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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】アクセルペダル装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 26/02 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
B60K26/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019109398
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020199949
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】長島 潤
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 智
(72)【発明者】
【氏名】浦野 貴裕
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-528617(JP,A)
【文献】特開2013-147211(JP,A)
【文献】特開2018-103943(JP,A)
【文献】中国実用新案第202294299(CN,U)
【文献】中国実用新案第203318169(CN,U)
【文献】特開2016-124447(JP,A)
【文献】特開2018-165891(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102442213(CN,A)
【文献】特開2004-108214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 26/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルペダルを有するペダルアームと、
前記ペダルアームを休止位置と最大踏込み位置の間で所定の軸線回りに揺動自在に支持する樹脂製のハウジングと、
前記ペダルアームを前記休止位置に戻す付勢力を及ぼす戻しバネと、を備え、
前記ハウジングは、車体に固定するためのボルトを通すボス部と、前記ボス部の近傍において前記最大踏込み位置を規定する全開ストッパと、を含み、
前記ボス部は、前記軸線と平行に伸長する貫通孔を有し、
前記全開ストッパは、前記ペダルアームの踏力荷重を受ける方向において、前記貫通孔と重なる位置に形成されている、
ことを特徴とするアクセルペダル装置。
【請求項2】
前記ボス部は、前記貫通孔の周りにおいて、複数の肉抜き凹部と、前記全開ストッパに加わる踏力荷重を前記ボス部に通される前記ボルトに伝達するべく前記複数の肉抜き凹部の間に介在する補強リブを含む、
ことを特徴とする請求項に記載のアクセルペダル装置。
【請求項3】
前記全開ストッパは、前記ボス部の幅寸法の範囲内に形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアクセルペダル装置。
【請求項4】
前記ボス部には、前記ボルトを通すべく金属製の円筒状カラーが嵌合されている、
ことを特徴とする請求項1ないしいずれか一つに記載のアクセルペダル装置。
【請求項5】
前記ペダルアームは、前記ハウジングに支持される円筒部と、前記円筒部から鉛直方向の上方に伸長する上側アームと、前記円筒部から鉛直方向の下方に伸長する下側アームを含み、
前記下側アームは、前記軸線の方向において所定幅をなすと共に前記全開ストッパに対向する裏面において、前記全開ストッパに当接する当接部を有する、
ことを特徴とする請求項1ないしいずれか一つに記載のアクセルペダル装置。
【請求項6】
前記ボス部は、前記軸線よりも鉛直方向の下方に配置された下側ボス部と、前記軸線よりも鉛直方向の上方に配置された複数の上側ボス部を含み、
前記全開ストッパは、前記下側ボス部の近傍に設けられている、
ことを特徴とする請求項1ないしいずれか一つに記載のアクセルペダル装置。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記ペダルアームの円筒部及び上側アームを収容する収容空間を画定するハウジング本体と、前記収容空間を閉塞するべく前記ハウジング本体に結合されるハウジングカバーを含み、
前記ボス部は、前記ハウジング本体に設けられた本体ボス部と、前記ハウジングカバーに設けられたカバーボス部を含み、
