IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXILグループの特許一覧

<>
  • 特許-ヘアキャッチャー 図1
  • 特許-ヘアキャッチャー 図2
  • 特許-ヘアキャッチャー 図3
  • 特許-ヘアキャッチャー 図4
  • 特許-ヘアキャッチャー 図5
  • 特許-ヘアキャッチャー 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】ヘアキャッチャー
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/264 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
E03C1/264
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019065806
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165164
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】竹内 立行
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
(72)【発明者】
【氏名】牧 道太郎
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-053692(JP,A)
【文献】特開2011-021412(JP,A)
【文献】特開2010-203167(JP,A)
【文献】特開2009-167769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れ込む水が通過する上縁部から立ち上がり、前記上縁部に沿って形成される立壁部と、水を通流させる水切り部を備えるヘアキャッチャーであって、
前記水切り部は、底部と前記底部を囲む側面部とで形成される貯水部、および前記上縁部から延びて前記側面部に接続される導水面を有し、
前記導水面および前記側面部の接続部分における前記導水面と前記側面部側の内側面の勾配が同じであり、
前記導水面は、前記立壁部における一端部と前記一端部に間隔を空けて対向する他端部との間において前記上縁部から前記貯水部へ延びるように形成されており、
前記導水面には通流孔が設けられていないことを特徴とするヘアキャッチャー。
【請求項2】
前記導水面および前記内側面の勾配が一定であることを特徴とする請求項1に記載のヘアキャッチャー。
【請求項3】
水を通流させる水切り部を備えるヘアキャッチャーであって、
前記水切り部は、底部と前記底部を囲む側面部とで形成される貯水部、および上縁部から延びて前記側面部に接続される導水面を有し、
前記導水面および前記側面部の接続部分における前記導水面と前記側面部側の内側面の勾配が同じであり、
前記導水面および前記内側面は、前記上縁部から前記底部にかけて内側に対して凹状に湾曲していることを特徴とするヘアキャッチャー。
【請求項4】
水を通流させる水切り部を備えるヘアキャッチャーであって、
前記水切り部は、底部と前記底部を囲む側面部とで形成される貯水部、および上縁部から延びて前記側面部に接続される導水面を有し、
前記導水面および前記側面部の接続部分における前記導水面と前記側面部側の内側面の勾配が同じであり、
前記導水面および前記内側面は、前記上縁部から前記底部にかけて内側に対して凸状に湾曲していることを特徴とするヘアキャッチャー。
【請求項5】
前記導水面は、前記水切り部の内側に発生する旋回流の旋回方向に、前記上縁部から延びるように形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のヘアキャッチャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば浴室における洗い場床の排水部に配設されるヘアキャッチャーに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室の洗い場床や洗面台等の排水口には、髪の毛やゴミなどで排水管が詰まることを防ぐためにヘアキャッチャーが設けられている。