(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】ブロック塀補強構造
(51)【国際特許分類】
E04H 17/14 20060101AFI20230824BHJP
E04H 17/20 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
E04H17/14 101Z
E04H17/20 Z
(21)【出願番号】P 2019078512
(22)【出願日】2019-04-17
【審査請求日】2022-02-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598072180
【氏名又は名称】ファイベックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 正治
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲之
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0092920(KR,A)
【文献】実開昭61-123161(JP,U)
【文献】特開2002-174055(JP,A)
【文献】実開昭56-010760(JP,U)
【文献】実開昭58-083557(JP,U)
【文献】特開2007-032124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/00-17/26
E04B 2/00-2/54
E04G 23/00-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック塀を補強するブロック塀補強構造であって、
上記ブロック塀に沿って立設された少なくとも1対の支柱と、
上記1対の支柱の間の複数のブロックに掛け渡された繊維製の長尺部材と、
を有し、
上記ブロック塀には、上記支柱付近に貫通孔が形成されるとともに、
上記長尺部材は、上記1対の支柱間の部分が、上記ブロック塀の貫通孔を通して、ブロック塀における支柱と反対側に位置していることを特徴とするブロック塀補強構造。
【請求項2】
請求項1のブロック塀補強構造であって、
上記長尺部材は、ベルト状、またはロープ状であり、接着剤によって上記支柱、およびブロック塀に接着されていることを特徴とするブロック塀補強構造。
【請求項3】
請求項1のブロック塀補強構造であって、
上記ブロック塀の貫通孔を通された上記長尺部材は、上記1対の支柱の外方側を通るように各支柱に巻き付けられていることを特徴とするブロック塀補強構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち何れか1項のブロック塀補強構造であって、
上記支柱は3本以上設けられ、
互いに隣り合う、各支柱間に掛け渡される長尺部材は、上下方向の位置がずれるように配置されていることを特徴とするブロック塀補強構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうち何れか1項のブロック塀補強構造であって、
さらに、
上記ブロック塀における上記支柱側に水平方向に接着された長尺部材と、
上記ブロック塀と上記支柱との間に所定の間隔を保つ間隔保持部材と、
を有することを特徴とするブロック塀補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震によってブロック塀が倒壊することなどを防止するためのブロック塀補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブロック塀の倒壊を防止する技術として、ブロック塀の外側面に略平行に立設された支柱とブロック塀の外側面との間に複数の金属板材を介在させるとともに、それぞれの金属板材を複数のボルトによってブロック塀に係止する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように支柱とブロック塀の外側面との間に介在する金属板材は、錆や腐食が生じがちであるため、ペイントの塗り替えなどのメインテナンスをする必要があり、手間や時間、費用などがかかるのが通例である。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、ブロック塀の倒壊等を防止しつつ、メインテナンスの負担を軽減できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、
ブロック塀を補強するブロック塀補強構造であって、
上記ブロック塀に沿って立設された少なくとも1対の支柱と、
上記1対の支柱の間に掛け渡された繊維製の長尺部材と、
を有し、
上記ブロック塀には、上記支柱付近に貫通孔が形成されるとともに、
上記長尺部材は、上記1対の支柱間の部分が、上記ブロック塀の貫通孔を通して、ブロック塀における支柱と反対側に位置していることを特徴とする。
【0007】
これにより、支柱間に掛け渡された長尺部材によって、複数のブロックを含むブロック塀が倒れ込もうとする力を広い範囲に亘って受けることができ、転倒防止効果を高くできる。また、繊維製の長尺部材を用いる場合などは、ペイントの塗り替えなどのメインテナンスの負担を軽減することが容易にできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メインテナンスの負担を軽減しつつ、ブロック塀の倒壊等を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1のブロック塀補強構造を示す平面図である。
