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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】使い捨て洗浄補助具
(51)【国際特許分類】
   A45D 19/00 20060101AFI20230824BHJP
   A45D 19/06 20060101ALI20230824BHJP
   A61H 33/00 20060101ALI20230824BHJP
   A61G 7/05 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
A45D19/00 A
A45D19/06
A61H33/00 310H
A61G7/05
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020513957
(86)(22)【出願日】2018-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2018042637
(87)【国際公開番号】W WO2019202763
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2018080378
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】319007608
【氏名又は名称】株式会社ワノケア
(74)【代理人】
【識別番号】100185258
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 宏理
(74)【代理人】
【識別番号】100101085
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 健至
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 知理
(72)【発明者】
【氏名】永井 幸絵
(72)【発明者】
【氏名】川畑 明絵
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第00759084(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第03005899(EP,A1)
【文献】特開2006-000580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 19/00
A45D 19/06
A61H 33/00
A61G 7/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面部、該底面部の外周に設けられる排水口となる部位からさらに延出するよう配された導水部、該導水部の延出先の片側一方の面またはその両面に配される袋状受水部、該底面部の排水口となる部位以外の外周部に配される筒状気体充填部および該筒状気体充填部への気体充填口を有する非液体透過性の柔軟性を有するシート状素材からなる両面使用可能な使い捨て洗浄補助具であって、
前記筒状気体充填部の外周側に窪み又はスリットが設けられており、
筒状気体充填部への気体充填がされていない状態では折りたたみ収納自在であり、
気体充填口から筒状気体充填部へ気体が充填された状態では、膨らんだ筒状気体充填部が、臥床者の体の一部を載置支持するための筒状の台、該底面部からの水の溢水を防止するための筒状の壁、並びに、袋状受水部に差し込まれ受水した袋状受水部を自立可能にするための筒状の柱となり、
気体充填口から筒状気体充填部へ気体が充填された状態の筒状気体充填部が、U字またはコの字状となり、
底面部は膨らんだ筒状気体充填部に臥床者が載置された面から浮いた状態で支持されて略平面となり、臥床者の体の一部が載る部位では略平面となった底面部が押し下げられ形成された凹みが貯水槽となり、略平面となったシートの一部が押し下げられた状態となる毎に凹みが形成されて該貯水槽から導水部および袋状受水部へと水を誘導する排水路となる、使い捨て洗浄補助具。
【請求項2】
前記気体充填口に筒状気体充填部からの気体逆流防止機構が設けられている、請求項1に記載の使い捨て洗浄補助具。
【請求項3】
前記導水部を臥床者を載置するベッド又は布団の側面から下垂させ、延出部に設けられた袋状受水部の開口が上方を向くようにして臥床者の体を洗浄する際の排水を受水可能にして用いるものである、請求項1または請求項2に記載の使い捨て洗浄補助具。
【請求項4】
前記筒状気体充填部に、筒状気体充填部の直径長さより短い深さを有する窪み又はスリットが設けられている、請求項1~請求項の何れか1項に記載の使い捨て洗浄補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護者などが、臥床者の洗髪や臥床者の腰部及び臀部などの洗浄が困難な部位の洗浄を臥床状態のまま実施する際に、準備・後片付けの手間なく湯水をコントロールできる使い捨て洗浄補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や介護施設などでは、ベッドや布団で臥床状態のまま自分で体を思うように動かせない患者や要介護者などの臥床者に対して、定期的に洗髪が行われている。これは、臥床者の洗髪は、頭髪が清潔に保たれるという衛生面のみならず、臥床者の心身をリラックスさせる効果も期待でき、重要な患者ケアの1つと考えられているからである。
