム(AA)を駆動するように構成される、洋上移送システム(1)において、
システム(1)は、
・二次測定システム(SMS)を更に含み、
前記二次測定システム(SMS)は、前記要素(LSE、RE)が置かれ、前記アーム先端(T)によって支持されなくなる場合、上陸期間に前記要素(LSE、RE)に対する前記アーム先端(T)の相対移動を測定するように構成され、
前記制御システム(CS)は、前記要素(LSE、RE)が置かれ、前記アーム先端(T)によって支持されなくなる場合、上陸期間に前記要素(LSE、RE)に対する前記アーム先端(T)の測定された相対移動を補償するために、前記二次測定システム(SMS)の出力に応じて前記アクチュエータシステム(AA)を駆動するように更に構成され、
前記二次測定システム(SMS)は、前記要素(LSE、RE)が置かれ、前記アーム先端(T)によって支持されなくなる場合、前記要素(LSE、RE)に対する少なくとも水平面における前記アーム先端(T)の相対移動を測定するように構成され、
前記制御システム(70)は、前記要素(LSE、RE)が置かれ、前記アーム先端(T)によって支持されなくなる場合、上陸期間に前記要素(LSE、RE)に対する前記水平面における前記アーム先端(T)の測定された相対移動を補償するために、前記二次測定システム(SMS)の出力に応じて前記アクチュエータシステム(AA)を駆動するように更に構成され、
前記二次測定システム(SMS)は、前記アーム先端(T)と前記要素(LSE、RE)との間の垂直距離を測定する距離センサ(34)を含み、
前記距離センサ(34)は、前記アーム先端(T)と前記要素(LSE、RE)のうちのいずれか一方に取り付けられた送信機及び受信機と、前記アーム先端(T)と前記要素(LSE、RE)のうちの他方に取り付けられた1つ以上の反射ターゲット(36)とを含む、ことを特徴とする洋上移送システム(1)。
【請求項2】
少なくとも3つ又は4つの距離センサ(34)は、三角形又は正方形に互いに位置決めされるように設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の洋上移送システム。
【請求項3】
前記距離センサ(34)は、レーザ測定ツールである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の洋上移送システム。
【請求項4】
前記1つ以上の反射ターゲット(36)は、異なる高さの部分を含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の洋上移送システム。
【請求項5】
前記反射ターゲット(36)は、球状の空洞を含む、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の洋上移送システム。
【請求項6】
前記要素(LSE、RE)は、ロープ、チェーン又はスリングなどの1つ以上の可撓性の細長い引張部材によって前記アーム先端(T)に接続される、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の洋上移送システム。
【請求項7】
前記アーム構造物(CA)は、クレーンアーム先端(T)を有するクレーンアーム構造物(CA)であり、
近位端及び遠位端を有する支持アーム(CA1)と、
近位端及び前記クレーンアーム先端(T)を形成する遠位端を有するブーム(CA2)と、を含み、
前記支持アーム(CA1)の前記近位端と前記遠位端との間の位置にある前記支持アーム(CA1)が、ほぼ水平な第2の軸(X2)を中心に可動部(Bb)に対して回転可能であるように、前記支持アーム(CA1)は、前記ベース(10)の前記可動部(Bb)に取り付けられ、
前記ブーム(CA2)の前記近位端と前記遠位端との間の位置にある前記ブーム(CA2)が、ほぼ水平な第3の軸(X3)を中心に前記支持アーム(CA1)に対して回転可能であるように、前記ブーム(CA2)は、前記支持アーム(CA1)の前記遠位端に取り付けられ、
前記アクチュエータシステム(AA)は、前記第2のアクチュエータ組立体(AA2)を使用して前記支持アーム(CA1)を前記可動ベース部(Bb)に対して回転させ、第3のアクチュエータ組立体(AA3)を使用して前記ブーム(CA2)を前記支持アーム(CA1)に対して回転させるように構成される、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の洋上移送システム。
【請求項8】
前記要素(LSE)は、移送中に人々及び/又は貨物を支持するように構成された積荷支持要素(LSE)である、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の洋上移送システム。
【請求項9】
前記要素(LSE)は、少なくとも1つのアクセスドアを有するケージである、ことを特徴とする請求項8に記載の洋上移送システム。
【請求項10】
前記アーム構造物(GA)は、伸縮性のギャングウェイアーム構造物(GA)である、ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の洋上移送システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の洋上移送システム(1)を備えた船舶(O1)。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の洋上移送システム(1)を使用して、第1の洋上物体と第2の洋上物体との間で人々又は貨物を移送する方法であって、方法は、
移送作業中に前記要素(LSE、RE)を前記第1の洋上物体から第2の洋上物体に移動するステップであって、
・前記アーム先端(T)が、前記要素(LSE、RE)を支持し、
・前記一次測定システム(PMS)が、前記第2の洋上物体に対する前記第1の洋上物体の相対移動を測定し、
・前記制御システム(CS)が、前記第2の洋上物体に対する前記第1の洋上物体の測定された相対移動を補償するために、前記一次測定システム(PMS)の出力に応じて前記アクチュエータシステム(AA)を駆動するステップと、
