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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】飲料自動注出装置
(51)【国際特許分類】
   B67D 1/08 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
B67D1/08 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019109882
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020200096
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501397920
【氏名又は名称】旭光電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】倉部 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】松田 巧
(72)【発明者】
【氏名】和田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】楠 健志
【審査官】古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-142289(JP,A)
【文献】特開平04-006083(JP,A)
【文献】特開2006-036229(JP,A)
【文献】特開2016-222326(JP,A)
【文献】特表2012-515123(JP,A)
【文献】特開昭60-158089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D1/00-1/16
3/00-3/04
G07F13/00-13/10
15/00-15/12
A47J31/00-31/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に向けて飲料を注出するノズル(44)と、
前記ノズル(44)の下に配置されて容器(102)を受ける載置台(52)と、
前記載置台(52)を、容器(102)を傾けて支持する傾斜位置と容器(102)を垂直に支持する又は前記傾斜位置の傾斜角度よりも小さな傾斜角度で容器を支持する非傾斜位置との間を移動させる傾斜手段(64)と、
前記載置台(52)が前記傾斜位置にある状態で前記ノズル(44)と前記ノズル(44)の延長上にある容器内周面(108)の基準位置(74)との間に物(110)が存在し得るか否かを判断する判断手段(72,76)を備え、
前記物(110)が氷である、飲料自動注出装置。
【請求項2】
前記判断手段は、「前記載置台(52)が前記傾斜位置にある状態で前記ノズル(44)と前記ノズル(44)の延長上にある容器内周面(108)の基準位置(74)との間に物(110)が存在し得る」か否かを判断するために、距離測定センサ(72)又は物検出センサを備えた請求項1に記載の飲料自動注出装置。
【請求項3】
前記判断手段(76)による「前記載置台(52)が前記傾斜位置にある状態で前記ノズル(44)と前記ノズル(44)の延長上にある容器内周面(108)の基準位置(74)との間に物(110)が存在し得る」との判断に基づいて、前記載置台(52)に支持された前記容器(102)の物(10)に移動力を与える移動手段(70)を備えた請求項1又は2に記載の飲料自動注出装置。
【請求項4】
前記移動手段(70)は、前記載置台(52)に振動を与える振動装置(70)を備えている、請求項3に記載の飲料自動注出装置。
【請求項5】
前記移動手段は、前記載置台(52)に支持された容器(102)の内側空間に進入して、前記基準位置(74)の近くにある物(110)に接触して移動させる移動装置を備えている、請求項3に記載の飲料自動注出装置。
【請求項6】
前記載置台(52)は、前記載置台(52)に設置された容器(102)の周壁(106)に対向する側板(56)を有し、
前記側板(56)は、前記載置台(52)に設置された容器(102)の周壁(106)が接触し得る弾性部材(78)を有する、請求項3~5のいずれかに記載の飲料自動注出装置。
【請求項7】
前記載置台(52)は、前記載置台(52)に設置された容器(102)の周壁(106)に対向する側板(56)を有し、
前記側板(56)は、前記載置台(52)に設置された容器(102)の周壁(106)が接触し得る弾性部材(78)を有し、
前記弾性部材(78)の固有振動数が前記振動装置の振動数の整数倍であることを特徴とする請求項4に記載の飲料自動注出装置。
