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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】光パワーメータ
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
G01J1/42 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017247462
(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2019113436
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-11-10
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】片岡 浩一
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】樋口 宗彦
【審判官】上田 泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-317230(JP,A)
【文献】特開2011-95080(JP,A)
【文献】特開平11-196156(JP,A)
【文献】特開2015-24125(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0101580(US,A1)
【文献】特開2014-202526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J1/00-1/02
G01J1/42-1/46
G01J11/00
G01M11/00
G01D9/00-9/42
G01R13/00-13/34
G01R19/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光した光のパワーを測定する光パワー測定部と、
測定された光パワーを測定データとしてリングバッファに格納するデータ管理部と、
光パワーの測定データに対する条件であるトリガ条件、および、前記リングバッファにおいて最古データが格納された記憶領域から最新データが格納された記憶領域までの一連の記憶領域における所定の記憶領域の相対的な位置を示すトリガ位置の設定を受け付けるトリガ管理部と、
測定データが前記リングバッファに格納される毎に当該測定データが前記トリガ条件を満たすか否かを判定し、前記トリガ条件を満たすと判定された前記測定データが前記リングバッファに格納された後に前記リングバッファに格納された前記測定データの個数が前記トリガ位置に対応する値に達したことを検出すると、前記リングバッファの更新を停止させるトリガ制御部と、
を備え
前記トリガ管理部は、
ユーザから、前記リングバッファに格納された前記測定データ全体に対する比率又は文言により前記トリガ位置の設定を受け付け、
前記ユーザから設定を受け付けた前記比率又は文言を前記トリガ位置に対応する前記値に変換する
ことを特徴とする光パワーメータ。
【請求項2】
FFT演算部をさらに備え、
前記FFT演算部は、受光した光がCHOP光の場合に、前記光パワー測定部の測定結果を所定のフレームでフーリエ変換し、前記CHOP光の変調に用いられている周波数成分を抽出し、測定データとして前記データ管理部に格納させることを特徴とする請求項1に記載の光パワーメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光パワーメータに関し、特に、トリガ機能を備えた光パワーメータに関する。
【背景技術】
【0002】
光パワーメータは、光ファイバ等を介して被測定光を受光し、光パワーを測定する装置である。ここで、光パワーは、デバイスや伝送路の光出力、損失、反射などの特性を評価する際等に測定される物理量であり、単位としてW、または、1mWを基準とした対数表示のdBmが使用される。
【0003】
図9は、従来の光パワーメータ500の機能構成を示すブロック図である。本図に示すように、光パワーメータ500は、被測定光を受光する受光部510、受光した光のパワーを測定する光パワー測定部520、測定された光パワーを測定データとして格納するデータ管理部530、外部機器560と通信を行なう通信部540を備えている。
【0004】
外部機器560は、光パワーメータ500から測定データを取得し、光パワーの変化等を解析する装置であり、解析用のソフトウェアをインストールしたPC等で構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-78281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、光パワーメータ500では、単発的に光パワーの測定を行なう使用方法が主であり、測定データを連続的に取得し、時系列で解析することは一般的ではなかった。このため、データ管理部530は、測定データの一時的な格納を目的としており、測定データの蓄積や解析は測定終了後に外部機器560に測定データを送信して、外部機器560側で行なうようになっている。
