(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】組成物、組成物における成分の選択方法、組成物の製造方法、情報処理システムおよび情報処理方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20230824BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20230824BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230824BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20230824BHJP
A23C 9/123 20060101ALN20230824BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K45/06
A61P43/00 121
A23L33/135
A23C9/123
(21)【出願番号】P 2023501580
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2022026659
【審査請求日】2023-01-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515163313
【氏名又は名称】株式会社メタジェン
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福田 真嗣
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-049645(JP,A)
【文献】特開2016-204355(JP,A)
【文献】MGダイエットサポート(企業向け)<br> ~AIを活用!腸内環境タイプを考慮した減量支援プログラム~ | 株式,https://web.archive.org/web/20220601012131/https://metagen.co.jp/service/mgdietsupport.html
【文献】腸内細菌タイプで 世界の人々を分類すると? | 腸のおもしろ話 第1回 | サンスター健康道場[online],28-10-2010 uploaded, [Retrieved on 02-09-2022],https://web.archive.org/web/20201028151103/https://www.kenkodojo.com/guts/detail1/
【文献】日本人の腸内細菌、その特徴はなに? 米国や中国となぜ違う?[online],28-04-2021 uploaded, [Retrieved on 02-09-2022],https://www.asahi.com/relife/article/14339144
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摂取または投与の少なくともいずれかにより身体的な状態または精神的な状態の少なくともいずれかを変化させる共通する効果を有する第1の成分及び第2の成分を少なくとも含む2つ以上の成分を含有する、組成物における成分の選択方法であって、
前記成分が、前記第1の成分に対して前記共通の効果が期待できる腸内環境パターンを有する第1レスポンダーと、前記第2の成分に対して前記共通の効果が期待できる腸内環境パターンを有する第2レスポンダーと、を含む複数種のレスポンダーを有する集団において、前記複数種のレスポンダーの合計数による合計割合があらかじめ設定した基準値以上になるように2つ以上選択された、選択方法。
【請求項2】
摂取または投与の少なくともいずれかにより身体的な状態または精神的な状態の少なくともいずれかを変化させる、第1の効果が見込める第1の成分および第2の成分を含有し、
前記第1の成分は、前記第1の成分に対して前記第1の効果が期待できる腸内環境パターンを有する第1レスポンダーと、前記第2の成分に対して第1の効果が期待できる腸内環境パターンを有する第2レスポンダーと、を含む複数種のレスポンダーを有する集団における前記第1レスポンダーの割合Xを有し、
前記第2の成分は、前記集団における前記第1の効果が見込める第2レスポンダーの割合Yを有し、
前記集団において、前記複数種のレスポンダーの合計数による合計割合があらかじめ設定した基準値以上である、組成物における成分の選択方法。
【請求項3】
第1の成分に対して、摂取または投与の少なくともいずれかにより身体的な状態または精神的な状態の少なくともいずれかを変化させる、共通の効果が期待できる腸内環境パターンを有する第1レスポンダーと、第2の成分に対して前記共通の効果が期待できる腸内環境パターンを有する第2レスポンダーと、を含む複数種のレスポンダーを有する集団において、
前記第1の成分において、前記第1レスポンダーの腸内環境パターンを取得するステップと、
前記第1レスポンダーの腸内環境パターンの対象者の前記集団における第1の割合を算出するステップと、
前記第1の割合があらかじめ設定した基準値以上であるかを判断するステップと、
前記第2の成分において、前記第2レスポンダーの腸内環境パターンを取得するステップと、
前記第2レスポンダーの腸内環境パターンの対象者の前記集団における第2の割合を算出するステップと、
前記第1の割合と前記第2の割合を合計した合計割合があらかじめ設定した基準値以上であるかを判断するステップと、
前記第1および第2の成分を含有する組成物を製造するステップと、
により得られた、組成物における成分の選択方法。
【請求項4】
摂取または投与の少なくともいずれかにより身体的な状態または精神的な状態の少なくともいずれかを変化させる共通する効果を有する第1の成分及び第2の成分を少なくとも含む2つ以上の成分を含有する、組成