【0003】
そこで、上記要請に応えるべく、従来より、臥床者の洗髪専用道具としては、ケリーパッドと呼ばれるゴム製の洗髪補助具、あるいはこれと同様の構成の自作の洗髪補助具が繁用されている。この洗髪補助具は、臥床者の頭部頸部が載せられるゴム製のパッドと、該パッドに連接された流路とを備えている。
【0004】
上記ゴム製のパッドを用いて臥床者の洗髪を行う際には、まず、臥床者の頭部ならびに頸部の下側とベッドの上面部との間に上記ゴム製パッドを差し込むとともに、該パッドに連接された流路の一端を臥床者が横たわるベッドの下に置いたバケツの開口部の上面に位置するようにしてに配する。そして、その状態で、臥床者の頭部上方から頭髪に湯水を掛け流しながら洗髪を実施する。髪に掛け流した湯水は、ゴム製パッド上を速やかに流れて連接された流路へと伝い落ち、ベッド下に置いたバケツ内に溜まる。そのため、ベッドや布団を濡らさずに臥床者の洗髪を行うことができるとされている。
【0005】
しかしながら、上述のパッドは、ゴム製であるために摩擦係数が大きく、パッドを臥床者とベッドの間に差し込む際にベッド上のシーツがずれてしまうため、1人作業には適していない。また、洗髪作業においては頭髪に十分に湯水を掛け流すことでシャンプーやリンスを洗い流さなければならないところ、上述のパッドは、ゴム製であるために変形せず平面が保持されることから、水は溜まることなくその表面を速やかに流れてしまう。そのため、一度に掛け流す湯水の量が少しでも多くなると、上述のパッドに連接された平面状の流路の脇から排水が漏れ出てベッドや臥床者が濡れてしまう。また、洗浄に使用する湯水の量が変化すると流路の端がゴムの弾力によって上下に跳ねるように動くために、端部の位置がベッド下に配設したバケツ開口部の上面から外れて排水が床にこぼれてしまう。そのため、洗浄時の取り扱いを十分慎重に行わなければならず、標準的な作業手順の策定も難しく、改善が求められていた。
【0006】
さらに、洗髪作業においては頭髪に十分に湯水を掛け流すことでシャンプーやリンスを洗い流さなければならないところ、上記パッドはゴム製で変形せず平面が保持され水が溜まらずに排水されてしまうため、臥床者の下面側になる後頭部を含む頭部全体の十分な洗髪を行うためには5Lを超える大量の水が必要となっており、さらには作業途中でのバケツ交換と排水廃棄が必要など、作業工程も煩雑になっている。くわえて、ゴム表面にはシャンプーやリンス、臥床者の洗髪時の汚れ成分や雑菌が付着しやすいことから衛生管理に手間がかかり、特に再利用時には、十分な洗浄処理と除菌処理および乾燥処理が必須であり、それら各処理のために、洗髪用水とは別に相当量の清浄水が必要となってしまう。このため、水の使用が困難な場所や災害時には、利用が妨げられている状況にあった。
【0007】
このように、準備や後片付けが面倒であり、また使用中の水漏れの心配が大きいため、未熟な作業者や1人作業者に対しては予め十分に教育訓練を施す必要があり、初心者を含めた誰もが容易に扱える洗髪補助具とはいえないものであり、対策が求められていた。
【0008】
また、上述のパッドは、ゴム製で小さくまとめて収納することが難しく、運搬や保管にスペースを要する。さらに、ゴム製品は、製造に手間が掛かりコスト高であり、使い捨てには向いていない。
【0009】
そこで、洗髪に使用した湯水を吸収させる高分子吸収材などの吸収剤をパッドに配設させ、排水が漏れ出てベッドや臥床者が濡れることを防止する洗髪補助具が提案されている(特許文献1および特許文献2を参照。)。
【0010】
しかしながら、上記各特許文献に記載された洗髪補助具は、湯水を吸収させるために高分子吸収材などといった吸収剤を用いることから製造コストが高くつくものとなっている。また、排水を頭部周辺で高分子吸収材に吸収させるものであることから、洗髪後の汚れた成分が頭部周辺の高分子吸収材表面に残存し続け、被施術者の頭部の清浄性が高まらないという問題がある。さらに、高分子吸収材はオムツにも使用されており、被施術者である臥床者の心理的抵抗もあることが問題視されている。加えて、近年の使用済みオムツの廃棄総量の急激な増大により、高分子吸収材の使用済みゴミについては、その処理方法が社会問題となっており、排水を吸収した使用済みパッドは体積が増すとともに、焼却炉効率を下げることから不燃ゴミとしての廃棄が必要となる自治体があるなど、廃棄に手間とコストを要するものとなっている。また、臥床者の洗髪に必要となる水の量は依然として多く、一方で排水の転用もできず、その点においても改善が求められるものであった。
【0011】
また、臥床者の臥床状態が長く続くと、体重で圧迫されている場所の血流が悪化し滞ることで皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができるなどして褥瘡が生じる。このような長期臥床者に生じる褥瘡は一般に、皮膚の圧迫を防ぐ体位交換のみでは防止することが難しい。そこで、褥瘡の生じ易い腰部や臀部については、長期のオムツ着用による蒸れを避けるとともに、なるべく清浄な状態を保持する必要がある。
