(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】取着体及び挟持体
(51)【国際特許分類】
F16B 2/24 20060101AFI20230824BHJP
F16B 7/04 20060101ALI20230824BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
F16B2/24 D
F16B7/04 302D
H02G3/30
(21)【出願番号】P 2019070578
(22)【出願日】2019-04-02
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 玄二
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-070475(JP,A)
【文献】特開昭56-153108(JP,A)
【文献】特許第6484872(JP,B1)
【文献】特開2018-189154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 1/00- 1/04
F16B 2/00- 2/26
F16B 7/00- 7/22
H02G 3/22- 3/40
F16L 3/00- 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸材に取着される取着体であって、
本体と、
前記本体に別体として組み付けられる板バネ部材からなり、本体外面との間に軸材の挟持空間を形成するように本体外面に対向して基端から先端に延びるとともに前記本体外面と近接又は離間する方向に弾性変位可能な挟持部、及び、前記軸材を前記挟持空間に受け入れ可能に先端側に開放する導入部を有する挟持体と、
前記挟持空間よりも基端側で前記挟持部を貫通し、前記本体外面側に螺進して前記挟持部が前記本体外面から離間することを規制するボルト体と、を備え、
前記挟持体は、基端から先端に延びるとともに前記本体外面に沿って配置される基部、及び、前記挟持部の基端と前記基部の基端とを連結する連結部をさらに備え、
前記基部の基端と前記連結部とを接続する部位が、前記挟持部の基端と前記連結部とを接続する部位よりも大きく湾曲
し、
前記挟持部には、前記ボルト体が貫通するための基端側から先端側に延びる貫通部が長孔として形成され、前記挟持部の先端側を前記本体から離間するように傾動変位させた際に前記ボルト体が前記長孔の長手方向に相対スライドすることを特徴とする取着体。
【請求項2】
本体を軸材に取着するための挟持体であって、
前記本体に別体として組み付けられる板バネ部材からなり、
基端から先端に延びるととも
に本体外面に沿って配置される基部と、
前記本体外面との間に軸材の挟持空間を形成するように
前記本体外面に対向して基端から先端に延びるとともに前記本体外面と近接又は離間する方向に弾性変位可能な挟持部と、
前記挟持部の基端と前記基部の基端とを連結する連結部と、
前記軸材を前記挟持空間に受け入れ可能に先端側に開放した導入部と、
前記挟持空間よりも基端側でボルト体を挿通可能とするように前記挟持部に貫通形成されたボルト孔と、を備え、
前記基部の基端と前記連結部とを接続する部位が、前記挟持部の基端と前記連結部とを接続する部位よりも大きく湾曲しており、
前記ボルト孔は、前記挟持部の基端側から先端側に延びる長孔であり、前記挟持部の先端側を前記本体から離間するように傾動変位させた際に前記ボルト体が前記長孔の長手方向に相対スライド可能であり、
前記ボルト体が前記ボルト孔内で前記本体外面側に螺進し、前記ボルト体が前記挟持部の外面を係止して、前記挟持部が前記本体外面から離間することを規制することを特徴とする挟持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊りボルト等の軸材に取り付けられる取着体、及び、本体を軸材に取着するための挟持体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の天井に吊り下げられた吊りボルト等の軸材に対して取着される種々の取着体が存在する。
【0003】
特許文献1は、建造物の天井部等から吊り下げられた吊りボルトに対して、ケーブル支持具等の各種部材を取り付けるための取付機構を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。吊りボルト用取付機構は、本体部(21)の前面(21d)側と補助具(30)との間で吊りボルトの側面を挟み、補助具(30)を通過し本体部(21)の前面(21d)に螺着するボルト(50)の締め付けにより、本体部(21)を吊りボルトに固定するものである。補助具(30)の一端側に突設された脚部(33)と他端側に形成された補助側係合部(34)との間に、ボルト(50)を通過させるボルト通過穴(31)が形成される。ボルト通過穴(31)の一端側には、補助具(30)を回動操作する際の滑り止め用の2本のリブ(32)が横並びに突設されている。本体部(21)の前面(21d)には、ボルト(50)を締め付けるためのネジ穴の側方位置で補助具(30)の脚部(33)を受け入れ、脚部(33)を支点として、補助具(30)の他端側が本体部(21)の前面(21d)に対して接近および離反する方向への回動を可能にする脚部受入穴(24)が設けられている。補助具(30)は、コイルバネ(40)により、その他端側が本体部(21)の前面(21a)に接近する方向に付勢されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の取付機構(取着体)では、脚部を本体部の脚部受入穴に挿入した上で、脚部を支点として補助具が回動することにより、補助具の他端の開口が開閉する。そして、吊りボルトに係合する補助側係合部よりも支点側にボルトとともにコイルバネを配置することにより、補助具の開口の開閉動作に弾性を付与している。しかしながら、特許文献1の取付機構では、このようにコイルバネを配置するスペースを確保する必要があることから、全体形状をコンパクトに形成することが困難となる。また、本体部に補助具を組み付けるときにコイルバネの組み付けが面倒であり、且つ、ボルトを取り外したときにコイルバネを紛失することもあり、取付機構をより簡易な機構とすることが求められている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、より簡易な機構を有する取着体及び挟持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態の取着体は、軸材に取着される取着体であって、