前記全開ストッパは、前記本体ボス部の近傍に設けられている、
ことを特徴とする請求項1ないしいずれか一つに記載のアクセルペダル装置。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記車体に対してブラケットを介して固定される、
ことを特徴とする請求項1ないしいずれか一つに記載のアクセルペダル装置。
【請求項9】
前記ブラケットは、前記ハウジングが固定されるハウジング固定壁と、前記車体に固定される車体側固定壁を含む、
ことを特徴とする請求項に記載のアクセルペダル装置。
【請求項10】
前記ボス部は、前記ハウジング固定壁に当接されるべく、前記ハウジングの外壁面から前記軸線と平行に突出して形成されている、
ことを特徴とする請求項に記載のアクセルペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に適用されるアクセルペダル装置に関し、特に樹脂材料により形成されたハウジングを備えるアクセルペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアクセルペダル装置としては、樹脂製のハウジングと、ハウジングに揺動自在に支持されたアクセルペダルと、アクセルペダルを休止位置である全閉位置に戻すスプリングとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2等を参照)。
【0003】
このアクセルペダル装置において、ハウジングは、車体側に対向して配置される底板、底板と対向する天板、両側の側板を備えている。そして、底板には、ハウジングを車体に固定するボルトを通す二つの取付け孔、二つの取付け孔から偏倚した位置においてアクセルペダルを全開位置に停止させる全開ストッパが設けられている。
【0004】
しかしながら、このアクセルペダル装置においては、全開ストッパがボルトの取付け孔から偏倚しているため、アクセルペダルが過踏力により踏み込まれて全開ストッパに当接すると、ボルトで固定された取付け孔の領域を支点、全開ストッパを荷重点として、ハウジングにおいて曲げモーメントが生じる。そして、この曲げモーメントにより、全開ストッパの近傍又はその他の脆弱部において、ハウジングの変形、破断等を招く虞がある。
そこで、これに対処するべく、ハウジングの肉厚を厚くし、又は、外壁に補強リブ等を設けることもできるが、ハウジングの重量化、大型化、高コスト化等を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-82725号公報
【文献】特開2013-244842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造及び形状の簡素化、低コスト化、小型化等を図りつつ、過踏力が及ぼされてもハウジングの変形や破断等を防止できるアクセルペダル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアクセルペダル装置は、アクセルペダルを有するペダルアームと、ペダルアームを休止位置と最大踏込み位置の間で所定の軸線回りに揺動自在に支持する樹脂製のハウジングと、ペダルアームを休止位置に戻す付勢力を及ぼす戻しバネとを備え、ハウジングは、車体に固定するためのボルトを通すボス部と、ボス部の近傍において最大踏込み位置を規定する全開ストッパとを含み、ボス部は、上記軸線と平行に伸長する貫通孔を有し、全開ストッパは、ペダルアームの踏力荷重を受ける方向において貫通孔と重なる位置に形成されている、構成となっている。
【0009】
上記アクセルペダル装置において、ボス部は、貫通孔の周りにおいて、複数の肉抜き凹部と、全開ストッパに加わる踏力荷重をボス部に通されるボルトに伝達するべく複数の肉抜き凹部の間に介在する補強リブを含む、構成を採用してもよい。
【0010】
上記アクセルペダル装置において、全開ストッパは、ボス部の幅寸法の範囲内に形成されている、構成を採用してもよい。
【0011】
上記アクセルペダル装置において、ボス部には、ボルトを通すべく金属製の円筒状カラーが嵌合されている、構成を採用してもよい。
【0012】
上記アクセルペダル装置において、ペダルアームは、ハウジングに支持される円筒部と、円筒部から鉛直方向の上方に伸長する上側アームと、円筒部から鉛直方向の下方に伸長する下側アームを含み、下側アームは、軸線の方向において所定幅をなすと共に全開ストッパに対向する裏面において、全開ストッパに当接する当接部を有する、構成を採用してもよい。
【0013】