物の製造方法であって、
前記成分が、前記第1の成分に対して前記共通の効果が期待できる腸内環境パターンを有する第1レスポンダーと、前記第2の成分に対して前記共通の効果が期待できる腸内環境パターンを有する第2レスポンダーと、を含む複数種のレスポンダーを有する集団において、前記複数種のレスポンダーの合計数による合計割合があらかじめ設定した基準値以上になるように2つ以上選択された、組成物の製造方法。
【請求項5】
摂取または投与の少なくともいずれかにより身体的な状態または精神的な状態の少なくともいずれかを変化させる、第1の効果が見込める第1の成分および第2の成分を含有し、
前記第1の成分は、前記第1の成分に対して前記第1の効果が期待できる腸内環境パターンを有する第1レスポンダーと、前記第2の成分に対して第1効果が期待できる腸内環境パターンを有する第2レスポンダーと、を含む複数種のレスポンダーを有する集団における前記第1レスポンダーの割合Xを有し、
前記第2の成分は、前記集団における前記第1の効果が見込める第2レスポンダーの割合Yを有し、
前記集団において、複数種のレスポンダーの合計数による合計割合があらかじめ設定した基準値以上
になるように前記成分が2つ以上選択された、組成物の製造方法。
【請求項6】
第1の成分に対して、摂取または投与の少なくともいずれかにより身体的な状態または精神的な状態の少なくともいずれかを変化させる、共通の効果が期待できる腸内環境パターンを有する第1レスポンダーと、第2の成分に対して前記共通の効果が期待できる腸内環境パターンを有する第2レスポンダーと、を含む複数種のレスポンダーを有する集団において、
前記第1の成分において、前記第1レスポンダーの腸内環境パターンを取得するステップと、
前記第1レスポンダーの腸内環境パターンの対象者の前記集団における第1の割合を算出するステップと、
前記第1の割合があらかじめ設定した基準値以上であるかを判断するステップと、
前記第2の成分において、前記第2レスポンダーの腸内環境パターンを取得するステップと、
前記第2レスポンダーの腸内環境パターンの、前記集団における第2の割合を算出するステップと、
前記第1の割合と前記第2の割合を合計した合計割合があらかじめ設定した基準値以上であるかを判断するステップと、
前記第1および第2の成分を含有する組成物を製造するステップと、
を有する、組成物の製造方法。
【請求項7】
第1の成分に対して、摂取または投与の少なくともいずれかにより身体的な状態または精神的な状態の少なくともいずれかを変化させる、共通の効果が期待できる腸内環境パターンを有する第1レスポンダーと、第2の成分に対して前記共通の効果が期待できる腸内環境パターンを有する第2レスポンダーと、を含む複数種のレスポンダーを有する集団において、
前記第1の成分において、前記第1レスポンダーの腸内環境パターンを取得する取得部と、
前記第1レスポンダーの腸内環境パターンの対象者の前記集団における第1の割合を算出する算出部と、
前記第1の割合が基準値以上であるかを判断する判断部と、
前記第2レスポンダーに前記第1の成分と共通の効果が見込める第2の成分を探索する探索部と、
取得された情報を提供する情報提供部と、を備え、
前記取得部は、前記第2の成分において、前記第2レスポンダーの腸内環境パターンを取得し、
前記算出部は、前記集団における複数種のレスポンダーの合計数による合計割合を示す第2の割合を算出し、
前記判断部は、前記第2の割合があらかじめ設定した基準値以上であるかを判断する、情報処理システム。
【請求項8】
第1の成分に対して、摂取または投与の少なくともいずれかにより身体的な状態または精神的な状態の少なくともいずれかを変化させる、共通の効果が期待できる腸内環境パターンを有する第1レスポンダーと、第2の成分に対して前記共通の効果が期待できる腸内環境パターンを有する第2レスポンダーと、を含む複数種のレスポンダーを有する集団において、
前記第1の成分において、前記第1レスポンダーの腸内環境パターンを有する取得するステップと、
前記第1レスポンダーの腸内環境パターンの対象者の前記集団における第1の割合を算出するステップと、
前記第1の割合が基準値以上であるかを判断するステップと、
前記第2レスポンダーに前記第1の成分と共通の効果が見込める前記第2の成分を探索するステップと、
前記第2の成分において、前記第2レスポンダーの腸内環境パターンを取得するステップと、
前記集団における複数種のレスポンダーの合計数による合計割合を示す第2の割合を算出し、
前記第2の割合があらかじめ設定した基準値以上であるかを判断するステップと、
取得された情報を提供するステップと、
を有する、コンピュータによる情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、組成物における成分の選択方法、組成物の製造方法、情報処理システムおよび情報処理方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性を有する、食品やサプリメント等の組成物が知られている(以下、「機能性物質」とも呼ぶ。)。例えば、腸内環境改善効果に加えて、目の健康維持に効果のあるヨーグルトを提供するために、サトウキビの食物繊維および甘藷の茎葉を含有するヨーグルトを製造する方法がある(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の成分を含有することにより、このような機能性を有する組成物は摂取した対象者に対する所定の効果を高めるものである。一方で、所定の集団において、その組成物を摂取することで所定の効果が期待できる対象者の割合を示すカバー率が高くなるような組成物も望まれる。
【0005】