本体と、
前記本体に別体として組み付けられる板バネ部材からなり、本体外面との間に軸材の挟持空間を形成するように本体外面に対向して基端から先端に延びるとともに前記本体外面と近接又は離間する方向に弾性変位可能な挟持部、及び、前記軸材を前記挟持空間に受け入れ可能に先端側に開放する導入部を有する挟持体と、
前記挟持空間よりも基端側で前記挟持部を貫通し、前記本体外面側に螺進して前記挟持部が前記本体外面から離間することを規制するボルト体と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のさらなる形態の取着体は、上記形態の取着体において、前記挟持体は、基端から先端に延びるとともに前記本体外面に沿って配置される基部、及び、前記挟持部の基端と前記基部の基端とを連結する連結部をさらに備え、前記連結部を支点とした前記挟持体の弾性変形によって前記挟持部及び前記基部の間で前記軸材を挟むように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のさらなる形態の取着体は、上記形態の取着体において、前記連結部と前記基部との間の境界は、前記ボルト体の貫通部よりも先端側に位置していることを特徴とする。
【0010】
本発明のさらなる形態の取着体は、上記形態の取着体において、前記連結部は、基端側に弧状に膨らむ凸曲面を有し、前記基部の基端に漸次的に接続される湾曲部位と、前記湾曲部位に連設され、前記基部に対して略垂直に延在し、前記挟持部の基端に略直角に接続される平面部位とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明のさらなる形態の取着体は、上記形態の取着体において、前記挟持体は、前記挟持部の基端から前記導入部の反対側に延びる操作部を有し、前記操作部を前記本体側に押圧することにより、前記導入部が開口操作されることを特徴とする。
【0012】
本発明のさらなる形態の取着体は、上記形態の取着体において、前記本体は、前記挟持体が組み付けられる組付け部と、前記組付け部から離間方向に延設され、配線・配管材を載置する載置面を有する支持部と、を備え、
前記挟持体は、前記導入部が前記支持部の延設方向に向くように前記本体に組み付けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明のさらなる形態の取着体は、上記形態の取着体において、前記本体は、前記挟持体が組み付けられる組付け部と、前記組付け部から離間方向に延設され、配線・配管材を載置する載置面を有する支持部と、を備え、
前記操作部材は、前記支持部の延設方向に沿って延びているとともに、前記取着体を前記軸材に取着した状態で前記支持部から離間して配置され、
前記操作部材の前記操作部を前記支持部に近接させることで前記挟持部の先端を前記本体から離れる方向へと弾性変位させて前記挟持体の挟持による取着状態を解除可能であることを特徴とする。
【0014】
本発明の一形態の挟持体は、本体を軸材に取着するための挟持体であって、
前記本体に別体として組み付けられる板バネ部材からなり、
本体外面との間に軸材の挟持空間を形成するように本体外面に対向して基端から先端に延びるとともに前記本体外面と近接又は離間する方向に弾性変位可能な挟持部と、
前記軸材を前記挟持空間に受け入れ可能に先端側に開放した導入部と、
前記挟持空間よりも基端側でボルト体を挿通可能とするように前記挟持部に貫通形成されたボルト孔と、を備え、
前記ボルト体が前記ボルト孔内で前記本体外面側に螺進し、前記ボルト体が前記挟持部の外面を係止して、前記挟持部が前記本体外面から離間することを規制することを特徴とする。
【0015】
本発明の一形態によれば、挟持体を板バネ部材から形成したことにより、板バネによる弾性力で挟持部を弾性変位させるとともに導入部を開閉させて、挟持体の軸材への取り付けを可能とする。そして、軸材が挟持空間に配置された状態で、挟持部を貫通するボルト体が螺進し、導入部が閉塞するとともに挟持部が本体外面から離間することが規制されることにより、軸材が挟持空間に維持される。すなわち、当該取着体は、挟持体及びボルト体のみで、少なくとも、軸材への取着機能を発揮することができる。したがって、本発明の取着体は、より簡易な構造で本体の軸材への固定を行うことを可能とし、なお且つ、よりコンパクトな形状に設計可能性である。
【0016】
本発明のさらなる形態によれば、上記発明の効果に加えて、連結部を支点とした挟持体の弾性変形で挟持部及び基部の間に軸材を挟むことによって、本体を傷つけることなく、軸材を強固に挟持することができる。
【0017】
本発明のさらなる形態によれば、上記発明の効果に加えて、連結部と基部との間の境界をボルト体の貫通部よりも先端側に配置することにより、支点である連結部と軸材との距離をより短くすることができ、挟持体を全体としてよりコンパクトな形状とすることができる。
【0018】
本発明のさらなる形態によれば、上記発明の効果に加えて、導入部の開放動作の際、基部側の湾曲部位が挟持部側の平面部位に対して優先的に撓むことにより、開放操作をより滑らかに行うことが可能となる。
【0019】
本発明のさらなる形態によれば、上記発明の効果に加えて、連結部(支点)から導入部の反対側に離れて配置された操作部材の操作部を押圧することにより、導入部をより弱い力で開口操作することが可能となる。
【0020】
本発明のさらなる形態によれば、上記発明の効果に加えて、本体に組み付けられた挟持体が軸材に固定されることにより、軸材の側方に延びる支持部の載置面に配線・配管材を配設することができる。また、挟持体の導入部は、支持部の延設方向に向いているので、挟持体を取着体に組み付けた状態で、取着体を軸材に容易に取り付けることが可能である。