上記アクセルペダル装置において、ボス部は、軸線よりも鉛直方向の下方に配置された下側ボス部、軸線よりも鉛直方向の上方に配置された複数の上側ボス部を含み、全開ストッパは、下側ボス部の近傍に設けられている、構成を採用してもよい。
【0014】
上記アクセルペダル装置において、ハウジングは、ペダルアームの円筒部及び上側アームを収容する収容空間を画定するハウジング本体と、収容空間を閉塞するべくハウジング本体に結合されるハウジングカバーを含み、ボス部は、ハウジング本体に設けられた本体ボス部と、ハウジングカバーに設けられたカバーボス部を含み、全開ストッパは、本体ボス部の近傍に設けられている、構成を採用してもよい。
【0015】
上記アクセルペダル装置において、ハウジングは、車体に対してブラケットを介して固定される、構成を採用してもよい。
【0016】
上記アクセルペダル装置において、ブラケットは、ハウジングが固定されるハウジング固定壁と、車体に固定される車体側固定壁を含む、構成を採用してもよい。
【0017】
上記アクセルペダル装置において、ボス部は、ハウジング固定壁に当接されるべく、ハウジングの外壁面から軸線と平行に突出して形成されている、構成を使用してもよい。
【発明の効果】
【0018】
上記構成をなすアクセルペダル装置によれば、構造及び形状の簡素化、低コスト化、小型化等を達成しつつ、過踏力が及ぼされてもハウジングの変形や破断等を防止できるアクセルペダル装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るアクセルペダル装置が車体のダッシュロアパネルに対してブラケットを介して固定される状態を示す斜視図である。
図2図1に示すアクセルペダル装置とブラケットを分解した分解斜視図である。
図3図1に示すアクセルペダル装置の斜視図である。
図4図3に示すアクセルペダル装置の内部及びペダルアームの動作を示す側面図である。
図5図3に示すアクセルペダル装置に含まれるハウジングの一部をなすハウジング本体の内側を示す斜視図である。
図6図5に示すハウジング本体の外側を示す斜視図である。
図7図3に示すアクセルペダル装置に含まれるハウジングの一部をなすハウジングカバーの内側を示す斜視図である。
図8図3に示すアクセルペダル装置に含まれるペダルアームを裏側から視た背面図である。
図9図1に示すアクセルペダル装置及びブラケットにおいて、ブラケットを一部切断して車体側の裏側から視た背面図である。
図10】本発明に係るアクセルペダル装置において、ボス部の他の実施形態を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
一実施形態に係るアクセルペダル装置Mは、図1及び図2に示すように、車体のダッシュロアパネル1に対して、ブラケット2を介して固定されるものである。
【0021】
ブラケット2は、金属材料により形成され、アクセルペダル装置Mのハウジング10が固定されるハウジング固定壁2aと、車体のダッシュロアパネル1に固定される車体側固定壁2bを備えている。
ハウジング固定壁2aは、車体の幅方向に壁面を向けるように形成され、ハウジング10を固定するボルトBを通す3つの円孔2a、円孔2aの周りに形成された平坦な3つの座面部2aを備えている。
車体側固定壁2bは、ダッシュロアパネル1に沿うように形成され、車体に固定するボルト(不図示)を通す3つの孔2b、孔2bの周りに形成された平坦な3つの座面部2bを備えている。
【0022】
アクセルペダル装置Mは、図1ないし図8に示すように、ハウジング10、円筒状カラー20、ペダルアーム30、ペダルアーム30を休止位置に戻す戻しバネ40、踏力にヒステリシスを発生するヒステリシス発生機構50、ペダルアーム30に反力を付加する反力付加機構としてのトルクモータ60及びレバー70、ペダルアーム30の回転角度位置を検出する位置センサ80、回路基板90を備えている。
【0023】
ハウジング10は、樹脂材料により形成され、ハウジング本体11と、ハウジング本体11に連結されるハウジングカバー12により構成されている。
また、ハウジング本体11には、その外側に第1補助カバー13が連結され、ハウジングカバー12には、その外側に第2補助カバー14が連結されている。
【0024】
ハウジング本体11は、図5及び図6に示すように、収容空間Aを画定するべく、側壁11a、前壁11b、奥壁11c、天壁11dを備えている。
また、ハウジング本体11は、支持部11e、軸受部11f、内壁面11g,11h、本体ボス部としての下側ボス部11i及び上側ボス部11j,11k、モータ取付け部11m、全開ストッパ11n、バネ受け部11p、バネ受け部11q、4つの連結爪11rを備えている。
