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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】自立給電式交通信号システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/095 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
G08G1/095 E
G08G1/095 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019092050
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020187568
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】和田 万正
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-146295(JP,A)
【文献】特開2016-127617(JP,A)
【文献】特開2008-071176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点の交差点機器と接続し、動作モードの指示に従って前記交差点機器に対して消費電力の異なる制御を行う信号制御部と、外部から気象情報を取得し、前記信号制御部に前記動作モードを指示する給電制御部と、該給電制御部に接続し、発電部及び蓄電部を備えた電源部とを備えた自立給電式交通信号システムであって、
前記給電制御部は、前記蓄電部の蓄電量に応じて消費電力が異なる複数の動作モードから成る蓄電量対動作モード表を複数記憶しており、
前記気象情報から今後の予測発電量を予測し、前記予測発電量に応じた1つの前記蓄電量対動作モード表を選択し、選択した前記蓄電量対動作モード表内の現在の蓄電量に応じた前記動作モードにより、前記交差点機器の動作制御を行い、
前記複数の蓄電量対動作モード表は、標準時の蓄電量対動作モード表と高発電予測時の蓄電量対動作モード表を含み、同じ前記動作モードの場合の蓄電量の上限値及び下限値は、前記高発電予測時の蓄電量対動作モード表よりも標準時の蓄電量対動作モード表の方が大きな値であることを特徴とする自立給電式交通信号システム。
【請求項2】
前記予測発電量は、前記気象情報と過去の同時期の発電量とに基づいて算出されることを特徴とする請求項1に記載の自立給電式交通信号システム。
【請求項3】
前記動作モードは複数から成り、蓄電量が高値から低値への所定幅と、消費電力が多い動作モードから消費電力の少ない動作モードとが各々対応付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自立給電式交通信号システム。
【請求項4】
前記動作モードは、運用に制限のない通常モードと、信号灯器の輝度を低減する調光モードと、該調光モードから無線伝送と感知器をオフ状態にする単独モードと、更に前記信号灯器の所定の灯色のみを閃光させる閃光モードとから成ることを特徴とする請求項1~の何れかに記載の自立給電式交通信号システム。
【請求項5】
前記発電部は太陽電池を載置して成る太陽光パネルであることを特徴とする請求項1~の何れかに記載の自立給電式交通信号システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電源を利用せずに、交通信号機の運用を行う自立給電式交通信号システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の交差点等には、安全な運行を促すために交通信号機が設置されている。標準的な十字路の交差点では4灯の車両灯器と8灯の歩行者灯器が設置されており、それらの動作を制御する交通信号制御装置を含めると、信号灯器が白熱灯の場合には合計で約800Wの消費電力が見積もられる。交通信号機への給電には通常商用電源が用いられ、一時的に商用電源の供給が途絶えた場合に備えて、バックアップ電源としてUPSや発動発電機を備えることもある。
【0003】
近年、電力供給の問題等から交通信号機にも省エネルギー化が求められるようになり、青色LEDや高輝度LEDの普及に伴い、信号灯器は白熱灯からLEDへ置き換えられている。また、近年の太陽電池の変換効率の向上に伴い、商用電源だけでなく太陽電池も備えた交通信号機が提案されており、太陽電池から供給される電力を優先的に使用して、信号灯器の動作制御を行っている。
