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特許7336172水素システムの制御装置、水素生成システム、及び水素システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】水素システムの制御装置、水素生成システム、及び水素システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/023 20210101AFI20230824BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20230824BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20230824BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230824BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20230824BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20230824BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20230824BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
C25B15/023
C01B3/02 H
C25B1/04
C25B9/00 A
H01M8/0438
H01M8/04858
H01M8/0656
H02J3/38 120
H02J3/38 130
H02J3/38 170
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020009186
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021116442
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-03-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2016年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/再エネ利用水素システムの事業モデル構築と大規模実証に係る技術開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】田丸 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 剛史
(72)【発明者】
【氏名】山根 史之
(72)【発明者】
【氏名】栗田 大史
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-180281(JP,A)
【文献】特開2003-257458(JP,A)
【文献】特開2006-037226(JP,A)
【文献】特開2006-236741(JP,A)
【文献】特開2016-096151(JP,A)
【文献】特開2016-140161(JP,A)
【文献】特開2016-208694(JP,A)
【文献】特開2017-027936(JP,A)
【文献】特開2017-034843(JP,A)
【文献】特開2017-076611(JP,A)
【文献】特開2017-225273(JP,A)
【文献】特開2018-085861(JP,A)
【文献】特開2019-161840(JP,A)
【文献】国際公開第2018/078812(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0049021(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1829311(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第108155662(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/02
C25B 1/00 - 15/08
H02J 3/00 - 5/00
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギー発電装置から供給される発電電力を出力電力に変換する変換部と、前記出力電力および電力系統から供給される電力を加えた入力電力により水素を製造する水素製造装置とを、制御する水素システムの制御装置であって、
前記水素製造装置が製造する水素を貯蔵する水素貯蔵装置の貯蔵量に関する水素貯蔵情報を取得する取得部と、
前記水素貯蔵情報に基づき、前記出力電力を調整する制御を前記変換部に行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記入力電力、及び前記出力電力がともに減少、または増加するように前記入力電力、及び前記出力電力を演算する演算部を有し、
前記演算部は、前記入力電力の時間に対する変化量と、前記出力電力の時間に対する変化量とが一致するように、前記入力電力と、前記出力電力とを演算する、
