(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】最適経路決定装置及び最適経路決定プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20230824BHJP
G06Q 10/0834 20230101ALI20230824BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q10/0834
(21)【出願番号】P 2021181372
(22)【出願日】2021-11-05
【審査請求日】2022-09-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518064374
【氏名又は名称】株式会社オプティマインド
(74)【代理人】
【識別番号】100188662
【氏名又は名称】浅見 浩二
(74)【代理人】
【識別番号】100177895
【氏名又は名称】山田 一範
(72)【発明者】
【氏名】斉東 志一
(72)【発明者】
【氏名】深谷 皇紀
【審査官】加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-043505(JP,A)
【文献】沖 展彰 他,実制約付き車両配送問題に対する即時配送を考慮した動的配送計画システム,計測自動制御学会論文集 ,公益社団法人計測自動制御学会,2019年04月30日,第55巻,第4号,p.313~323
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスを連続的に処理する
複数の車両の移動の最適経路を再計算するための最適経路決定装置であって、
未完了の前記複数のサービスそれぞれの実行地点の情報を含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得部と、
前記車両のそれぞれにおいて現在採用している採用経路情報を取得する採用経路情報取得部と、
前記車両それぞれの位置情報を取得する車両位置情報取得部と、
前記車両のそれぞれについて、予測される次の目的地への到達時間である目的地到達時間を推定する目的地到達時間推定部と、
前記車両のそれぞれの次の目的地での予測滞在時間を取得する予測滞在時間取得部と、
前記車両のそれぞれについて、前記目的地到達時間と前記予測滞在時間とに基づいて再計算始点時刻を算出する再計算始点時刻算出部と、
サービスの追加又はキャンセルを含む前記複数のサービスについて生じた状況の変化に関する情報及び/又は車両について生じた状況の変化に関する情報を取得し、前記車両のそれぞれの次の目的地の所在地及びその目的地における前記再計算始点時刻を起点とし、かつ、前記採用経路情報を初期解とした上で、
変化した状況下における複数の前記車両
のそれぞれに対して割り当てる前記複数のサービスの組み合わせ及び各車両における前記複数のサービスの実行順序を決定し、その実行順序を実行する際の最適経路を再計算する最適経路再計算部と
を備える最適経路決定装置。
【請求項2】
前記再計算始点時刻は、最適経路再計算部において再計算を開始する時刻よりも所定時間以上後の時刻に設定される
請求項1記載の最適経路決定装置。
【請求項3】
前記最適経路再計算部は、前記採用経路情報を初期解として局所探索法、貪欲法又はこれらの組み合わせによって改善された最適経路を算出する
請求項1又は請求項2記載の最適経路決定装置。
【請求項4】
それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスを連続的に処理する
複数の車両の移動の最適経路を再計算する処理をコンピュータに実現させるための最適経路決定プログラムであって、
前記コンピュータに、
未完了の前記複数のサービスそれぞれの実行地点の情報を含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得機能と、
前記車両のそれぞれにおいて現在採用している採用経路情報を取得する採用経路情報取得機能と、
前記車両それぞれの位置情報を取得する車両位置情報取得機能と、
前記車両のそれぞれについて、予測される次の目的地への到達時間である目的地到達時間を推定する目的地到達時間推定機能と、
前記車両のそれぞれの次の目的地での予測滞在時間を取得する予測滞在時間取得機能と、
前記車両のそれぞれについて、前記目的地到達時間と前記予測滞在時間とに基づいて再計算始点時刻を算出する再計算始点時刻算出機能と、
サービスの追加又はキャンセルを含む前記複数のサービスについて生じた状況の変化に関する情報及び/又は車両について生じた状況の変化に関する情報を取得し、前記車両のそれぞれの次の目的地の所在地及びその目的地における前記再計算始点時刻を起点とし、かつ、前記採用経路情報を初期解とした上で、
変化した状況下における複数の前記車両
