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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/54 20210101AFI20230824BHJP
   H01M 50/536 20210101ALI20230824BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20230824BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20230824BHJP
   B23K 20/10 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
H01M50/54
H01M50/536
H01M50/548 301
H01M10/0585
B23K20/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019132006
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021018845
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 智哉
(72)【発明者】
【氏名】今 紀裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智統
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/105362(WO,A1)
【文献】特開2011-204552(JP,A)
【文献】特開2007-234844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/531-567
H01M 10/0585
B23K 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の正極板と複数の負極板の間にそれぞれセパレータを介在して積層した積層電極群を備えた非水電解質二次電池であって、
前記複数の正極板は、それぞれ一部に正極タブリードを有する正極集電体を備え、前記複数の正極タブリードは少なくとも先端側を互いに重ね合せて正極タブリード重ね部とし、かつ当該正極タブリード重ね部の一方の面に正極端子を当接させ、前記正極端子の面および前記正極タブリード重ね部の他方の面にそれぞれナゲットを設け、
前記正極端子と正極タブリード重ね部の前記正極タブリード、および前記正極タブリード重ね部の前記複数の正極タブリードを互いに電気的に接合し、
前記複数の負極板は、それぞれ一部に負極タブリードを有する負極集電体を備え、前記複数の負極タブリードは少なくとも先端側を互いに重ね合せて負極タブリード重ね部とし、当該負極タブリード重ね部の一方の面に負極端子を当接させ、前記負極端子の面および前記負極タブリード重ね部の他方の面にそれぞれナゲットを設け、
前記負極端子と前記負極タブリード重ね部の前記負極タブリード、および前記負極タブリード重ね部の前記複数の負極タブリードを互いに電気的に接合し、
前記正極端子と前記正極タブリード重ね部の総厚さが1.5mm以下であり、かつ前記負極端子と前記負極タブリード重ね部の総厚さが1.5mm以下であることを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記複数の正極板および前記複数の負極板は、それぞれ50枚以上であることを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
複数の正極板と複数の負極板の間にそれぞれセパレータを介在して積層した積層電極群を備えた非水電解質二次電池の製造方法であって、
一部に正極タブリードを有する正極集電体を備えた前記複数の正極板を用意する工程と、
一部に負極タブリードを有する負極集電体を備えた前記複数の負極板を用意する工程と、
前記複数の正極板と前記複数の負極板の間に前記セパレータを介在して積層し、前記複数の正極タブリードが互いに積層方向に対向し、前記複数の負極タブリードが互いに積層方向に対向し、かつ前記複数の正極タブリードおよび前記複数の負極タブリードがそれぞれ離間して位置する前記積層電極群を形成する工程と、
前記複数の正極タブリードの少なくとも先端側を互いに重ね合せ、正極タブリード重ね部を形成する工程と、
チップを有する一対のホーンを用意する工程と、
前記正極タブリード重ね部の一方の面に正極端子を当接させ、さらに前記正極端子の面および前記正極タブリード重ね部の他方の面それぞれ前記一対のホーンのチップを押圧する直下式で前記正極端子および前記正極タブリード重ね部を加圧しながら、前記一対のホーンと共に前記チップを前記正極端子の面と平行な方向に振動させることによって、前記チップが当接される正極端子の面および前記正極タブリード重ね部の他方の面それぞれナゲットを形成し、同時に前記正極端子と前記正極タブリード重ね部の前記正極タブリード、および前記正極タブリード重ね部の前記複数の正極タブリードを互いに超音波溶接する工程と、
前記複数の負極タブリードの少なくとも先端側を互いに重ね合せて負極タブリード重ね部を形成する工程と、
チップを有する一対のホーンを用意する工程と、
