(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】貝類の養殖方法
(51)【国際特許分類】
A01K 61/54 20170101AFI20230824BHJP
【FI】
A01K61/54
(21)【出願番号】P 2019059803
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】三宅 彩香
(72)【発明者】
【氏名】西城 晶子
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-019746(JP,A)
【文献】特開2000-300107(JP,A)
【文献】特開2017-163945(JP,A)
【文献】特開2015-167538(JP,A)
【文献】特開2019-033729(JP,A)
【文献】特開2002-315568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00-65/00
A01K 61/80-63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類を培養するための培養用の水の中に藻類を収容して、該藻類を培養する藻類培養工程と、
上記藻類培養工程で培養された上記藻類を、養殖の対象である貝類及びケイ酸カルシウム含有材料を収容した養殖用の水の中に供給する藻類供給工程と、
上記藻類供給工程で上記藻類が供給された上記養殖用の水の中で、上記貝類を、上記ケイ酸カルシウム含有材料の上方であって、上記ケイ酸カルシウム含有材料と接触
せず、かつ、上記貝類が排出する偽糞を上記ケイ酸カルシウム含有材料の近傍に落下させることができる位置において、上記養殖用の水をかけ流しながら養殖する貝類養殖工程を含み、
上記ケイ酸カルシウム含有材料は、6mm以下の粒度を有する材料を70質量%以上の割合で含み、かつ、上記ケイ酸カルシウム含有材料中、可溶性ケイ酸の含有率が10~50質量%で、可溶性石灰の含有率が10~39質量%であるものであ
り、
上記養殖用の水の中に収容される上記ケイ酸カルシウム含有材料の量が10~15g/リットルであることを特徴とする貝類の養殖方法。
【請求項2】
上記藻類培養工程において、上記培養用の水の中に、ケイ酸カルシウム含有材料を供給した後、上記藻類の培養を行う請求項
1に記載の貝類の養殖方法。
【請求項3】
上記培養用の水の中に供給される上記ケイ酸カルシウム含有材料の量が1~20g/リットルである請求項
2に記載の貝類の養殖方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貝類の養殖方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カキ等の貝類を養殖する方法として、種々の方法が知られている。
例えば、特許文献1には、周壁と底壁とを有し、海面から垂下されて槽内に供給された餌料が槽外に流出するのを防止すると共に、少なくとも周壁には所定の割合で槽内の海水を槽外の海水と交換する海水交換用の窓開口を備えた養殖槽と、この養殖槽を海面から垂下せしめる係留手段と、上記養殖槽内に餌料を供給する給餌手段と、上記養殖槽内の海水を流動させる海水流動化手段と、養殖を必要とする二枚貝を養殖槽内に保持する貝保持手段とを備えていることを特徴とする二枚貝の養殖システムが記載されている。
また、特許文献2には、肥料を収納した施肥容器を垂下式養殖場に設置することを特徴とする牡蠣又は帆立貝の養殖法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-300107号公報
【文献】特開2011-115183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、貝類の成長を促進することができる貝類の養殖方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、藻類を培養する工程と、培養された藻類を、貝類及びケイ酸カルシウム含有材料を収容した養殖用の水の中に供給する工程と、上記養殖用の水の中で貝類を養殖する工程を含む貝類の養殖方法によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]を提供するものである。
