(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 123/16 20060101AFI20230824BHJP
C09J 123/20 20060101ALI20230824BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
C09J123/16
C09J123/20
C09J11/08
(21)【出願番号】P 2018233578
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】高森 愛
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030918(JP,A)
【文献】特開2009-242533(JP,A)
【文献】特開2017-132906(JP,A)
【文献】特開2016-050244(JP,A)
【文献】特開平05-148465(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129301(WO,A1)
【文献】特表2017-538806(JP,A)
【文献】特開2016-155916(JP,A)
【文献】特表2013-540867(JP,A)
【文献】国際公開第2014/105244(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0002578(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)結晶性オレフィン重合体、(B)非晶性オレフィン重合体、(C)粘着付与樹脂および(D)ワックスを有し、
(A)結晶性オレフィン重合体は(A1)エチレン含有率が5~10重量%のメタロセン系プロピレン/エチレン共重合体を含み、
(B)非晶性オレフィン共重合体は(B1)プロピレン/エチレン/ブテン共重合体を含み、
(C)粘着付与樹脂は環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を含み、
(D)ワックスはフィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、マイクロスタリンワックス、ポリエチレンワックス、及びポリプロピレンワックスから選ばれる少なくとも1種を含む、ホットメルト接着剤
であって、
(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体は、密度が0.87~0.95g/cm
3
、190℃溶融粘度が1000~2000mPasである、ホットメルト接着剤。
【請求項2】
(A)~(D)の総重量100重量部に対し、(A1)が10~70重量部含まれる、請求項
1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
(A)~(D)の総重量100重量部に対し、(B1)が2~20重量部含まれる、請求項1
または2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
その塗布部分に接着し固化した請求項1~3のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤の塗膜を
表面に有する段ボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤、及びホットメルト接着剤が塗布された段ボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、無溶剤の接着剤であり、加熱溶融することで被着体に塗布後、冷却することで固化して接着性を発現するので、瞬間接着及び高速接着が可能であるという特徴を有し、例えば、紙加工、木工、衛生材料及び電子分野等の幅広い分野で使用されている。
【0003】
上記ホットメルト接着剤のベースポリマーとして、その用途に応じて、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」ともいう)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(以下、「EEA」ともいう)等のエチレン/カルボン酸エステル共重合体や、
ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとαオレフィンとの共重合体等のポリオレフィン;
スチレン系ブロック共重合体(例えば、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体及びそれらの水素添加物)等の合成ゴム;
ポリウレタン;等が汎用されている。
【0004】
これらのホットメルト接着剤のなかで、非晶性ポリαオレフィン(APAO)をベースポリマーとしたホットメルト接着剤は、特許文献1及び2に開示されているように、段ボール加工に用いられることがある。
【0005】
段ボールは、板紙を波形に成形した中芯の片面又は両面に板紙のライナーを貼ったシートである。ライナーに使用される板紙には、クラフトパルプ及び故紙を原材料とするクラフトライナー(Kライナー)及び故紙を原料とするジュートライナー(Cライナー)等がある。段ボールの典型例には、JIS 1516に記載された外装用段ボールが含まれる。
【0006】
段ボール用ホットメルト接着剤は、段ボールの加工の他にも、段ボールの滑り止め部材として使用することができる。段ボールの表面は平滑であり、相互に滑りやすい。複数積み重ねた段ボール箱は、例えば、移動の際に少し傾けただけで荷崩れし、積み荷を取り扱う際に危険性が高く、作業効率が低くなる。
【0007】