前記要素(LSE、RE)が移送作業中に前記アーム先端(T)によって支持されなくなるように、前記要素(LSE、RE)を前記第2の洋上物体に置くステップであって、
・人々又は貨物を前記第2の洋上物体へ、又は前記第2の洋上物体から移送させ、
・前記二次測定システム(SMS)が、前記要素(LSE、RE)に対する前記アーム先端(T)の相対移動を測定し、
・前記制御システム(CS)が、前記要素(LSE、RE)に対する前記アーム先端(T)の測定された相対移動を補償するために、前記二次測定システム(SMS)の出力に応じて前記アクチュエータシステム(AA)を駆動するステップと、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記第1の洋上物体と前記第2の洋上物体との間は、船舶(O1)と固定洋上構造物(O2)との間である請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば洋上作業において遭遇するような、互いに相対移動している2つの物体の間で人々及び/又は貨物を、特に2つの物体の間の相対移動を補償することによって安全に、移送するための洋上移送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
洋上プラットフォーム及び洋上風車の数の増加に伴い、例えば保守及び据え付けのために、これら洋上プラットフォーム及び風車への、又はこれらからの、人々及び/又は貨物の移送のための簡単で安価なシステムの必要性が高まっている。
【0003】
従来技術の諸システムは、例えば入れ子式に伸縮可能なギャングウェイに基づいている。
【0004】
代替として、特許文献1は、要員用カプセルが接続されたブーム組立体を担持する安定化された船舶載支持アームを開示している。このアームは、ジンバル構成を介して、補給船舶の甲板上の取り付け台に接続されている。アーム、ブーム、及びカプセルは、プラットフォームへの移動のために、油圧式手段、特に複数のラムによって位置が制御される。プラットフォームに対するカプセルの位置を安定化させるために、油圧式手段は、船舶の移動を補償するように動的に制御される。
【0005】
これに伴う一欠点は、この動的補償が相対的に低速かつ不精確であることである。モーションセンサ、ソフトウェア、制御設備、ライン、ポンプ、蓄電池、弁、スイッチ、駆動用エンジン/アクチュエータから成る長い油圧チェーンにより、カプセルが接続されたブームの先端を船舶の移動に対して十分に静止させておくことは実際には不可能である。かなりの残存移動が「補償された」先端に常に残るので、プラットフォーム上へのカプセルの載置は極めて危険である。実際に、これは、特許文献1の構造物の使用が可能であるのは、うねりが大き過ぎないとき、波が高過ぎないとき、風が強過ぎないとき、船舶が動き過ぎないとき、又は小さ過ぎないとき、等々に限られることを意味する。この公知の構造物をより厳しい状況においても使用することが望まれる場合は、カプセルをプラットフォーム上に押し下げる必要があるか、又はそこに物理的に接続する必要がある。
【0006】
別の欠点は、特許文献1において、ロール、ピッチ、及びヒーブの動的補償は、アームと甲板上の取り付け台との間のジンバル構成に基づくことである。甲板上の取り付け台は、垂直軸の周りに(around a vertical axis)回転可能に位置付けられているが、この垂直軸周りの回転性のための駆動装置は、この動的補償の一部を形成していない。実際に、この垂直軸周りの回転性は、プラットフォーム側へのカプセルの移動中、固定されている。これは、特許文献1の補償が不完全であることを意味する。船舶の前後方向への移動及び垂直軸周りの回転運動は、例えばアームが、通常は好適な使用位置である、船舶にほぼ垂直な位置での作動時には補償されない。
【0007】
特許文献2には、支持アーム及びブームを有する2分割式クレーンアーム構造物と、ブームのクレーンアーム先端に4本のケーブルによって垂れ下がったケージとを含む洋上移送システムを備えた船舶が開示されている。支持アームとブームの両方は、釣り合いが取れる。ブームのクレーンアーム先端は、ピッチ、ロール、ヒーブなど全ての船舶の動きに対して補償される。このため、任意の船舶の移動を自律的に登録するモーションリファレンスユニット(MRU)は、船舶に設けられる。
【0008】
この公知のシステムの重要な利点は、必要な駆動力を減らすための釣合い重りの使用により、電気駆動装置の使用が可能になることである。これは、システムが船舶又は洋上物体の急な移動に対して、油圧式駆動装置の場合より、はるかに迅速、より精確に対応できるという利点をもたらす。この設計は、従来技術のシステムに比べて、低重量を容易にもたらすことができ、結果として消費エネルギーが少ない。長い油圧チェーンがない。代わりに、電気駆動装置は単純かつ直接的であり、その動作性能がはるかに高速、より精密、より精確である。実際には、他の公知の解決策に比べて、移送中、「望ましくない」相対移動を10分の1に減らせることが好都合に明らかになっている。洋上移送作業中、ケージは、例えば洋上物体の上陸プラットフォームに、真のタッチアンドゴー原理で位置付け可能である。例えば、30-LSE秒の接触時間が十分に可能である。
【0009】
船舶のある程度の低速移動は、MRUによって検出されない場合がある。特に、水平方向の船舶移動は、必ずしも十分に検出されていないため、補償されない。これは、移送中に問題とならず、オペレータは、手動で修正するのに十分な時間がある。しかしながら、ケージが上陸プラットフォームに置かれた後、そのような検出されなくて補償されない水平方向の船舶移動は、ケージをブームに接続するケーブルが再び完全に引っ張られることを引き起こすほど、非常に大きい問題になる。これにより、ブームが上陸プラットフォーム上のケージに沿って引きずり始め、ケージと上陸プラットフォームの損傷につながる場合があり、更に悪いことには、移送される人々に危険な状況をもたらす場合がある。
【0010】