[1] 藻類を培養するための培養用の水の中に藻類を収容して、該藻類を培養する藻類培養工程と、上記藻類培養工程で培養された上記藻類を、養殖の対象である貝類及びケイ酸カルシウム含有材料を収容した養殖用の水の中に供給する藻類供給工程と、上記藻類供給工程で上記藻類が供給された上記養殖用の水の中で、上記貝類を養殖する貝類養殖工程を含むことを特徴とする貝類の養殖方法。
[2] 上記貝類の養殖が、上記養殖用の水をかけ流しながら行われるものである前記[1]に記載の貝類の養殖方法。
[3] 上記貝類が、上記ケイ酸カルシウム含有材料の上方であって、上記ケイ酸カルシウム含有材料と接触しない位置において養殖される前記[1]または[2]に記載の貝類の養殖方法。
[4] 藻類を培養するための藻類培養槽と、上記藻類培養槽で培養された藻類と、貝類と、ケイ酸カルシウム含有材料と、養殖用の水とを収容して、上記貝類を養殖するための貝類養殖槽と、上記藻類培養槽から上記貝類養殖槽に上記藻類を供給するための管路、を含むことを特徴とする貝類の養殖システム。
[5] 上記貝類養殖槽が、その底面の上方に、上記貝類を載置するための貝類載置用の棚を有する前記[4]に記載の貝類の養殖システム。
【発明の効果】
【0006】
本発明の貝類の養殖方法によれば、貝類の成長を促進することができ、出荷までの養殖期間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の貝類の養殖システムにおける貝類養殖槽の一例であって、該貝類養殖槽を鉛直方向に切断した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の貝類の養殖方法は、藻類を培養するための培養用の水の中に藻類を収容して、該藻類を培養する藻類培養工程と、該工程で培養された藻類を、養殖の対象である貝類及びケイ酸カルシウム含有材料を収容した養殖用の水の中に供給する藻類供給工程と、該工程で藻類が供給された養殖用の水の中で、貝類を養殖する貝類養殖工程を含むものである。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0009】
[藻類培養工程]
本工程は、藻類を培養するための培養用の水の中に藻類を収容して、該藻類を培養する工程である。
藻類としては、養殖される貝類が、餌として捕食することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、珪藻等が挙げられる。
藻類は、十分な量の藻類を確保することができ、その供給量を容易に調整することができる観点から、貝類を収容した養殖用の水(後述)とは別に用意された、藻類を培養するための培養用の水の中で培養される。なお、培養用の水は、通常、養殖用の水と同じもの(淡水、汽水または海水)を使用する。また、必要に応じて、他の成分を添加してもよい。
他の成分の一例としては、ビタミンB12、ビオチン、チアミン等のビタミン類等の栄養素が挙げられる。また、他の成分を含む公知の組成物の例としては、KW21、f/2、BBM、CSi、Chu-No.10、NN-1、WC、PES等の培養液(基礎培地)が挙げられる。
また、藻類の増殖を促進する観点から、培養用の水の中に、ケイ酸カルシウム含有材料(後述)を供給した後、藻類の培養を行ってもよい。
なお、藻類を培養するための培養用の水に供給されるケイ酸カルシウム含有材料の量は、好ましくは0.01~30g/リットル、より好ましくは1~20g/リットル、特に好ましくは3~15g/リットルである。
【0010】
[藻類供給工程]
本工程は、前工程で培養された藻類を、養殖の対象である貝類及びケイ酸カルシウム含有材料を収容した養殖用の水の中に供給する工程である。
通常、藻類は、培養用の水と共に、養殖用の水の中に供給される。
[貝類養殖工程]
本工程は、前工程で藻類が供給された養殖用の水の中で、貝類を養殖する工程である。
養殖の対象となる貝類としては、特に限定されるものではなく、例えば、カキ、アサリ、ハマグリ、シジミ、ホッキガイ等の二枚貝や、アワビ、サザエ、ウミニナ等の巻き貝等が挙げられる。
養殖用の水は、養殖の対象である貝類に合わせて、淡水、汽水または海水を用いることができる。
【0011】
本発明で用いられるケイ酸カルシウム含有材料の例としては、トバモライト、ゾノトライト、CSHゲル、フォシャジャイト、ジャイロライト、ヒレブランダイト、およびウォラストナイト等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
