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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20230824BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20230824BHJP
   H02K 3/46 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
H02K15/02 A
H02K1/18 Z
H02K3/46 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018184341
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020054195
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】ニデックアドバンスドモータ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】下境 裕太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義彦
(72)【発明者】
【氏名】旦野 太郎
(72)【発明者】
【氏名】小島 誠二
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/047033(WO,A1)
【文献】特開平07-274424(JP,A)
【文献】特開平09-252557(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018066(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 1/18
H02K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状部材と、
内孔を有するステータコアと、前記ステータコアに取り付けられた絶縁部材と、前記絶縁部材を介して前記ステータコアに巻回された導線からなるコイルと、を備えたステータと、
を備え、
前記円筒状部材の外周面に前記ステータコアの内周面が接するようにして、前記ステータコアが前記円筒状部材に取り付けられており、
前記ステータコアは、前記円筒状部材の軸方向から見て露出した露出面を有し、
前記露出面は、前記ステータコアの内孔の周縁から前記ステータコアの径方向外側に突出した突出領域を含む、
モータ装置。
【請求項2】
前記露出面は、前記ステータコアの表面のうち、前記ステータコアの内孔の周縁に沿った領域を含む、
請求項1に記載されたモータ装置。
【請求項3】
前記突出領域は、前記ステータコアの内孔の周方向に等間隔で配置されている、
請求項1に記載されたモータ装置。
【請求項4】
前記絶縁部材は、前記突出領域の少なくとも一部を取り囲むように構成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載されたモータ装置。
【請求項5】
前記絶縁部材は、前記ステータコアの内孔の周縁に沿って、かつ前記円筒状部材の仮想中心軸に沿って延び、前記ステータコアと前記コイルとを離隔する壁面を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載されたモータ装置。
【請求項6】
前記突出領域は、前記軸方向において前記ステータコアの一方側の面と他方側の面のうち、いずれかの面のみに設けられている、
請求項1から4のいずれか1項に記載されたモータ装置。
【請求項7】
前記絶縁部材は、前記ステータコアを両側から挟み込む第1絶縁体と第2絶縁体を有し、
前記第1絶縁体と前記第2絶縁体のいずれかの絶縁体は、前記軸方向に延びる筒状部と、前記筒状部を支持する壁部と、を有し、
前記筒状部は、前記コイル、または前記コイルと接触する導電性部材を挿入する、
請求項1から6のいずれか1項に記載されたモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ステータコアと、絶縁部材を介してステータコアに巻回された導線からなるコイルと、を有するステータを備えたモータ装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された電動モータ(モータ装置)のステータコアは、ステータコアの軸方向に分割されており、圧粉磁心を含む第1のステータコア部と積層鋼板を含む一対の第2のステータコア部とを有する。一対の第2のステータコア部は、それぞれ一対の絶縁部材(絶縁部材)によって第1のステータコア部に連結され、各絶縁部材には、コイルが巻回されるコイル巻回溝が区画されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-043139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータ装置の製造工程において、内孔を有するステータコアを組み付けるとき、ステータコアの内孔をシャフトやスリーブ等の円筒状部材に圧入する場合がある。このとき、ステータコアの圧入を確実に行うようにすることがもとめられている。