【請求項8】
飲料自動注出装置の作動方法であって、
前記飲料自動注出装置は、
下方に向けて飲料を注出するノズル(44)と、
前記ノズル(44)の下に配置されて容器(102)を受ける載置台(52)と、
前記載置台(52)を、容器(102)を傾けて支持する傾斜位置と容器(102)を垂直に支持する又は前記傾斜位置の傾斜角度よりも小さな傾斜角度で容器を支持する非傾斜位置との間を移動させる傾斜手段(64)と、
前記載置台(52)に振動を与える振動装置(70)と備えており、
前記作動方法は、
前記載置台(52)が前記傾斜位置にある状態で前記ノズル(44)と前記ノズル(44)の延長上にある容器内周面(108)の基準位置(74)との間に氷(110)が存在し得るか否かを判断し、
「前記載置台(52)が前記傾斜位置にある状態で前記ノズル(44)と前記ノズル(44)の延長上にある容器内周面(108)の基準位置(74)との間に氷(110)が存在し得る」との判断に基づいて、前記振動装置(70)を駆動して前記載置台(52)に支持された前記容器(102)の氷(110)に振動を与える、飲料自動注出装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に飲料を自動注出するための飲料自動注出装置に関する。本発明は特に、炭酸飲料を自動注出するために好適な飲料自動注出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グラスやジョッキに炭酸(発泡性)飲料を自動で注出する装置は、特にビールを注出するためのビールディスペンサとして実用化されている。特許文献1~5を参照。このような装置では、炭酸飲料が容器底部に直接注出されると泡立ってしまい、外観、風味を損なってしまうため、容器を傾斜させて飲料が容器の内壁面を沿うように注出することが一般的である。具体的には、ノズルからの距離が3cm以内で、傾斜させた容器の開口端から3cm以内の位置に注がれる。
【0003】
また、近年の嗜好の多様化により、飲食店においてもビールだけではなく、ハイボールやサワー、チューハイ等の飲料が提供される機会が多くなっている。したがって、ビールと同様にハイボールやサワー、チューハイ等の飲料を自動注出できる装置も求められている。
【0004】
しかし、ハイボール、サワー、チューハイ等の飲料は、ビールと異なりグラスやジョッキ等の容器に氷を入れて提供される。この氷は外観の良さ、溶けづらさ等の理由から比較的大きな氷が使用される場合が多い。また、容器に入れた氷は場所によって高さが異なる。そのため、ノズルから注出された飲料が氷に直接当たって周囲に飛散したり溢れたりするおそれがある。
【0005】
飲料の注出速度を遅くすることも考えられるが、注出速度は炭酸飲料のガス圧によって制限されるため、実際には難しい。また、飲料の注出速度は、一般に50ミリリットル/秒未満、より具体的には20~40ミリリットル/秒程度であるが、これよりも注出速度を遅くすると、飲食店等のオペレーション効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平4-6083号公報
【文献】特開平4-6084号公報
【文献】特開平4-142289号公報
【文献】特開平4-142290号公報
【文献】特開平4-142291号公報
【文献】特開平4-142292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、注出される飲料が容器内の物に当たって飛散することを防止する飲料自動注出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明の実施形態に係る飲料自動注出装置は、
下方に向けて飲料を注出するノズル(44)と、
前記ノズル(44)の下に配置されて容器(102)を受ける載置台(52)と、
前記載置台(52)を、容器(102)を傾けて支持する傾斜位置と容器(102)を垂直に支持する又は前記傾斜位置の傾斜角度よりも小さな傾斜角度で容器を支持する非傾斜位置との間を移動させる傾斜手段(64)と、
前記載置台(52)が前記傾斜位置にある状態で前記ノズル(44)と前記ノズル(44)の延長上にある容器内周面(108)の基準位置(74)との間に物(110)が存在し得るか否かを判断する判断手段(72,76)を備えている。
【0009】
本発明の他の実施形態は、前記判断手段(76)による「前記載置台(52)が前記傾斜位置にある状態で前記ノズル(44)と前記ノズル(44)の延長上にある容器内周面(108)の基準位置(74)との間に物(110)が存在し得る」との判断に基づいて、前記載置台(52)に支持された前記容器(102)の物(100)に移動力を与える移動手段(70)を備えている。