トバモライトとは、結晶性のケイ酸カルシウム水和物であり、Ca5・(Si6O18H2)・4H2O(板状の形態)、Ca5・(Si6O18H2)(板状の形態)、Ca5・(Si6O18H2)・8H2O(繊維状の形態)等の化学組成を有するものである。
ゾノトライトとは、結晶性のケイ酸カルシウム水和物であり、Ca6・(Si6O17)・(OH)2(繊維状の形態)等の化学組成を有するものである。
CSHゲルとは、αCaO・βSiO2・γH2O(ただし、α/β=0.7~2.3、γ/β=1.2~2.7である。)の化学組成を有するものである。具体的には、3CaO・2SiO2・3H2Oの化学組成を有するケイ酸カルシウム水和物等が挙げられる。
フォシャジャイトとは、Ca4(SiO3)3(OH)2等の化学組成を有するものである。
ジャイロライトとは、(NaCa2)Ca14(Si23Al)O60(OH)8・14H2O等の化学組成を有するものである。
ヒレブランダイトとは、Ca2SiO3(OH)2等の化学組成を有するものである。
ウォラストナイトとは、CaO・SiO2(繊維状又は柱状の形態)等の化学組成を有するものである。
【0012】
ケイ酸カルシウム含有材料は、該材料に含まれているケイ酸及びカルシウムの溶出量をより多くする観点から、粉粒物(粉状物あるいは粒状物)であることが好ましい。ケイ酸カルシウム含有材料の粒度は、ケイ酸及びカルシウムの溶出量をより多くする観点から、好ましくは6mm以下、より好ましくは5mm以下、特に好ましくは4.5mm以下である。該粒度の下限値は、粉砕に要するエネルギー削減の観点から、好ましくは0.001mm、より好ましくは0.005mm、特に好ましくは0.01mmである。
ケイ酸カルシウム含有材料の粒度分布は、ケイ酸及びカルシウムの溶出量をより多くする観点から、好ましくは6mm以下の粒度を有する材料を70質量%以上の割合で含むものであり、より好ましくは5mm以下の粒度を有する材料を70質量%以上の割合で含むものであり、特に好ましくは4.5mm以下の粒度を有する材料を70質量%以上の割合で含むものである。
なお、ケイ酸カルシウム含有材料からのケイ酸及びカルシウムの溶出量が多くなれば、貝類の成長がより促進される。
【0013】
ケイ酸カルシウム含有材料中の可溶性ケイ酸の含有率は、貝殻の形成及び珪藻の増殖に十分な量のケイ酸を溶出する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、特に好ましくは17質量%以上である。該含有率の上限値は、特に限定されるものではないが、入手の容易性等の観点から、通常、50質量%である。
ケイ酸カルシウム含有材料中の可溶性石灰の含有率は、貝殻の形成及び珪藻の増殖に十分な量のカルシウムを溶出する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、特に好ましくは17質量%以上である。該含有率の上限値は、特に限定されるものではないが、入手の容易性等の観点から、通常、39質量%である。
【0014】
可溶性ケイ酸及び可溶性石灰の各含有率は、0.5モル/リットルの塩酸水溶液(液温:30℃)に溶解する可溶性成分(ケイ酸または石灰)の質量割合であり、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)が監修した「肥料試験方法(2018)」に準拠して、測定することができる。
【0015】
養殖用の水に収容されるケイ酸カルシウム含有材料の量は、貝類の種類、個体数及び各固体の大きさや、ケイ酸カルシウム含有材料からのケイ酸およびカルシウムの溶出量によっても異なるが、好ましくは0.01g/リットル以上、より好ましくは1g/リットル以上、特に好ましくは3g/リットル以上である。該量が0.01g/リットル以上であれば、貝類の成長をより促進することができる。
上記量の上限値は、特に限定されないが、材料にかかるコストの低減や、養殖用の水の中にケイ酸カルシウム含有材料を収容する(供給する)際の労力を低減する等の観点から、好ましくは30g/リットル、より好ましくは20g/リットル、特に好ましくは15g/リットルである。
【0016】