【0021】
本発明のさらなる形態によれば、上記発明の効果に加えて、本体に組み付けられた挟持体が軸材に固定されることにより、軸材の側方に延びる支持部の載置面に配線・配管材を配設することができる。また、操作部材の操作部を支持部に近接させるように押圧することで、挟持部の先端を本体から離れる方向へと弾性変位させて挟持体の挟持による取着状態を容易に解除可能である。より具体的には、支持部と操作部とを片手でつかんで近接操作することができ、その操作が容易である。
【0022】
本発明の一形態によれば、挟持体を板バネ部材から形成したことにより、板バネによる弾性力で挟持部を弾性変位させるとともに導入部を開閉させて、挟持体の軸材への取り付けを可能とする。そして、軸材が挟持空間に配置された状態で、挟持部を貫通するボルト体が螺進し、導入部が閉塞するとともに挟持部が本体外面から離間することが規制されることにより、軸材が挟持空間に維持される。すなわち、当該挟持体は、ボルト体を用いるだけで軸材への取着機能を発揮することができる。したがって、本発明の挟持体は、より簡易な構造で本体の軸材への固定を行うことを可能とし、なお且つ、よりコンパクトな形状に設計可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態(第1実施形態)の配線・配管材支持具の(a)前方斜視図及び(b)後方斜視図。
【
図2】
図1の配線・配管材支持具の(a)平面図、(b)正面図、(c)背面図、(d)底面図及び(e)側面図。
【
図3】
図2の(a)A-A断面図、及び(b)B-B断面図。
【
図4】
図2の(a)C-C断面図、及び(b)D-D断面図。
【
図6】
図5の配線・配管材支持具の支持具本体の(a)平面図、(b)正面図、(c)背面図、(d)底面図及び(e)側面図。
【
図7】
図5の配線・配管材支持具の挟持体の(a)上方から見た斜視図、及び(b)下方から見た斜視図。
【
図8】
図7の挟持体の(a)平面図、(b)正面図、(c)背面図、(d)右側面図及び(e)左側面図。
【
図9】
図8の挟持体の(a)E-E断面図、及び(b)F-F断面図。
【
図10】本発明の一実施形態の配線・配管材の配設構造の斜視図。
【
図12】
図10の配設構造の(a)平面図、及び(b)底面図。
【
図14】本発明の一実施形態の配線・配管材の配設構造の別使用例を示す模式図。
【
図15】本発明の一実施形態の配線・配管材の配設構造の別使用例を示す模式図。
【
図16】本発明の一実施形態の配線・配管材の配設構造の別使用例を示す模式図。
【
図17】本発明の一実施形態の配線・配管材支持具を軸材に固定する工程を示す模式図。
【
図18】本発明の別実施形態(第2実施形態)の挟持体の(a)縦断面図及び(b)横断面図。
【
図19】
図18の挟持体による取着体を軸材に固定する工程を示す模式図。
【
図20】本発明の別実施形態(第3実施形態)の挟持体の(a)縦断面図及び(b)横断面図。
【
図21】
図20の挟持体による取着体を軸材に固定する工程を示す模式図。
【
図22】本発明の別実施形態(第3実施形態)の取着体の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。また、本発明における上下左右の方向は、相対的な位置を示す概念にすぎず、これらを入れ替えて適用可能であることは言うまでもない。
【0025】
[第1実施形態]
本発明の一実施形態の取着体は、配線・配管材Pを支持するための配線・配管材支持具100として具現化される。配線・配管材支持具100は、構造物としての吊りボルトである軸材Iに対して配線・配管材Pを支持すべく構成されている。そして、本実施形態では、配線・配管材支持具100は、配線・配管材Pの一例として複数のケーブルを支持する。しかしながら、該説明は例示にすぎず、本発明の配線・配管材支持具は、ケーブルの代わりに可撓管等の配管材を支持するように構成されてもよい。すなわち、本発明の配線・配管材は、種々の長尺材を含む幅広い概念であり、支持対象の長尺体の種類・サイズに応じて、配線・配管材支持具の形状・寸法を任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0026】
図1(a),(b)は、該配線・配管材支持具100の前方斜視図及び後方斜視図である。
図2(a)~(e)は、該配線・配管材支持具100の平面図、正面図、背面図、底面図及び側面図である。
図3(a),(b)は、配線・配管材支持具100のA-A,B-B断面図である。
図4(a),(b)は、配線・配管材支持具100のC-C,D-D断面図である。
図5は、配線・配管材支持具100の分解斜視図である。
【0027】
図1及び
図2に示すとおり、一実施形態の配線・配管材支持具100は、軸材Iに取着される取着体である。配線・配管材支持具100は、配線・配管材Pを支持する支持具本体(本体)110と、軸材Iへの固定のために支持具本体110に組み付けられた挟持体130とを備えてなる。本実施形態の配線・配管材支持具100は、挟持体130を介して軸材Iに固定された状態で、支持具本体110の水平に延在する支持部113上に配線・配管材Pを載置するとともに、バンド150を括り付けて配線・配管材Pを支持部113に配設するように構成されている。すなわち、配線・配管材支持具100には、配線・配管材Pを沿い面に沿ってバンド150で括り付けて配設する配線・配管材支持機構が設けられている。そして、
図5に示すように、固定部111には、挟持体130(挟持金具130a及び操作部材130bのアセンブリ)が、ボルト体141及びナット体142を用いて組み付けられている。以下、配線・配管材支持具100の各構成要素について説明する。
【0028】
まず、
図5及び
図6を参照して、支持具本体110について説明する。
図6(a)~(e)は、支持具本体110の平面図、正面図、背面図、底面図及び側面図である。
【0029】