【発明の効果】
【0010】
このような構成を備えた飲料自動注出装置によれば、飲料が注出される容器に必要以上の氷等の物が収容されているか否か検知できる。また、必要以上に氷等が収容されている場合、容器内の氷等に移動力が与えられて移動される。したがって、飲料ノズルから注出される飲料は、傾斜した容器の内周面に当たる。そのため、注がれた飲料が容器外に飛散したり溢れたりすることがなく、環境を清潔に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る炭酸飲料自動注出装置の側面図で、容器載置台が非傾斜位置にある状態を示す。
図2】本発明の実施形態に係る炭酸飲料自動注出装置の側面図で、容器載置台が傾斜位置にある状態を示す。
図3図1,2に示す炭酸飲料自動注出装置の載置台及びその周辺の装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明に係る炭酸飲料自動注出装置(以下、「注出装置」という。)の実施形態を説明する。
【0013】
図1は、注出装置の実施形態を示す。図示する実施形態の注出装置100は、例えばステンレスの板を加工して形成された略箱形のハウジング10を有する。ハウジング10の前部(図1の左側部分)は前方(図1において右側から左側に向かう方向)に向かって伸びるハウジング上段部分12とハウジング下段部分14を有し、これらとハウジング上段部分12とハウジング下段部分14の間に
飲料注出空間16が形成されている。ハウジング上段部分12の前壁18に飲料注出開始スイッチ20が配置されている。
【0014】
飲料注出空間16の後端に位置するハウジング10の前壁22とその後方に位置するハウジング10の後壁24との間には後部空間26が形成されており、該後部空間26には冷却液30を収容する冷却水槽28と冷却液30を冷却する冷却装置34が収容されている。冷却水槽28には、冷却液30の温度を検出する温度センサ32が設置されている。
【0015】
冷却水槽28の中には冷却管36が配置されている。冷却管36の一端側は、冷却水槽28とハウジング10の後壁24の下部を貫通して外部に伸びており、炭酸飲料供給源38に接続されている。図示しないが、炭酸飲料供給源38は、飲料原液タンクと炭酸ガスボンベを備えており、飲料原液タンク内の飲料原液は、炭酸ガスボンベからの炭酸ガスで加圧されることによって、炭酸ガスを含んだ飲料が冷却管36に供給されるようになっている。
【0016】
冷却管36の他端側は、冷却水槽28の上部を貫通して、飲料注出空間16の上に形成されたハウジング上段部分12の上部空間40に伸びている。一方、ハウジング上段部分12の下壁42にはこれを貫通する注出ノズル44がほぼ垂直に向けて取り付けてあり、注出ノズル44の上端に冷却管36の他端が接続されている。注出ノズル44は垂直に向ける必要はなく、前方に向かって斜めに配置してもよい。ハウジング上段部分12の上部空間40に位置する冷却管部分は弁46を備えており、この弁46を開閉することによって飲料が注出ノズル44から注出されるようになっている。弁46として、電磁弁や電動弁を用いることができる。
【0017】
図3に詳細に示すように、飲料注出空間16の後端に位置するハウジング前壁22の上部には、前方の飲料注出空間16に向けて突出する左右一対のブラケット48が固定されている。一対のブラケット48は、水平軸(シャフト)50を介して、容器載置台52を支持している。
【0018】
容器載置台52は、側方から見るとL字形状をしており、容器102の底部104を支持する底板54と、底板54の後端から上方に伸び、底板54の上に支持された容器102の周壁106に対向する又は接する側板56を有する。側板56の背面には一対のブラケット58が固定されており、これらのブラケット58が水平軸50に支持されている。これにより、容器載置台52は、水平軸50の周りを揺動可能に支持されている。
【0019】
ブラケット58の上方に位置する側板部分の背面には、側板56を前方から後方に向かって見たとき、側板56の略中央部に、前後方向に伸びる垂直面に沿って配置された一つのガイドプレート60が固定されている。ガイドプレート60には、上下方向に伸びる長孔62が形成されている。これに対応して、ハウジング前壁22には傾斜手段のリニアヘッド64が固定されている。リニアヘッド64は、筐体の内部に収容されたモータ、減速機及びピニオンと、筐体の前後壁を貫通して前後方向に伸びるラック(駆動シャフト)66を備えており、モータの回転を減速機で減速してピニオンに伝達し、ピニオンの回転をラック66の前後運動に変換するように構成されており、ラック66の先端に取り付けた係合ピン68がガイドプレート60の長孔62に係合させてある。