前記負極タブリード重ね部の一方の面に負極端子を当接させ、さらに前記負極端子の面および前記負極タブリード重ね部の他方の面それぞれ前記一対のホーンのチップを押圧する直下式で前記負極端子および前記負極タブリード重ね部を加圧しながら、前記一対のホーンと共に前記チップを前記負極端子の面と平行な方向に振動させることによって、前記チップが当接される負極端子の面および前記負極タブリード重ね部の他方の面それぞれナゲットを形成し、同時に前記負極端子と前記負極タブリード重ね部の前記負極タブリード、および前記負極タブリード重ね部の前記複数の負極タブリードを互いに超音波溶接する工程と、
を含むことを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記複数の正極板および前記複数の負極板は、それぞれ50枚以上であることを特徴とする請求項に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記ホーンを振動させるための振動エネルギーは、複数回のパルスで与えることを特徴とする請求項3または4に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池の1つとして、複数の正極板と複数の負極板の間にそれぞれセパレータを介在して積層した積層電極群を備えた積層型の非水電解質二次電池が知られている。この非水電解質二次電池において、積層電極群の複数の正極板および複数の負極板は、それらのタブリードを外部端子である正極端子および負極端子にそれぞれ電気的に接合している。
【0003】
特許文献1には、非水電解質二次電池に組込まれる積層電極群において、複数の正極板のタブリードと正極端子を次のような超音波溶接技術により接合することが開示されている。なお、複数の負極板のタブリードと負極端子の接合も実質的に同じである。
【0004】
すなわち、複数の正極板はそれぞれ一部に正極タブリードを有する正極集電体を備えている。正極タブリードを除く正極集電体の少なくとも一方の面には、活物質を含む正極層が形成されている。複数の正極タブリードは、積層方向に互いに対向して配置され、例えば先端側で互いに重ね合せて正極タブリード重ね部を形成している。正極タブリード重ね部と正極端子を超音波溶接する場合には、正極端子上に正極タブリード重ね部を配置し、正極タブリード重ね部側に超音波溶接機に組込まれるホーンのチップを当接させ、チップを正極タブリード重ね部に向けて加圧しながら、ホーンと共にチップを正極タブリード重ね部の面と平行な方向に振動させ、正極タブリード重ね部の複数の正極タブリードを互いに超音波溶接するとともに、正極タブリード重ね部の最下層の正極タブリードを正極端子に超音波溶接する。このとき、1回の振動をホーンに加える毎に加圧を解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-195979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の超音波溶接において、複数の正極タブリード同士および最下層の正極タブリードと正極端子を接合するには、超音波溶接機のホーンに大きなエネルギーを投入する必要がある。その結果、ホーンのチップが当接する最上層の正極タブリードの破損、当接部に形成されるナゲットの過度な凹み、接合部周辺の変形が生じ、内部短絡を引き起こす可能性がある。
【0007】
本発明は、破損、ナゲットの過度な凹み、接合部周辺の変形を軽減したタブリードを有する積層電極群を備える非水電解質二次電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、複数の正極板と複数の負極板の間にそれぞれセパレータを介在して積層した積層電極群を備えた非水電解質二次電池である。複数の正極板は、それぞれ一部に正極タブリードを有する正極集電体を備える。複数の正極タブリードは少なくとも先端側を互いに重ね合せて正極タブリード重ね部とし、かつ当該正極タブリード重ね部の一方の面に正極端子を当接させ、当該正極端子の面にナゲットを設け、正極端子と正極タブリード重ね部の正極タブリード、および正極タブリード重ね部の複数の正極タブリードを互いに電気的に接合する。複数の負極板は、それぞれ一部に負極タブリードを有する負極集電体を備える。複数の負極タブリードは少なくとも先端側を互いに重ね合せて負極タブリード重ね部とし、当該負極タブリード重ね部の一方の面に負極端子を当接させ、当該負極端子の面にナゲットを設け、負極端子と負極タブリード重ね部の負極タブリード、および負極タブリード重ね部の複数の負極タブリードを互いに電気的に接合する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、破損、ナゲットの過度な凹み、接合部周辺の変形を軽減したタブリードを有する積層電極群を備え、内部短絡の防止等の安全性を向上した非水電解質二次電池およびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る積層型のリチウム二次電池を示す斜視図である。
図2図1の積層型のリチウム二次電池に組込まれる積層電極群を示す分解斜視図である。
図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4】積層電極群の複数の正極タブリードと正極端子の接続状態を正極タブリード側から見た平面図である。
図5図1のV-V線に沿う断面図である。
図6】積層電極群の複数の負極タブリードと負極端子の接続状態を負極タブリード側から見た平面図である。
図7】超音波溶接装置を示す概略図である。