この問題は、MRUに衛星航法を追加することで解決することができる。しかしながら、これは、複雑で高価であり、依然として完全な危機管理(failsafe)ではない。
【0011】
特許文献3は、貨物を拾い上げて浮き船に載せるための石油掘削装置の吊り上げクレーンを示す。ここでは、クレーンブームの先端の下にカメラを備えたセンサシステムが提供されているため、船のヒーブ、ピッチ、ロールの動き、および巻き上げワイヤの端での貨物の揺れ動きの補償が予測される。人の移送は予測されておらず、貨物は上陸後できるだけ早くロック解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】英国特許第2336828号
【文献】国際公開第2018/034566号
【文献】国際公開第2012/161584号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、それらの欠点を少なくとも部分的に解決するか、又は使用可能な代替案を提供することを目的とする。特に、本発明は、動き補償されたアーム構造物によって支持された要素を有し、移送中だけでなく、要素が別の洋上物体に一時的に置かれている場合でも、信頼性が高い、危機管理である、更に改良された洋上移送システムを提供することを目的とする。
【0014】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の洋上移送システムにより達成される。このシステムは、静止ベース部と、ほぼ垂直な第1の軸を中心(about)に静止ベース部に対して回転可能な可動ベース部とを有するベースと、アーム構造物と、要素と、一次測定システムと、アクチュエータシステムと、制御システムと、を含む。アーム構造物が、ほぼ水平な第2の軸を中心に可動ベース部に対して回転可能であるように、アーム構造物は、可動ベース部に取り付けられる。要素は、アーム構造物のアーム先端によって支持されるように構成される。一次測定システムは、少なくとも要素が持ち上げられ、その重量がアーム先端によって支えられる場合、発生する可能性のある、外部基準に対する要素の「望ましくない」相対移動を測定するように構成される。これらの状況は、移送作業とも呼ばれる。アクチュエータシステムは、第1のアクチュエータ組立体を使用して可動ベース部を静止ベース部に対して回転させ、第2のアクチュエータ組立体を使用してアーム構造物を可動ベース部に対して回転させるように構成される。制御システムは、少なくともそのような移送作業中に、外部基準に対する要素の測定された「望ましくない」相対移動を補償するために、一次測定システムの出力に応じてアクチュエータシステムを駆動するように構成される。
【0015】
「望ましくない」相対移動とは、人々及び/又は貨物をその間で移送する必要がある2つの物体の相対移動によって引き起こされる、例えば少なくとも一方に対して作用する波や風などによって引き起こされる、外部基準に対する要素の移動の意図されない部分であると理解されたい。「望ましい」相対移動とは、アーム構造物によって要素を2つの物体の間で移動させるために駆動されるアクチュエータシステムによる、外部基準に対する要素の移動の意図された部分であると理解されたい。
【0016】
本発明の思想において、システムは、少なくとも要素が置かれ、その重量がアーム先端によって支えられなくなる場合、要素に対するアーム先端の相対移動を測定するように構成された二次測定システムを更に含む。これらの状況は、主に要素が第2の物体の上陸プラットフォームなどに一時的に上陸する、いわゆる上陸中に発生する。これにより、制御システムは、少なくともそのような上陸中に、要素に対するアーム先端の任意の測定された相対移動を補償するために、二次測定システムの出力に応じてアクチュエータシステムを駆動するように更に構成される。
【0017】
したがって、本発明によれば、「外部基準」の一次測定、及び上記移送作業中の上陸プラットフォームなどに対する要素の「望ましくない」移動の補完的な一次補償に加えて又はこれに代えて、有利には要素に対するアーム先端の「望ましくない」移動の「内部基準」の二次測定及び補完的な二次補償も、第2の物体の上陸プラットフォームなどへの要素の一時的な上陸中に実行することができる。これらの上陸期間は、例えば要素のケージに人々が乗り降りする必要があり、及び/又は要素の下垂/吊りフレームから貨物の荷下ろしを支援する必要があるため、最も重大な状況であると見なすことができる。
【0018】
二次測定システム及びアーム先端のその二次測定による補完的な二次補償は、上記上陸期間にアクティブにすればよく、つまり、少なくとも要素が置かれた後から始まり、少なくともアーム構造物によって再び持ち上げられるまで停止する。原則として、一次測定システムは、上記上陸期間にアクティブにする必要がない。そして、二次測定システムは、要素に対するアーム先端の二次測定された相対移動が補償されるように、アクチュエータシステムを駆動するために必要な入力を制御システムに伝送することができる。
【0019】
この二次測定システムがアーム先端と要素との間の「内部基準」を利用するという事実のおかげで、要素を上陸プラットフォームなどの任意の位置に上陸させることができると有利である。二次測定と補完的な二次補償を実行できるようにするために、特定の上陸エリアは、必要とされない。
【0020】
「内部基準」の二次測定システムは、「外部基準」を用いた一次測定システムによって常に確実に検出できない、2つの洋上物体の間の低速移動を確実に検出できることができることが証明されている。これにより、上陸期間のシステムの安全性を高めることができる。そのような上陸期間の要員の安全は、オペレータによる第1の物体への永続的な観察と手動修正に依存する必要がなく、高価で不安定な衛星航法に依存する必要もない。
【0021】
要素は、上陸プラットフォームなどの所定の位置に留まることができ、同時にアーム先端は、二次測定及び補完的な二次補償によって要素の真上に自動的に位置決めされたまま効率的に維持することができる。
【0022】
