(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】バルデナフィル含有錠剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/53 20060101AFI20230824BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20230824BHJP
A61K 9/32 20060101ALI20230824BHJP
A61K 9/36 20060101ALI20230824BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230824BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230824BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230824BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230824BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230824BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230824BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230824BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
A61K31/53
A61P15/10
A61K9/32
A61K9/36
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/12
(21)【出願番号】P 2019070692
(22)【出願日】2019-04-02
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390011877
【氏名又は名称】富士化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉坂 健太
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 満二
(72)【発明者】
【氏名】小山 晴樹
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/040577(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103372014(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0159003(US,A1)
【文献】特表2005-533836(JP,A)
【文献】特開2011-173796(JP,A)
【文献】特開2016-160254(JP,A)
【文献】特開2013-193989(JP,A)
【文献】特開2012-254993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルデナフィル塩酸塩3水和物含有の素錠をフィルムコーティングする工程において、給気温度を
25~40℃の範囲の温度にすることを特徴とするバルデナフィル塩酸塩3水和物含有フィルムコーティング錠の製造方法
であって、
前記素錠が、素錠全量に対して、1~30質量%のバルデナフィル塩酸塩3水和物、1~20質量%の崩壊剤、0.1~5質量%の流動化剤および0.1~5質量%の滑沢剤を含有し、
フィルム成分が基剤、可塑剤および滑沢剤を含有し、基剤がヒプロメロース、可塑剤がトリアセチンおよびクエン酸トリエチルから選ばれる1種以上、滑沢剤がタルクである、バルデナフィル塩酸塩3水和物含有のフィルムコーティング錠の製造法。
【請求項2】
給気温度を30~38℃の範囲の温度とする請求項
1記載のバルデナフィル塩酸塩3水和物含有のフィルムコーティング錠の製造法。
【請求項3】
1錠あたりのバルデナフィル塩酸塩3水和物の含量が5~25mgである請求項1
又は2記載
のバルデナフィル塩酸塩3水和物含有のフィルムコーティング錠の製造法。
【請求項4】
崩壊剤が、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボシキスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよび部分α 化デンプンから選ばれる1種以上である請求項1~
3のいずれか1項記載
のバルデナフィル塩酸塩3水和物含有のフィルムコーティング錠の製造法。
【請求項5】
素錠が賦形剤を含有し、その賦形剤が、結晶セルロース、D-マンニトール、スターチおよび乳糖から選ばれる1種以上である請求項1~
4のいずれか1項記載
のバルデナフィル塩酸塩3水和物含有のフィルムコーティング錠の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルデナフィル塩酸塩3水和物含有フィルムコーティング錠の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
バルデナフィルは、勃起不全治療剤として近年繁用される医薬品の一つである。本化合物は、医薬上の有効成分は、バルデナフィル塩酸塩3水和物であり、当該水和物含有のフィルムコーティング錠に製剤化され、医療現場において使用されている。