【0007】
また、可搬性やコスト等の観点から、データ管理部530のデータ格納領域は容量に制約が設けられており、リングバッファ構造を採用している。すなわち、古いデータから順に新しいデータに上書きされる。
【0008】
近年の光通信の普及等から光パワーメータ500における測定データの時系列解析の重要度が高まっており、特に、所定のトリガ条件を満たす測定データの前後の測定データ群の解析が重視される。
【0009】
しかしながら、光パワーメータ500で連続的に所定期間の計測を行なって、測定終了後に外部機器560に測定データを送信する場合、測定期間中にトリガ条件を満たした測定データが発生したとしても、送信される測定データ群にトリガ条件を満たす測定データが含まれているという保証がない。
【0010】
例えば、トリガ条件を満たす測定データが古いデータに上書きされている場合が起こり得る。また、トリガ条件を満たす測定データが含まれていたとしても、解析に必要な前後の測定データが十分に取得できていない場合も起こり得る。
【0011】
データ管理部530の格納容量を増やすことで、トリガ条件を満たす測定データと解析に必要な前後の測定データを取得できる可能性が高まるが、光パワーメータ500の可搬性が損なわれたり、コスト増を招くことになる。
【0012】
そこで、本発明は、光パワーメータにおいて、トリガ条件を満たす測定データと解析に必要な前後の測定データを、格納容量を増やさずとも取得できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の一態様である光パワーメータは、受光した光のパワーを測定する光パワー測定部と、測定された光パワーを測定データとしてリングバッファ形式で格納するデータ管理部と、光パワーの測定データに対する条件であるトリガ条件、および、格納される測定データ群におけるトリガ条件を満たす測定データの位置を示すトリガ位置の設定を受け付けるトリガ管理部と、トリガ条件を満たす測定データが、前記リングバッファにおいてトリガ位置に格納されたことを検出すると、前記リングバッファの更新を停止させるトリガ制御部と、を備えたことを特徴とする。
ここで、前記トリガ制御部は、測定データが前記データ管理部に格納される毎に前記リングバッファを参照し、前記トリガ条件を満たす測定データが前記トリガ位置に格納されているかを判定することができる。
また、前記トリガ制御部は、前記トリガ条件を満たす測定データが前記データ管理部に格納されると、以降の測定データの格納毎に、前記トリガ条件を満たす測定データが前記トリガ位置まで移動したかを判定することができる。
また、FFT演算部をさらに備え、前記FFT演算部は、受光した光がCHOP光の場合に、前記光パワー測定部の測定結果を所定のフレームでフーリエ変換し、前記CHOP光の変調に用いられている周波数成分を抽出し、測定データとして前記データ管理部に格納させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光パワーメータにおいて、トリガ条件を満たす測定データと解析に必要な前後の測定データを、格納容量を増やさずともできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る光パワーメータの機能構成を示すブロック図である。
図2】トリガ位置の設定例を説明する図である。
図3】トリガ制御部の第1の動作例について説明するフローチャートである。
図4】トリガ条件とトリガ位置の判定を説明する図である。
図5】本実施形態の光パワーメータで得られる測定データ群を説明する図である。
図6】トリガ制御部の第2の動作例について説明するフローチャートである。
図7】変形例に係る光パワーメータの機能構成を説明するブロック図である。
図8】CHOP光の光パワー測定処理を説明する図である。
図9】従来の光パワーメータの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る光パワーメータ100の機能構成を示すブロック図である。本図に示すように、光パワーメータ100は、被測定光を受光する受光部110、受光した光のパワーを測定する光パワー測定部120、測定された光パワーを測定データとしてリングバッファ形式で格納するデータ管理部130、外部機器200と通信を行なう通信部140、トリガ管理部150、トリガ制御部160を備えている。
【0017】
外部機器200は、光パワーメータ100から測定データを取得し、光パワーの変化等を解析する装置であり、解析用のソフトウェアをインストールしたPC等で構成することができる。