例えば、特許文献1には、流入した排水を保水する凹状の保水部と、保水部の上部から延出し、排水中の髪の毛の流出を抑止しながら保水部に入りきらない排水を流出させる上部排水流出部と、洗い場床からの排水を保水部へ導く排水導入部とを備えるヘアキャッチャーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-163116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のヘアキャッチャーは、排水導入部から保水部へ水を流して旋回流を発生させるが、排水導入部における勾配と保水部の内側面の勾配とで差異がある。このため、保水部へ水が流れ込む際に方向が変化し、旋回流に乱れが生じてしまう蓋然性があった。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、流れ込んだ水による旋回流が発生し易いヘアキャッチャーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るヘアキャッチャーは、水を通流させる水切り部を備えるヘアキャッチャーであって、前記水切り部は、底部と前記底部を囲む側面部とで形成される貯水部、および上縁部から延びて前記側面部に接続される導水面を有し、前記導水面および前記側面部の接続部分における前記導水面と前記側面部側の内側面の勾配が同じであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流れ込んだ水による旋回流が発生し易い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るヘアキャッチャーの外観を示す斜視図である。
図2】ヘアキャッチャーの側面図である。
図3】ヘアキャッチャーの平面図である。
図4図3に示すA-A線によるヘアキャッチャーの断面図である。
図5】変形例に係るヘアキャッチャーの平面図である。
図6図6(a)および図6(b)は、別の変形例に係るヘアキャッチャーの図4に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図1から図6を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0010】
(実施形態)
図1図2を参照する。ヘアキャッチャー100は、水切り部1および立壁部5を備える。水切り部1は、上縁部10、リブ構造3、通流孔4、貯水部2および導水面6を有し、椀状に形成されている。水切り部1は、例えば皿状および深皿状等に形成されていてもよく、全体として円柱状、錐台状または半球状などの様々な形状とすることができる。
【0011】
ヘアキャッチャー100は、図2に示すように洗い場床8に設けられた排水口81に設置され、上方を蓋体82で覆われる。図2に示す例では、洗い場床8の孔部に取り付けられたフランジ部80の内側面に爪81aが設けられており、上縁部10に設けた係止部10aを爪81aに係止させて、ヘアキャッチャー100を取り付けている。洗い場床8からの水は、立壁部5によって規制されて水切り部1へ流れ込む。尚、図2において、洗い場床8、排水口81および蓋体82は断面で表されている。
【0012】
上縁部10は円環状であり、リブ構造3によって貯水部2と接続される。洗い場床8からの水は上縁部10を通って水切り部1の内側に流れ込む。リブ構造3は、複数の縦リブ31および複数の横リブ32を有し、上縁部10と貯水部2とを接続する。縦リブ31は貯水部2から上縁部10へ放射状に延びており、上縁部10から水切り部1の中央へ向かうにつれて下降する勾配を有している。縦リブ31の勾配は、一定であっても変化してもよい。
【0013】
図3を参照する。横リブ32は、複数の縦リブ31を周方向につなぐ円環状であり、貯水部2側から上方へ向かうにつれて内径が大きくなる。隣り合う縦リブ31および隣り合う横リブ32の間に通流孔4が形成されている。
【0014】
通流孔4は、水切り部1の内外を貫通するように設けられている。通流孔4には、水切り部1の内側における開口部41の一部を覆うように排水抵抗部42が形成されている。排水抵抗部42は、開口部41の縦リブ31における縁部41aよりも、周方向において通流孔4の中央へ張り出すように設けられている。
【0015】
排水抵抗部42は、通流孔4内に臨み、外部水流を水切り部1の内側に誘導する外部水流誘導面42aを有する。外部水流誘導面42aは、水切り部1の内側から外側に向かうにつれて外部水流の上流側へ延びるように傾斜する面として形成されており、水切り部1の外側で流れる外部水流を水切り部1の内側に引き込む。尚、排水抵抗部42は、外部水流誘導面42aを有しない構成であってもよい。
【0016】