水素システムの制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記出力電力を抑制する制御を前記変換部に行うと共に、水素製造量を抑制する制御を前記水素製造装置に行う、請求項1に記載の水素システムの制御装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記水素貯蔵装置の水素貯蔵量が所定値を超えた場合に、前記水素貯蔵装置の水素貯蔵量が増加するに従い、前記入力電力、及び前記出力電力が減少するように前記入力電力、及び前記出力電力を演算し、
前記制御部は、
前記入力電力に基づく第1指令信号を前記水素製造装置に出力し、前記出力電力に基づく第2指令信号を前記変換部に出力する出力部を更に有する、請求項1に記載の水素システムの制御装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記再生可能エネルギー発電装置から前記電力系統に所定範囲の電力を供給する場合に、前記水素製造装置を停止させる時点、又は前記水素製造装置を停止させる前に前記入力電力が0に近づくように演算する、請求項に記載の水素システムの制御装置。
【請求項5】
前記水素貯蔵情報は前記水素貯蔵装置が有する水素貯蔵タンク内の圧力であり、
前記演算部は、前記圧力の大きさに応じて、時系列に前記入力電力及び前記出力電力を変化させるように演算する、請求項3又は4に記載の水素システムの制御装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記水素貯蔵装置から供給される水素供給量を取得し、
前記演算部は、前記水素供給量にも基づき、前記入力電力、及び前記出力電力を演算する、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の水素システムの制御装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記水素貯蔵装置から供給すべき水素供給量の計画値を取得し、
前記演算部は、前記計画値にも基づき、前記入力電力、及び前記出力電力を演算する、請求項3乃至6のいずれか一項に記載の水素システムの制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記水素貯蔵タンク内の圧力と前記水素貯蔵装置の外気温度とに基づき、前記水素貯蔵タンク内の前記圧力の変動量を推定する圧力推定部を有し、
前記演算部は、前記圧力の変動量に基づき、前記前記入力電力、及び前記出力電力を演算する、請求項5に記載の水素システムの制御装置。
【請求項9】
前記取得部は、前記出力電力の一部を用いて駆動する補機電力の情報も取得し、
前記演算部は、前記補機電力の変動量に基づき、前記前記入力電力、及び前記出力電力を演算する、請求項3に記載の水素システムの制御装置。
【請求項10】
再生可能エネルギー発電装置と、
前記再生可能エネルギー発電装置から供給される電力を出力電力に変換する変換部と、
前記出力電力および電力系統から供給される電力を加えた入力電力により水素を製造する水素製造装置と、
前記変換部及び前記水素製造装置を制御する水素システムの制御装置と、を備える水素生成システムであって、
前記制御装置は、
前記水素製造装置が製造する水素を貯蔵する水素貯蔵装置の貯蔵量に関する水素貯蔵情報を取得する取得部と、
前記水素貯蔵情報に基づき、前記出力電力を調整する制御を前記変換部に行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記入力電力、及び前記出力電力がともに減少、または増加するように前記入力電力、及び前記出力電力を演算する演算部を有し、前記入力電力、及び前記出力電力を演算する演算部を有し、
前記演算部は、前記入力電力の時間に対する変化量と、前記出力電力の時間に対する変化量とが一致するように、前記入力電力と、前記出力電力とを演算する、
水素生成システム。
【請求項11】
再生可能エネルギー発電装置から供給される電力を出力電力に変換する変換部と、前記出力電力および電力系統から供給される電力を加えた入力電力により水素を製造する水素製造装置とを制御する水素システムの制御方法であって、
前記水素製造装置が製造する水素を貯蔵する水素貯蔵装置の貯蔵量に関する水素貯蔵情報を取得する取得工程と、
前記水素貯蔵情報に基づき、前記出力電力を調整する制御を前記変換部に行う制御工程と、を備え、
前記制御工程は、
前記入力電力、及び前記出力電力がともに減少、または増加するように前記入力電力、及び前記出力電力を演算する演算工程を有し、
前記演算工程は、前記入力電力の時間に対する変化量と、前記出力電力の時間に対する変化量とが一致するように、前記入力電力と、前記出力電力とを演算する、
水素システムの制御方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水素システムの制御装置、水素生成システム、及び水素システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギー発電装置の電力を用いて、水素を製造する水素システムが一般に知られている。このような水素システムでは、電力系統に供給する電力の需給バランスを調整しつつ、水素の製造が行われる。
【0003】