好ましい実施形態において、この要素は、ロープ、チェーン又はスリングなどの1つ以上の可撓性の細長い引張部材によってアーム先端に接続することができる。これらの可撓性の接続には、要素を持ち上げるようにアーム構造物が制御されると、自動的に引っ張られ、要素が置かれると、この引張から自動的に解放されるという利点がある。引張解放は、要素が倒れたり、前後に引きずられたりするなどの危険な状況につながる可能性のある引っ張り力をすぐに要素に加え始める代わりに、アーム先端が要素に対して移動するようにアーム先端に弛みを与えるため、重要である。この弛みはまた、二次測定システムによって測定された相対的な望ましくない移動に応答する時間を制御システムに与える。実行される二次補償の応答時間の最大弛みcqの量は、可撓性の細長い引張部材の適切な長さ、例えば100~200cmを選択することにより設定することができる。
【0023】
なお、要素の重量負荷によって引っ張られ、ある程度の遊びでこの重量負荷から解放される可撓性の細長い引張部材による接続はまた、上陸期間及び移送作業中に、毎回、要素をアーム構造物から取り外して再び接続する必要がないため、有利である。なお、その接続は、要素を交換したり、長期間にわたってどこかに落としたりすることができるように、取り外し可能なタイプであることが好ましい。
【0024】
なお、本発明はまた、アーム先端と要素との間に、磁気接続又は真空作動吸引接続などの他の種類の接続と組み合わせて有利に使用することができる。このため、各上陸期間に一時的に取り外される。本発明は、アーム先端が要素に対して適切な位置(position)に留まるように自動的に補償できるという利点を提供することができる。これにより、新しい移送作業を開始することが望まれると、再接続をより容易にする。
【0025】
本発明において、二次測定システムは、少なくとも上記上陸期間に、要素に対する水平面におけるアーム構造物のアーム先端の相対移動を特に測定するように構成されてもよい。したがって、一方又は両方の物体の低速水平漂流移動を特に補償することができ、該低速水平漂流移動は、上記上陸期間に発生する可能性があり、かつ一次測定システムによって検出されない可能性が高い。
【0026】
そのような相対的な水平移動の測定を実行するために、二次測定システムは、要素又はアーム先端のいずれか一方に、検出可能な唯一のターゲットパターンを含んでもよく、該ターゲットパターンは、要素上のアーム先端の正確な水平位置を表し、要素とアーム先端のうちの他方に取り付けられた画像認識などの1つ以上の検出器によって検出可能である。
【0027】
本発明において、二次測定システムは、複数の水平に間隔を空けた位置に、それらの間隔を空けた位置のそれぞれでアーム先端と要素との間の垂直距離を測定する複数の距離センサを含んでもよい。そして、これらの測定された垂直距離の1つ以上の変化を、要素に対する上記水平面におけるアーム先端の相対移動の指標として使用することができるため、そのような相対的な水平移動に対する二次水平補償は、制御システムによって自動的に指示することができる。追加の利点として、これらの測定された垂直距離の変化を、要素に対する垂直方向におけるアーム先端の相対移動の指標として組み合わせて使用することができるため、そのような垂直相対移動に対する二次垂直補償も、制御システムによって自動的に指示することができる。
【0028】
好ましくは、少なくとも3つ又は4つの距離センサは、三角形又は正方形に位置決めされるように互いに水平に間隔を空けた位置に設けられている。これにより、制御システムによって必要な補償が制御されるべき測定された相対移動に対して、上記水平面における正確な方向を決定することができる。
【0029】
本発明において、距離センサは、送信機と、受信機と、特に、アーム先端と要素のうちのいずれか一方に取り付けられたレーザ測定ツールと、アーム先端と要素のうちの他方に取り付けられた1つ以上の反射ターゲットとを含。したがって、過酷な洋上気象条件及び可能な劣化に対して不安定が低い非接触式の距離測定は、可能になる。
【0030】
これに加えて、又は代替として、1つ以上の反射ターゲットは、異なる高さの部分を含んでもよい。例えば、反射ターゲットは、それらの間で高さの遷移が徐々に又は段階的に増加又は減少する部分を含んでもよい。そして、1つの距離センサが徐々に又は段階的に変化する距離の測定を開始するが、他の距離センサは、ほぼ同じ距離を測定したままになると、目的とする二次補償を実行することができる。
【0031】
例えば、厚さが均一な円板状の反射ターゲットを1つ設けることができる。そして、1つ以上の距離センサが隆起した円板状のターゲットに「落ちる」と、アーム先端を反対方向に操縦することで補償することができる。
【0032】
これに加えて、又は代替として、反射ターゲットは、凹状、凸状、又は円錐状であってもよい。これは、アーム先端の各望ましくない移動が自動的に各距離センサに変化した距離の測定を開始させるという利点を有する。
【0033】
好ましくは、反射ターゲットは、球状の空洞を含んでもよい。これにより、アーム先端のそれ自身の縦軸の周りの回転及びピッチ回転が、距離センサによって測定された異なる距離を引き起こすことがなくなるため、アーム先端の水平及び垂直のシフト移動のみを補償すればよいという利点がある。
【0034】
アーム構造物は、例えば、動き補償された伸縮アームによって形成することができる。これは、伸縮クレーンアーム構造物として、又は伸縮ギャングウェイ/通路として使用される伸縮アームであってもよい。本発明はまた、支持アーム及びブームを有する2分割式クレーンアーム構造物と組み合わせて使用することができる。より好ましくは、本発明は、参照により本明細書に組み込まれた特許文献2に示され、説明されているように、釣り合いが取れた、軽量の、電動2分割式クレーンアーム構造物と組み合わせて使用される。
【0035】
要素は、単に上陸プラットフォームなどに置かれた後に基準としての機能を有する基準要素であってもよい。この要素はまた、移送中に人々及び/又は貨物を支持するように構成された積荷支持要素であってもよい。例えば、そのような積荷支持要素は、少なくとも1つのアクセスドアを有するケージであってもよい。