【
図2】実施形態1のブロック塀補強構造を示す正面図である。
【
図3】実施形態1のブロック塀補強構造を示す背面図である。
【
図4】実施形態2のブロック塀補強構造を示す平面図である。
【
図5】実施形態2のブロック塀補強構造を示す正面図である。
【
図6】実施形態2のブロック塀補強構造を示す背面図である。
【
図7】実施形態3のブロック塀補強構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態や変形例において、同様の機能を有する構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0011】
(実施形態1)
実施形態1のブロック塀補強構造は、
図1~
図3に示すように、ブロック塀101と、このブロック塀101に沿って所定の間隔(例えば3~4m間隔)で立設された少なくとも1対の支柱201と、上記1対の支柱201間の複数のブロックに掛け渡された繊維ベルト301(長尺部材)が設けられて構成されている。より詳しくは、ブロック塀101には、各支柱201付近の所定の高さ位置に貫通孔101aが形成され、繊維ベルト301は、各支柱201の間の部分が、ブロック塀101における上記支柱201と反対側に位置し、例えばエポキシ樹脂等の接着剤などによってブロック塀101に接着されるとともに、両端部が、ブロック塀101の貫通孔101aを通して支柱201側に回り込み、支柱201にエポキシ樹脂等の接着剤などによって接着されている。ここで、各図においては、図面の簡素化のために、便宜上、各ブロックの境界(目地)は適宜省略して描いている。
【0012】
上記繊維ベルト301の材質は特に限定されず、例えばアラミド繊維や、炭素繊維、ガラス繊維などを適用することができる。また、長尺部材の形状も特に限定されず、ベルト状(帯状)でもよいし、ロープ状などでもよい。ベルト状などの場合は、幅を広くして補強強度を高くすることが容易であるうえ、壁面からの盛り上がりを小さく抑えて見映えをよくすることが容易にできる。一方ロープ状などの場合には、ブロック塀101に形成する貫通孔101aを小さく抑えたり、補強強度を高くしたりすることが容易にできる。
【0013】
支柱201は、
図1では断面円形状に描かれているが、断面四角形状などでもよい。また、基礎の有無も特に限定されず、設置状況などに応じて決定すればよい。また、繊維ベルト301の上下方向の本数も特に限定されず、ブロック塀101の高さや必要とされる強度等に応じて設定すればよい。
【0014】
ブロック塀101に形成される貫通孔101aの大きさは、一般に、強度や見映えなどの点で小さい方が好ましいが、特に限定されない。また、貫通孔101aの形状も円形やスリットなど、種々設定できる。さらに、施工後、パテで塞ぐなどしてもよい。
【0015】
繊維ベルト301が支柱201に巻き付けられる場合の巻き付け方向は、必ずしも限定されないが、例えば、ブロック塀101の貫通孔101aを通された繊維ベルト301が、1対の支柱201の外方側を通るように各支柱201に巻き付けられるようにして、より高強度化を図り得るようにしてもよい。
【0016】
上記のように支柱201間の複数のブロックに掛け渡された長尺部材によって、ブロック塀101が倒れ込もうとする力を広い範囲に亘って受けることができ、ブロック塀101の倒壊防止を図ることが容易にできる。また、繊維製ベルトを用いる場合などは、ペイントの塗り替えなどのメインテナンスをする必要性がないか、または少ないので、メインテナンスフリーにしたり、メインテナンスの時間的、費用的負担などを軽減したりすることも容易にできる。
【0017】
(実施形態2)
支柱201は、ブロック塀101の長さ等に応じて3本以上設けてもよい。すなわち、例えば
図4~
図6に示すように、互いに隣り合う支柱201対の間に掛け渡される繊維ベルト301を上下方向の位置がずれるように配置することによって、ブロック塀101の長さに係わらず、連続した補強を行うことが容易にできる。
【0018】
(実施形態3)
ブロック塀101が支柱201側に倒れ込むのを防止するためには、
図7に示すように、ブロック塀101の支柱201側に上記と同様の繊維ベルト301を貼り付けるとともに、例えば支柱201に間隔保持部材を設けるなどして、ブロック塀101を支え得るようにしてもよい。より詳しくは、例えば、ブロック塀101の支柱201側に貼り付けられた繊維ベルト301に当接版401を当接させ、支柱201に貫通させたボルト402をナット403により位置決めして、当接版401を繊維ベルト301に押し付けることにより、支柱201の両側の広い範囲に亘って、支柱201側にブロック塀101が倒れ込むのを抑制することができる。
【0019】
また、上記のようなブロック塀101側に倒れ込むのを防止する構造と、実施形態1、2のように支柱201と反対側に倒れ込むのを防止する構造と組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0020】
101 ブロック塀
101a 貫通孔
201 支柱
301 繊維ベルト
401 当接版
402 ボルト
403 ナット