のそれぞれに対して割り当てる前記複数のサービスの組み合わせ及び各車両における前記複数のサービスの実行順序を決定し、その実行順序を実行する際の最適経路を再計算する最適経路再計算機能と
を実現させる最適経路決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一旦決定して採用した経路情報に基づく運用において状況に変化が生じたときに適切に最適経路の再計算を行うための最適経路決定装置及び最適経路決定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、「組合せ最適化」という分野において、主に「現実社会の問題を組合せ最適化問題にモデル化する」「ある組合せ最適化問題に対する解法を考案する」ということが研究されている。そして、組合せ最適化問題の中に「配送計画問題(VRP:vehicle routing problem)」という問題がある。これは複数の車両と複数の訪問先が入力されたとき、すべての訪問先がいずれかの車両によりちょうど一度ずつ訪問されるような車両のルート(訪問先の順序)の中でルートの長さの総和が最小となるものを求める問題である。何十年も前からVRPに対して現実で現れる制約条件を取り込んだ問題がいくつも提案され、それらに対する近似解法も同時に研究されてきた。
またVRPを一般化した問題として「PDP:pickup and delivery problem」という問題がある。これは荷物を積む訪問先とその荷物を降ろす訪問先の組が複数入力されたとき、各組に対して各訪問先を同じ車両が訪れ、さらに積んだあとに降ろすという順序を守った上ですべての訪問先がいずれかの車両によりちょうど一度ずつ訪問されるような車両のルートの中でルートの長さの総和が最小となるものを求める問題である。PDPもVRP同様に現実で現れる制約条件を取り込んだ問題がいくつも提案され、それらに対する近似解法も同時に研究されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、配送先を各車両に振り分けるグルーピング処理とグルーピングで決められた配送先グループを車両がどの順序で巡るかというルートの最適化処理とで決定される配送計画について、複数のグルーピング戦略を用いて複数の配送計画を生成し、その中で最適な配送計画を選択するようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、VRPおよびPDPを解くことで配送計画の最適経路を決定した後、決定した経路情報に基づいてサービスを実行している途中で計画当初と状況が変化してしまう場合がある。状況が変化してしまった場合、変化した状況に応じて柔軟に再計算を行えることが好ましいが、例えば、複数の車両で分担して複数の訪問先を訪問する場合の訪問先の組み合わせ、実行順序及び最適経路をVRPおよびPDPによって解く処理は、かなり複雑な演算を要することから演算時間も短時間では済まないことが想定される。他方で、サービスを実行している作業者は状況が変化したとしてもサービスを継続して進めているため、最適経路を再計算している間にサービスが継続されてしまい、再計算によって最適経路が得られたときには更に状況が変化している可能性があるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、一旦決定して採用した経路情報に基づく運用において状況に変化が生じたときに適切に最適経路の再計算を実行可能な最適経路決定装置及び最適経路決定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る最適経路決定装置は、それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスを連続的に処理する少なくとも1以上の車両の移動の最適経路を再計算するための最適経路決定装置であって、未完了の前記複数のサービスそれぞれの実行地点の情報を含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得部と、前記車両のそれぞれにおいて現在採用している採用経路情報を取得する採用経路情報取得部と、前記車両それぞれの位置情報を取得する車両位置情報取得部と、前記車両のそれぞれについて、予測される次の目的地への到達時間である目的地到達時間を推定する目的地到達時間推定部と、前記車両のそれぞれの次の目的地での予測滞在時間を取得する予測滞在時間取得部と、前記車両のそれぞれについて、前記目的地到達時間と前記予測滞在時間とに基づいて再計算始点時刻を算出する再計算始点時刻算出部と、前記車両のそれぞれの次の目的地の所在地及びその目的地における前記再計算始点時刻を起点とし、かつ、前記採用経路情報を初期解とした上で、少なくとも1以上の前記車両が実行すべき前記複数のサービスについての実行順序を決定し、その