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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】スロットルグリップ装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 11/02 20060101AFI20230824BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
F02D11/02 R
F02D9/02 351J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019013513
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020122405
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】大城 幸男
(72)【発明者】
【氏名】三村 庸平
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-108430(JP,A)
【文献】特開2014-113881(JP,A)
【文献】特開2009-013834(JP,A)
【文献】特開2016-038290(JP,A)
【文献】特開2015-020659(JP,A)
【文献】特開2018-091202(JP,A)
【文献】特開2015-081564(JP,A)
【文献】特開2011-232842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/00- 11/10,
B62K 21/00- 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のスロットルグリップの回転操作と共に回転し得る連動部材と、
前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、
一端が前記連動部材に係止されるとともに、前記スロットルグリップの回転操作時、当該スロットルグリップ及び連動部材を初期位置に向かって回転方向に付勢するねじりコイルバネから成るリターンスプリングと、
を具備し、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、
前記連動部材を位置決めしつつ回転可能に保持するとともに、前記リターンスプリングの他端を係止しつつ保持した保持部材を具備して構成され、
前記保持部材は、
円環状に突出形成され、前記連動部材を回転可能に嵌合して位置決めする案内部と、
前記リターンスプリングの他端を係止する係止部と、
前記リターンスプリングで回転方向に付勢された前記連動部材と当接することにより前記リターンスプリングによる回転方向の付勢力を受けて前記連動部材を保持する保持部と、
を有し、前記保持部材により前記連動部材及びリターンスプリングが一体構成とされてユニットとされ、車両のハンドルパイプに固定されるケースを具備するとともに、前記保持部材により一体構成とされた前記ユニットが前記ケース内に取り付けられ、且つ、前記連動部材には磁石が取り付けられるとともに、前記回転角度検出手段は前記ケースにおける前記磁石の磁気変化を検出し得る位置に取り付けられ、前記磁気変化に基づいて前記連動部材の回転角度を検出することを特徴とするスロットルグリップ装置。
【請求項2】
前記保持部材は、板状部材から成ることを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項3】
前記リターンスプリングは、前記回転方向に加え、前記連動部材を軸方向に付勢することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスロットルグリップ装置。
【請求項4】
前記連動部材は、スロットルグリップと別体とされたことを特徴とする請求項1~の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置。
【請求項5】
前記連動部材は、スロットルグリップと一体とされたことを特徴とする請求項1~の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルグリップの回転操作に基づいて車両のエンジンが制御されるスロットルグリップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の二輪車においては、スロットルグリップの回転角度をポテンショメータ等のスロットル開度センサにて検出し、その検出値を電気信号として当該二輪車が搭載する電子制御装置等に送るよう構成されたスロットルグリップ装置が普及されるに至っている。そして、かかる検出信号に基づき電子制御装置が所定の演算を行い、その演算結果に基づいてエンジンの点火時期、吸気バルブ若しくはスロットルバルブの開閉が制御されるようになっている。
【0003】
従来のスロットルグリップ装置として、例えば特許文献1にて開示されたものが挙げられる。かかる従来のスロットルグリップ装置は、スロットルグリップと連動する連動部材に磁石を取り付けるとともに、その磁石の磁気変化を磁気センサにて検出することにより、連動部材及びスロットルグリップの回転角度を検出してエンジン制御が行われるようになっていた。