支持具本体110は、ハンガーのように左右方向に延びる長手形状を有している。この支持具本体110は、挟持体130を介して軸材Iに固定される固定部111と、該固定部111から両側に長手方向に沿って基端から先端へと延在する支持部113とを備える。つまり、固定部111が支持具本体110の略中央に配置され、その側方に一対の支持部113が延在している。
【0030】
固定部111は、支持具本体110の中央部位として示される。固定部111には、挟持体130を支持具本体110の前面(又は正面)に組み付けるための組付け部112が設けられている。組付け部112は、
図6(b)に示すように、その前面に凹設され、挟持体130の一部(基部131)を配置可能である凹設部112aを有する。凹設部112aは、矩形状の収容空間を形成し、前面を除いて壁部によって包囲されている。また、組付け部112は、
図6(b)に示すように、幅(前後)方向に貫通するボルト孔112bと、支持具本体110前面から凹設部112a側に長手方向に延在する係合爪112cとを有する。ボルト孔112bは、ボルト体141を内挿するための貫通孔である。係合爪112cは、凹設部112aに配置された挟持体130に前面から係合し、挟持体130を凹設部112aに維持するように機能する(
図3(b)参照)。さらに、組付け部112は、
図6(c)に示すように、ボルト孔112bの後面側の周縁を包囲するナット係止壁112dを有する。ナット係止壁112dは、ナット体142を収容するとともにその外面に係合して、ボルト体141を螺着するときにナット体142の回転を係止するように機能する。
【0031】
また、固定部111には、上方に立ち上がる保護壁119が設けられている。保護壁119は、固定部111の両側に延びる支持部113を仕切るように構成されている。保護壁119は、断面視略U字状の壁部を有し、前面に開口している。保護壁119は、支持部113上の配線・配管材Pが軸材Iに接触することを防止するように機能する。また、保護壁119の底部には、軸孔119aが形成されている。必要に応じて、保護壁119は、軸材Iを開口を介して内挿し、軸孔119aに軸材Iを通すように使用されてもよい。すなわち、配線・配管材支持具100は、第1の固定手段としての挟持体130に加えて、第2の固定手段を有し得る。ただし、第2の固定手段を用いるには、固定部111の底壁に軸孔119aに連通する孔が追加される必要がある(
図16参照)。なお、保護壁119は、第1及び第2の固定手段のいずれを使用したとしても、配線・配管材Pが軸材Iと接触することを防止することができる。
【0032】
支持部113は、固定部111から長手方向両側に所定の長さで延在する一対の長手部位として示される。つまり、本実施形態では、支持部113は、固定部111又は組付け部112から互いに相反する方向に延設されて2つ設けられる。ここで、支持部113の固定部111側の端部を基端とし、固定部111から離隔する側の端部を先端とする。支持部113は、長手方向に直交する幅方向に配設した配線・配管材Pを受けるための載置面114を上面に有する。換言すれば、支持部113は、配線・配管材Pの配設方向に対して直交する方向に延びる、配線・配管材Pが沿わされる沿い面を形成する。載置面114は、その表面や側縁に凹凸や切り欠きがなく滑らかに連続した形状を有する。この支持部113は、バンド150を(支持部113の幅及び長手方向に傾斜する)傾斜方向に括り付けて配線・配管材Pを載置面114の所定位置に固定するように構成されている。そして、支持部114の両端には、載置面114から立ち上がる起立壁118が設けられている。起立壁118は、載置面114上の配線・配管材Pが長手方向に滑り落ちることを規制するように機能する。
【0033】
また、支持部113は、該支持部113の上面及び下面を連結するように長手方向に延びる補強壁115を有する。補強壁115は、長手方向に亘って載置面114の下方に延在し、支持部113を補強するものである。補強壁115の下端縁は、支持部113の基端側から先端側に上方に傾斜している。すなわち、配線・配管材Pを載置面114に載置したときに、支持部113の先端よりも基端の負荷が大きいことから、支持具本体110は、基端に近づくにつれて連続的に厚くなるように設計されている。そして、補強壁115の下面には所定の幅を有する底壁116が形成されている。
【0034】
そして、補強壁115下端である底壁116の幅方向の両側縁には、移動規制部としての複数の突出片117が形成されている。この移動規制部は、支持部113の載置面114から下側に補強壁115を介して離隔して配置されている。また、複数の突出片117は、長手方向に所定間隔で連続して形成されている。換言すれば、支持部113の幅方向を向いた凹部及び凸部が長手方向に交互に連続している。さらに、突出片117の突出幅は、その先端が載置面114の外縁からはみ出さないように定められている。換言すると、移動規制部は、平面視において支持部113の幅方向の両端縁の内側に配置されている。後述するように、複数の突出片117(移動規制部)は、支持部113に括り付けられたバンド150の下方部位を長手方向に係止して、配線・配管材Pが支持部113の長手方向に移動することを抑えるように機能する。すなわち、支持部113及び移動規制部(複数の突出片117)が本発明の配線・配管材支持機構を構成する。
【0035】
次に、
図5、
図7、
図8及び
図9を参照して、挟持体130について説明する。
図7(a),(b)は、挟持体130の上方及び下方から見た斜視図である。
図8(a)~(e)は、挟持体130の平面図、正面図、背面図、右側面図及び左側面図である。
図9(a),(b)は、挟持体130のE-E,F-F断面図である。
【0036】
挟持体130は、主として、(取着体の本体である)支持具本体110の固定部111に別体として組み付けられる板バネ部材からなる。また、挟持体130は、
図5に示すように、金属製の挟持金具130a及び合成樹脂性の操作部材130bを組み付けたアセンブリからなる。挟持金具130aは、金属板をコ字又はU字状に屈曲してなり、板バネとしての特性を有する。操作部材130bは、挟持金具130aの外面に嵌め着けられて、ユーザーが押圧操作するための操作部136を形成するものである。