【0005】
そこで、本発明は、モータ装置の製造工程において内孔を有するステータコアを組み付けるときに、ステータコアの内孔を円筒状部材に確実に圧入できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の例示的な第1発明は、円筒状部材と、内孔を有するステータコアと、前記ステータコアに取り付けられた絶縁部材と、前記絶縁部材を介して前記ステータコアに巻回された導線からなるコイルと、を備えたステータと、を備え、前記円筒状部材の外周面に前記ステータコアの内周面が接するようにして、前記ステータコアが前記円筒状部材に取り付けられており、前記ステータコアは、前記円筒状部材の軸方向から見て露出した露出面を有し、前記露出面は、前記ステータコアの内孔の周縁から前記ステータコアの径方向外側に突出した突出領域を含む、モータ装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、モータ装置の製造工程において内孔を有するステータコアを組み付けるときに、ステータコアの内孔を円筒状部材に確実に圧入できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態のモータ装置の一方の側からの斜視図である。
図2】実施形態のモータ装置の他方の側からの斜視図である。
図3】実施形態のモータ装置の断面図である。
図4】実施形態のモータ装置の主要な部品についての分解斜視図である。
図5】実施形態のモータ装置のステータのコイルを除く分解斜視図である。
図6】ステータに含まれる一方の絶縁体の拡大正面図である。
図7】ステータに含まれる他方の絶縁体の拡大正面図である。
図8】実施形態のモータ装置のステータの拡大正面図である。
図9】実施形態のモータ装置の組み立てる際に、ステータをスリーブに圧入した後の組み付け状態の構造を軸方向において回路基板側から見たときの図である。
図10図9の組み付け状態の構造の拡大断面図である。
図11】実施形態のモータ装置の組み立てる際に、ステータをスリーブに圧入した後の組み付け状態の構造を軸方向においてカバー側から見たときの図である。
図12図11のA-A断面図である。
図13】実施形態のモータ装置が適用される車両用前照灯の水平断面図である。
【0009】
以下、本発明のモータ装置の実施形態について説明する。
【0010】
(1)実施形態のモータ装置1の概略構成
以下、実施形態のモータ装置1の概略構成について、図1~4を参照して説明する。
図1は、実施形態のモータ装置1の一方の側からの斜視図である。図2は、実施形態のモータ装置1の他方の側からの斜視図である。図3は、実施形態のモータ装置1の断面図である。図4は、実施形態のモータ装置1の主要な部品についての分解斜視図である。
以下の説明において、「軸方向」とは、モータ装置1のスリーブ9の軸方向を意味する。軸方向は、モータの回転軸であるシャフト5の回転軸(図3の軸CTR)に等しい。
【0011】
図1図3に示すように、本実施形態の例示的なモータ装置1は、回路基板3、ヨーク4、シャフト5、回転体6、回転体6を覆うカバー2、および、ステータ8を備え、DCブラシレスモータにより回転体6を回転させる装置である。
【0012】
カバー2は、例えば樹脂製であり、有底の直方体形状をなしている。図4に示すように、カバー2には、スリーブ9(円筒状部材の一例)が取り付けられる。スリーブ9は、例えば鉄あるいはアルミニウム等の金属製であり、カバー2の円形の底部の中心に設けられた孔に配置される。カバー2とスリーブ9はインサート成形により一体化される。
【0013】
回路基板3は、ステータ8のコイル(巻線)83と導通ピン84(導電性部材の一例;図3および図4参照)を介して導通され、制御回路(図示せず)が実装されている。回路基板3は、コイル83に対して電流を供給する。
図4に示すように、回路基板3は、ヨーク4側の面である第1面3aと、第1面3aの裏側の面であってカバー2側の面である第2面3bと、を有する。第1面3aは、主要な回路コンポーネントが実装される主実装面である。