段ボール箱を複数積み重ねる場合に、段ボールの表面にホットメルト接着剤の塗膜を形成しておけば、ホットメルト接着剤の塗膜が段ボール表面の滑りを止め、傾いた場合でも積荷が荷崩れしなくなる。ホットメルト接着剤の塗膜は、例えば、ホットメルト接着剤を加熱溶融して段ボールの表面に塗布し、塗布層を冷却して固化させることで形成する。
【0008】
オレフィン製のパレット上で段ボール箱を複数積み重ね、これら積み荷の荷崩れが防止される結果、該積み荷を取り扱う際の安全性が向上し、積み荷をパレットに乗せた状態で移動し易くなるため、作業効率も向上する。
【0009】
上記のようにホットメルト接着剤の塗膜の上に段ボール箱を積み重ねる場合、冷却固化したホットメルト接着剤が未だ優れた付着性を有していると、積み重ねられた段ボール同士が強く貼り付けられてしまい、段ボールの積み荷を解く際、基材損傷が発生することがある。
【0010】
よって、段ボール用ホットメルト接着剤には、冷却固化した状態において、積み重ねられた段ボール同士の滑りを止めること、及び段ボールに付着しないことという、少なくとも2つの性能を兼ね備えることが望まれる。
【0011】
特許文献1には、非晶性ポリαオレフィン、結晶性メタロセン系ポリαオレフィン及び粘着付与樹脂を含むホットメルト接着剤が開示されている([請求項1]、[表1]~[表8])。特許文献1のホットメルト接着剤は、冷却固化した塗膜が段ボールに対する摩擦性に優れ、優れた滑り止め性能を有する。しかしながら、このホットメルト接着剤の塗膜を有する段ボールの積み荷はパレットから剥がし難いことがあり、剥離性能に関しては未だ改善の余地がある。
【0012】
特許文献2には、エチレン-α-オレフィン共重合体、軟化点が80~100℃であるポリプロピレン、軟化点が110~150℃である粘着付与剤、及びワックスを含むホットメルト接着剤および紙製包装資材が開示されている([請求項1]、[請求項6]、[表1])。特許文献2のホットメルト接着剤は、上記エチレン-α-オレフィン共重合体として特にエチレン-1-オクテン共重合体を使用することで、-20~55℃と広い範囲の温度環境下であっても優れた接着性能を維持するものである。しかしながら、固化した塗膜の段ボールに対する滑り止め性能又は剥離性能は、特許文献2には記載されていない。
【0013】
さらに、特許文献2のホットメルト接着剤は、組成によっては、ホットメルトガンから吐出されて被着体へ塗布される際に糸曳き、又は段ボール等の紙基材へ染み出しが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2016-159916号公報
【文献】特開2014-208812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、本発明の目的は、固化した塗膜が段ボールに対する滑り止め性能に優れ、同時に段ボール基材を損傷させず、容易にパレットから段ボールを剥離させることが可能なホットメルト接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、(A)結晶性オレフィン重合体、(B)非晶性オレフィン重合体、(C)粘着付与樹脂および(D)ワックスを有し、
(A)結晶性オレフィン重合体は(A1)エチレン含有率が5~10重量%のメタロセン系プロピレン/エチレン共重合体を含む、ホットメルト接着剤を提供する。
【0017】
ある一形態においては、(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体は、密度0.87~0.95g/cm3、190℃溶融粘度が1000~2000mPasである。
【0018】
ある一形態においては、(B)非晶性オレフィン重合体が(B1)プロピレン/エチレン/ブテン共重合体を含む。
【0019】
ある一形態においては、(A)~(D)の総重量100重量部に対し、(A1)が10~70重量部含まれる。
【0020】
ある一形態においては、(A)~(D)の総重量100重量部に対し、(B1)が2~20重量部含まれる。
【0021】
また、本発明は、その塗布部分に接着し固化した上記いずれかのホットメルト接着剤の塗膜を有する段ボールを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、固化した塗膜が段ボールに対する滑り止め性能に優れ、同時に段ボール基材を損傷させず、容易にパレットから段ボールを剥離させることが可能なホットメルト接着剤が提供される。本発明のホットメルト接着剤の塗膜を有する段ボールは、パレット上で積み重ねられても、作業者が取り扱う際、滑りにくく、基材損傷がない。さらに、段ボールがパレットから降ろされる場合、パレットから段ボールが剥離し易いので、荷解き作業の効率が向上する。
【0023】
段ボールは、板紙を波形に成形した中しんの片面又は両面に板紙のライナーを貼ったシートである。ライナーに使用される板紙には、クラフトパルプ及び故紙を原材料とするクラフトライナー(Kライナー)及び故紙を原料とするジュートライナー(Cライナー)等がある。段ボールの典型例には、JIS 1516に記載された外装用段ボールが含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(A)結晶性オレフィン重合体、(B)非晶性オレフィン重合体、(C)粘着付与樹脂及び(D)ワックスを必須成分として含む。
【0025】
本明細書において「ホットメルト接着剤」とは、常温で固形であるが、加熱して融解することで流動性を有し、例えば、基材、被着体等の対象物に塗布することができ、冷却することで硬化し接着する接着剤をいう。
【0026】