図8図7の超音波溶接装置を用いて例えば正極端子と正極タブリード重ね部を超音波溶接する状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る非水電解質二次電池、例えば積層型のリチウム二次電池を図1図5を参照して詳細に説明する。図1は、実施形態に係る積層型のリチウム二次電池を示す斜視図、図2図1の積層型のリチウム二次電池に組込まれる積層電極群を示す分解斜視図、図3は、図1のIII-III線に沿う断面図、図4は積層電極群の複数の正極タブリードと正極端子の接続状態を正極タブリード側から見た平面図、図5図1のV-V線に沿う断面図、図6は積層電極群の複数の負極タブリードと負極端子の接続状態を負極タブリード側から見た平面図、である。
【0012】
積層型のリチウム二次電池1は、図1および図3に示すように2枚のラミネートフィルム21,22からなる袋状の外装体2を備えている。外装体2内には、積層電極群3が収納されている。一方のラミネートフィルム21は、積層電極群3を収納するための凹部23を有する。一方のラミネートフィルム21は、例えば3層構造を有し、内側から熱融着性樹脂フィルム21a、例えばアルミニウム箔のような金属箔21b、およびポリエチレンテレフタレートのような剛性を有する樹脂フィルム21cをこの順序で積層されている。他方のラミネートフィルム22は、平板状をなし、例えば3層構造を有し、内側から熱融着性樹脂フィルム22a、例えばアルミニウム箔のような金属箔22b、およびポリエチレンテレフタレートのような剛性を有する樹脂フィルム22cをこの順序で積層されている。外装体2は、一方のラミネートフィルム21の凹部23内に積層電極群3を収納し、一方のラミネートフィルム21の凹部23の開口周縁に他方のラミネートフィルム22をそれらの熱融着性樹脂フィルム21a,22aが互いに接触するように重ね、熱融着性樹脂フィルム21a,22aを互いに熱融着して枠状の封止部24を形成することにより、積層電極群3を気密に収納している。
【0013】
積層電極群3は、図2に示すように複数の正極板4と複数の負極板5の間にそれぞれセパレータ6を介在して積層した、例えば矩形体構造を有する。複数の正極板4および複数の負極板5は、それぞれ50枚以上であることが好ましい。セパレータ6は、例えば微多孔性ポリオレフィンフィルムから形成されている。
【0014】
正極板4は、正極集電体41と、当該集電体41の両面に形成された正極層42,42とを備える。正極集電体41は、矩形状の金属箔、例えばアルミニウム箔またはアルミニウム合金箔等で形成されている。正極層42,42は、リチウムイオンを吸蔵放出できる正極活物質を含み、例えば、正極活物質、導電剤、及び結着剤を含んでいる。正極活物質としては、例えば、LiCoO等のリチウム含有金属酸化物、リン酸金属リチウム等を単独又は混合して使用することができる。導電材としては、例えば、カーボンブラック等の導電性カーボンを単独又は混合して使用することができる。結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム等のポリマー材料を単独又は混合して使用することができる。
【0015】
各正極集電体41は、正極タブリード43をそれぞれ一体的に有する。各正極タブリード43は矩形体構造の電極群3の例えば右側面から外部に延出している。各正極タブリード43は、外装体2内において先端側で重ね合わされ、正極タブリード重ね部44を形成している。図3および図4に示すように帯状の正極端子7は、その一端側が正極タブリード重ね部44の例えば下面に当接され、正極タブリード重ね部44と重なった正極端子7部分の面(例えば下面)に例えば2つの矩形状のナゲット71を設け、正極端子7と正極タブリード重ね部44の正極タブリード43、および正極タブリード重ね部44の複数の正極タブリード43を互いに電気的に接合している。正極端子7の他端は、外装体2の封止部24を通して外部に延出している。正極端子7は、金属板、例えば帯状のアルミニウム板、アルミニウム合金板、ステンレス板等である。正極端子7は、正極タブリード43に比べて十分に大きな厚さを有する。例えば、正極端子7は正極タブリード43の厚さに対して14.2~15.8倍の厚さを有することが好ましい。
【0016】
負極板5は、負極集電体51と、当該集電体51の両面に形成された負極層52,52とを備える。なお、外装体2の内面と接する負極板5は負極層52が外装体2の内面と反対側の負極集電体51の片面に設けられている。負極集電体51は、矩形状の金属箔、例えば、銅箔、ニッケル箔等で形成されている。負極層52,52は、リチウムイオンを吸蔵放出できる負極活物質を含み、例えば、負極活物質、導電剤、及び結着剤を含んでいる。負極活物質としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素類を単独又は混合して使用することができる。導電材及び結着剤は、例えば、正極板に使用するものと同様のものを使用することができる。
【0017】
各負極集電体51は、負極タブリード53をそれぞれ一体的に有する。各負極タブリード53は、正極タブリード43が延出する矩形体構造の電極群3の右側面と反対側の側面(左側面)から外部に延出している。各負極タブリード53は、外装体2内において先端側で重ね合わされ負極タブリード重ね部54を形成している。図5および図6に示すように帯状の負極端子8は、その一端側が負極タブリード重ね部54の例えば下面に当接され、負極タブリード重ね部54と重なった負極端子8部分の面(例えば下面)に例えば2つの矩形状のナゲット81を設けて負極端子8と負極タブリード重ね部54の負極タブリード53、および負極タブリード重ね部54の複数の負極タブリード53を互いに電気的に接合している。負極端子8の他端は、外装体2の封止部24を通して外部に延出している。負極端子8は、金属板、例えば帯状の銅板、ニッケル板等である。負極端子8は、負極タブリード53に比べて十分に大きな厚さを有する。例えば、負極端子8は負極タブリード53の厚さに対して14.2~15.8倍の厚さを有することが好ましい。