本発明は、所定の集団において、所定の効果に対するカバー率が高い組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、
所定の効果を有する2つ以上の成分を含有する組成物であって、
前記各成分が、所定の集団において、前記効果が期待できる対象者の割合を示すカバー率の合計が所定の割合以上になるように選択された、組成物である。
【0007】
その他、本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所定の集団において、所定の効果に対するカバー率が高い組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図6】サーバにおいて実行される処理の流れを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、組成物、情報処理システムおよび情報処理方法の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
本発明は、例えば、以下のような構成を備える。
[項目1]
所定の効果を有する2つ以上の成分を含有する組成物であって、
前記各成分が、所定の集団において、前記効果が期待できる対象者の割合を示すカバー率の合計が所定の割合以上になるように選択された、組成物。
[項目2]
所定の効果を有する2つ以上の成分を含有する組成物であって、
前記成分が、所定の集団において、前記各成分について設定された前記効果が期待できる腸内環境パターンの対象者の割合を示すカバー率の合計が所定の割合以上になるように選択された、組成物。
[項目3]
第1の効果が見込める第1の成分および第2の成分を含有し、
前記第1の成分は、前記第1の効果が見込める第1の腸内環境パターンのカバー率Xを有し、
前記第2の成分は、前記第1の効果が見込める第2の腸内環境パターンのカバー率Yを有し、
前記第1および第2の腸内環境パターンのカバー率の合計が所定の割合以上である、組成物。
[項目4]
第1の成分において、第1の効果が見込める第1の腸内環境パターンを取得するステップと、
前記第1の腸内環境パターンのカバー率を算出するステップと、
前記カバー率が基準値以上であるかを判断するするステップと、
第2の腸内環境パターンに前記第1の効果が見込める第2の成分を探索するステップと、
前記第2の成分において、前記第2の腸内環境パターンを取得するステップと、
前記第1および第2の腸内環境パターンのカバー率を算出するステップと、
前記第1および第2の成分を含有する組成物を製造するステップと、
により得られた、組成物。
[項目5]
所定の効果を有する2つ以上の成分を含有する、組成物における成分の選択方法であって、
前記各成分が、所定の集団において、前記効果が期待できる対象者の割合を示すカバー率の合計が所定の割合以上になるように選択された、選択方法。
[項目6]
所定の効果を有する2つ以上の成分を含有する、組成物における成分の選択方法であって、
前記成分が、所定の集団において、前記各成分について設定された前記効果が期待できる腸内環境パターンの対象者の割合を示すカバー率の合計が所定の割合以上になるように選択された、選択方法。
[項目7]
第1の効果が見込める第1の成分および第2の成分を含有し、
前記第1の成分は、前記第1の効果が見込める第1の腸内環境パターンのカバー率Xを有し、
前記第2の成分は、前記第1の効果が見込める第2の腸内環境パターンのカバー率Yを有し、
前記第1および第2の腸内環境パターンのカバー率の合計が所定の割合以上である、組成物における成分の選択方法。
[項目8]
第1の成分において、第1の効果が見込める第1の腸内環境パターンを取得するステップと、
前記第1の腸内環境パターンのカバー率を算出するステップと、
前記カバー率が基準値以上であるかを判断するするステップと、
第2の腸内環境パターンに前記第1の効果が見込める第2の成分を探索するステップと、
前記第2の成分において、前記第2の腸内環境パターンを取得するステップと、
前記第1および第2の腸内環境パターンのカバー率を算出するステップと、
前記第1および第2の成分を含有する組成物を製造するステップと、
により得られた、組成物における成分の選択方法。
[項目9]
所定の効果を有する2つ以上の成分を含有する、組成物の製造方法であって、
前記各成分が、所定の集団において、前記効果が期待できる対象者の割合を示すカバー率の合計が所定の割合以上になるように選択された、組成物の製造方法。
[項目10]
所定の効果を有する2つ以上の成分を含有する、組成物の製造方法であって、
前記成分が、所定の集団において、前記各成分について設定された前記効果が期待できる腸内環境パターンの対象者の割合を示すカバー率の合計が所定の割合以上になるように選択された、組成物の製造方法。
[項目11]
第1の効果が見込める第1の成分および第2の成分を含有し、
前記第1の成分は、前記第1の効果が見込める第1の腸内環境パターンのカバー率Xを有し、
前記第2の成分は、前記第1の効果が見込める第2の腸内環境パターンのカバー率Yを有し、
前記第1および第2の腸内環境パターンのカバー率の合計が所定の割合以上である、組成物の製造方法。
[項目12]
第1の成分において、第1の効果が見込める第1の腸内環境パターンを取得するステップと、
前記第1の腸内環境パターンのカバー率を算出するステップと、
前記カバー率が基準値以上であるかを判断するするステップと、
第2の腸内環境パターンに前記第1の効果が見込める第2の成分を探索するステップと、
前記第2の成分において、前記第2の腸内環境パターンを取得するステップと、
前記第1および第2の腸内環境パターンのカバー率を算出するステップと、
前記第1および第2の成分を含有する組成物を製造するステップと、
により得られた、組成物の製造方法。
[項目13]