回路基板3の中心近傍には内孔3hが形成され、内孔3hがスリーブ9の外周面に圧入されることで回路基板3とスリーブ9が連結される。
回路基板3は、2個の貫通孔32を有する。図2および図3に示すように、ねじ22が貫通孔32を通してカバー2に締結され、回路基板3のカバー2に対する周方向の変位を規制する。カバー2は、回路基板3の第1面3aとは反対側の第2面3bに対向して配置され、回路基板3の第2面3bを覆うように構成される。
【0014】
図4に示すように、カバー2は2個の開口24を有し、回路基板3は2個の貫通孔34を有する。後述するが、本実施形態のモータ装置1では、ステータ8のコイル83に一端が固定される導通ピン84の他端が回路基板3の貫通孔34を通って回路基板3の第2面3b(カバー2側の面)で半田付けされる。カバー2の開口24は、導通ピン84の半田付け作業を効率的に行うために設けられている。
【0015】
図3に示すように、シャフト5は、モータ装置1の軸方向に延びている。シャフト5の一端は支持部41に固定される。支持部41は例えば金属製であり、支持部41をかしめることでヨーク4と支持部41が接合される。支持部41は、軸受52との間に設けられたコイルばね53の付勢力によって、図3の軸方向においてヨーク4の内面(図3の左方向)に押圧される。
シャフト5の一端は支持部41に圧入され、シャフト5の他端は回転体6に固定される。シャフト5は、スリーブ9の内部を貫通し、スリーブ9の軸方向における一端側と他端側とでそれぞれ軸受51と軸受52により支持される。
【0016】
図2および図4に示すように、ヨーク4は概ね円環状をなしている。ヨーク4の内周面には、マグネット7が圧入される(図3参照)。マグネット7は、N極とS極とが周方向に交互に並ぶように着磁されたものである。ヨーク4は磁性体で構成され、マグネット7により形成される磁界がマグネット7の外側に漏れることを防止する。
【0017】
図3に示すように、ステータ8は、回路基板3の第1面3aに対向して配置され、ステータコア81と、ステータコア81に取り付けられた絶縁部材82と、絶縁部材82を介してステータコア81に巻回された導線からなるコイル83と、を備える。
本実施形態では、マグネット7およびシャフト5がロータを構成している。本実施形態のモータは、ステータ8よりもロータが径方向外側に位置するアウタロータ型のDCブラシレスモータである。
【0018】
(2)実施形態のステータ8の構成
次に、図5~8を参照して、ステータ8の構成についてさらに詳しく説明する。
図5は、ステータ8のコイル83を除く分解斜視図である。図6は、軸方向においてヨーク4側から見たときの第1絶縁体82Aの拡大正面図である。図7は、軸方向において回転体6側から見たときの第2絶縁体82Bの拡大正面図である。図8は、ステータ8の拡大正面図(ヨーク4側から見たときの図)である。
【0019】
図5は、ステータコア81、絶縁部材82(第1絶縁体82A,第2絶縁体82B)、および、導通ピン84が示されている。
図5に示すように、ステータコア81は、複数枚の磁性鋼板を軸方向(図3では左右方向)に積層して固定した積層体であり、複数のティース811を有する。本実施形態の例では、ステータコア81の周方向に90度間隔でティース811が設けられる。
ステータコア81の中心部分には、内孔81hが形成される。内孔81hの内周面81aは、ステータ8がスリーブ9と連結されるときに、スリーブ9の外周面に圧入される。すなわち、スリーブ9の外周面にステータコア81の内孔81hの内周面81aが接するようにして、ステータコア81がスリーブ9に取り付けられる。
【0020】
図5に示すように、絶縁部材82は、例えばゴムや樹脂等の絶縁材料からなり、コイル83とティース811との間を絶縁し、ステータコア81を両側から挟み込む第1絶縁体82Aと第2絶縁体82Bからなる。第1絶縁体82Aおよび第2絶縁体82Bは、スリーブ9を挿入するための内孔82Ahおよび内孔82Bhを有する。
【0021】
図5および図6に示すように、第1絶縁体82Aは、内孔82Ahの周方向に90度間隔で、ステータコア81のティース811に対応してティースカバー部821Aを有する。第1絶縁体82Aは、内孔82Ahの周縁において軸方向に延びる内周壁823Aを有する。すなわち、内周壁823Aは、ティースカバー部821Aを基準として、ステータコア81が設けられている側とは反対側において軸方向に延びている。ティースカバー部821Aを基準として、ステータコア81が設けられている側には軸方向に壁部822Aが延びている。