【0018】
シーラント部9、10は、外装体2の封止部24を通過する正極端子7および負極端子8の部分において、それらの周面をそれぞれ覆って形成されている。シーラント部9,10は、外装体2の2枚のラミネートフィルム21,22の熱融着樹脂層21a,22aと熱融着されて、封止部24を通過する部分において、封止部24に対する各端子7,8の密着強度を向上させる。シーラント部9、10は、熱可塑性樹脂、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等で形成されている。
【0019】
非水電解質は、外装体2内に注入されている。外装体2の注入箇所は、非水電解質の注入後に封止される。非水電解質は、例えば、非水溶媒、及び電解質を含む非水電解液である。非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート等の非プロトン性有機溶媒を単独又は混合して使用することができる。電解質としては、例えば、LiPF、LiBF等のリチウム塩を単独又は混合して使用することができる。
【0020】
なお、実施形態において前記正極端子7が接合された前記正極タブリード重ね部の一方の面、および前記負極端子8が接合された前記負極タブリード重ね部の一方の面にそれぞれナゲット71,81設けた形態に限定されない。例えば、正極端子が接合された正極タブリード重ね部の一方の面と反対側の他方の面、および負極端子が接合された負極タブリード重ね部の一方の面と反対側の他方の面にそれぞれナゲットをさらに設けてもよい。
【0021】
また、ナゲット71,81の数も2つに限らず、正極端子と正極タブリード重ね部の重なり面積、および負極端子と負極タブリード重ね部の重なり面積、に応じて3つ以上にしてもよい。
【0022】
以上説明したように、実施形態に係る非水電解質二次電池は複数の正極板と複数の負極板の間にそれぞれセパレータを介在して積層した積層電極群を備え、複数の正極板がそれぞれ正極タブリードを有し、それら正極タブリードの先端側で正極タブリード重ね部とし、正極タブリード重ね部の一方の面に正極端子の一端側を当接させ、正極端子の面にナゲットを設け、正極端子と正極タブリード重ね部の正極タブリード、および正極タブリード重ね部の複数の正極タブリードを互いに電気的に接合した構造を有する。このような構成によれば、正極端子を複数の正極板の正極タブリード重ね部との接合において、正極タブリードに比べて十分に厚い正極端子にナゲットを設けるため、ナッゲトを正極タブリードに設ける場合に比べて正極タブリードの破損、ナゲットの過度な凹み、接合部周辺の変形を軽減できる。
【0023】
また、負極端子を複数の負極板の負極タブリード重ね部との接合においても、負極タブリードに比べて十分に厚い負極端子にナゲットを設けるため、ナッゲトを負極タブリードに設ける場合に比べて負極タブリードの破損、ナゲットの過度な凹み、接合部周辺の変形を軽減できる。
【0024】
従って、正極端子と接合される複数の正極タブリードでの内部短絡、負極端子と接合される複数の負極タブリードでの内部短絡、を防止できる等の安全性に優れた非水電解質二次電池を提供できる。
【0025】
また、図1に示す実施形態の積層型のリチウム二次電池の場合、負極タブリードの破損、ナゲットの過度な凹み、接合部周辺の変形に伴う外装体の封止部周辺の外観不良を抑制できる。
【0026】
次に、実施形態に係る非水電解質二次電池、例えば積層型のリチウム二次電池の製造方法を詳細に説明する。
【0027】
最初に、実施形態のリチウム二次電池の製造に用いる図7および図8に示す超音波溶接装置を説明する。なお、図8図7の超音波溶接装置を用いて例えば正極端子と正極タブリード重ね部を超音波溶接する状態を示す。
【0028】
超音波溶接装置101は、下部側マス102に鉛直方向に支持された下部側ホーン103を備えている。図示しない下部側加圧部材は、下部側マス102の下側に配置され、下部側マス102を介して下部側ホーン103を上方に向けて加圧する。下部側ホーン103の上面には、例えば2つの下部側チップ104が紙面の奥に向かって配置されている。下部側ホーン103は、下部側トランスデューサ105とカップリングされている。下部側トランスデューサ105は、図示しない超音波発信機から電気エネルギーが投入されると、振動エネルギーに変換し、カップリングした下部側ホーン103を水平方向に振動する。
【0029】
上部側ホーン106は、上部側マス107により鉛直方向に吊下、支持されている。上部側ホーン106は、下部側ホーン103の直上に位置する。図示しない上部側加圧部材は、上部側マス107の上側に配置され、上部側マス107を介して上部側ホーン106を下方に向けて加圧する。上部側ホーン106の下面には、例えば2つの上部側チップ108が紙面の奥に向かって配置されている。上部側ホーン106は、上部側トランスデューサ109とカップリングされている。上部側トランスデューサ109は、図示しない超音波発信機から電気エネルギーが投入されると、振動エネルギーに変換し、カップリングした上部側ホーン106を水平方向に振動する。このような超音波溶接装置において、下部側ホーン103と上部側ホーン106の間に被溶接物が配置される。
【0030】
積層型のリチウム二次電池の製造工程を以下に説明する。
【0031】