【0003】
バルデナフィル塩酸塩3水和物は苦味を有する薬物である。苦味を有する薬物は患者にとって服用し難いことから、フィルムコーティング錠として医療現場において使用されている。
バルデナフィル塩酸塩3水和物含有のフィルムコーティング錠の製造法としては、バルデナフィル塩酸塩の無水物、1水和物及び/または2水和物等の一種類或いは複数の水和物形態を含有するフィルムコーティング錠を慣用方法を用いて製造し、これを湿ったガスに接触させる等の再水和処理をして目的とするバルデナフィル塩酸塩3水和物含有のフィルムコーティング錠を製造する方法(特許文献1)が知られている。
また、そのような再水和処理を回避するバルデナフィル塩酸塩3水和物のフィルムコーティング錠の製造法として、約20~約45℃で圧縮成形し、約40~約55℃の温度でフィルムコーティングする方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5173113号公報
【文献】米国特許第8772292号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術のうち、特許文献1記載の方法では、長時間の加湿工程により、フィルムコーティング層の傷、崩壊剤や賦形剤の膨潤等が発生することが知られている。一方、特許文献2記載の方法では、フィルムコーティング工程でバルデナフィル塩酸塩無水物の生成、残留が認められることが判明した。
従って、本発明の課題は、長時間の加湿工程等を必要とせず、錠剤中のバルデナフィル塩酸塩3水和物純度の高いフィルムコーティング錠の工業的に有利な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、工業的に有利なバルデナフィル塩酸塩3水和物含有フィルムコーティング錠の製法手段について検討してきたところ、特許文献2に記載の方法により得られるフィルムコーティング錠におけるバルデナフィル塩酸塩無水物の生成が、フィルムコーティング工程における温度条件にあることを見出し、この工程の給気温度を45℃よりも低温度にすることにより、バルデナフィル塩酸塩無水物の生成が抑制され、高純度のバルデナフィル塩酸塩3水和物を含有するフィルムコーティング錠が工業的に有利に得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の発明〔1〕~〔8〕を提供するものである。
【0008】
〔1〕バルデナフィル塩酸塩3水和物含有の素錠をフィルムコーティングする工程において、給気温度を45℃より低い温度にすることを特徴とするバルデナフィル塩酸塩3水和物含有フィルムコーティング錠の製造方法。
〔2〕給気温度を25~40℃の範囲の温度とする〔1〕記載のバルデナフィル塩酸塩3水和物含有のフィルムコーティング錠の製造法。
〔3〕給気温度を30~38℃の範囲の温度とする〔1〕記載のバルデナフィル塩酸塩3水和物含有のフィルムコーティング錠の製造法。
〔4〕素錠全量に対して、1~30質量%のバルデナフィル塩酸塩3水和物、1~20質量%の崩壊剤、0.1~5質量%の流動化剤および0.1~5質量%の滑沢剤を含有する〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のバルデナフィル塩酸塩3水和物含有のフィルムコーティング錠の製造法。
〔5〕1錠あたりのバルデナフィル塩酸塩3水和物の含量が5~25mgである〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のバルデナフィル塩酸塩3水和物含有のフィルムコーティング錠の製造法。
〔6〕素錠が崩壊剤を含有し、その崩壊剤が、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボシキスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよび部分α化デンプンから選ばれる1種以上である〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のバルデナフィル塩酸塩3水和物含有のフィルムコーティング錠の製造法。
〔7〕素錠が賦形剤を含有し、その賦形剤が、結晶セルロース、D-マンニトール、スターチおよび乳糖から選ばれる1種以上である〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のバルデナフィル塩酸塩3水和物含有のフィルムコーティング錠の製造法。
〔8〕フィルム成分が基剤、可塑剤および滑沢剤を含有し、
基剤が、ヒプロメロース、プロピルセルロース、メチルセルロース、ポピドンおよびコポリピドンから選ばれる1種以上、
可塑剤が、トリアセチン、ポリエチレングリコールおよびクエン酸トリエチルから選ばれる1種以上、
滑沢剤が、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種以上、
である〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のバルデナフィル塩酸塩3水和物含有のフィルムコーティング錠の製造法。
【発明の効果】
【0009】
上記従来技術においては、錠剤のフィルムコーティングは通常50℃以上の高温で行われ、続く再水和工程では高湿度のガスと接触させていることもあり、製造方法として煩雑のみならず主成分の安定性や3水和物としての安定性にも影響を及ぼす可能性がある。