図5および図7に示すように、第2絶縁体82Bは、内孔82Bhの周方向に90度間隔で、ステータコア81のティース811に対応してティースカバー部821Bを有する。第2絶縁体82Bは、内孔82Bhの周縁において軸方向に突出した内周壁823Bを有する。すなわち、内周壁823Bは、ティースカバー部821Bを基準として、ステータコア81が設けられている側とは反対側において軸方向に延びている。ティースカバー部821Bを基準として、ステータコア81が設けられている側には軸方向に壁部822Bが延びている。
上述したように、第1絶縁体82Aおよび第2絶縁体82Bはそれぞれ、ステータコア81の内孔81hの周縁に沿って、かつステータ8が圧入されるスリーブ9の軸方向に延び、ステータコア81のティース811とコイル83とを離隔する壁面(内周壁823A,823Bの壁面)を有する。内周壁823A,823Bを設けることで、コイル83とティース811との間の絶縁が確実に行われる。
【0022】
再度、図5および図6を参照すると、第1絶縁体82Aの内周壁823Aには、切欠き部823Ahが形成される。後述するように、切欠き部823Ahは、ステータ8を組み立てたときにステータコア81の表面を露出させ、ステータ8のスリーブ9に対する圧入作業を行いやすくするために設けられている。すなわち、第1絶縁体82Aは、ステータコア81の露出面に対応して、内孔82Ahの周縁に切欠き部823Ahを有する。
また、切欠き部823Ahにおいて、内周壁823Aから径方向外側に向けて突起823Ajが設けられる。突起823Ajは、切欠き部823Ahにおいてコイル83とティース811との間の絶縁を確実に行うために設けられている。
【0023】
図5および図7を参照すると、第2絶縁体82Bは、軸方向に延び、導通ピン84を貫通させるための筒状部824Bを有する。筒状部824Bは、軸方向に形成される壁部822Bに支持され、それによって筒状部824Bの強度が十分に確保される。
なお、第2絶縁体82Bの内周壁823Bには、切欠き部は設けられていない。
【0024】
第1絶縁体82Aと第2絶縁体82Bによりステータコア81を両側から挟み込んだ後、ティースカバー部821A、ティース811、および、ティースカバー部821Bの周囲に導線を巻回してコイル83を構成することで、図8に示すようにステータ8が組み上げられる。
ステータ8を組み上げた後、図5に示したように、導通ピン84を筒状部824Bに貫通させて、導通ピン84の一端とコイル83の一端を半田付けする。
【0025】
(3)ステータ8のスリーブ9に対する圧入
次に、本実施形態のモータ装置1を組み立てるときの、ステータ8のスリーブ9に対する圧入について、図8~10を参照して説明する。
図9は、本実施形態のモータ装置1を組み立てる際に、ステータ8をスリーブ9に圧入した後の組み付け状態の構造を、軸方向において回路基板3の第1面3a側から見たときの図である。なお、本実施形態のモータ装置1を組み立てる際には、ステータ8がスリーブ9に圧入される前に、回路基板3がカバー2に固定された状態となっている。図10は、図9の組み付け状態の構造の拡大断面図である。
【0026】
図10に示すように、ステータ8をスリーブ9に圧入するときには、軸方向(回路基板3の第1面3aから第2面3bに向かう圧入方向D)にステータ8のステータコア81の内孔81hの内周面81aをスリーブ9の外周面9aに接触するようにして行われる。圧入の際にはカバー2を設備に固定し、圧入治具によってステータ8が圧入方向に所定量押し込まれる。
なお、上述したように、ステータ8の圧入を行う時点では、導通ピン84の一端がコイル83と半田付けされた状態であるため、作業者が導通ピン84の端部の半田付けの有無を確認することで、ステータ8の向きを誤って圧入することが回避される。
【0027】
本実施形態では、圧入治具によってステータ8を押し込むときに、ステータコア81の一部が露出しているため、ステータコア81の露出面に接触するように治具を押し当てることでステータ8をスリーブ9に確実に圧入することができる。
より具体的には、図8に示すように、ステータ8のステータコア81は、スリーブ9の軸方向において治具を押し当てる側から見て露出した露出面を有するため、露出面に圧入治具を接触させ、軸方向(図8の紙面奥の方向)を押し込むことで、ステータコア81の内孔81hの内周面81aをスリーブ9の外周面9aに確実に圧入することができる。
図8に示すステータコア81の露出面は、ステータコア81の表面のうち、ステータコア81の内孔81hの周縁に沿った周縁領域811aを含む。露出面のうち内孔81hの周縁領域811aは、ステータコア81の表面において、ステータ8をスリーブ9に圧入するときにスリーブ9の外周面9aに最も近い位置になるため、周縁領域811aに圧入治具を接触させることでより確実にステータ8を圧入することができる。