【0036】
好ましくは、洋上移送システムが設けられた第1の物体は、船舶、特に、上記上陸期間に第2の物体に対してほぼ同じ位置(location)に第1の物体を保持する動的位置決めシステムを備えた船舶によって形成される。したがって、例えば洋上プラットフォーム及び/又は洋上風車マストから又はこれらへの1つ又は同一の船舶からの多くの移送を行うことができる。第2の物体はまた、別の船舶によって形成されてもよく、洋上移送システムは、例えば固定洋上構造物自体に取付可能である。
【0037】
本発明の更なる好ましい実施形態は、従属項に記載されている。
【0038】
本発明はまた、請求項11に記載の方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
以下、添付の図面を参照していくつかの例示的な実施形態を非限定的に説明することにより、本発明をより詳細に説明する。
【0040】
図1】移送作業中の洋上マストの前にある、本発明の一実施形態に係る洋上移送システムを備えた船舶を概略的に示す。
図2図1の拡大部分斜視図を示す。
図3a】上陸直前の図1の拡大部分斜視図及び正面図を示す。
図3b】上陸直前の図1の拡大部分斜視図及び正面図を示す。
図4a図3a及び図3bに係る、上陸期間の場合の図を示す。
図4b図3a及び図3bに係る、上陸期間の場合の図を示す。
図5図4bに係る、ブームのクレーンアーム先端が船舶のローリング又はピッチング移動を受けた場合の図を示す。
図6図5に係る、ブームのクレーンアーム先端が水平位置からずらされた場合の図を示す。
図7a】上陸直前の伸縮ギャングウェイ及び基準要素を備えた変形例の斜視図及び側面図を示す。
図7b】上陸直前の伸縮ギャングウェイ及び基準要素を備えた変形例の斜視図及び側面図を示す。
図8a図7a及び図7bに係る、上陸期間の場合の図を示す。
図8b図7a及び図7bに係る、上陸期間の場合の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、本発明の一実施形態に係る、洋上作業中に人々及び/又は貨物を移送するための洋上移送システム1を示す。洋上作業は、船舶O1から、石油掘削プラットフォーム、洋上風車、又は他の固定洋上施設などの固定洋上構造物O2へ、及び/又は逆もまた同様に、人々及び/又は貨物を移送することを含んでもよい。システム1は、船舶O1の甲板に取り付けられる。
【0042】
システム1は、ベースBと、支持アームCA1及びブームCA2を有する2分割式クレーンアーム構造物CAと、積荷支持要素LSEと、一次測定システムPMSと、アクチュエータシステムと、制御システムCSとを含む。
【0043】
ベースBは、船舶O1の甲板に取り付けられた静止ベース部Baと、ほぼ垂直な第1の軸Z1を中心(about)に静止ベース部Baに対して回転可能な可動ベース部分Bbとを含む。
【0044】
可動ベース部Bbを静止ベース部Baに対して回転させるために、アクチュエータシステムは、第1のアクチュエータ組立体AA1を含み、該第1のアクチュエータ組立体AA1は、旋回輪の形態で具現化され、旋回輪の外歯歯車は、旋回輪に係合する歯車を駆動する電気駆動装置と協働する静止ベース部Baに配置され、電気駆動装置及び歯車は、可動ベース部Bbに配置される。
【0045】
支持アームCA1は、近位端及び遠位端を有する。可動ベース部Bbは、第1の支持梁を含み、支持アームCA1は、支持アームCA1の近位端と遠位端との間の位置で該第1の支持梁に接続することができる。支持梁は、ほぼ水平な第2の軸X2を画定し、支持アームCA1が上記第2の軸X2を中心に可動ベースBbに対して回転することができる。
【0046】
支持アームCA1を可動ベース部Bbに対して回転させるために、アクチュエータシステムには、第2のアクチュエータ組立体AA2が設けられ、第2のアクチュエータ組立体AA2は、この実施形態において、支持アームCA1の近位端に配置された電動ウィンチと、支持アームCA1のウィンチと可動ベースBbとの間に延在する対応するケーブルとを含む。
【0047】
これにより、それぞれのウィンチを使用してケーブルを繰り出すか又は手繰り寄せることによって、支持アームCA1の回転は、可能になる。
【0048】
ブームCA2は、近位端及び遠位端を有する。ブームCA2の遠位端は、クレーンアーム構造物CAのクレーンアーム先端Tとも呼ばれる。ブームCA2は、ブームCA2の近位端と遠位端との間の位置で支持アームCA1の遠位端に接続される。この位置での支持アームCA1は、ほぼ水平な第3の軸X3を画定し、ブームCA2が上記第3の軸X3を中心に支持アームCA1に対して回転することができる。
【0049】
ブームCA2を支持アームCA1に対して回転させるために、アクチュエータシステムAAには、第3のアクチュエータ組立体AA3が設けられ、該第3のアクチュエータ組立体AA3は、この実施形態において、ブームCA2の近位端に配置された電動ウィンチと、ブームCA2のウィンチと支持アームCA1の遠位端との間に延在する対応するケーブルとを含む。
【0050】
これにより、それぞれのウィンチを使用してケーブルを繰り出すか又は手繰り寄せることによって、ブームCA2の回転は、可能になる。
【0051】
積荷支持要素LSEは、クレーンアーム先端Tから垂れ下がって支持されるように構成され、移送中に人々及び/又は貨物を支持するように構成される。
【0052】
積荷支持要素LSEは、クレーンアーム先端Tに恒久的に接続されてもよいが、移送の種類に応じて異なる種類の積荷支持要素LSEと共にシステムを時々使用することができるように取り外し可能に接続されてもよい。更に、移送後に積荷支持要素LSEを置き去りにすることができる。これにより、例えば、システム1全体の使用、及び/又は、その後の移送間にシステムを備えた船舶O1が他のタスクを、おそらく別の位置で実行することを制限することができる。
【0053】