【0025】
前壁11bは、図4に示すように、ペダルアーム30が休止位置Hpと最大踏込み位置Fpとの間で移動できるように、下方領域の一部が切り欠かれている。
奥壁11cは、その外側面がブラケット2の車体側固定壁2bに対向し、その内側面の一部が、図4に示すように、ペダルアーム30の休止位置を規定する休止ストッパ11cとして機能する。
【0026】
支持部11eは、ペダルアーム30の円筒部31に形成された嵌合凹部31aに嵌合されてペダルアーム30を軸線S回りに揺動自在に支持するべく、軸線Sを中心とする円柱状に形成されている。
軸受部11fは、軸受を介して、レバー70の回転軸61aを軸線S2回りに回動自在に支持する。
内壁面11gは、ヒステリシス発生機構50に含まれるスライダ51を摺動自在に支持する。
内壁面11hは、ヒステリシス発生機構50に含まれるスライダ52を摺動自在に支持する。
【0027】
下側ボス部11iは、軸線Sよりも鉛直方向の下方において、肉厚の略直方体状に形成され、軸線Sと平行な軸線L1方向に伸長する貫通孔11iを有する。
貫通孔11iは、ボルトBを通す円筒状カラー20が嵌合されるべく、軸線L1を中心とする円筒孔をなす。
【0028】
上側ボス部11jは、軸線Sよりも鉛直方向の上方において、略円筒状に形成され、軸線Sと平行な軸線L2方向に伸長する貫通孔11jを有する。
貫通孔11jは、ボルトBを通す円筒状カラー20が嵌合されるべく、軸線L2を中心とする円筒孔をなす。
【0029】
上側ボス部11kは、軸線Sよりも鉛直方向の上方において、略円筒状に形成され、軸線Sと平行な軸線L3方向に伸長する貫通孔11kを有する。
貫通孔11kは、ボルトBを通す円筒状カラー20が嵌合されるべく、軸線L3を中心とする円筒孔をなす。
ここで、下側ボス部11i及び上側ボス部11j,11kは、略逆三角形をなすハウジング本体11において、各頂点に位置するように配置されている。
【0030】
全開ストッパ11nは、ペダルアーム30の当接部33aを受けて、ペダルアーム30の最大踏込み位置Fpを規定するものであり、図4及び図5に示すように、下側ボス部11iの近傍において、軸線L1と平行な平坦面をなす。
ここで、全開ストッパ11nは、図4に示すように、ペダルアーム30の踏力荷重Fを受ける方向Vdにおいて、貫通孔11iと重なる位置に形成されている。
また、全開ストッパ11nは、図9に示すように、軸線L1の方向において下側ボス部11iから偏倚することなく、軸線L1,Sの方向における下側ボス部11iの幅寸法W1の範囲内において、幅寸法W1よりも僅かに小さく形成されている。
【0031】
これによれば、全開ストッパ11nに加わる踏力荷重Fは、下側ボス部11iを介して、下側ボス部11iに嵌合された円筒状カラー20及びボルトBで直接受け止められる。
すなわち、踏力荷重Fが、下側ボス部11iから偏倚した位置に加わらないため、下側ボス部11iを支点としてハウジング本体11に曲げモーメントを生じる荷重が作用せず、ハウジング本体11の変形や破断を防止することができる。
尚、全開ストッパ11nは、踏力荷重Fを受ける中央領域が貫通孔11iと重なる位置にあれば、貫通孔11iに対して上下方向に適度に偏倚して配置されてもよい。
【0032】
ハウジングカバー12は、ハウジング本体11の収容空間Aを閉塞するべくハウジング本体11に結合されるものであり、図3及び図7に示すように、側壁12a、コネクタ12b、センサ埋設部12c、支持部12e、カバーボス部としての下側ボス部12i及び上側ボス部12j,12k、基板取付け部12m、4つの連結片12rを備えている。
【0033】
コネクタ12bは、回路基板90から伸びる端子を収容し、外部のコネクタに接続される。
センサ埋設部12cは、位置センサ80の一部をなすステータ83及びホール素子84を埋設すると共に、ペダルアーム30の円筒部31の内側に非接触にて配置されるべく、軸線Sを中心とする円柱状をなす。
支持部12eは、図8に示すように、ペダルアーム30の円筒部31に形成された嵌合凸部31bが嵌合されてペダルアーム30を軸線S回りに揺動自在に支持するべく、軸線Sを中心とする円筒状をなす。
【0034】
下側ボス部12iは、下側ボス部11iに接合されるものであり、軸線Sよりも鉛直方向の下方において、略円筒状に形成され、軸線Sと平行な軸線L1方向に伸長する貫通孔12iを有する。