【0028】
図6を参照して説明したように、第1絶縁体82Aの内周壁823Aには、切欠き部823Ahが形成される。そのため、第1絶縁体82Aをステータコア81に組み付けた後は、図8に示すように、切欠き部823Ahを通してステータコア81の表面が露出した露出面の突出領域811pが形成される。本実施形態では、突出領域811pは、ステータコア81の内孔81hの周縁からステータコア81の径方向に突出した領域である。
【0029】
仮に、第1絶縁体82Aの内周壁823Aを図6に示す状態よりも外側に設けたとしたならば、露出面の周縁領域811aを広くすることが可能となる。しかし、図3に示したように、ステータ8全体の外形はマグネット7の間に隙間を確保するために拡げることができないことから、露出面の周縁領域811aを広くすることは、コイル83およびティース811の径方向のサイズを犠牲にすることになり、モータの性能に影響を及ぼす。そこで、第1絶縁体82Aの内周壁823Aに切欠き部823Ahを周方向に局所的に設け、それによってステータコア81の露出面の突出領域811pを設けるように構成される。そのため、モータの性能に影響を与えないようにしつつ、有効な露出面積を確保することができる。
【0030】
本実施形態の例では、ステータコア81の内孔81hの周縁に沿って露出面の4箇所の突出領域811pが形成される。露出面の4箇所の突出領域811pを同時に接触させる圧入治具を用いてステータ8を圧入方向Dに押し込むことで圧入作業が行われる。4箇所の突出領域811pは、スリーブ9の外周面9aに比較的近い位置であることから、ステータ8の圧入は確実に行われる。
【0031】
本実施形態の例では、ステータコア81の露出面の突出領域811pがステータコア81の内孔81hの周方向に等間隔で配置される。この例では、ステータコア81の隣接するティース811間に4箇所、周方向に等間隔でステータコア81の露出面の突出領域811pが設けられる。すなわち、図8において、コイル83が巻回されていない部分に向けて突出領域811pが設けるように構成したため、ステータ8におけるコイル83の配置に対する影響が少ないものとなっている。
【0032】
図6を参照して説明したように、第1絶縁体82Aは、切欠き部823Ahにおいて、内周壁823Aから径方向外側に向けて突起823Ajが設けられる。そのため、ステータ8を組み上げた状態では、図8に示すように、第1絶縁体82Aの突起823Ajが、ステータコア81の露出面の突出領域811pの少なくとも一部を取り囲むように構成される。そのため、突出領域811pにおけるティース811とコイル83との間の絶縁が確実に行われる。
【0033】
なお、第2絶縁体82Bの内周壁823Bには、第1絶縁体82Aの内周壁823Aとは異なり、切欠き部は設けられていない。そのため、ステータ8を組み上げた状態では、ステータ8を第2絶縁体82B側から見たときに、ステータコア81の露出面において内孔81hから径方向外側に突出する突出領域は形成されない。すなわち、突出領域は、スリーブ9の軸方向においてステータコア81の第1絶縁体82A側の面にのみ設けられ、スリーブ9の軸方向においてステータコア81の第2絶縁体82B側の面には設けられない。そのため、ステータ8の両側におけるステータコア81の露出面を確認することによっても作業者は、スリーブ9に圧入するときにステータ8の方向を誤る誤組み付けを防止できる。
【0034】
(4)導通ピン84の半田付け
次に、本実施形態のモータ装置1を組み立てるときの、導通ピン84の半田付けについて、図10~12を参照して説明する。
図11は、本実施形態のモータ装置1を組み立てる際に、ステータ8をスリーブ9に圧入した後の組み付け状態の構造を、軸方向において回路基板3の第2面3b側から見たときの図である。図12は、図11のA-A断面図である。
【0035】
ステータ8の圧入を行う時点では、導通ピン84がステータ8の第2絶縁体82Bの筒状部824Bに挿入され、導通ピン84の一端がコイル83と半田付けされた状態である。ステータ8がスリーブ9に圧入されるときには、半田付けされていない導通ピン84の他端が圧入方向D(図10参照)において先端となるようにしてステータ8がスリーブ9の外周面上を移動する。ステータ8の圧入時に圧入方向Dにおいて先端となる(つまり、カバー2側となる)導通ピン84の端を、以下の説明では、導通ピン84の第1端という。
【0036】
図4に示したように、回路基板3には導通ピン84を貫通させるための貫通孔34が設けられている。ステータ8をスリーブ9に圧入するときには、図10に示すように、導通ピン84は貫通孔34を貫通し、導通ピン84の第1端84aが回路基板3のカバー2側の第2面3bから突出する。