一方で、所定時間後(例えば5分後)の電力系統に供給する電力供給量の調整が求められる。この場合、計画した電力の所定範囲に例えば5分間隔で計測される電力を調整する必要がある。ところが、水素システムが有する水素貯蔵装置の貯蔵量が所定値を超えると、水素製造装置を停止させる制御が行われる。また、貯蔵量が下限に達すると補機を停止させる場合がある。これにより、水素製造装置、及び補機などが急峻に停止すると、電力系統に供給する瞬時電力の変動が大きくなり、電力供給量の調整に失敗する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-85862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、水素製造装置が生成した水素の貯蔵量に応じて再生可能エネルギー発電装置における出力電力の調整が可能な水素システムの制御装置、水素システム、及び水素システムの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る水素システムの制御装置は、再生可能エネルギー発電装置から供給される発電電力を出力電力に変換する変換部と、出力電力および電力系統から供給される電力を加えた入力電力により水素を製造する水素製造装置とを、制御する水素システムの制御装置であって、水素製造装置が製造する水素を貯蔵する水素貯蔵装置の貯蔵量に関する水素貯蔵情報を取得する取得部と、水素貯蔵情報に基づき、出力電力を調整する制御を変換部に行う制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、水素製造装置が生成した水素の貯蔵量に応じて再生可能エネルギー発電装置における出力電力の調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】水素システムの構成を示すブロック図。
図2】制御装置の構成を示すブロック図。
図3】需給調整時間帯における制御部の制御例を示す図
図4】停止時における入力電力の瞬時電力への影響を説明する図。
図5】水素製造量を抑制する場合の制御例を示す図。
図6】水素貯蔵タンク圧力に応じて変化量を演算する例を示す図。
図7図6で示す変化量で制御した例を示す図。
図8】制御例を示すフローチャート。
図9】第2実施形態に係る制御装置のブロック図。
図10】補正した入力電力、出力電力による制御例を示す図。
図11】第3実施形態に係る制御装置のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る水素システムの制御装置、水素生成システム、及び水素システムの制御方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
(第1実施形態)
【0010】
図1は、第1実施形態に係る水素生成システム1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る水素生成システム1は、水素を生成するシステムであり、水素システム10と、エネルギー管理システム20と、制御装置30とを備えている。図1では、更に電力系統Epsが図示されている。電力系統Epsは、例えば電力会社が管理する送配電網である。
【0011】
水素システム10は、水素システム10内の再生可能エネルギー発電装置が生成する発電電力を電力系統Epsに供給する。また、水素システム10は、発電電力の一部により水素を製造する。水素システム10の詳細は後述する。
【0012】
エネルギー管理システム20は、水素システム10の運転計画を作成するシステムである。運用計画は、一般には1日を30分単位で分割した48分割の運転計画である。例えば、エネルギー管理システム20は、時間区間毎における電力系統Epsからの目標受電電力量、再生可能エネルギー発電装置の予測発電電力、水素製造量などの情報を含む指令信号を制御装置30に出力する。なお、目標受電電力量は、プラス(+)のときは受電を意味し、マイナス(-)のときは売電、すなわち逆潮流を意味する。
【0013】
制御装置30は、エネルギー管理システムが作成する運転計画に基づき、水素システム10を制御する制御装置である。制御装置30の詳細は後述する。
【0014】
ここで、水素システム10の構成を説明する。水素システム10は、再生可能エネルギー発電装置10a、パワーコンディショナ10b、水素製造装置10c、水素貯蔵装置10d、及び補機10eを有する。図1では、さらに水素負荷HRが図示されている。
【0015】
再生可能エネルギー発電装置10aは、自然エネルギー由来の発電設備を有する。この再生可能エネルギー由来の発電設備は、例えば太陽光を用いた太陽光発電装置である。再生可能エネルギー発電装置10aは、発電電力Pvの交流電力値の情報を含む測定信号を制御装置30に出力する。
【0016】
再生可能エネルギー発電装置10aは、化石燃料などの燃料が不要であるが、その発電量は天候などの環境の影響を受けるため不安定である。なお、再生可能エネルギー発電装置10aは、風力発電設備でもよく、或いはバイオマスやバイオマス由来廃棄物などの新エネルギーを利用した発電設備でもよい。
【0017】
パワーコンディショナ10bは、例えばコンバータを含んで構成される。このコンバータは、例えば再生可能エネルギー発電装置10aが出力した直流の発電電力Pvを交流の出力電力Pcs(k)に変換する。より具体的には、パワーコンディショナ10bは、制御装置30から入力され出力電力Pcs(k)の情報を含む指令信号に従い、発電電力Pv(k)を所定値に変換した出力電力Pcs(k)を水素製造装置10cに供給する。すなわち、パワーコンディショナ10bが出力する出力電力Pcs(k)の大きさは制御装置30に調整される。なお、本実施形態に係るパワーコンディショナ10bが変換部に対応する。ここで、kは時間を意味する。