ここで、「結晶性」とは、通常「結晶性」と呼ばれるものを意味し、より具体的には高分子が規則正しく配列する状態をいう。「非晶性」とは、通常、結晶性ではないことを意味するが、より具体的には、高分子の分子鎖が不規則に配列する状態とする。
【0027】
<(A)結晶性オレフィン重合体>
(A)結晶性オレフィン重合体として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/α-オレフィン共重合体、プロピレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/プロピレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体及びプロピレン/1-ブテン共重合体を例示できる。これらの共重合体は、単独でも複数種類が混合されても良い。
【0028】
(A)結晶性オレフィン重合体の市販品の一例として、
ダウ・ケミカル社製のアフィニティGA1900(商品名)、アフィニティGA1950(商品名)、アフィニティEG8185(商品名)、アフィニティEG8200(商品名)、エンゲージ8137(商品名)、エンゲージ8180(商品名)、エンゲージ8400(商品名);
エクソンモービル社製のビスタマックス2330(商品名)、ビスタマックス6202(商品名)、ビスタマックス8880(商品名);
プライムポリマー社製のエボリューSP1071C(商品名)、エボリューSP2030(商品名)、エボリューSP2530S(商品名);
出光興産社製のエルモーデュS400(商品名)、エルモーデュS600(商品名)、エルモーデュS901(商品名);
等が挙げられる。
【0029】
(A)結晶性オレフィン重合体は、(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体を含んでいる。(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体とは、メタロセン触媒を用いてエチレンとプロピレンを重合することで生成される重合体である。メタロセン触媒で生成された重合体は、非常に分子量分布が狭く、結晶性に偏りを生じさせることがない。メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体は、エチレン部位とプロピレン部位との並び方や、各構成単位の含有割合等について均一なので、低分子量体が生じ難い。その結果、本発明のホットメルト接着剤は固化した塗膜の付着性が低く、剥離性に優れ、耐熱性にも優れると考えられる。
【0030】
本発明のホットメルト接着剤は、成分(A1)を含むことで、高温時(50℃程度)の滑り止め性能が向上し、剥離時に段ボール基材を損傷し難く、オレフィン基材(パレット)からの段ボールの剥離性を向上させる。
【0031】
(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体のエチレン含有率は5~10重量%であり、6~9重量%が好ましく、7~8重量%が最も望ましい。成分(A1)のエチレン含有率が上記範囲にあることによって、本発明のホットメルト接着剤は、耐熱性と滑り止め性能のバランスが良好に保たれ、段ボール表面に対する滑り止め用途に有用となる。
【0032】
尚、本明細書において、エチレン含有率は、エチレンとαオレフィン重合体の総重量に対するエチレン構造体の割合であり、ASTM法に基づくエクソンモービル法で測定された値とする。
【0033】
(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体の密度は、0.87~0.95g/cm2であるのが好ましい。(A1)の密度が上記範囲にあることによって、本発明のホットメルト接着剤は、適度な硬さを保つことができ、段ボールに塗布された際、段ボール基材を損傷し難くし、滑り止め性能がより優れたものとなる。
【0034】
本明細書において、密度は、単位体積当たりの重量であり、ASTM D1505-03に基づき測定された値とする。
【0035】
(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体の190℃粘度は、1000~2000mPasであるのが好ましく、特に1100~1900mPasであるのが好ましい。
【0036】
(A1)の粘度が上記範囲にあることによって、本発明のホットメルト接着剤は、段ボール表面に塗布された際、適度な形状(広がりや高さ)を保つことができ、滑り止め性能がより向上する。(A1)の190℃粘度は、JAI7-1991 B法に基づき測定された値である。測定装置として、ブルックフィールド粘度計、27番ローターを使用した
【0037】
(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体の市販品の一例として、エクソンモービル社製のビスタマックス8880が挙げられ、後述するビスタマックスA(試作品)も(A1)に該当する。
【0038】
<(B)非晶性オレフィン重合体>
本発明において、「(B)非晶性オレフィン重合体(以下、「成分(B)」ともいう)」とは、非晶性のα-オレフィンの重合体であって、一般的に、非晶性ポリα-オレフィンと呼ばれるものである。本発明に係るホットメルト接着剤を得ることができる限り、(B)非晶性オレフィン重合体は特に制限されるものではない。
【0039】
ここで、「非晶性」とは、通常、結晶性ではないことを意味するが、より具体的には、高分子の分子鎖が不規則に配列する状態をいう。(B)非晶性オレフィン重合体をホットメルト接着剤に配合することで、ホットメルト接着剤は、摩擦係数が高くなり、被着体(段ボール)表面を滑り難いものとなる。
【0040】