【0012】
しかしながら、臥床者の腰部や臀部は臥床状態のままでの洗浄が困難である。特に臥床者が大人の場合にはその体重が重いことから、介護・看護を行う施術者が臥床者を引き起こして臥床者の腰部や臀部を洗浄しようにも、臥床者及び施術者共に体勢に無理が生じて十分な洗浄が行えずに汚染状態が残り、その汚れを拭き上げる際に皮膚が損傷することがある。このように、長期臥床者には、洗浄不足に起因する褥瘡が生じ易くなっており、長期臥床者のQOLをさらに悪化させる一因となっている。このように、長期臥床者に生じる褥瘡防ぐ効果的な洗浄手段がない。
【0013】
このように、従来から使用され、また提案されている洗浄補助具には、製造、使用、保管の何れにおいても問題点が多く、看護技術系の学会を中心に、新たな洗浄補助具の必要性が叫ばれて久しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】実用新案登録第3112179号公報
【文献】特開2017-200577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、ベッドなどの寝具に臥床したままに、頭髪と頭部全体、特に臥床した際の下方に位置する後頭部における洗髪効果を十分に担保した洗髪作業を可能にする、新たな洗浄補助具を提供することである。
【0016】
また、本発明が解決しようとする課題は、ベッドなどの寝具に臥床したままでの洗髪時に、洗髪効果を十分に担保しながらも、使用する湯水の使用量を大幅に削減するとともに、洗髪中に湯水を漏らして洗髪時に周囲や臥床者を汚すことなく洗髪することを可能とする新たな洗浄補助具を提供することである。
【0017】
また、本発明が解決しようとするさらなる課題は、ベッド上のシーツをずらすことなく、臥床したままの被施術者に対して1人で使い捨ての洗髪用具を容易にセットして洗髪作業を実施可能とするとともに、バケツ交換を行うことなく洗髪後の排水処理を容易に実施可能とするとともに、洗髪補助具の保管と廃棄に要するスペースや費用を大きく削減するとともに、製造コストが低減された、新たな洗浄補助具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するための本発明の第1の手段は、底面部、該底面部の外周に設けられる排水口となる部位からさらに延出するよう配された導水部、該導水部の延出先の片側一方の面またはその両面に配される袋状受水部、該底面部の排水口となる部位以外の外周部に配される筒状気体充填部および該筒状気体充填部への気体充填口を有する非液体透過性の柔軟性を有するシート状素材からなる両面使用可能な使い捨て洗浄補助具であって、筒状気体充填部への気体充填がされていない状態では折りたたみ収納自在であり、気体充填口から筒状気体充填部へ気体が充填された状態では、膨らんだ筒状気体充填部が、臥床者の体の一部を載置支持するための筒状の台、該底面部からの水の溢水を防止するための筒状の壁、並びに、袋状受水部に差し込まれ受水した袋状受水部を自立可能にするための筒状の柱となり、底面部は膨らんだ筒状気体充填部に支持されて略平面となり、臥床者の体の一部が載る部位では略平面となった底面部が押し下げられ形成された凹みが貯水槽となり、略平面となったシートの一部が押し下げられた状態となる毎に凹みが形成されて該貯水槽から導水部および袋状受水部へと水を誘導する排水路となる、使い捨て洗浄補助具である。
【0019】
ここで、上記の両面使用可能な使い捨て洗浄補助具は、非液体透過性の柔軟性を有するシート状素材からなることから、筒状気体充填部への気体充填がされていない状態で、折りたたみ収納自在である。折り重ねることで、小さく折りたたんで収納することが可能であり、可搬性が高まるとともに、使い捨て洗浄補助具として大量に保管する際にもスペースを取らずに済む。また、非液体透過性の柔軟性を有するシート状素材からなるため、拡げたままでは柔らかすぎて臥床者の体の下に差し込みにくくいが、折りたたみ自在であることから、本発明の手段の両面使用可能な使い捨て洗浄補助具を折りたたみ小さくした状態にすれば、臥床者の体を持ち上げてそのまま差し込むことが可能で、その状態から容易に拡げた状態にできる。また、筒状気体充填部から気体を少し抜くことで柔軟性を有するシート状素材からなる筒状気体充填部が適度に潰れ、底面部とともに引き抜き易くなる。このように、本発明の使い捨て洗浄補助具は1人作業も容易なものとなっている。
【0020】
そして、上記の両面使用可能な使い捨て洗浄補助具は、膨らんだ筒状気体充填部が臥床者の体の一部を載置支持するための筒状の台として機能するようになる。気体充填口から筒状気体充填部へ気体を充填し適度に膨らませた状態とすることで、臥床者の体位状態に合わせることが可能である。背中が屈曲している長期臥床者であっても苦痛を与えない程度に体を載置して保持できるとともに、また、体位変換も容易となっている。また、洗浄作業中に筒状気体充填部への気体充填量が多すぎることで臥床者が苦痛を訴えた場合には、洗浄作業中であっても充填した気体を一部抜くことが可能であり、それにより筒状気体充填部の硬さや高さを適宜調節し、臥床者への苦痛を軽減させることが可能である。また、洗浄時に気体充填量を増やして筒状の壁をしっかりと形成させた状態とすることで、底面部からの水の溢水をより確実に防止することも可能となっている。