【0018】
水素製造装置10cは、整流器へ供給された電気と、水とを用いて、水電解により水素を製造する。この水素製造装置10cは、パワーコンディショナ10bが出力する出力電力Pcsと電力系統Epsから供給される瞬時電力Pとを合わせた電力の一部である入力電力Eにより水素を製造する。また、水素製造装置10cは、例えばアルカリ性の溶液に電流を流すことにより、水素及び酸素を製造する電気水分解装置である。さらにまた、水素製造装置10cは、水素配管を介して、生成した水素量H(k)を、水素貯蔵装置10dに蓄える。
【0019】
水素貯蔵装置10dは、水素製造装置10cにより製造された水素を蓄える。この水素貯蔵装置10dは、例えば水素貯蔵タンクを有する。また、水素貯蔵タンク内の水素圧力の情報は制御装置30に出力される。
【0020】
水素貯蔵装置10dは、水素製造装置10cと、水素負荷HRと、に配管を介して接続される。また、水素貯蔵装置10dは、配管を介して、水素負荷HRに水素を供給する。水素負荷HRは、例えば燃料電池発電装置、燃料電池自動車などである。なお、再生可能エネルギー発電装置10a及びパワーコンディショナ10bは水素システム10外に配置してもよい。すなわち、水素システム10は、再生可能エネルギー発電装置10a及びパワーコンディショナ10bを含まない構成でもよい。
【0021】
補機10eは、水素製造装置10cが水素を製造するために必要とする装置である。例えば、水素製造装置10cに水を供給するポンプなどである。水素製造装置10cの空調設備、水素貯蔵装置10dにおける水素貯蔵タンクの圧縮機などである。補機10eは、例えば、パワーコンディショナ10bが出力する出力電力Pcsと電力系統Epsから供給される瞬時電力Pとを合わせた電力の一部である補機電力Apにより駆動する。
【0022】
図2は、制御装置30の構成を示すブロック図である。図2に示すように、制御装置30は、記憶部30aと、インターフェース部30bと、制御部30cとを有する。
【0023】
記憶部30aは、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク等により実現される。この記憶部30aは、制御部30cが実行するプログラムと、各種の制御用のデータを記憶する。
【0024】
インターフェース部30bは、再生可能エネルギー発電装置10a(図1)、水素製造装置10c(図1)、及び水素貯蔵装置10d(図1)、エネルギー管理システム20(図1)と通信する。これにより、インターフェース部30bは、瞬時電力P(k)、発電電力Pv(k)、出力電力Pcs(k)、水素製造量H(k)、及び水素貯蔵量Hs(k)の測定値を水素システム10から取得する。水素貯蔵量Hs(k)は、水素貯蔵装置10dの水素貯蔵タンク内の貯蔵量を意味する。
【0025】
例えば、水素貯蔵量Hs(k)は、水素貯蔵タンク内の圧力に応じて換算される。また、水素貯蔵タンクには水素貯蔵時の上限圧力が設定される。例えば、上限圧力は、0.8メガパスカルである。また、インターフェース部30bは、需給調整時間帯、ベース電力、目標とする出力変化量ΔkWの情報をエネルギー管理システム20から取得する。
【0026】
制御部30cは、例えばCPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、記憶部30aに記憶されるプログラムに基づき、制御を実行する。この制御部30cは、演算部302と、出力部304とを、有する。演算部302は、水素製造抑制量算出部306と、指令値演算部308とを有する。
【0027】
演算部302は、需給調整時間帯、ベース電力、及び出力変化量ΔkWの情報に基づき、水素製造量H(k)、入力電力E(k)、出力電力Pcs(k)、瞬時電力P(k)を演算する。水素製造量H(k)と入力電力E(k)には、例えば(1)式に示す関係があり、水素製造量H(k)から入力電力E(k)を演算可能である。
H(k)=η×E(k) (1)
また、瞬時電力P(k)は、例えば入力電力E(k)と補機電力Ap(k)を合わせた電力から出力電力Pcs(k)を減じた値である。
【0028】
出力部304は、水素製造量H(k)に基づく入力電力E(k)の情報を有する第1指令値を水素製造装置10cに出力し、出力電力Pcs(k)の情報を有する第2指令値をパワーコンディショナ10bに出力する。これらの第1指令値、及び第2指令値に応じて、水素製造装置10c、及びパワーコンディショナ10bが制御される。
【0029】
図3は、需給調整時間帯における制御部30cの制御例を示す図である。下図は、想定需要と実績需要との関係を示している。下図の縦軸は電力の需要量を示し、横軸は時間を示している。ラインL10が電力の需要実績の時系列値を示す。また、横棒B10が予め事業者が想定した電力の想定需要を示し、横棒B12が電力の需要実績を示す。すなわち、下図では、事業者が想定した電力の想定需要よりも需要実績の方が少ないことを示している。
【0030】
ここで、需給調整時間帯は、エネルギー管理システム20から需給調整指令が発令される時間帯を意味する。需給調整指令とは、目標とする出力変化量ΔkWに現在のベース電力から瞬時電力Pを変化させる指令である。需給調整時間帯の中でいつ指令が来るか決まっておらず、需給調整の指令が来ない場合は需給調整できる状態で待機しておく必要がある。ベース電力とは、この待機状態での瞬時電力Pを意味する。図3の上図では、指令値が発令される前の瞬時電力Pに対応する。
【0031】