第1の成分において、第1の効果が見込める第1の腸内環境パターンを取得する取得部と、
前記第1の腸内環境パターンのカバー率を算出する算出部と、
前記カバー率が基準値以上であるかを判断するする判断部と、
第2の腸内環境パターンに前記第1の効果が見込める第2の成分を探索する探索部と、
取得された情報を提供する情報提供部と、を備え、
前記取得部は、前記第2の成分において、前記第2の腸内環境パターンを取得し、
前記算出部は、前記第1および第2の腸内環境パターンのカバー率を算出する、情報処理システム。
[項目14]
第1の成分において、第1の効果が見込める第1の腸内環境パターンを取得するステップと、
前記第1の腸内環境パターンのカバー率を算出するステップと、
前記カバー率が基準値以上であるかを判断するするステップと、
第2の腸内環境パターンに前記第1の効果が見込める第2の成分を探索するステップと、
前記第2の成分において、前記第2の腸内環境パターンを取得するステップと、
前記第1および第2の腸内環境パターンのカバー率を算出するステップと、
取得された情報を提供するステップと、
を有する、コンピュータによる情報処理方法。
【0012】
<概要>
所定の集団において、所定の成分を摂取することで所定の効果が期待できる対象者の割合を示す推定値を、カバー率(占有率)と定義することができる。
【0013】
所定の集団とは、例えば、人種(アジア人、ヨーロッパ人など)、国籍(日本人、中国人など)、性別(男性、女性など)、年齢(乳児、幼児、小学生、高齢者など)などにより設定した集団とすることができる。また、所定の老人ホームの入居者、所定の小学校の児童、所定の保育園の園児、所定の家族、所定のスポーツチーム、所定の企業の従業員などの集団を任意に設定することもできる。あるいは、便秘気味、尿酸値が高い、眠りが浅いと感じている、疾患予防に努めたいと考えている、所定の医薬品を服用中である、など、特定の体調や思考を有する集団であってもよい。さらに、これらの組み合わせにより設定された集団であってもよい。
【0014】
例えば、上記のような機能性物質の一例として、腸内環境タイプAのヒトに便通改善効果がある乳酸菌Xにより製造されたヨーグルトは、腸内環境タイプBのヒトに対して便通改善効果はない、もしくは効果が低いと考えられるため、所定の集団(例えば、日本人)に対するカバー率は低くなる。そこで、そのヨーグルトのカバー率を上げるためには、腸内環境タイプBのヒトに便通改善効果を発揮させるための別の成分(素材)をそのヨーグルトが含有するものとすればよい。
【0015】
すなわち、乳酸菌Xが腸内環境タイプBのヒトに対して便通改善効果がない場合であっても、腸内環境タイプBのヒトに同様の便通改善効果という機能をもたらすと考えられる別の素材(例えば、乳酸菌Y)を乳酸菌Xと共にヨーグルトを製造する際に用いることで、腸内環境タイプAのヒトと腸内環境タイプBの両タイプのヒトに便通改善効果をもたらすヨーグルトを提供することができ、そのヨーグルトの所定の集団に対する所定の効果のカバー率を上げることができる。
【0016】
このように、本発明は、新たな方法で成分を選択して組成物を設計することにより、所定の集団において、所定の効果に対するカバー率が高い機能性物質を提供するものである。
【0017】
これは、薬剤やサプリメント、食品等の機能性物質を摂取した際の効果が、その人の腸内環境パターンの違いに基づいて個人ごとに異なるという知見に基づくものである。このような機能性物質を摂取した際に効果が得られる人を「レスポンダー」、効果が得られない人を「ノンレスポンダー」と定義することができる。
【0018】
例えば、大麦を摂取した際、その次の食事による血糖値上昇が抑えられる「セカンドミール効果」があることが知られているが、この効果にはレスポンダーとノンレスポンダーが存在する。このレスポンダーとノンレスポンダーの違いには腸内細菌叢中のプレボテラ属細菌の比率が関係していると考えられており、レスポンダーはノンレスポンダーと比較してプレボテラ属細菌の比率が高い傾向にあることがわかっている。この場合、プレボテラ属細菌の比率が多い人は大麦摂取によってセカンドミール効果が得られる「レスポンダー」であり、少ない人はその効果が得られない「ノンレスポンダー」となる。
【0019】
このような概念は、ヨーグルトのようなプロバイオティクスや機能性表示食品など、摂取する食品などの物質と、それによってもたらされる影響との間で普遍的に存在する概念であると考えられる。医薬品の場合も同様であり、例えば、がん治療薬として近年注目されている免疫チェックポイント阻害剤の効果が、患者の腸内細菌叢のパターンに依存することが報告され、腸内細菌叢のパターンが宿主免疫系に影響を与えることが理由であると考えられている。腸内環境は個々人で異なることから、有益な効果が期待されている食品(特定保健用食品や機能性表示食品などを含む)や医薬品などは、すべての人に一様な効果がもたらされる可能性は低く、レスポンダーとノンレスポンダーが存在することを認識する必要がある。
【0020】
また一方で、一部の食品やサプリメント、医薬品には、特定の腸内細菌や腸内細菌由来の代謝物質を増減させる効果があることが知られている。例えば、乳酸菌やビフィズス菌などを含むヨーグルトやぬか漬け、納豆などの発酵食品や整腸剤などのプロバイオティクスや、食物繊維やオリゴ糖を多く含むプレバイオティクスと呼ばれる食品やサプリメントは、腸内環境を変化させることが知られている。その他、運動習慣やアルコールの摂取、ストレス等の生活習慣によっても、腸内環境が変化することが知られている。
【0021】
ここで、研究・調査により特定の機能性物質に対してレスポンダーである人に共通する腸内環境パターンを見出し、これを「応答性腸内環境パターン」としてデータベース化することができる。応答性腸内環境パターンを見出す調査方法は既知の方法により行うことができるが、例えば、以下のような方法で行うことができる。