【0037】
挟持体130は、基端から先端に延びるとともに支持具本体110外面の長手方向に沿って配置される基部131、該基部131(支持具本体110外面)との間に軸材Iの挟持空間を形成するように基部131(支持具本体110外面)に対向して基端から先端に延びる挟持部132、基部131基端と挟持部132基端とを連結する連結部133、軸材Iを挟持空間に受け入れ可能に先端側に開放する導入部134、及び、挟持部132基端から導入部134の反対側に延びる操作部136を備えてなる。挟持体130を構成する挟持金具130aは、1枚の金属板バネ部材として、基部131基端から挟持部132先端まで全体として緩やかなU字カーブを描くように漸次的(又は連続的)に延在している。なお、図示の形態は、挟持体130の(弾性変形しない)原形状を示し、概して、その先端の導入部134が開くように弾性変形する。
【0038】
基部131は、長手方向に延びる矩形平板状に形成されている。基部131は、支持具本体110の組付け部112の凹設部112aに収容可能な幅及び長さを有している。基部131の幅方向の両側縁から挟持部132に向かってフランジ131aが立設されている。そして、基部131の基端から連結部133が立ち上がっている。さらに、基部131の基端近傍には、ボルト体141を挿入するための貫通部137が形成されている。貫通部137は、基部131側ではボルト体141の軸径に対応する丸孔として形成されている。
【0039】
連結部133は、基端側に弧状に膨らむ凸曲面を有し、基部131の基端に漸次的に接続される湾曲部位133aと、該湾曲部位133aに連設され、基部131に対して略垂直に延在し、挟持部132の基端に略直角に接続される平面部位133bとを有する。連結部133は、挟持部132が基部131に対して近接及び離隔方向に回動するときの支点となり得る。また、挟持部132と連結部133の境界部分には、操作部材130bを挟持金具130bに組み付けるための係止孔132bが穿設されている。
【0040】
挟持部132は、連結部133の他端から基部131に対して略平行に延在する。挟持部132は、基部131と同様に長手方向に延びる矩形平板状に形成され、その先端位置が基部141先端と一致するように構成されている。挟持部132は、基部131と協働して支持具本体110外面との間に、軸材Iを挟持するための挟持空間を定める。そして、基部131先端及び挟持部132先端の間には、弾性的に開閉操作可能な導入部134が定められる。すなわち、挟持体130は、板バネとして弾性変形し、導入部134を開閉操作可能である。すなわち、挟持部132は、基部111(支持具本体110外面)と近接又は離間する方向に弾性変位する。挟持体130は、その開閉動作において、連結部133の湾曲部位133aが優先的に弾性変形し、全体として滑らかに変形をすることが可能である。
【0041】
また、挟持部132の幅方向の両側縁から基部131に向かって係合片132aが立設されている。係合片132aは、半円状の切り欠きを有し、軸材Iの螺子溝に入り込んで螺子山に係合可能な形状を有している。本実施形態では、切り欠きの部分が軸材Iの実質的な挟持空間として定められている。さらに、挟持部132の基端近傍には、ボルト体141を挿入するための貫通部137が形成されている。つまり、貫通部137は、基部131及び挟持部133を貫通している。貫通部137は、挟持部132側では長孔として形成されている。また、貫通部137は、軸材Iの挟持空間と支点(連結部133)との間に位置している。後述するように、貫通部137に挿入されたボルト体141は、挟持空間よりも他端側で基部131及び挟持部132を貫通し、支持具本体110外面側に螺進して挟持部132が基部111から離間することを規制する。
【0042】
操作部136は、挟持部132基端から導入部134の反対側に延びる部位である。操作部136は、その外面にユーザーが押圧操作するための押圧面を有する。ユーザーは、押圧面を比較的弱い力で押圧するだけで、挟持金具130aを弾性変形させて、導入部134を開放することができる。この操作部136の押圧面は、弾性変形の支点(連結部133)から離隔して位置していることから、てこの原理により、挟持部136の弾性変形に必要な力を効果的に軽減するものである。また、操作部136は、合成樹脂の操作部材130bに形成されたものである。操作部材130bは、長手方向に延びる合成樹脂製の板片として形成され、挟持金具130aの長さよりも長い。
図9(a)に示すように、操作部材130bの先端には、挟持部132の先端縁に係合する第1係止爪136aが形成されている。他方、操作部材130bの長手方向の略中央には、係止孔132bに挿入され、挟持金具130aに係合する第2係止爪136bが形成されている。第1及び第2係止爪136a,136bが挟持部132に係合することにより、挟持金具130aに操作部材130bが組み付けられる。さらに、操作部材130bの略中央には、貫通部137と連通するように開口136cが形成されている。
【0043】
次いで、
図3及び
図4を参照して、配線・配管材支持具100又は支持具本体110を軸材Iに取着する取着機構について説明する。
【0044】
挟持体130は、ボルト体141及びナット体142によって支持具本体110の前面に組み付けられる。より詳細には、挟持体130の基部111が、支持具本体110の組付け部112の凹設部112aに収容される。基部111は、凹設部112aの周囲の周壁に包囲され、回転しないように配置されている。導入部134は、支持具本体110の一方の支持部113の延設方向に向けて開放する。また、基部111の先端縁が、係合爪112cの内側に配置されることで、挟持体130が支持具本体110に仮保持され得る。そして、支持部113のうち一方側を挟持体130の先端側とし、支持部113のうち他方側を挟持体130の基端側として組み付けられ、操作部136が他方側に向けて延びている。
【0045】
そして、挟持体130の貫通部137が、組付け部112のボルト孔112bに連通するように位置している。