実行順序を実行する際の最適経路を再計算する最適経路再計算部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る最適経路決定装置は、さらに、前記再計算始点時刻は、最適経路再計算部において再計算を開始する時刻よりも所定時間以上後の時刻に設定されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る最適経路決定装置は、さらに、前記最適経路再計算部は、前記採用経路情報を初期解として局所探索法、貪欲法又はこれらの組み合わせによって改善された最適経路を算出することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る最適経路決定プログラムは、それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスを連続的に処理する少なくとも1以上の車両の移動の最適経路を再計算する処理をコンピュータに実現させるための最適経路決定プログラムであって、前記コンピュータに、未完了の前記複数のサービスそれぞれの実行地点の情報を含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得機能と、前記車両のそれぞれにおいて現在採用している採用経路情報を取得する採用経路情報取得機能と、前記車両それぞれの位置情報を取得する車両位置情報取得機能と、前記車両のそれぞれについて、予測される次の目的地への到達時間である目的地到達時間を推定する目的地到達時間推定機能と、前記車両のそれぞれの次の目的地での予測滞在時間を取得する予測滞在時間取得機能と、前記車両のそれぞれについて、前記目的地到達時間と前記予測滞在時間とに基づいて再計算始点時刻を算出する再計算始点時刻算出機能と、前記車両のそれぞれの次の目的地の所在地及びその目的地における前記再計算始点時刻を起点とし、かつ、前記採用経路情報を初期解とした上で、少なくとも1以上の前記車両が実行すべき前記複数のサービスについての実行順序を決定し、その実行順序を実行する際の最適経路を再計算する最適経路再計算機能とを実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、それぞれの車両が次の目的地に到達して目的地での滞在が終了すると予測される時刻を再計算始点時刻とし、その目的地の位置かつ再計算始点時刻を起点として再計算を実行するようにしているので、高確率でその場所に滞在していると見込まれる目的地での作業終了予測時刻を再計算の起点に設定可能であり、再計算後の最適経路を車両に適用する際に、演算上の内容と実際の車両の状況との間に乖離が生じる可能性が少なくスムーズに再計算後の最適経路を適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る最適経路決定装置を実現するためのシステム全体の構成を表したブロック図である。
【
図2】本発明に係る最適経路決定装置(サーバ装置)10の構成の一例を表した説明図である。
【
図3】本発明に係る最適経路決定装置10における最適経路再計算処理の流れを表したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照しながら、第1の実施の形態に係る最適経路決定装置の例について説明する。
図1は、本発明に係る最適経路決定装置を実現するためのシステム全体の構成を表したブロック図である。なお、最適経路決定装置10は、専用マシンとして設計した装置であってもよいが、一般的なコンピュータやサーバ装置によって実現可能なものであるものとする。この場合に、最適経路決定装置10は、一般的なコンピュータやサーバ装置が通常備えているであろうCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)、GPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)、メモリ、ハードディスクドライブ等のストレージを具備しているものとする(図示省略)。また、これらの一般的なコンピュータやサーバ装置を本例の最適経路決定装置10として機能させるためにプログラムよって各種処理が実行されることは言うまでもない。
【0014】
図1に示すように、最適経路決定装置を実現するためのシステム全体の構成は、サーバ装置10と、サービス実行者端末201~20n(以下、これら総称してサービス実行者端末20と表現する場合を含む)と、本部端末30とが、通信ネットワーク40を介して相互に接続可能に構成されている。このうち、サーバ装置10が本例の最適経路決定装置10として機能する場合を例として説明を行う。なお、サービス実行者端末201~20nのそれぞれが最適経路決定装置として機能するものとしてもよい。
【0015】