【0018】
トリガ管理部150は、操作者からトリガ条件とトリガ位置の設定を受け付ける。トリガ条件とトリガ位置の設定は、例えば、光パワーメータ100が備えるボタン等を介して受け付けることができる。また、外部機器200を介して受け付けてもよい。
【0019】
トリガ条件は、光パワーの測定データに対する条件であり、種々の条件を設定することができる。トリガ条件を満たす測定データおよび前後の測定データが最終的な格納対象データ群となる。ここで、前後の測定データは、トリガ条件を満たす測定データの前の測定データ群およびトリガ条件を満たす測定データの後の測定データ群の少なくとも一方を意味しており、操作者から受け付ける設定に基づく。
【0020】
トリガ条件は、例えば、指定された閾値以上、指定された閾値以下とすることができる。また、閾値以下から閾値以上に遷移、閾値以上から閾値以下に遷移とすることができる。さらには、測定データ波形の立ち上がり、立ち下がり、変化率が基準値以上としたり、測定データ波形が特定のパターンを描く等としてもよい。
【0021】
ここで、トリガ条件を満たした測定データをトリガデータと称する。また、トリガデータより前の(古い)測定データを前データと称し、トリガデータより後の(新しい)測定データを後データと称する。
【0022】
トリガ位置は、格納される測定データ群における、トリガデータの位置を示す情報である。例えば、図2(a)に示すように、トリガデータの位置を、リングバッファのサイズで決まる格納測定データ全体に対する比率で設定することができる。本図の例は、古い方から30%の位置にトリガデータを格納する設定である。この場合、前データの個数と後データの個数との比率は概ね3:7となる。
【0023】
また、図2(b)に示すように、トリガデータの位置を、先頭からトリガデータまでの順番で設定してもよい。本図の例は、古い方から8000個目の位置にトリガデータを格納する設定である。もちろん後端からの順番で設定してもよいし、前データあるいは後データの個数で設定してもよい。
【0024】
また、図2(c)に示すように、トリガデータの位置を、文言で設定してもよい。本図の例は、格納測定データ全体の中央の位置にトリガデータを格納する設定である。文言は、先頭、終端、前半、後半等とすることができる。ただし、トリガ位置の設定は上記の例に限られない。
【0025】
トリガ制御部160は、トリガ管理部150が受け付けた設定に基づいて、データ管理部130に格納された測定データのトリガ条件を判定するとともに、トリガデータがトリガ位置に配置された段階でデータ管理部130のリングバッファが更新されないように制御する。具体的には、測定を終了するように光パワー測定部120を制御する。あるいは、光パワー計測部120における測定は継続しても測定データをリングバッファに格納しないようにデータ管理部130を制御してもよい。
【0026】
次に、トリガ制御部160の第1の動作例について図3のフローチャートを参照して説明する。なお、トリガ管理部150は、あらかじめ操作者からトリガ条件とトリガ位置の設定を受け付けているものとする。また、測定時間、測定回数等に基づいた測定終了条件が定められているものとする。
【0027】
測定開始に先立ち、トリガ制御部160は、トリガ管理部150からトリガ条件を取得する(S101)。また、トリガ位置を取得する(S102)。取得したトリガ位置は、例えば、格納される測定データ全体における後端(最新データ)からの順番に変換する。
【0028】
例えば、取得したトリガ位置が格納測定データ全体に対する比率で設定されている場合には、格納可能測定データ数に基づいて後端からの順番に変換する。取得したトリガ位置が文言で設定されている場合にも、格納可能測定データ数に基づいて後端からの順番に変換する。例えば、前半であれば、一例として後端から全体の3/4程度に相当する順番とすることができる。
【0029】
測定を開始すると、測定データがデータ管理部130に格納される毎に(S103:Yes)、データ管理部130のリングバッファに格納されている測定データを参照し(S104)、トリガ位置にトリガ条件を満たすトリガデータが存在するかを判定する(S105)。トリガ位置は、後端からの順番に変換されているため、容易に参照することができる。
【0030】
例えば、図4(a)に示すような位置にトリガ位置が設定されている場合において、新たに格納された測定データがトリガ条件を満たすトリガデータであったとしても、トリガ位置を満たさないため、トリガ位置にトリガ条件を満たすトリガデータは存在しないと判定する(S105:No)。そして、測定終了でなければ(S106:No)、次の測定データがデータ管理部130に格納されるのを待つ(S103)。
【0031】