図3(b)及び
図4(b)に示すように、ボルト体141が、支持具本体110の前面側から貫通部137及びボルト孔112bを貫通している。そして、ボルト体141の軸先端が、支持具本体110の後面側に配置されたナット体142に羅着している。ナット体142は、ナット係止壁112dに包囲されるように配置されている。
図3(b)に示す形態では、ボルト体141の頭部が挟持体130の外面から離隔していることから、挟持部132は導入部134を開放するように傾動変位可能である。他方の支持部130の延設方向に延びる操作部136を押圧することにより、連結部133を支点として、挟持部132を開放方向に傾動させるように弾性変形させることができる。そして、挟持部132が開放方向に傾動すると、ボルト体141が挟持部132側の貫通部137(長孔)内で長手方向に相対スライドする。傾動動作時、基部111が係合爪112cに係合することで、支持具本体110外面から浮き上がることが規制される。そして、ボルト体141がナット体142に対して螺進し、ボルト体141頭部が少なくとも挟持部132外面に当接すると、挟持部132が支持具本体110外面から離間することが規制される。このように、ネジの締結力によって、挟持部132の離間が規制されて、導入部134の閉塞が維持される。
【0046】
続いて、
図10乃至
図12を参照して、本実施形態の配線・配管材支持具100による配線・配管材Pの配設構造10について説明する。配設構造10は、軸材Iに固定された配線・配管材支持具100によって、配線・配管材Pを固定式に支持したものである。なお、軸材Iは、建造物に固定された垂直方向に延びる吊りボルトである。他方、配線・配管材Pは、長尺のケーブルである。しかしながら、本発明において、これらの部材が、用途などに応じて任意に変更可能であることはいうまでもない。
【0047】
図10は、本実施形態の配設構造10の斜視図である。
図11は、配設構造10の正面図である。
図12(a)、(b)は、配設構造10の平面図及び底面図である。
図13は、配設構造10のG-G断面図である。
【0048】
本実施形態の配設構造10では、
図10乃至
図12に示すように、支持具本体110の長手方向が軸材Iに直交するように、支持具本体110の固定部111が挟持体130を介して軸材Iに固定されている。そして、支持具本体110の支持部113には、長尺の配線・配管材Pが配設されている。配線・配管材Pは、一対の支持部113に直交する方向に沿って軸材Iに対して水平に配設されている。すなわち、支持部113は、配線・配管材Pの配設方向に対して直交する方向に延びる、配線・配管材Pが沿わされる沿い面を定める。
【0049】
配線・配管材Pは、
図11に示すように、支持部113の長手方向の所定位置で載置面114に載置されている。
図12(a)に示すように、バンド150は、配線・配管材Pの配設方向及び支持部113の延設方向に対して傾斜する傾斜方向に括り付けられている。バンド150の上方部位は、配線・配管材Pの上面及び側面にピンと張った状態で巻き付き、載置面114と協働して配線・配管材Pの外周を包囲している。このとき、バンド150は、配線・配管材P外面にその上面から側面にかけて隙間なく接している。他方、バンド150の下方部位は、支持部113の底壁116にピンと張った状態で巻き付いている。
図12(b)に示すように、バンド150は、移動規制部としての突出片117の間の凹部を通過する。特には、載置面114の幅よりも底壁116の突出片117間の凹部における幅の方が狭いので、バンド150の上方部位の環よりも下方部位の環を相対的に小さくすることができ、バンド150の上方部位で配線・配管材Pを絞るように締め付けることができる。
【0050】
また、バンド150が配線・配管材Pにたすき掛けされていることから、
図12(b)に示すように、バンド150が通過する支持部113の一方の側縁の凹部と他方の側縁の凹部とが長手方向にずれている。そして、バンド150は、突出片117の基端部分に長手方向に係止されて、その長手方向の移動が規制されている。これにより、配設構造10において、バンド150の横ずれが効果的に防止される。当該配設構造10において、載置面114でなく、補強壁115に移動規制部が形成されているので、配線・配管材Pは載置面114の任意の位置に制限なく配設され得る。また、バンド150は、図示のように、突出片117の基端部分に圧接するように締め付けられることが好ましい。バンド150をこのように締め付けることにより、バンド150による締結力が効果的に発揮され、配線・配管材Pを支持部113により強固に固定することができる。なお、本実施形態では、支持部113の底壁116が傾斜しているが、移動規制部によって傾斜に伴う外方へのスライドも効果的に規制されている。また、本実施形態では、バンド150の結び目が支持部113の底面側にあるが、結び目の位置は任意に定められる。
【0051】
また、
図13に示すように、挟持体130が軸材Iを挟持することにより、支持具本体110が軸材Iに取着されている。軸材Iは、基部131と挟持部132との間の挟持空間で挟持されている。ボルト体141がナット体142に締め付けられ、ボルト体141頭部が挟持部132外面に圧接している。このボルト体141及びナット体142の締結による圧接力が、挟持体130を軸材Iに強固に締結する。また、ボルト体141は、挟持部132が離間する方向に傾動することを規制し、導入部134を閉塞状態に維持する。そして、挟持部132の係合片132a及び基部131のフランジ131aが軸材Iのネジ溝に入り込むことで、配線・配管材支持具100の軸材Iに対する軸方向の移動が規制されている。
【0052】
本実施形態の配線・配管材支持具100は、
図14に示すように、より大径の配線・配管材Pであっても、同様の強度でバンド150で括り付けることができる。バンド150は、上方部位で配線・配管材Pにたすき掛けされ(