【0022】
複数人の被験者に所定期間にわたって機能性物質を摂取させ、摂取後に期待された効果が得られたかをアンケートや検査により調査する。当該調査結果を必要に応じて任意の統計手法を用いて解析し、効果が得られた者(レスポンダー)と効果が得られなかった者(ノンレスポンダー)とを分類する。また、機能性物質の摂取前~摂取後のいずれかの時点における被験者の便検体を採取し、腸内細菌叢又は代謝物質を調べる。そして、レスポンダーとノンレスポンダーとの間で、相対存在比が有意に異なる腸内細菌又は便含量が有意に異なる代謝物質等を測定することによって、レスポンダーに共通する応答性腸内環境パターンを見出すことができる。
【0023】
本発明は、上記のように所定の集団において、所定の効果に対するカバー率が高い組成物を提供するものである。本明細書において、組成物とは、複数の成分を含むものを意味する。本実施形態に係る組成物の形態としては、例えば、医薬品や食品添加剤、サプリメント、食品などの形態を挙げることができる。医薬品や食品添加剤、サプリメントの形態とする場合、その剤型としては、例えば、散剤、錠剤、糖衣剤、カプセル剤、顆粒剤、ドライシロップ剤、液剤、シロップ剤、ドロップ剤、ドリンク剤等の固形または液状の剤型を挙げることができる。
【0024】
下記実施形態に係る組成物が食品の場合は、菓子や飲料、ヨーグルト、加工食品、健康食品、乳幼児食品などの通常の飲食物の形態を挙げることができる。飲食物の形態とする場合は、通常の製造過程で、有効成分を添加して製造することができる。摂取量は任意の量、任意の摂取期間とすることができる。
【0025】
本実施形態に係る組成物をヒトや動物に対して用いる場合の摂取又は投与量は、例えば、1日あたり0.015g/kg体重以上を挙げることができる。係る摂取量は、1日1回に限らず、複数回に分割して摂取してもよい。摂取量は任意の量、任意の摂取期間とすることができる。
【0026】
例えば、組成物がヨーグルトの場合、所定の成分は乳酸菌であることができ、所定の効果としては便通改善が挙げられる。上記のヨーグルトの例に当てはめると、乳酸菌Xにより製造されたヨーグルトに対するノンレスポンダー(腸内環境タイプB)は乳酸菌Yに対するレスポンダーであるため、乳酸菌Xと乳酸菌Yを含有するヨーグルトとすることで、腸内環境タイプAのヒトと腸内環境タイプBのヒトの両方がそのヨーグルトのレスポンダーとなり、その結果、そのヨーグルトのカバー率を上げるものである。すなわち、本発明では、乳酸菌Xにより製造されたヨーグルトに対するノンレスポンダーを、乳酸菌Xとは別の素材を加えることによって、レスポンダーにすることができ、これによりそのヨーグルトのカバー率を上げるものである。
【0027】
この例において、便通改善効果を得るための乳酸菌以外の成分としては、例えば、食物繊維やオリゴ糖であることができ、ビタミン類やミネラル類等の他の物質であることができる。
【0028】
本明細書において「腸内環境パターン」とは、特定の腸内細菌の有無、及び相対存在比率、腸内細菌間のバランス、腸内代謝物質の有無、含有量、代謝物質間のバランス、便中タンパク質(消化酵素、抗菌ペプチド、ホルモン物質等を含むがこれに限られない)の有無や含有量、IgAなどの免疫関連物質の有無や含有量、便性状(例えば水分含量、硬さ、色など)およびこれらの組合せを指す。なお、前記腸内細菌はバクテリアに限定されるものではなく、古細菌、真菌、ウイルス(ファージ)を含むものとする。また、前記腸内代謝物質は腸内細菌が産生する代謝物質、腸内細菌の死菌体、食物残渣、宿主が分泌する物質などを含むものであり、主に便中から検出されるが、腸内容物など便以外から検出されてもよい。前記便中タンパク質は、腸内細菌が産生するタンパク質、食物残渣、宿主が分泌する物質(消化酵素、免疫グロブリン、抗菌ペプチド等)を含むものであり、主に便中から検出されるが、腸内容物など便以外から検出されてもよい。
【0029】
また、本明細書において「機能性物質」とは、摂取した場合に所定の効果をもたらすことが期待される食品(飲料も含む。以下同じ)であり、その形態は保健機能食品、健康補助食品、機能性表示食品、特定保健用食品又は特別用途食品である場合を含む。さらに「機能性物質」には、医薬品、サプリメントなども含む。なお、「食品」は、食材や、食材に含まれる特定の栄養素も含む。また、「医薬品」、「サプリメント」は、それらに含まれる有効成分(化合物)であってもよい。また、機能性物質が持つ所定の効果とは、例えば痩せる、太りにくくなる、血糖値が下がる、耐糖能が向上する、便通が良くなる、免疫力が向上する、アトピー・アレルギーが緩和される、肌の状態が良くなる、睡眠の質が向上する、記憶力が改善する、運動機能が改善する、抗鬱作用がある、など、摂取者の身体的・精神的な状態を変化させるものであればよい。なお、本実施形態における機能性物質の摂取者はヒトに限らず家畜やペット等の動物または蜂やカイコなどの産業動物にも適用可能である。
【0030】
<構成>
本発明の一実施形態に係る情報処理システムは、例えば、所定の集団において、所定の効果に対するカバー率が高い組成物を製造するための情報をユーザ端末に提供するものである。
図1に示されるように、本実施形態に係るシステムは、サーバ1を備える。サーバ1は、インターネット等のネットワークを介してユーザ端末2が接続される。
図1には、説明の便宜のために、1つのユーザ端末2が図示されているが、複数の端末が本システムのネットワークに接続可能である。
【0031】
<ハードウェア構成>
本実施形態において、サーバ1とユーザ端末2とは、以下のようなハードウェア構成を有する。なお、以下の構成は一例であり、これ以外の構成を有していても良い。
【0032】
<サーバ1>