上述したように、システム1は、好ましくは、2つの物体間に望ましくない相対移動が存在する場合に使用され、これらの2つの物体間での人及び/又は貨物の容易な移送を防止する。図1の実施形態において、この相対移動は、海及び/又は風による船舶O1の移動によって引き起こされるが、固定洋上構造物O2は、移動可能ではない。
【0054】
これらの望ましくない相対移動の結果として、積荷支持要素LSEは、移送作業中に、即ち、固定洋上構造物O2のフェンスで囲まれた上陸プラットフォーム7に向かう(オペレータ)制御された積荷支持要素LSEの空中の移送変位中に、固定洋上構造物O2に対して船舶O1の移動に伴って移動し始める。
【0055】
望ましくない相対移動を補償するために、システム1には、外部基準に対する積荷支持要素LSEの望ましくない相対移動を直接又は間接的に測定するように構成された一次測定システムPMSが設けられる。この測定は、直接及び間接的な方法を含む様々な方法で行える。例えば、
1)例えばジャイロスコープを使用して、船舶O1又は静止ベース部Baの相対運動(relative motion)を測定する。この場合、地球自体が外部基準として機能するが、固定洋上構造物O2は、地上に直接配置されるので、固定洋上構造物O2を外部基準とみなすこともできる。及び/又は、
2)例えばレーザ測定システムを使用して、例えば、レーザ光線が固定洋上構造物O2と船舶O1との間で反射されるレーザ干渉法に基づいて、固定洋上構造物O2に対する船舶O1の相対移動を直接測定する。
【0056】
相対移動はまた、基準に対する加速度、速度、及び/又は位置を測定することによって測定されてもよく、これらの測定値を使用して相対移動を補償できればよい。
【0057】
図1において、一次測定システムPMSは、静止ベース部Baに取り付けられた、モーションリファレンスユニットによって形成される。
【0058】
望ましくない相対移動を表す一次測定システムPMSの出力は、制御システムCSに供給される。別の入力は、積荷支持要素LSEの望ましい移動又は相対位置を表すユーザ入力であってもよい。
【0059】
制御システムCSは、船舶O1の、ひいては積荷支持要素LSEの望ましくない相対移動を補償するために、一次測定システムPMSの出力に応じてアクチュエータシステムAAを駆動するように構成される。その結果、積荷支持要素LSEの望ましい移送変位がない場合には、船舶O1は、波及び風の作用の故に、望ましくない動き(ロール、ピッチ、ヒーブ、ヨー、サージ、揺れ)をする傾向があるため、船舶O1が固定洋上構造物O2に対して動的に位置決めされたままであっても、積荷支持要素LSEは、固定構造物O2に対して静止していることになる。
【0060】
望ましくない相対移動の一次補償は、動き補償されたクレーンアーム先端Tにつながり、オペレータ又はユーザは、制御システムCSがクレーンアーム構造物CAと、これにより上記移送作業中に固定構造物O2に対するクレーンアーム先端T及び積荷支持要素LSEの位置とを正確に制御することをはるかに容易にする。これは、上記移送作業の最後に、積荷支持要素LSEを上陸プラットフォーム7のフェンスの上及び後ろに慎重に置く必要がある場合に特に有利である。図2図3a及び図3bを参照されたい。
【0061】
制御システムCSは、第1、第2、及び第3のアクチュエータ組立体AA1、AA2、AA3の電気駆動装置に駆動信号を提供する。
【0062】
洋上状況によって、図1図3に示す移送作業中と図4図6に示す上陸期間との両方で、連続的に補償される望ましくない移動があることが予想される。これは、ベースBbの可動部Bb(及びそれによって支持される全てのもの)、支持アームCA1及びブームCA2を移動するために、アクチュエータ組立体AA1、AA2、AA3が連続的に駆動されることを意味する。
【0063】
駆動力を限度内に維持するために、支持アームCA1は、釣合い重りを支持アームCA1の近位端に含み、ブームCA2は、対応する釣合い重りをブームCA2の近位端に含む。
【0064】
支持アームCA1及びブームCA2は、好ましくは、釣合い重りが支持アームCA1及びブームCA2のそれぞれの遠位端に加えられるモーメントを完全に補償しないように構成されることにより、第2及び第3のアクチュエータ組立体AA2、AA3のそれぞれのケーブルは、作業中、常に張られた状態に維持される。
【0065】
図2図6から分かるように、下垂フレーム20がジンバル/カルダン接続部21を介して振り子としてクレーンアーム先端Tに取り付けられ、つまり、2つの垂直軸の周りに回転可能である。ジンバル/カルダン接続部21には、悪天候の移送作業中に積荷支持要素LSEが過度に揺れ始めることを防止するために、適切なダンパーが設けられてもよい。下垂フレーム20は、角に4つの耳部24を有する矩形のプレート23を含む。
【0066】
積荷支持要素LSEは、少なくとも1つのアクセスドアを有するケージとして具現化される。積荷支持要素LSEは、角に4つの耳部27を有する平坦な矩形の上面26を有する。
【0067】
積荷支持要素LSEの耳部27は、4つの可撓性の細長い引張部材30によって、下垂フレーム20の耳部24に接続される。これらの引張部材30は、鋼線ケーブルによって形成される。ロープ、チェーン、スリング、ワイヤ、吊り上げバンドなどの他の種類の可撓性で引張可能な部材も可能である。
【0068】
本発明において、二次測定システムSMSは、クレーンアーム先端Tと積荷支持要素LSEとの間に設けられる。この二次測定システムSMSは、積荷支持要素LSEに対するクレーンアーム先端Tの任意の望ましくない相対移動を直接測定するように構成される。
【0069】
そのため、二次測定システムSMSは、プレート23上の等間隔の位置に設けられた4つの距離センサ34を含む。距離センサ34は、赤外線、音波などの様々な種類のものであってもよい。レーザ測定ツールは、プレート23から積荷支持要素LSEの上面26に向かって真っ直ぐ下向きにレーザビームを放射するために使用される。この上面26には、送信されたセンサ信号を再び距離センサ34に向かって反射する円板状の反射ターゲット36が設けられる。反射ターゲット36は、球状の空洞を含む。したがって、反射ターゲット36と上面26との間に、数cmの厚さを有する段階的に隆起した移行部が形成される。更に、徐々に増加する反射面が球状の空洞の内部に設けられる。