【0021】
また、底面部は膨らんだ筒状気体充填部に支持されて略平面となり、さらには、非液体透過性の柔軟性を有するシート状素材からなるため、臥床者の体の一部が載る部位では略平面となった底面部が押し下げられ形成された凹みが貯水槽となる。押し下げられた部分のみが凹みとなるため、水が略平面となった底面部を流れてしまわず、洗浄に用いる水を効率良く臥床者の体の周辺に保持できる。特に、加齢臭の生じている臥床者の体の洗浄作業では、41℃程度の湯水を用いることで加齢臭の原因物質を効率良く洗浄し、その臭いの発生を効果的に防止することが知られているが、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具のように、臥床者の体の一部が載る部位の周辺のみに貯水槽となる凹みが形成されることにより、41℃程度の湯水が平面を流れていってしまわずに凹みで形成された貯水槽に貯められるとともに、湯水の空気接触面が平面時に比べてより少なくなり湯水の温度低下が防止されるため、洗浄効果が高く保持されるものとなっている。また、凹みで形成された貯水槽に水がしっかり溜まるため、すすぎ効果も高い。さらには、略平面となったシートの一部を、作業者が必要に応じて適宜押し下げることにより、押し下げる毎に底面部に凹みが形成されて該貯水槽から導水部および袋状受水部へと水を誘導する排水路となることから、貯水された水の汚染状態に合わせてタイミング良く排水が可能となっており、洗浄作業の効率化が図られるものとなっている。
【0022】
加えて、洗浄後に袋状受水部に水が溜まった後、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具を臥床者の下から取り除き臥床者のケアを続ける際、柔軟性を有するシート状素材からなるため、そのままでは直ぐに倒れて洗浄後の汚水がこぼれてしまう。しかし、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具は、柔軟性を有するシート状素材からなるため、膨らんだ筒状気体充填部を洗浄後の袋状受水部に導水部を折り曲げて差し込み、受水した袋状受水部を自立可能にするための筒状の柱として用いることで、受水した袋状受水部が倒れずに、洗浄後の排水が入った本発明の手段の使い捨て洗浄補助具を床に自立させることが可能となっている。
【0023】
そして、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具は、該導水部の延出先の片側一方の面またはその両面に配される袋状受水部が設けられており、導水部のどちらの面を上面にしても利用することができる、両面使用可能な使い捨て洗浄補助具となっている。袋状受水部が片側一方の面にあるものでは、袋状受水部が上面になるように配置することで、導水部からの排水を袋状受水部に保持することが可能である。また、洗浄時の使用水量が多くなることが予め想定される場合などには、袋状受水部を下面になるように配置し、導水部をベッドサイド下方に配置したバケツ等の大型受水具内に入るようにすることで、洗浄後の排水をバケツ等の大型受水具に貯めることが可能となる。このように、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具は、使用水量に合わせて使用する面を変更することが可能な柔軟な対応が可能な構造となっている。
【0024】
上記の課題を解決するための本発明の第2の手段は、前記気体充填口に筒状気体充填部からの気体逆流防止機構が設けられている、本発明の第1の手段に記載の使い捨て洗浄補助具である。気体逆流防止機構を設けることで、臥床者の体の状態に合わせながら、筒状気体充填部へ少量ずつ気体を充填して、その膨らみの程度を細かく調節することが可能となっている。
【0025】
上記の課題を解決するための本発明の第3の手段は、気体充填口から筒状気体充填部へ気体が充填された状態の筒状気体充填部が、U字、C字またはコの字状となる、本発明の第1の手段又は第2の手段に記載の使い捨て洗浄補助具である。
【0026】
上記の課題を解決するための本発明の第4の手段は、前記導水部を臥床者を載置するベッド又は布団の側面から下垂させ、延出部に設けられた袋状受水部の開口が上方を向くようにして臥床者の体を洗浄する際の排水を受水可能にして用いるものである、本発明の第1の手段~第3の手段の何れか1に記載の使い捨て洗浄補助具である。非液体透過性の柔軟性を有するシート状素材からなるため、ベッドまたは布団の側面に沿ってしなやかに曲がるため、下方へ真っ直ぐ排水が流れ落ち、汚染水が周囲に飛び散ることがない状態で袋状受水部に受水可能なものとなっている。
【0027】
上記の課題を解決するための本発明の第5の手段は、前記筒状気体充填部に、筒状気体充填部の直径長さより短い深さを有する窪み又はスリットが設けられている、本発明の第1の手段~第4の手段の何れか1に記載の使い捨て洗浄補助具である。