I)一部に正極タブリードを有する、例えばアルミニウム箔からなる正極集電体を備えた複数の正極板を用意する。各正極板は、正極集電体の両面に活物質を含む正極層をさらに有する。正極タブリードは、正極集電体と一体化され、当該正極集電体の外に延出されている。また、一部に負極タブリードを有する、例えば銅箔からなる負極集電体を備えた前記複数の負極板を用意する。各負極板は、負極集電体の片面もしくは両面に活物質を含む負極層をさらに有する。負極タブリードは、負極集電体と一体化され、当該負極集電体の外に延出されている。
【0032】
II)複数の正極板と複数の負極板の間にセパレータを介在して積層し、例えば矩形体構造の積層電極群を形成する。このとき、複数の正極タブリードを互いに積層方向に対向させ、かつ複数の負極タブリードも互いに積層方向に対向させる。また、複数の正極タブリードおよび複数の負極タブリードを、それぞれ互いに離間して位置させる。例えば、複数の正極タブリードを電極群の一方の側面から延出して位置させ、複数の負極タブリードを複数の正極タブリードが延出する電極群の側面と反対側の側面から延出して位置させる。
【0033】
III)次いで、複数の正極タブリードの少なくとも先端側を互いに重ね合せ、正極タブリード重ね部を形成する。つづいて、図8に示すように超音波溶接装置の下部側ホーン103上面の2つの下部側チップ104に正極タブリード重ね部44を載置する。正極タブリード重ね部44の一方の面(上面)に、例えばアルミニウム箔からなる正極端子7の一端側を当接させる。さらに、図示しない上部側加圧部材で上部側マス107を介して上部側ホーン106を正極端子7に向けて下降させ、上部側ホーン106下面の2つの上部側チップ108で正極タブリード重ね部44上の正極端子7を押圧して加圧する。下部側チップ104と上部側チップ108の間で正極タブリード重ね部44および正極端子7を加圧しながら、図示しない超音波発信機から電気エネルギーを上部側トランスデューサ109に投入する。当該トランスデューサ109は、電気エネルギーを振動エネルギーに変換し、カップリングした上部側ホーン106を正極端子7の面と平行な方向(水平方向)に振動する。上部側ホーン106の水平方向への振動に伴って正極端子7と当接、加圧する、上部側ホーン106下面の2つの上部側チップ108も水平方向に振動する。上部側チップ108の振動は、正極端子7と正極タブリード重ね部44の正極タブリードの間、および正極タブリード重ね部44の複数の正極タブリードの間に作用する。それにより、正極端子7と正極タブリード重ね部44の正極タブリード、および正極タブリード重ね部44の複数の正極タブリードを互いに超音波溶接する。このとき、上部側チップ108が当接、加圧される正極端子7の面に前述した図4に示すように2つのナゲット71,71が形成される。
【0034】
IV)複数の負極タブリードの少なくとも先端側を互いに重ね合せ、負極タブリード重ね部を形成する。つづいて、負極タブリード重ね部に例えば銅箔からなる負極端子の一端側を当接させ、図7に示す超音波溶接装置を用いて前述した正極端子と正極タブリード重ね部の超音波溶接と同様な方法により、負極端子と負極タブリード重ね部の負極タブリード、および負極タブリード重ね部の複数の負極タブリードを互いに超音波溶接する。このとき、上部側チップが当接、加圧される負極端子の面に2つのナゲットが形成される。
【0035】
この後、前記積層電極群を常法に従って2枚のラミネートフィルムからなる外装体に収納し、正極端子の他端側を外装体の封止部を通して外部に延出し、負極端子の他端側を外装体の封止部を通して外部に延出して積層型のリチウム二次電池を製造する。
【0036】
実施形態において、複数の正極板および複数の負極板はそれぞれ20枚以上、好ましくは30枚以上、より好ましくは50枚以上であることが望ましい。
【0037】
実施形態において、超音波溶接時の加圧の圧力値、投入する電気エネルギーは正極板、負極板の枚数、つまりそれらのタブリードの枚数、およびタブリードの厚さによって、調整され、枚数の増加、厚さの増大に応じて大きな圧力値を加え、投入電気エネルギーを増加することが好ましい。
【0038】
実施形態において、超音波発信機から電気エネルギーをトランスデューサに投入する際、複数のパルスにして投入することが好ましい。これは、結果としてホーンを振動させるための振動エネルギーが複数のパルスで与えられることを意味する。このように電気エネルギーをトランスデューサに複数のパルスにして投入することによって、ナゲットの深さを浅くすることが可能になる。好ましいパルス数は2~3回である。
【0039】
実施形態において、前記III)工程と前記IV)工程との順序を逆にしてもよい。
【0040】
以上説明したように、実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法は、複数の正極板と複数の負極板の間にそれぞれセパレータを介在して積層した積層電極群を形成し、複数の正極板がそれぞれ正極タブリードを有し、それら正極タブリードの先端側で正極タブリード重ね部を形成し、正極タブリード重ね部の一方の面に正極端子の一端側を当接させ、正極端子の面にホーンのチップを押当てて正極端子および正極タブリード重ね部を加圧しながら、ホーンと共にチップを正極端子の面と平行な方向に振動させ、チップが当接される正極端子の面にナゲットを形成し、同時に正極端子と正極タブリード重ね部の正極タブリード、および正極タブリード重ね部の複数の正極タブリードを互いに超音波溶接する。
【0041】