【0004】
LEDと太陽電池は両者とも半導体における光と電気の相互作用を利用しているので、太陽電池による発電が順調に行われていれば、電力の需給バランスが取り易いという特徴がある。
【0005】
特許文献1には商用電源よりも低消費電力である太陽電池から成る主電源と、商用電源である補助電源とを、交通信号機の電源とする交通信号システムが開示されている。信号機には優先して太陽電池から電力を供給し、太陽電池からの電力供給だけでは不足していると判定した場合にのみ、不足分の電力を商用電源から補っている。信号灯器を白熱灯からLEDに置き換え、太陽電池を主電源とすることによって、消費電力を1/3以下に抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-281691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、過疎地域や山間部のような商用電源を供給できない場所では、特許文献1の交通信号システムを導入することができなかった。また、過疎地域や山間部に商用電源を敷設することも可能であるが、莫大なコストが掛かるという問題もある。
【0008】
また、発電量は天候、特に日照時間に左右されるため、天候が悪く日照不足の状態で通常の運用を続けた場合に、電源供給が途絶えてしまうという問題もある。
【0009】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、商用電源を利用せずに、自然エネルギー、特に太陽光による発電を行うと共に、発電量を予測して最適な消費電力による信号灯器や感知器等の交差点機器の動作制御を行う自立給電式交通信号システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る自立給電式交通信号システムは、交差点の交差点機器と接続し、動作モードの指示に従って前記交差点機器に対して消費電力の異なる制御を行う信号制御部と、外部から気象情報を取得し、前記信号制御部に前記動作モードを指示する給電制御部と、該給電制御部に接続し、発電部及び蓄電部を備えた電源部とを備えた自立給電式交通信号システムであって、前記給電制御部は、前記蓄電部の蓄電量に応じて消費電力が異なる複数の動作モードから成る蓄電量対動作モード表を複数記憶しており、前記気象情報から今後の予測発電量を予測し、前記予測発電量に応じた1つの前記蓄電量対動作モード表を選択し、選択した前記蓄電量対動作モード表内の現在の蓄電量に応じた前記動作モードにより、前記交差点機器の動作制御を行い、前記複数の蓄電量対動作モード表は、標準時の蓄電量対動作モード表と高発電予測時の蓄電量対動作モード表を含み、同じ前記動作モードの場合の蓄電量の上限値及び下限値は、前記高発電予測時の蓄電量対動作モード表よりも標準時の蓄電量対動作モード表の方が大きな値であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る自立給電式交通信号システムによれば、今後の気象情報を取得し、予測発電量と現在の蓄電量から、最適な交差点機器への節電制御を行うことが可能であり、信号部への電源供給が途絶えて、動作が停止する事態を引き起こし難い。また、複数の蓄電量対動作モード表を予め記憶しておき、予測発電量に応じて最適な蓄電量対動作モード表を選択することで、各交差点機器の機能を制限する節電動作モードに移行することなく、運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】自立給電式交通信号システムの構成図である。
図2】標準的な道路における信号部の配置図である。
図3】実績情報の一例のグラフ図である。
図4】信号部の消費電力データシートである。
図5】信号部の標準時の蓄電量対動作モード表である。
図6】信号部の高発電予測時の蓄電量対動作モード表である。
図7】給電制御動作のフローチャート図である。
図8】蓄電量に応じた動作制御を行った場合の蓄電量の変化を示すグラフ図である。
図9】気象情報に応じた動作制御を加えた場合の蓄電量の変化を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の自立給電式交通信号システムを図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は自立給電式交通信号システム1の構成図であり、自立給電式交通信号システム1は信号部10と給電制御部20と電源部30とから構成されている。
【0014】