【0004】
また、従来のスロットルグリップ装置は、スロットルグリップ及び連動部材を初期位置に向かって回転方向に付勢するねじりコイルバネから成るリターンスプリングを具備しており、スロットルグリップの回転操作時、リターンスプリングの付勢力が連動部材に付与されるよう構成されていた。これにより、スロットルグリップを回転操作した後、運転者の把持力を緩めることにより、リターンスプリングの付勢力によってスロットルグリップが初期位置に戻るようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-81564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術においては、連動部材の位置決め、特に径方向の位置決めがケースの構造上或いは構成部品のレイアウト上、困難な場合があり、その場合、当該連動部材の回転が径方向に振れて不安定となってしまい、回転角度検出手段によるスロットルグリップの回転角度の検出精度が低下してしまう虞があった。また、構成部品のレイアウト上、一端が連動部材に係止されたリターンスプリングの他端を適切な位置で係止するのが難しい場合があり、連動部材に対する回転方向の付勢を良好に行うことができない虞があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、連動部材の回転を安定して行わせることができるとともに、リターンスプリングの係止を適切な位置で行わせることができるスロットルグリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、車両のスロットルグリップの回転操作と共に回転し得る連動部材と、前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、一端が前記連動部材に係止されるとともに、前記スロットルグリップの回転操作時、当該スロットルグリップ及び連動部材を初期位置に向かって回転方向に付勢するねじりコイルバネから成るリターンスプリングとを具備し、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、前記連動部材を位置決めしつつ回転可能に保持するとともに、前記リターンスプリングの他端を係止しつつ保持した保持部材を具備して構成され、前記保持部材は、円環状に突出形成され、前記連動部材を回転可能に嵌合して位置決めする案内部と、前記リターンスプリングの他端を係止する係止部と、前記リターンスプリングで回転方向に付勢された前記連動部材と当接することにより前記リターンスプリングによる回転方向の付勢力を受けて前記連動部材を保持する保持部とを有し、前記保持部材により前記連動部材及びリターンスプリングが一体構成とされてユニットとされ、車両のハンドルパイプに固定されるケースを具備するとともに、前記保持部材により一体構成とされた前記ユニットが前記ケース内に取り付けられ、且つ、前記連動部材には磁石が取り付けられるとともに、前記回転角度検出手段は前記ケースにおける前記磁石の磁気変化を検出し得る位置に取り付けられ、前記磁気変化に基づいて前記連動部材の回転角度を検出することを特徴とする。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記保持部材は、板状部材から成ることを特徴とする。
【0012】
請求項記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のスロットルグリップ装置において、前記リターンスプリングは、前記回転方向に加え、前記連動部材を軸方向に付勢することを特徴とする。
【0013】
請求項記載の発明は、請求項1~の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材は、スロットルグリップと別体とされたことを特徴とする。
【0014】
請求項記載の発明は、請求項1~の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材は、スロットルグリップと一体とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、連動部材を位置決めしつつ回転可能に保持するとともに、リターンスプリングの他端を係止しつつ保持した保持部材を具備したので、連動部材の回転を安定して行わせることができるとともに、リターンスプリングの係止を適切な位置で行わせることができる。
【0016】
また、保持部材は、円環状に突出形成された案内部を有するとともに、当該案内部に連動部材を回転可能に嵌合して位置決めするので、簡易な構成で連動部材の位置決め、特に径方向の位置決めを確実に行わせることができる。
【0017】
さらに、保持部材は、案内部と、リターンスプリングの他端を係止する係止部と、リターンスプリングで回転方向に付勢された連動部材と当接して連動部材を保持する保持部とを有するので、案内部による連動部材の径方向の位置決めと、係止部によるリターンスプリングの係止と、保持部による連動部材に対する保持部材の保持とを併せて行わせることができる。