図2は、サーバ1のハードウェア構成を示す図である。サーバ1は、例えば、ワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、或いはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。
【0033】
サーバ1は、少なくとも、プロセッサ10、メモリ11、ストレージ12、送受信部13、入出力部14等を備え、これらはバス15を通じて相互に電気的に接続される。
【0034】
プロセッサ10は、サーバ1全体の動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御、及びアプリケーションの実行に必要な情報処理等を行う演算装置である。例えばプロセッサ10はCPU(Central Processing Unit)であり、ストレージ12に格納されメモリ11に展開されたプログラム等を実行して各情報処理を実施する。
【0035】
メモリ11は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶と、フラッシュメモリやHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶と、を含む。メモリ11は、プロセッサ10のワークエリア等として使用され、また、サーバ1の起動時に実行されるBIOS(Basic Input / Output System)、及び各種設定情報等を格納する。
【0036】
ストレージ12は、アプリケーション・プログラム等の各種プログラムを格納する。各処理に用いられるデータを格納したデータベースがストレージ12に構築されていてもよい。
【0037】
送受信部13は、サーバ1をネットワーク3に接続する。なお、送受信部13は、Bluetooth(登録商標)及びBLE(Bluetooth Low Energy)の近距離通信インタフェースを備えていてもよい。
【0038】
入出力部14は、必要に応じて使用するキーボード・マウス類等の情報入力機器、およびディスプレイ等の出力機器である。
【0039】
バス15は、上記各要素に共通に接続され、例えば、アドレス信号、データ信号及び各種制御信号を伝達する。
【0040】
<ユーザ端末2>
ユーザ端末2は、サーバ1と通信を介して情報処理を実行する。ユーザ端末2は、例えば、組成物を製造するシステムを制御するための端末であることができる。ユーザ端末2は、例えば、ワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータであってもよいし、スマートフォン等の携帯通信機器等であってもよい。
【0041】
図3は、本発明のシステムにおけるサーバ1のソフトウェア構成例を示す図である。サーバ1は、取得部111、算出部112、判断部113、探索部114、情報提供部115、応答性腸内環境情報記憶部121、カバー率記憶部122、取得情報記憶部123、付加情報記憶部124を備えることができる。
【0042】
なお、取得部111、算出部112、判断部113、探索部114、情報提供部115は、サーバが備えるプロセッサ10がストレージ12に記憶されているプログラムをメモリ11に読み出して実行することにより実現され、応答性腸内環境情報記憶部121、カバー率記憶部122、取得情報記憶部123、付加情報記憶部124は、メモリ11及びストレージ12の少なくともいずれかにより提供される記憶領域の一部として実現される。
【0043】
応答性腸内環境情報記憶部121は、特定の機能性物質と、当該機能性物質の効果を得ることのできる応答性腸内環境パターンの特徴との組み合わせを含む。すなわち、過去の研究により、機能性物質の効果を得ることができるレスポンダーに共通する腸内環境パターンが明らかになっている場合に、当該レスポンダーに共通する腸内環境パターンの特徴を「応答性腸内環境パターン」としてデータベース化したものである。
【0044】
図4は、応答性腸内環境情報記憶部121に記憶された応答性腸内環境情報の構成例である。応答性腸内環境情報は、機能性物質ごとに付与されたIDに紐づけて、機能性物質のカテゴリ情報(食品、サプリメント、医薬品など)、機能性物質の摂取によって得られる効果(便秘が解消する、痩せる、耐糖能が上がる、など)、及び応答性腸内環境パターン情報を含むことができる。応答性腸内環境パターン情報とは、特定の腸内細菌の有無又は存在量・相対存在比率、腸内細菌間のバランス(特定の腸内細菌同士の存在比率など)、腸内代謝物質の有無、含有量、代謝物質間のバランス、便中タンパク質の有無や含有量、便性状(例えば水分含量、硬さ、色など)等であってよい。また、腸内細菌はその属(プレボテラ属細菌など)や種(プレボテラ コプリなど)等、特定の方法は問わない。
【0045】
また、腸内細菌の相対存在比率や腸内細菌間バランス、代謝物質の含有量や代謝物質間バランスなどは、レスポンダーであると判断する範囲を数値(閾値)によって規定することができる。閾値は、当該機能性物質を摂取した場合に効果がある群とない群とを判別するためのカットオフ値であり、適宜定めることができる。前記カットオフ値は、決定木、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰等の機械学習アルゴリズムを適宜選択して算出してもよいし、効果がある群とない群の値の分布から適宜判断してもよい。より具体的には、例えば、感度と偽陽性率(1-特異度)の関係を、ROC分析することにより求めることができる。
【0046】