信号部10は、1台の信号制御部11に接続された複数の信号灯器12、感知器13から成る交差点機器を備えている。なお、信号灯器12は歩行者の非常に少ない山間部を想定しているため、図1では車両用灯器のみで構成しているが、車両用灯器及び歩行者用灯器を設置した構成にしてもよい。
【0015】
信号制御部11は支柱等に取り付けられた箱状の筐体であり、内部には図示しない制御処理部、記憶手段を備え、記憶手段に記憶した定数等に従って、信号灯器12の点灯制御、感知器13による感応制御を制御処理部で行っている。
【0016】
図2は実際の十字路交差点に対して信号部10を設置した場合の配置図であり、信号制御部11、信号灯器12、及び感知器13の配置を示している。前述のとおり歩行者の非常に少ない山間部を想定しているため、図2でも信号灯器12としては車両用灯器のみを配置している。
【0017】
幹線道路である主道路R1と一般道路である従道路R2から成る十字路交差点には、4灯の車両用の信号灯器12と、従道路に設けられた2個の感知器13とが、それぞれ配置されている。
【0018】
信号制御部11は給電制御部20の処理部21から電力供給されると共に、信号線を介して処理部21からの指令に応じて、後述する動作モードに応じた制御を行う。また、信号制御部11は、記憶している現示階梯表に基づく信号灯器12の点灯を制御したり、感知器13による従道路R2を通行する車両の感知情報に基づく信号制御を行っている。感知器13が車両を感知すると、従道路側の信号灯器12が青の点灯状態に切り換わる。
【0019】
なお、信号灯器12、感知器13以外の交差点機器として、交通情報を表示する情報表示板を主道路R1に設置してもよく、この情報表示板を後述する調光モードでは輝度を低減させ、単独モードでは感知器13同様にON/OFF制御を行うようにしてもよい。
【0020】
給電制御部20は支柱等に取り付けられた箱状の筐体であり、内部に処理部21と、処理部21に接続された無線通信部22及び記憶部23を備えている。処理部21は、信号部10の信号制御部11及び電源部30の蓄電制御部31に接続されている。なお、信号制御部11の筐体内に給電制御部20を配置するようにしてもよいし、信号制御部11に処理部21の機能を組み込んでもよい。
【0021】
処理部21は、後述する電源部30の蓄電制御部31を介して発電部32及び/又は蓄電部33から供給する電力を取得して、信号制御部11に供給電力の送電と動作モードの指令情報の送信を行う。なお、供給電力に動作モードの指令情報を含ませる方法については、既存のあらゆる技術を使用することができる。また、夜間や悪天候等で発電部32の効率的な発電が期待できない場合には、蓄電制御部31に対して、発電部32を切り離す指令情報を送信している。
【0022】
処理部21は、蓄電制御部31から発電部32の発電量と蓄電部33の蓄電量の検出結果を取得し、記憶部23に実績情報の一部として蓄積する。図3は典型的な1日の実績情報のグラフ図であり、年月日毎に管理された蓄電部33の蓄電量の変化を経過時間に対して示したものである。晴天の日中に完全に充電されて蓄電量は蓄電可能な最大容量、例えば3000Whに達し、夜間に消費されて減少していく状況が表されている。同様に発電部32の発電量の年月日毎に管理された時間変化等の情報が、実績情報として記憶部23に蓄積される。
【0023】
処理部21に接続した無線通信部22は、通信衛星STによる衛星通信により各種情報を受信し、通信衛星STは外部の交通管制システムESからの情報を無線通信部22に送信している。また、無線通信部22は処理部21から出力された発電量や蓄電量を含む動作情報を、通信衛星STを介して交通管制システムESへ送信するようにしてもよい。このようにすることで現地まで行かずに電源部30の故障等を検出することが可能となる。携帯通信網やFM多重放送のエリア内であれば、通信衛星STを介さずに交通管制システムESと通信を行うようにしてもよい。
【0024】
交通管制システムESは、接続している多数の車両感知器等から収集される情報から混雑情報等の交通情報を生成すると共に、インターネットINを介して例えば気象庁などの気象情報データベースWDから、今後の日照時間や降水量等を含む気象情報を収集することが可能である。
【0025】
記憶部23には実績情報以外に、図4に示す信号部10を構成する各部の消費電力データシートのような自立給電式交通信号システム1の仕様情報と、図5図6に示す蓄電量に対応した信号部10の標準時の蓄電量対動作モード表及び高発電予測時の蓄電量対動作モード表とが格納されている。
【0026】