摩擦とは、物体が他の物体の表面に接しながら運動しようとするとき、または運動しているときに、接触面でこの運動をさまたげる方向に働く力である。摩擦は、二つの物体の相対的な運動状態により、一つの物体がすべり出すまで止めようとする静止摩擦(物体がまさにすべり出そうとするときの摩擦力である“最大静止摩擦力”)と、運動している物体を止めようとする動摩擦(すべり摩擦、ころがり摩擦など)とに分けられる。
【0041】
本明明細書では、摩擦とは静止摩擦のことであり、摩擦係数は静止摩擦係数を意味する。
【0042】
(B)非晶性オレフィン重合体として、例えば、非晶性のポリプロピレン、非晶性のポリエチレン、又は非晶性のプロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体、及び非晶性のエチレンと他のα-オレフィンとの共重合体を例示できる。これら重合体は、単独で用いられても、複数種類用いられても良い。
【0043】
(B)非晶性オレフィン重合体として、具体的には、ポリプロピレン(ホモポリマー)、プロピレン/エチレン共重合体、プロピレン/1-ブテン共重合体、プロピレン/エチレン/1-ブテンの3元共重合体、プロピレン/1-ヘキセン/1-オクテンの3元重合体、プロピレン/1-ヘキセン/メチルペンテンの3元共重合体、1-ポリブテン(ホモポリマー)等を例示できる。
【0044】
本発明では、(B)非晶性オレフィン重合体は、プロピレンに由来する化学構造を有しているのが好ましい。プロピレンに由来する化学構造とは、純粋なプロピレンや、別の官能基を有するプロピレン誘導体の双方を含むことを意味する。本発明のホットメルト接着剤は、プロピレンに由来する化学構造を含むと、最大静止摩擦力が大きくなって滑り難くなるので、段ボール箱の荷崩れを防止することができ、なおかつ、段ボール基材損傷も防止できる。
【0045】
(B)非晶性オレフィン重合体の市販品としては、
エボニックデグサ社製のベストプラスト703(商品名)、ベストプラスト704(商品名)、ベストプラスト708(商品名);
イーストマンケミカル社製のEastoflex(商品名) E1016PL-1、Eastoflex PP1010PL(商品名);
ハンツマン社製のレキセンタック2304(商品名);
等が挙げられる。
【0046】
本発明では、(B)非晶性オレフィン重合体の密度は、1.00g/cm3以下が好ましく、0.80g/cm3~0.90g/cm3が特に好ましく、0.85g/cm3~0.88g/cm3が最も好ましい。(B)非晶性オレフィン重合体の密度が上記範囲にあることで、本発明のホットメルト接着剤は滑りにくくなり、段ボール箱の荷崩れをより確実に防ぐことができる。
【0047】
(B)非晶性オレフィン重合体は、(B1)プロピレン/エチレン/1-ブテン共重合体を含んでいるのが好ましい。プロピレン/エチレン/1-ブテン共重合体が配合されることで、積み重ねられた段ボール箱の荷崩れが確実に防止され、同時に段ボール基材損傷も防止できる。
【0048】
(B1)プロピレン/エチレン/1-ブテン共重合体の市販品としては、エボニックデグサ社製のベストプラスト703(商品名)、ベストプラスト704(商品名)、ベストプラスト708(商品名)等のベストプラストシリーズが挙げられる。
【0049】
<(C)粘着付与樹脂>
「(C)粘着付与樹脂」は、ホットメルト接着剤に通常使用されるものであって、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されることはない。
【0050】
粘着付与樹脂として、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。これらの粘着付与樹脂は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、色調が無色~淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。これらの特性を総合的に考慮すると、粘着付与樹脂として、上述の樹脂等の水素化誘導体が好ましい。
【0051】
(C)粘着付与樹脂として、市販品を用いることができる。そのような市販品として例えば、エクソンモービル社製のECR231C(商品名)、ECR179EX(商品名)、ECR5600(商品名)、丸善石油化学社製のマルカクリヤーH(商品名)、ヤスハラケミカル社製のクリアロンK100(商品名)、クリアロンK4090(商品名)及びクリアロンK4100(商品名)及びクリアロンP105(商品名)、荒川化学社製のアルコンM100(商品名)、アルコンP90(商品名)、出光石油化学社製のアイマーブS100(商品名)、アイマーブY135(商品名)、アイマーブP125(商品名)及びアイマーブP100(商品名)、JTXGエネルギー社製のT-REZ HC103(商品名)、T-REZ HA103(商品名)、T-REZ HA125(商品名)、T-REZ HB103(商品名)、T-REZ HA085(商品名)、イーストマンケミカル社製のリガライトR7100(商品名)を例示することができる。これらの市販の粘着付与樹脂は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0052】
<(D)ワックス>
本発明において、ホットメルト接着剤は、(D)ワックスを含んでいる。尚、本明細書で「ワックス」とは、常温で固体、加熱すると液体となる重量平均分子量が15000未満の有機物であり、一般的に「ワックス」とされているものをいい、ワックス状の性質を有するものであれば、本発明に係るホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に制限されるものではない。ワックスは、合成ワックスでも天然ワックスでも差し支えない。
【0053】