【0070】
したがって、二次測定システムは、積荷支持要素LSEが上陸プラットフォーム7に置かれている期間に、クレーンアーム構造物CAのクレーンアーム先端Tで下垂フレーム20を積荷支持要素LSEの上面26に対して正確に位置決めすることができる。これは、MRUによって形成された一次測定システムPMSは、船舶の迅速な移動を検出できるが、そのような上陸期間の船舶の低速移動を常に正確に検出できないため、重要である。
【0071】
二次測定システムSMSの出力は、そのような相対的に低速移動の測定及び検出により適しているようである。
【0072】
制御システムCSは、上陸期間に、船舶O1、及び/又はクレーンアーム構造物CA、及び/又はクレーンアーム先端T、及び/又はそれに接続された下垂フレーム20の二次測定された望ましくない相対的に低速移動を補償するために、二次測定システムPMSの出力に応じてアクチュエータシステムAAを駆動するように構成される。その結果、クレーンアーム構造物CAの所望の移動がない場合には、クレーンアーム先端Tは、例えば動的に位置決めされた船舶O1がゆっくりと漂流する場合でも、積荷支持要素LSEの上方でほぼ静止している。
【0073】
したがって、この望ましくない相対移動の二次補償により、要員が上陸期間に積荷支持要素LSEのケージに出入りすることがより安全になる。
【0074】
図4a及び図4bにおいて上陸状況が示され、該上陸状況では、積荷支持要素LSEが上陸プラットフォーム7の床に置かれた後、クレーンアーム先端Tが下垂フレーム20のプレート23と積荷支持要素LSEの上に隆起した反射ターゲット36との間の目的とする離間距離まで更に若干下げられる。これにより、自動的に、4つの可撓性の細長い引張部材30が引っ張られなくなり、それぞれに一定量の遊びを持った緩いループとして垂れ下がる。これにより、積荷支持要素LSEは、クレーンアーム先端Tの残存の先端移動に晒されるたびに危険を冒すことがなくなる。
【0075】
目的とする離間距離は、好ましくは、ジンバル/カルダン接続部21の回転中心と球状の空洞との間の距離が球状の空洞の半径Rとほぼ同じになるように選択される。
【0076】
図4a及び図4bにおいて、最適な上陸状況が示されている。この最適な状況では、下垂フレーム20は、その中心軸が反射ターゲット36の中心軸と一致するように位置決めされる。そして、4つの距離センサ34のそれぞれは、ターゲット36に向かって同じ距離を測定する。
【0077】
ターゲット36に設けられた球状の空洞により、距離測定は、クレーンアーム先端Tに対する下垂フレーム20の振り子角度の変化の影響を受けない。図5を参照されたい。
【0078】
ターゲット36は、離間した4つの距離センサ34の範囲よりも若干大きい寸法となる。ジンバル/カルダン接続部21の回転中心が球状の空洞の中心軸の真上に位置決めされる限り、距離センサ34は、ほぼ同じ距離を測定し続け、制御システムCSがクレーンアーム構造物CAに二次補償を強制する必要がない。
【0079】
図6は、距離センサ34が、上陸され置かれた積荷支持要素LSEに対するクレーンアーム先端Tの水平面における望ましくない横方向漂流移動による距離の変化を測定し始めた状況を示す。これは、制御システムCSによって、補償を必要とする、水平面における望ましくない相対移動として直ちに認識される。
【0080】
水平面における必要な補償の方向は、制御システムCSによって、距離センサ24のどちらが増加した距離の測定を開始し、どちらが減少した距離の測定を開始したかという事実から決定することができる。したがって、積荷支持要素LSEに対するクレーンアーム先端Tの任意の望ましくないオフセットは、4つの距離測定の解釈によって測定され、積荷支持要素LSEの中心線に対する先端位置の補正につながる。
【0081】
また、下垂フレーム20のプレート23と積荷支持要素LSEの上の反射ターゲット36との間の目的とする離間距離が依然として許容限度内にあるか否かを制御システムCSが判定するために、二次測定を使用することができる。そうでない場合、これは、逆方向の補償を必要とする、垂直方向における望ましくない相対的な上向き又は下向きの移動が大きすぎると見なされる。これは、例えば、それぞれの測定距離を平均することによって行われてもよい。
【0082】
図7a及び図7bは、本発明の別の実施形態に係る、洋上作業中に人々及び/又は貨物を移送するためのギャングウェイタイプの洋上移送システムを示す。システムは、ベースを介して船舶の甲板に取り付けられる。このシステムは、第1のアームGA1を備えた2分割式のギャングウェイアーム構造物GAを含み、2分割式のギャングウェイアーム構造物GAは、その縦方向にギャングウェイを長くしたり短くしたりするために入れ子式に伸縮できるように、可動的に接続された第2のアームGA2を有する。ベースは、図1のものと同様であり、静止ベース部と、静止ベース部の垂直軸の周りに回転可能に接続された可動ベース部とを含む。第1のアームGA1は、可動ベース部の水平軸の周りに回転可能に接続された近位端を有する。
【0083】
第2のアームGA2は、ギャングウェイアーム構造物GAのギャングウェイアーム先端Tと呼ばれる遠位端を有する。
【0084】
ギャングウェイの自由度をアクティブに操舵し、すなわちギャングウェイを水平軸及び垂直軸の周りに回転させ、入れ子式に伸縮させるアクチュエータシステムが設けられる。
【0085】
基準要素REは、アーム先端Tから垂れ下がっており、上陸プラットフォーム7に置かれるように構成される。基準要素REは、アーム先端Tに恒久的に接続されている。
【0086】
このシステムは、好ましくは、2つの物体間に望ましくない相対移動が存在する場合に使用され、船舶から上陸プラットフォーム7へ、逆もまた同様に、ギャングウェイによる人々及び/又は貨物の容易な移送を防止する。
【0087】