図3の上図は、縦軸は、横棒B10の値を0としたときの横棒B10と横棒B12との差分の絶対値を示し、横軸は、時間を示す。指令値は、ベース電力に出力変化量ΔkWを加算した値である。すなわち、ラインL20は、横棒B10の値を0としたときの横棒B10と横棒B12との差分の絶対値を示す。
【0032】
図3の上図に示すように、需給調整時間帯では、出力変化量ΔkWの±10%以内に5分間隔で計測される瞬時電力Pを収める必要がある。すなわち、需給調整時間帯では、制御部30cは瞬時電力Pを出力変化量ΔkWの±10%以内に制御する必要がある。このように、需給調整時間帯では電力変化量が評価される。
【0033】
また、需給調整時間帯に入る前に、事前審査時間として例えば180分が設定される。また、事前審査時間の前に例えば60分が設定される。この60分の中には一般に応答時間が含まれる。応答時間は、需給調整指令が発令されてから、ベース電力から指令値に瞬時電力Pが達するまでの時間である。事前審査時間と前の60分を合わせて、事前審査対象時間と称する。事前審査時間では、出力変化量ΔkWの±10%以内に5分間隔で計測される出力電力を収めることができるか否かを審査される。また、応答時間も審査され、短時間でベース電力から指令値に達するに従い評価が高くなる。このように、事前審査時間では、制御部30cは瞬時電力Pを出力変化量ΔkWの±10%以内に制御する必要がある。
【0034】
ここで、演算部302の詳細を説明する。特に需給調整時間帯における瞬時電力Pを出力変化量ΔkWの±10%以内に制御するために、水素製造装置10cの停止時における入力電力E(k)の影響を抑制する制御例を説明する。
【0035】
まず、図4により水素製造装置10cの停止時における入力電力E(k)の瞬時電力P(k)への影響を説明する。図4は、水素製造装置10cの停止時における入力電力E(k)の瞬時電力P(k)への影響を説明する図である。縦軸は水素貯蔵タンクの圧力と電力を示し、横軸は、時間kを示す。
【0036】
制御部30cの制御により、時刻k-1までは入力電力E(k)、補機電力Ap(k)、出力電力Pcs(k)が一定となり、瞬時電力P(k)が所定値(ベース電力+出力変化量ΔkW)の電力と一致している。しかし、時刻kにおいて水素貯蔵タンク圧力が上限圧力(0.8)に到達し、水素製造装置10cが停止する。これにより、入力電力E(k)が急峻に0となる。このように、水素製造装置10cが急激に停止すると、制御部30cによる出力電力Pcs(k)を低減する制御が、入力電力E(k)の低減よりも遅れ、瞬時電力P(k)が所定値(ベース電力+出力変化量ΔkW)の電力を維持できなくなってしまう。
【0037】
このため、演算部302は、水素製造装置10cの停止時における入力電力E(k)の瞬時電力P(k)への影響を抑制するように、水素製造量H(k)と、出力電力Pcs(k)とを演算する。例えば、演算部302は、水素貯蔵装置10dの水素貯蔵量が所定値を超えた場合に、水素貯蔵装置10dの水素貯蔵量が増加するに従い、入力電力E(k)、及び出力電力Pcs(k)が減少するように入力電力E(k)、及び出力電力Pcs(k)を演算する。
【0038】
出力部304は、水素製造量H(k)に基づく第1指令値を水素製造装置10cに出力し、出力電力Pcs(k)に基づく第2指令値をパワーコンディショナ10bに出力する。
【0039】
水素製造抑制量算出部306は、水素貯蔵タンク圧力に応じて水素製造量を抑制する水素製造量H(k)の変化量ΔH(k)を演算する。水素製造抑制量算出部306は、例えば、水素貯蔵タンク圧力が所定より大きくなると、水素製造量H(k)を減少させる一定値の変化量ΔH(k)を演算する。例えば、水素製造抑制量算出部306は、入力電力E(k)が逐次的に減少することにより、入力電力E(k)が0になり、水素製造装置10cが停止する時点と、水素貯蔵タンクが満タン、すなわち上限圧力に達するタイミングが一致するように、一定値の変化量ΔH(k)を演算する。
【0040】
指令値演算部308は、水素製造抑制量算出部306が演算した水素製造量H(k)の変化量ΔH(k)に応じた水素製造装置10cの入力電力E(k)の減少量ΔE(k)を演算する。例えば、水素製造量H(k)と入力電力E(k)には、上述のように(1)式の関係がある。指令値演算部308は、入力電力の減少量ΔE(k)を(2)式を用いて演算可能である。
ΔE(k)=ΔH(k)/η (2)
【0041】
なお、本実施形態では、演算部302は、水素製造量H(k)の変化量ΔH(k)を演算するが、これに限定されない。例えば、入力電力の減少量ΔE(k)を、ΔH(k)を用いずに直接的に演算してもよい。
【0042】
指令値演算部308は、瞬時電力Pを一定に保持させるために入力電力E(k)の減少量ΔE(k)と出力電力Pcs(k)の減少量とを一致させる。例えば、指令値演算部308は、出力電力Pcs(k)の減少量を入力電力E(k)の減少量ΔE(k)に一致させる。この場合、指令値演算部308は、入力電力E(k)と出力電力Pcs(k)を(3)、(4)式に従い演算する。
E(k)=E(k-1)-ΔE(k) (3)
Pcs(k)=PCS(k-1)-ΔE(k) (4)
【0043】
このような演算処理により、Pcs(k)とE(k)との差分である瞬時電力P(k)は一定値で維持される。また、例えば、入力電力E(k)が計画的に減少することにより、入力電力E(k)が0になり、水素製造装置10cが停止する時点と、水素貯蔵タンクが満タンとなるタイミングが一致する。
【0044】