合成ワックスとしては、フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレン/ポリプロピレンワックス)等が例示される。
【0054】
「フィッシャートロプシュワックス」とは、フィッシャートロプシュ法によって合成され、一般的にフィッシャートロプシュワックスとされているものをいう。フィッシャートロプシュワックスは、成分分子が比較的幅広い炭素数分布を持つワックスから成分分子が狭い炭素数分布を持つようにワックスを分取したものである。
【0055】
フィッシャートロプシュワックスとしては、サゾールワックス社のサゾールH1(商品名)、サゾールC80(商品名)、日本精蝋社のFT-115(商品名)が市販されている。
【0056】
天然ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、ペトロラタムが挙げられる。
【0057】
パラフィンワックスとは、減圧蒸留抽出油から分離生成した常温で固形のワックスである。代表的なパラフィンワックスとして、日本精蝋社製のParaffin Waxシリーズが挙げられる。
【0058】
マイクロクリスタリンワックスとは、減圧蒸留ボトムまたは重質抽出油から分離生成した常温で固形のワックスである。代表的なマイクロクリスタリンワックスとして、日本精蝋社製のHi-Micシリーズが挙げられる。
【0059】
ペトロラタムとしては、減圧蒸留ボトムから分離生成した常温で半固形のワックスである。代表的なペトロラタムとして、中央油化社製のCenton CPシリーズが挙げられる。
【0060】
これらのワックスは、単独で用いられても、複数種類が混合されても良い。
【0061】
本発明のホットメルト接着剤は、天然ワックスである“パラフィンワックス”を含んでいるのが好ましい。パラフィンワックスが配合されると、本発明のホットメルト接着剤は、凝集力が向上して硬くなるので、段ボールの積荷を解く際、段ボール基材が損傷することをも防止できる。
【0062】
<ホットメルト接着剤>
本発明のホットメルト接着剤では、成分(A)~(D)の総重量100重量部に対し、(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体の配合量は10~70重量部含まれていることが好ましく、特に30~70重量部が好ましく、40~65重量部が最も望ましい。
【0063】
(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体の配合量が上記範囲であることによって、本発明のホットメルト接着剤を段ボールに塗布した際、段ボール基材が損傷難くなり、パレットから段ボールが剥離し易くなる。
【0064】
本発明のホットメルト接着剤では、成分(A)~(D)の総重量100重量部に対し、(B1)プロピレン/エチレン/ブテン共重合体の配合量は2~20重量部が好ましく、特に5~20重量部が好ましく、5~15重量部が最も望ましい。
【0065】
(B1)プロピレン/エチレン/ブテン共重合体の配合量が上記範囲であることによって、本発明のホットメルト接着剤は、段ボールに塗布せれた際、段ボール表面の滑り止め性能により優れたものとなる。
【0066】
本発明のホットメルト接着剤では、成分(A)~(D)の総重量100重量部に対し、(C)粘着付与樹脂の配合量は10~40重量部が好ましく、特に15~40重量部が好ましく、20~30重量部が最も望ましい。
【0067】
(C)粘着付与樹脂の配合量が上記範囲であることによって、ホットメルト接着剤は、初期接着性が向上し、滑り止め性能が高まり、段ボール基材が損傷難く、パレットから段ボールを剥離し易くすることができる。
【0068】
本発明のホットメルト接着剤では、成分(A)~(D)の総重量100重量部に対し、(D)ワックスの配合量は5~20重量部が好ましく、特に5~15重量部が好ましく、5~10重量部が最も望ましい。
【0069】
(D)ワックスの配合量が上記範囲であることによって、ホットメルト接着剤は、粘度が低くなって各成分の相溶性が向上しつつ、凝集力も向上するので、滑り止め性能に優れたものとなり、段ボール基材損傷も防止することが可能になる。
【0070】
本発明のホットメルト接着剤は、可塑剤を含むことが好ましい。「可塑剤」は、ホットメルト接着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、エチレン系共重合体に相溶し、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。可塑剤として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイルを挙げることができる。無色、無臭であるパラフィン系オイルが特に好ましい。
【0071】
オイルが配合されると、成分(A)~(C)の相溶性が向上するので、本発明のホットメルト接着剤は、柔軟性が付与され、段ボール表面上の滑り性及び段ボール基材の損傷を防止し、なおかつ、糸曳きを低減でき、塗布性が向上する。
【0072】
可塑剤としては、市販品を用いることができる。例えば、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、出光興産社製のダイアナフレシアS32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW-90(商品名)、DNオイルKP-68(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エッソ社製のPrimol352(商品名)、日本サン石油社製のサンピュアN90(商品名)を例示することができる。これらの可塑剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0073】