図2は、本発明に係る最適経路決定装置(サーバ装置)10の構成の一例を表した説明図である。この
図2に示すように、最適経路決定装置10は、サービス特定情報取得部11と、採用経路情報取得部12と、車両位置情報取得部13と、目的地到達時間推定部14と、予測滞在時間取得部15と、再計算始点時刻算出部16と、最適経路再計算部17と、記憶部18とを少なくとも備えている。
【0016】
サービス特定情報取得部11は、未完了の複数のサービスそれぞれの実行地点の情報を含むサービス特定情報を取得する機能を有する。ここで、本例においてサービスとは、車両等の移動体を停車(停止)して作業を行う必要のある業務の切り分け単位のことをいう。また、サービス特定情報とは、実行すべきサービスの内容を特定するために必要な情報のことをいう。また、実行地点とは、サービスを実行する位置のことをいう。ジョブを構成する少なくとも1以上のサービスにはそれぞれ実行地点が存在し、その実行地点の情報は、サービス特定情報の1つであるといえる。また、サービス特定情報としては、依頼主の個人情報、サービスの具体的内容情報など様々な情報が考えられる。このサービス特定情報取得部11によって取得するサービス特定情報は、未完了のサービスについて取得することはもちろんのこと、全体の進捗の把握等のために完了したサービスについてもサービス特定情報を取得することを妨げない。
【0017】
また、本例の最適経路決定装置10に基づいて管理するサービスについては、関連する少なくとも1以上のサービスで構成されたジョブの状態を管理するための状態管理テーブルをジョブの状態の変化に応じて更新する手法によって管理するようにしてもよい。ここで、ジョブとは、関連する少なくとも1以上のサービスで構成された業務のことをいう。一例として、荷物をある地点で集荷して他の地点まで配送する業務をジョブとすると、当該ジョブは、集荷サービス(ピックアップサービス)と配送サービス(デリバリーサービス)とで構成されていることになる。状態管理テーブルは、ジョブの状態を管理するためのテーブルである。配送業務をジョブと考える場合を例とすると、ジョブの状態として、(A)車両に載せる前(本計画で載せる予定あり)、(B)車両に載せる前(本計画で載せる予定なし)、(C)車両から降ろす前(本計画で降ろす予定あり)、(D)車両から降ろす前(本計画で降ろす予定なし)、(E)車両から降ろした後、の5つの現実における対象(荷物)の状態と、(F)割当先車両あり、(G)割当先車両なし、の2つの計画における状態とを有し、これらの組み合わせでジョブの状態を管理するようにしてもよい。ここで、本計画とは、車両が出発する前に事前に計画された当初計画のことをいう。これに対して、計画は途中で変更される場合があり変更後の計画を現在の計画と表現するものとする。状態管理テーブルは、ジョブの状態を管理可能であればどのような手段で更新されるものであってもよいが、例えば、ジョブの状態に変化が生じる度にサービス実行者自身が所持するサービス実行者端末20に対して入力したジョブの状態の情報を通信ネットワーク40を介して最適経路決定装置(サーバ装置)10に送信するようにすることで、状態管理テーブルを更新するという構成が考えられる。このような構成とすることで、未完了のサービスの特定が容易に行える。
【0018】
採用経路情報取得部12は、少なくとも1以上の車両のそれぞれにおいて現在採用している採用経路情報を取得する機能を有する。ここで、採用経路情報とは、各車両において採用中の最適経路情報のことをいう。各車両は採用経路情報が示す実行順序及び経路情報に基づいて各サービスを実行する。なお、採用経路情報は、本例の最適経路決定装置10において初期解としての最適経路を決定する処理を実行可能として得られた最適経路であってもよいし、他のデバイスにおいて決定された最適経路であってもよい。また、採用経路情報は、本例の最適経路決定装置10において最適経路の再計算を行う際のアルゴリズムと同一のアルゴリズムによって決定されたものであってもよいし、異なるアルゴリズムによって決定されたものであってもよい。採用経路情報は、所定の時間枠において各車両へのサービスの割り振り内容、各車両におけるサービス実行順序及び最適経路の情報を含むものであればどのようなものであってもよい。
【0019】
車両位置情報取得部13は、サービス実行者が利用する車両の現在位置を示す車両位置情報を取得する機能を有する。車両位置情報を取得することができればどのような手段であっても構わないが、例えば、車両のGPS情報を取得するようにしてもよい。
【0020】