リングバッファ構造を採用しているため、トリガデータは、測定データが格納される毎にトリガ位置に近づくことになる。そして、図4(b)に示すように、トリガデータがトリガ位置に達すると、リングバッファ参照において(S104)、トリガ位置にトリガ条件を満たすトリガデータが存在すると判定し(S105:Yes)、リングバッファの更新を停止する(S107)。すなわち、光パワー測定部120に対して測定の停止を指示する、あるいは、データ管理部130に対して測定データの格納停止を指示する。
【0032】
データ管理部130のリングバッファの更新が行なわれなくなることにより、リングバッファには、トリガデータがトリガ位置に記録された測定データ群が格納された状態が保持される。すなわち、トリガ条件を満たす測定データと解析に必要な前後の測定データを、格納容量を増やさずとも取得できるようになる。
【0033】
このリングバッファに格納された測定データ群を、例えば、通信部140を介して外部機器200に出力することで、図5に示すように、時系列データが、トリガデータおよび前データと後データとが必要な状態で得られるため、測定データの時系列解析を適切に行なうことができるようになる。
【0034】
次に、トリガ制御部160の第2の動作例について図6のフローチャートを参照して説明する。トリガ条件の取得(S201)、およびトリガ位置の取得(S202)は、第1の動作例と同様である。取得したトリガ位置は、格納される測定データ全体における後端(最新データ)からの順番に変換する。
【0035】
測定を開始すると、測定データがデータ管理部130に格納される毎に(S103:Yes)、新たに格納した測定データがトリガ条件を満たすかを判定する(S204)。
【0036】
新たに格納した測定データがトリガ条件を満たさない場合は(S204:No)、測定終了でなければ(S205:No)、次の測定データがデータ管理部130に格納されるのを待つ(S203)。
【0037】
新たに格納した測定データがトリガ条件を満たす場合は(S204:Yes)、新たに格納した測定データがトリガ位置を満たしているかを判定する(S206)。これは、トリガ位置として後端が設定されている場合の手当である。トリガ位置を満たしている判定した場合は(S206:Yes)、リングバッファの更新を停止する(S210)。すなわち、光パワー測定部120に対して測定の停止を指示する、あるいは、データ管理部130に対して測定データの格納停止を指示する。
【0038】
新たに格納した測定データがトリガ位置を満たさない場合(S204:No)、すなわち、トリガ位置が後端以外に設定されている場合は、測定データがデータ管理部130に格納される毎に(S207:Yes)、トリガデータの移動量をカウントする(S208)。ここで、測定データが格納される毎にトリガデータは1つずつ前端側に移動する。
【0039】
そして、トリガデータがトリガ位置まで移動すると(S209:Yes)、リングバッファの更新を停止する(S210)。トリガ位置は、後端からの順番に変換されているため、容易にトリガ位置までに必要な移動量を把握することができる。
【0040】
データ管理部130のリングバッファの更新が行なわれなくなることにより、リングバッファには、トリガデータがトリガ位置に記録された測定データ群が格納された状態が保持される。
【0041】
次に、本実施形態の光パワーメータの変形例について説明する。上述の光パワーメータ100では、被測定光として連続光を想定しているため、被測定光として所定の周波数MFで変調したCHOP光を用いると、光パワーのトリガ判定が正しく行なわれない可能性がある。
【0042】
そこで、変形例に係る光パワーメータ101は、CHOP光に対応した構成とする。図7は、光パワーメータ101の機能構成を説明するブロック図である。上述の光パワーメータ100と同じ機能ブロックについては同じ符号を付している。
【0043】
本図に示すように、光パワーメータ101は、上述の構成に加え、光パワー測定部120とデータ管理部130との間にFFT演算部170を設けている。トリガ制御部160の動作は、上述の第1の動作例、第2の動作例のどちらでもよい。
【0044】
FFT演算部170では、図8(a)に示すように、変調周波数MFのCHOPの光パワー測定結果に対して、所定のフレーム単位でフーリエ変換を行なう。そして、変調周波数MF成分を抽出し、図8(b)に示すように、フレーム期間における平均光パワーを測定データとしてデータ管理部130に格納する。これにより、被測定光がCHOP光であっても、トリガ制御部160は、適切にトリガ条件の判定を行なうことができる。
【符号の説明】
【0045】
100…光パワーメータ、101…光パワーメータ、110…受光部、120…光パワー測定部、130…データ管理部、140…通信部、150…トリガ管理部、160…トリガ制御部、170…FFT演算部、200…外部機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9