出力部304は、出力電力Pcs(k)の指示値PCSset(k)の情報を有する第1指令値を水素製造装置10cに出力し、入力電力E(k)の指示値Eset(k)の情報を有する第2指令値をパワーコンディショナ10bに出力する。
【0045】
図5は、水素製造量H(k)を抑制する場合の制御例を示す図である。図5の縦軸は水素貯蔵タンクの圧力と電力を示し、横軸は、時間kを示す。
【0046】
図5に示す制御例では、水素製造抑制量算出部306は、時刻k-3において水素貯蔵タンク圧力が閾値(0.6)に到達すると、水素製造装置10cが停止する時点と、水素貯蔵タンクが満タンとなるタイミングが一致するように、水素製造量H(k)の変化量ΔH(k)を演算する。続けて、指令値演算部308は、(1)~(4)式に従い、入力電力E(k)と出力電力Pcs(k)を演算する。貯蔵タンク圧力が閾値(0.6)に到達した後では、入力電力E(k)と出力電力Pcs(k)とは、ΔE(k)ずつ電力が減少する。このため、出力電力Pcs(k)と入力電力E(k)との差分である瞬時電力P(k)は一定値で維持される。
【0047】
また、補機の消費電力である補機電力Ap(k)は、一定値で維持される。このように、貯蔵タンク圧力が閾値(0.6)に到達した後では、入力電力E(k)の時間に対する変化量ΔE(k)と、出力電力Pcs(k)の時間に対する変化量ΔE(k)とを一致させ、且つ、水素製造量H(k)及び出力電力Pcs(k)を減少させる。これにより、水素貯蔵タンク圧力が上限圧力(0.8)に到達する際にも出力電力Pcs(k)と入力電力E(k)との差分値である瞬時電力Pは一定値で維持される。また、入力電力E(k)と出力電力Pcs(k)とを同一のΔE(k)により減少させ、貯蔵タンクが満タンになる前、又は、貯蔵タンクが満タンになるのと同時に入力電力E(k)を0にすることにより、水素製造装置10cが停止する時点においても瞬時電力Pを一定値に維持可能となる。このように、入力電力E(k)を時系列な変化に対し、出力電力Pcs(k)の時系列な変化を追随させながら入力電力E(k)を0にしているので、水素製造装置10cが停止する時点での入力電力E(k)の変動が瞬時電力P(k)へ与える影響が抑制される。さらにまた、貯蔵タンク圧力が閾値(0.6)に到達する前は、水素製造を優先することも可能である。
【0048】
図6は、水素貯蔵タンクの圧力に応じて変化量ΔH(k)を演算する例を示す図である。縦軸は、変化量ΔH(k)を示し、横軸は、圧力を示す。
【0049】
図5の例では、水素製造抑制量算出部306は、一定値の変化量ΔH(k)を演算したが、図6の例では、水素貯蔵タンク圧力に応じて変化量ΔH(k)を演算する点で相違する。閾値(0.6)に到達した時点で一定の大きさで水変化量ΔH(k)を演算する場合には、環境変化などにより水素貯蔵タンク圧力の変化が想定と異なる場合がある。一方で、水素貯蔵タンク圧力に応じて変化量ΔH(k)を演算すると、圧力に応じて変化量ΔH(k)を調整可能となるので、圧力の上限値(0.8)になる時点と水素製造装置10cの停止時を一致させる制御の精度をより向上させることができる。
【0050】
図7は、図6で示す水素貯蔵タンクの圧力に応じた変化量ΔH(k)で制御した例を示す図である。縦軸は水素貯蔵タンクの圧力と電力を示し、横軸は、時間kを示す。
【0051】
指令値演算部308が、入力電力E(k)と出力電力Pcs(k)を圧力に応じた変化量ΔH(k)を用いて(3)、(4)式に従い演算した例である。図7に示すように、圧力に応じた変化量ΔH(k)で制御することで、水素貯蔵タンク圧力の上限(0.8)まで水素製造が可能となる。すなわち、水素製造装置10cの停止時点と、水素貯蔵タンクの圧力が上限(0.8)に達する時点が一致している。
【0052】
図8は、制御装置30の制御例を示すフローチャートである。図8に示すように、まず、インターフェース部30bは、需給調整時間帯、ベース電力、目標とする出力変化量ΔkWの情報を含む計画値をエネルギー管理システム20から取得する(ステップS100)。
【0053】
次に、インターフェース部30bは、瞬時電力P(k)、発電電力Pv(k)、出力電力Pcs(k)、水素製造量H(k)、及び水素貯蔵量Hs(k)の測定値を水素システム10から取得する(ステップS102)。
【0054】
次に、制御部30cは、取得した計画値の情報に基づき、需給調整時間帯か否かを判定する(ステップS102)。需給調整時間帯でないと判定した場合(ステップS102のNO)、指令値演算部308は、瞬時電力P(k)がベース電力と一致するように、入力電力E(k)と出力電力Pcs(k)を演算する(ステップS104)。この場合、水素製造量H(k)は、計画値に従う。
【0055】
一方で、制御部30cは、需給調整時間帯であると判定した場合(ステップS104のYES)、水素貯蔵装置10dの水素貯蔵タンクの圧力が所定値(例えば0.6)以上か否かを判定する(ステップS108)。圧力が所定値未満であると判定した場合(ステップS108のNO)、指令値演算部308は、瞬時電力P(k)がベース電力+出力変化量ΔkWと一致するように、入力電力E(k)と出力電力Pcs(k)を演算する(ステップS110)。この場合、水素製造量H(k)は、計画値に従う。
【0056】
一方で、制御部30cは圧力が所定値以上であると判定した場合(ステップS106のYES)、水素製造抑制量算出部306は、水素製造量を時系列に抑制する変化量ΔH(k)を演算する(ステップS104)。続けて、指令値演算部308は、変化量ΔH(k)に基づき、瞬時電力P(k)がベース電力+出力変化量ΔkWと一致するように、入力電力E(k)と出力電力Pcs(k)を演算する(ステップS114)。