また、下側ボス部12iは、ハウジングカバー12の外壁面から軸線L1と平行に突出して、ブラケット2の座面部2aに当接するように形成されている。
貫通孔12iは、ボルトBを通す円筒状カラー20が嵌合されるべく、軸線L1を中心とする円筒孔をなす。
【0035】
上側ボス部12jは、上側ボス部11jに接合されるものであり、軸線Sよりも鉛直方向の上方において、略円筒状に形成され、軸線Sと平行な軸線L2方向に伸長する貫通孔12jを有する。
また、上側ボス部12jは、ハウジングカバー12の外壁面から軸線L2と平行に突出して、ブラケット2の座面部2aに当接するように形成されている。
貫通孔12jは、ボルトBを通す円筒状カラー20が嵌合されるべく、軸線L2を中心とする円筒孔をなす。
【0036】
上側ボス部12kは、上側ボス部11kに接合されるものであり、軸線Sよりも鉛直方向の上方において、略円筒状に形成され、軸線Sと平行な軸線L3方向に伸長する貫通孔12kを有する。
また、上側ボス部12kは、ハウジングカバー12の外壁面から軸線L3と平行に突出して、ブラケット2の座面部2aに当接するように形成されている。
貫通孔12kは、ボルトBを通す円筒状カラー20が嵌合されるべく、軸線L3を中心とする円筒孔をなす。
【0037】
そして、ハウジングカバー12は、ハウジング本体11に嵌合された3つの円筒状カラー20がそれぞれ3つの貫通孔12i,12j,12kに嵌合されると共にハウジング本体11に接合され、連結片12rが連結爪11rに係合される。
これにより、ハウジングカバー12がハウジング本体11に一体的に結合されたハウジング10が得られる。
【0038】
第1補助カバー13は、ハウジング本体11の外側面に取り付けられたトルクモータ60を覆うべく、トルクモータ60の一部をなすヨーク63に取り付けられる。
第2補助カバー14は、ハウジングカバー12の外側面に取り付けられた回路基板90を覆うべく、ハウジングカバー12に取り付けられる。
【0039】
円筒状カラー20は、金属材料により形成され、ハウジング本体11及びハウジングカバー12の三箇所のボス部(11i,12i、11j,12j、11k,12k)の貫通孔11i,12i、11j,12j、11k,12kに嵌合される。
このように、円筒状カラー20がハウジング本体11及びハウジングカバー12に嵌合されているため、ハウジング10が二分割構造であるにも拘わらず、ハウジング10としての機械的強度を高めることができる。
これにより、ボルトB及びナットNを用いて、三箇所のボス部(11i,12i、11j,12j、11k,12k)の領域において、ハウジング10をブラケット2に堅固に固定することができる。
【0040】
また、三箇所のボス部(12i,12j,12k)は、図1及び図9に示すように、ブラケット2のハウジング固定壁2aに当接されるべく、ハウジングカバー12の外壁面から突出するように形成されている。
これにより、ハウジングカバー12がブラケット2に干渉するのを防止しつつ、三箇所のボス部を介して、ボルトB及びナットNでハウジング10をブラケット2に堅固に固定することができる。
【0041】
ペダルアーム30は、樹脂材料により成形され、図4及び図8に示すように、軸線Sを中心とする円筒部31、円筒部31から鉛直方向の上方に伸長する上側アーム32、円筒部31から鉛直方向の下方に伸長する下側アーム33を備えている。
【0042】
円筒部31は、ハウジング本体11の支持部11eが嵌合される嵌合凹部31a、ハウジングカバー12の支持部12eに嵌合される嵌合凸部31bを備えている。
また、円筒部31には、内周面において、位置センサ80の一部をなす環状のアーマチュア81、アーマチュア81の内周面に結合された一対の円弧状の永久磁石82が固定されている。
【0043】
上側アーム32は、戻しバネ40の端部を受けるバネ受け部32a、ヒステリシス発生機構50のスライダ51に当接する当接部32b、休止位置Hpにおいて休止ストッパ11cに当接する当接部32c、レバー70が係合する係合部32dを備えている。
下側アーム33は、最大踏込み位置Fpにおいて全開ストッパ11nに当接する当接部33a、アクセルペダル33bを備えている。
【0044】
当接部33aは、図8に示すように、軸線S,L1の方向において、所定幅W2をなすと共に全開ストッパ11nに対向する裏面において、軸線S,L1と平行に伸長する台形状をなす。
すなわち、当接部33aの幅寸法W2は、下側ボス部11iの幅寸法W1よりも僅かに小さく、全開ストッパ11nの幅寸法と同等に形成されている。
そして、ペダルアーム30は、嵌合凹部31aに支持部11eが嵌合されかつ嵌合凸部31bが支持部12eに嵌合されることで、ハウジング10に対して軸線S回りに揺動自在に支持される。