【0018】
請求項の発明によれば、保持部材は、板状部材から成るので、スロットルグリップ装置の薄型化を図ることができる。
【0019】
請求項の発明によれば、リターンスプリングは、回転方向に加え、連動部材を軸方向に付勢するので、連動部材を軸方向に対して弾力を有しつつ押圧してガタを吸収することができ、連動部材の回転を安定して行わせることができるとともに、スロットルグリップの操作性を維持させることができる。
【0020】
請求項の発明によれば、連動部材は、スロットルグリップと別体とされたので、スロットルグリップに付与された過大な荷重が連動部材に伝達されてしまうのを抑制することができるとともに、連動部材又はスロットルグリップの交換を容易にすることができる。
【0021】
請求項の発明によれば、連動部材は、スロットルグリップと一体とされたので、連動部材がスロットルグリップと別体とされたものに比べ、部品点数を削減することができるとともに、スロットルグリップ装置の組み付け作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るスロットルグリップ装置の外観を示す正面図及び側面図
図2図1におけるII-II線断面図
図3図1におけるIII-III線断面図
図4】同スロットルグリップ装置のケースを示す斜視図
図5】同スロットルグリップ装置の連動部材を示す3面図
図6】同連動部材を示す斜視図
図7】同連動部材にリターンスプリングを組み付けた状態を示す3面図
図8】同連動部材にリターンスプリングを組み付けた状態を示す斜視図
図9】同スロットルグリップ装置のリターンスプリングを示す斜視図
図10】同スロットルグリップ装置の保持部材を示す3面図
図11】同保持部材によって一体構成とされた連動部材及びリターンスプリングを示す平面図及び側面図
図12】同保持部材によって一体構成とされた連動部材及びリターンスプリングを示す斜視図
図13】同保持部材によって一体構成とされた連動部材及びリターンスプリングを示す斜視図
図14】他の形態の保持部材であってスロットルグリップと一体化された保持部材が適用されたスロットルグリップ装置を示す断面図
図15】同他の形態の保持部材であってスロットルグリップと一体化された保持部材を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、図1に示すように、二輪車のハンドルパイプに取り付けられたスロットルグリップGの回転角度を検出し、その検出信号を二輪車が搭載するECU等電子制御装置に送信するためのもので、図1~10に示すように、連動部材1と、磁気センサ2(回転角度検出手段)と、リターンスプリング3と、保持部材4と、ケースCとを有して構成されている。
【0024】
連動部材1は、車両のスロットルグリップGの回転操作と共に回転し得るもので、図5、6に示すように、略円筒形状の樹脂成形品から成り、スロットルグリップGの嵌合部Ga(図2参照)を嵌合し得る被嵌合部1aと、リターンスプリング3を収容するための収容凹部1bと、リターンスプリング3の一端3aを係止するための係止部1cと、所定位置で突出したストッパ部1dとが形成されている。
【0025】
また、本実施形態に係る連動部材1は、その一方の端面に円弧状の磁石mが取り付けられている。かかる磁石mは、周方向に対して磁界が連続的に変化するよう構成されており、連動部材1の回転に伴って回動し得るようになっている。かかる磁石mは、円弧状に屈曲しつつ高さが連続的に変化するヘリカル面を有したものであってもよく、その場合、連動部材1に取り付けられた状態で、ヘリカル面と対峙させて磁気センサ2(回転角度検出手段)を配設させる必要がある。
【0026】
さらに、収容凹部1bは、連動部材1の一方の端面において円環状に形成された溝形状から成り、その一部に係止部1cが形成されている。そして、収容凹部1bにリターンスプリング3を収容すると、図7、8に示すように、コイル部3cが収容凹部1bに嵌入されるとともに、一端3aが係止部1cに嵌入して係止されるようになっている。これにより、リターンスプリング3が連動部材1に内在されることとなり、幅寸法を小さくすることができる。
【0027】
ケースCは、二輪車(車両)のハンドルパイプH(図3参照)の先端側(スロットルグリップGの基端側)に固定されたもので、図3、4に示すように、下ケースCa及び上ケースCbをボルトB(図3参照)にて組み付けて構成される。これら下ケースCa及び上ケースCbには、図4に示すように、それぞれ収容凹部Nが形成されており、下ケースCa及び上ケースCbが組み付けられることにより、内部に収容空間が形成されるようになっている。
【0028】
また、下ケースCaは、図2、3に示すように、連動部材1の一方の端面が接触して摺動可能な摺動面Nを有するとともに、磁石mの磁気変化を検出し得る位置に磁気センサ2が取り付けられるよう構成されている。なお、下ケースCaの壁面には、図4に示すように、ネジ穴nが形成されており、下ケースCa内の所定位置に保持部材4をネジ止め可能とされている。
【0029】
