(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】ヘアキャッチャー
(51)【国際特許分類】
E03C 1/264 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
E03C1/264
(21)【出願番号】P 2019065805
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】竹内 立行
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
(72)【発明者】
【氏名】牧 道太郎
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-203770(JP,A)
【文献】特開2013-083101(JP,A)
【文献】特開2015-059375(JP,A)
【文献】特開2015-145563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れ込む水が通過する上縁部から立ち上がり、前記上縁部に沿って形成される立壁部と、水を通流させる水切り部
とを備え、前記水切り部の内側で旋回流を発生させるヘアキャッチャーであって、
前記立壁部は、前記水切り部の内側へ延びるように設けられる導入端部、および前記導入端部に間隔を空けて対向する終端部を有し、
前記水切り部は、
前記導入端部と前記終端部との間において前記上縁部から下方へ向かうにつれて旋回流の旋回方向へ延びる導水面を有
し、
前記導水面は、前記終端部側の側辺部が前記旋回方向に延びるように形成されていることを特徴とするヘアキャッチャー。
【請求項2】
前記水切り部は、底部と前記底部を囲む側面部とで形成される貯水部を有し、
前記導水面は、前記貯水部の上端部を回り込みながら前記貯水部に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のヘアキャッチャー。
【請求項3】
前記導水面は、前記水切り部の底部の周縁部を回り込みながら前記底部に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のヘアキャッチャー。
【請求項4】
前記導水面は2つ設けられており、
一の前記導水面は延びた先で、他の前記導水面に接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のヘアキャッチャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば浴室における洗い場床の排水部に配設されるヘアキャッチャーに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室の洗い場床や洗面台等の排水口には、髪の毛やゴミなどで排水管が詰まることを防ぐためにヘアキャッチャーが設けられている。例えば、特許文献1には、流入した排水を保水する凹状の保水部と、保水部の上部から延出し、排水中の髪の毛の流出を抑止しながら保水部に入りきらない排水を流出させる上部排水流出部と、洗い場床からの排水を保水部へ導く排水導入部とを備えるヘアキャッチャーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のヘアキャッチャーは、排水導入部から流れ込んでくる水で旋回流が発生するとしているが、上部排水流出部において旋回流を継続させるための工夫はされていなかった。このため、例えば2方向から水が入ってくると互いに衝突するなどして乱流となってしまう蓋然性があった。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、流れ込んだ水による旋回流が発生し易いヘアキャッチャーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るヘアキャッチャーは、水を通流させる水切り部を備え、前記水切り部の内側で旋回流を発生させるヘアキャッチャーであって、前記水切り部は、上縁部から下方へ向かうにつれて旋回流の旋回方向へ延びる導水面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流れ込んだ水による旋回流が発生し易い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るヘアキャッチャーの外観を示す斜視図である。
【
図4】変形例に係るヘアキャッチャーの平面図である。
【
図5】別の変形例に係るヘアキャッチャーの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに
図1から
図5を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0010】
(実施形態)
図1、
図2を参照する。ヘアキャッチャー100は、水切り部1および立壁部5を備える。水切り部1は、上縁部10、リブ構造3、通流孔4、貯水部2および導水面6を有し、椀状に形成されている。水切り部1は、例えば皿状および深皿状等に形成されていてもよく、全体として円柱状、錐台状または半球状などの様々な形状とすることができる。
【0011】
ヘアキャッチャー100は、
図2に示すように洗い場床8に設けられた排水口81に設置され、上方を蓋体82で覆われる。
図2に示す例では、洗い場床8の孔部に取り付けられたフランジ部80の内側面に爪81aが設けられており、上縁部10に設けた係止部10aを爪81aに係止させて、ヘアキャッチャー100を取り付けている。洗い場床8からの水は、立壁部5によって規制されて水切り部1へ流れ込む。尚、