目的地到達時間推定部14は、車両のそれぞれについて、予測される次の目的地への到達時間である目的地到達時間を推定する機能を有する。各車両についての次の目的地への到達時間が推定できればどのような手段であってもよいが、例えば、カーナビゲーションシステムにおいて採用している推定アルゴリズムを採用することができる。道路の平均移動速度、VICS(Vehicle Information and Communication System:登録商標)などの道路交通情報を用いて、目的地到達時間を推定するようにする。なお、目的地に何分後に到着するという情報として提示する場合には「目的地到達時間」と表現できるし、目的地に何時何分に到着するという情報として提示する場合には「目的地到着時刻」と表現でき、これらは表現形式の相違のみで実質的には同じ内容を表す情報である。
【0021】
予測滞在時間取得部15は、車両のそれぞれの次の目的地での予測滞在時間を取得する機能を有する。ここで、予測滞在時間とは、車両が目的地に到達してから出発するまでの滞在時間を予測したものをいう。予測滞在時間を予測したものであればどのような手段に基づくものであってもよいが、例えば、配送物の大きさなど作業内容毎に固定の予測値に設定する手段、サービス実行者端末20に対する作業開始及び作業終了の入力履歴に基づいて目的地ごとの過去の滞在時間の履歴情報によって予測する手段、戸建てであれば滞在時間を短めに予測してタワーマンションの高層階であれば滞在時間を長めに予測するなど目的地の建物の条件から予測する手段など、様々な滞在時間の予測が想定される。
【0022】
再計算始点時刻算出部16は、車両のそれぞれについて、目的地到達時間と予測滞在時間とに基づいて再計算始点時刻を算出する機能を有する。ここで、再計算始点時刻とは、再計算を実行する際に車両の起点として設定される時刻のことであり、車両位置の予測誤差が十分に小さい時刻のことをいう。具体的には、現在時刻に対して目的地到達時間と予測滞在時間とを加算したものが、その車両が次の目的地に向けて出発可能な時刻といえるので、再計算始点時刻は、現在時刻と目的地到達時間と予測滞在時間とに基づいて算出されることが好ましい。再計算始点時刻は、必ずしも現在時刻に対して目的地到達時間と予測滞在時間を加算したものと一致した時刻である必要はなく、他の要素を考慮した調整を行った上で決定するようにしてもよい。例えば、計画変更に伴うドライバーの負担を考慮して少し余裕をもたせて再計算始点時刻を設定するようにしてもよいし、逆に予測滞在時間よりも早めに作業が終了することを見越して少し再計算始点時刻を早めるように設定するようにしてもよい。
【0023】
また、再計算始点時刻は、最適経路再計算部17において再計算を開始する時刻よりも所定時間以上後の時刻に設定されていることが好ましい。仮に、最適経路再計算部17における再計算に平均して10分程度を要する場合には、再計算始点時刻は再計算開始時刻よりも10分以上後の時刻であることが好ましいといえる。すなわち、再計算始点時刻と現在時刻に再計算所要時間を加算したものを比較して、再計算始点時刻の方が早く到達してしまう場合には、再計算始点時刻を再設定するようにしてもよい。このとき、現在時刻に再計算所要時間を加算したものと再計算始点時刻との差が所定範囲の差分(例えば、3分以内)である場合には、再計算始点時刻の方が早いとしても再計算始点時刻を採用するようにしてもよい。その場合、該当する車両に対して、次の目的地での作業終了後は変更後の経路情報を受信するまで待機するように指示を出しておくことが考えられる。なお、再計算所要時間は環境に応じて異なるものであり適宜設定されるものであるが、例えば、1秒~30分といった値に設定されることが考えられる。
【0024】
このように算出する再計算始点時刻は、車両毎の目的地到達時間が異なることから車両毎に異なる再計算始点時刻となるといる。すなわち、最終的に再計算した最適経路を適用開始する時刻も車両毎に異なる時刻になることになる。
【0025】
最適経路再計算部17は、車両のそれぞれの次の目的地の所在地及びその目的地における再計算始点時刻を起点とし、かつ、採用経路情報を初期解とした上で、少なくとも1以上の車両が実行すべき複数のサービスについての実行順序を決定し、その実行順序を実行する際の最適経路を再計算する機能を有する。この最適経路再計算部17では、先ず、各車両が現在実行中のサービスの目的地の位置情報、各車両がまだ完了していない未完了のサービスのサービス特定情報、再計算始点時刻の情報、採用経路情報を取得する。その際、サービスが急遽追加になった場合、特定の車両の進捗が悪く割り当てられたサービスを完了することが困難と予想される場合など、状況が変化した場合において、変化した状況下での再計算を実行する。再計算は、採用経路情報を初期解とした上で、局所探索法や貪欲法およびそれらを組み合わせたメタヒューリスティックなど、配送計画問題を解くための既知のアルゴリズムに基づいて実行される。採用経路情報を初期解として局所探索法などの逐次的に解の改善を行うアルゴリズムを用いて計算を行うことで、ゼロから演算する場合に比較して演算の高速化が期待できる。再計算で得られる最適経路情報は、各車両に割り当てるサービスの組み合わせ、実行順序及び最適経路の情報を含んだものとなっており、これを採用した各車両は、再計算始点時刻として設定された次の目的地を出発地点として再計算後の最適経路に基づいてサービスを実行する。