一方、本発明の製造方法では、錠剤を高温や高湿度に晒す必要がないため、治療学的に必要のない類縁物質が少ない高品質な錠剤を安定に製造することが可能であり、品質管理上でも極めて優れた製造法である。
本発明の製造方法により、バルデナフィル塩酸塩3水和物のフィルムコーティング錠の再水和という煩雑且つ複雑な工程や高温下でのフィルムコーティングを実施することなく、安定してバルデナフィル塩酸塩3水和物のフィルムコーティング錠を製造することができる。従って、本発明の製造方法は、バルデナフィル塩酸塩3水和物含有フィルムコーティング錠剤の工業的製造方法として優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の錠剤のX線粉末ディフラクトグラムパターンを示す。
【
図2】実施例2の錠剤のX線粉末ディフラクトグラムパターンを示す。
【
図3】実施例3の錠剤のX線粉末ディフラクトグラムパターンを示す。
【
図4】実施例4の錠剤のX線粉末ディフラクトグラムパターンを示す。
【
図5】実施例5の錠剤のX線粉末ディフラクトグラムパターンを示す。
【
図6】比較例1の錠剤のX線粉末ディフラクトグラムパターンを示す。
【
図7】バルデナフィル塩酸塩3水和物及び無水物のX線粉末ディフラクトグラムパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、バルデナフィル塩酸塩3水和物含有の素錠をフィルムコーティングする工程において、給気温度を45℃より低い温度にすることを特徴とするバルデナフィル塩酸塩3水和物含有フィルムコーティング錠の製造方法である。以下、素錠の製造方法、次いでフィルムコーティング工程の順に説明する。
【0012】
[素錠の製造方法]
フィルムコーティングを施す前の素錠については、基本、通常の製造法に従って製造すればよい。具体的には、バルデナフィル塩酸塩3水和物に賦形剤、崩壊剤、流動化剤および滑沢剤から選ばれる1種以上の添加物を加えて混合し打錠用粉末を従来法に従って調製し、通常の方法に従って室温下で打錠用粉末を打錠し素錠を製造することができる。
素錠の製造時における湿度については、通常の設備内の相対湿度とすればよく、具体的には30~50%程度の範囲の相対湿度とすればよい。
【0013】
本発明で用いる素錠中のバルデナフィル塩酸塩3水和物の好ましい含量は、1錠あたり5~25mgであり、好ましくは5.926mg、11.852mg又は23.705mgである。
賦形剤、崩壊剤、流動化剤および滑沢剤の使用量は、基本素錠が成形性や崩壊性などが所望の物性が得られる範囲で、通常の使用量と同様にすればよい。素錠の好適例としては、素錠全量に対して、1~30質量%のバルデナフィル塩酸塩3水和物、1~20質量%の崩壊剤、0.1~5質量%の流動化剤、0.1~5質量%の滑沢剤、さらに好的例としては、3~20質量%のバルデナフィル塩酸塩3水和物、5~15質量%の崩壊剤、0.3~2質量%の流動化剤、0.2~2質量%の滑沢剤であり、そして適当な場合さらなる添加物および賦形剤を残りの成分として含有すればよい。例えば、賦形剤の使用量としては、素錠全量に対して、好例としては50~90質量%、さらに好ましくは65~85質量%である。
【0014】
好ましい賦形剤としては結晶セルロース、乳糖、マンニトール、キシリトール、マルトース、マルチトール、スターチ、無水リン酸水素カルシウム(例えば、富士化学工業社製フジカリン)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(例えば、富士化学工業社製ノイシリン)、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムを挙げることができ、より好ましくは結晶セルロース、マンニトール、スターチである。
【0015】
好ましい崩壊剤としては、クロスポビドン、部分α化デンプン、カルボシキスターチナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを挙げることができる。好ましい流動化剤としては軽質無水ケイ酸(例えば、フロイント産業社製アドソリダー101)、含水二酸化ケイ素(例えば、富士化学工業社製FujiSil)を挙げることができる。好ましい滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウムを挙げることができる。これら賦形剤、崩壊剤、流動化剤および滑沢剤は、それぞれ1種以上を組み合わせることができる。
【0016】
[フィルムコーティング]
本発明のフィルムコーティング錠において、フィルム層を形成するフィルムコーティング部の基剤としては、通常の水系又は非水系のフィルムコーティング基剤を用いることができる。水系フィルムコーティング剤としては、例えば、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、プロピルセルロース、メチルセルロース、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS水分散液、エチルセルロース水分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポピドンおよびコポリピドン等を挙げることができ、好ましくはヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を挙げることができる。非水系フィルムコーティング剤としては、例えば、エチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチルコポリマー、酢酸ビニル樹脂を挙げることができ、好ましくはエチルセルロースを挙げることができる。当該フィルムコーティング部は、基剤以外に、可塑剤、滑沢剤を含有させることができ、必要に応じて少量の光遮蔽剤、微量の着色剤を含ませてもよい。