図4に示す信号灯器12の消費電力として、通常時には信号灯器12を標準の輝度で運用する場合、調光時には信号灯器12の輝度を低減させる場合、閃光時には主道路R1を黄点滅、従道路R2を赤点滅で運用する場合の各消費電力を示している。また、信号制御部11の消費電力として、信号制御を行う場合、感知器13に対する無線伝送に使用する場合の各消費電力を示し、信号制御部11と無線伝送を行う際の感知器13の消費電力を示している。
【0027】
図5に示す蓄電量対動作モード表には、蓄電部33の蓄電量の減少に対応して、信号部10の動作モードを通常モード、調光モード、単独モード、閃光モードの順に変更し、消費電力を徐々に低減する制御条件が記載されている。信号灯器12の点灯状態や輝度、信号制御部11の無線伝送のON/OFF、感知器13のON/OFFを変更して、消費電力の異なる4つの動作モードを設定している。
【0028】
図4に示す消費電力データシートから信号部10の動作モードに対する消費電力が算出でき、図5に示す標準時の蓄電量対動作モード表から現在の蓄電量に対する信号部10の動作モードを決定することができる。蓄電量が高値から低値への所定幅と、消費電力が多い動作モードから消費電力の少ない動作モードとが各々対応付けられている。例えば、蓄電部33の蓄電量80~100%では合計消費電力が70VAの通常モード、蓄電量60~80%では合計消費電力が55VAの調光モード、蓄電量40~60%では合計消費電力が40VAの単独モード、蓄電量0~40%では合計消費電力が32.5VAの閃光モードで、信号部10の動作制御を行うことになる。
【0029】
なお、感知器13や信号灯器12の交差点機器の増設や撤去等に基づく各種情報のデータベースの変更は、信号制御部11によって各交差点機器の増設や撤去等の設定状態を認識できるため、自動更新が可能である。
【0030】
図6は、後述する高発電予測時の信号部10の蓄電量対動作モード表であり、現在の蓄電量に対する信号部10の動作モードは、例えば、蓄電部33の蓄電量60~100%では運用に制限のない通常モード、蓄電量40~60%では信号灯器12の輝度を低減した調光モード、蓄電量20~40%では調光モードから無線伝送と感知器13をオフ状態とした単独モード、蓄電量0~20%では更に信号灯器12の所定の灯色のみを閃光させる閃光モードで、信号部10の動作制御を行う。
【0031】
なお、標準時の蓄電量対動作モード表及び高発電予測時の蓄電量対動作モード表の各動作モードにおける蓄電量の幅は、適宜に設定することができるが、同じ動作モードの場合の蓄電量の上限値及び下限値は、高発電予測時の蓄電量対動作モード表よりも標準時の蓄電量対動作モード表の方が大きい値としている。通常モードの上限値の100%と、閃光モードの下限値0%については、標準時、高発電予測時の蓄電量対動作モード表で同じ値となる。
【0032】
また、処理部21は、無線通信部22及び交通管制システムESを順次に介して、インターネットIN上にある気象情報データベースWDから気象情報を取得することができる。
【0033】
処理部21は、取得した発電部32からの発電量及び蓄電部33からの蓄電量のデータ、取得した前述の気象情報を考慮し、記憶部23から実績情報、蓄電量対動作モード表を参照して、信号部10に対する動作モードを決定し、信号制御部11に動作モードを指示する指令情報を送信する。
【0034】
電源部30は、蓄電制御部31に接続された発電部32と蓄電部33を備えている。蓄電制御部31は、発電部32の発電量と蓄電部33の蓄電量を検出する図示しない測定部を有する。発電部32は、例えば太陽電池を載置した太陽光パネルであり、必要な発電量や設置条件に応じて太陽電池を載置する枚数を変更可能である。蓄電部33は、少なくとも2日間連続で日照条件が悪くても運用することが可能な容量が必要とされ、例えばリチウムイオン電池が好適である。
【0035】
蓄電制御部31は、発電部32の発電量と蓄電部33の蓄電量を常時検出して、処理部21に出力するとともに、処理部21からの指令に応じて所定電力を送電する。また、処理部21からの前述の切り離し指令により、蓄電制御部31は発電部32からの放電を防止するために、発電部32を電気的に切り離す。
【0036】
図7は、自立給電式交通信号システム1の処理部21における給電制御動作のフローチャート図である。まず、自立給電式交通信号システム1が稼動すると、ステップS101では処理部21が、発電部32の緯度及び経度及び現在の日時から、太陽光の得られる日中か否かを判断する。更に、周囲の地形を日中か否かの判断基準に加えてもよい。
【0037】