図11に示すように、カバー2は、回路基板3の貫通孔34を露出させる開口24を有する。そのため、半田ごて等の半田付け用治具を、開口24を通して導通ピン84の第1端84aに接触させることができ、導通ピン84の第1端84aを回路基板3の第2面3b(主実装面ではない面)に半田付けすることができる。すなわち、本実施形態のモータ装置1では、コイル83の回路基板3に対する導通位置を回路基板3の主実装面ではない第2面3bとしたため、回路基板3の主実装面である第1面3aにおける効率的な部品や配線の実装を損なわないようにすることができる。
【0037】
なお、本実施形態の例では、開口24は概ね矩形をなしているが、その限りではなく、回路基板3の形状に応じて適宜決定できる。半田付けの作業性の観点では、開口24の開口面積を極力大きくとることが好ましい。
【0038】
図12を参照すると、カバー2の開口24の詳しい形状が示される。図12に示すように、カバー2は、カバー2の基準面2bから回路基板3の第2面3bに向かって延びる壁面24Wを有し、それによって開口24が形成される。図10に示すように、カバー2の基準面2bとは、軸方向に直交して、スリーブ9の軸方向のカバー2側の端面と一致する面である。壁面24Wは、回路基板3の第2面3bに近接した位置まで形成されており、それによって開口24からの回路基板3に対する異物混入が抑制される。壁面24Wと回路基板3の第2面3bの間の隙間の最小値は、例えば、仮に異物が回路基板3に侵入したとしても回路の短絡(例えば、ICのピン間短絡)が生じないような値とすることが好ましい。
【0039】
壁面24Wは、基準面2bから回路基板3の第2面3bに向かうにつれて、開口24の内側に傾斜する傾斜面241を有する。傾斜面241を設けることで、開口24を通して回路基板3の第2面3bが露出する部分の面積を大きくとらなくても、導通ピン84の第1端84aを半田付けするときに半田治具を斜め方向から行うことが可能となり、半田付けの作業性を良好にできる。
【0040】
また、壁面24Wは、傾斜面241の回路基板3の第2面3b側の一端から第2面3bに向かうにつれて、基準面2bに直交する直交面242を有する。仮に、傾斜面241を回路基板3の第2面3b近傍まで設けたとしたならば、傾斜面241は開口24の内側に傾斜しているために傾斜面241の第2面3b近傍の端部が断面視で鋭角をなし、成形時にバリが生じやすくなる。それに対して本実施形態では、直交面242を設けることで、壁面24Wの第2面3b近傍の端部を断面視で直角とすることができ、成形時のバリの発生を抑制することができる。
【0041】
(5)本実施形態のモータ装置1の適用例
次に、上述した本実施形態のモータ装置1の適用例として、本実施形態のモータ装置1を搭載しうる車両用前照灯の概略について、図13を参照して説明する。図13は、車両用前照灯の水平断面図である。図13に示す車両用前照灯10は、自動車の前端部の左側に搭載される左側前照灯であり、右側に搭載される前照灯と左右対称である以外は同じ構造である。そのため、以下では、左側の車両用前照灯10について詳述し、右側の車両用前照灯については説明を省略する。
【0042】
図13に示すように、車両用前照灯10は、前方に向かって開口した凹部を有するランプボディ12を備えている。ランプボディ12は、その前面開口が透明な前面カバー14によって覆われて灯室16が形成されている。灯室16は、ランプユニット18が収容される空間として機能する。
【0043】
ランプユニット18は、ブレードスキャン方式のADB(Adaptive Driving Beam)技術を採用したユニットであり、いわゆる可変ハイビームを照射するように構成されている。ランプユニット18は、光学ユニット20および投影レンズ27を備える。光学ユニット20は、回転リフレクタ60と、光源26と、を備える。投影レンズ27は、例えば凸レンズが用いられる。凸レンズの形状は、要求される配光パターンや照度分布などの配光特性に応じて適宜選択すればよいが、非球面レンズや自由曲面レンズが用いられる。また、投影レンズ27の周囲には、エクステンションリフレクタ23が設けられている。
【0044】
回転リフレクタ60は、駆動源であるモータ30により回転軸Rを中心にブレード60bが一方向に回転しながら、光源26から出射した光を反射し、反射した反射光を走査することで配光パターンを形成するように構成されている。また、ブレード60bは、光源26から出射した光を回転しながら反射し、所望の配光パターンを形成するように構成された環状の反射領域60aを備えている。
【0045】