【0028】
上記の課題を解決するための本発明の第6の手段は、前記筒状気体充填部の外周側に窪み又はスリットが設けられている、本発明の第1の手段~第4の手段の何れか1に記載の使い捨て洗浄補助具である。
【0029】
上記のように、気体充填口から筒状気体充填部へ気体が充填された状態の筒状気体充填部に窪み又はスリットが配設されるようにすることで、充填された状態の筒状気体充填部上に臥床者を載置した際に、臥床者が載っていない部分の筒状気体充填部が持ち上がることを防止し、底面部の凹みで形成される貯水槽の貯水量を保持することが可能となる。特に、筒状気体充填部に設けられる窪み又はスリットを、前記筒状気体充填部の外周側に設けたものとすることにより、気体充填口から筒状気体充填部へ気体が充填された状態の筒状気体充填部の外周側に窪み又はスリット配すると、臥床者を載置した際には、臥床者が載置された筒状気体充填部が底面部側に倒れこみ易くなり、引き下げられた底面部に引っ張られて他の部分の筒状気体充填部も底面部側に倒れ込むようになるため、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具がより安定した設置状態となる。
【0030】
上記の課題を解決するための本発明のその他の手段は、気体充填により膨張し臥床者の体の一部が載置される略U字、略C字又は略コの字状の筒状気体充填部と該気体充填部内に気体を充填するための気体充填口とを有する壁部と、該壁部の底面側に配設され、前記筒状気体充填部を有する壁部の開口に対向するよう開口を設けた袋状受水部が配された延出部を有する非液体透過性の柔軟性を有するシートからなり、底面部とを有し、筒状空気充填部に気体充填部内より気体を充填することで、気体が充填された筒状空気充填部を有する壁部により該底面部の平面性が保持され、さらに該底面部に臥床者の体の一部が載置された箇所にシートが押し下げられて形成される凹みが貯水槽となり、該延出部のシートを押し下げることで形成される凹みが該貯水槽から該袋状受水部へと水を誘導する排水路となるものであることを特徴とする使い捨て洗浄補助具である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の手段の使い捨て洗浄補助具は、空気充填により膨張し臥床者の頸部が載置されるU字又はコの字状の筒状空気充填部と該空気充填部内に空気を充填するための空気充填口とを有する壁部と、該壁部の底面側に配設され前記U字又はコの字状の筒状空気充填部を有する壁部の開口に対向するよう開口を設けた受水袋が配された延出部を有する非液体透過性の柔軟性を有するシートからなる底面部とを有しており、筒状空気充填部に空気を充填しない使用前は使用後においては、使い捨て洗浄補助具を小さく折り畳み収納することが可能となっている。
【0032】
また、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具は、使用時には、筒状空気充填部に空気充填部内より空気を充填することで、洗髪のために頭頸部を愛護的に配置することが可能となるとともに、空気が充填されたU字又はコの字状の筒状空気充填部を有する壁部により該底面部の平面性が保持され、さらに該底面部に臥床者の頭部が載置された箇所にシートが押し下げられて形成される凹みが貯水槽となることにより、洗髪使用時に湯水を一定量溜めることのできる貯水槽を有する構造に切り替わることで、従来技術では難航していた頭部全体と、特に洗浄が困難であった後頭部における洗髪効果を十分に得ることができるものとなった。くわえて、空気が充填された状態の筒状空気充填部を有する壁部を、C字状とするよりも、略直線となる部分を有するU字又はコの字状の形状とすることで、より開口部や頭頸部周辺のスペースを広くすることが可能となり、コンパクトかつ適切な作業エリアを確保できるようなり、かつ、より排水しやすくなった。
【0033】
さらに、洗髪後、該延出部のシートを押し下げることで形成される凹みが該貯水槽から該受水袋へと水を誘導する排水路となるので、極少量の水を効率良く洗髪に用いることが可能となるとともに、貯水槽となった凹みに溜まった水が汚れた場合には、いつでもいつでも該延出部のシートを押し下げて排水路を形成して排水を除去でき、その後押し下げを止めることで、元の状態に戻し、再び少量の清浄な水を使用することで、従来5L以上必要とされていた洗浄水量が、僅か1.5L程度と、極めて少量の水量で速やかに汚れを取り除くことが可能となった。水の供給が少ない地域や災害時には特に有用である。
【0034】
加えて、排水は受水袋に保持されるが、1.5L程度と極めて少量で軽く女性でも運搬でき、廃棄も容易である。また、水の供給が少ない地域や災害時には、受水袋に保持された排水を、トイレ用水などを含む他の用途に転用することも可能であり、より汎用性が高いものとなっている。
【0035】