または、無線通信部22が交通管制システムESを介して、インターネット上の気象情報データベースWDにアクセスして日の出及び日の入りの時刻情報を取得し、記憶部23に格納してもよい。或いは、日の出及び日の入り時刻は、緯度と経度から求められることが知られているので、発電部32の緯度及び経度から求めた日の出及び日の入り時刻を記憶部23に格納してもよい。
【0038】
ステップS101で日中と判断した場合には、ステップS102に進んで処理部21は、蓄電制御部31から現在の発電部32の発電量と蓄電部33の蓄電量の情報を取得する。次のステップS103では発電部32の現在の発電量と待機電力に基づく放電量とを比較する。この発電部32の放電量は、一定値なので予め記憶部23に格納しておけばよい。
【0039】
ステップS103で発電量が放電量よりも大きければステップS104に進んで、無線通信部22は交通管制システムESを介して、インターネット上の気象情報データベースWDに接続して、周辺地域の気象情報を取得できるか否かを判断する。
【0040】
ステップS101において、現在の時刻から太陽光の得られない夜間であると判断した場合にはステップS105に移行して、蓄電量対動作モード表の通常モードを調光モードに置き換える。つまり、通常モードでの指令がなくなり、例えば標準時の蓄電量対動作モード表であれば、蓄電量が60~80%の場合に調光モードの指令を出力することになる。
【0041】
ステップS105の処理の後、又はステップS103で発電量が放電量よりも少ない場合には、ステップS106に移行し、蓄電制御部31に対して発電部32を電気的に切り離すように指令を出力する。蓄電制御部31が発電部32の切り離しを完了したら、ステップS104に移行して上述した処理を実行する。
【0042】
また、発電部32を構成する一般的な太陽光パネルでは、夜間は発電を行わないため蓄電部33に蓄電されることはない。従って、発電を行わない夜間では、蓄電部33の方が発電部32よりも電位が高くなるので、発電部32と蓄電部33とが接続状態にあると、蓄電部33から発電部32に対して漏れ電流が発生し、蓄電部33が放電することになる。そこで、ステップS103の発電部32の現在の発電量と待機電力に基づく放電量の比較に代えて、発電部32と蓄電部33の電位を比較する処理を採用してもよい。このような場合には、発電部32の電位が蓄電部33の電位より低い場合に、ステップS106に移行し、発電部32を切り離すことになる。
【0043】
更に、ステップS103において、蓄電部33がフル充電状態か否かを併せて判断し、蓄電部33がフル充電状態であればステップS106に移行して発電部32が蓄電部33に電気的に切り離す処理を付加してもよい。切り離すことで発電部32で発電された電力は、蓄電部33には蓄電されずに蓄電制御部31を介して処理部21に送電される。処理部21は無線通信部22等の給電制御部20の動作に送電された電力を使用すると共に、信号部10へと送電し信号灯器12の点灯等に使用する。このようにすることで、蓄電部33の過充電を防止することができ、蓄電部33の劣化や容量の減少を防止して長寿命化を図ることができる。
【0044】
ステップS104において気象情報を取得した場合には、ステップS107に移行して、発電量の予測を行う。発電量の予測は、数日間の天気を含む気象情報と、記憶部23に記憶された過去の発電実績とから、例えば72時間分の発電量を予測する。この予測は、例えば3日間全てが1日を通して快晴との気象情報を得た場合には、前年又は過去の同月の1日を通して快晴であった日の1日分の発電量を得て、それを3倍して72時間分の予測発電量とする。
【0045】
天候が晴れ、曇り、雨の場合にも、同様にして前年又は過去の同月の同天候の1日分の発電量を得て、天候の変化予測に応じた3日分の発電量を加算して72時間分の予測発電量とする。また、気象情報の降水確率を用いて、前年又は過去の同月の降水確率がほぼ等しい日の単位時間当りの発電量を得る方式を用いてもよい。この方法では72時間の降水確率の変化に応じた精度の高い予測発電量を算出することができる。更に図示しない路面に設置した路面温度計を処理部21に接続しておけば、路面温度の上昇勾配から、その地点でのよりきめ細かい日照量、即ち発電量の予測が可能である。
【0046】
このようにして、今後の所定期間の発電量を予測した後に、ステップS108においてこの予測発電量が閾値を下回っているか否かの判断を行う。例えば、閾値として、(通常モードの消費電力70VA+調光モードの消費電力55VA)÷2×72時間と設定する。つまり、予測発電量が、3日間連続で日中は通常モード、夜間は調光モードで動作するのに必要な電力を越えているかどうかを判定することになる。予測発電量が閾値を下回った場合には、ステップS109に移行して、標準時の蓄電量対動作モード表を採用する。