貝類の養殖は、養殖用の水の水質を良好なものに維持する観点から、養殖用の水をかけ流しながら行うことが好ましい。具体的には、河川や海等の水源から汲み上げた養殖用の水を、養殖用の水が収容された容器(貝類養殖槽)に供給するとともに、該容器からあふれ出た養殖用の水を排出することを継続的に行いながら貝類の養殖を行う。
また、貝類は、ケイ酸カルシウム含有材料の上方であって、ケイ酸カルシウム含有材料と接触しない位置において養殖されることが好ましい。貝類をケイ酸カルシウム含有材料の上方の位置において養殖することによって、カキ等の貝類が排出する偽糞を、ケイ酸カルシウム含有材料の近傍に落下させて、該偽糞の分解を促進することができる。また、貝類とケイ酸カルシウム材料が接触しないようにすることによって、貝類が偽糞や蓄積したヘドロ中に埋もれることで殻が変色(硫化水素曝露による殻の黒変)することを防ぐことができる。
【0017】
以下、本発明の貝類の養殖システムの一例について、
図1を参照にしながら説明する。
貝類の養殖システム1は、藻類を培養するための藻類培養槽(図示せず。)と、藻類培養槽で培養された藻類と、貝類4と、ケイ酸カルシウム含有材料3と、養殖用の水9とを収容して、貝類4を養殖するための貝類養殖槽2と、藻類培養槽から貝類養殖槽2に藻類を供給するための管路5を含むものである。
貝類養殖槽2は、養殖用の水9を供給するための管路6を有していてもよい。養殖用の水9は、河川や海等の水源から、管路6を通って貝類養殖槽2に供給される。
また、貝類養殖槽2は、管路6から養殖用の水9を供給する際に、貝類養殖槽2からあふれ出た養殖用の水9を排出するための排水口10を有していてもよい。養殖用の水9は、排水口10を通って、河川や海等に排出される。
【0018】
藻類培養槽には、培養用の水(通常、養殖用の水と同じもの)と、藻類と、必要に応じて供給される他の成分が収容されている。培養用の水には、藻類の増殖を促進する観点から、ケイ酸カルシウム含有材料が投入されていてもよい。
藻類培養槽の一例としては、合成樹脂製の上方が開口した水槽と、該水槽に収容された培養用の水と、該水槽に付属する、培養用の水に差し込まれた空気供給管、及び、貝類養殖槽2に珪藻を供給するための管路5からなるものが挙げられる。
藻類培養槽において培養された藻類は、培養用の水と共に管路5を通って、貝類養殖槽2に供給される。管路5は、培養された藻類を、培養用の水と共にくみ上げるためのポンプや、貝類養殖槽2に供給される藻類の量(藻類を含む培養用の水の量)を調整するためのバルブや希釈用の養殖水供給ポンプ等の機構を有していてもよい。
また、一つの藻類培養槽に対して、複数の貝類養殖槽を設け、一つの藻類培養槽から複数の貝類養殖槽の各々に、藻類を供給してもよい。
【0019】
貝類養殖槽2は、水中に空気を供給するとともに、水中を撹拌するための空気供給管7を有していてもよい。
また、ケイ酸カルシウム含有材料3と貝類4が接触することを防ぐ目的で、貝類4を収容するための貝類載置用の棚8(例えば、金網で作製された、上方のみが開口した箱状のもの)を、貝類養殖槽2に供給されたケイ酸カルシウム含有物質3の上方に設けてもよい。貝類載置用の棚8は、少なくとも一部分に、通水性を有する部分(例えば、養殖用の水9は通過し、かつ、貝類4は通過しないような目開きの、網目状の部分)を有している。また、貝類載置用の棚8は、複数の段を有していてもよい。さらに、貝類載置用の棚8の代わりに、二枚貝等の一般的な垂下式養殖において使用される、垂下連を用いて貝類の養殖を行ってもよい。
貝類載置用の棚8や垂下連は、貝類養殖槽に直接固定されていてもよく、貝類載置用の棚8や垂下連を水中に固定するための、筏、延縄、ブイ等によって固定されていてもよい。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)ケイ酸カルシウム含有材料;1~4mmの粒度を有する材料を90質量%以上の割合で含む粉粒物
ケイ酸カルシウム含有材料中の可溶性ケイ酸の含有率を、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)が監修した「肥料試験方法(2018)」に準拠して、測定したところ、21.1質量%であった。
また、ケイ酸カルシウム含有材料中の可溶性石灰の含有率を、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)が監修した「肥料試験方法(2018)」に準拠して、測定したところ、18.7質量%であった。