排水抵抗部42は、上縁部10と貯水部2との間に形成される通流孔4の全てに設けられている。例えば、排水抵抗部42は、上縁部10に連なる上部に形成される通流孔4に設けられ、貯水部2側に近い通流孔4には設けないような構成としてもよい。また排水抵抗部42は、水切り部1において設けられていなくてもよい。
【0017】
貯水部2は、底部20、水抜き孔21および底部20を囲む側面部22を有し、椀状に形成されている。貯水部2は、例えば皿状および深皿状等に形成されていてもよく、全体として円柱状、錐台状または半球状などの様々な形状とすることができる。水抜き孔21は、貯水部2における側面部22の下端部に横方向に内外を貫通するように設けられている。
【0018】
立壁部5は、上縁部10から立ち上がるように上縁部10に沿って円弧状に形成されており、2つの回転対象な第1立壁部50および第2立壁部55で構成されている。第1立壁部50の導入端部51および第2立壁部の終端部57は、間隔を空けて対向しており、両者間に洗い場床8からの導水路が形成される。同様に、第2立壁部55の導入端部56および第1立壁部の終端部52は、間隔を空けて対向しており、両者の間に洗い場床8からの導水路が形成される。
【0019】
立壁部5における導入端部51および56は、水切り部1の内側へ延びるように設けられている。導入端部51および56は、水切り部1の下方向に向かうにつれて、周方向の一側へ延びるように傾斜している。導入端部51および56は、水切り部1の下方向に向かうにつれて、上方から見て時計まわりの方向へ延びるように傾斜している。
【0020】
立壁部5における導入端部51と終端部57との間において、上縁部10から貯水部2へ延びる導水面6が形成されている。また同様に導入端部56と終端部52との間において、上縁部10から貯水部2へ延びる導水面6が形成されている。導水面6は、下方向に向かうにつれて、周方向の一側へ延びるように傾斜している。導水面6は、導入端部51および56と同様に、水切り部1の下方向に向かうにつれて、上方から見て時計まわり方向へ延びるように傾斜している。尚、図3に示す水切り部1では導水面6に通流孔4が設けられていないが、疎らに通流孔4を設けるようにしてもよい。
【0021】
導水面6は、立壁部5において発生させる旋回流の旋回方向へ向かって延びるように設けられている。したがって、ヘアキャッチャー100に立壁部5が設けられておらず、ヘアキャッチャー100の上縁部10に至るまでに、流れ込む水に旋回流を発生させるような場合にも、導水面6は、該旋回流の旋回方向へ向かって延びるように設けるとよい。例えば、図2に示した蓋体82の裏側やフランジ部80等に流れの方向を規制する部分を設け、ヘアキャッチャー100に流れ込む水に方向性を与えて旋回流が発生するようにできる。
【0022】
図4を参照する。導水面6は、上縁部10から貯水部2へ延びて側面部22の上端部である接続部分Tで側面部22の内側面22aに接続される。側面部22の内側面22aのうち接続部分Tの直下部分である内側面22aの上部22bの勾配は、接続部分Tの直上部分である導水面6の下部62の勾配と同じとしてある。これは、接続部分Tに上側から近づいたときの勾配と下側から近づいたときの勾配が同じであるという意味である。
【0023】
本実施形態では、導水面6および内側面22aは、上縁部10から底部20にかけて下方に向かう勾配が一定であり、図4に示すように断面に現れる内側面の交線Mは直線となっている。
【0024】
次に実施形態に係るヘアキャッチャー100の動作について説明する。ヘアキャッチャー100の上縁部10から水切り部1の上部に流れ込んだ水は、導水面6に沿ってヘアキャッチャー100の内側を流下し、図3に矢印で示すように旋回流を発生する。水切り部1の内側を流下する水は、その一部が図3に矢印Q1で示すように通流孔4を通して水切り部1の外側に排水される。水切り部1の内側を流下する水は、通流孔4に設けられた排水抵抗部42によって排水が制限されるため、矢印Q2で示すように水切り部1の内側に留まって流下することで、旋回流が発生し易くなる。
【0025】
排水抵抗部42は、通流孔4の開口部41のうち、水が流れ込む方向の先にある縦リブ31における縁部41aの側において、周方向に通流孔4の中央へ張り出すように設けられている。このため、水切り部1の内側を流下する水が排水抵抗部42に当たって水切り部1の内側に戻され易くなる。
【0026】