このような方法によれば、超音波溶接において、高容量化を目的として正極板の積層数を多くした時、つまり正極タブリード重ね部の正極タブリードの積層数を多くした時、ホーンへの投入エネルギーを増大しても、ホーンと共に振動するチップの当接対象が正極タブリードに比べて十分に厚い正極端子であるため、振動するチップの当接対象が正極タブリードである場合に比べて正極タブリードの破損、ナゲットの過度な凹み、接合部周辺の変形を軽減できる。
【0042】
同様に、負極側の超音波溶接において、負極タブリード重ね部の負極タブリードの積層数を多くした時、ホーンへの投入エネルギーを増大しても、ホーンと共に振動するチップの当接対象が負極タブリードに比べて十分に厚い負極端子であるため、振動するチップの当接対象が負極タブリードである場合に比べて負極タブリードの破損、ナゲットの過度な凹み、接合部周辺の変形を軽減できる。
【0043】
従って、正極板および負極板の積層枚数が増大しても、正極端子と正極タブリード重ね部の正極タブリード、および正極タブリード重ね部の複数の正極タブリード間の接合を良好な状態に維持しつつ、正極端子と接合される複数の正極タブリードでの内部短絡を防止でき、同様に負極端子と負極タブリード重ね部の負極タブリード、および負極タブリード重ね部の複数の負極タブリード間の接合を良好な状態に維持しつつ、負極端子と接合される複数の負極タブリードでの内部短絡を防止できる等の安全性に優れた非水電解質二次電池の製造方法を提供できる。
【0044】
なお、実施形態において、ホーンのチップからの振動は正極端子側(または負極端子側)に付与する場合に限らず、正極タブリード重ね部の正極端子と反対側の面(または負極タブリード重ね部の負極端子と反対側の面)にもホーンのチップからの振動を付与してもよい。すなわち、先端にチップを有する一対のホーンを用いて正極端子と正極タブリード重ね部(または負極端子と負極タブリード重ね部)を超音波溶接してもよい。これを正極端子と正極タブリード重ね部の超音波溶接を例にして前述した図7を参照して以下に説明する。
【0045】
図7に示す超音波溶接装置の下部側ホーン103上面の2つの下部側チップ104に正極タブリード重ね部44を載置する。正極タブリード重ね部44の一方の面(上面)に、正極端子7の後端部を当接させる。図示しない下部側加圧部材で下部側マス108を介して下部側ホーン103を上方に向けて加圧し、同時に、図示しない上部側加圧部材で上部側マス107を介して上部側ホーン106を下方に向けて加圧することによって、下部側ホーン103上面の2つの下部側チップ104と上部側ホーン106下面の2つの上部側チップ108との両方から正極端子7の後端が重ねられた正極タブリード重ね部44部分を押圧する。このような加圧状態にて、図示しない超音波発信機から電気エネルギーを上部側トランスデューサ109に投入し、当該トランスデューサ109で電気エネルギーを振動エネルギーに変換してカップリングした上部側ホーン106を正極端子7の面と平行な方向(水平方向)に振動させる。同時に、図示しない超音波発信機から電気エネルギーを下部側トランスデューサ105に投入し、当該トランスデューサ105で電気エネルギーを振動エネルギーに変換してカップリングした下部側ホーン103を正極タブリード重ね部44の下面と平行な方向(水平方向)に振動させる。これによって、上部側ホーン106下面の2つの上部側チップ108、および下部側ホーン103上面の2つの上部側チップ104の両方から正極端子7と正極タブリード重ね部44の正極タブリードの間、および正極タブリード重ね部44の複数の正極タブリードの間、にそれぞれ水平方向の振動が付与され、超音波溶接がなされる。
【0046】
なお、負極側についても、上部側ホーン106下面の2つの上部側チップ108、および下部側ホーン103上面の2つの上部側チップ104の両方から負極端子と負極タブリード重ね部の負極タブリードの間、および負極タブリード重ね部の複数の負極タブリードの間、にそれぞれ水平方向の振動を付与し、超音波溶接する。
【0047】
このような方法によれば、例えば正極端子にのみホーンのチップで振動を付与する場合に比べて一対のホーンのそれぞれに投入するエネルギーを半減でき、正極タブリードおよび負極タブリードの破損、ナゲットの過度な凹み、接合部周辺の変形をより一層軽減できる。
【実施例
【0048】
以下、実施例を詳細に説明する。
<実施例1>
厚さ20μmのAl箔から長さ50mm、幅60mmのAlタブリードを有するAl集電体を作製した。また、厚さ0.3mm、長さ50mm、幅60mmのAl端子を用意した。
【0049】
次いで、31枚のAl集電体を積層し、当該積層Al集電体のAlタブリード重ね部(厚さ:0.62mm)の上層にAl端子の一端側を12.5mmの長さに亘って重ねて当接させ、試験体に供した。なお、試験体のAl端子とAlタブリード重ね部の総厚さは0.92mmである。
【0050】
次いで、試験体を前述した図7に示す超音波溶接装置の下部側ホーン103上面の2つの下部側チップ104にAl端子が上側に位置するように載置した。つづいて、図示しない上部側加圧部材で上部側マス107を介して上部側ホーン106をAl端子に向けて下降させ、上部側ホーン106下面の2つの上部側チップ108でAl端子とAlタブリード重ね部を0.4MPaの条件で加圧した。このように下部側チップ104と上部側チップ108の間でAl端子とAlタブリード重ね部を加圧しながら、図示しない超音波発信機から400Jの電気エネルギーを上部側トランスデューサ109に投入し、Al端子とAlタブリード重ね部の上層のAlタブリード、およびAlタブリード重ね部の複数のAlタブリードを互いに超音波溶接した。このとき、上部側チップ108が当接、加圧されるAl端子の上面に2つのナゲットが形成された。