感度とは、例えば、真の状態が増加する群である予測対象を正しく増加する群であると予測している割合である。特異度とは、真の状態が増加しない群である予測対象を正しく増加しない群であると予測している割合である。ROC分析においては、まず、カットオフ値を連続的に変化させたときの、感度と偽陽性率の値を求める。そして、縦軸(Y軸)を感度とし、横軸(X軸)を偽陽性率とするグラフ上に、求めた感度および偽陽性率の値をプロットし、当該プロットした点の中から、感度1、特異度0の点に最も近い点を選択する方法、すなわち(1-感度)2+偽陽性率2が最小になるような感度および特異度の組合せを決定する。このように決定した感度および特異度の組合せに対応するカットオフ値を、最終的なカットオフ値として設定することができる。なお、感度および特異度の組合せの決定の仕方は、前述した(1-感度)2+偽陽性率2が最小になるような組合せに決定するという方法に限定されず、例えば、感度と特異度の積が最大になるような組合せに決定するという方法であってもよいし、(感度+特異度)÷2が最大になるような組合せに決定するという方法であってもよい。
【0047】
カバー率記憶部122は、所定の集団において所定の効果を有する成分ごとのカバー率を所定の応答性腸内環境パターンと共に記憶する。
図5は、所定の効果を有する食品におけるカバー率記憶部122に記憶されるカバー率リストの構成例である。カバー率リストは、各効果等の識別情報に対して紐づけて、成分ごとのカバー率と応答性腸内環境パターンの情報を含むことができる。例えば、効果aを有する成分としては成分A-Dがあり、各成分に固有のカバー率と応答性腸内環境パターンが紐づけられている。なお、前記所定の集団とは異なる所定の集団を対象とする場合、前記カバー率と前記応答性腸内環境パターンは、異なる内容になると考えられる。
【0048】
取得情報記憶部123は、取得部111が取得した情報を記憶する。取得情報記憶部123に記憶された情報は、情報提供部115によってユーザ端末2等に提供される。取得された情報は、例えば、取得部111で取得された所定の集団における所定の効果と、その所定の効果を見込める腸内環境パターンに関する情報、算出部112で算出されたカバー率、判断部113で判断された結果、探索部114で取得された情報である。
【0049】
付加情報記憶部124は、例えば、上記取得情報に付加する情報を記憶する。付加情報は、例えば、各成分が有する他の効果の情報や、その成分の入手先、その成分を含有する組成物に適した形態やその製造方法であることができる。その形態が食品や食材である場合には、当該食材が含まれる食品や、食材を使ったレシピ情報であることができる。また、その組成物を摂取する頻度や量であってもよく、組成物がサプリメントや医薬品である場合には、当該サプリメントや医薬品の用量・用法などの使用上の注意などを含んでもよい。また、付加情報記憶部124は、成分の性状に関する情報、例えば、成分が水溶性、粉状、固形、液体である、温度の条件(例えば、失活する温度、凝固する温度等)を含むことができる。このような情報をデータベースにおいて付加しておくことによって、成分を選択するときの精度を向上させることができる。
【0050】
取得部111は、組成物が含有することとなる複数の成分における、所定の効果を見込める腸内環境パターンを取得する。すなわち、所定の集団における所定の効果と、その所定の効果を見込める腸内環境パターンに関するデータを取得する。取得部111は、解析済みの腸内細菌パターン情報をユーザ端末2やサーバ1内(例えば応答性腸内環境情報記憶部121やカバー率記憶部122など)、若しくは別のデータサーバを介して入手してもよい。また、臨床試験で取得してもよい。
【0051】
算出部112は、取得した腸内環境パターンのカバー率を算出する。算出部112は、腸内環境パターンを取得するたびにカバー率を算出してもよく、また、カバー率記憶部122などのデータベースからカバー率を取得してもよい。算出部112は、算出したカバー率を判断部113に伝える。
【0052】
判断部113は、算出されたカバー率が基準値(例えば、90%)以上かどうかを判断する。基準値は、適宜設定することができる。判断部113は、カバー率が基準値以上かどうかを情報提供部115に伝える。
【0053】
探索部114は、カバー率記憶部122に記憶された情報から、所定の効果が見込める成分を探索する。例えば、探索部114は、成分Aの効果aが見込める腸内環境パターンXがある場合に、腸内環境パターンX以外の腸内環境パターンに効果aが見込める成分A以外の他の成分を探索する。
【0054】
情報提供部115は、取得され、取得情報記憶部123に記憶された情報を、例えば、ユーザ端末2に提供する。取得された情報は、例えば、取得部111で取得された所定の集団における所定の効果と、その所定の効果を見込める腸内環境パターンに関する情報、算出部112で算出されたカバー率、判断部113で判断された結果、探索部114で取得された情報である。必要に応じて、各情報に上記の付加情報を追加してもよい。
【0055】
<動作フロー>
以下、本発明の一実施形態に係る情報処理システムにおけるサーバ1の動作フローについて
図6をもとに説明する。
図6は、サーバ1において実行される組成物における成分の選択を行う処理の流れを示す図である
【0056】
まず、取得部111は、所定の効果aを有する成分Aが、効果aをもたらすと考えられる腸内環境パターンXを取得する(S101)。腸内環境パターンXは、応答性腸内環境情報記憶部121に記憶された応答性腸内環境情報やその他のデータベース、文献情報、臨床試験の結果などから取得することができる。
【0057】
算出部112は、取得した腸内環境パターンXのカバー率を算出する(S102)。カバー率の算出は、腸内環境パターンを取得するたびにカバー率を算出してもよく、また、カバー率記憶部122などのデータベースからカバー率を取得してもよい。もしくは、この時に各々の腸内環境パターンが既知である人(または動物など)たちから構成される新たな所定の集団の情報が与えられてもよく、前記所定の集団に対する腸内環境パターンX+Yのカバー率を算出してもよい。算出されたカバー率が基準値(例えば、90%)以上かどうかを判断し、基準値を満たさない場合(S103=No)はカバー率が低いと判断して、S104に進む。一方で、カバー率が基準値以上の場合(S103=Yes)、S108に進む。