図2において、洗い場床8、排水口81および蓋体82は断面で表されている。
【0012】
上縁部10は円環状であり、リブ構造3によって貯水部2と接続される。洗い場床8からの水は上縁部10を通って水切り部1の内側に流れ込む。リブ構造3は、複数の縦リブ31および複数の横リブ32を有し、上縁部10と貯水部2とを接続する。縦リブ31は貯水部2から上縁部10へ放射状に延びており、上縁部10から水切り部1の中央へ向かうにつれて下降する勾配を有している。縦リブ31の勾配は、一定であっても変化してもよい。
【0013】
図3を参照する。横リブ32は、複数の縦リブ31を周方向につなぐ円環状であり、貯水部2側から上方へ向かうにつれて内径が大きくなる。隣り合う縦リブ31および隣り合う横リブ32の間に通流孔4が形成されている。
【0014】
通流孔4は、水切り部1の内外を貫通するように設けられている。通流孔4には、水切り部1の内側における開口部41の一部を覆うように排水抵抗部42が形成されている。排水抵抗部42は、開口部41の縦リブ31における縁部41aよりも、周方向において通流孔4の中央へ張り出すように設けられている。
【0015】
排水抵抗部42は、通流孔4内に臨み、外部水流を水切り部1の内側に誘導する外部水流誘導面42aを有する。外部水流誘導面42aは、水切り部1の内側から外側に向かうにつれて外部水流の上流側へ延びるように傾斜する面として形成されており、水切り部1の外側で流れる外部水流を水切り部1の内側に引き込む。尚、排水抵抗部42は、外部水流誘導面42aを有しない構成であってもよい。
【0016】
排水抵抗部42は、上縁部10と貯水部2との間に形成される通流孔4の全てに設けられている。例えば、排水抵抗部42は、上縁部10に連なる上部に形成される通流孔4に設けられ、貯水部2側に近い通流孔4には設けないような構成としてもよい。また排水抵抗部42は、水切り部1において設けられていなくてもよい。
【0017】
貯水部2は、底部20、水抜き孔21および底部20を囲む側面部22を有し、椀状に形成されている。貯水部2は、例えば皿状および深皿状等に形成されていてもよく、全体として円柱状、錐台状または半球状などの様々な形状とすることができる。水抜き孔21は、貯水部2における側面部22の下端部に横方向に内外を貫通するように設けられている。
【0018】
立壁部5は、上縁部10から立ち上がるように上縁部10に沿って円弧状に形成されており、2つの回転対象な第1立壁部50および第2立壁部55で構成されている。第1立壁部50の導入端部51および第2立壁部の終端部57は、間隔を空けて対向しており、両者間に洗い場床8からの導水路が形成される。同様に、第2立壁部55の導入端部56および第1立壁部の終端部52は、間隔を空けて対向しており、両者の間に洗い場床8からの導水路が形成される。
【0019】
立壁部5における導入端部51および56は、水切り部1の内側へ延びるように設けられている。導入端部51および56は、水切り部1の下方向に向かうにつれて、周方向の一側へ延びるように傾斜している。導入端部51および56は、水切り部1の下方向に向かうにつれて、上方から見て時計まわりの方向へ延びるように傾斜している。
【0020】
立壁部5における導入端部51と終端部57との間において、上縁部10から貯水部2へ延びる導水面6が形成されている。また同様に導入端部56と終端部52との間において、上縁部10から貯水部2へ延びる導水面6が形成されている。導水面6は、下方向に向かうにつれて、周方向の一側へ延びるように傾斜している。導水面6は、導入端部51および56と同様に、水切り部1の下方向に向かうにつれて、上方から見て時計まわり方向へ延びるように傾斜している。尚、
図3に示す水切り部1では導水面6に通流孔4が設けられていないが、疎らに通流孔4を設けるようにしてもよい。
【0021】
導水面6は、立壁部5において発生させる旋回流の旋回方向へ向かって延びるように設けられている。したがって、ヘアキャッチャー100に立壁部5が設けられておらず、ヘアキャッチャー100の上縁部10に至るまでに、流れ込む水に旋回流を発生させるような場合にも、導水面6は、該旋回流の旋回方向へ向かって延びるように設けるとよい。例えば、
図2に示した蓋体82の裏側やフランジ部80等に流れの方向を規制する部分を設け、ヘアキャッチャー100に流れ込む水に方向性を与えて旋回流が発生するようにできる。
【0022】
導水面6を水が進行する道と見立てて、その両側辺となっている側辺部61aおよび側辺部61bについて説明する。側辺部61aは、上縁部10における導水面6の入り口60の端部60aから始まり、立壁部5の導入端部51および56に沿って下降しつつ旋回流の旋回方向へ向かって延びる。側辺部61aは、導入端部51および56を超えたところで、下方向へ延びて貯水部2の上端部22cに接続される。側辺部61aは、全体として、入り口60の端部60aから旋回流の旋回方向へ延び、貯水部2の上端部22cに回り込みながら接続される。
【0023】
側辺部61bは、導水面6の入り口60の端部60bから始まり、下降しつつ旋回流の旋回方向へ延び、貯水部2の上端部22cに回り込みながら接続される。このようにして、導水面6は、上縁部10の入り口60から始まり、下降しつつ旋回流の旋回方向へ延び、貯水部2の上端部22cに回り込みながら接続される。
【0024】
次に実施形態に係るヘアキャッチャー100の動作について説明する。ヘアキャッチャー100の上縁部10から水切り部1の上部に流れ込んだ水は、導水面6に沿ってヘアキャッチャー100の内側を流下し、