導水面6は、下降するにつれて旋回流の旋回方向へ延びていることから旋回流が発生し易くなる。図4に示すように接続部分Tの直下部分である内側面22aの上部22bの勾配は、接続部分Tの直上部分である導水面6の下部62の勾配と同じであり、水流がスムーズに導水面6から貯水部2へ流れるので旋回流が発生し易くなる。また、本実施形態では、導水面6および内側面22aは、上縁部10から底部20にかけて下方に向かう勾配が一定であり、上縁部10から底部20にかけて水流の乱れが抑制され、髪の毛等がスムーズに貯水部2へ運ばれる。
【0027】
ヘアキャッチャー100は、水切り部1の内側において旋回流が発生することで、髪の毛等を貯水部2にまとめ、清掃が容易になる。貯水部2には、水抜き孔21が設けられている。旋回流発生時には水の一部が水抜き孔21から抜けつつも貯水部2に水が貯まった状態となり、水の流れ込みが止んだ後、貯水部2に貯まった水が時間経過とともに水抜き孔21から排水される。
【0028】
(変形例)
図5を参照する。この変形例に係るヘアキャッチャー100は、導水面6が上縁部10から直下方向へ延びて貯水部2へ接続される。導水面6を通って流下した水は、例えば貯水部2において底部20を通過した後、貯水部2の側面部22で上昇し、水平軸まわりに旋回して戻るような水流となる。
【0029】
導水面6と貯水部2の下方に向かう勾配は、上述の実施形態において図4に基づき説明した勾配と同様に一定であり、水が導水面6から貯水部2へとスムーズに流れ落ち、上述のように旋回する水流が発生し易くなる。
【0030】
図6(a)および図6(b)を参照する。図6(a)に示すヘアキャッチャー100は、接続部分Tの直下の内側面22aにおける下方に向かう勾配は、接続部分Tの直上の導水面6における下方に向かう勾配と同じとしてある。上述の実施形態と同様に、接続部分Tに上側から近づいたときの勾配と下側から近づいたときの勾配が同じであるという意味である。
【0031】
導水面6および側面部22の内側面22aは、交線Mで示すように、上縁部10から底部20にかけて内側に対して凹状に湾曲している。導水面6および内側面22aは、接続部分Tにおいて屈曲することなく滑らかに接続されており、水流の乱れが抑制され、髪の毛等がスムーズに貯水部2へ運ばれる。
【0032】
図6(b)に示すヘアキャッチャー100も、接続部分Tの直下の内側面22aにおける下方に向かう勾配は、接続部分Tの直上の導水面6における下方に向かう勾配と同じとしてある。導水面6および側面部22の内側面22aは、交線Mで示すように、上縁部10から底部20にかけて内側に対して凹状に湾曲している。導水面6および内側面22aは、接続部分Tにおいて屈曲することなく滑らかに接続されており、水流の乱れが抑制され、髪の毛等がスムーズに貯水部2へ運ばれる。
【0033】
次に、実施形態および変形例のヘアキャッチャー100の特徴を説明する。
本発明の各実施形態および変形例のヘアキャッチャー100は、水を通流させる水切り部1を備える。水切り部1は、底部20と底部20を囲む側面部22とで形成される貯水部2、および上縁部10から延びて側面部22に接続される導水面6を有する。導水面6および側面部22の接続部分Tにおける導水面6と側面部22側の内側面22aの勾配が同じである。これにより、ヘアキャッチャー100は、流れ込んだ水による旋回流が発生し易くなる。
【0034】
また導水面6および内側面22aの勾配が一定である。これにより、ヘアキャッチャー100は、水流の乱れが抑制され、髪の毛等がスムーズに貯水部2へ運ばれる。
【0035】
また導水面6および内側面22aは、上縁部10から底部20にかけて内側に対して凹状に湾曲している。これにより、ヘアキャッチャー100は、水流の乱れが抑制され、髪の毛等がスムーズに貯水部2へ運ばれる。
【0036】
また導水面6および内側面22aは、上縁部10から底部20にかけて内側に対して凸状に湾曲している。これにより、ヘアキャッチャー100は、水流の乱れが抑制され、髪の毛等がスムーズに貯水部2へ運ばれる。
【0037】
また導水面6は、水切り部1の内側に発生する旋回流の旋回方向に、上縁部10から延びるように形成されている。これにより、ヘアキャッチャー100は、旋回流が発生し易くなる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0039】
1 水切り部、 10 上縁部、 2 貯水部、 20 底部、 22 側面部、
22a 内側面、 6 導水面、 100 ヘアキャッチャー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6