【0017】
可塑剤としては、トリアセチン、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチルなどを挙げることができる。可塑剤はこれら化合物のうち1種単独で使用されてもよいし、2種以上が使用されてもよい。中でも、好ましい可塑剤としては、トリアセチンを挙げることができる。
【0018】
滑沢剤の例としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。滑沢剤はこれら化合物のうち1種単独で使用されてもよいし、2種以上が使用されてもよい。滑沢剤は好ましくはタルクを挙げることができる。光遮蔽剤は好ましくは酸化チタンを挙げることができる。着色剤は目的のコーティング錠の色になるように当業者既知の化合物を適宜使用すればよい。
【0019】
上記フィルムコーティング部における基剤、可塑剤、滑沢剤、光遮蔽剤、着色剤の配合量は、基本常法の配合量に従えばよい。
【0020】
本発明のフィルムコーティング錠において、フィルムコーティング部の被覆量に明確な限定はないが、例えば、180mg/錠質量の素錠に2~20mg/錠の範囲で被覆されることが好ましく,5~12mg/錠の範囲とするのがより好ましく、また、90mg/錠質量の素錠に1~10mg/錠の範囲で被覆されることが好ましく,2~8mg/錠の範囲とするのがより好ましい。
本発明のフィルムコーティング錠の好ましい質量は50~300mgであり、より好ましい質量は80mg~250mgである。
【0021】
本発明のフィルムコーティングは、通常錠剤の水系または非水系のコーティングで用いられている装置で行うことができ、例えば、パンコーティング方式のコーティング装置である。本発明のフィルムコーティング工程は、前記フィルムコーティング部の部材、具体的には基剤、可塑剤、滑沢剤、光遮蔽剤、着色剤等を水やエタノール等の溶媒に溶解・分散させた懸濁液を、素錠が入ったコーティングパンの中へ以下に詳述する給気温度を確保しつつスプレーし、錠剤表面に熱風を送り錠剤表面から溶媒を除去乾燥させる方法により、素錠表面にフィルムコーティング部を均一に付着させ、その後必要に応じて乾燥することにより、フィルムコーティング層を形成することができる。
コーティング剤などを溶解/懸濁させる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、トルエン、ヘキサン、メチルエチルケトン及び水、又はこれらの混合溶媒等が挙げられ、エタノール及び水が好ましく、水がより好ましい。
【0022】
バルデナフィル塩酸塩3水和物が脱水しバルデナフィル塩酸塩の形成を防ぐためスプレーコーティングは、コーティングが可能な限り低温で実施することが好ましく、具体的には、給気温度を45℃より低く、好ましくは25~40℃、より好ましくは30~38℃とすればよい。
送風量、送液量、スプレー速度およびパンの回転速度については、特に制限はなく、使用するコーティング装置、製造量により、適宜コーティング可能な条件を設定すればよい。
コーティングにおける湿度については、通常の設備内の相対湿度とすればよく、具体的には30~50%程度の範囲の相対湿度でコーティングを行えばよい。
【0023】
上記のようにして得られたフィルムコーティング錠は、通常の方法にしたがい、PTP包装されるのが一般的であるが、特に制限されることなく、そのままボトルに充填してもよい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例について説明する。
ただし、本発明の範囲は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0025】
参考例1 素錠の作製
バルデナフィル塩酸塩3水和物71.115g、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ社製UF702)340.296g、クロスポビドン(BASF社製コリドンCL-F)26.550gを混合した。続いて結晶セルロース(旭化成ケミカルズ製セオラスUF702)85.074g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業社製アドソリダー101)2.655g、ステアリン酸マグネシウム(日油社製ステアリン酸マグネシウムS)5.310gを添加し混合した。混合物をロータリー打錠機(畑鉄工所製HT-AP18SS-II型)で打錠した。当該打錠工程では、直径8mm、曲率半径9mmの杵を用い、回転数毎分30回転で1錠177mg、硬度約100Nとなるよう打錠機のパラメーターを設定し素錠を得た。
【0026】
実施例1
参考例1で調製した素錠に、コーティング装置(フロイント産業社製、ハイコーターHC-LABO)において、ヒプロメロース(信越化学工業社製TC-5R)5.5質量%、トリアセチン(大八化学工業社製)0.9質量%、二酸化チタン(フロイント産業社製)1.476質量%、黄色三二酸化鉄(癸巳化成社製)0.3質量%および三二酸化鉄(癸巳化成社製)0.024質量%を含むコーティング液を給気温度35℃(相対湿度約25%)、排気温度28~30℃で素錠に噴霧し、184mg/錠のフィルムコーティング錠を得た。