【0058】
探索部114は、カバー率記憶部122に記憶された情報から、効果aが見込める他の成分を探索する(S104)。効果aが見込める他の成分として成分Bが該当した場合、成分Bが、効果aをもたらすと考えられる腸内環境パターンYを取得する(S105)。腸内環境パターンYは、腸内環境パターンXと同様に、応答性腸内環境情報記憶部121に記憶された応答性腸内環境情報やその他のデータベース、文献情報、臨床試験の結果などから取得することができる。
【0059】
算出部112は、取得した腸内環境パターンX+Yのカバー率を算出する(S106)。カバー率は、腸内環境パターンXのカバー率と、腸内環境パターンYのカバー率の合計であってもよく、それぞれのカバー率またはカバー率の合計に所定の係数を掛けたものであってもよく、あるいは腸内環境パターンXと腸内環境パターンYに重複する部分がある場合はそれを考慮した数値でも良い。カバー率は、このステップで算出してもよく、また、カバー率記憶部122に記憶されたカバー率リストなどのデータベースからカバー率を取得してもよい。なお、ここでカバー率を計算する対象の集団は、S102で対象とした集団であることが原則だが、この時に各々の腸内環境パターンが既知である人(または動物など)たちから構成される新たな所定の集団の情報が与えられてもよく、前記所定の集団に対する腸内環境パターンX+Yのカバー率を算出してもよい。
【0060】
次に、算出されたカバー率が基準値(例えば、90%)以上かどうかを判断し、カバー率が基準値以上の場合(S107=Yes)、S108に進む。一方で、基準値を満たさない場合(S107=No)はカバー率が低いと判断して、S104に進む。S104では、再度、カバー率記憶部122に記憶された情報から、効果aが見込める他の成分を探索する(S104)。効果aが見込める他の成分として成分Cが該当した場合、成分Cの腸内環境パターンZを取得し、その後S106で腸内環境パターンX+Y+Zのカバー率を算出する。ここで、成分Bを用いずに成分Aと成分Cのみを用いる場合には、腸内環境パターンX+Zのカバー率を算出する。その後、S107でカバー率が基準値以上であるかを判断し、基準値を満たさない場合には、再度S104に戻って次の成分を探索することができる。この場合、カバー率が基準値以上となり、かつ、組成物が含有する成分の数が最小になるように適宜選択することができる。
【0061】
情報提供部115は、取得情報記憶部123に記憶された情報を、例えば、ユーザ端末2に提供する(S108)。必要に応じて、各情報に上記の付加情報を追加してもよい。そして、ユーザ端末2に提供されたデータに基づき、所定の効果aを有する複数の成分を含有する組成物を製造する(図示せず)。
【0062】
以上が、本発明の実施形態に係る情報処理システムおよび情報処理方法の基本的な説明である。本発明によれば、所定の効果(機能性)を有する成分を含有する組成物に対して、その効果を有さない対象者(すなわち、ノンレスポンダー)に対し、その効果をもたらすと考えられる別の成分をデータベースや文献調査等により探索し、この別の成分も含有するものとすることができる。これにより、所定の集団において、所定の効果に対するカバー率が高い組成物を提供することができる。このように、本発明は、新たな設計方法により、所定の集団において、所定の効果に対するカバー率が高い機能性物質を提供するものである。
【0063】
図6に示すように、上述した実施形態では、所定の効果aを有する成分Aの選択から開始し、所定のカバー率を満たし、かつ成分の数が最小になるように選択する例を示したが、カバー率を最大化し、かつ成分の数が所定の数以下になるように適宜選択することができる。また、成分の数を限定せずに、カバー率が最大になるように成分を適宜選択することができる。
【0064】
なお、上述した実施形態において、所定の効果aを有する成分の全てが組成物に対して適用できる訳ではない。例えば、所定の組成物が「ヨーグルト」であった場合に、所定の効果aが便通改善効果であり、成分Aがビフィズス菌BB536、成分BがLB81乳酸菌、成分Cがラクリスであることができるが、ここに便通改善効果のための他の成分としてヨーグルトが不味くなるような成分(例えば、成分として「醤油」)を含有しないことが好ましい。
【0065】
また、上述した実施形態において、組成物は、それぞれの成分の効果を妨げるような成分を含有しないことが好ましい。例えば、所定の組成物が「ヨーグルト」であった場合に、乳酸菌の働きを阻害したり、菌材であれば互いに競合たり、正反対の効果を有する成分だったり、混ぜたら明らかに不味くなるような成分は好ましくない。
【0066】
上記の成分に関する情報は、例えば、カバー率記憶部122や付加情報記憶部124に記憶させることができ、また、他の記憶部に記憶させることができる。サーバ1がこのような情報を有することによって、成分を選択するときの精度を向上させることができる。
【0067】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 サーバ
2 ユーザ端末
3 ネットワーク
【要約】
【課題】所定の集団において、所定の効果に対するカバー率が高い組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る組成物は、所定の効果を有する2つ以上の成分を含有する組成物であって、前記各成分が、所定の集団において、前記効果が期待できる対象者の割合を示すカバー率の合計が所定の割合以上になるように選択されることができる。
【選択図】
図6