回転リフレクタ60のブレード60bの形状は、反射による光源26の2次光源が投影レンズ27の焦点付近に形成されるように構成されている。また、ブレード60bは、回転軸Rを中心とする周方向に向かうにつれて、光軸Axと反射面とが成す角が変化するように捩られた形状を有している。これにより、光源26の光(光源像)を用いた走査が可能となる。
【0046】
光源26は、短時間で点消灯を制御できるものが好ましく、例えば、LEDやLD、EL素子等の半導体発光素子が好適である。
【0047】
モータ30は、基板92に搭載されている。基板92は、ヒートシンク94の搭載面94aに搭載され、固定されている。搭載面94aは、基板92が搭載された状態で、回転リフレクタ60の回転軸Rが光軸Axあるいは車両前方方向に対して傾斜するように構成されている。
【0048】
光源26は、基板36に搭載されている。また、光源26の光出射方向であって、回転リフレクタ60との間にはプライマリ光学系としてのレンズ38が設けられている。レンズ38は、光源26から出射した光が回転リフレクタ60の反射領域60aに向かうように、光源26の出射光を集光する。基板36は、ヒートシンク40に搭載されている。ヒートシンク94およびヒートシンク40は、金属製の板状の支持部材42に固定されている。そして、ランプユニット18は、支持部材42を介して、エイミングスクリュー44とナット46を使用した手段によりランプボディ12に対して傾動自在に支持されている。
【0049】
制御回路48は、前述の光源26およびモータ30と各基板を介して接続されており、光源26やモータ30の制御を行う信号の送信や、モータ30から出力された信号の受信を行う。
【0050】
車両用前照灯10において、回転リフレクタ60が本実施形態のモータ装置1の回転体6に対応し、モータ30が本実施形態のモータ装置1のモータに対応する。上述したようにして、本実施形態のモータ装置1が車両用前照灯10に適用可能である。
【0051】
以上、本発明のモータ装置の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
【0052】
上述した実施形態では、図8に示したように、ステータ8の露出面の突出領域811pがステータコア81の内孔81hの周方向に等間隔で配置されている例を示したが、その限りではない。突出領域811pはステータコア81の内孔81hの周方向において等間隔でなくてもよいし、数も4個に限られない。なお、突出領域811pを内孔81hの周方向に等間隔で配置する場合には、隣接するティース間で周方向に等間隔で配置してもよいし、ティースの位置とは無関係に周方向で所定角度ごとに配置してもよい。
【0053】
上述した実施形態では、図7および図8に示したように、導通ピン84を挿入する筒状部824Bを4個設けた例を示したが、その限りではない。筒状部824Bの数は例えば3個であってもよい。
【0054】
上述した実施形態では、導通ピン84を介してコイル83と回路基板3とを導通させる場合を例として説明したが、その限りではない。コイル83の端部を、第2絶縁体82Bの筒状部824Bおよび回路基板3の貫通孔34に挿入して回路基板3の第2面3bにおいて半田付けすることで、コイル83と回路基板3とを導通させてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…モータ装置、2…カバー、2b…基準面、21…基板配置部、24…開口、24W…壁面、241…傾斜面、242…直交面、3…回路基板、3a…第1面、3b…第2面、32,34…貫通孔、4…ヨーク、41…支持部、5…シャフト、51,52…軸受、53…コイルばね、6…回転体、7…マグネット、8…ステータ、81…ステータコア、81h…内孔、81a…内周面,811…ティース、811a…周縁領域、811p…突出領域、812…ティース壁面、82…絶縁部材、82A…第1絶縁体、82Ah…内孔、821A…ティースカバー部、822A…壁部、823A…内周壁面、823Ah…切欠き部、823Aj…突起、82B…第2絶縁体、82Bh…内孔、821B…ティースカバー部、822B…壁部、823B…内周壁面、824B…筒状部、822B…壁部、83…コイル、84…導通ピン、9…スリーブ、9a…外周面、10…車両用前照灯、12…ランプボディ、14…前面カバー、16…灯室、18…ランプユニット、20…光学ユニット、27…投影レンズ、30…モータ、60…回転リフレクタ、60a…反射領域、60b…ブレード、26…光源、92…基板、40,94…ヒートシンク、94a…搭載面、36…基板、38…レンズ、42…支持部材、44…エイミングスクリュー、46…ナット
図1
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図13