【0045】
戻しバネ40は、図4に示すように、バネ鋼等により形成された圧縮型のコイルバネであり、一端部がハウジング本体11のバネ受け部11pに当接し、他端部がペダルアーム30のバネ受け部32aに当接して、所定の圧縮代に圧縮された状態で取り付けられる。
そして、戻しバネ40は、ペダルアーム20を休止位置Hpに戻す付勢力を及ぼす。
【0046】
ヒステリシス発生機構50は、図4に示すように、スライダ51、スライダ52、付勢バネ53を備えている。
スライダ51は、樹脂材料、例えば、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により形成され、ハウジング10の内壁面11gに摺動自在に接触する接触面51a、スライダ52の傾斜面52bと接触する傾斜面51b、上側アーム部32の係合部32bが離脱可能に係合し得る係合面51cを有する。
スライダ52は、樹脂材料、例えば、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により形成され、ハウジング10の内壁面11hに摺動自在に接触する接触面52a、スライダ51の傾斜面51bと接触する傾斜面52b、付勢バネ53の一端部を受ける受け面52cを有する。
【0047】
付勢バネ53は、例えばバネ鋼等により形成された圧縮型のコイルバネであり、一端部がスライダ52の受け面52cに当接しかつ他端部がハウジング10のバネ受け部11qに当接して圧縮された状態で配置される。
そして、付勢バネ53は、スライダ52の傾斜面52bをスライダ51の傾斜面51bに押し付けて、スライダ51,52を内壁面11g,11qに向けて押し付けるようなくさび作用を及ぼし、又、スライダ51,52を介してペダルアーム30を休止位置に戻す付勢力を及ぼす。
【0048】
上記ヒステリシス発生機構50においては、アクセルペダル33bが踏み込まれるとき、スライダ51,52とハウジング10の間において踏込み操作と対抗する向きに摩擦力が生じ、付勢バネ53の圧縮量の増加に伴って増加する。
一方、アクセルペダル33bが戻されるとき、スライダ51,52とハウジング10の間に生じる摩擦力は、踏込み操作の場合と逆向きに生じ、付勢バネ53の圧縮量の減少に伴って減少する。ここで、戻り操作の踏力は、踏込み操作の踏力よりも小さくなるため、踏力にヒステリシスが発生する。
尚、戻し操作の途中において、スライダ51がスティックして停止したときは、戻しバネ40の付勢力により、ペダルアーム30は休止位置に戻る。
【0049】
トルクモータ60は、ハウジング本体11に配置されるものであり、一対の永久磁石を有するロータ61、励磁用のコイル62、磁路を形成するヨーク63を備えている。
ロータ61は、軸線S2を中心とする回転軸61aを有する。回転軸61aは、ハウジング本体11の軸受部11fにおいて軸受を介して軸線S2回りに回動自在に支持されている。
コイル62は、ヨーク63の一部に保持されたボビンに巻回され、通電により、ヨーク63の磁路に磁力線を発生させる。
ヨーク63は、ロータ61に隙間をおいて対向するように形成され、ハウジング本体11のモータ取付け部11mに固定されている。
そして、ヨーク63には、軸線S2方向の外側からトルクモータ60を覆うように、第1補助カバー13が取り付けられている。
【0050】
レバー70は、図4に示すように、ロータ61の回転軸61aに固定されて、ロータ61と一体的に軸線S2回りに回動し、先端に位置するローラ71がペダルアーム30の係合部32dに係合している。
そして、レバー70は、トルクモータ60が駆動力を及ぼさないとき、ディテントトルクによりペダルアーム30の揺動に追従し、トルクモータ60が駆動力を及ぼすとき、踏力に抵抗してペダルアーム30を休止位置Hpに向けて押し戻すか又は踏込みを抑制するように機能する。
【0051】
位置センサ80は、非接触式の磁気式センサであり、図4に示すように、ペダルアーム30の円筒部31の内周面に固定された磁性材料からなる環状のアーマチュア81、アーマチュア81の内周面に固定された円弧状の一対の永久磁石82、ハウジングカバー12のセンサ埋設部12cに埋設された磁性材料からなる二つのステータ83及び二つのホール素子84を備えている。
【0052】
そして、位置センサ80は、ペダルアーム30が回動することにより、アーマチュア81及び永久磁石82が、ステータ83及びホール素子84に対して相対的に回転し、ホール素子84が磁束密度の変化を検出して電圧信号として出力することで、ペダルアーム30の角度位置が検出される。