図14(b)参照)、下方部位で突出片117の間の凹部を通過するように、支持部113に括り付けられる。配線・配管材Pが大径であっても、配線・配管材Pの径に合わせて、バンド150を通す突出片117の間の凹部を適宜選択することにより、バンド150の横ずれを防止しつつ、配線・配管材Pを支持部113に強固に固定することができる。すなわち、本実施形態の配線・配管材支持具100は、従来のように載置面上に規制部を設けたものと異なり、配設する配線・配管材Pの径に影響を受けずに、配線・配管材Pを支持部113に安定的に支持することが可能である。
【0053】
また、本実施形態では、配線・配管材Pは、バンド150によって支持部113の所定位置に固定されている。配線・配管材Pとして2本のケーブルの束が、1本のバンド150によって支持部113に括り付けられている。本実施形態では、バンド150は番線であるが、
図15に示すように結束バンドであってもよい。さらに、
図16に示すように、本実施形態の配設構造10’では、第1の固定手段としての挟持体130の代わりに、又は、これに加えて、第2の固定手段として支持具本体110’の固定部111’に軸材Iが直接固定されてもよい。この場合、保護壁119’の内側に形成された軸孔119a’を軸材Iが通過し、ボルト体141の締め付けにより、支持具本体110’が軸材Iの所定の高さに固定される。
【0054】
ここで、
図17を参照して、取着体としての配線・配管材支持具100を軸材Iに取着する方法を説明する。
【0055】
まず、
図17(a)に示すように、配線・配管材支持具100の操作部136を押圧して、挟持体130(挟持金具130a)を弾性変形させて導入部134を開放させる。このとき、支持部113と操作部136とを片手でつかんで近接操作することができ、その操作が容易である。そして、導入部134を開放状態に維持しつつ、導入部134に軸材Iを導入するように、配線・配管材支持具100を支持部113の延設方向に沿って移動させる。軸材Iを挟持体130の挟持空間に配置したら、操作部136の押圧を解除して挟持体130を弾性復帰させる。このとき、基部131及び挟持部132が、弾性復帰力による比較的弱い力で軸材Iを挟圧することにより、配線・配管材支持具100が軸材Iに仮保持される。そして、
図17(c)に示すように、ボルト体141をナット体142に対して螺進させることにより、基部131及び挟持部132が軸材Iを強力に挟圧するとともに、導入部134が閉塞状態に堅固に維持される。以上の工程を経て、配線・配管材支持具100は軸材Iに取着される。
【0056】
他方、上記工程と逆の工程を行うことにより、配線・配管材支持具100を軸材Iから取り外すことができる。すなわち、ボルト体141を緩めた上で、操作部136を支持部113に近接させるように押圧操作し、導入部134を開放させた状態で、配線・配管材支持具100を支持部113の延設方向にスライドさせることにより、配線・配管材支持具100を軸材Iから簡単に取り外すことができる。
【0057】
配線・配管材支持具100の取り付け及び取り外しのためのスライド動作は、配線・配管材Pと直交する方向に沿って行われるので、支持部113に配線・配管材Pを支持したままでも(配線・配管材Pに僅かでも弛みがあれば)、配線・配管材支持具100の取り外し操作が可能である。なお、必要に応じて、配線・配管材支持具100を軸材Iの軸方向にスライド移動させることも可能である。
【0058】
以下、本発明に係る一実施形態の配線・配管材支持具100における作用効果について説明する。
【0059】
本発明の一実施形態の配線・配管材支持具100では、挟持体130を板バネ部材から形成したことにより、板バネによる弾性力で挟持部132を弾性変位させるとともに導入部134を開閉させて、挟持体130の軸材Iへの取り付けを可能とする。そして、軸材Iが挟持空間に配置された状態で、挟持部132を貫通するボルト体141がナット体142に対して螺進し、導入部134が閉塞するとともに挟持部132が基部131又は支持具本体110外面から離間することが規制されることにより、軸材Iが挟持空間に堅固に維持される。すなわち、配線・配管材支持具100の軸材Iへの取着機構は、挟持体130及びボルト体141(ナット体142)のみで、少なくとも、軸材Iへの取着機能を発揮することができる。したがって、挟持体130は、より簡易な構造で支持具本体110の軸材Iへの固定を行うことを可能とし、なお且つ、従来よりコンパクトな形状に設計可能である。
【0060】
本発明の一実施形態の配線・配管材支持具100では、支持部113の載置面114から下側に離隔して設けられた突出片117が、支持部113に括り付けられたバンド150の下方部位を長手方向に係止することにより、配線・配管材Pが支持部113の長手方向に移動することを効果的に抑えることができる。すなわち、バンド150の上方部位が載置面114の上方で配線・配管材Pをしっかりと包囲し、バンド150の下方部位が載置面114から補強壁115を介して離隔した位置で突出片117によって長手方向に係止される。これにより、バンド150の上方部位で配線・配管材Pに支持部113の長手方向の力が加わったとしても、バンド150の下方部位が長手方向に移動しないように支持部113に括り付けられているので、バンド150が横ずれすることが抑えられる。さらに、配線・配管材Pを包囲するバンド150の部位と、突出片117によって係止されるバンド150の部位とが、載置面114を境に離れて独立して定められていることにより、配線・配管材Pを載置面114の所望の位置に自由に配設可能であるとともに、配線・配管材Pの径や本数などに影響されずにバンド150を配線・配管材Pにしっかりと巻き付けることができる。したがって、本実施形態の配線・配管材支持具100は、バンド150で配線・配管材Pをより強固に支持部113に括り付けることを可能とするものである。
【0061】
また、従来(特許文献1)の配線・配管材支持具では、載置面に凹凸(スリット)があるので、配線・配管材が載置面上をスライドするとケーブルが傷付く虞があった。これに対し、本実施形態の配線・配管材支持具100では、移動規制部が載置面114と独立して形成されているので、載置面114を、その表面や側縁に凹凸や切り欠きがない滑らかに連続した形状にすることができる。これにより、配線・配管材Pが載置面114上をスライドしたときに、配線・配管材Pが傷付くことを防止することができる。