<実施例2>
実施例1と同様な厚さ20μm、長さ50mm、幅60mmのタブリードを有するAl集電体を60枚積層し、当該積層Al集電体のタブリード重ね部(厚さ:1.2mm)の上層に実施例1と同様な厚さ0.3mm、長さ50mm、幅60mmのAl端子の一端側を12.5mmの長さに亘って重ねて当接させ、試験体に供した。なお、試験体のAl端子とAlタブリード重ね部の総厚さは1.5mmである。つづいて、実施例1と同様な方法により試験体のAl端子とAlタブリード重ね部のAlタブリード、およびAlタブリード重ね部の複数のAlタブリードを互いに超音波溶接した。このとき、上部側チップ108が当接、加圧されるAl端子の上面に2つのナゲットが形成された。
<比較例1>
実施例1と同様な厚さ20μm、長さ50mm、幅60mmのタブリードを有するAl集電体を31枚積層し、当該積層Al集電体のAlタブリード重ね部(厚さ:0.62mm)の下層に実施例1と同様な厚さ0.3mm、長さ50mm、幅60mmのAl端子の一端側を12.5mmの長さに亘って重ねて当接させ、試験体に供した。なお、試験体のAlタブリード重ね部とAl端子の総厚さは0.92mmである。
【0051】
次いで、試験体を前述した図7に示す超音波溶接装置の下部側ホーン103上面の2つの下部側チップ104にAl端子が下側(下部側ホーン103側)に位置するように載置した。つづいて、図示しない上部側加圧部材で上部側マス107を介して上部側ホーン106をAlタブリード重ね部に向けて下降させ、上部側ホーン106下面の2つの上部側チップ108でAlタブリード重ね部とAl端子を0.4MPaの条件で加圧した。このように下部側チップ104と上部側チップ108の間でAlタブリード重ね部とAl端子を加圧しながら、図示しない超音波発信機から400Jの電気エネルギーを上部側トランスデューサ109に投入し、Alタブリード重ね部の複数のAlタブリード、およびAlタブリード重ね部の下層のAlタブリードとAl端子を互いに超音波溶接した。このとき、上部側チップ108が当接、加圧されるAlタブリード重ね部の上面に2つのナゲットが形成された。
<比較例2>
実施例1と同様な厚さ20μm、長さ50mm、幅60mmのタブリードを有するAl集電体を60枚積層し、当該積層Al集電体のタブリード重ね部(厚さ:1.2mm)の下層に実施例1と同様な厚さ0.3mm、長さ50mm、幅60mmのAl端子の一端側を12.5mmの長さに亘って重ねて当接させ、試験体に供した。なお、試験体のAlタブリード重ね部とAl端子の総厚さは1.5mmである。つづいて、比較例1と同様な方法により試験体のAlタブリード重ね部の複数のAlタブリード、およびAlタブリード重ね部の下層のAlタブリードとAl端子を互いに超音波溶接した。このとき、上部側チップ108が当接、加圧されるAlタブリード重ね部の上面に2つのナゲットが形成された。
【0052】
実施例1,2及び比較例1,2で得られた超音波溶接後の試験体について、以下の方法で接合性およびナゲットの変形度を評価した。
【0053】
(1)接合性
超音波溶接後の試験体の積層集電体とAl端子とを引張り強度試験機(SHINPO FGS-100VC)にて180°剥離試験を行った。この剥離試験において、AlタブリードまたはAl端子で破断が起これば“良好”と判定し、溶接部で剥離すれば“不良”と判定した。
【0054】
(2)ナゲットの変形度
ナゲットを目視観察してナゲットの凹み、およびナゲット周辺のしわ、ひずみの大小を判定した。
【0055】
これらの結果を下記表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
前記表1から明らかなように、実施例1、2ではAl端子側から超音波溶接を行うことによって、集電体(Alタブリード)の枚数が31枚、60枚のいずれの場合でも、Al集電体のAlタブリードとAl端子の接合性が高く、ナゲットの変形度も小さいことが分かる。
【0058】
これに対し、比較例1では集電体(Alタブリード)の枚数が31枚と少ないために高い接合性が得られるものの、Alタブリード側から超音波溶接を行うために、ナゲットの変形度が大きくなることが分かる。
【0059】
さらに、比較例2では集電体(Alタブリード)の枚数が60枚と多くなるために、接合不良が生じることが分かる。また、比較例1と同様、Alタブリード側から超音波溶接を行うために、ナゲットの変形度が大きくなることが分かる。
<実施例3>
実施例1と同様な厚さ20μm、長さ50mm、幅60mmのタブリードを有するAl集電体を60枚積層し、当該積層Al集電体のタブリード重ね部(厚さ:1.2mm)の上層に実施例1と同様な厚さ0.3mm、長さ50mm、幅60mmのAl端子の一端側を12.5mmの長さに亘って重ねて当接させ、試験体に供した。なお、試験体のAl端子とAlタブリード重ね部の総厚さは1.5mmである。
【0060】
次いで、試験体を前述した図7に示す超音波溶接装置の下部側ホーン103上面の2つの下部側チップ104にAl端子が上側に位置するように載置した。つづいて、図示しない上部側加圧部材で上部側マス107を介して上部側ホーン106をAl端子に向けて下降させ、上部側ホーン106下面の2つの上部側チップ108によりAl端子とAlタブリード重ね部を0.4MPaの条件で加圧した。このように下部側チップ104と上部側チップ108の間でAl端子とAlタブリード重ね部を加圧しながら、図示しない超音波発信機から出力1600W,電気エネルギー400Jを上部側トランスデューサ109に2回のパルスで投入し、Al端子とAlタブリード重ね部の上層のAlタブリード、およびAlタブリード重ね部の複数のAlタブリードを互いに超音波溶接した。このとき、上部側チップ108が当接、加圧されるAl端子の面に2つのナゲットが形成された。