したがって、リニアヘッド64を駆動する(モータを正逆回転する)ことにより、容器載置台52を図1に示す非傾斜位置と図2に示す傾斜位置との間を移動することができる。図示するように、非傾斜位置は、容器載置台52の底板54が水平又はほぼ水平に設けられ、側板56が垂直又はほぼ垂直に向けられた状態である。ただし、実施形態において、非傾斜位置は、容器102を垂直に支持する位置又は状態に限るものでなく、傾斜位置における容器102の傾斜角度よりも小さな傾斜角度で容器102を支持する位置又は状態をも含む。一方、傾斜位置は、容器載置台52が非傾斜位置から約30度前方(図1におおいて時計回り方向)に揺動した状態である。
【0020】
容器載置台52は、容器載置台52に置かれた容器102に振動を与える振動装置70を備えている。振動装置70には小型振動モータが利用できる。実施形態では、振動装置70は容器載置台52の側板背面に固定されている。振動装置70の設置場所や振動装置の数は、図示する実施形態に限るものでなく、容器載置台52に置かれた容器102に振動を与えて該容器102に収容されている氷を効果的に動かすことができるように決めることが好ましい。
【0021】
氷を効率良く動かすために、容器102に与える振動は、容器102に収容されている氷を「ぐらぐら」揺すって前後方向に動かすような、載置台に与えられる周期と振幅が出来るだけ大きな振動であることが好ましい。好ましい周期は0.2秒~0.5秒、好ましい振幅(載置台の下端における振幅)は2mm~10mmである。
【0022】
容器載置台52に置かれた容器102に氷が収容されている状態で飲料が容器102に注がれると、注がれた飲料が直接氷にあたって周囲に飛散するおそれがある。そのため、容器102に所定量以上又は所定の高さ(図2に示す限界レベル120)以上に氷が収容されているか否か判断することが求められる。そのため、実施形態の注出装置100では、飲料注出空間16の上にあるハウジング上段部分12に、限界レベル120よりも上に氷が有るか否かを検知する手段として距離測定センサ72を備えている。距離測定センサ72には種々の形態の距離測定センサ(例えば、超音波式距離測定センサ、光式距離測定センサ)が利用可能である。その他、距離測定センサ72に加えて又はこれに代えて、撮像素子(CCD)や検出距離設定型光学センサを含む物検出センサ(画像センサ又は撮像カメラ)を設け、この物検出センサの出力(撮影画像)を解析することによって、限界レベル120よりも上に氷が有るか否か検知してもよい。
【0023】
限界レベル120は、図2に示す傾斜位置においてノズル44から注出された飲料が容器内面に当たる位置又はノズル44の延長上にある容器内面部分の位置若しくはそれらの位置よりも僅かに低い容器内面の位置を基準に決められる。以下、この位置を「基準点」という。図1、2に示すように、基準点は、容器載置台52の揺動とともに水平軸50を中心に移動し、図2に示す傾斜位置ではノズル44の直下に符号74で示す位置にあるが、図1に非傾斜位置では図2に示す位置からさらに後方下方に移動した符号74’で示す位置にある。
【0024】
基準点74をこのように決める理由は、図2に示すように、容器102が傾斜位置にある状態で基準点74の上に氷110が存在すると、ノズル44から基準点74に向けて注出された飲料が直接氷110に当たって周囲に飛散するおそれがある一方、基準点74よりも下に氷が存在するときは傾斜位置にある容器102に注がれた飲料が直接氷110に当たることはなく、そのため飲料が周囲に飛散する可能性は低い、からである。
【0025】
ノズル44から注がれる飲料が氷110に当たらないようにするためには、図2に示すように、容器載置台52が傾斜位置にある状態で基準点74の近傍に氷が存在しないようにすることが大切である。そのため、実施形態では、距離測定センサ72は、図2に示すように、距離測定センサ72から出力された検出光又は検出信号の進行路が、傾斜位置にある容器載置台52に置かれた容器102の基準点74またはその近傍に当たるように、前後方向(図の左右方向)の位置と傾きが決められる。
【0026】
上述した飲料注出開始スイッチ20、冷却装置34、温度センサ32、電磁弁46、リニアヘッド64、振動装置70、距離測定センサ72は、ハウジング10の内部に収容されている制御装置(判断手段)76と電気的に接続されている。
【0027】
制御装置76による制御に基づく飲料自動注出について説明する。
【0028】
制御装置76には、冷却水槽28に収容されている冷却液30の温度が温度センサ32によって検出され、その検出値が制御装置76に入力されている。制御装置76は、温度センサ32の検出値に基づいて冷却装置34の駆動を制御し、冷却液30の温度を一定に維持する。