【0053】
回路基板90は、種々の電子部品を含む制御回路、ホール素子84から出力される信号を処理する回路、ホール素子84を電気的に接続する端子、その他の電子部品を備えている。
そして、回路基板90は、図3に示すように、ハウジングカバー12の基板取付け部12mに取り付けられ、その外側から、回路基板90を覆うように、第2補助カバー14がハウジングカバー12に取り付けられている。
【0054】
次に、上記アクセルペダル装置Mの動作について説明する。
先ず、運転者がアクセルペダル33bを踏み込まないとき、戻しバネ40の付勢力により、上側アーム32の当接部32cがハウジング10の休止ストッパ11c1に当接して、ペダルアーム30は休止位置Hpに停止している。
この状態から、運転者がアクセルペダル33bを踏み込むと、ペダルアーム30は、戻しバネ40の付勢力に抗しつつ、ヒステリシス発生機構50が発生する抵抗荷重を増しながら、最大踏込み位置Fp(全開位置)まで回転して、下側アーム33の当接部33aがハウジング10の全開ストッパ11nに当接して停止する。
【0055】
一方、運転者が踏力を緩めると、踏込み時の抵抗荷重よりも小さい抵抗荷重を運転者に及ぼしながら、ペダルアーム30は戻しバネ40の付勢力により休止位置Hpに向けて移動し、上側アーム32の当接部32cがハウジング10の休止ストッパ11cに当接して停止する。この戻し動作において、レバー70は、上側アーム32の係合部32dに接触しつつ追従する。
【0056】
尚、運転者がアクセルペダル33bを踏み込んだ状態において、踏込み操作を抑制する必要があると判断された場合は、反力付加機構(60,70)が起動して、運転者の踏力に対抗してペダルアーム30を休止位置Hpに向けて押し戻す又は踏込みを抑制するように制御される。
【0057】
運転者が、アクセルペダル33bを過踏力にて踏み込んだ場合、踏力荷重Fは、当接部33aを介して全開ストッパ11nに加わる。
ここで、全開ストッパ11nに加わった踏力荷重Fは、下側ボス部11iを介して、下側ボス部11iに嵌合された円筒状カラー20及びボルトBで直接受け止められる。
すなわち、踏力荷重Fが、下側ボス部11iから偏倚した位置に加わらないため、下側ボス部11iを支点として、ハウジング本体11に対して軸線L1に垂直な鉛直面内で曲げモーメントを生じる荷重が作用せず、ハウジング本体11の変形や破断を防止することができる。
【0058】
一方、支持部11e,12eと円筒部31の嵌合関係を介して、下側ボス部11iよりも鉛直方向の上方側においては、ハウジング10を運転者側に変形させるような曲げモーメントが生じる。
ここでは、軸線Sよりも鉛直方向の上方に二つの上側ボス部11j,12j、11k,12kが設けられ、二つの上側ボス部11j,12j、11k,12kにおいて、ボルトB及びナットNによりハウジング10がブラケット2に堅固に固定されているため、上記のような曲げモーメントに対抗することができ、ハウジング10の変形や破断等を防止することができる。それ故に、ペダルアーム30を適正に作動させることができる。
【0059】
また、全開ストッパ11nは、下側ボス部11iの幅寸法W1の範囲内に形成されているため、全開ストッパ11nに加わった踏力荷重Fは、軸線L1の方向において下側ボス部11iから偏倚した位置に加わらない。
それ故に、下側ボス部11iを支点として、ハウジング本体11に対して軸線L1を含む面内で曲げモーメントを生じる荷重が作用せず、ハウジング本体11の変形や破断を防止することができる。
さらに、円筒状カラー20が、ハウジング本体11及びハウジングカバー12に嵌合されているため、二分割構造をなすハウジング10としての機械的強度が増加し、ブラケット2に対するハウジング10の取付け剛性を高めることができる。
【0060】
図10は、前述のハウジング本体11における下側ボス部11iの他の実施形態を示すものであり、その他の構造は前述の実施形態と同一である。
この実施形態に係るハウジング本体111は、収容空間Aを画定するべく、側壁11a、前壁11b、奥壁11c、天壁11dを備えている。
また、ハウジング本体111は、支持部11e、軸受部11f、内壁面11g,11h、本体ボス部としての下側ボス部111i及び上側ボス部11j,11k、モータ取付け部11m、全開ストッパ11n、バネ受け部11p、バネ受け部11q、4つの連結爪11rを備えている。
【0061】