【0062】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の実施形態及び変形例を取り得る。以下、本発明の別実施形態及び変形例を説明する。なお、各実施形態において、三桁で示される構成要素において下二桁が共通する構成要素は、説明がない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
【0063】
[第2実施形態]
図18は、別実施形態の挟持体230の断面図、及び、取着体(配線・配管材支持具)200の部分拡大断面図を示している。
図18(a),(b)に示すように、挟持体230は、基端から先端に延びるとともに支持具本体210外面の長手方向に沿って配置される基部231、該基部231(支持具本体210外面)との間に軸材Iの挟持空間を形成するように基部231(支持具本体210外面)に対向して基端から先端に延びる挟持部232、基部231基端と挟持部232基端とを連結する連結部233、軸材Iを挟持空間に受け入れ可能に先端側に開放する導入部234、及び、挟持部232基端から導入部234の反対側に延びる操作部236を備えてなる。
【0064】
連結部233は、基端側に弧状に膨らむ凸曲面を有し、基部231及び挟持部232の基端に漸次的に接続される湾曲部位233aからなる。本実施形態では、第1実施形態と異なり、連結部233と基部231との間の境界233cは、ボルト体241の貫通部247よりも先端側に位置している。そして、挟持部232と、連結部233の湾曲部位233aとを貫通するように貫通部237が設けられている。挟持部232の外面は、ボルト体241の頭部が圧接し易いようにフラット面である。また、湾曲部位233b上の貫通部位237は、ボルト体241の長手方向の相対スライドを許容するように長孔である。
【0065】
図19(a)~(c)に示すとおり、第1実施形態と同様の工程で、挟持体230が軸材Iを挟持することで取着体200が軸材Iに取着される。すなわち、本実施形態では、連結部233と基部231との間の境界をボルト体241の貫通部237よりも先端側に配置することにより、支点である連結部233と軸材Iとの距離をより短くすることができ、挟持体230を全体として長手方向においてよりコンパクトな形状とした。
【0066】
[第3実施形態]
図20は、別実施形態の挟持体330の断面図、及び、取着体(配線・配管材支持具)300の部分拡大断面図を示している。
図20(a),(b)に示すように、挟持体330は、本体310外面に配置される基部331、支持具本体310外面との間に軸材Iの挟持空間を形成するように取着体300の本体310外面に対向して基端から先端に延びる挟持部332、基部331基端と挟持部332基端とを連結する連結部333、軸材Iを挟持空間に受け入れ可能に先端側に開放する導入部334、及び、挟持部332基端から導入部334の反対側に延びる操作部336を備えてなる。
【0067】
本実施形態では、基部331には貫通部337が形成されているが、基部331の先端縁は挟持空間よりも基端側にある。すなわち、挟持空間は、(基部331ではなく)本体310外面と挟持部337との間に形成される。
【0068】
図21(a)~(c)に示すとおり、第1実施形態と同様の工程で、挟持体330が本体310外面と協働して軸材Iを挟持することで取着体300が軸材Iに取着される。すなわち、本実施形態では、基部331を短尺化することで、挟持体330をよりコンパクトな形状とした。
【0069】
[第4実施形態]
図22は、別実施形態の取着体400を示している。当該取着体400は、本体410、挟持体430及びボルト体441を備える。挟持体430は、第1実施形態の挟持体130と同様の構成を有する。本実施形態では、ボルト体441を締結するためのナット体を省略し、本体410にボルト孔442を設けたものである。
図22(a)~(c)に示すとおり、第1実施形態と同様の工程で、挟持体430が本体410外面と協働して軸材Iを挟持することで取着体400が軸材Iに取着される。すなわち、本実施形態は、ナット体を省略することで、全体の部品数を減らしたものである。
【0070】
[変形例]
(1)上記実施形態では、支持具本体の支持部は対で形成されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、支持具本体に1つの支持部のみを形成し、片持ちで配線・配管材を支持してもよい。また、支持部から移動規制部が省略されてもよい。さらには、取着体は、配線・配管材支持具及び配線・配管材支持用途に限定されず、他の用途に用いられる部材から選択されてもよい。
【0071】
(2)上記実施形態は、挟持体が本体外面又は基部に対して平行な状態が弾性変形しない原形状を示し、その先端の導入部が開くように弾性変形する。しかしながら、導入部が開放したハ字状の状態が原形状であってもよく、あるいは、基部先端及び挟持部先端がより近づいた状態が原形状であってもよい。また、本発明において、挟持体から操作部が省略されてもよい。
【0072】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0073】
10 配設構造
100 配線・配管材支持具(取着体)
110 支持具本体(本体)
111 固定部
112 組付け部
112a 凹設部
112b ボルト孔
112c 係合爪
112d ナット係止壁
113 支持部
114 載置面
115 補強壁
116 底壁
117 突出片(移動規制部)
118 起立壁
119 保護壁
119a 軸孔
130 挟持体
130a 挟持金具
130b 操作部材
131 基部
131a フランジ
132 挟持部
132a 係合片
132b 係止孔
133 連結部
133a 湾曲部位
133b 平面部位
134 導入部
136 操作部
136a 第1係止爪
136b 第2係止爪
136c 開口
137 貫通部
141 ボルト体
142 ナット体
150 バンド
I 軸材
P 配線・配管材