図3に矢印で示すように旋回流を発生する。水切り部1の内側を流下する水は、その一部が
図3に矢印Q1で示すように通流孔4を通して水切り部1の外側に排水される。水切り部1の内側を流下する水は、通流孔4に設けられた排水抵抗部42によって排水が制限されるため、矢印Q2で示すように水切り部1の内側に留まって流下することで、旋回流が発生し易くなる。
【0025】
排水抵抗部42は、通流孔4の開口部41のうち、水が流れ込む方向の先にある縦リブ31における縁部41aの側において、周方向に通流孔4の中央へ張り出すように設けられている。このため、水切り部1の内側を流下する水が排水抵抗部42に当たって水切り部1の内側に戻され易くなる。
【0026】
導水面6は、下降するにつれて旋回流の旋回方向へ延びていることから旋回流が発生し易くなる。また、導水面6は、側辺部61aおよび61bを含めて全体的に、入り口60から貯水部2の上端部22cに回り込みながら接続されるので、貯水部2での旋回流の発生を促進する。
【0027】
ヘアキャッチャー100は、水切り部1の内側において旋回流が発生することで、髪の毛等を貯水部2にまとめ、清掃が容易になる。貯水部2には、水抜き孔21が設けられている。旋回流発生時には水の一部が水抜き孔21から抜けつつも貯水部2に水が貯まった状態となり、水の流れ込みが止んだ後、貯水部2に貯まった水が時間経過とともに水抜き孔21から排水される。
【0028】
(変形例)
図4を参照する。この変形例に係るヘアキャッチャー100には、立壁部5が設けられておらず、ヘアキャッチャー100の上縁部10に至るまでに旋回流が発生しているものとする。導水面6の側辺部61aおよび側辺部61bは、入り口60のそれぞれの端部60aおよび60bから始まり、下降しつつ旋回流の旋回方向へ延びるように形成されている。
【0029】
ヘアキャッチャー100の上縁部10に旋回しながら流れ込んだ水は導水面6に沿って旋回しながら流下し、ヘアキャッチャー100内で旋回流が発生し易くなる。また、導水面6が貯水部2の上端部22cに回り込みながら接続されることで貯水部2での旋回流の発生を促進する。
【0030】
図5を参照する。この変形例に係るヘアキャッチャー100は、導水面6が底部20の周縁部20aへ接続される構成となっている。導水面6の側辺部61aは、上縁部10における導水面6の入り口60の端部60aから始まり、立壁部5の導入端部51および56に沿って下降しつつ旋回流の旋回方向へ向かって延びる。側辺部61aは、導入端部51および56を超えたところで、下方向へ延びて底部20へ接続される。側辺部61aは、全体として、入り口60の端部60aから旋回流の旋回方向へ延び、底部20の周縁部20aに回り込みながら接続される。
【0031】
側辺部61bは、導水面6の入り口60の端部60bから始まり、下降しつつ旋回流の旋回方向へ延び、底部20の周縁部20aに回り込みながら接続される。また、側辺部61bは、対向する導水面6に位置Sで接続されている。導水面6は、上縁部10の入り口60から始まり、下降しつつ旋回流の旋回方向へ延び、底部20の周縁部20aに回り込みながら接続される。また、導水面6は、旋回方向へ延びた先で、対向する導水面6に接続されている。
【0032】
ヘアキャッチャー100の上縁部10から流れ込んだ水は導水面6に沿って旋回しながら流下し、ヘアキャッチャー100内で旋回流が発生し易くなる。また、導水面6が底部20の周縁部20aに回り込みながら接続されることで、底部20での旋回流の発生を促進する。
【0033】
また、導水面6が旋回方向へ延びた先で対向する導水面6に接続されていることで、導水面6に沿って流れる水を、対向する導水面6に沿って同じ旋回方向に流れる水に合流させることができ、ヘアキャッチャー100内での旋回流の発生が促進される。例えば、導水面6が3つ以上形成されていれば、一の導水面6は延びた先において隣り合う他の導水面に接続されるようにすればよい。
【0034】
次に、実施形態および変形例のヘアキャッチャー100の特徴を説明する。
本発明の各実施形態および変形例のヘアキャッチャー100は、水を通流させる水切り部1を備え、水切り部1の内側で旋回流を発生させる。水切り部1は、上縁部10から下方へ向かうにつれて旋回流の旋回方向へ延びる導水面6を有する。これにより、ヘアキャッチャー100は、流れ込んだ水による旋回流が発生し易くなる。
【0035】
また水切り部1は、底部20と底部20を囲む側面部22とで形成される貯水部2を有する。導水面6は、貯水部2の上端部22cを回り込みながら貯水部2に接続されている。これにより、ヘアキャッチャー100は、貯水部2での旋回流の発生を促進する。
【0036】
また導水面6は、水切り部1の底部20の周縁部20aを回り込みながら底部20に接続されている。これにより、ヘアキャッチャー100は、底部20での旋回流の発生を促進する。
【0037】
また導水面6は2つ設けられており、一の導水面6は延びた先で、他の導水面6に接続されている。これにより、ヘアキャッチャー100は、導水面6に沿って流れる水を、他の導水面6に沿って同じ旋回方向に流れる水に合流させることができ、ヘアキャッチャー100内での旋回流の発生が促進される。
【0038】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0039】
1 水切り部、 10 上縁部、 2 貯水部、 20 底部、 20a 周縁部、
22 側面部、 22c 上端部、 6 導水面、 100 ヘアキャッチャー。