(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】検査治具
(51)【国際特許分類】
G01R 1/073 20060101AFI20230824BHJP
G01R 1/067 20060101ALI20230824BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20230824BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20230824BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
G01R1/073 D
G01R1/067 D
G01R31/26 J
G01R31/28 J
G01R31/28 K
H01L21/66 B
(21)【出願番号】P 2017241391
(22)【出願日】2017-12-18
【審査請求日】2020-11-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】永田 孝弘
【合議体】
【審判長】中塚 直樹
【審判官】後藤 慎平
【審判官】濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-58201(JP,A)
【文献】特開2004-150927(JP,A)
【文献】実開平4-63135(JP,U)
【文献】特開平7-94561(JP,A)
【文献】特開平10-197560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073,31/26
H01L21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リジッド基板と、
前記リジッド基板に接続されたフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板の一部を前記リジッド基板に対して突出した状態で支持する支持体と、
前記フレキシブル基板の前記リジッド基板に対して突出した突出部に設けられたコンタクタと、
前記支持体に支持され、一端が前記リジッド基板の接点部に接触し、他端が前記フレキシブル基板の前記突出部から突出するスプリングプローブと、
前記フレキシブル基板と前記支持体の間に設けられた弾性体と、
前記フレキシブル基板の前記突出部から傾斜した傾斜部に設けられた電子部品と、 を備え、
前記リジッド基板は、前記支持体を固定し、
前記弾性体は、前記コンタクタを押圧し、
前記突出部に対する前記スプリングプローブの前記他端の突出長が、前記突出部に対する前記コンタクタの突出長よりも長く、
前記支持体に凹部が形成され、
前記凹部は、前記フレキシブル基板における前記
コンタクタが設けられた部分の裏面に臨み、
前記裏面を押圧する前記弾性体が前記凹部に設けられている、検査治具。
【請求項2】
前記コンタクタは、高周波信号用であり、
前記スプリングプローブは、非高周波信号用である、請求項1に記載の検査治具。
【請求項3】
前記コンタクタは、伸縮しない接点部である、請求項1又は2に記載の検査治具。
【請求項4】
前記支持体は、前記リジッド基板の一方の面に固定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の検査治具。
【請求項5】
前記フレキシブル基板の前記突出部において、前記スプリングプローブの外側位置に前記コンタクタが配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の検査治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体集積回路の電気的特性の検査に使用されるプローブカード等の検査治具に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の電気的特性の検査に使用されるプローブカード等の検査治具として、スプリングプローブを有するコンタクタを直接リジッド基板に実装したものが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】BiTS Workshop 2007 Archive(https://www.bitsworkshop.org/archive/archive2007/2007ht.pdf), PAPER#2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高周波デバイスの検査の場合、高周波信号を伝送する必要があるため、極力短いコンタクタを使用することが望ましい。一方、低周波信号や電源、グランド用のコンタクタも含めた全てのコンタクタを高周波信号用と同じように短くすると、コンタクトストロークの不足により、測定端子数の多い検査対象デバイスの検査時に、全端子に安定したコンタクトをさせることが困難になるという課題があった。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、安定したコンタクトが可能で高周波信号の測定性能にも優れた検査治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、検査治具である。この検査治具は、