【0029】
例えば、図1に示すように、氷を収容した容器102が非傾斜位置の容器載置台52に載せられた状態で飲料注出開始スイッチ20が押されると、制御装置76は、リニアヘッド64を駆動して容器載置台52を図1の非傾斜位置から図2の傾斜位置に動かす。次に、制御装置76は距離測定センサ72を起動する。これにより、距離測定センサ72は、基準点74に向けて光または信号を発信し、距離測定センサ72の下方に存在する物(基準点74の上に氷110が無いときは基準点74、基準点74の上に氷110が有るときは氷110)に当たって帰ってくる信号を受信する。制御装置76は、光または信号の発信から受信までの時間または位相差をもとに、距離測定センサ72と物との距離を計算する。
【0030】
続いて、制御装置76は、距離測定センサ72と物との距離が短く、物が限界レベル120よりも高い位置にある否か判断する。具体的には、制御装置76は、容器載置台52が傾斜位置にある状態でノズル44と該ノズル44の延長上にある容器内周面108の基準点74との間に氷110が存在し得るか否かを判断する。
【0031】
図1に示すように、氷110が基準点74のある限界レベル120を超えて存在しない場合、制御装置76は弁46を開放してノズル44から飲料を注出する。ノズル44から注出された飲料は、容器102の基準点74に向かって注がれる。このとき、基準点74の近傍には氷が存在しないため、注がれた飲料が氷に直接当たって周囲に飛散することがない、又はたとえ飛散してもその量は僅かである。
【0032】
ある程度以上の量の飲料が注出されると、制御装置76は、リニアヘッド64を起動し、容器載置台52を傾斜位置から非傾斜位置に向けて徐々に移動する。移動中、弁46は開放状態を維持し、飲料の注出を継続してもよい。
【0033】
この段階で、氷は浮力によって浮遊状態になっている。したがって、ノズル44から注出される飲料のエネルギは浮遊する氷又は既に注がれている飲料に吸収される。そのため、飲料が周囲に飛散することもない、又は飛散してもその量は僅かである。
【0034】
その後、所定量の飲料が注出されると、制御装置76は弁46を閉鎖し、次に、リニアヘッド64を駆動して容器載置台52及び容器102を図1に示す非傾斜位置に戻して、飲料注出処理を終了する。
【0035】
一方、図2に示すように氷110が基準点74のある限界レベル120を超えて存在する場合、制御装置76はリニアヘッド64を駆動して容器載置台52及び容器102を図1に示す非傾斜位置に戻す。
【0036】
次に、制御装置76は振動装置70を駆動し、容器載置台52から容器102を介して氷110に振動を与える。これにより、容器102に収容されている氷が揺さぶられて均される、又は容器102の背面側内周面108の近くにある氷が前方に移動して基準点74の近傍から氷が無くなる。
【0037】
振動装置70が所定時間駆動すると、制御装置76は振動装置70を停止する。次に、制御装置は、リニアヘッド64を駆動して容器載置台52を非傾斜位置から傾斜位置に動かす。続いて、制御装置76は、電磁弁46を開放してノズル44から飲料を注出する。ノズル44から注出された飲料は、容器102の基準点74に向かって注がれる。このとき、基準点74の近傍には氷が存在しないため、注がれた飲料が氷に直接当たって周囲に飛散することがない、又は飛散してもその量は僅かである。
【0038】
ある程度以上の量の飲料が注出されると、制御装置76は、リニアヘッド64を再び起動し、容器載置台52を傾斜位置から非傾斜位置に徐々に移動する。このとき、弁46は開放状態を維持し、飲料の注出を継続してもよい。
【0039】
この時点で、氷は浮力によって浮遊状態になっている。したがって、ノズル44から注出される飲料のエネルギは浮遊する氷又は既に注がれている飲料に吸収される。そのため、飲料が周囲に飛散することもない、又は飛散してもその量は僅かである。
【0040】
容器載置台52が傾斜位置から非傾斜位置に戻る間、容器載置台52が非傾斜位置に戻った後は、制御装置76が弁46の開度を下げることによって単位時間の飲料注出量を減らし、飛散を防止するようにしてもよい。
【0041】
以上の説明では、氷110が限界レベル120を超えて存在する場合、制御装置76は、リニアヘッド64を駆動して容器載置台52及び容器102を図1に示す非傾斜位置に戻した後、振動装置70を駆動して容器載置台52から容器102を介して氷110に振動を与えて、容器102内の氷を均すものとしたが、非傾斜位置に戻した状態でオペレータが余分な氷を取り除くようにしてもよい。
【0042】