本発明に係るホットメルト接着剤は、必要に応じて、更に各種添加剤を含んでもよい。そのような各種添加剤として、例えば、安定化剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤)、微粒子充填剤を例示することができる。
【0074】
「安定化剤」とは、ホットメルト接着剤の熱、空気及び光等による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、ホットメルト接着剤の安定性を向上するために配合されるものであり、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。安定化剤として、例えば、酸化防止剤及び紫外線吸収剤を例示することができる。
【0075】
「紫外線吸収剤」は、ホットメルト接着剤の耐光性を改善するために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト接着剤の酸化劣化を防止するために使用される。酸化防止剤及び紫外線吸収剤は、一般的にホットメルト接着剤に使用されるものであり、後述する目的とする紙製品を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。
【0076】
「酸化防止剤」として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を例示できる。更に、ラクトン系安定剤を添加することもできる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0077】
安定化剤として、市販品を使用することができる。例えば、住友化学工業(株)製のスミライザーGM(商品名)、スミライザーTPD(商品名)及びスミライザーTPS(商品名)、BASFジャパン社製のイルガノックス1010(商品名)、イルガノックスHP2225FF(商品名)、イルガフォス168(商品名)及びイルガノックス1520(商品名)、ADEKAのアデカスタブAO-60(商品名)、城北化学社製のJF77(商品名)、JP-650(商品名)を例示することができる。これら安定化剤は、単独でも組み合わせて使用できる。
【0078】
本発明のホットメルト接着剤は、更に、微粒子充填剤を含むことができる。微粒子充填剤は、一般に使用されているものであれば良く、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に限定されることはない。「微粒子充填剤」として、例えば雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、澱粉等を例示できる。これらの形状は、好ましくは球状であり、その寸法(球状の場合は直径)については特に限定されるものではない。
【0079】
本発明に係るホットメルト接着剤は、一般的に知られているホットメルト接着剤の製造方法を用いて、(A)結晶性オレフィン重合体、(B)非晶性オレフィン重合体、(C)粘着付与樹脂、(D)ワックス、更に必要に応じて可塑剤、上述の各種添加剤を配合して製造される。
【0080】
例えば、上述の成分を所定量配合し、加熱溶融して製造することができる。目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、各成分を加える順序、加熱方法等は、特に制限されるものではない。
【0081】
<ホットメルト接着剤が塗布された段ボール>
本発明に係るホットメルト接着剤は、加熱及び溶融され、段ボールの塗布部分に塗布、冷却及び固化されて、段ボール表面にホットメルト接着剤の塗膜を形成する。
【0082】
ホットメルト接着剤を塗布する方法は、本発明の目的を達成できれば特に制限されるものではないが、ホットメルトアプリケーターが広く利用される。ホットメルトアプリケーターとして、例えば、ノードソン社製のプロブルーP4メルター(商品名)、プロブルーP10メルター(商品名)等を例示することができる。
【0083】
塗布する方法は、例えば、接触塗布、非接触塗布に大別される。「接触塗布」とは、ホットメルト接着剤を塗布する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗布方法をいい、「非接触塗布」とは、ホットメルト接着剤を塗布する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗布方法をいう。接触塗布方法として、例えば、スロットコーター塗布及びロールコーター塗布等を例示でき、非接触塗布方法として、例えば、螺旋状に塗布できるスパイラル塗布、波状に塗布できるオメガ塗布やコントロールシーム塗布、面状に塗布できるスロットスプレー塗布やカーテンスプレー塗布、点状に塗布できるドット塗布、線状に塗布できるビード塗布等を例示できる。
【0084】
ホットメルトアプリケーターで本発明のホットメルト接着剤を塗布する場合(ホットメルトアプリケーターでホットメルト接着剤を地面と水平方向に吐出して、塗布する場合であっても)、ホットメルト接着剤の糸曳きが殆どなくなる。従って、被着体やアプリケーターが糸状物で汚れることがない。
【0085】
ホットメルト接着剤の塗布量は特に限定されないが、例えば、1~5g/mである。また、ホットメルト接着剤の塗布パターンは適宜決定すればよいが、例えば、ビード状である。
【0086】
段ボール表面に形成されたホットメルト接着剤の塗膜(固化後)は段ボールに対する摩擦力が大きい。そのことで、ホットメルト接着剤の塗膜の上に段ボール箱を積み重ねた状態で移動したり傾けたりした場合でも、荷崩れを防止できる。ホットメルト接着剤の塗膜は、段ボールの表面に対する静止摩擦係数が14以上であることが好ましく、より好ましくは16.5以上、更に好ましくは18以上である。