<実施例4>
実施例3と同様な試験体を前述した図7に示す超音波溶接装置の下部側ホーン103上面の2つの下部側チップ104にAl端子が上側に位置するように載置した。つづいて、図示しない上部側加圧部材で上部側マス107を介して上部側ホーン106をAl端子に向けて下降させ、同時に、図示しない下部側加圧部材で下部側マス102を介して下部側ホーン103をAlタブリード重ね部の下層のAlタブリードに向けて上昇させ、上昇する下部側ホーン103上面の2つの下部側チップ104と下降する上部側ホーン106下面の2つの上部側チップ108とによりAl端子とAlタブリード重ね部を0.4MPaの条件で加圧した。このように下部側チップ104と上部側チップ108の間でAl端子とAlタブリード重ね部を加圧しながら、図示しない超音波発信機から出力1600W,電気エネルギー200Jを下部側トランスデューサ105に2回のパルスで投入し、同時に図示しない超音波発信機から出力1600W,電気エネルギー200Jを上部側トランスデューサ109に2回のパルス回数で投入し、上部側ホーン106および下部側ホーン103をAl端子の上面、Alタブリード重ね部の下層のAlタブリードの下面に平行に振動させた。これによって、上部側ホーン106下面の2つの上部側チップ108、および下部側ホーン103上面の2つの上部側チップ104の両方からAl端子とAlタブリード重ね部の上層のAlタブリード、およびAlタブリード重ね部の複数のAlタブリードを互いに超音波溶接した。このとき、上部側チップ108が当接、加圧されるAl端子の上面に2つのナゲットが形成され、下部側ホーン103上面の2つの上部側チップ104が当接、加圧されるAlタブリード重ね部の下層のAlタブリード下面にも2つのナゲットが形成された。
<比較例3>
実施例1と同様な厚さ20μm、長さ50mm、幅60mmのタブリードを有するAl集電体を60枚積層し、当該積層Al集電体のタブリード重ね部(厚さ:1.2mm)の下層に実施例1と同様な厚さ0.3mm、長さ50mm、幅60mmのAl端子の一端側を12.5mmの長さに亘って重ねて当接させ、試験体に供した。なお、試験体のAlタブリード重ね部とAl端子の総厚さは1.5mmである。
【0061】
次いで、試験体を前述した図7に示す超音波溶接装置の下部側ホーン103上面の2つの下部側チップ104にAl端子が下側に位置するように載置した。つづいて、図示しない上部側加圧部材で上部側マス107を介して上部側ホーン106をAlタブリード重ね部に向けて下降させ、上部側ホーン106下面の2つの上部側チップ108によりAlタブリード重ね部とAl端子とを0.4MPaの条件で加圧した。このように下部側チップ104と上部側チップ108の間でAlタブリード重ね部とAl端子を加圧しながら、図示しない超音波発信機から出力1600W,電気エネルギー400Jを上部側トランスデューサ109に2回のパルスで投入し、Alタブリード重ね部の複数のAlタブリード、およびAlタブリード重ね部の下層のAlタブリードとAl端子を互いに超音波溶接した。このとき、上部側チップ108が当接、加圧されるAlタブリード重ね部の上面に2つのナゲットが形成された。
【0062】
実施例3、4及び比較例3の処理条件等を下記表2に示す。
【0063】
また、実施例3、4及び比較例3で得られた超音波溶接後の試験体について、接合性およびナゲットの変形度を実施例1と同様な方法で評価した。また、実施例3、4及び比較例3に従って積層電極群の60枚の正極タブリード重ね部に正極端子を超音波溶接し、前述した図1図3および図4のように2枚のラミネートフィルムからなる外装体に収納し、正極端子を外装体の封止部を通して外部に延出した積層型リチウム二次電池を組立てた。積層型リチウム二次電池の正極タブリード重ね部と正極端子の外観の良否を目視で観察し、良を“○”、否を“×”とした。さらに、Alタブリード重ね部の短絡の有無を調べた。
【0064】
その結果を下記表3に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
前記表3から明らかなように、実施例3、4ではAl端子側から超音波溶接を行うことによって、比較例3に比べて集電体(Alタブリード)の枚数が60枚でも、Al集電体のAlタブリードとAl端子の接合性が高く、ナゲットの変形度も小さく、さらに二次電池の外観も良好であることが分かる。短絡については、実施例2、3、比較例3のいずれも認められなかった。
【0068】
特に、実施例4では、Al端子およびAlタブリード重ね部の両方から超音波溶接を行うことによって、エネルギー量を200JでAl端子とAlタブリード重ね部のAlタブリード、およびAlタブリード重ね部の複数のAlタブリード間を互いに接合することが可能になる。すなわち、Al端子およびAlタブリード重ね部の両方から超音波溶接を行うことによって、片側に要する投入エネルギーの量を1/2を抑えることができる。
【符号の説明】
【0069】
1…積層型のリチウム二次電池、2…外装体、3…積層電極群、4…正極板、5…負極板、41…正極集電体、43…正極タブリード、44…正極タブリード重ね部、51…負極集電体、53…負極タブリード、54…負極タブリード重ね部、7…正極端子、8…負極端子、71…ナゲット、81…ナゲット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8