【0026】
また、最適経路再計算部17においては、候補となる各経路での移動に要する合計コスト値を算出するために、道路幅、信号の長さ、車線数など道路の各要素についてのコスト情報を用いて、複数の経路それぞれの合計コスト値を最適経路の決定に利用するようにしてもよい。また、全ての経路について移動距離の算出と、コスト値の算出を行う。移動距離が短くかつコスト値が小さい経路を最適経路として決定する。移動距離の評価とコスト値の評価をどのように採用して最適経路の決定を行うかは適宜設定可能である。再計算された最適経路は、通信ネットワーク40を介してサービス実行者端末20及び/又は本部端末30に対して送信される。
【0027】
記憶部18は、最適経路決定装置10において行われる様々な処理で必要なデータ及び処理の結果として得られたデータを記憶させる機能を有する。
【0028】
次に、本発明に係る最適経路決定装置10における最適経路再計算処理の流れについて説明を行う。
図3は、本発明に係る最適経路決定装置10における最適経路再計算処理の流れを表したフローチャート図である。この
図3に示すように、最適経路決定装置10における最適経路再計算処理は、最適経路決定装置10においてサービス特定情報を取得することによって開始される(ステップS101)。次に、最適経路決定装置10は、採用経路情報を取得する(ステップS102)。次に、最適経路決定装置10は、車両位置情報を取得する(ステップS103)。次に、最適経路決定装置10は、各車両について目的地到達時間を推定する(ステップS104)。次に、最適経路決定装置10は、各車両の目的地での予測滞在時間を取得する(ステップS105)。次に、最適経路決定装置10は、各車両について再計算始点じ時間を推定する(ステップS106)。そして、最適経路決定装置10は、車両のそれぞれの目的地の所在地及び再計算始点時刻を起点とし、採用経路情報を初期解とした上で、最適経路を再計算して出力して(ステップS107)、最適経路再計算処理を終了する。
【0029】
以上のように、本例による最適経路決定装置によれば、未完了の複数のサービスそれぞれの実行地点の情報を含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得部と、車両のそれぞれにおいて現在採用している採用経路情報を取得する採用経路情報取得部と、車両それぞれの位置情報を取得する車両位置情報取得部と、車両のそれぞれについて、予測される次の目的地への到達時間である目的地到達時間を推定する目的地到達時間推定部と、車両のそれぞれの次の目的地での予測滞在時間を取得する予測滞在時間取得部と、車両のそれぞれについて、目的地到達時間と予測滞在時間とに基づいて再計算始点時刻を算出する再計算始点時刻算出部と、車両のそれぞれの次の目的地の所在地及びその目的地における再計算始点時刻を起点とし、かつ、採用経路情報を初期解とした上で、少なくとも1以上の車両が実行すべき複数のサービスについての実行順序を決定し、その実行順序を実行する際の最適経路を再計算する最適経路再計算部とを備えるようにしたので、それぞれの車両が次の目的地に到達して目的地での滞在が終了すると予測される時刻を再計算始点時刻とし、その目的地の位置かつ再計算始点時刻を起点として再計算を実行するようにしているので、高確率でその場所に滞在していると見込まれる目的地での作業終了予測時刻を再計算の起点に設定可能であり、再計算後の最適経路を車両に適用する際に、演算上の内容と実際の車両の状況との間に乖離が生じる可能性が少なくスムーズに再計算後の最適経路を適用することが可能となる。
【0030】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。宅配サービスだけではなく、店舗への卸業、自動販売機のメンテナンス、訪問医療/訪問介護、乗合いタクシーなど、複数の拠点を1台または複数台の車両で回るという形態の業種であれば同様に適用可能である。また、人間が運転する車両でなくとも、自動運転ロボットにも応用可能である。例えば、工場内でのAGV(Automated guided vehicle:無人搬送車)のルート最適化、家庭での自動掃除ロボットなど、幅広く応用が可能である。
【0031】
なお、本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または実施形態を取ることができる。
【符号の説明】
【0032】
10 サーバ装置(最適経路決定装置)
11 サービス特定情報取得部
12 採用経路情報取得部
13 車両位置情報取得部
14 目的地到達時間推定部
15 予測滞在時間取得部
16 再計算始点時刻算出部
17 最適経路再計算部
18 記憶部
20、201~20n サービス実行者端末
30 本部端末
40 通信ネットワーク