また、以上の説明では、容器載置台52及び容器102を図2に示す傾斜位置に設定した状態で氷110が限界レベル120を超えて存在するか否か判断したが、容器載置台52及び容器102を図1に示す非傾斜位置に設定した状態で氷110が限界レベル120を超えて存在するか否か判断してもよい。この場合、非傾斜位置にある容器載置台52と容器102に振動を加えることによって、氷110の偏りを無くすことが行われる。
【0043】
振動装置70が発生する振動を氷に効率良く伝えるために、例えば、振動装置70を駆動する前にリニアヘッド64を駆動して容器載置台52と容器102を適当な角度(例えば5度~10度)傾斜させることによって容器載置台52の側板56と容器102との間にある程度の接触圧を確保してもよい。この場合振動装置70からの振動が容器102及び基準点74の近くにある氷110に効率良く伝わり、氷110の移動が促進される。
【0044】
振動装置70の振動を更に効果的に容器102と基準点74の近くにある氷110に伝えるために、図2に示すように、基準点74の近くにある載置台側板部分又はその近傍に変形容易な柔軟性の弾性部材78を固定し、この弾性部材78を介して容器102に振動を伝えてもよい。この場合、弾性部材78によって振動が増幅されるため、小型の振動装置で大きな加振力を得ることができる。この形態では、振動装置70の振動数を弾性部材78の固有振動数の整数倍又はほぼ整数倍に調整することで、大きな加振力が得られる。
【0045】
振動装置70の設置位置は、容器載置台52の様々な箇所に振動装置を設置し、氷を最も効率よく移動できる位置を決定すればよい。振動装置70の数も同様で決めることができる。
【0046】
容器102内の氷を移動する移動手段は、上述した振動装置に限るものでない。例えば、上述の実施形態では、容器載置台52を傾斜させる手段としてリニアヘッドを採用しているが、ハウジング前壁22に振動装置を固定すると共に振動装置の上にリニアヘッド64を固定することによって、振動装置で発生する振動がリニアヘッド64を介して容器載置台52に伝わるようにしてもよい。この実施形態では、振動装置から出力された振動が載置台で増幅され、効果的に氷が揺すられて移動する。
【0047】
他の代替案として、例えば、ハウジング上段部分12に、空気の供給と排気を制御することによって上下方向に向けて伸縮自在な単段式又は多段式のテレスコープシリンダからなる強制移動装置を設け、基準位置の近傍に存在する氷を強制的に前方に移動させる機構を採用してもよい。この実施形態では、例えば、最小径のシリンダロッドの先端に柔軟性のある断面逆三角形の板を取り付け、シリンダロッドの先端を容器の内側空間に進入させるとともに断面逆三角形の板を基準位置近傍の容器内面に沿って下降させることによって、板の前方傾斜面に接触する氷を前方に強制移動させるのが好ましい。
【0048】
別の代替案として、容器載置台52を非傾斜位置から僅かに傾斜させた後、非傾斜位置に勢いよく戻すこと、又は、傾斜位置から非傾斜位置に向けて勢いよく戻すことによって、氷を強制移動させてもよい。この形態では、容器載置台52を傾斜させる角度は、飲料注出時の傾斜角度(図2参照)よりも小さくてもよい。また、容器載置台52を傾斜位置から非傾斜位置に戻す速度は、飲料注出時の傾斜位置から非傾斜位置に戻す速度よりも大きくすることが好ましい。これら容器載置台52の傾斜角度と容器載置台52を非傾斜位置に戻す速度は、数々の実験を通じて決めることが好ましい。
【0049】
載置台が傾斜位置にある状態でノズル44と該ノズル44の延長上にある容器内周面108の基準点74との間に物が存在と判断された場合、図示しない警報手段(例えば、音声ブザー、発光ランプ、若しくはそれらの両方)によって、警告を発してもよい。
【0050】
警告手段は、振動装置と組み合わせて採用する必要はなく、例えば、振動装置を設けることなく警告手段だけを設ける構成も採り得る。この実施形態によれば、警告を受けたオペレータは、容器載置台52に置かれた容器102に収容されている氷が多すぎる又は偏っていることを知り、余分な氷を取り除く又は偏りを無くし、これによって飲料の飛散を防止することができる。
【0051】
容器載置台52を傾斜させる傾斜手段は、上述した構成に限るものでなく、例えば特許6180916号公報に記載された構成を採用してもよい。
【0052】
以上、本発明は炭酸飲料を自動注出する装置に好適に利用可能であるが、本発明は炭酸飲料以外の飲料を注出する装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
100:炭酸飲料自動注出装置
44:注出ノズル
64:リニアヘッド
70:振動装置
72:距離測定センサ
74:基準位置
76:制御装置
102:容器
110:氷
図1
図2
図3