磁気センサ2(回転角度検出手段)は、図2、3に示すように、下ケースCaの所定位置に配設されたセンサから成り、磁石mから生じる磁気の変化を検出することにより、連動部材1の回転角度を検出し、スロットルグリップGの回転角度を検出可能とされている。具体的には、磁気センサ2は、磁石mの磁場変化(磁束密度の変化)に応じた出力電圧を得ることができるもので、例えばホール効果を利用した磁気センサであるホール素子(具体的には、磁石mの磁場(磁束密度)に比例した出力電圧を得ることができるリニアホールIC)等により構成されている。しかして、スロットルグリップGが回転操作されて連動部材1が回転するのに伴い、磁石mが回動すると、磁気が変化することとなる。
【0030】
これにより、連動部材1の回転角度によって磁気が変化するので、当該回転角度に応じた出力電圧を得ることができ、当該出力電圧に基づき連動部材1の回転角度(即ち、スロットルグリップGの回転角度)を検出することが可能とされている。このように検出されたスロットルグリップGの回転角度は、二輪車に搭載されたECU(エンジン・コントロール・ユニット)に対して電気信号として送信され、送信されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両のエンジンが制御され得るようになっている。なお、図中符号hは、磁気センサ2から延設された配線を示しており、かかる配線hを介して車両側に検出信号が送信されるよう構成されている。
【0031】
リターンスプリング3は、スロットルグリップGの回転操作時、当該スロットルグリップG及び連動部材1を初期位置に向かって回転方向αに付勢するコイルバネから成り、図9に示すように、連動部材1の係止部1cに係止される一端3a、保持部材4の係止部4aに係止される他端3b、及び一端3a及び他端3bの間に位置するコイル部3cとを有して構成されている。
【0032】
このように、リターンスプリング3は、その一端3aが連動部材1に取り付けられ、且つ、他端3bが保持部材4に取り付けられて組み付けられており、スロットルグリップGを回転させると、リターンスプリング3の付勢力に抗して連動部材2が回転するので、その付勢力がスロットルグリップGに伝わり、スロットルグリップG及び連動部材1を初期位置に戻す力が作用するのである。
【0033】
保持部材4は、連動部材1を位置決めしつつ回転可能に保持するとともに、リターンスプリング3の他端3bを係止しつつ保持するもので、図10に示すように、リターンスプリング3の他端3bを係止する係止部4aと、連動部材1を位置決めしつつ保持する案内部4bと、所定位置に形成された保持部4cとが形成された金属製の板状部材から成る。なお、保持部材4の所定位置には、ネジ穴nが形成されており、下ケースCa内の所定位置に保持部材4をネジ止め可能とされている。
【0034】
係止部4aは、保持部材4の一部を折り曲げ形成して得られた部位から成るもので、リターンスプリング3の他端3bを確実に係止し得るよう構成されている。案内部4bは、保持部材4の一部をバーリング加工等により円環状に突出形成された部位から成り、図2に示すように、連動部材1に一体形成された円環状壁部1e(図8参照)を挿通することにより連動部材1を回転可能に嵌合して位置決め(特に、径方向の位置決め)可能とされている。
【0035】
保持部4cは、リターンスプリング3で回転方向に付勢された連動部材1のストッパ部1dと当接して保持されるものである。すなわち、図7、8に示すように、収容凹部1bにリターンスプリング3を収容した状態において、リターンスプリング3の他端3bを保持部材4の係止部4aに係止した後、リターンスプリング3のコイル部3cが捩れて所定の付勢力が生じる方向に保持部材4及び連動部材1を相対的に一定角度回転させ、連動部材1のストッパ部1dに保持部材4の保持部4cを当接させる。この当接状態においては、保持部材4の保持部4cがリターンスプリング3の回転方向αの付勢力を受けるので、保持部材4がリターンスプリング3で回転方向αに付勢された連動部材1を保持することができる。
【0036】
これにより、保持部材4は、収容凹部1bに収容されたリターンスプリング3の他端3bを係止して連動部材1を回転方向αに対して所定の付勢力を持って保持するので、図11~13に示すように、連動部材1及びリターンスプリング3が一体構成とされる。このように、保持部材4により一体構成とされた連動部材1及びリターンスプリング3は、ユニットYとされ、図2に示すように、ケース1内に取り付けられる。
【0037】
さらに、本実施形態に係るリターンスプリング3は、回転方向αに加え、連動部材1を軸方向βに付勢するものとされている。具体的には、本実施形態に係るリターンスプリング3は、図9に示すように、隣合う巻き線の間に隙間を生じさせたコイル部3cとされており、保持部材4により一体構成とされた状態(図11~13で示すユニットYとされた状態)において、図2に示すように、ケースCに収容されると、コイル部3cの巻き線の間の隙間が小さくなる方向に圧縮されることとなり、連動部材1を軸方向βに付勢するようになっている。これにより、連動部材1は、リターンスプリング3による軸方向βの付勢力にて一方の端面がケースCの摺動面Nに押圧された状態で組み付けられることとなる。
【0038】