そして、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具により、臥床者の洗髪に必要な準備物品数が半減し使用者の経験に依存していた手作り品の完成度やバラツキも無くなった。製品にバラツキがなければ使用者は洗髪方法の習得や臥床者のケアのみに専念でき、効果的な声掛けやタッチングなどの介護・看護技術を向上させる余裕も生まれやすくなった。さらに、誰もが簡便に臥床者や周囲環境を水浸しにする事なく洗髪を行えることで、従来5L相当使用していた湯水も1.5L程度と少量で作業を完了でき、バケツも不要になったことで後片付けや衛生管理を気にすることも無くなった。また、このような少量であれば、ベッドサイドに汎用の魔法瓶機能を有する水筒などを持ち込み、41℃程度の湯水を少量ずつ掛け流して、その温度帯を保持したままで洗浄することも容易であり、加齢臭などの発生源を効率良く減少させ、洗浄効果をより高いものとすることが可能となっている。
【0036】
また、臥床者の腰部や臀部は、臥床状態のままでは洗浄が困難であり、臥床状態が長く続くと当該部位の洗浄不足に起因する褥瘡が発生する。この褥瘡は、皮膚の圧迫を防ぐ体位交換では防止し得ないため、臥床者のQOLを悪化させる要因となっている。ところが、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具を用いることで、臥床者を引き起こして移動させずとも、臥床者の体を僅かに持ち上げて生じる隙間に該使い捨て洗浄補助具を挿入し空気充填口から筒状空気充填部に空気を適量充填すれば、臥床者の体位交換が容易になる。
【0037】
さらに、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具に備わる底面部の柔軟性を有するシートが臥床者の体により押し下げられ、形成される僅かな凹みが貯水槽として機能することで、さらには施術者がシートを押し下げることで流路が容易に形成され洗浄廃液を排出できるようになるため、従来臥床状態のままでは洗浄困難であった腰部及び臀部などといった部位の洗浄が、極めて少ない水量で的確に行うことが可能となった。そして、皮膚の圧迫を防ぐ体位交換では防止し得なかった洗浄不足に起因する褥瘡の発生を抑制したり、既に生じた褥瘡状態を改善することも可能となり、長期臥床者のQOLが大幅に改善されることとなった。
【0038】
また、上記のように、少量の水での洗浄が可能であるが、臀部のような汚染状態が特にひどい場合には、より多量の湯水での洗浄が必要となる場合がある。本発明の手段の使い捨て洗浄補助具は、導水部の延出先の片側一方の面またはその両面に配される袋状受水部が設けられており、導水部のどちらの面を上面にしても利用することができる、両面使用可能な使い捨て洗浄補助具となっているため、袋状受水部を下面になるように配置し、導水部をベッドサイド下方に配置したバケツ等の大型受水具内に入るようにすることで、洗浄後の排水をバケツ等の大型受水具に貯め、多量の湯水での洗浄が容易となっている。
【0039】
そして、施術者の作業工程が簡素化されて洗浄に要する時間が短縮されるとともに、臥床者の体位交換作業により施術者に生じていた体力的な負担が大幅に軽減された。そして、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具を用いることで、標準的な作業手順の策定が可能となり、施術者の熟練度を問わず、高い施術レベルの介護・看護サービスを広く提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具の一実施形態の使用状態の説明図である。
図2図2は、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具の一実施形態の正面図である。
図3図3は、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具の一実施形態の背面図である。
図4図4は、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具の一実施形態の右側面図である。
図5図5は、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具の一実施形態の左側面図である。
図6図6は、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具の一実施形態の平面図である。
図7図7は、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具の一実施形態の底面図である。
図8図8は、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具の別の一実施形態の正面図(図8(a)及び背面図(図8(b))である。
図9図9は、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具の別の一実施形態の使用状態の説明図である。
図10図10は、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具の使用状態の説明図である。
図11図11は、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具の使用状態の説明図である。