望ましくない相対移動を補償するために、システムには、外部基準に対する基準要素RE又はアーム先端Tの望ましくない相対移動を測定し、それらを補償するように共に構成された一次測定システム、制御システム、及びアクチュエータシステムが再び設けられる。これは、図1の実施形態と同じ方法で行われてもよい。
【0088】
望ましくない相対移動の一次補償は、動き補償されたギャングウェイアーム先端Tにつながり、これによりオペレータ又はユーザは、制御システムがギャングウェイアーム構造物GAを正確に制御するため、上記移送作業中に固定構造物に対するギャングウェイアーム先端T及び基準要素REの位置を正確に制御するようにはるかに容易にする。これは、移送作業中に、ギャングウェイ先端及び基準要素REを上陸プラットフォーム7のフェンスの上及び後ろに慎重に置く必要がある場合に特に有利である。
【0089】
洋上状況によって、図7に示す移送作業中と図8に示す上陸期間との両方で、連続的に補償される望ましくない移動があることが予想される。
【0090】
図7から分かるように、固定フレームがギャングウェイアーム先端Tに取り付けられる。該固定フレームは、角に接続点24を有するプレート23を含む。
【0091】
基準要素REは、固体ブロックとして具現化される。基準要素REは、接続点24の数と同じ数の耳部27を有する平坦な円形の上面26を有する。
【0092】
基準要素REの耳部27は、可撓性の細長い引張部材30によってプレート23の耳部24に接続される。
【0093】
本発明において、二次測定システムSMSは、アーム先端Tと基準要素REとの間に設けられる。この二次測定システムSMSは、基準要素REに対するアーム先端Tの任意の望ましくない相対移動を直接測定するように構成される。
【0094】
そのため、二次測定システムSMSは、プレート23上の等間隔の位置に設けられた少なくとも3つの距離センサ34を含む。
【0095】
二次測定システムは、基準要素REが上陸プラットフォーム7に置かれている期間に、ギャングウェイアーム構造物GAのアーム先端Tでフレーム20を基準要素REの上面26に対して正確に位置決めすることができる。
【0096】
制御システムはまた、上記上陸期間に、船舶の二次測定された望ましくない相対的に低速移動を補償するために、二次測定システムPMSの出力に応じてアクチュエータシステムを駆動するように構成される。その結果、アーム先端Tは、例えば船舶がゆっくりと漂流する場合でも、基準要素REの上方でほぼ静止している。
【0097】
したがって、望ましくない相対移動の二次補償により、要員が上陸期間にギャングウェイGAに降りたり乗ったりすることがより安全になる。
【0098】
図8a及び図8bにおいて上陸状況が示され、該上陸状況では、基準要素REが上陸プラットフォーム7の床に置かれた後、アーム先端Tがプレート23と基準要素REの上面26との間の目的とする離間距離まで更に若干下げられる。これにより、自動的に、可撓性の細長い引張部材30が引っ張られなくなり、それぞれに一定量の遊びを持った緩いループとして垂れ下がる。これにより、基準要素REは、アーム先端Tの残存の先端移動に晒されるたびに危険を冒すことがなくなる。
【0099】
目的とする離間距離は、好ましくは、ギャングウェイの外端と上陸プラットフォーム7との間の距離が、人がギャングウェイから上陸プラットフォームに、逆もまた同様に、容易に降りるように十分に小さくなるように選択される。
【0100】
図8a及び図8bにおいて、最適な上陸状況が示されている。この最適な状況では、プレート23は、その中心軸が基準要素REの中心軸と一致するように位置決めされる。そして、少なくとも3つの距離センサ34のそれぞれは、基準要素REの上面26に向かって同じ距離を測定する。
【0101】
上面26は、離間した少なくとも3つの距離センサ34の範囲よりも若干大きい寸法となる。距離センサ34の1つ又は2つが基準要素REの上面26に「落ちる」と、より大きな距離が測定されることになり、該より大きな距離は、上陸され置かれた基準要素REに対するアーム先端Tの水平面における望ましくない横方向漂流移動の明確な指標である。これは、制御システムによって、補償を必要とする、水平面における望ましくない相対移動として直ちに認識される。
【0102】
水平面における必要な補償の方向は、制御システムによって、距離センサ24のどちらが増加した距離の測定を開始したかという事実から決定することができる。したがって、基準要素REに対するアーム先端Tの任意の望ましくないオフセットは、すくなくとも3つの距離測定の解釈によって測定され、基準要素REの中心線に対する先端位置の補正につながる。
【0103】
また、プレート23と基準要素REの上面26との間の目的とする離間距離が依然として許容限度内にあるか否かを制御システムが判定するために、二次測定を使用することができる。そうでない場合、これは、逆方向の補償を必要とする、垂直方向における望ましくない相対的に上向き又は下向きの移動が大きすぎると見なされる。これは、例えば、それぞれの測定距離を平均することによって行われてもよい。
【0104】
示され説明された実施形態に加えて、多数の変形形態が可能である。例えば、様々な部品の寸法と形状を変更することができる。また、示された実施形態の有利な態様を組み合わせることができる。
【0105】
第1の回転軸Z1は、ほぼ垂直であると規定され、第2及び第3の軸X2、X3は、ほぼ水平であると規定されているが、代替に、第2及び第3の軸は、互いに平行であるが、第1の軸に垂直であり、あるいは、第1、第2、及び第3の軸は、各DOFが並進である3DOF位置決めシステムが得られるように向けられると規定されてもよい。
【0106】
本発明の範囲から逸脱することなく、現在好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者にとって明らかであることを理解されたい。したがって、そのような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によってカバーされることが意図される。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b