リジッド基板と、
前記リジッド基板に接続されたフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板の一部を前記リジッド基板に対して突出した状態で支持する支持体と、
前記フレキシブル基板の前記リジッド基板に対して突出した突出部に設けられたコンタクタと、
前記支持体に支持され、一端が前記リジッド基板の接点部に接触し、他端が前記フレキシブル基板の前記突出部から突出するスプリングプローブと、を備える。
【0007】
前記コンタクタは、高周波信号用であり、
前記スプリングプローブは、非高周波信号用であってもよい。
【0008】
前記コンタクタは、伸縮しない接点部であり、
前記フレキシブル基板の前記突出部と前記支持体との間に設けられ、前記フレキシブル基板の前記接点部が設けられた部分の裏面を押圧する弾性体を備えてもよい。
【0009】
前記突出部に対する前記スプリングプローブの前記他端の突出長が、前記突出部に対する前記コンタクタの突出長よりも長くてもよい。
【0010】
前記支持体は、前記リジッド基板の一方の面に固定されてもよい。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安定したコンタクトが可能で高周波信号の測定性能にも優れた検査治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る検査治具1の概略断面図。
【
図2】検査治具1のコンタクタ41とスプリングプローブ42を被測定ウェハ90上のバンプ91に接触させた状態の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る検査治具1の概略断面図である。
図2は、検査治具1のコンタクタ41とスプリングプローブ42を被測定ウェハ90上のバンプ91に接触させた状態の概略断面図である。
図1により、検査治具1における互いに直交する上下及び左右方向を定義する。また、上下及び左右方向と垂直な方向を前後方向と定義する。検査治具1は、例えばプローブカードであり、ウェハ状態の半導体集積回路の電気的特性の検査に使用される。検査治具1は、リジッド基板10と、フレキシブル基板20と、支持体としてのコンタクタブロック(コンタクタハウジング)30と、コンタクタ41と、スプリングプローブ42と、圧接ブロック50と、を備える。
【0016】
リジッド基板10は、例えばガラスエポキシ基板であり、上下方向と垂直に延在する。一対のスリット穴11は、リジッド基板10を上下方向に貫通し、コンタクタブロック30の左右両側においてそれぞれ前後方向に延びる。リジッド基板10の上面には、高周波信号を伝送するための高周波ライン(高周波用導電パターン)12が設けられる。図示は省略したが、リジッド基板10には、低周波信号を伝送するための低周波ライン(低周波用導電パターン)、電源ライン(電源用導電パターン)、及びグランドライン(グランド用導電パターン)も設けられる。リジッド基板10の下面であって一対のスリット穴11の間の部分(コンタクタブロック30に覆われた部分)には、接点部としての複数のコンタクトパッド13が設けられる。コンタクトパッド13は、高周波信号用以外のコンタクトパッドであり、低周波信号用、電源用、及びグランド用の各コンタクトパッドを含む。
【0017】
フレキシブル基板20は、圧接ブロック50の押圧力により左右両端部がリジッド基板10の上面に接続され、スリット穴11を通ってリジッド基板10の下方に延び、コンタクタブロック30の支持によりリジッド基板10に対して下方に突出した状態とされる。フレキシブル基板20の、リジッド基板10に対して下方に突出した突出部21の平面である下面には、伸縮しない接点部としてのコンタクタ41が設けられる。コンタクタ41は、高周波信号用のコンタクトパッド(コンタクトバンプ)である。
【0018】
フレキシブル基板20の下面には、高周波ライン(高周波用導電パターン)25が設けられる。高周波ライン25は、一端が高周波用のコンタクタ41に接続され、他端がリジッド基板10の高周波ライン12に接続される。フレキシブル基板20の上面には、グランドライン(グランド用導電パターン)26が設けられる。なお、フレキシブル基板20の上面と下面との間の電気的な接続は、必要に応じて図示しないスルーホールにより行われる。フレキシブル基板20の左右両端部と突出部21との間の傾斜部22には、高周波ライン25上に実装される整合回路や、電源ラインとグランドラインとの間に接続される電子部品28(例えばチップコンデンサ)が設けられる。電子部品28は、コンタクタ41よりも上方に位置する。
【0019】
コンタクタブロック30は、例えば絶縁性の樹脂成形体であり、リジッド基板10の下面に所定数のネジ18で固定され、左右方向において一対のスリット穴11の間に位置する。コンタクタブロック30は、前後方向と垂直な断面が略台形の例えば四角錐台形状であり、フレキシブル基板20の一部をリジッド基板10に対して下方に突出した状態で支持する。フレキシブル基板20の突出部21の平面である上面は、台座ブロック30の平面である下面に接着されてもよい。また、コンタクタブロック30は、複数のスプリングプローブ(コンタクトプローブ)42を伸縮可能に支持する。
【0020】