図12図12は、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具の使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ以下適宜説明する。
【0042】
<使い捨て洗髪用具の素材について>
【0043】
本発明の手段の使い捨て洗浄補助具(1)に用いる素材は、非液体透過性の柔軟性を有するシート状に成形できる軟質の樹脂であれば特に制限されないが、低コストで製造し、かつ、省スペースで保管できるものとすることを考慮し、樹脂製のフィルム状のものとし、好ましくは、軟質プラスチック製または軟質ビニール製のフィルム状素材を用いるものとする。より好ましくはポリエチレンフィルム等やポリプロピレンフィルムの樹脂製フィルムを用いる。底面部に、載置される臥床者の体の一部の重みで凹みを形成させるため、フィルムの厚みは、0.015mm~0.05mm程度とし、好ましくは0.02mm~0.04mm程度、より好ましくは、0.02mm~0.03mm程度とする。また、不織布や金属フィルムと樹脂製フィルムとを熱又は接着剤などによってラミネートした複合シートも、底面部に、臥床者の頭部の重みで凹みができる程度の厚みのものであれば、用いることができる。また、底面部は、臥床者の頭部の重みで凹みを形成できる程度であれば、フィルム状のシートが1重であっても、2重またはそれ以上の多重のものとなっていても構わない。
【0044】
また、気体充填部内に気体を充填するための気体充填口には、逆流防止弁を用いると、作業者が効率よく空気充填作業を行うことができ、1人での作業を滞りなく実施することが容易になるので好ましい。気体としては、作業者の呼気、空気の他、各種気体を用いることができる。また、ボンベやポンプ等を用いて気体充填口から空気などの気体を必要量充填しても良い。
【0045】
<製造方法について>
本発明の手段の使い捨て洗浄補助具は、上記素材に示したような非液体透過性の柔軟性を有する軟質の樹脂のシートを用い、ヒートシール、接着剤、圧着、超音波接合などの各種接着接合手段を用いて製造することができる。例えば、筒状気体充填部となる筒状シートと逆流防止弁などの空気逆流防止機構を有する部材、底面部、底面部の外周に設けられる排水口となる部位からさらに延出するよう配された導水部、該導水部の延出先の片側一方の面またはその両面に配される袋状受水部を形成する上記軟質の樹脂のシートと、を重ね、ヒートシール、接着剤、圧着または超音波接合により接着・接合して、本発明の手段の筒状気体充填部、筒状気体充填部に配された逆流防止弁などの空気逆流防止機構、底面部、底面部の外周に設けられる排水口となる部位からさらに延出するよう配された導水部、該導水部の延出先の片側一方の面またはその両面に配される袋状受水部を形成することができる。また、非液体透過性の柔軟性を有する軟質の樹脂の袋状シートを用い、筒状気体充填部となる部位に逆流防止弁などの空気逆流防止機構を配し、金型を用いて200℃前後の温度にてヒートシールし、さらに導水部の延出先の片側一方の面またはその両面に配される袋状受水部の開口部を切開することで、本発明の非液体透過性の柔軟性を有するシート状素材からなる両面使用可能な使い捨て洗浄補助具を製造することもできる。また、非液体透過性の柔軟性を有する軟質の樹脂のシート素材の一端を折り返して筒状気体充填部となる部位とし、その一部に逆流防止弁などの空気逆流防止機構を挟み込み、該シート素材の他端を袋状受水部を形成するように折り返し、逆流防止弁などの空気逆流防止機構を挟み込んだ筒状気体充填部となる部位と、袋状受水部を形成する部位のシート周縁部を、それぞれ金型を用いてヒートシールすることで、本発明の非液体透過性の柔軟性を有するシート状素材からなる両面使用可能な使い捨て洗浄補助具を製造することもできる。
【0046】
<使用手順について>
本発明の手段の使い捨て洗浄補助具(1)の使用手順の一例として、洗髪時の手順を、以下に示す。
【0047】
1.折り畳まれている本発明の手段の使い捨て洗浄補助具(1)を取り出して拡げる。
2.気体充填口(3)より筒状気体充填部内に空気を吹き込み、その内部に空気を充填して筒状にする。臥床者の頸部が載置されると圧力が高まり、臥床者の頸部が載置される側に対向する壁部が持ち上がり易くなるため、空気は入れすぎないように注意する。壁の壁面に窪み又はスリットが設けられている場合には、窪み(10)又はスリット(10)の部分の壁部分の厚みが薄くなっていて筒状気体充填部(2)が撓むため、壁部の持ち上がりは抑制されるが、その場合であっても、空気は入れすぎないようにする。
3.洗髪作業対象となる臥床者のベッドサイドに立ち、臥床者の頭部を片手で支えながら、もう一方の手で使用している枕を取り除き、臥床者の頸部に、空気を吹き込んだ使い捨て洗浄補助具(1)の筒状気体充填部(2)がある部分の壁部を差し込む。
4.使い捨て洗浄補助具(1)の底面部の延出部をベッドの側面部に垂らすようにして配置したら、臥床者の頭部を底面部上にそっと下ろす。底面部(7)に、臥床者の頭部の重みで凹み(11)ができたことを確認する。
5.筒状気体充填部を有する壁部を押下げて柔らかく指が沈むようであれば、気体充填口(3)より、空気を軽く追加して吹き込み補充する。