【0057】
次に、出力部304は、水素製造量H(k)に基づく入力電力E(k)の情報を有する第1指令値を水素製造装置10cに出力し、出力電力Pcs(k)の情報を有する第2指令値をパワーコンディショナ10bに出力する(ステップS116)。
【0058】
次に、制御部30cは、終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS118)。終了条件を満たすと判定した場合(ステップS118のYES)、制御部30cは、全体処理を終了する。一方で、終了条件を満たさないと判定した場合(ステップS118のNO)、制御部30cは、ステップS100からの処理を繰り返す。
【0059】
なお、本実施形態では、水素貯蔵タンク圧力の上限に対する水素製造量の抑制について示したが、水素貯蔵タンク圧力の下限)に対しても同様の処理を行ってもよい。例えば、水素貯蔵タンクの圧力が下限に近付くと水素製造量H(k)を増加させ、水素製造量の増加に伴う入力電力の増加量分を再エネ側の増加量とする制御行ってもよい。これにより、水素貯蔵タンクの圧力が下限、例えば空になった場合の圧縮機の停止などを避けることができ、瞬時電力を一定に保持させることができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、制御部30cが水素貯蔵装置10dの貯蔵量に関する水素貯蔵情報、すなわち圧力に基づき、出力電力Pcs(k)を調整する制御をパワーコンディショナ10bに行う。これにより、水素貯蔵装置10dの貯蔵量に応じて、出力電力Pcs(k)を制御することが可能となる。このため、水素貯蔵装置10dの貯蔵量が上限に達する前に、予め出力電力Pcs(k)を低減させたり、貯蔵量が下限に達する前に出力電力Pcs(k)を予め増加させたりできる。
【0061】
また、制御部30cが水素貯蔵装置10dの貯蔵量に関する水素貯蔵情報、に基づき、入力電力E(k)が0に近づくように抑制する制御を水素製造装置10cに行うと共に、出力電力Pcs(k)を抑制する制御をパワーコンディショナ10bに行う。これにより、水素製造装置10cが停止する際の入力電力E(k)が低減されているので、瞬時電力P(k)に対する変動を抑制できる。特に、入力電力E(k)を時系列に0にすることにより、水素製造装置10cが停止する時点においても瞬時電力Pを一定値に維持可能となる。
【0062】
(第1実施形態の変形例)
指令値演算部308は、インターフェース部30bで取得した補機電力Ap(k)の情報も用いて入力電力E(k)、出力電力Pcs(k)を(4A)式により演算する。補機電力変化量Δaux(k)は、Ap(k)とAp(k-1)との差分値である。
【0063】
Pcs(k)=Pcs(k-1)-ΔE(k)+Δaux(k) (4A)
これにより、補機電力Ap(k)が変化する場合にも、出力電力Pcs(k)をより高精度に演算可能となる。
(第2実施形態)
第2実施形態に係る水素生成システム1は、水素負荷HRに供給する水素供給量Hout(k)を用いて、入力電力E(k)、出力電力Pcs(k)を補正することで、第1実施形態に係る水素生成システム1と相違する。以下では、第1実施形態に係る水素生成システム1と相違する点を説明する。
【0064】
図9は、第2実施形態に係る制御装置30のブロック図である。図9に示すように、制御装置30は、指令値補正部310を更に有する。
【0065】
インターフェース部30bは、水素負荷HRに供給する水素供給量Hout(k)を更に取得する。
指令値補正部310は、指令値演算部308で演算された指令値を、水素供給量Hout(k)を用いて補正した指令値を演算する。
出力部304は、指令値補正部310で演算した補正した指令値を各装置に出力する。
【0066】
より具体的には、指令値補正部310は、入力電力E(k)に制限をかけ入力電力E(k)、出力電力Pcs(k)を演算する。例えば、水素供給量Hout(k)に基づき計算される入力電力制限値Emin(k)は、(5)式で演算される。
Emin(k)=η×Hout(k) (5)
指令値補正部310は、(6)式により補正した力電力E(k)演算する。
E(k)=max(E(k)、Emin(k)) (6)
これにより、水素供給量Hout(k)が維持される場合には、少なくとも入力電力制限値Emin(k)分の水素製造が維持可能となる。
【0067】
また、出力電力Pcs(k)は、(6)式で補正した入力電力E(k)と同じ変化量とすればよいため、(7)式で演算可能である。
Pcs(k)=Pcs(k-1)―(E(k)-E(k-1)) (7)
【0068】
出力部304は、出力電力Pcs(k)の指示値PCS_set(k)の情報を有する第1指令値を水素製造装置10cに出力し、入力電力E(k)の指示値Eset(k)の情報を有する第2指令値をパワーコンディショナ10bに出力する。
【0069】
図10は、補正した入力電力E(k)、出力電力Pcs(k)による制御例を示す図である。縦軸は水素貯蔵タンクの圧力と電力を示し、横軸は、時間kを示す。
【0070】
図10に示すように、入力電力制限値Emin(k)により、入力電力E(k)の低減可能な値に制限がかかっている。入力電力E(k)に制限がかかった状態では、水素製造装置10cから水素貯蔵タンクへ入る水素量と、水素貯蔵タンクから水素負荷HRへ出る水素量が一致している。
【0071】