しかして、スロットルグリップGを回転操作すると、連動部材1がリターンスプリング3の回転方向αの付勢力に抗して回転し、当該連動部材1の一方の端面がケースCの摺動面Nに押圧された状態で摺動することとなる。一方、スロットルグリップGを初期位置から反対側に向かって回転操作しようとした場合、連動部材1のストッパ部1dが保持部材4の保持部4cと当接しているので、スロットルグリップGを初期位置から反対側に向かって回転操作するのを防止できるようになっている。
【0039】
本実施形態によれば、連動部材1を位置決めしつつ回転可能に保持するとともに、リターンスプリング3の他端3bを係止しつつ保持した保持部材4を具備したので、連動部材1の回転を安定して行わせることができるとともに、リターンスプリング3の係止を適切な位置で行わせることができる。また、本実施形態に係る保持部材4は、円環状に突出形成された案内部4bを有するとともに、当該案内部4bに連動部材1を回転可能に嵌合して位置決めするので、簡易な構成で連動部材1の位置決め、特に径方向の位置決めを確実に行わせることができる。
【0040】
さらに、本実施形態に係る保持部材4は、案内部と、リターンスプリング3の他端3bを係止する係止部4aと、リターンスプリング3で回転方向αに付勢された連動部材1と当接して保持される保持部4cとを有するので、案内部4bによる連動部材1の径方向の位置決めと、係止部4aによるリターンスプリング3の係止と、保持部4cによる連動部材1に対する保持部材4の保持とを併せて行わせることができる。特に、本実施形態に係る保持部材4は、板状部材から成るので、スロットルグリップ装置の薄型化を図ることができる。
【0041】
またさらに、本実施形態に係るリターンスプリング3は、回転方向αに加え、連動部材1を軸方向βに付勢するので、連動部材1を軸方向βに対して弾力を有しつつ押圧してガタを吸収することができ、連動部材1の回転を安定して行わせることができるとともに、スロットルグリップGの操作性を維持させることができる。また、本実施形態に係る連動部材1は、スロットルグリップGと別体とされたので、スロットルグリップGに付与された過大な荷重が連動部材に伝達されてしまうのを抑制することができるとともに、連動部材1又はスロットルグリップGの交換を容易にすることができる。
【0042】
加えて、本実施形態によれば、連動部材1は、リターンスプリング3を収容する収容凹部1bを有するとともに、当該収容凹部1bに収容されたリターンスプリング3の他端3bを係止した状態で連動部材1に取り付けられ、連動部材1及びリターンスプリング3を一体構成とする保持部材4を具備したので、連動部材1及びリターンスプリング3を一体構成として組み付け作業性の向上を図ることができるとともに、連動部材1及びリターンスプリング3の組み付けに必要とされる幅寸法を小さくすることができる。
【0043】
また、本実施形態に係る保持部材4は、リターンスプリング3の他端3bを係止する係止部4aと、リターンスプリング3で回転方向αに付勢された連動部材1と当接して保持される保持部4cとを有するので、連動部材1に対してリターンスプリング3による付勢力を確実に付与させることができるとともに、連動部材1及びリターンスプリング3の一体構成を確実に保持することができる。さらに、本実施形態に係る保持部材4は、収容凹部1bを塞いだ状態で連動部材1に取り付けられたので、収容凹部1bに異物等が入り込んでしまうのを回避でき、リターンスプリング3による連動部材1に対する付勢力の付与を確実に行わせることができる。
【0044】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図14、15に示すように、連動部材1がスロットルグリップG(具体的には、スロットルグリップGの芯材Gb)と一体とされたものであってもよい。かかる連動部材1は、上記実施形態と同様、保持部材4によって保持されてリターンスプリング3と一体構成とされる。この場合、連動部材1がスロットルグリップGと別体とされたものに比べ、部品点数を削減することができるとともに、スロットルグリップ装置の組み付け作業性を向上させることができる。
【0045】
さらに、スロットルグリップGの回転角度を検出する磁気センサ2に代えて、他の汎用的なセンサ(磁石の磁気を検出するものに限らないとともに、非接触式のセンサに限らず接触式のセンサ等も含む)としてもよい。またさらに、磁石mに代えて、連動部材1の周方向に着磁したものであってもよい。なお、適用される車両は、本実施形態の如く二輪車に限定されるものではなく、ハンドルバーHを有した他の車両(例えばATVやスノーモービル等)に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
連動部材を位置決めしつつ回転可能に保持するとともに、リターンスプリングの他端を係止しつつ保持した保持部材を具備したスロットルグリップ装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 連動部材
1a 被嵌合部
1b 収容凹部
1c 係止部
1d ストッパ部
1e 円環状壁部
2 磁気センサ(回転角度検出手段)
3 リターンスプリング
3a 一端
3b 他端
3c コイル部
4 保持部材
4a 係止部
4b 案内部
4c 保持部
C ケース
Ca 下ケース
Cb 上ケース
m 磁石
h 配線
N 摺動面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15