6.頭部および頭髪洗浄を開始する。湯水を入れた500mL程度のペットボトルなどの容器から、臥床者の頭部に湯水を使い捨て洗浄補助具(1)の底面部の凹みに掛け流した湯水が溜まる程度に少量掛け流す。
7.溜まった湯水を手ですくって臥床者の頭部に繰り返し掛け流し、十分に頭髪と頭皮を湿らせる。
8.底面部の水が溜まっていない平面の部分および導水部のシートを押し下げて、シートに凹みを生じさせて排水路(14)を形成し、受水袋(8)へと水を誘導して排水する。
9.シャンプーを使い、臥床者の頭髪と頭皮を洗浄する。
10.シャンプーの泡を手でできるだけ取り除く。
11.ペットボトルなどの容器から、臥床者の頭部に湯水を使い捨て洗浄補助具(1)の底面部の凹み(11)に掛け流した湯水が溜まる程度に少量掛け流す。
12.溜まった湯水を手ですくって臥床者の頭部に繰り返し掛け流し、シャンプーを洗い流す。
13.延出部のシートを押し下げて、延出部に凹みを生じさせて排水路(14)を形成し、袋状受水部(8)へと水を誘導して排水する。
14.11~13を数回繰り返す。
15.リンス(またはトリートメント)を臥床者の頭髪と頭皮に処理する。
16.11~13を数回繰り返す。
17.タオル等で臥床者の頭髪と頭皮の水分を拭き取る。
18.臥床者の頭部を片手で支えながら、もう一方の手で使い捨て洗浄補助具(1)を取り除き、枕を差し込む。
19.使い捨て洗髪用具(1)の袋状受水部(8)に溜まった排水(15)を捨てる。袋状受水部(8)の下部を切断することで容易に排水を廃棄できる。排水を水洗トイレ用排水するなど別用途で使用する場合には、袋状受水部(8)の下部は切断せず、使用する場所まで運んで利用する。
【実施例1】
【0048】
本発明の手段の使い捨て洗浄補助具として、袋状の0.03mm厚のポリエチレンフィルムを使用し、200℃前後の温度にてヒートシールを行って筒状気体充填部、空気逆流防止機構を有する気体充填口の部材を接着したのち、袋状受水部の開口部分を切断して袋状受水部の開口を設けて、図1図7に示す構造の使い捨て洗浄補助具を製造した(実施例1)。
【実施例2】
【0049】
本発明の手段の使い捨て洗浄補助具として、0.03mm厚のポリエチレンフィルムを使用し、ホットメルト接着剤を用いて各部を接着して、図8図12に示す構造の使い捨て洗浄補助具を製造した(実施例2)。
【実施例3】
【0050】
実施例1及び実施例2で製造した使い捨て洗髪用具を上記使用手順に従って用いて、臥床者の頭部の頭髪及び頭皮を洗浄した。比較試験として、従来のケリーパッド様式の洗髪用具を用いた臥床者の頭部の頭髪及び頭皮洗浄を行った。
【0051】
本発明の手段の使い捨て洗浄補助具である実施例1及び実施例2の使い捨て洗浄補助具を用いた場合には、いずれも準備から洗浄完了まで全ての工程を1人で実施することができた。さらに、使用する洗浄水が僅か1.5Lで洗浄が完了した。洗浄時の水漏れも生じることはなかった。裏面を使用しても、同様に、いずれも準備から洗浄完了まで全ての工程を1人で実施することができた。排水はバケツに貯留させるようにしたが、汚染水の漏れもなく、使用する洗浄水が僅か1.5Lで洗浄が完了した。一方、比較試験の従来様式の洗髪用具を用いた場合には、5Lを超える洗浄水を要した。また、1人で準備から洗浄完了まで全ての工程を行うことは難しく、バケツの交換作業も頻繁に生じ、水漏れも生じていた。
【0052】
また、洗浄前後の頭部の臭いを確認したところ、本発明の手段の使い捨て洗浄補助具を用い、41℃の湯水を1.5L用いて洗浄した場合には、洗浄後の臭いが低減していた。これに対し、従来の洗髪用具を用い41℃の湯水を1.5L用いて洗浄しても、十分な洗浄はされず、頭皮の油分等が残存しているとともに、洗浄前の頭部の臭いは残ったままであった。
【実施例4】
【0053】
さらに、上記実施例1及び2で製造した使い捨て洗髪用具を用いて、臥床者の腰部もしくは臀部の洗浄も行った。その結果、上記洗髪時と同様に、準備から洗浄完了まで全ての工程を1人で水漏れさせることなく実施することができた。また、使用する洗浄水も1.5Lの使用量にて洗浄を終えることができ、さらに1L追加で洗浄したところ、特に臀部についての清浄性を良好に確保することが出来た。臥床者の体位変換も容易に行えることが判明した。
【0054】
他方、上記比較のために使用した従来の洗浄具では、ゴム表面を水が直ぐに流れてしまい、洗浄を行うためには臥床者に水を掛け続ける必要があり、多量の水が必要になった。さらに、水量が変化する際にゴムが跳ね上がり、汚染水が周囲にこぼれてしまった。
【符号の説明】
【0055】
1 使い捨て洗浄補助具
2 筒状気体充填部
3 気体充填口
4 壁部
5 筒状気体充填部を有する壁部の開口
6 袋状受水部の開口
7 底面部
8 袋状受水部
8a 導水部
9 空気逆流防止機構
10 壁面の窪み又はスリット
11 底面部に臥床者の頭部が載置された箇所にシートが押し下げられて形成される凹み、すなわち、貯水槽
12 ペットボトル
13 水
14 延出部のシートを押し下げることで形成された凹み、すなわち、貯水槽から袋状受水部へと水を誘導する排水路
15 排水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12