【0087】
また、ホットメルト接着剤の塗膜(固化後)は段ボールに対する付着力が低い。そのことで、ホットメルト接着剤の塗膜の上に段ボール箱を積み重ねた状態で保管した場合でも、接着剤の塗膜と接触している部分で段ボール基材が損傷することが防止される。
【0088】
本発明に係るホットメルト接着剤は、例えば、電子部品、木工、建築材料、衛生材料、紙製品等に幅広く利用されるが、複数の段ボールを積み重ねて保管するのに好適である。
【0089】
本発明のホットメルト接着剤は、積み重ねられた段ボール箱の荷崩れを防止し、かつ、段ボール基材を損傷させず、さらには、塗布性および糸曳き低減にも優れた“段ボール用ホットメルト接着剤”として特に有用である。
【0090】
本発明に係る段ボールとは、上述のホットメルト接着剤を用いて得られた段ボールである。本発明の段ボールとしては、特に、表面にホットメルト接着剤の塗膜が形成された段ボールであることが好ましい。
【0091】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。実施例に示した割合は、特に断らない限り不揮発分の重量を基準にしたものである。但し、実施例4及び5は参考例である。
【実施例】
【0092】
以下にホットメルト接着剤の原料、および配合、評価方法を記載する。
(A)結晶性オレフィン重合体
(A1-1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体(エチレン含有率:7.1重量%、融点:112℃、190℃溶融粘度:1850mPas、密度0.88g/cm3、エクソンモービル社製 ビスタマックスA((試作品))
(A1-2)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体(エチレン含有率:6.0重量%、融点:97℃、190℃溶融粘度:1200mPas、密度0.88g/cm3、エクソンモービル社製 ビスタマックス8880(商品名))
(A2)メタロセン系プロピレンホモポリマー(メルトフローレート:350g/10min:230℃、密度0.87g/cm3、出光興産社製、エルモーデュ S600(商品名))
(A3)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体(1-オクテン含有量:30~40重量%、融点:68℃、メルトフローレート:1000g/10min、ダウ・ケミカル社製 アフィニティGA1900(商品名))
(A4)低密度ポリエチレン(メルトフローレート:145g/10min、東ソー社製 ペトロセン353(商品名))
(A5)メタロセン系エチレン/ヘキセン共重合体(融点:95℃、東ソー社製 ニポロンZ HM510R(商品名))
(A6)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体(エチレン含有率:15.0重量%、メルトフローレート:20g/10min、密度0.86g/cm3、エクソンモービル社製 ビスタマックス6202(商品名))
【0093】
(B)非晶性オレフィン重合体
(B1-1)非晶性プロピレン/エチレン/ブテン共重合体(軟化点:124℃、190℃溶融粘度:2700mPas、エボニックデグサ社製 ベストプラスト703(商品名))
(B1-2)非晶性プロピレン/エチレン/ブテン共重合体(軟化点:105℃、190℃溶融粘度:3500mPas、エボニックデグサ社製 ベストプラスト704(商品名))
(B2)非晶性プロピレンホモポリマー(190℃溶融粘度1000mPas、軟化点155℃、密度0.87g/cm3、イーストマンケミカル社製 Eastflex PP1010PL(商品名))
(B3)非晶性プロピレン/エチレン共重合体(190℃溶融粘度450mPas、軟化点141℃、密度0.86g/cm3、ハンツマン社製 レキセンタック2304(商品名))
【0094】
(C)粘着付与樹脂
(C1)水添脂環式/芳香族共重合系炭化水素樹脂(軟化点:103℃、JXTGエネルギー社製 T-REZ HC103(商品名))
(C2)水添脂環式炭化水素樹脂(軟化点:103℃、JXTGエネルギー社製 T-REZ HA103(商品名))
(C3)水添脂環式炭化水素樹脂(軟化点:125℃、JXTGエネルギー社製 T-REZ HA125(商品名))
【0095】
(D)ワックス
(D1)フィッシャートロプシュワックス(融点:108℃、針入度2、サゾール社製 サゾールワックスH1(商品名))
(D2)フィッシャートロプシュワックス(融点:80℃、針入度7、サゾール社製 サゾールC80(商品名))
(D3)パラフィンワックス(融点:69℃、針入度12、日本精蝋社製 パラフィン155F(商品名))
(D4)マイクロスタリンワックス(融点:84℃、針入度12、日本精蝋社製 ハイミック1080(商品名))
(D5)ポリエチレンワックス(融点:109℃、針入度7、三井化学社製 ハイワックス320P(商品名))
(D6)ポリプロピレンワックス(融点:140/148℃、針入度1以下、三井化学社製 ハイワックスNP105(商品名))
【0096】
(E)可塑剤
(E1)パラフィンオイル(出光興産社製 ダイアナフレシアS32(商品名))
(E2)ナフテンオイル(日本サン石油社製 サンピュアN90(商品名))
【0097】
(F)酸化防止剤
(F1)フェノール系酸化防止剤(ADEKA社製 アデカスタブAO60(商品名))
(F2)リン系酸化防止剤(城北化学社製 JP650(商品名))