以上説明したように、本実施形態では、水素供給量Hout(k)を用いて計算される入力電力制限値Emin(k)により、入力電力E(k)の低減可能な範囲に制限をかける。これにより、水素製造装置10cの水素製造が継続され、水素製造装置10cの水素製造が可能な状態での停止を回避することができる。
【0072】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る水素生成システム1は、水素貯蔵タンクの圧力を推定して、入力電力E(k)、出力電力Pcs(k)を演算することで、第2実施形態に係る水素生成システム1と相違する。以下では、第2実施形態に係る水素生成システム1と相違する点を説明する。
【0073】
図11は、第3実施形態に係る制御装置30のブロック図である。図11に示すように、制御装置30は、水素貯蔵タンク圧力推定部312、設定パラメータ変更部314を更に有する。
【0074】
インターフェース部30bは、将来の外気温度Tamb(k)を更に取得する。
水素貯蔵タンク圧力推定部312は、水素貯蔵タンクの圧力Prh(k)と将来の外気温度Tamb(k)を用いて、将来の力Prh(k+1)を推定する。推定方法は、物理式を用いた方法でも良いし、或いは、機械学習などの統計的な手方法でも良い。
【0075】
設定パラメータ変更部314は、推定した圧力Prh(k)の変化量ΔP(k+1)を用いて、水素貯蔵タンク圧力の閾値、水素製造量H(k)を減少させる変化量ΔH(k)の設定パラメータを変更する。例えば、変化量ΔP(k+1)の増加が予測される場合には、変化量ΔH(k)をより大きくするように
設定パラメータを変更する。逆に変化量ΔP(k+1)の減少が予測される場合には、変化量ΔH(k)をより小さくするように設定パラメータを変更する。これにより、変化量ΔP(k+1)の大きさに応答速度を対応させた水素製造量H(k)の制御が可能となる。
【0076】
例えば、変化量ΔH(k)は、水素製造量H(k)をパラメータPt1で除算した値であり、変化量ΔP(k+1)の増加が予測される場合には、パラメータPt1をより小さくする。逆に、変化量ΔP(k+1)の減少が予測される場合には、パラメータPt1をより大きくする。
【0077】
また、閾値Thは、本実施形態では、例えばパラメータPt2を用いてTh=0.6-Pt2×変化量ΔP(k+1)で演算される。これにより、例えば、変化量ΔP(k+1)の増加が予測される場合には、閾値Thをより低くするように設定パラメータPt2を変更する。逆に、変化量ΔP(k+1)の減少が予測される場合には、閾値Thをより高くするように設定パラメータPt2を変更する。これにより、変化量ΔP(k+1)の大きさに水素製造量H(k)の抑制を開始する時点を対応させた制御が可能となる。
【0078】
水素製造抑制量算出部306では、設定パラメータ変更部314で変更されたパラメータPt1、Pt2を用いて、水素貯蔵タンク圧力の閾値、水素貯蔵タンク圧力に応じた水素製造量H(k)を減少させる変化量ΔH(k)を算出する。
【0079】
ここで、水素貯蔵タンク圧力推定部312の詳細を説明する。まず、水素貯蔵タンクの容量Hmax、現在の水素貯蔵タンク内の水素量Htank(k)、現在の外気温度Tamb(k)を用いて、現在の水素貯蔵タンク圧力P(k)を(8)式により推定する。
P(k)=(Htank(k)×0.1013×(273+Tamb(k)))/(Hmax×273)-0.1013 (8)
【0080】
次に、水素貯蔵タンク圧力推定部312は、将来の外気温度Tamb(k+1)を用いて、将来の水素貯蔵タンク圧力Ppre(k+1)を(9)式により推定する。
Ppre(k+1)=(Htank(k)×0.1013×(273+Tamb(k+1)))/(Hmax×273)-0.1013 (9)
【0081】
つまり、外気温度の変化による将来の水素貯蔵タンク圧力の変化量ΔP(k+1)は、(10)式により計算できる。
ΔP(k+1)=P_pre(k+1)-P(k) (10)
【0082】
設定パラメータ変更部は、(10)式により計算された将来の水素貯蔵タンクの圧力の変化量ΔP(k+1)を用いて、設定パラメータPt1、Pt2を変更する。
【0083】
以上説明したように、本実施形態によれば、将来の外気温度を用いて気温上昇による水素貯蔵タンク圧力の変化量ΔP(k+1)を推定し、変化量ΔP(k+1)に応じて水素貯蔵タンク圧力の閾値、水素製造量H(k)を減少させる変化量ΔH(k)を変更する。これにより、気温の変動を予め制御に反映可能となる。このため、外気温度等の環境変動が大きい場合でも、水素製造装置10cが急峻に停止することをより高精度に抑制可能となる。
【0084】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法及びプログラムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法及びプログラムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0085】
1:水素生成システム、10:水素システム、10a:再生可能エネルギー
発電装置、10b:パワーコンディショナ、10c:水素製造装置、10d:水素貯蔵装置、10e:補機、30:制御装置、30b:インターフェース部、30c:制御部、302:演算部、304:出力部、Eps:電力系統。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11