各スプリングプローブ42は、上下方向に延びる銅又は銅合金等の導電性金属体であって、図示しないコイルバネ等の付勢手段を内蔵し、上下方向において伸縮可能である。各スプリングプローブ42の上端は、リジッド基板10の下面に設けられたコンタクトパッド13に接触(弾接)する。各スプリングプローブ42の下端は、フレキシブル基板20の突出部21を貫通して下方に突出し、
図1に示すように、非検査時にはコンタクタ41よりも下方に位置する。各スプリングプローブ42の下端は、検査時には、
図2に示すように、コンタクタ41と共に、被測定ウェハ90に設けられたバンプ91に接触(弾接)する。コンタクタブロック30は、コンタクタ41の直上となる位置に、フレキシブル基板20の突出部21の上面に臨む凹部35を有し、凹部35に設けられたゴム等の弾性体43が、フレキシブル基板20を介してコンタクタ41を下方に押圧する(フレキシブル基板20のコンタクタ41が設けられた部分の裏面を押圧する)ことで、コンタクタ41はバンプ91に弾性的に接触する。
【0021】
一対の圧接ブロック50は、所定数のネジ19により、フレキシブル基板20の左右両端部を挟んでリジッド基板10の上面にそれぞれ固定される。圧接ブロック50の下面(リジッド基板10側の面)にはゴム等の弾性体51が設けられ、弾性体51がフレキシブル基板20の左右両端部をリジッド基板10の上面に弾性的に押し付ける。これにより、リジッド基板10の上面に設けられた高周波ライン12と、フレキシブル基板20の下面に設けられた高周波ライン25とが、互いに接触して電気的に接続される。
【0022】
図3は、比較例に係る検査治具の概略断面図である。比較例に係る検査治具は、リジッド基板10に複数のスプリングプローブ42及びそれを支持するコンタクトハウジング45を直接実装したものであり、低周波信号用、電源用、及びグランド用に加え、高周波信号用にも同じ長さのスプリングプローブ42を使用する構成である。この構成の場合、高周波信号の伝送のためにスプリングプローブ42を短くすると、コンタクトストロークの不足により、測定端子数の多い検査対象デバイスの検査時に、全端子に安定したコンタクトをさせることが困難になる。また、スプリングプローブ42を一定以下に短くすると、検査時に被測定ウェハ90上のバンプ91と電子部品28や図示しない取付機構が干渉するため、一定以下の長さのスプリングプローブ42は使用できない。一方、コンタクトストロークを十分確保するためにスプリングプローブ42を長くすると、高周波信号の伝送性能が悪化する。
【0023】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0024】
(1) フレキシブル基板20をコンタクタブロック30によりリジッド基板10に対して下方に突出させ、突出部21の下面に高周波信号用の短尺のコンタクタ41を設ける一方、コンタクタブロック30により高周波信号用以外の長尺のスプリングプローブ42を支持してスプリングプローブ42の上端をリジッド基板10の下面のコンタクトパッド13に接触(弾接)させる構成のため、短尺のコンタクタ41により高周波信号の測定性能を高くしつつ、十分なコンタクトストロークを確保できるスプリングプローブ42により安定したコンタクトを行うことができる。したがって、検査治具1は全体として、被測定ウェハ90が多端子であっても安定したコンタクトが可能で高周波信号の測定性能にも優れたものとなる。
【0025】
(2) フレキシブル基板20の突出部21の下面に短尺のコンタクタ41を実装し、傾斜部22に電子部品28を実装するため、コンタクタ41の長さが短くても電子部品28や図示しない取付機構が検査時に被測定ウェハ90のバンプ91に干渉しにくくなる。したがって、コンタクタ41の長さを短くでき、高周波信号の測定性能において有利である。
【0026】
(3) コンタクタブロック30をリジッド基板10に固定し、フレキシブル基板20の突出部21とコンタクタブロック30の下面との間(凹部35)に設けた弾性体43によりコンタクタ41を下方に押圧する構成のため、コンタクタブロック30をリジッド基板10に固定せずスプリング等でリジッド基板10に対して下方に付勢する構成と比較して、コンタクタブロック30がリジッド基板10に対して傾くことによる接触不良を抑制できる。
【0027】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0028】
コンタクタ41は、短尺のスプリングプローブ(コンタクトプローブ)をハウジングで支持したものであってもよいし、ゴム等の弾性体に導電性物質として金属粉末等の導電性粉末を配合(混入)したもの(例えば導電性ゴムシート)であってもよい。この場合、コンタクタブロック30の凹部35及び弾性体43は省略できる。
【符号の説明】
【0029】
1 検査治具(プローブカード)、
10 リジッド基板、11 スリット穴、12 高周波ライン(高周波用導電パターン)、13 コンタクトパッド、18 ネジ、19 ネジ、
20 フレキシブル基板、21 突出部、22 傾斜部、25 高周波ライン(高周波用導電パターン)、26 グランドライン(グランド用導電パターン)、28 電子部品、
30 コンタクタブロック(支持体)、35 凹部、
41 コンタクタ、42 スプリングプローブ、43 弾性体、45 コンタクトハウジング、
50 圧接ブロック、51 弾性体、
90 被測定ウェハ(検査対象物)、91 バンプ