(F3)イオウ系酸化防止剤(住友化学社製 スミライザーTPS(商品名))
【0098】
これらの成分を表1及び表3に示す割合で、万能攪拌機を用い、約155℃で約1時間かけて溶融混合し、実施例及び比較例のホットメルト接着剤を調製した。これらホットメルト接着剤について、溶融粘度、段ボールに対する“最大静止摩擦係数”、傾斜角測定(滑り止め性能)及び段ボール基材損傷性を評価し、作業性を確認するためにオレフィン基材からの剥離性、染み出し、糸曳性を評価した。評価結果を表2及び表4に示す。
【0099】
<傾斜角測定:滑り止め性能>
Kライナー段ボールに、180℃で溶融させたホットメルト接着剤を塗布量3g/m、長さ3cmのビード状に塗布した。塗布から60秒後、50℃、23℃、0℃の恒温槽内で段ボールを養生した。さらに30秒後、このホットメルト接着剤上に3kg錘のついた別のKライナー段ボールを重ね合わせてサンプルとし、そのサンプルを傾斜可能な台に固定した。
【0100】
荷重150秒後、1秒経過毎に台を5°傾斜させていき、台上のサンプル(重ね合わせた段ボール)が滑り落ちた時の角度測を測定し、段ボールの材破状態を観察した。評価基準は以下のとおりである。
【0101】
◎:傾斜角が45°以上で、尚且つ、材料破壊なし
○:傾斜角が35°以上、45度未満で、尚且つ、材料破壊なし
×:傾斜角が35度未満、もしくは材料破壊
【0102】
<基材損傷性測定>
Kライナー段ボールに、180℃で溶融させたホットメルト接着剤を塗布量3g/m、長さ3cmのビード状に塗布した。ホットメルト接着剤が完全に固化した後、別の段ボールを重ね合わせ、重ね合わせた段ボールに3kgの錘を乗せ、荷重をかけた状態で、50℃、23℃、0℃の恒温槽中に24時間精置した。その後、各温度の恒温槽内で積み重ねた段ボールを手で剥離し、段ボールの状態を確認することで基材損傷性を評価した。段基材損傷性の評価基準を以下に示す。
【0103】
◎:損傷なし。
○:やや毛羽立ちあり。
×:損傷あり
【0104】
<オレフィン基材からの剥離性>
Kライナー段ボールに、180℃で溶融させたホットメルト接着剤を塗布量3g/m、長さ3cmのビード状に塗布した。ホットメルト接着剤が完全に固化した後、段ボール表面のホットメルト接着剤にポリプロピレン板を重ね合わせ、これら積層物をサンプルとした。サンプルに3kgの錘を乗せ、荷重をかけた状態で50℃、23℃、0℃の恒温槽中で24時間静置した。
【0105】
その後、各温度の恒温槽内でポリプロピレン板を段ボールから手で剥離し、ポリプロピレン板からホットメルト接着剤が界面剥離しているか否かを確認した。評価基準は以下のとおりである。
【0106】
◎:界面剥離。
○:ホットメルト接着剤に僅かな材料破壊あり。
×:段ボール基材の材料破壊あり
【0107】
<染み出し>
Kライナー段ボールに、180℃で溶融させたホットメルト接着剤を塗布量3g/m、長さ3cmのビード状に塗布した。ホットメルト接着剤が完全に固化した後、別の段ボールを重ね合わせ、重ね合わせた段ボールに3kgの錘を乗せ、荷重をかけた状態で、50℃の恒温槽中に24時間精置した。その後、恒温槽内で積み重ねられたKライナー段ボールを手で剥離し、段ボールへの染み出し状態を評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0108】
◎:染み出しなし
○:わずかに染み出しあり
×:染み出しあり
【0109】
<糸曳き性評価>
ホットメルトガンの先端から20cm離れた被着体に対し、ホットメルト接着剤を垂直に間欠塗布した.ホットメルトガンと被着体との間の落下物の状態を目視にて観察し、糸曳き性を評価した。尚、測定条件は以下のとおりである。
【0110】
温度設定:タンク内温度、ホース内温度、及びノズル内温度は全て180℃
ノズル径:14/1000インチ
ノズル:1oriffice(吐出口の数:1)
塗出圧力:0.3MPa
塗出ショット数:180ショット/1分
【0111】
評価基準は以下のとおりである。
◎:落下物の形状は粒状である。
○:落下物の形状は糸状であるが、糸状物の量が少ない。
×:落下物の形状は糸状であり、糸状物の量も多い。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
表2及び表4に示されるように、実施例1~11のホットメルト接着剤は、滑り止め性能に優れ、段ボール基材の損傷を防ぎ、オレフィン基材から段ボールを容易に剥離させることができる。従って、作業者が段ボールの荷解きや運搬を容易に行うことができる。
【0117】
さらに、実施例のホットメルト接着剤は、ホットメルトガンから噴出しても糸曳が殆どなく、段ボールへの染み出しもない。
【0118】
これに対し、比較例1~5のホットメルト接着剤は、滑り止め性能、基材損傷性、オレフィン基材からの剥離性のいずれかが著しく劣っている。
【0119】
比較例1、2のホットメルト接着剤は、成分(A1)を含まないので、50℃での滑り止め性能が低く、0℃で段ボール基材を損傷させてしまう。
【0120】
比較例3のホットメルト接着剤は、成分(B)を含んでいないため、0~23℃の滑り止め性能が低下している。
【0121】
比較例4のホットメルト接着剤は(C)粘着付与樹脂を含まず、比較例5のホットメルト接着剤は(D)ワックスを含まない。比較例4,5のホットメルト接着剤は、全ての性能が劣っており、ホットメルト接着剤として機能していない。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、ホットメルト接着剤を提供する。本発明に係るホットメルト接着剤は、段ボール用接着剤として有用であり、積み重ねられた段ボール箱の荷崩れを防止し、段ボール基材損傷を防止し、パレットから段ボールを容易に剥離させることができる。