【0047】
これに対して、予測発電量が閾値を上回った場合には、ステップS110に移行し、高発電予測時の蓄電量対動作モード表を採用する。今後、十分な発電量が確保できる場合には、現時点の動作モードが蓄電量に対して消費電力が高い状態で運用しても支障がないからである。
【0048】
ステップS104で気象情報を取得できない場合には、発電量を予測できないことからステップS109に移行して、標準時の蓄電量対動作モード表を採用することになる。なお、標準時の蓄電量対動作モード表としては、雨が連続する場合の予測発電量を想定して、動作モードに対応する蓄電量の各値を設定することが好ましい。
【0049】
続いて、ステップS111に移行して現在の蓄電量を取得し、ステップS112において標準時の蓄電量対動作モード表又は高発電予測時の蓄電量対動作モード表の蓄電量に応じた動作モードを決定する。
【0050】
ステップS113に移行して、処理部21より信号制御部11に動作モードを指示する指令情報を送信する。信号制御部11は、入力された動作モードの指令情報に基づいて、信号灯器12、感知器13の動作を制御する。
【0051】
そして、ステップS114では所定時間、例えば3時間を経過した後に、ステップS101に戻る処理を行う。そして、このループ処理を繰り返すことになる。
【0052】
このフローチャート図では、蓄電量対動作モード表は、標準時と高発電時の2種類を用意し、予測発電量に応じて切り替えることを説明したが、3種類以上の蓄電量対動作モード表を用意するようにしてもよい。
【0053】
例えば図8は蓄電量の時間変化を表したグラフ図であり、図5に示す蓄電量対動作モード表に基づいて、信号制御部11が信号灯器12の点灯を制御した場合を示している。蓄電部33の蓄電量が減少するのに対応して、点灯条件を通常モード、調光モード、単独モード、閃光モードの順に変更しているので、点灯条件を変更しない場合と比較して、3日目に悪天候があっても蓄電量がゼロにならずに、4日目に天候が回復して蓄電量が増加に転じ、やがて蓄電量が2000Whに達して完全に蓄電された状態に戻っている。
【0054】
図9は更に気象情報によって点灯条件を変更する制御、つまり図7のフローチャートに基づく給電制御について、蓄電量の時間変化を表したグラフ図である。無線通信部22が交通管制システムESを介して、インターネットIN上の気象情報データベースWDにアクセスし、取得した気象情報では今後、晴天が予測された場合には、高発電予測時の蓄電量対動作モード表の各動作モードが採用され、例えば処理部21は夕方から調光モードに移行せずに通常動作を維持する制御を信号制御部11に指令する。消費電力が高い動作モードで運用したとしても、翌日以降の晴天により蓄電部33の蓄電量が2000Whに達して完全に蓄電された状態に戻ることになる。
【0055】
逆に、取得した気象情報では今後、雨天が予測された場合には、標準時の蓄電量対動作モード表の各動作モードが採用され、例えば処理部21は夕方から調光モードに移行する指令を信号制御部11に行うことになる。
【0056】
なお、上述の実施例では発電部32は、太陽電池を載置した太陽光パネルとされているが、自然エネルギーによる発電であれば特に限定されることはなく、例えば風車による風力発電部、水車による水力発電部、それら発電部の任意の組み合わせで構成することもできる。
【0057】
本発明に係る自立給電式交通信号システム1によれば、今後の気象情報を取得し、予測発電量と現在の蓄電量から、最適な交差点機器への節電制御を行うことが可能であり、信号部10への電源供給が途絶えて、動作が停止する事態を引き起こし難い。また、複数の蓄電量対動作モード表を予め記憶しておき、予測発電量に応じて最適な蓄電量対動作モード表を選択することで、各交差点機器の機能を制限する節電動作モードに移行することなく、運用することができる。例えば、今後の予測発電量を十分に確保できる場合には、節電動作モードの切り換えタイミングを遅くなるような動作制御を行うことになる。
【符号の説明】
【0058】
1 自立給電式交通信号システム
10 信号部
11 信号制御部
12 信号灯器
13 感知器
20 給電制御部
21 処理部
22 無線通信部
23 記憶部
30 電源部
31 蓄電制御部
32 発電部
33 蓄電部
ES 交通管制システム
WD 気象情報データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9