【0027】
実施例2
参考例1で調製した素錠に、コーティング装置で、ヒプロメロース(信越化学社製TC-5R)5.5質量%、トリアセチン(大八化学工業社製)0.9質量%、二酸化チタン(フロイント産業社製)1.476質量%、黄色三二酸化鉄(癸巳化成社製)0.3質量%および三二酸化鉄(癸巳化成社製)0.024質量%を含むコーティング液を給気温度30℃(相対湿度約33%)、排気温度25~28℃で噴霧し、184mg/錠のフィルムコーティング錠を得た。
【0028】
比較例1
実参考例1で調製した素錠に、コーティング装置で、ヒプロメロース(信越化学社製TC-5R)5.5質量%、トリアセチン(大八化学工業社製)0.9質量%、二酸化チタン(フロイント産業社製)1.476質量%、黄色三二酸化鉄(癸巳化成社製)0.3質量%および三二酸化鉄(癸巳化成社製)0.024質量%を含むコーティング液を給気温度60℃(相対湿度約8%)、排気温度45~50℃で噴霧し、1錠184mgのフィルムコーティング錠を得た。
【0029】
実施例3
バルデナフィル塩酸塩3水和物94.82g、結晶セルロース402.8g、部分α化デンプン(旭化成ケミカルズ社製PC-10)70.8gを混合した。続いて結晶セルロース100.7g、軽質無水ケイ酸3.54g、ステアリン酸マグネシウム7.08gを添加し混合した。この混合物を、直径8mm、曲率半径9mmの杵を用い、回転数毎分30回転で、設定質量177mg/錠、設定硬度100Nとし、ロータリー打錠機で打錠し素錠を得た。ヒプロメロース5.5質量%、トリアセチン0.9質量%、二酸化チタン1.476質量%、黄色三二酸化鉄0.3質量%および三二酸化鉄0.024質量%を含むコーティング液を、コーティング装置において、給気温度35℃(相対湿度約25%)、排気温度28~30℃でこの素錠に噴霧し、184mg/錠のフィルムコーティング錠を得た。
【0030】
実施例4
バルデナフィル塩酸塩3水和物94.82g、結晶セルロース436.736g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製L-HPC LH21)56.64gを混合した。続いて結晶セルロース109.184g、軽質無水ケイ酸3.54g、ステアリン酸マグネシウム7.08gを添加し混合した。この混合物を、直径8mm、曲率半径9mmの杵を用い、回転数毎分30回転で、設定質量177mg/錠、設定硬度100Nとし、ロータリー打錠機で打錠し素錠を得た。ヒプロメロース5.5質量%、トリアセチン0.9質量%、二酸化チタン1.476質量%、黄色三二酸化鉄0.3質量%および三二酸化鉄0.024質量%を含むコーティング液を、コーティング装置において、給気温度35℃(相対湿度約25%)、排気温度28~30℃でこの素錠に噴霧し、184mg/錠のフィルムコーティング錠を得た。
【0031】
実施例5
バルデナフィル塩酸塩3水和物94.82g、結晶セルロース436.736g、クロスポビドン21.24g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース35.4gを混合した。続いて結晶セルロース109.184g、軽質無水ケイ酸3.54g、ステアリン酸マグネシウム7.08gを添加し混合した。この混合物を、直径8mm、曲率半径9mmの杵を用い、回転数毎分30回転で、設定質量177mg/錠、設定硬度100Nとし、ロータリー打錠機で打錠し素錠を得た。ヒプロメロース5.5質量%、トリアセチン0.9質量%、二酸化チタン1.476質量%、黄色三二酸化鉄0.3質量%および三二酸化鉄0.024質量%を含むコーティング液を、コーティング装置において、給気温度35℃(相対湿度約25%)、排気温度28~30℃でこの素錠に噴霧し、184mg/錠のフィルムコーティング錠を得た。
【0032】
[サンプルの評価]
(1)錠剤硬度の測定
錠剤5錠をサンプリングして硬度を測定し各測定値の平均値を算出した。硬度の測定には錠剤硬度計(岡田精機製PC-30型)を使用した。
(2)崩壊試験
錠剤6錠をサンプリングして崩壊試験を実施し(崩壊時間を測定し)各測定値の平均値を算出した。崩壊試験は日局崩壊試験法に準じて実施し、崩壊試験では崩壊試験器(富山産業製NTR-6300A型)を使用した。
(3)水分値
錠剤をすり潰して粉末とし、粉末5gにつき水分量を測定した。水分値の測定では株式会社ケツト科学研究所製FD-660を使用し、測定条件は70℃、15分間加熱するように設定した。
(4)X線粉末ディフラクトグラムの測定
錠剤5錠をすり潰し、篩過してX線粉末ディフラクトグラムを測定した。X線粉末ディフラクトグラムの測定ではBruker製D8ADVANCEを使用した。
【0033】
参考例1、実施例1~5および比較例1の評価結果を表1および2に示す。
【0034】
【0035】
【0036】
図7に示すように、X線粉末ディフラクトグラムにおいて、バルデナフィル塩酸塩無水物は2θ=9.4にピークを示すが、バルデナフィル塩酸塩3水和物は同様の位置にピークを示さない。
図1~5に示すように実施例1~5の錠剤のX線粉末ディフラクトグラムでは2θ=9.4にピークを示さないことからバルデナフィル塩酸塩無水物を含んでいない。
図6に示すように、対照的に比較例1では2θ=9.4にピークを示すことからバルデナフィル塩酸塩無水物を含んでいる。以上のことから給気温度60℃で素錠のフィルムコーティングを実施すると原薬の脱水が進行するが、より低い給気温度でフィルムコーティングを実施することで原薬の脱水を抑制できる。