【0021】
[実施例1]
図1に示す、ポリカーボネート製の30リットルの貝類養殖槽2に、養殖用の水9として、海からくみ上げた海水25リットルを供給した。海水は、管路6から常時供給され、あふれた海水を排水口10から排出することで、貝類養殖槽に収容されている海水の量は常時25リットルとなるようにした。また、1日に供給される海水の量は50リットルとし、海水の温度は18±3℃であった。
次いで、貝類養殖槽2にケイ酸カルシウム含有材料3を125g投入し、ケイ酸カルシウム含有材料の上方に設けられた貝類載置用の棚8に、イワガキの稚貝(貝類4)30個体を載置した。
また、ポリカーボネート製の10リットルの藻類培養槽に海水10リットルとケイ酸カルシウム含有材料50g投入した後、該藻類培養槽において珪藻(キートセロス グラシリス:Chaetoceros gracilis)を培養し、培養された珪藻を、培養液(海水)ごと管路5から貝類養殖槽に供給した。
珪藻の供給は、貝類4の成長の程度(大きさ)を考慮して、1日当たり約12.5億個の珪藻を、3回に分けて、通気撹拌(空気供給管7から空気を供給することによる撹拌)をしながら行った。
開始時、1、2、3週間経過時においてイワガキを回収し、タオルを用いてイワガキ表面の水分を十分にふき取った後、イワガキの合計質量を測定した。
また、イワガキの合計質量の増加率((イワガキの合計質量-開始時のイワガキの合計質量)/開始時のイワガキの合計質量×100(%))を算出した。
また、3週間経過後、全てのイワガキの殻を回収し、500℃で10時間焼成することで、炭化させて、次いで、得られた炭化物を、20質量%の塩酸に加熱しながら溶解させた後、固液分離を行い、得られたろ液から、イワガキの殻に含まれていたカルシウムの量をICP発光分析装置によって測定した。
【0022】
[実施例2]
貝類養殖槽に投入されるケイ酸カルシウム含有材料の量を250gとし、藻類培養槽に供給されるケイ酸カルシウム含有材料を10gとする以外は、実施例1と同様にしてイワガキの養殖を行った。
実施例1と同様にして、イワガキの合計質量の測定等を行った。
【0023】
[比較例1]
貝類養殖槽及び藻類培養槽にケイ酸カルシウム含有材料を使用せず、珪藻の供給量を、貝類4の成長の程度(大きさ)を考慮して、1日当たり約0.73億個とする以外は、実施例1と同様にしてイワガキの養殖を行った。
実施例1と同様にして、イワガキの合計質量の測定等を行った。
なお、実施例1~2および比較例1において、養殖の途中で斃死した固体はなかった。
それぞれの結果を表1に示す。
【0024】
【0025】
表1から、実施例1~2において養殖されたイワガキの質量(1週間経過後:6.94~7.08g、2週間経過後:8.71~10.72g、3週間経過後:9.50~12.03g)は、比較例1(ケイ酸カルシウム含有材料を供給しない場合)において養殖されたイワガキの質量(1週間経過後:5.17g、2週間経過後:5.21g、3週間経過後:5.26g)よりも大きいことがわかる。また、実施例1~2において養殖されたイワガキの合計質量の増加率(1週間経過後:42.5~46.4%、2週間経過後:75.3~126.2%、3週間経過後:91.1~153.8%)は、比較例1(ケイ酸カルシウム含有材料を供給しない場合)において養殖されたイワガキの合計質量の増加率(1週間経過後:9.8%、2週間経過後:10.6%、3週間経過後:11.7%)よりも大きいことがわかる。
これらのことから、実施例1~2では、貝類の成長が促進されていることがわかる。
また、実施例1~2において養殖されたイワガキの殻に含まれるカルシウムの量(2,298~2,840mg)は、比較例1において養殖されたイワガキの殻に含まれるカルシウムの量(1,522mg)よりも大きいことがわかる。また、実施例1~2において養殖されたイワガキの大きさと比較例1において養殖されたイワガキの大きさを目視によって比較したところ、実施例1~2において養殖されたイワガキのほうが大きかった。
これらのことから、実施例1~2では、貝類の貝殻の形成が促進されていることがわかる。
【符号の説明】
【0026】
1 貝類の養殖システム
2 貝類養殖槽
3 ケイ酸カルシウム含有材料
4 貝類
5 管路(藻類を供給するための管路)
6 管路(養殖用の水を供給するための管路)
7 空気供給管
8 貝類載置用の棚
9 養殖用の水
10 排水口