下側ボス部111iは、軸線Sよりも鉛直方向の下方において、略直方体状の外輪郭をなすように形成され、軸線Sと平行な軸線L1方向に伸長する貫通孔11iと、貫通孔11iの周りにおいて複数の肉抜き凹部111iと、複数の肉抜き凹部111iの間に介在する補強リブ111iを備えている。
補強リブ111iは、全開ストッパ11nに加わる踏力荷重Fを下側ボス部111iに通される円筒状カラー20及びボルトBに伝達するように機能する。
【0062】
これによれば、複数の肉抜き凹部111iを設けたことにより、ハウジング本体111を軽量化でき、又、補強リブ111iを設けたことにより、全開ストッパ11nに加わった踏力荷重Fは、補強リブ111iを介して、下側ボス部111iに嵌合された円筒状カラー20及びボルトBで直接受け止められる。
すなわち、踏力荷重Fが、下側ボス部111iから偏倚した位置に加わらないため、下側ボス部111iを支点として、ハウジング本体111に対して軸線L1に垂直な鉛直面内で曲げモーメントを生じる荷重が作用せず、ハウジング本体111の変形や破断を防止することができる。
【0063】
また、全開ストッパ11nは、下側ボス部111iの幅寸法W1の範囲内に形成されているため、全開ストッパ11nに加わった踏力荷重Fは、軸線L1の方向において下側ボス部111iから偏倚した位置に加わらない。
それ故に、下側ボス部111iを支点として、ハウジング本体111に対して軸線L1を含む面内で曲げモーメントを生じる荷重が作用せず、ハウジング本体111の変形や破断を防止することができる。
さらに、円筒状カラー20が、ハウジング本体111及びハウジングカバー12に嵌合されているため、二分割構造をなすハウジング10としての機械的強度が増加し、ブラケット2に対するハウジング10の取付け剛性を高めることができる。
【0064】
上記実施形態では、アクセルペダル装置Mが、ブラケット2を介して車体のダッシュロアパネル1に固定されるため、車種に対応して種々のブラケット2を適用することにより、ハウジング10のボス部を変更することなく、アクセルペダル装置Mを種々の車両に適用することができる。
【0065】
上記実施形態においては、反力付加機構(60,70)を備えた構成を示したが、これに限定されるものではなく、反力付加機構を廃止した構成において、本発明を採用してもよい。
上記実施形態においては、アクセルペダル装置Mがブラケット2を介して車体に固定される場合を示したが、これに限定さえるものではなく、アクセルペダル装置Mのハウジング10が車体に直接固定される構成において、本発明を採用してもよい。
【0066】
上記実施形態においては、ペダルアームがアクセルペダル33bを一体的に備えたペダルアーム30を用いる構成を示したが、これに限定されるものではなく、アクセルペダルとペダルアームとが別々に形成され、車両等の床面に揺動自在に支持されたアクセルペダルにペダルアームが連動する構成において、本発明を採用してもよい。
【0067】
上記実施形態においては、ハウジング10が、ハウジング本体11,111及びハウジングカバー12により構成された場合を示したが、これに限定されるものではなく、一体的に形成されたハウジングにおいて、本発明を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上述べたように、本発明のアクセルペダル装置は、構造及び形状の簡素化、低コスト化、小型化等を達成しつつ、過踏力が及ぼされてもハウジングの変形や破断等を防止できるため、自動車等に適用できるのは勿論のこと、その他の車両等においても有用である。
【符号の説明】
【0069】
S 軸線
Hp 休止位置
Fp 最大踏込み位置
F 踏力荷重
Vd 踏力荷重を受ける方向
1 ダッシュロアパネル(車体)
2 ブラケット
2a ハウジング固定壁
2b 車体側固定壁
B ボルト
10 ハウジング
11 ハウジング本体
A 収容空間
11i 下側ボス部(本体ボス部)
11i 貫通孔
11j,11k 上側ボス部(本体ボス部)
11j,11k 貫通孔
11n 全開ストッパ
12 ハウジングカバー
12i 下側ボス部(カバーボス部)
W1 ボス部の幅寸法
12i 貫通孔
12j,12k 上側ボス部(カバーボス部)
12j,12k 貫通孔
20 円筒状カラー
30 ペダルアーム
31 円筒部
32 上側アーム
33 下側アーム
W2 所定幅
33a 当接部
33b アクセルペダル
111 ハウジング本体(ハウジング)
111i 下側ボス部(本体ボス部)
111i 肉抜き凹部
111i 補強リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10